ロシア情勢(2016年12月 モスクワ事務所)

更新日:2017/2/ 6
JOGMEC モスクワ事務所
黒須 利彦/井戸 智子
公開可
ロシア情勢(2016年 12 月 モスクワ事務所)
1.政治・経済情勢
(1)国内
政治
・
12月1日、プーチン大統領は、クレムリンで年次教書演説を行った。例年外交問題に多くの時間が割
かれるが、演説の冒頭、今年は経済・社会政策・内政に注意を向けたいと語った。経済面について
は、ロシアの経済成長率を2019~2020年には世界平均以上に上げることを目標し、2025年までのア
クションプランを2017年5月までに作成するよう政府に指示した。日本との関係については、「東の隣
人である日本との関係が質的に発展することを期待する。共同プロジェクト、プログラムをスタートさ
せ、日本の首脳部がロシアとの経済関係の発展に意欲をもって取り組んでいることを歓迎する」と発
言した。また、アメリカとの関係については、新政権と協力する用意があり、対等および互恵を原則と
し両国の関係を正常化し、発展させていくことが重要であるとした1。
【上写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/53379/photos/46451 ttp://kremlin.ru/events/president/news/53379/photos/46460 】
1
Kremlin.ru,2016/12/01
–1–
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
・
12月23日、プーチン大統領は、国内外の記者を集めて年末恒例の記者会見を開いた。以下、主な
発言2。
<経済>
 GDP 成長率は 0.5~0.6%のマイナス。11 月は若干のプラスとなる見込み。
 インフレ率は 5.7~5.8%との予測であったが、約 5.5%となる見込みであり、記録的な低レベル。
 ロシアの鉱工業生産は前年比 0.7~0.9%増となる見込み。
 農業生産は最低でも前年比 4%増となる見込み。穀物収穫高は 1 億 1,900 万トンを超えた。2017
年の農業セクターに対する国の支援は 2,160 億ルーブル(2016 年は 2,150 億ルーブル)。農業
機械生産は国の支援をあてにすべきではない。農業セクターがより高い収益を得れば、農業機
械に対する需要が生まれ、結果支援を受けたのと同じことになるからだ。
 IT セクターは大きな遅れを取っている。手早く多額の収入が得られるセクターがある場合、実業
界に対し他のセクターに投資するよう強制するのは難しい。ただし、IT 技術の輸出は、数年前は
実質ゼロであったが現在の輸出高は 70 億ドル。
 ロシアからの資本流出額は、昨年の 570 億ドルから 160~170 億ドルに減少。この結果に満足。
 実質可処分所得の減少が問題。消費者需要を低下させ、最終的に投資に影響を及ぼすことにな
る。しかし、ここ数ヶ月、実体経済における実質賃金の減少は限定的であり、ポジティブなムード
に変わりつつある。
 人口の増加傾向は維持されている。出生率は若干低下しているが、死亡率が減少し、全体として
自然人口増加には前向きな動きが見られる。
<財政>
 財政赤字は GDP 比 3.7%。ロシアは、700 億ドル以上の貿易黒字を維持しており、許容範囲。
 2 つの基金も維持されている。予備基金は減少したが、国民福祉基金は手付かず。政府の基金
は 1,000 億ドルを維持。中銀の外貨準備は年初の 3,680 億ドルから 3,850 億ドルに増大した。
 原油増産凍結は全てに利益をもたらす。原油価格が 10 ドル上昇すれば、税収は 1 兆 7,500 億
ルーブル増え、石油企業の利益は 7,500 億ルーブル増となる。
2
現地報道,2016/12/23-24
–2–
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
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 2015 年は歳出の 2.7%、2016 年は 4.7%が国防費であった。今後の予算削減の大部分は国防費
からであり、2017 年は歳出の 3.3%、2018 年は 2.7%にまで縮小される。過去5 年間、多くの国防
