やってみよう!道徳授業

授業
やってみよう! 道徳
教材名:はしの うえの おおかみ
2-(2)
思いやり・親切
「児童を引きつける教材提示の提案」
武蔵村山市立第十小学校 増田 佳奈美
1.提案のポイント
(1)教材提示
パネルシアターで行った。夏季休業中を活
中央でペープサートによる教材提示を行いな
がらも話の進行に合わせて板書のできあがり
を想定して,一枚絵を順次貼っていった。
用し,時間をかけて作成した。どのように教
材提示をしたら,1年生が教材の世界に入っ
てくれるのか考え,その結果,黒板をパネル
2.指導案
(1)本時のねらい
シアターに模し,動物たちが動いているよう
意地悪ばかりしていたが,くまに優しくさ
に感じさせ,教材をより身近に感じて考えら
れたことから親切になるおおかみの気持ちの
れるよう工夫した。動物の動きに変化をもた
変化を考え,身近な人たちに温かい心で接
せるためペープサートにしたり,それをいく
し,親切にしようとする道徳的心情を育て
ぶん工夫しておおかみとくまのうでを動かせ
る。
るようにしたりした。児童にとって臨場感の
(2)展開(右ページ表)
ある教材提示を心がけた。(写真①,②)
(3)評価
(2)板書
板書の出来上がりを想定した教材提示(黒
板シアター)を心がけた。すなわち,黒板の
○うさぎを渡らせたときのおおかみの気持ち
に共感することができたか。 (中心発問)
○親切にすることのよさが実感できたか。
(展開後段)
3.板書(写真③)
4.児童の反応や授業者の感想
(1)児童の反応
教材提示では,教材の世界に入り込んでお
り,よく聞いていた。おおかみがくまの真似
写真①
をしてうさぎやたぬきたちを橋の向こうへ渡
してやる場面では,児童から「わぁ。」とい
う驚きと安どの声が聞かれた。
発問1や中心発問では,おおかみの気持ち
だけでなく,うさぎの気持ちを考える児童が
でてきた。おおかみに通せんぼされたうさぎ
の気持ちを「いやなきもち」や「かなしい」
と考え,発表する児童がいた。中心発問では
おおかみに渡らせてもらったうさぎの気持ち
写真②
を「やさしい」や「ありがとう」と考え,発
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♢指導上の留意点
主な発問と児童の心の動き
導 入
1 やさしくされた経験を話し合う。
導入 これまでに,人にやさしくされてよかったと
♦指導上の手立て
♢ねらいとする価値への方向付け
をする。
感じたことを発表しましょう。
2 教材「はしのうえのおおかみ」を読んで,話し合う。 ♦パネルシアターで教材提示を行
い,物語の世界に入り込めるよ
うにする。
発問1 うさぎを通せんぼするおおかみはどんな気持
♢弱いものが自分に従っておもし
ちだったでしょう。
ろいというおおかみの気持ちを
・ああ楽しい。
感じ取らせる。
・おれが王さまだ。
・おもしろいから,もっとやっちゃえ。
発問2 「わたしがもどります。」と言ったとき,おお
♦補助発問でうさぎたちの気持ち
にも触れさせるようにする。
♢自分より強そうなくまに会って
展 開
かみはどんな気持ちだったでしょうか。
あわてているおおかみの気持ち
・怖いなぁ。
を感じ取らせるようにする。
・くまには,通せんぼできないや。
・ぼくがどこう。
発問3 (中心発問) うさぎを渡らせたとき,おおかみ
はどんなことを思ったでしょう。
♢おおかみの心の変化を感じ取ら
せるようにする。
・くまさんみたいな人になりたいな。
・これから優しくなろう。
・これからもくまさんのように親切にしよう。
・今までうさぎさんたちに悪いことをしてしまった。
3 自分を振り返り,親切にできたときの気持ちを思い
出す。
発問4 (展開後段) みなさんも,くまやおおかみのよ
♦親切自慢ではなく,そのときの
うに人に親切にしてあげたことがありますね。親切に
気持ちを中心に話させるように
してあげたとき,どんな気持ちになりましたか。
し,親切にすることのよさを実
感できるようにする。
終 末
4 教師の説話を聞く。
♢親切にしてよかったことを話
す。
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写真③
表する児童もいた。親切にしたおおかみの気
一時間の中の授業で児童の道徳性を評価す
持ちだけでなく,親切にされたうさぎの気持
ることは困難であるが,授業の始めと終わり
ちを考えることで児童がより深く「親切」に
で,少しでも児童が自分の考えを深められた
ついて考えている様子がうかがえた。
かどうか,ワークシートや発言などで見取れ
(2)授業者の感想
るようにしたい。そのことを通して児童自身
教材提示では,ペープサートを動かしなが
が自分の意見を振り返ることができ,自らの
ら暗記した教材を語ることは初めての体験で
思いや考えについてさらに広げたり深めたり
それなりに大変だったが,そのかいあって児
する一助となる。また,教師自身も自分の授業
童はとても集中してお話の世界に入ってい
を振り返り,次の授業へ生かすことができる。
た。また,発問1での小さな動物にいじわる
をして楽しそうなおおかみの気持ちとは反対
(2)教材提示の準備をとことん行う
に,大きな動物と出会い怖がっているおおか
道徳の授業を参観していただいた際,たく
みの気持ちを聞く発問2では,児童から「お
さんの先生方から「教材提示ですべてが決ま
おきなくまが怖い」という発言なども聞かれ
るといってもいい。」とのお話をいただく。
それなりにお話の世界に入りこんでいた。
今回の授業のように,児童の発達段階や児童
の実態を考えて,私が授業する児童の実態に
5.今後の指針
(1)「心の変容」を見取ることができる授業
づくりを意識する
合った教材提示の仕方を考え,そのために準
備や教材研究を怠らずに研さんをつんでいき
たい。
授業のポイント
道徳の時間は教材提示によって決まると言っても過言ではない。増田先生はどのよう
にしたら児童が教材の世界に入れるのかを意識して準備を重ね教材提示に当たった。そ
の結果が中心発問での児童の反応に表れている。また,評価を意識した授業づくりも心
掛けている。ワークシートや授業中の発言などから児童の変容を見取ることは,今後
「特別の教科 道徳」における評価でも生かせることである。
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