V o l .2 1N o .1 1 3 March1 9 7 5 p p .1 4 7 1 4 8 1 2 .あ と が き 石川三郎* 1 2 . CONCLUDINGREMARKS By SaburoISHIKAWA 序文で述べられているように,中波帯放送波の伝搬特 ては,幸l として東一西コースによる結果が前述のように 性についての必要性は,極めて緊急を要する問題であっ 8 , 0 0 0 k mを超える距離まで得られ, 中緯度域において た。限られた時聞に所期の成果が挙げられた乙とは関係 は,伝搬路方位による距離特性の相違は殆んど見出す乙 各位の密接な協力による賜である。乙のととは計画の決 とができなかったととは大きな成果の一つであった。 定に当たって衆知を集め慎重に検討を重ねたととにより 次ぎに昼間時特性については,現存の CCIRテキス 達成されたものであり,特i と第 2編として「調査研究経 トに記載されている情報が極めて少なく,限られた距離 過の概要」を収録した次第である。 と周波数による結果ではあるが,昼間と夜間における強 「固定点測定」は長期間にわたるデータを解析したも 度差を知るととができた。これは,混信対策の一環とし 去に距離 ので,送信局の識別に苦労したが凡ゆる情報を2 ての送信電力の昼,夜切替という問題に対して一つの示 特性を算出した。南一北伝搬路の全周波数帯及び東一酋 唆を与えるものと恩われる。 伝搬路の5 0 0 k H z 帝を除いては遠距離局のデータが無く所 伝搬特性とは直接関係は無いが,電界強度の距離特性 期の目的を達成する上からみて甚だ残念な結果しか得ら を極めて効果的に求められる移動測定に使用した装置に れなかった。データ取得の目的が混信調査であったとと ついては,独特の考案がなされており,自動的に周波数 から止むを得ない乙とであったが,東一西伝搬路では を切替え一台の受信機を数台分に利用するものであって 5 , 5 0 0 k m附近のデータが取られており,乙のデータが, 省力化の問題と相倹って電界強度の測定法として非常に 後l と続く移動測定の結果と相{突って重要な役割を果した 参考となるものと思われるとと,及びこの装置の果たし ととはせめてもの慰めであった。 た役割を考えて敢えて収録した。 「移動測定」は短期間に距離特性を求める手段として 第 8編の「伝搬曲線についての考察」は,本誌第 3編 極めて効果的な方法であった。特に,諸特性の明確な一 ∼第 5編ζ l述べられているように,我が国周辺における 対の送・受信系の組合せという点で,索晴しいアイデア 中波帯放送波の夜間電界強度の距離特性がカイロ N/S であり, CCIRでも高く評価された測定法である。し 曲線とよく合う乙とに注目して考察したものであり,電 かし,船上観測という特殊条件,取りわけアンテナ構成 離層吸収は殆んど無いものと見倣している。電離層吸収 に及ぼす艦上諸装置の影響,艦の“ゆれ”による装置の について第 9編の「中波帯放送波の電離層吸収」で, 維持などの困難性l とー沫の不安が無いわけではなかった 種々の N-hプロフィルを与えたときの吸収量が計算さ が,関係各位の絶大な努力により悪条件を克服して見事 れており,その結果によると,静穏時プロフィルに対し な成果を得るととができた。特に東一酉コースでは, ては吸収量が極めて少なく,前記の仮定が中緯度域にお 8 , 0 0 肱皿にわたる測定値が得られたととは特筆に値す ける電離の高度分布が静穏状態では妥当である乙とが裏 る。一方南一北コースでは最速距離が約 3 , 0 0 0 k mであ 付けられていると思われる。眼を転じて, カイロ E/W り,遠距維伝搬における方位による依存性を云今すると 曲線の距離による急激な強度低下に対しては,じょう乱 いう点からみて,もの足らなさを感じる。しかし,カイ 時の N-hプロフィルに対する計算値から推測して,低 ロ曲線にあっては, E/W曲線の距離による強度低下量 下量は説明の付く範囲内にある乙とが示されている。 乙のような傾 上述のように,中波待放送波の伝搬特性は,地域l とよ 向が中緯度域においても生ずるか否かという問題に対し り異なり,特ζ l高緯度域,赤道域においては中緯度域と が N/S曲線に比べて大きくなっており, は大分異なった様相を呈している。従ってアジア地域で 場調査書事 国際技術研究室 1 4 7 1 4 8 得られた特性から,全世界的な特性を類推する乙とはで きない。そのため他の地域で得られている特性のうち, CCIRテキストに記載されている代表的な特性と,そ れら特性を取りまとめ, CCIRが全世界的に使用を勧 告している予測法を,参考のため第1 0 編と第1 1 編に紹介 電波研究所季報 しT こ 。 本特集号は,最近における中波帯放送波の伝搬特性に ついて,電波研究所における研究結果を網羅したもので あって,この方面に関心の持たれる方々に益する乙とが あれば幸いである。
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