資料 No.2 事故検証課題別ディスカッション 「地震動による重要機器の影響」 1号機逃がし安全弁(SRV)の動作状況について 2017年2月 ©Tokyo Electric Power Company Holdings, Inc. All Rights Reserved. 無断複製・転載禁止 東京電力ホールディングス株式会社 1号機逃がし安全弁(SRV)の作動状況について 1 当社はこれまで福島第一原子力発電所1号機において,津波が到達し全電源喪失 した後(3/11 15:37)から 現場で原子炉圧力を採取した時期(3/11 20時 頃)まで,逃がし安全弁(SRV)は動作していたと考えている 今回改めて,上記期間におけるSRVの動作状況について検討を行う ① 前回(10/31)委員提出資料に基づく検討 動作音を聞いたと証言したものがいないという観点でFTA※を作成・評価 ② 物理現象の観点から検討 前提条件としてSRVが動作しなかったと仮定し,FTA ※を作成・評価 尚,下記状況および制約を踏まえ,客観的な推定により検討 ・弁の分解点検をはじめ,現場の確認が困難であること ・津波による全電源喪失後のプラントパラメータが限定されること ※故障の木解析(Fault Tree Analysis) ©Tokyo Electric Power Company Holdings, Inc. All Rights Reserved. 無断複製・転載禁止 東京電力ホールディングス株式会社 2 ① 前回委員提出資料に基づく検討 1号機逃がし安全弁(SRV)の作動状況について 前回委員提出資料に基づくFTAに従い,要因を整理 頂上事象を,「全電源喪失以降,1号機SRVの作動音を聞いたと証言した者がいない」として FTAを作成しても,事象の原因を特定することが出来ない※ (頂上事象) ※要因の検討にあたり,下記制約があるため客観的な推定により検討 ・現場の確認,弁の分解点検が困難であること ・津波による全電源喪失以降のプラントパラメータが限定されること SBO全電源喪失以 降,1号機のSR弁 の作動音を聞いた 者がいない。 を聞いたと証言す る者がいない。 SRVは正常に作動 していたが単に聞 こえなかった SRVはまったく (or ほとんど) 作動し ていなかった 前回委員提出資料より← →東京電力HDによる検討 SRVは動作時にとくに大きな作動音を発 しないので聞こえなかった × 一般的にSRVが動作した場合には音がすることが分かってい るが,1号機の音の規模については不明。 かなり大きな音でも格納容器内の音は 格納容器外にはあまり聞こえてこない × 2号機,3号機において動作音を聞いた証言がある。 他の騒音にかき消されて聞こえなかっ た × 全電源喪失以降,原子炉建屋内はほとんど音がせず,静寂 だったと思われる。 運転員や作業員は他のことに注意が 向けられていたので聞こえなかった △ ・SRVの安全弁機能は自動で動作する。自動操作による作動 音は,人的介入による作動音に比べ認識されにくい。 ・全電源喪失以降の運転員のおかれた過酷な環境(暗闇, 余震)や状況確認に奔走していたことを考慮すると作動音 が認識されずと不自然ではない。 ・事故発生から当該調査まで相応の時間が経過している。仮 に動作音を認識したとしても,記憶にとどめておくことが困 難な可能性がある。 4台あるSRVの安全弁機能がいずれも 機能しなかった × ・安全弁は単純な機構で動作する弁であり4弁全てが同時に 機能喪失するとは考えにくい。 ・基本的な物理法則から観測記録を再現できない。 1台のSRVが一,二度作動した直後に弁 開固着が起きた × ・蒸気の流出は防げないため頂上事象である「音が聞こえな い」と矛盾する。 ・観測記録を再現できない。 誤って,安全弁(SV)の設定圧力がSRV安全弁機 能の作動圧より低く設定されていた。 × ・地震前に行った点検において,吹き出し圧が正しく設定され ていることを確認した。 