費を費やしており、歳出削減は防衛力強化計画に影響を及ぼさない。
<外交>
(米国)
 トランプ次期政権との商業的・建設的な関係を望んでおり、トランプ次期大統領が招待してくれ
るならば、米国を訪問する。
(EU)
 ロシアは欧州との関係悪化を主導していない。また、ドイツを含む欧州諸国に対し、何ら制裁を
導入していない。我々はロシア経済に対する規制の導入を行ったのみ。ロシアの農民は望ん
でいないが、西側が対露制裁を解除するのであれば、我々も快く規制を解除する。ロシアに必
要なのは協力的なパートナーであり、欧州との関係拡大に力を傾ける。
(中国)
 国際舞台の多くの問題で中国と我々の立場は共通している。
(ウクライナ)
 ウクライナとの関係がいつの日か改善することを期待している。ロシア・ウクライナ間の将来の商
業的・人道的な関係を発展させる為にもケルチ海峡大橋は重要である。また、ウクライナと欧州
間のビザなし渡航体制については支持する。欧州のビザ体制は時代錯誤的である。
(トルコ)
 2015 年11 月にシリアで空爆を行っていたロシア軍機をトルコが同政権の命令無く撃墜したとい
う説明を懐疑的に受け止めていたが、今回のカルロフ駐トルコ大使の暗殺を受け、その見解を
変えざるを得なくなった。
経済・財政
・
2016年12月19日付連邦法第415号「2017年度の連邦予算および2018~2019年の期間における計画
予算について」が成立した。当該法案は、同9日に下院、14日に上院での承認を経て、20日にプー
–3–
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チン大統領が署名した3。
2017~2019 年連邦予算
歳入
歳出
財政赤字
対 GDP 比
GDP
インフレ率
ウラル原油価格
ルーブルレート
(単位:10 億ルーブル)
2017
2018
2019
13,487,6
16,240.8
▲2,753.2
▲3.2%
86,806
4.0%
40USD
67.5USD
14,028.5
16,039.7
▲2,011.2
▲2.2%
92,296
4.0%
40USD
68.7USD
14,844.8
15,987
▲1,142.2
▲1.2%
98,86
4.0%
40USD
71.1USD
国営企業の民営化
【Rosneft】
・
12 月 7 日、Rosneft のセチン CEO は、同社の株式 19.5%をスイスの Glencore とカタールの政府系フ
ァンドの Qatar Investment Authority(カタール投資庁)のコンソーシアムに売却することで合意したと、
プーチン大統領に報告した。大統領は、油価の上昇基調のタイミングで首尾よく取引をまとめること
ができたとセチン氏を労い、結果に満足していると発言。また、今回の取引により多額の外貨が流入
することになる為、為替市場を混乱させないよう連邦政府、中銀および財務省と協議の上で段階的
にルーブルに転換することをセチン氏に求めた 4。
・
12 月 16 日、Rosneftegaz は、Rosneft 株式 19.5%の売却額である 7,108 億ルーブルを受領したことを
公表した。同日、財務省は上記金額が国庫に振り込まれたことを明らかにしている 5。
(2)対外関係
①ウクライナ
・
12 月 16 日、欧州連合(EU)は、ブリュッセルで開いた首脳会議で、分野別対露制裁を 2017 年7月ま
3
Kremlin.ru,2016/12/20
4
Kremlin.ru,2016/12/07
5
Prime,2016/12/16
–4–
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で 6 ヶ月間延長する方針で合意した 6。
・
12 月 20 日、米財務省は、対露制裁リストにロシア人 7 人とロシアやウクライナにある 8 企業・団体を
制裁対象に指定した 7。
②日本
・
2016 年 12 月 15 日~16 日、プーチン大統領が元首として 11 年振りに日本を訪問した。15 日には山
口県長門市にて日露首脳会談を行い、平和条約締結問題、安全保障、経済、人的交流、国際情勢
等について、5 時間近くに及ぶ協議が行われた。翌 16 日、東京にて「日露ビジネス対話」が開催。午
前中の会議では、「8 項目の協力プラン」に基づき、8 つのテーマで分科会が開催され、日露併せて
