Press R elease 東京都市大学環境学部 枝廣淳子研究室 2017 年1月 31 日 9割の人が知らない「アニマルウェルフェア」 ~消費者の意識と行動が企業の動物福祉の取り組みを変える~ 東京都市大学環境学部枝廣淳子研究室(横浜市都筑区)は本日、 「アニマルウェルフェアに関する意識と取り組 み」プロジェクトの結果を公表しました。 このプロジェクトは、欧米で取り組みが進んでいる「アニマルウェルフェア」(動物福祉:動物が意識あ る存在であることを理解し、たとえ短い一生であっても、動物の生態・欲求を妨げることのない環境で、 適正に扱うこと)の考え方について、一般の人々の認知度や企業の取り組みの現状を調査するものです。 図1 あなたは、「アニマルウェルフェア 1.一般の人々の認知度に関する調査結果 *本意識調査は 2016 年 12 月 16 日(金)~2016 年 12 月 19 日(月)にインターネット 調査法を用い、株式会社マクロミルのモニター323 人を対象に行いました(年代、性 別および大都市/中小都市・地方の割合は国勢調査の日本人口比に合わせていま す)。 (動物福祉)」という⾔葉を聞いたことがあ りますか?(N=323) 意味を 知っている 0.3% 聞いたこと はある 11.1% ■ 9割近い人は「アニマルウェルフェア」という言葉を聞い たことがない(図1) まず、一般の人々にアニマルウェルフェアという言葉を聞いたこ 初めて とがあるかを尋ねたところ、意味を知っていた人は 323 人中1 聞いた 人しかいませんでした。9割近い人は「アニマルウェルフェア 88.6% という言葉を聞いたことがない」のが日本の現状であることがわ かりました。 図2 あなたは、⽇本では、⾁⽤豚を産むために飼育さ ■ 約9割の人は多くの母豚が飼育されている環 れている⺟豚の多くはどのような環境で飼育されている 境を認識していない(図2) と思いますか?(N=323) 野⽣環境に 日本で肉用豚を産むために飼育されている母豚の多 柵に囲まれ 近い⾃然の くは、 「妊娠ストール」と呼ばれる屋内の幅 60cm、長さ た屋外の牧 中 わからない 2m ほどの母豚とほぼ同じ大きさのオリの中で飼育さ 場で⾃由に 7.1% 26.9% 動ける環境 れており、身体の向きを変えることもできません。 その他 6.5% 0.0% 屋内の飼養 母豚の飼育環境について尋ねたところ、正しい選択 屋内の幅60 場で⾃由に センチ・⻑さ2 肢を選んだ回答者は約 13%のみで、約9割の人が母 動ける環境 メ ート ルほど 豚の飼育環境に関する認識がなく、また、約6割の回 18.9% の⾃分の体 答者は、母豚はもっと広い飼育環境で飼われていると と同じほど 考えていました(図2の赤字) 。 (体の向きは 変えられな い)のオリの 中 13.3% 1 屋内の2メー トル四⽅ほど のオリの中 27.2% 2.企業に対するアンケート調査結果 一般の人々を対象とした意識調査とは別に、食肉や卵を扱う 48 の企業や組織を対象にアンケート調査を 実施しました。その結果、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会、西洋フード・コンパスグループ株式会社、 株式会社大地を守る会、パルシステム生活協同組合連合会など 48 組織中 12 組織から回答を得ることができ ました(回収率は 25%) 。 「担当者がいない」 「対応を検討しはじめた段階」 「取引先との関係があるので難しい」などの理由から回答し ないまたは社名を公表しないとした企業も多くあり、アニマルウェルフェアが企業にとって、対応が難しい 問題であることがわかりました。 回答数は少ないものの、 アンケート結果から以下のような傾向が見られました。 アニマルウェルフェアを「事業に関わる課題として認識しているか」という質問に対しては、10 社(83.3%) が「認識している」と回答しており(図3) 、アニマルウェルフェアを事業上の課題として認識している企業が多 いことがわかります。しかし、ガイドラインなどを公表している企業は2社(16.7%)に留まり(図4) 、 具体的な対応や取り組みには至っていない企業が多いことがわかりました。 図4 家畜のアニマルウェルフェアに関する包括的な指 図3 家畜のアニマルウェルフェア(動物福祉)を事業に 針、ガイドライン、⾏動計画等などを公表していますか 関わる課題として認識していますか(N=12) (N=12) 公表してい 認識してい る(2社) ない(2社) 16.7% 16.7% 認識してい る(10社) 公表してい 83.3% ない(10社) 83% また、自由回答には、 「特に取り組みは行っていないが、消費者も理解・必要性を感じていない」 「日本 国内の市場はまだまだ無関心で、商業ベースには乗らないため、現状では目標・ターゲットを設定する ことは不要」といった声が挙がりました。 先の一般の人々向けの意識調査では、アニマルウェルフェアの考え方を説明した上で、 「日本の畜産業界もアニ マルウェルフェアを重視する方向に変えていくべきだと思うか」を尋ねたところ、 「思う」 「どちらかといえば思 う」との回答者をあわせると約6割に達しています。 これらのことから、行政や企業・NGO などからの働きかけによって消費者の意識や理解を広げ、そうし た消費者の声や行動を通して、企業のアニマルウェルフェアの取り組みを進めていくことが必要である と考えられます。 調査で例として挙げた母豚の妊娠ストールは、EU ではすでに使用が禁止されており、世界の大手食肉会社も自 主的に使用禁止を打ち出しています。東京オリンピック・パラリンピックでの食材の調達基準への反映も 含め、日本での取り組みが加速度的に進むことを期待しています。 企業へのアンケート調査についての詳細は、枝廣研究室のウェブサイトをご覧ください。 http://www.yc.tcu.ac.jp/~edahiro-web/ 【本リリースに関するお問い合わせ】 東京都市大学環境学部 枝廣淳子研究室 URL:http://www.yc.tcu.ac.jp/~edahiro-web/ E-mail:[email protected] <調査協力> 2
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