「平成 28 年度インターネット配信研修[インタイム]認知症高齢者の看護実践に必要な知識」 Q&A 受信会場での質問と回答 第 1 回~第 3 回までの質問と回答① 第 1 回~第 3 回にいただきました質問は、第 1 回~3 回までの質問を総計し、2 回に分けて掲載します。 まずは、1 回目としてご参照ください。 Q1 認知症の患者さんのせん妄症状に対する向精神薬の使用のタイミングや、症状緩和の方法に ついて教えてください。 都道府県 沖縄県 看護協会 質問内容 せん妄症状発症時には早めに向精神薬を使用するとのことでしたが、睡眠覚醒リズムを整える 事を考え、日中の薬剤の使用について使用するタイミングに悩むことがあります。使用のタイ ミングや、その他の症状緩和の方法があれば教えて頂きたいです。 せん妄は、身体疾患に起因する注意障害・意識障害であり緊急の対応が求められることが多い 症状です。認知症と似た症状のため、鑑別が難しいのも事実です。一般に認知症は、数カ月か ら数年かけて徐々に出現するのに比べ、せん妄は、数時間から数日と短期間に発症し夜間に増 悪するのが特徴です。 「せん妄の予防および治療を目的として、薬剤の使用は第一選択として 推奨されていません。まずはせん妄の非薬物療法について、もう一度確認しておきたいと思い ます。 」せん妄への対応には、定期的なモニタリングと可能な限りせん妄発症の増悪因子に対 する対処が重要になってくると考えられます。日頃から患者さんのせん妄発症の時間やパター ン、睡眠リズムなど、せん妄発症と患者さんの生活パターンに関する情報を集め、出来る限り その因子を排除できる環境を作るなどの配慮や、認知症の患者さんが、日中は覚醒していられ る生活調整も必要ではないかと考えます。日中の覚醒を高めるケアには、生活リズムの維持調 整に、午前中と午後 15 時頃までの間に 15 分~30 分の午睡とることが重要だといわれていま す。そして、午睡後の覚醒を良くするために、休む前にカフェインの入ったお茶などを少量取 ると、覚醒の手助けになります。ただ、カフェインの作用時間には個人差がありますので、そ Q1 回答欄 の都度調整が必要です。その他、時間オリエンテーションを行う、ラジオ体操、日光浴なども お勧めします(参考資料 5 より)。 また、せん妄の薬物治療は、未だエビデンスに乏しい領域です。基本的な方針としては、少 量から開始し、毎日ていねいに観察し、処方量を調整していくことが大切です。しかし、この ていねいな観察と薬剤使用の方法が技術の必要なところでもあります。 興奮が強くなってから薬剤を投与しても、効果を感じないという経験をされている方も多いの ではないでしょうか。早目の投与という点では、落ち着かない様子や、会話の疎通性が悪くな るなど、認知機能の変化や意識状態の変化など興奮が強くなる前の状態をキャッチすること。 そして、薬剤投与した場合も、効果を最大限活かすには、苦痛の除去や不安の軽減など増悪因 子への対処も並行して行うこと。そして記録は、時間や危険な行動の回数など定量的な客観的 データと共に状態を記録し、病態と合わせて日々薬剤の評価をしましょう。向精神薬を使用す るタイミングについては、さまざまな方法があるかと思いますが、そのひとつとして、起床時 間から向精神薬の作用時間を差し引いた時間を目安に、薬剤の投与を行ってみてはいかがでし ょうか。薬剤を投与の量や種類・投与方法などの詳細は、資料7を参考にしてください。 なお、せん妄へのケアについては、10 月 13・14 日開催の「インターネット配信研修[リアル タイム]「認知総高齢者への看護実践に必要な知識」Q&A「患者ケア 2 手術とせん妄への対応 1 「平成 28 年度インターネット配信研修[インタイム]認知症高齢者の看護実践に必要な知識」 Q&A 受信会場での質問と回答 (11 月 8 日更新) 」も合わせてご参照ください。 参考資料 1. 認知症ケアガイドブック 編集 公益社団法人日本看護協会 株式会社照林社 第Ⅰ部 認知症疾患と治療 5 せん妄の特徴 小川朝生 P.32~35 2. 「エンド・オブ・ライフを見据えた“高齢者看護のキホン”100 看護管理者と創る超高齢社会に求められる 看護とは」編集者:岡本充子、桑田美代子、吉岡佐知子他 ㈱日本看護協会出版会 2015. 3.鈴木みずえ(2016)認知症のある高齢者に起こりやすいせん妄について理解できる 急性期病院でのステ ップアップ認知症看護 日本看護協会出版会 p109-115. 4.小川朝生・寺田千幸 編(2013)第一章 認知症・せん妄・うつ病の違いを知ろう 一般病棟における認 知症・せん妄・うつ病 患者へのケア看護技術 59(5) . 5.赤井信太郎(2013)せん妄と認知症 身体的治療を受ける認知症高齢の看護実践に必要な専門知識 急性 期病院で治療を受ける認知症高齢者のケア 入院時から退院後の地域連携まで 日本看護協会出版会 p3543. 6.寺田整司(2014) :高齢者のせん妄治療 日本老年医学会.51.P428-435 7. 日本総合病院精神医学会せん妄指針改訂班編(2015):せん妄の治療指針第 2 版.日本総合病院精神医学会 治療指針Ⅰ.星和書店 Q2 認知症ケア加算の算定に必要な要件を教えてください。 都道府県 岐阜県 看護協会 宮崎県 看護協会 質問内容 ●認知症ケア加算について ・コールマット、タッチコール、抑制着(つなぎ服) 、4 点柵等は減算の対象になりますか。 当院でも認知症ケア加算 2 の算定に向けて院内体制整備に取り掛かっていますが、 日本精神科看護協会が発刊している認知症マニュアルを、当面の院内手順として代用してもよ いでしょうか。 認知症ケア加算については、臨床でご勤務されている皆さんにとっては、看護実践に大きく関 連するため興味深い内容でしょう。今回の改定では、認知症ケアの質の維持向上につながる様々 な内容が項目立てられていた印象があります。 ケア加算に関する具体的な対象等については、厚生労働省 平成 28 年度診療報酬改定資料 も含め、10 月 13・14 日開催の「インターネット配信研修[リアルタイム]「認知総高齢者への 回答欄 看護実践に必要な知識」Q&A「認知症ケア加算について」(10 月 28 日更新)をご参照くださ い。 また認知症ケア加算の算定にあたっては、厚生労働省が提示している施設基準等に該当する 内容が必須要件になります。院内手順等の作成など整備の内容については、各施設の状況を鑑 み、病院・病棟内における必要な会議の場で、多職種で検討し、マニュアルの採用や作成およ び取組みへ着手してみてはいかがでしょうか。 参考資料 1. 鈴木みずえ(2016) 急性期病院の看護実践に活用したい診療報酬に関して理解できる 急性期病院でのス テップアップ認知症看護 日本看護協会出版会 p185-191. 2. 内田陽子著(2016)できる!認知症ケア加算マニュアル 照林社 2
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