約 800 名が参加。午後には、経団連会館にて両首脳参加による全体会合が行われた。日露首脳会
談に合わせて、両国の政府・当局間で 12 件の文書、企業・団体間で 68 件の合意文書が締結された。
日本側の投融資額は約3,000億円と過去最大の規模となっている。企業間等が実施するプロジェクト
68 件の内、最多は「エネルギー」の 20 案件であり、これに続き、「極東の産業振興・輸出基地化」14
案件、「ロシア産業多様化・生産性向上」12 案件、「先端技術協力」11 案件、「健康寿命の伸長」5 案
件、「人的交流の抜本的拡大」3 案件、「快適・清潔で住みやすく、活動しやすい都市づくり」2 件、「中
小企業交流・協力の抜本的拡大」1 件となっている 8。
8 項目プラン「エネルギー」の調印プロジェクト
文書
日本側
ロシア側
ロシア周辺海域における炭化水素の共同での探査・開発および生産に係る協
JOGMEC,INPEX
力基本合意書
丸紅
2
東シベリア地域での共同探鉱事業・共同スタディの覚書
JOGMEC
INK
3
戦略的協力に関する覚書
三井物産
Gazprom
4
戦略的協業に関する覚書
三菱商事
Gazprom
5
協力合意書
METI
Gazprom
6
融資契約書(クラブローン)
1
6
Tass,2016/12/16
7
www.treasury.gov,2016/12/20
8
日本外務省他,2016/12/16
みずほ銀行
三井住友銀行
–5–
Rosneft
Gazprom
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7
融資契約書
JBIC
Yamal LNG
8
協業検討の協力覚書
三井物産
NOVATEK
9
協業検討に関する覚書
三菱商事
NOVATEK
10
新規 LNG プロジェクト開発、LNG・石油製品取引の協力覚書
丸紅
NOVATEK
11
製油所のオペレーションに係る技術協力センター新設に関する協力覚書
横河電気
Gazprom Neft
12
再生可能エネルギー源の開発分野の協力意向共同宣言
NEDO
13
風力発電事業および風車現地生産化に関する基本合意書
14
電力分野の共同事業推進に関する協力覚書
三井物産
ロシア極東地域でのプロジェクトのガスタービン発電機の更なる活用に関する合
川崎重工業
意書
双日
15
RusHydro
サハ共和国
駒井ハルテック
RusHydro
三井物産
RusHydro
RusHydro
川崎重工業
YATEK
双日
サハ共和国
エネルギー分野における更なる詳細調査に関する覚書
EY アドバイザリー
サハ共和国
18
サハリン州におけるマイクロ LNG プラント建設に関する FS 実施の覚書
日揮
サハリン州政府
19
サハリン州のガスマスタープラン作成に係る協力覚書
20
省エネ案件形成の協力に関する覚書の延長
16
エネルギー分野における協力合意書
17
三井物産
サハリン州政府
千代田化工
世界省エネルギー等
ロシアエネルギー
ビジネス推進協議会
局
(出典:Kremlin.ru,2016/12/16,各社プレスリリース)
2.石油ガス産業情勢
(1)原油・石油製品輸出税
・ 2016 年 12 月、原油輸出税は USD 12.4/bbl に微減、東シベリア及びカスピ海北部の油ガス田等に対
しては、引き続きゼロ課税となった。
・ 12 月の石油製品輸出税は USD 36.1/t、ガソリンについては USD 64.1/t に設定された。
<参考:原油及び石油製品輸出税の推移>
輸出税
原油(USD/t)
原油(USD/BBL)
減税特典原油(USD/t)
減税特典原油(USD/BBL)
2012 年
平均
404.3
2013 年
平均
392.2
55.4
53.7
199.2
27.3
190.1
26.0
–6–
2014 年
平均
366.1
50.2
2015 年
平均
120.3
16.5
2016 年
12 月
90.4
12.4
2016 年
平均
75.6
10.4
174.9
24.0
0
0
0
0
0
0
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石油製品(USD/t)
内、ガソリン(USD/t)
266.8
363.8
258.8
353.0
242.0
330.0
57.7
92.7
36.1
