市民林業士 養成講座ニユース

市民林業士
養成講座ニユース
H28年度 NO.2
(主催)高槻市・大阪府森林組合・NPO 森のプラットフォーム高槻
1.7月20日 第2回講座内容
1)午前 「高槻の森林の現状」
講師 村田和彦主査 (高槻市)
高槻市の森林の概要や森林を取り巻く問題など
について講義を受けた。概要としては、高槻市の
森林は面積比で44%に達し、うち53%が人工
林である事などが示された。また、森林の健全な
育成のためには、間伐や枝打ちが必要なこと、こ
れらを適切に行うには所有者の理解と協力、さら
には林道等の基盤整備や施業の機械化・効率化が
必要となることを学んだ。
近年では、木材価格の低迷や林業者の高齢化、
山林境界の未確定などにより、森林施業やひいて
は森林の健全な育成が困難になっていること、そ
の中で森林ボランティアとも協働しながら、森づ
くりを進めていることなど学んだ。
2)午後 「高槻の森林視察」
講師 小柿正武
(森のプラットフォーム高槻)
マイクロバスにて林道萩谷岡山線を通り、高槻
の森林を視察。車窓より人工林と自然林の違いを
見学し、不法投棄の現状なども視察した。道中で
一時下車し、伐木後新たな植林がされていない天
然林の植生を見学した。
2.受講生の感想
・ 林道での説明を聞き、下草の有無や日光の差し具合だけでなく、枝の状況や木の太さのばら
つきなど、どのような手入れがされているかがわかるポイントが多くあることを教えて頂き、林を
見る目が少し変わりました。
・ 高槻の林道より、見た事のない風景を見せていただき感動しました。一見、緑のきれいな山林と
思っていましたが、下方を見れば枯れた枝が目につき残念に思いました。大げさなようですが、
森林を守るのは国土を守るに通じるのでは。
・ 講義と現場視察で、高槻の森林の現状が理解できました。ボランティアとして活躍できる場が多
くありそうです。
・ 現地視察を終えて人工林、杉、桧が手入れされていない現状を見ることが出来、次に受け継ぐ
難しさを感じました。
・ 美しい景色と反対に山のかかえる問題の多いこと、深刻なことにおどろきました。価値のある山
づくりをこれから考えてみたいです。
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H28年度 NO.3
(主催)高槻市・大阪府森林組合・NPO 森のプラットフォーム高槻
1. 8月4日 第3回講座内容
1) 午前 「森林作業の安全・ルール」
講師 伊藤尊視(森のプラットフォーム高槻)
「ご安全に」と言った挨拶で始まったこの講
座では、安全な伐木作業や森のきまり・マナー
を学んだ。概要としては、伐木作業に入る前に、
長袖長ズボン、ヘルメット等の安全な服装や作
業場所の足場と避難場所の確保に注意すること
が示された。また、
「受け口」
、
「追い口」
、
「つる」
を作り、伐倒木の方向を見極め、大きな声で周
囲に呼びかけること等、安全に作業を行う点での
作業方法を学んだ。最後に常に安全を確認してか
ら行動するという意味から、
「1/100 秒の安全意識
を持って作業するように。
」との言葉をいただいた。
2) 午後 「森のしくみ2」
講師 谷本五郎(森林インストラクター)
第1回講座の「森のしくみ1」に続いて、植物の
構造や種類、森林の役割について学んだ。概要と
しては、年輪の有無や、生存期間の長さ等で木と
草を見分け、
日本に生息している3種類の、
真竹、
孟宗竹、淡竹は直径や節の環の数で見分け、種類
によって食料品等の梱包や建築、
農漁業用資材と
して使い分けることを学んだ。
森林の役割につい
ては、71%が水不足や洪水を防ぐ「水源涵養」
であることを示された。
2.受講生の感想
・森林作業の講義は、今まで全く経験のないことなので、気を締めてかからねばと思いました。た
だ、あまり気負い過ぎると、かえってミスが起こりそうなので、注意しつつもお落ちつきを忘れな
いようにしたいと思います。
