三菱重工技報 Vol.54 No.1 (2017) M‐FET 特集 会 社 紹 介 62 エンジン,ターボチャージャの効率的な一体開発を加速する エンジン・ターボチャージャ開発センター Engine & Turbo Charger Development Center to Speed-up Efficient and Interactive Development 三 菱 重 工 エンジン&ターボチャージャ 株式会社 エンジン・エナジー事 業 部 技 術 部 三菱重工エンジン&ターボチャージャ(株)(以下,MHIET)は,2016 年7月に,三菱重工フォ ークリフト&エンジン・ターボホールディングス(株)(以下,M-FET)傘下のエンジンとターボチャ ージャを扱う三菱重工業(株)(以下,MHI)の独自経営会社として発足した。同時に,MHIET の エンジン技術・ターボチャージャ技術,M-FET 傘下のユニキャリア(株)(以下,UC)が持つガソリ ンエンジン技術,さらには MHI の研究部門である総合研究所の技術,以上4つの技術の全てを 統合するバーチャル組織としてエンジン・ターボチャージャ開発センターを設立した。 |1. エンジン・ターボチャージャ開発センター設立の背景 2016 年7月にMHIET は,M-FET 傘下のディーゼルエンジン,ガスエンジン及びターボチャージ ャを扱う MHI の独自経営会社として設立した。一方,MHIET より一足早い 2016 年3月に設立した M-FET にはガソリンエンジン・LPG ガスエンジンを扱うグローバルコンポーネントテクノロジー(株) (以下,GCT)が,また,MHI には内燃機関を扱う研究部門を有する総合研究所が存在する。2016 年7月の MHIET の発足に合わせ,バーチャル組織ではあるが,以上4つの技術の全てを統合し, 効率的な一体開発を加速するエンジン・ターボチャージャ開発センターを設立した。 |2. エンジン・ターボチャージャ開発センターの組織 本稿では,エンジン・ターボチャージャ開発センターを構成する各部門の組織について紹介す る。 (1) MHIET MHIET は,エンジン・エナジー事業部とターボ事業部の2つの事業部から成り立っている。 エンジン・エナジー事業部は約7~5750kW の出力ラインナップを有するディーゼルエンジン・ ガスエンジン及びガソリンエンジンの開発・製造・販売,ターボ事業部は自動車用エンジン及び 産業用エンジン向けのターボチャージャの開発・製造・販売,をそれぞれ行っている。図1に製 品ラインアップを示す。 (2) GCT M-FET 傘下の物流機器部門であるUCはフォークリフトのような産業車両,トランスファーク レーンのような特殊車両,スキッドステアローダのような建設車両の開発・製造・販売を行ってい る。更にUCの傘下であるGCTは,約 64kW までのガソリンエンジン,LPG エンジン,ディーゼ ルエンジンの開発・製造・販売を行っている。図2に UC と GCT の製品一例を示す。 (3) MHI 総合研究所 総合研究所は,技術分野毎の 10 の研究部からなり,急速に変化する社会のニーズをいち早 くとらえ,これまで培ってきた MHI の豊富な技術力をもとに,次世代を担う新技術・新製品の開 三菱重工技報 Vol.54 No.1 (2017) 63 発に取組んでいる。研究部を横断したプロジェクトチームであるエンジンシステムセンターは, 製品開発を受け持つ MHIET との緊密な連携のもと,現製品の競争力を高める技術支援や,次 期製品の開発支援,さらに将来エンジンに向けたキー技術開発を行っている。また研究開発 に加え,独自の技術や科学的アプローチを活用し,営業,設計,資材,製造,サービスなども のづくり全体の支援も行っている。 図1 MHIET の製品ラインナップの一例 図2 UC 及び GCT の製品の一例 (4) エンジン・ターボチャージャ開発センター M-FET と MHIET の設立により,ディーゼルエンジン・ガスエンジン及びガソリンエンジンの開 発と,そこに搭載するターボチャージャの開発が同一組織内で可能となった。このため,以上4 つの技術の全てを統括したバーチャル組織として,エンジン・ターボチャージャ開発センターを 設立した。図3にエンジン・ターボチャージャ開発センターの組織概要を示す。 図3 エンジン・ターボチャージャ開発センターの組織概要 三菱重工技報 Vol.54 No.1 (2017) 64 |3. エンジン・ターボチャージャ開発センターの効果 エンジン・ターボチャージャ開発センターの設立により,幅広い出力範囲を有しディーゼルエン ジン・ガスエンジンに強い MHIET エンジン,世界トップクラスの性能を有する MHIET ターボチャ ージャ,フォークリフト向けガソリンエンジン・LPG エンジンに強い GCT エンジン,要素技術に強い MHI 総合研究所の4つの強みを同時に持つことが可能になり,4つの技術を合わせることによるシ ナジー効果により,開発リソースの最適配分に伴う集中による開発加速,お互いの得意分野技術 の補完による性能向上を代表とする商品力向上,新たな技術ニーズの早期創出等を図り,エンジ ン・エナジー事業,ターボ事業とも,事業拡大を速やかに行うことが期待される。図4に,4つの製 品技術が統合したことによるシナジー効果のイメージを示す。 図4 エンジン・ターボチャージャ開発センターのシナジー効果 |4. 今後の展開 今回の MHIET の設立により,エンジン・ターボチャージャ開発センターが発足した。UC が持つ ガソリンエンジン技術,MHIET が持つディーゼルエンジン技術,ターボチャージャ技術,さらには MHIが持つ総合研究所の各専門分野の技術,とそれぞれの部門がそれぞれの強みとして持つ 技術を共有化することで,エンジン開発の加速,技術の水平展開が可能となる。今後は, 3D-CAD 他の設計ツールの統一化を含む開発手法の最適化,それぞれの部門が有する過去に 発生したトラブルを反映した不適合の再発未然防止データベースを構築することで,一層のシナ ジー効果を期待する事ができ,商品力のある魅力的なエンジンをお客様に提供する事ができる。
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