64.1
30.2
53.6
(出所:ロシア経済発展省)
(2)原油生産・輸出量
・ 12 月、原油、ガス・コンデンセート生産量は 4,740.2 万 t(約 3.5 億 bbl)で、前年同月比 3.7%増 9。
1~12 月の生産量は 5 億 4,750 万 t(約 40 億bbl)で、前年同期比 2.5%増 10。
・ 12 月、原油輸出量は 2,097.2 万 t(約 1.5 億 bbl)11。
1~12 月の原油輸出量 2 億 5,343 万 t(約 18.5 億bbl)12。
(3)天然ガス生産・輸出量
・ 12月、天然ガス生産量は663.8億㎥(約2.4TCF)。1~12月の生産量は6,400.1億㎥(約23TCF)で、前
年同期比0.7%増13。
(4)生産調整
・
12 月 10 日、ウィーンにおいて石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟国が閣僚会議を開き、15 年
ぶりに協調減産で合意した。ロシア、メキシコ、オマーン、アゼルバイジャンといった主要産油国を含
む OPEC 非加盟国全体で 2017 年 1 月からの半年間で日量 55 万 8,000 万バレル減産を実施するこ
とが決まった。OPEC は 11 月末の総会で、日量 120 万バレルの減産に合意しており、加盟国および
非加盟国の合計で日量180万バレルの減産となる見込みである。ノヴァク・エネルギー相は、「OPEC
との減産合意に基づいて、 ロシアは同国の原油の生産量を2016年10月の生産量である日量1,124
万 7,000 バレルから(30 万バレル減となる)1,094 万 7,000bbl にまで削減する予定である。2017 年第
1 四半期に日量約 20 万バレルの減産を実施し、4~5 月の時点での減産は日量 30 万バレルに達す
る見込み。来週、各石油会社と減産の詳細について話し合う予定である。石油会社の代表者を含む
9
Interfax,2017.01.03
10
Interfax, 2017.01.03
11
エネルギー省 HP
12
エネルギー省 HP
13
Interfax, 2017.01.03
–7–
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
監視委員会を設置することを検討しているが、目標を達成できなかったり、減産出来なかった会社に
罰則を加えることは想定していない。全ての(減産に向けた)合意は自主的なものであり、どのような
計画に基づいて減産するかは各社に任せる」と語った 14。
・
12 月 15 日付 Kommersant 紙は、ロシアの減産カルテルは任意だが、各社一律 2.7%減で、モニタリ
ングは2週間に1度実施されることになると伝えた。1月1日からのロシアの減産実施方式の具体像が
見え始めている。各社均等に 2.7%の減産を実施することになっているものの、エネルギー省には厳
格な減産割当を設定する予定はなく、石油会社間での合意に基づく問題の解決も容認される見込
みとなっている。モニタリングは2週間に1度実施され、その結果を踏まえ、各社の減産幅に関し、手
作業方式での調整が行われることになっている。減産の実施は任意だとされてはいるが、モニタリン
グには Transneft が提示する P/L システムへの各社の石油供給状況に関する速報値も利用されるこ
とになっているが、エネルギー省は Transneft の PL 経由での石油輸送に関する裁量権を有しており、
その点を利用して減産に応じない石油会社に対し制裁を科す可能性も考えられる。
3.ロシア石油ガス会社の主な動き
(1)Rosneft
・
12 月 13 日付プレスリリースで、Rosneft は地中海で最大とされる Zohr ガス田に関し、最大で 35%ま
での権益取得および同鉱床のオペレーター会社の 15%権益を取得することで合意したと伝えた。
同社の取締役会は、Zohr ガス田を含む Shorouk 鉱区の権益取得額を 11 億2,500 万ドルとして承認。
また、既往投資として Eni に 4 億 5,000 万ドルを支払う予定。Eni、Rosneft および BP 間の取引完了後
の Shoruk 鉱区の権益は、Eni:50%、Rosneft:35%、BP が最大で 15%となる可能性があるとのこと。
(2)Gazprom