・谷本先生の話では、森が力を発揮できるよう適度に力を貸してあげることが大事という言葉が印
象的だった。
・山で作業をする際の安全について、あらためて気を引き締めるように思いました。普段の生活に
おいても1/100秒の安全意識を心掛けたいと思います。
・自然界の流れやしくみを改めて確認できた講義だったと思います。人間は、植物、生物がいな
ければ生きてゆけない弱い生き物だったのですね。
・「1/100秒の安全意識」の重要性を痛感しました。安易な気持ちではつとまりませんね。
・作業のやり方手順道具を使用する時の注意点を聞くほど大変だなと思う反面、それ程慎重にし
た方が良いことがわかりました。
・森は子供を育てるのと同様放りぱなしでも過保護すぎても良くないなあと感じました。自然のたく
ましさを尊重していきたいです。
・伊藤さんの山での作業、1/100秒の安全意識の重大さを、体験を元にして話されていたので、
本当に、おそろしさがわかります。
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養成講座ニユース
H28年度 NO.4
(主催)高槻市・大阪府森林組合・NPO 森のプラットフォーム高槻
2. 8月17日 第4回講座内容
1)午前 「森林作業入門(間伐等)
」
講師 高橋英夫
原田泰治 (大阪府森林組合)
<ミニ講座~森林ボランティアについて~>
昔は電柱や家具等の需要に応えるため、山主が
自ら山に入ったが、だんだんと減り、山が放置さ
れ、荒れていった。それを見かねた山好きの人が、
災害予防のため、森林ボランティアを始めた。
これが進むにつれ一部の山主は、
「山のものを持
ち帰るのが目的では?」
「逆に荒れるのでは?」と、
無知のボランティアが山に入ることを懸念した。
そのため、山の知識・技術を習得した、森林ボ
ランティアを養成するため、この市民林業士養成
講座が誕生した。
<実習の概要>
1本の木を切り倒し、枝葉を落とし、玉切りし、
枝を一箇所に集めることまでを一連の作業として
行うことを目標に実習が始まった。
講師が具体的に作業しながら手順の説明が行わ
れた。まずは、伐倒する木を決め、次いで樹高 1.5
倍の距離に他の作業者がいないか等、安全確認を
行った。次に、倒す方向から、受け口として伐根
直径 1/4 以上で 30 から 40 度の角度で、ノコギリ
により木を切り込む。
(右写真参考)
。最後に、受
け口の反対側から、追い口として水平に切ってい
く。やがて、木が倒れはじめるが、枝が他の木に
絡まり止る。切り口付近をロープで縛り、引っ張
り倒す。
(右写真参考)
。
この後、各班ごとに実際にノコギリを使い、1
本の木を切った。ノコギリを水平に引くことの難
しさや、倒木の際に木の陰に隠れることで安全性
が高まることなどを習った。また、講師からは、
この時期は木が水分を吸い上げているので切りに
くい事を教わった。
2)午後 「森林作業入門(間伐等)
」
作業を始めようとした頃、大粒の雨が降り始め
たため、全員下山し、バスに避難した。雨の中の
作業は危険なため、午後は中止となった。
2.受講生の感想
・のこぎりの引き方から、伐倒の時の受け口、追い口の位置、伐倒の方向のほか、周りへの注意の
仕方など、実際やってみてもなかなかわからないことだらけでした。頭がいっぱいになってし
まいそうな中、改めて1/100秒の安全意識を心に留めておかなければ、と思いました。
・経験の積み重ねが必要で、なかなかの力仕事。グループで取組む必要がある作業であることを
実感した。
・初実習、机上の知識を実務作業に実施するむずかしさを感じました。倒す方向に対し受け口の
水平と角度などに気を使いましたが、思うようには行きませんでした。
・思っていたよりしんどかった。明日は筋肉痛まちがいなし。しかし、面白かったです。今はこの林
業士の講座が一番の楽しみです。
・どこに鋸を入れるかなどやはり実地で学ぶと分りやすかったです。作業は少しでしたが、臨機応
変な対応が必要と思いました。
