ア イ ス ブ レ イ キ ン グ

ことで、ポートフォリオ
積)で計測して統合する
(発生頻度と損害強度の
一 条 件 下 で、 リ ス ク 量
保有期間と信頼水準を同
いる。これらの危険を、
フォリオとして保有して
持つ危険を自社のポート
社の場合、異なる特性を
軸が意識される。保険会
半年、1年といった時間
る。しかし同様に、リス
した役割を果たしてい
RMの枠組みの中で類似
っている。リスク量もE
実施することが可能とな
迅速に多様な意思決定を
とによって、経済主体が
という指標に着目するこ
一方で、われわれは価格
支障を来すこともある。
果、資源の効率な配分に
ーが課せられなかった結
れず、適切なペナルティ
味する。危険事情の変化
の視野を広げることを意
ない要素に対しても観察
捉は、短期的には変化し
要がある。不確実性の捕
自体の変化に着目する必
す危険事情(ハザード)
なく、それに影響を及ぼ
危険(ペリル)のみでは
損失の直接の原因となる
このように、時間軸が
長くなることによって、
になる。
は異なるシナリオも可能
って、過去のパターンと
確実性の要素の拡大によ
いる。この枠組みから各
を無意識のうちに持って
組み(フレームワーク)
われわれは判断や意思
決定を行う際、一定の枠
2)。
討 を 勧 め て い る( 図 表
加えた四つの防衛線の検
人といった外部の目線も
め、監督当局や外部監査
れない可能性もあるた
本来の機能が十分発揮さ
閉じた防衛線では、その
一つのグループ、会社に
SI)のレポートでは、
る。金融安定研究所(F
て定着した枠組みであ
会社のガバナンスにとっ
リスクの専門家として、
統的なCROの機能は、
やや極論ではあるが、伝
れるようになっている。
合管理機能が強く意識さ
の中で戦略とリスクの統
するにつれ、ERM体系
クテイクの考え方が定着
ーンの源泉としてのリス
には不可欠である。リタ
付与は、適切な機能発揮
ィットした新たな機能の
らない。新たな環境にフ
機能も変わらなければな
リスク・オフィサー)の
伴い、CRO(チーフ・
ルの中で重要性を増すに
経営環境に不確実性が
増し、ERMが経営ツー
なる。
る必要がある。リスクガ
対応し得る組織を構築す
では、不確実性に的確に
い。つまり、動態的環境
を意識しなければならな
不確実性に対応できるか
するには、いかに適切に
シフトする中で戦略設定
前提となるパラダイムが
な言葉であるが、戦略の
ャンドラー(注)の有名
組織は「戦略に従う」
とは、アルフレッド・チ
ならない。
い補強していかなければ
は、戦略前提の変化に伴
に、 ガ バ ナ ン ス の 強 化
る必要がある。このよう
しての機能を強く意識す
テジスト、カタリストと
理の視点からは、図表3
よって新たな不確実性が
きた。今後の環境変化に
から、多面的に検証して
いった基礎要素の切り口
グローバリゼーションと
不確実性・資本・戦略・
という時間の切り口と、
Mを、過去・現在・未来
マとしてきた。保険ER
保険会社のERMをテー
することを業としている
様な危険を引き受け管理
の企業活動として最も多
において市場経済におけ
化
移動できることから、左
る「価格」に似た役割を
文
右方向に導線が広がる。
果たしている。しかし、
が長くなればなるほど、
ン
このように、西洋とは違
変動性は拡大する。それ
後藤 茂之
う空間認識(フレームの
価格が市場経済で行われ
は、ランダムなシナリオ
源
人は意思決定におい
て、一定の枠組み(フレ
違い)があるという。
る行為の全ての結果を完
の可能性が拡大するから
ショ
ームワーク)を自分の脳
全に組み込んでいないた
資
制構築と、その実効性と
に持っているといわれて
め、 常 に 外 部 性 が 存 在
見
全体のリスク量を把握
ク量に反映されていない
を把握するための広い視
種情報を選択する。枠組
健全性の観点におけるリ
バナンスの強化、リスク
われわれの意思決定に
おける時間軸も、一つの
知
画はフラットだといわれ
し、資本の十分性を確認
不確実性については、特
点、長い視点、深い視点
みが変われば、現実の判
スク管理の運営責任者と
フレームワークを構成し
ケー
は別の問題である。リス
いる。ただ、このフレー
ュニ
クカルチャーと連動する
ムワークは、なかなか形
り込んでいくことができ
将来の変化を競争力に取
上し続けられる組織が、
り、ERMの実効性を向
化が、今後さらに加速化
ろう。保険ERMの高度
る挑戦が続いていくであ
不確実性をリスクに変え
そして、保険会社には、
されることを祈念して、
(おわり)
本シリーズを終了した
い。
◇
( 注 ) ア ル フ レ ッ ド・
D・ チ ャ ン ド ラ ー .