・
12 月 6 日、Gazprom のゴルベフ副 CEO はロシアガスフォーラムにおいて、「政府による Gazprom に
対するガス採掘税引き上げ計画は、大規模な上流事業およびパイプライン建設などのインフラ関連
事業に投資する必要がある中、わが社の国内でのガス供給マージンをほぼゼロにしてしまう。この政
策によってわが社が破たんするわけではないが、ビジネスのやり方としては間違っている」と非難し
た。財務省は採掘税の引き上げにより、Gazprom より 2017 年は 1,700 億ルーブル、2018~2019 年は
14
Interfax,Vedomosti,2016/12/11-12
–8–
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
1,250 億~1,300 億ルーブルの新たな歳入を得る提案をしている。同社の 2016 年の第3 四半期の国
内の平均ガス供給価格は、3,831 ルーブル/1,000 ㎥ 15。
・
12 月 14 日付プレスリリースで、ウィーンにて Gazprom のミレル CEO と OMV の Zele 社長がアセット
スワップに関する法的拘束力のある合意書に調印したと伝えた。同合意書に基づき、Gazprom の保
有する Urengoi ガス田の Achimov 層準 Block4、5 の 24.98%と OMV Norge の権益 38.5%を交換す
ることになる。最終合意は年央と見られている。
写真左 Zele 社長、右ミレル CEO
Urengoi ガス田
【上写真出典:http://www.gazprom.ru/press/news/2016/december/article296184/】
・
12 月 19 日付プレスリリースにて、取締役会が 2017 年の投資プログラム、予算およびコスト削減プロ
グラムを承認したことを伝えた。2017 年に同社は、資本投資プロジェクトに 6,254 億 5,500 万ルーブ
ル、長期金融資産投資に 2,850 億 9,000 万ルーブル(前年比 65%増)、非流動資産の取得に 1,250
億ルーブルを投下する予定である。アナリストは、2017 年の投資増加の大半は、シベリアの力 P/L
の資金繰り、チャヤンダ゙ガス田の開発および Turkish Stream の建設開始と関連していると見ている。
借入は前年比 53.5%増の 2,882 億 6,000 万ルーブルとなる見込み。
(3)Gazprom Neft
・
Gazprom Neftl は、イランの国営企業 National Iranian Oil Company と Cheshmeh-Khosh 鉱床および
Changuleh(いずれもイランの西Ilam 地方に位置する陸上鉱床で 2017 年の入札対象 50 鉱床に含ま
15
Vedmosti,2016/12/06
–9–
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
れる)の開発で技術提案を行うことで MOU を締結した 16。
4. 東シベリア・極東・サハリン情勢
(1) 東シベリア
・
12 月 14 日付プレスリリースで、国際石油開発帝石株式会社は、イルクーツク州のザパドナ・ヤラクチ
ンスキー鉱区(ZY 鉱区)内の Ichyodinskoye 油田において、長期生産テストを実施した結果、商業的
生産に十分な原油埋蔵量を確認したため、開発・生産段階に移行すると伝えた。
伊藤忠と JOGMEC との共同事業会社(JASSOC)を通じて、ZY 鉱区、及びボルシェチルスキー鉱区の
探鉱作業に参画。イルクーツク石油(INK)が JASSOC と設立したオペレータ会社INK-Zapad の権益を
INK:JASSOC-51:49 で保有。
(2)サハリン
・ エネルギー省のモロツォフ次官は、「サハリン-2事業のLNGプラントの第3トレイン建設に係る投資決
定が2017年第1四半期に行われ、サハリン-1事業からのガス購入を巡る両事業のオペレーター間の
話し合いに決着がつくことを期待している」と発言した17。
サハリン-1事業で生産されるガスの商業化に関して、現在以下の4つの選択肢が検討されている。
 サハリン-2事業のLNGプラントの第3トレインに供給
 サハリン島に極東LNGプラントを建設し、ガスを供給