・実際にやってみると、ノコギリを水平にひく事が難しいと思いました。木の倒れる方向を見定めて
切ることの難しさを感じました。
・あこがれの実習で、大変楽しかったです。桧林の中に入るのも初めてだし、ましてやその木を切
るのも初めてです。すごく良い香りがしました。枝があるので、簡単に倒れないというのも実感
しました。
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H28年度 NO.5
(主催)高槻市・大阪府森林組合・NPO 森のプラットフォーム高槻
3. 9月14日 第5回講座内容
1)午前「天然林整備実習(間伐等)
」
講師 高橋英夫、原田泰治 (大阪府森林組合)
<実習の概要>
今回の実習は、二料地区において保安林に
指定されている天然林で行われた。
農林業体験の拠点である二料山荘で、ラジ
オ体操により体をほぐした後、急勾配の山林
に移動し、平地が広がる尾根で作業すること
となった。
現場では、まずは講師から作業の説明を受
けた。①天然林の整備の目的をもつこと。今
回の実習場所は『林地保全型』なので、土砂
流出防止、豊富な自然植生の回復、生物の多様性が目的である。②伐倒する木を決める時は、
形質不良木や株立ちの木(二股に分かれた木)
、本数密度が高い場所(集中して木が生えてい
る場所)の木とすること。③伐倒することで天然光が入ることをイメージして作業すること。
④本日の間伐の対象木は成長すると光を遮るソヨゴ・リョウブ・カシなどと今日はすること。
次いで、班ごとに別れ間伐作業を行った。人工林とは違い木が曲線で密集しているため、切
り倒す際に木がぶつかりどこに倒れるか
予想が困難であることから、声かけが重要
であることを学んだ。また、講師からは、
急勾配の場所では水平に切ることが困難
なため、谷側に目印として切込みを入れ、
それをガイドとして山側から切る事を教
わった。最終的には、概ね1人2本程度を
伐倒して、午前中の作業を終えた。
2)午後 「天然林整備実習(間伐等)
」
「高槻の樹木について」
「森林施業について」
雨が降り始めたため、午後の間伐整備は
中止となり、座学を行った。
まず、樹種を枝葉により見分ける方法に
ついて講義が行われた。例えば、葉の枚数
で見分ける方法では、5枚はコシアブラ、
3枚はタカノツメなど。枝葉では見た目の
区別がつきにくいため、味や香りも同時に
感じておくこと。季節によっては、花の形
が見分けやすいことを学んだ。
その後、森林観光センターに移動し、グループワークとして今後どのような活動を行って
いきたいかを、2グループに分かれて意見交換をした。その中では、以下のような意見が出
された。
①森のプラットフォーム高槻などのボランティア組織に加入して、交流の場を広げたい。
②受講前は知らなかった山の現状をたくさんの人に伝えていきたい。
③山に入って、木工をしたり山菜取りなどを楽しみたい。
4. 受講生の感想
・桧と違い、曲がった木や枝がからまった木を、斜面で切る難しさを実感しました。
・またもや雨に降られたが、天然林で初めて汗を流して林業作業の大変な事を実感できた。植物
の名前を知っていれば、一層作業が楽しくなる。
・除伐作業だったが、切るべき樹木の選定が少し難しかった。作業が終わった後に明るくなった
のは気持ちよかった。
・天然林は人工林とくらべて種類が多く見ていて楽しめました。木の名前、なかなか覚えられま
せん。
・今日は何の木を何本切ったかな。一番苦労したのがリョウブの木。忘れられない木でした。ま
た、木を見分けるには、葉、樹皮では無く花を見る。これで科を分ける。難しいです。
・天然木の種類も多く、ただの山だと何も考えないで見ていました。少しずつ覚えていきたいと
思います。
・硬木、軟木等、数種類の木を伐採し興味深かった。若木の成長を見るにつけ、太陽光の有難さ
を実感した。木の名前は聞いた端から忘れます。覚えるのが大変。
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H28年度 NO.6