管理する枠組みがERM
の二つの機能を統合して
ク管理の実務である。こ
企業の戦略であり、リス
択を追求する。それが、
来を予測し、合理的な選
会を管理するために、将
益機会を追求し、損失機
ものではありません)
であり、所属する組織の
(文中の意見に当たる
部分は執筆者個人のもの
は1962年)
ダイヤモンド社、(原文
賀裕子訳、2004年、
『組織は戦略に従う』有
る働き掛けといえる。収
は、不確実な将来に対す
将来はランダムで、不
確 実 で あ る。 企 業 活 動
おわりに
る。
に示したように、ストラ
る。日本画には、遠近法
している。
別な意識が必要である。
のモニタリングが必要と
断や意思決定は異なるも
しての性格が強かった。
でてくることであろう。
回(最終回)》
のように中心がないの
また、たとえ安定的に
計測されたリスクであっ
のになろう。広い視点、
カルチャーの浸透によ
三つの防衛線は、保険
ール
コミ
保険E R M 基 礎 講 座 《 第
連載
で、左右方向には自由に
「リスク量」という指
標は、リスク管理の世界
ても、意思決定の時間軸
なる。
長い視点、深い視点を捉
しかし、動態的リスク管
である。また同時に、不
3. ガ バ ナ ン ス
の強化
えられる枠組みが必要と
し、それが価格に反映さ
動
行
トロ
コン
(出典:Deloitte Center for Financial Services 2015年8月 Strategic risk management in insurance )
ている。実際に、リスク
長
成
リスク
機能
アイスブレイキング (その4)
からである。つまり、組
に表せないものであり、
アプローチや戦略に関して
商品、価格設定、運用の各
部門を積極的に関与させる
ことを含め、リスク重視の
文化を確立・維持する。
画
カタリスト
リスクリミットを成長目標
に関連付け、全社的投資に
対するリスク調整後資本の
アプローチを支持し、リス
ク軽減と資本のソリュー
ションに対する創造的なア
プローチを維持する。
計
ストラテジスト
に対して具体的な処理を
検討する場合、特定の時
図表3 リスクアペタイト・フレームワークにおける戦略的思考の
強化に必要な役割
有限責任監査法人トーマツ
織の各レイヤーごとのリ
普段意識することは少な
(出典:金融安定研究所 (FSI)(2015) The four lines of defence model for financial institutions )
ディレクター スクカルチャー(リスク
い。例えば、絵画のよう
間軸を想定している。そ
ファイナンス
たリスクに対する組織活
センス、リテラシー、コ
に画家の視覚的枠組みが
の事業の特性によっても
リスク統制
動の好循環(図表1)を
ミュニケーション、コン
形になって現れると、わ
第四の防衛線
モデルバリデーションなど
大きく影響を受けるが、
企業活動の成果は、四半
監査当局
上級役員
1. 動 態 的 リ ス
ク管理
ダクト)が浸透していな
れわれはあらためてその
ガバナンス体制 / 取締役会 / 監査委員会
実現することは難しい。
ければ、創発型の戦略を
違いを確認できることが
図表2 四つの防衛線モデル
今日のERM体系は、
経営環境の変化を捕捉し
誘発して、当初の戦略を
期に1度は財務諸表とし
<組織の各レイヤーにおける機能の発揮>
2. 時 間 軸 と 不
確実性
修正し、リスク処理(リ
ある。西洋絵画の遠近法
て公表される。3カ月、
RM関連パネルに参
加。現職にて、ERM
高度化関連コンサルに
従事。
大阪大学経済学部卒
業、コロンビア大学ビ
ジネススクール日本経
済経営研究所・客員研
組織の各レイヤーのリスクカルチャー
(リスクセンス、リテラシー、コミュニケーション、コンダクト)の浸透
得る仕組みを備えてい
スク制御、リスク財務)
と違い、日本の伝統的絵
ペタイト・フレームワ
環境変化 → ハザードの変化 → 保険危険の変化
る。しかし、ERMの体
の実効性を高めるといっ
保険交渉、合併・経営
統合に伴う経営管理体
制 の 構 築、 海 外 M &
A、 保 険 E R M の 構
ーク、ORSAプロセ
経営
といえる。
本シリーズでは、現在
◆この連載は今回で終
了します。
Jr
再保険、ヘッジ、資産負債
管理および資本管理プログ
ラムの執行に関する、部分
的・全体的な説明責任を含
め、継続的なリスク測定・
報告を監督する。
リスクの定義、尺度、哲学、
選好度、限度、アプローチ
などのリスクフレームワー
クを管理し、内外のステー
クホルダーとの意思疎通を
図る。
築、グループ内部モデ
【後藤茂之氏プロフィ
究員、中央大学大学院
総合政策研究科博士課
程修了。博士(総合政
取締役会
第三の防衛線:
内部監査機能として
独立性の確保
33
策)。
第二の防衛線:
リスクのモニタリング
外部
監査人
第一の防衛線:
リスクの責任者であり
管理者
コンプライアンス
運営者
世話役
ルの高度化、リスクア
ル】
S、Geneva A
ssociatio
ス整備に従事。IAI
て、企画部長、リスク
n、EAICなどのE
業務管理部門
→ 創造型戦略の取り込み → 戦略の修正と資本政策の実施
→ 新たなリスク、リスクの変化に対するモニタリングと健全性
の確保(リスク制御、リスク財務の方針立案)
→ リスクに対する適切なコンダクト(リスク制御、リスク財務の
実践)
企画部門
リスク管理部門
内部統制
ミドルオフィス
内部統制
手段
マネジメント
コントロール
大手損害保険会社お
よび保険持ち株会社に
管理部長を歴任。日米
図表1 リスクカルチャーの浸透と ERM 実効性の向上
2 0 1 7 年(平成 2 9 年)1 月 2 6 日(木曜日) ( 4 )
(第 3 種郵便物認可)