これからの定番? IoT用ARMマイコン誕生

緊急特集
第
1章
IoT 用 ARM マイコン Cortex-M23/M33 誕生
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これからの定番?
IoT 用 ARM マイコン誕生
新しい IoT 用 ARM マイコンが
定番になる(かもしれない)理由
● IoT が普及するには「セキュリティ」が重要
ARM 社は自社の技術を披露する ARM TechCon を
毎 年 開 催 し て い ま す.2016 年 の ARM TechCon は,
ARM 社がソフトバンクに買収された直後であり,新
たに ARM 社の会長に就任した孫 正義氏の基調講演に
注目が集まりました.この講演は IoT のターニング・
ポイントとして後年まで語り継がれるかもしれません.
孫氏の発言の内容は次の通りです(1).ARM 買収に
関しては口の重い孫氏ですが,セキュリティの重要性
は強調しています.
・センサという目を持った IoT デバイスは,近いう
ちにモバイル・デバイスの出荷量を超え,2035 年
までに累積で 1 兆個に到達する.
・IoT デバイスが増えていく中,性能や機能も重要
だが,最も重要になるのがセキュリティだ.
・
多数の IoT デバイスがネットワークに接続してい
るとき,セキュリティが弱ければ,重大な問題を
引き起こすことになるため,大量の IoT デバイス
が普及するには,セキュリティが重要なポイント.
孫氏は 2016 年度の決算会見(21)でも,ARM のアー
キテクチャで特に評価するのが「セキュリティ」.「さ
まざまな日用品がインターネットに接続する『IoT』の
時代に向けて,ARM はセキュリティを一気に強化す
る.サイズや消費電力が小さいのに性能が上がり,セ
キュリティも強化される.ARM =安心.これから 2
次曲線で伸びていくと確信できた」とのことです.
ARMv8-M
ARMv7-M
セキュリティ機能
TrustZone
新しい
Cortex-M23
Cortex-M33
など
従来の
Cortex-M4
など
図 1 ざっくりした新しい ARMv8-M アーキテクチャのイメージ
IoT 用マイコン向けにセキュリティ機能 TrustZone を CPU コアに内蔵
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中森 章
● 大量の IoT デバイスを普及させるための
新しい ARM マイコン用コア
調査会社 IHS の南川 明氏は,かつてソフトバンク
社が Yahoo! BB を立ち上げるため,街頭で ADSL モデ
ムを無料配布したように,ARM コアを搭載した IoT
端末を(無料?)配布することで利用者の数を増やし,
IoT 普及を加速させるとともに,IT 業界の巨人である
Google 社や HP 社に先駆けて,サービス・ビジネスを
いち早く立ち上げることが今回の ARM 社買収目的で
はないかと言っています(2).
「大量の IoT デバイスを
普及」させることが ARM 買収の真意かもしれません.
「大量の IoT デバイスが普及」のためには,セキュリ
ティを重要視する ARM コアは必須です.ARM 社は,
今回紹介するセキュリティ機能内蔵の新しい CPU コ
ア Cortex-M23/M33(詳細は後述)を,今後グイグイ
推してくるのではないかと思われます.IoT 時代にお
いて,Cortex-M23/M33 とそのアーキテクチャである
ARMv8-M は必須の知識といえるかもしれません.
新しい IoT 用マイコン向け
ARMv8-M アーキテクチャ
● 一言でいうと…従来の Cortex-M(ARMv7-M)
にセキュリティ機能 TrustZone を追加
2016 年 の ARM TechCon で は,ARM 社 の CTO の
マイク・ミューラー氏が,セキュリティを重視する
ARMv8-M ア ー キ テ ク チ ャ を 実 装 す る Cortex-M23/
M33 を発表しました.次のような位置づけです.
・Cortex-M23:現状のCortex-M0+セキュリティ強化版
・Cortex-M33:現状のCortex-M4セキュリティ強化版
ARMv8-M ア ー キ テ ク チ ャ を 一 言 で い う と,
ARMv7-M に ARM 社 の セ キ ュ リ テ ィ 機 能 で あ る
TrustZone を追加したものです(図 1).
● ちょっと注意…従来の Cortex-A 用 TrustZone
とは別物
ただし,本来の TrustZone は,アプリケーション・
プロセッサである Cortex-A シリーズ向けに開発され
たものです.仮想化やセキュア・モニタといった「や
2017 年 3 月号