意見書提出にあたっての審議会会長コメント(PDF:215KB)

大津市消費生活審議会からの「意見書」提出にあたって(提出時挨拶)
大津市消費生活審議会
会長 中田 邦博(龍谷大学教授)
大津市消費生活審議会が取りまとめました「意見書」を提出するにあたり、副市長様を
はじめ、市民部や大津市教育委員会の皆さまにお集まりを頂き、厚く御礼を申し上げます。
さて、私たち大津市消費生活審議会は、去る平成27年9月に前委員の任期満了に伴い
9名中6名が新しい委員に交代したことを機に、そして消費者問題の重要性に鑑みて、こ
の任期中に、これからの大津市の消費者行政に少しでも参考となるような意見を是非とも
具申したいと考え、この『消費者教育推進のあり方』をテーマにして、約1年半の時間を
かけて消費者問題に関する調査・研究を行い、今回の「意見書」をまとめました。
大津市消費生活審議会の会長職にある者として、私の方から「意見書」の提出にあたり
まして、お時間を頂戴し、
「意見書」の内容を紹介しながら、その背景などについて少しお
話しさせていただきます。
このような形で「意見書」を提出することを考えたのには、次のような理由があります。
第1に、消費者を取り巻く社会環境が急速に変化を続けている中で、消費者行政の果た
す役割がより重要になっているという認識があります。つまり、大津市においても、消費
者の権利を擁護し、事業者とのトラブルや悪質商法などによる消費者被害をなくしていく
ためには、これまで大津市が“消費者保護”や“消費者救済”を目的として行ってきた取
り組みをもう一度見直すことが必要となると考えたからです。
第2は、
「消費者市民社会」においては、消費者自身が主体的・合理的な意思決定をする
ことが必要となることが前提されているにもかかわらず、その環境を整備するための施策
が不十分であるという認識です。こうした環境整備として位置づけられるのが、
「消費者教
育」です。今回、
「消費者教育」をとくに重点的に取り上げ、具体的な施策を提案したのは、
「消費者教育」が、消費者が主体的な自己決定のための必要な知識や能力を身に着ける機
会として不可欠なものだからです。
「消費者教育」は、これからの大津市の消費者行政にお
いて中心的な重要施策として位置づけられることになります。
以上のような理由から、この「意見書」の中では、一方で、消費者に対してその権利意
識の高揚や消費者としての責任や自覚を求めることの必要性も指摘しつつ、他方で、より
重要な課題として、
「消費者教育の実践」という形で消費者の意識改革を促進するための根
本的な環境整備の必要性を訴えております。
また、行政が消費者行政の促進のため、また上記の環境整備として行うべき施策として、
教育、福祉、環境、健康医療、住民自治、生活安全などの様々な行政分野の連携が不可欠
であることを示しております。この連携は、大津市における消費者行政の中で最も重要な
政策的な課題として提起しています。今後の具体的施策の展開においては、その時々の施
策を常に評価の対象として、またその評価方法の開発も含めて、検証を 繰り返し、着実に
その成果が上るよう工夫を重ねるべきであること提言しております。
さらに、
「消費者教育」について付言すると、それは、人の生活の中で生涯を通じて、様々
な場面で実践されることが重要となることを指摘できます。すなわち、家庭や地域、学校、
職域、消費者団体、事業者などの多様な主体との連携の中で実践される必要があります。
そのためには、各主体との関係構築やその担い手の育成なども当然必要となります。この
「意見書」には、そのための具体的な施策が書き込まれています。
また、消費者団体についても言及しています。大津市内にも消費者団体と呼べる組織や
団体がありますが、その数はまだまだは少ないようです。言うまでもなく、消費者基本法
において位置づけられた「消費者団体」の育成は消費者行政の要となります。そうした市
民団体や市民活動にも市はしっかりと目を向け、
「消費生活センター」が主導的役割を果た
し、消費者団体の活動の活性化に向けた積極的な支援を行うことが必要である旨も提言さ
せて頂きました。
そして、
『特に重点施策化を検討すべき事項』として、実当審議会でも常にその必要性が
議論となった「学校教育における消費者教育の推進」および「事業者との連携・協力によ
る消費者教育の推進」については、別途章を立てて、大津市において実現可能な施策の具
体的な提案も含め、その推進のための提言をしております。
聞くところによれば、上記の重点課題については新年度においてこの意見書の内容とも
重なる内容で、部分的ではありますが、具体的な取り組みがすでに予定されているようで
大変うれしく思っているところです。
大津市消費生活審議会の会長としての立場から、是非とも、現在、次年度に計画されて
いる事業が、着実に推進され、その成果が上るよう、また、今後も市において重点事業と
してさらに継続的に事業推進が図られるようご支援を頂くことをこの場をお借りして、副
市長さんや教育次長さんにはお願いしておきたいと思います。
近時の情勢をみると、今、国では「民法上の成年年齢引き下げ」の準備が進められてい
ます。これまで 20 歳未満であれば制限行為能力者制度の枠組みで契約の取消しができた も
のが 18 歳未満に制限されます。この意味で、学校教育の段階でどのように子供や若者に対
して消費行動についての教育を行うかはきわめて重要な課題となります。
消費行動は、すべての人が日々の生活に密着して毎日行うもので、多くの人はその変化
をあまり気にしていないかもしれませんが、長期的な視野から見れば、 生活様式の変化に
よって、これまで以上に多様化し大きく変遷してきています。
「消費者教育」は、それに対
応するための知識やスキルを提供し、消費者の消費行動に影響を与え、社会のあり方を変
えるものとなります。消費者教育によって提供される情報やスキルは、すべての市民が学
ぶべき必要な基本的な知識となり、同時に「市民の一般常識」として考えられるべきもの
となります。このような文脈でも「消費者教育」の重要性を指摘できると思います。
最後に、この「意見書」には多様な課題が含まれていますが、すべてを書いているわけ
ではありません。申し上げたいことはまだまだあります。そのような意味でいえば、今回
の「意見書」は結論ではなく、あくまで中間的な意見をとりまとめたものとなります。そ
のため、今後も大津市消費生活審議会としては、消費生活の変化を踏まえ、市民の声を反
映させながら、大津市の消費者行政の推進に様々な意見を申し上げ、またそのための支援
をしていきたいと考えております。
副市長様におかれましては、これからも大津市の消費者行政の推進に是非とも ご関心を
寄せて頂き、市民の皆さんの安全で安心な暮らしを維持するために、よろしくご支援を下
さいますようお願いを申し上げ、以上をもちまして、この「意見書」提出にあたっての大
津市消費生活審議会を代表してのご挨拶とさせて頂きます。