(主催)高槻市・大阪府森林組合・NPO 森のプラットフォーム高槻
5. 9月21日 第6回講座内容
1)午前「府民協働の森づくり」
講師 高峰光一 (大阪府)
大阪府の森林の概況やボランティア活動
などについて講義を受けた。
大阪府の森林は県境に沿って北から北摂、
金剛生駒、和泉葛城の3山系が平野を取り巻
く形で分布している。森林の98%を民有林
が占め、そのうち9割が私有林。人工林率は
49%と、全国率41%を上回っている。
大阪府は森林扶養量(人口/森林面積 ha)
が東京都に次いで全国で2番目に多いこと、
東京都と比べると海から山までの距離が短く、都市近郊に自然が豊かという特徴がある。
大阪府でも放置森林の増加が大きな課題
である一方で、社会や森林保全に貢献した
い人々も増えている。そのため、森林ボラ
ンティア活動や、企業等が森づくりに参画
するアドプトフォレスト活動など、みどり
の保全や創出の取組む動きが少しづつ増
えている。
大阪府としては府域にみどりがあると
感じる府民の割合を増やし、最近みどりに
触れた府民の割合を増やしていく事が目
標である。
2)午後 「救急救命講習(心肺蘇生法実習)
」
講師 山口智鶴子 (三島救命救急センター)
林業士は怪我が隣り合わせであり、応急処置の仕方や心肺蘇生法の実習を行った。足に木
の枝などが刺さった場合、①水道水で傷口を洗う。②清潔なガーゼか布で保護する。③切り
傷から血が止まらない場合は、タオル等で傷口を直接圧迫する。
スズメ蜂などに刺された場合は、①針をピンセットで抜く。②毒のまわりを遅くするため
刺された箇所を流水で洗い冷やす。③洗いながら刺された箇所の周囲を強くつまみ、毒を絞
り出す。④口で毒を吸うことは、体に毒が入る可能性があるため避ける。
マムシに噛まれた場合は、①傷口の約5cm上部をタオル等で強くない程度で縛る。②傷
口から毒を吸いだす。③毒液で消毒する。④水分を多く取らせて血中毒素濃度を薄めること。
最後に、人形を使い全員で心肺蘇生法を実践した。倒れている人を見つけたときは、①声
をかけ、反応が無い場合は大声で周囲に協力
を求める。②救急車を呼び、AEDを持って
きてもらうよう周囲に依頼する。③心臓マッ
サージを行う。胸の(左よりでなく)真ん中
の胸骨を圧迫する。毎分100回以上で胸が
約4cm下がる力で押さえる。④AEDが到
着したら、スイッチをいれ、アナウンスどお
りに行動し、救急隊の到着を待つ。
6. 受講生の感想
・ AED の講習が聞けて良かったです。これから設置場所を気にかけて、何かあったときに対応出来
るようにしたいです。
・ 企業と森林所有者とのつながりで、アドプトフォレスト活動というのが高槻でこんなにもりあがってい
るのは初めて知りました。もっと広げていきたい活動だと思います。
・ 森林活動ボランティアのあり方にも多様性があると思いました。自分のできるボランティアへのかか
わり方をしていきたい。緊急のケガや病気の時、冷静に対処出来るか気になりました。AED の使い
方を学んで結構力がいるんだなあと思いました。
・応急手当の講義では、いざという時に冷静に対処できるかは、なかなか難しそうだと思いま
した。せめて、声をかける、助けを呼ぶなどはしっかりできるようにしたいです。
・講義の「府民協働の森づくり」では、アドプトフォレストの活動が興味深く感じた。
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H28年度 NO.7
(主催)高槻市・大阪府森林組合・NPO 森のプラットフォーム高槻
7. 10月12日 第7回講座内容
「人工林整備実習(間伐等)
」
講師 高橋英夫、原田泰治 (大阪府森林組合)
<森林の調査手法>
調査方法は毎木調査とプロット調査があ
る。毎木調査では山の全ての木を調査する
手法で、精密だが手間が掛かる。プロット
調査では一定区域(10m×10m)と複
数設定し、その区域内で調査し、全体に反
映させる手法で、
“標準的”な場所の選択
が重要となる。