誤って,SRV安全弁機能の作動圧力が安全弁 (SV)の作動圧力より高く設定されていた。 × ・地震前に行った点検において,吹き出し圧が正しく設定され ていることを確認した。 地震動の影響を受け,原子炉系配管が1本ある いは複数本,SBO全電源喪失前又はSBO全電 源喪失以降に破損した。 × ・基本的な物理法則から観測記録を再現できない。 原子炉圧力がSRVの安全弁機能の作 動圧力に達しなかった SRV不動作を仮定し,物理現象として成立するか, 次ページにおいて詳しく検討 ©Tokyo Electric Power Company Holdings, Inc. All Rights Reserved. 無断複製・転載禁止 東京電力ホールディングス株式会社 △:要因の可能性がある ×:要因の可能性が小さい 3 ② 物理現象の観点から検討 SRVの不動作を仮定して物理現象の観点でFTAを作成した結果,全て可能性 が小さいと考えられ,SRVは動作していたと考えるのが妥当 ◆物理的観点 ●機械的観点 ※要因の検討にあたり,下記制約があるため客観的な推定により検討 ・現場の確認,弁の分解点検が困難であること ・津波による全電源喪失以降のプラントパラメータが限定されること (頂上事象) SRVの不動作 SRV異常 主蒸気圧がSRV の設定圧まで上 がらない × ◆開固着が生じた場合,原子炉圧力・原子炉水位が早期に低下し,観測された原子炉圧力7.0MPa(3/11 20:07)を再 現できない。 閉固着 × ●SRV(安全弁機能)は単純な機構で動作する弁であり,4弁全てが同時に機能喪失するとは考えがたい。 ◆閉固着の場合,原子炉圧力が上昇し,3/11 17:00前後で原子炉圧力容器破損に至る可能性の圧力に達するがそのよ うな徴候は確認されていない。 ◆規制庁及び当社の解析の結果,閉固着+LOCAは同時に成立しないことが確認されている。 シートパス × ◆エネルギー保存則などの基本的な物理法則から7cm2以上のリークがあれば観測記録を再現できず,6.5cm2以下の 場合炉圧が上昇しSRVは動作する。(この物理現象を評価した規制庁及び当社解析結果あり) ガスケット等から の蒸気漏えい × ◆エネルギー保存則などの基本的な物理法則から7cm2以上のリークがあれば観測記録を再現できず,6.5cm2以下の 場合炉圧が上昇しSRVは動作する。(この物理現象を評価した規制庁及び当社解析結果あり) 吹き出し圧の 設定誤り × ●地震前に行った点検において,吹き出し圧が正しく設定されていることを確認した。 冷却材喪失事故 (LOCA) × ◆規制庁及び当社の解析の結果,LOCAとSRV不動作は同時に成立しないことを確認している。 安全弁(SV)が先 に動作した × ●地震前に行った点検において,吹き出し圧が正しく設定されていることを確認した。 開固着 △:要因の可能性がある ×:要因の可能性が小さい ©Tokyo Electric Power Company Holdings, Inc. All Rights Reserved. 無断複製・転載禁止 東京電力ホールディングス株式会社 4 結論 SRVの作動状況について ① 前回委員提出資料に基づく検討,及び ② 物理現象 の観点から検討を行った ①の結果,事象の原因を特定することが出来ない ②の結果, SRVは動作していたと考えるのが妥当である 上記結果より,音が聞こえたという証言が得られていない理由を特定する 事は出来ないものの,SRVは動作していたと考える 根拠 ・SRVは合計4つあり,原子炉圧力容器の圧力がSRVのバネ設定を超え ると自動で弁が開く単純な構造(安全弁機能)であり,全てが不動作に なることは考えがたい ・小規模な漏えいとSRV不作動が同時に成立しないことを解析により規 制庁と当社がそれぞれ個別に確認している ©Tokyo Electric Power Company Holdings, Inc. All Rights Reserved. 