 ハバロフスク地方に極東LNGプラントを建設し、ガスを供給
 域内市場に向けて供給
5.新規 LNG・P/L 事業
(1) ESPO
・ Transneft のトカレフ社長は、2018 年から予定していた ESPO の中国支線での輸送量拡大が延期とな
る見込みであると述べた。「中国側は、中国の環境保護法が改正され、規制が厳しくなった、新しい
基準が導入された等、自分たちが中国領内での P/L の拡張を実施出来ない理由を大量に示した上
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IOD,2016/12/14
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Interfax,2016/12/06
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
で、拡張工事が間に合わないため、2018 年に規定された量の原油を P/L 経由で受取ることが出来
ない。コジミノ経由での受取を希望する」と伝えてきたと同氏は語った。Rosneft は中国 CNPC との 2
つの長期契約に基づき、中国向け支線経由で原油を中国に供給している。2009 年締結の契約では、
2011 年~2030 年まで毎年 1,500 万トンの原油を中国向け支線で供給することが規定されている。
2013 年には、25 年間でさらに総量 3 億6,500 万トンの原油を供給することで合意した。2 つ目の契約
では、中国向け支線の拡張テンポに合わせ、段階的に供給量を増やす取り決めとなっていた(2015
~2017 年の供給量は年間 500 万トン、2018 年からは同 1,500 万トン)。しかし、2014 年になり、中国
側はロシア側に対し、P/L 建設の規制強化等の理由により支線の拡張が遅れると通告した。その状
況を受け、2014 年 11 月に Rosneft と CNPC は、コジミノ港経由での輸出も契約に追加し、その他、ス
ワップ方式で、カザフスタン経由で年間 700 万トンの原油を中国に供給している。計画では、2016 年
の中国向け支線経由の供給量は 1,650万トンであり、2018 年には、3,000 万トンに拡大されることにな
っていた。中国側は、支線の拡張工事は 2018 年までに完了するが、追加原油を受け入れる予定の
製油所の増強が間に合わず、2018 年時点では、増加分の 350 万トンの受け入れが出来ないため、
コジミノ港での受取を希望しているとのこと。中国側は、2019 年からは増加分を中国支線で受けるこ
とを約束している模様。露エネルギー省によれば、露中間の政府間協定では、中国側が 2018 年以
降に中国支線経由での追加輸送を拒否しても罰則規定はないとのこと 18。
(2) Yamal LNG
・
NOVATEKは、プロジェクトカンパニーであるYamal LNG社が、伊と仏の輸出信用機関の保証で、伊
のインテッサ銀行から期間14年6ヶ月、7億5,000万ユーロの融資を得たことを公表した。金利は6ヶ月
EURIBORプラス2.5%19。
(3)Nord Stream 2
・
Nord Stream 2社は、「国際的な入札を通じて、Allseasと海洋区間のパイプ建設の請負契約の基本合
意書(Letter of Intent)に署名した。同基本合意書により、Allseasは同事業の1本目のパイプラインの
建設を請け負い、2本目のパイプラインの建設についても2017年第1四半期末までは、請け負うオプ
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Vedomosti,2016/12/19
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Kommersant,2016/12/12
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ションを与えられた」と説明した20。
以上
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Interfax,2016/12/09
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