<森林の健全性>
森林の成長力、林内に光が入りやすさ、
樹形の安定性などをあらわす「健全性」の調査を行うべく、樹冠長率と形状比を把握するこ
ととした。
・樹冠長率とは樹冠長(交差して葉がついて
いる長さ)÷樹高のこと。30%を切ると間伐
不十分で、目標は50%。大阪では河内長野の
森が目標に近い状態である。
・形状比とは樹高÷胸高直径(胸の高さの直
径)のこと。80を超えると災害に弱い山で、
70以下が望ましい。
なお、後述の間伐作業を行った結果、講師が
作業した区域では、樹冠長率は37%、形状比
は94であり、災害に弱い山と判断された。
<プロット調査と間伐作業の実践>
①調査区域を設定する。水平投影面積100 ㎡となるよう、10 m×10 mの区域をロ
ープで囲うが、傾斜があればロープを長くとる必要がある。今回の調査区域は斜度25度と
判断し、ロープの長さを11mとした。②囲いの中の立木数を数える。目視でカウントする
と正確に出来ない可能性があるため、ビニール紐を木に巻きつけながら数える。③間伐本数
について、ある区域では植生状況等から、全3
0本の木から6本を間伐することとした。全体
の3割以上の木を切ると、区域全体としての強
度が下がり、台風等により木が倒れるなど、災
害に弱い森になってしまうため注意すること。
また、間伐する木を決める際は、立木密度が高
い箇所や枯死木、樹幹長の短い木を選択するこ
と。④周囲の安全確認をして、倒す方向に受け
口をつくりノコギリで伐採する。
(細かな留意
点は、前回のニュースを参照。
)
8. 受講生の感想
・間伐のやり方を学び有意義だったが、まさしく「木を見て森を見ず」ではないが、間の抜けた選定をし
赤面の至り。全体をもう少し見ないと貴重な木を伐ってしまう。
・樹冠長率30%以下は災害に弱いとか樹高と直径の比率が80を超えると雪や風に弱い等勉強になり
ました。間伐も非常に面白かったです。
・晴天に恵まれ気持ちよく作業できた。斜面でずっとふんばっていたので足が痛い。雨の続いた後の
ためか、伐った木も重く感じた。森が明るくなったのを実感できたのもよかった。
・間伐対象の木の選定の目安、本数などを教えていただき参考になった。意外な重労働だったが、間
伐された木の樹間から見えた青空で疲れがいやされた。残った木が元気よく育つことを願って。
・初めて好天に恵まれた実習、楽しかったが、木の運び出しや太い木を伐るのは思った以上に体力を
奪われた。どういう状況でどういう安全に気を配らなければいけないか、経験しながら身につけた
い。
・太い木を倒すのも枝に引っかかり時間がかかり、木材出しをされた方は大変だっただろう思いました。
本当に力仕事だなあと感じました。15本、木を伐った位ではまだうっそうとした森でしかないと思いま
した。
・1本1本が15mを超えて大変重くて、6mに伐って下へ移動させるのも一苦労でした。でもよい経験が
出来ました。
市民林業士
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H28年度 NO.8
(主催)高槻市・大阪府森林組合・NPO 森のプラットフォーム高槻
9. 10月19日 第8回講座内容
1)午前「林業の現状と課題」
講師 栗本 修滋 (大阪植物観察会)
農業と林業についての講義が行われた。
日本の木材需要は約7500万 m3 / 年で、
そのうち国内生産量は約2300万 m3 と、自
給率は約30%にすぎない。日本の森林を活用
せず、輸入に頼っているのが現状である。
例えば、利用用途が類似している外国産ホワ
イトウッド集成柱と国内産スギ正角(乾燥材)
を比べると、後者のほうが安価なのに利用され
ていない。この理由は、①国内林業者が伐採を
控えている。②安定的な量の確保が困難である。③製材企業から山林の所有者への働きかけ
がなく、伝統的な木材の流通体系が破壊している、などの要因が考えられることが説明され
た。
この結果、人が山に入り手
入れをすることが少なくな
り、立木密度が高くなり、一