無断複製・転載禁止 東京電力ホールディングス株式会社 (補足)全電源喪失以降のSRVの不動作とLOCAの同時成立性について(1/3) 5 エネルギー保存則などの基本的な物理法則からSRVの不動作とLOCAの同時成立性に ついて検討を行う ① SRVが不動作(閉固着)又はSRVが不動作かつ0.3cm2※以下のリーク孔を仮定した場合 ※ プラントパラメータに影響しない程度のリーク孔 。。。。。 。。。。 。。。 3/11 17時 時点 。。。。。 。。。。 。。。 3/11 17時時点で12MPaを遙かに超える圧力に到達 →原子炉圧力容器が破損する可能性がある圧力 圧力容器破損の徴候は見られていない →成立しない ② リーク孔が発生したと仮定した場合 。。。。。 。。。。 。。。 ©Tokyo Electric Power Company Holdings, Inc. All Rights Reserved. 。。。。。 。。。。 。。。 無断複製・転載禁止 東京電力ホールディングス株式会社 発生する蒸気量と漏えい量のバランスに より原子炉圧力が変化する (次ページ以降で評価) (補足)全電源喪失以降のSRVの不動作とLOCAの同時成立性について(2/3) ② リーク孔が発生したと仮定した場合(前ページの続き) 原子炉から 流出した蒸気 。。。。。 。。。。 。。。 。。。。 。。。 。。。 崩壊熱 により気化 ・崩壊熱が主に冷却材の温度上昇に利用 される ・冷却材が気化し、蒸気が発生する (原子炉圧力上昇、原子炉水位低下) 蒸気発生量>漏えい量の場合 蒸気発生量<漏えい量の場合 ・原子炉圧力は上昇し、設定圧を超えると SRVが動作する ・原子炉圧力は低下し,SRVは動作しない ©Tokyo Electric Power Company Holdings, Inc. All Rights Reserved. 無断複製・転載禁止 東京電力ホールディングス株式会社 6 (補足)全電源喪失以降のSRVの不動作とLOCAの同時成立性について(3/3) 7 解析結果 実測値を再現出来な い為,SRVの不動作と LOCAは同時に成立し ない 崩壊熱とともに蒸気発生量が減 少し,漏えい量よりも小さくなるた めに炉圧が低下する 原子炉圧力(PI-263-60A/B)の信頼性について ・当該計器はブルドン管であり構造が簡単で故障しにくい計器である ・当該計器の最高使用圧力は11MPaであり,事故当時,原子炉圧力計の検出配管内温度がどの程度になったかは不明 だが,運転員が現場にてデータを採取出来ていることから,採取時点において環境条件は厳しくなかったと考えられる ・地震前の点検記録より,通常の運転期間において生じる誤差は±0.1MPa程度である ・指示値はアナログ方式であり,運転員が実際に読み取った値でもあることから,桁を間違って採取したとは考えにくい ©Tokyo Electric Power Company Holdings, Inc. All Rights Reserved. 無断複製・転載禁止 東京電力ホールディングス株式会社 8 (参考)SRVの構造 SRVの動作原理(安全弁機能) 逃がし弁機能 (窒素ガス) ⇒電源喪失時 動作しない 弁番号 安全弁吹出圧 MPa [gage] 逃がし弁吹出圧 MPa [gage] 203-3A (SRV) 7.64 7.27 203-3B (SRV) 7.64 7.34 203-3C (SRV) 7.71 7.34 203-3D (SRV) 7.71 7.41 203-4A (SV) 8.51 ― 203-4B (SV) 8.51 ― 203-4C (SV) 8.62 ― 蒸気の流れ 安全弁機能 (原子炉圧力の作用力) 主蒸気入口 ©Tokyo Electric Power Company Holdings, Inc. All Rights Reserved. 無断複製・転載禁止 東京電力ホールディングス株式会社
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