本一本が強く成長せず、森林
の衰弱につながっている。こ
れが、今の山の問題の一つで
ある。
2)午後 「森林資源の活用」
木材の基礎知識、木材の利用手法などについ
ての講義がおこなわれた。木は循環可能な資
源・環境であるとともに、以下のように人に優
しい素材である。
①健康で長生きできる木材。木の含有成分に
は血圧を下げたり、脈拍を落ち着かせたり、リ
ラックさせる効果がある。たとえば、代表的な
香木であるビバの木から抽出されるヒノキチ
オールは、リラックス効果がある。その結果、木材使用の多い老人施設と木材使用が少ない
施設を比較すると、インフルエンザや不眠など心身不調者は、前者が18.6%で後者が2
6.7%と、約7割の水準にとどまっている。また、マウス実験では、金属やコンクリート
の飼育箱と比べ、木製の生存率が高い。
②心地よさを感じる木材。太陽光には有害なものが含まれるため、人はサングラスで目を
保護するが、木材は紫外線を吸収し赤外線を反射するため、まぶしさを抑える効果がある。
また、音を適度に吸収し、音をまろやかにする。さらに、コンクリートに比べ、熱が伝導が
されにくい。
こういった様々な木の効用があるものの、現在日本では、建材としての使用は減少してい
る。日本の気候などを踏まえて、国内産の木材を使用し、長期的な視点で木材供給制を確保
することが、これからも重要である。
10. 受講生の感想
・ この講座を終了して市民林業士となった私たちにできる事、すべき事は何だろう考えさせられる一
日でした。林業が日本の産業をささえるくらいになれるのではないかと楽しい夢もいだきました。
・ 日本の林業の実態が統計資料等でよくわかりました。原木価格が年々下がる一方では公的支援の
みならずボランティアの力が必要とされていると思います。
・ 農業、山林で生計を維持しにくいため、離農・山林の放置が多く、対策が必要になっている現状が
分りました。木材の活用では、価値が低く評価されて、山林の維持が大変であると思いました。
・社会問題としてとらえた「農村・農業」、「林業」の話は、おもしろかった。「生業」として如何に採算面
で厳しいかが分かった。
・林業を林業として成り立たせる為には、行政の役割も大事だが、農業も同じく成功体験や夢を後継
者に伝えることが大事だと思った。
市民林業士
養成講座ニユース
H28年度 NO.9
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11. 11月2日 第9回講座内容
「竹林整備実習(間伐等)
」講師 高橋英夫、原田泰治 (大阪府森林組合)
<竹林の現状>
前回まで学んできた森林と同様に、竹林も
材が使われなくなり、管理されずに荒廃が進
んでいる。加えて、竹林は1日1m成長する
ほど成長力があり、竹林が周辺の土地に向か
って拡大し、他の植生に侵入している。
<竹林の分類>
状態によって竹林を4種類に分けている。
①管理竹林…竹材生産やタケノコの生産を
目的とし、栽培や管理がされている状態。
②放置竹林(竹やぶ)…長年にわたって人手が入らず、放置されている状態。
③拡大竹林…造林地や里山に竹が侵入し繁茂している状態。
④木竹混交林…隣接している林地に竹の侵入が進行している状態。
<竹やぶの健全化>
竹やぶに手を入れ、管理された竹林に戻すことを「健全化」と言う。枯竹や老齢竹などが
高密度で群生すると、若竹が伸びる場所が
なくなり成長が停止し、地下茎が衰弱・枯
死する。この状態が続くと浅根の竹林とな
り、土をしっかりと留めることができず、
土砂崩れなどの災害が起きる可能性が高
くなる。
そのため、竹やぶの健全化は、まずは枯
死していく竹を取り除き、若竹を育てるこ
とが重要となる。
<竹林整備の実践>
①伐竹の対象となる枯竹・老齢竹・倒状竹・不良竹を選び、カラースプレーやテープでマーキ
ングする。見分け方は、枯竹の場合は表面が黄変し、葉がついていないもの。竹の年齢を判
断する方法として、竹の根元にタケノコの皮が残っている場合は1年目と判断できる。また、
若い竹ほど表面に白いロウ質のものが付着しており、全体的に白くみえる。高齢になるほど、
表面のロウ質が消えて緑褐色に変化していく。
②地際から伐竹する。ただし、急斜面の場所では表土が流れる恐れがあるため、高めの位置で
伐竹する。重心の方向(倒したい方向)に受け口として切り目を入れ、反対側から切ってい
く。また、重心の方向とは逆に倒す場合は、ロープを使用し倒したい方向へ誘導する。今回
は隣に田んぼがあるため、ロープで倒す方向を調整する場面が多くあった。竹は木より簡単
に切れるが、縦の繊維が強く、途中で裂
けることがよくあるため、竹を掴んだり、
胸より上で切らないことなどの注意を講
師から受けた。
③切り倒した竹を枝払いし、約5mの長さ
に玉切りし、竹を棚のように積み上げる
「たな積み」を行う。危険防止のため、
筒状になっている切り口に手を添えて
運ばないよう、講師から指導を受けた。
12. 受講生の感想
・竹林は特有の危険と難しさがあるのが分かった。一画がきれいになった満足感があった。
・四回目、最後の実習、天候に恵まれ気持ちよく実習出来ました。竹の幹はサクサクと切れましたが、
枝の処理が大変でした。心地よい疲れを感じました。
・竹やぶを竹林にする意味を理解することが出来ました。今迄の実習のなかで一番つかれました。しか
し、明るくなった竹林を見て良かったと思いました。森林も竹林も適度な明るさは必要ですね!
・竹の伐採はとても楽しかった。竹も放置されると、人工林の放置と同様うっそうとしてうす暗くなってい
ました。杉や桧とちがい管が空洞なので作業がはかどった気がします。達成感を感じました。青竹を
正月に利用したいです。
・今日の放置竹やぶは、ちょっと手ごわかったです。今までに見た竹林の中でいちばん混みあってい
た気がします。それだけに作業後のたな積みの美しさには達成感を感じました。美しさはやっぱり大
切ですね。
・人工林や天然林とは異なる細かい配慮のいる竹やぶの間伐だった。特に樹木とは違う安全面の注意
が必要だと思った。
市民林業士
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H28年度 NO.10
(主催)高槻市・大阪府森林組合・NPO 森のプラットフォーム高槻
13. 11月16日 第10回講座内容
1)午前「ボランティアの任務」講師 小柿 正武(NPO森のプラットフォーム高槻)
<森林ボランティアの歴史>
造林は、植樹をして終了ではない。木と共に周囲の雑草も育ち、木に光や栄養が行き届き
にくくなるため、定期的に下草刈りをする必要がある。下草刈りは非常に手間のかかる作業
のため除草剤を活用していたが、自然環境や水源涵養の点から問題が多いとの考えから大学
教授が中心となって反対した。そして、全国の学生にボランティア活動を呼びかけ、197
4年の夏に大学生を中心とした人力による下草刈りを開始した。
このボランティア団体を草刈十字軍と呼び、数日間の合宿による除草活動は、学生たちの
環境保護などの意識を高め、森林ボランティアは全国各地へ波及した。2015年までに全
国から延べ4,210人が参加し1,864haの草刈を行ってきたが、若者の参加者も減
少したことから、2016年8月の活動で解散となった。
<森林ボランティアの現状>
我が国の森林ボランティア団体は平成9年の277団体が、平成21年には2,677団
体と急増しており、自然への憧れや回帰、環境保全の意識の高まりがうかがえる。主な構成
員は60歳以上であり、約半分を占めている。
森林ボランティアは怪我が付き物である。無理のない活動、家族の理解と協力を得ておくこ
とが大切である。
<ボランティア活動とは>
①一定の決まりはあるが、命令はない自由意志の場。
②金銭や報酬を目的としていない活動。
③活動自体や仲間との活動を楽しむ場。
④知識や経験を活かし視野が広がる人間的な成長の場。
⑤人や自然、文化との出会いの場。
⑥やってあげているといった独りよがりでなく、客観
的に社会的評価される活動。
2)午後「チェーンソーの体験」 講師 高橋 英夫(大阪府森林組合)
チェーンソーとは、チェーン状の鋭い刃が秒
速10m以上で回転する機械である。樹木等を
切断する際に便利な道具だが、使い方を間違え
ると致命的な事故を引き起こす危険な道具で
ある。そのため今回の講座では、安全操作方法
を中心に勉強した。
まず、装備品として、①ヘルメット②長靴③
丈夫で通気性のある手袋④防塵メガネ⑤耳栓
(イヤーマフ)⑥チェーンを絡めて止める特殊
繊維の安全ズボンを着用すること。
次に、講師がエンジン始動や、丸太の切断の注意点を説明しながら、実演をされた。エン
ジン始動時の注意点は①必ず平らな地面に置いて行うこと。②漏れた燃料への引火防止のた
めに、燃料を入れた場所から3m以上の距離が離れた場所で行うこと。
丸太切断時の注意点は①低回転で切ると抵抗を受けるため、常にフルスロットルで使用す
る。②チェーンソーは体の右側で持ち、腰より下で使用すること。③本体が回転し体に当た
る危険性があるため、チェーンソーの先端で切らない。
14. 受講生の感想
・これから先の林業で、ボランティアの存在が重要になるという事は、林業自体の危うさを感じる一方、
ある意味では我々のモチベーションになると思いました。
・ボランティア活動は、大きな志よりも何か社会の為になっているという満足感や達成感が大事かなと思
った。
・午前の部、ボランティアの概要、心構え等については、自分自身の取組み方の参考になった。午後の
部、チェーンソー体験はさわりの部分ではあったが、実感として良い体験ができた。
・ボランティアの歴史がかなり古い事におどろきました。電動のチェーンソーとは違いやはり馬力がある
のだなあと思いました。チェーンソーの取り扱いにおいての安全について学べて良かったです。
・チェーンソー体験は、説明を聞いている時は恐ろしい感じがしましたが、充分に気をつけて使用すれ
ばと思います。
・草刈十字軍の話を聞きましたが、これからは、私たちのようなボランティアが一歩進んだ活動を受け継
いで行ければいいと思いました。チェーンソーは小型のサイズのものもあると聞き、欲しくなってしま
いました。
・全国に森林ボランティアグループが数多くある事に先ず驚いたが、活動そのものにかなり制限がある
事に改善の余地がありそうだ。チェーンソーを初めて手にして大満足。是非使いこなせるレベルまで
学びたい。
市民林業士
養成講座ニユース
H28年度 NO.11
(主催)高槻市・大阪府森林組合・NPO 森のプラットフォーム高槻
15. 11月30日 第11回講座内容
1)午前「森林の文化」講師 谷本 五郎(森林インストラクター)
<文明の前に森林があり、文明の後に砂漠が残る>
西洋と日本の自然に対する思想を比べる。
西洋では森には悪魔が住むと恐れられ、森を切
り開き草原化した。そして、麦作りや放牧などの
自然を搾取する文化が盛んになり、大量の木材を
使用して都市を建設した。資源が少なくなると、
新たな土地へ移動しては、森林の破壊と都市の繁
栄を繰り返したことで、文化は発展したが森林は
なくなっていった。
一方で、日本では田の神・山の神など大自然は
神と考え、自然を破壊せず、季節にあった食材を搾取し、木を伐っては植えて養い続ける、自
然を循環させる文化が盛んとなった。その後、稲作文化が渡来し、大いに広まったが、牧畜文
化は普及しなかった。
しかし、明治以降はだんだんと西洋文化が中心となり、生活が便利になればそれでいいと自
然離れが始まり、森林が破壊され自然の荒廃が進行していった。
人口が爆発的に増加し、限られた地球資源でどのように分け合うのか。過去の歴史を反省し、
「人間中心」から「自然との共生」の思想へと変わり
始めており、森の文化の復活が必要とされている。そ
のためにも、森林ボランティアが求められる。
2)午後 閉校式(修了証書授与式)
無事に20名全員修了し、大阪府森林組合から修了
証書が授与されました。また、このうち19人が NPO
法人森のプラットフォームに新たに加入しました。