3月小特集資料一覧(PDF)

図書館員の心に残った本 2016
年末年始になると、新聞各紙や雑誌、書店などで、この一年間で印象に残った本が特集されます。で
は、図書館員は、どんな本や分野に興味や関心を持って読書をしていたのでしょうか。
2016年に図書館員が読んで、特に心に残った本を厳選して紹介します。
書名 / 著者 (上段) 内容紹介 (下段)
リベラルアーツの学び方 / 瀬木比呂志著 ディスカヴァー・トゥエンティワン,2015.5
請求番号
002-Se16L
知 選者 企画庶務係 岩井
識 この本は、リベラルアーツ(教養)を学ぶ重要性、それを身につける方法を幅広い分野ごとに具体的に書かれている一冊です。リ
ベラルアーツは「人の精神を自由にする幅広い基礎的学問・教養」という意味です。この本では、人文、科学、芸術(映画/音楽)な
どあらゆる分野のリベラルアーツについてお薦めの作品が列挙されているので、学び方、考え方を学ぶきっかけとなる入門書に
学 なっています。
リベラルアーツを学ぶことで、教養の根本となる「学び」「考え」「行動」といった実践的に生きる教養を自分のものとして身に付け、
問 仕事や生活など自らの人生をより深く意義のあるもの高めてくれることが書かれています。
1つ学ぶことで、2つ3つと新しい選択肢が見えてくる根本となる力が「教養」であることを実感できる本です。
現在、日々学んでいる皆さんに読んでいただき、今だからこそ学ぶ大切さを知って貰い、今後に役立てて欲しいと思います。
本を読む人だけが手にするもの / 藤原和博著 日本実業出版社 , 2015.10
019-F56h
選者 参考係 ミノさん
図書館員っぽいと思われそうな本を意識的に選んでしまいました。タイトルの通り、本を読むとこんなにいいことがあるよ、と言って
いる本です。これを読むと、やっぱ本読まなきゃ!と思うはずです。だって本を読むだけで、10人に1人の人材になれるそうです。
しかも、社会人になってからの収入にも差が出てくるとのこと。自分自身は、学生のとき、なんで先生があんなに「本を読め」と言っ
ているのかわかりませんでした。社会人になってから読書の重要性に気づき、学生の時にもっとたくさん本を読んでおけばよかっ
たと、今でも後悔しています。だから学生の皆さんには、ぜひ本を読んで、自分の世界をどんどん広げてほしいです。この本に
は、本嫌いの人でも読書習慣が身に付く方法や、巻末に「これだけは読んでほしい50冊」が紹介されています。普段本を読まない
方がこれを読んでくれるかはわかりませんが…それを期待して。
読
書
読書と日本人 / 津野海太郎著 (岩波新書) 岩波書店 , 2016.10
S-019-Ts81d
読 選者 図書館長(ドイツ語学科) 矢羽々崇
書 私たちはなんとなく、「本は読むことはよいことだ」、「本を読むことで教養を積むことができる」と考えています。しかし、著者はこう
法 した考えが、20世紀という「読書の黄金時代」に特有の思想にすぎないと論じています。
この結論に至るまでに、著者は日本人の読書の歴史を平安時代から辿ります。これまでには、確かに前田愛『近代読者の成立』
や永嶺重敏『モダン都市の読書空間』をはじめ、特定の時代を扱った刺激的な論考があります。しかし、驚いたことに、これまでの
日本人の読書の歴史を通史的にまとめた研究は、今までなかったのです。
津野氏は、長い読書の歴史の中から、読書が大多数の人間にとって当たり前の行為となった20世紀の特異性を浮き彫りにして
いきます。日本人と本とのつながりの厚みが印象に残ります。最後に、電子書籍などが出てきた現在の出版状況について、独自
の視点から示唆に富む論を展開しています。内容は明かしませんので、ぜひ自分で読んでみてください。
著者は、大学教員であったと同時に、劇団の制作・演出をしたり、出版社の編集長をしたりした方です。語りかけるような文体で、と
ても読みやすいので、一気に読み通せると思います。お休みの日にでも、読んでみてはどうでしょうか?
1493 : 世界を変えた大陸間の「交換」 / チャールズ・C. マン著 ; 布施由紀子訳
紀伊國屋書店 , 2016.3
209.5-Ma45s
選者 閲覧係(利用者サービス担当) 佐藤たけひろ
近 本文が700ページの大著ですが、知的興奮を呼び起こすノンフィクションで、飽きることなく読破しました。タイトルの『1493』は、西
代 暦1493年のことです。コロンブスの新大陸発見は1492年なので、その翌年になります。つまり、コロンブスの新大陸発見以降、特
定の地域にしか存在しなかった様々な農作物や動物、病原菌、銀に代表される鉱物資源、そして人間そのものが世界中を急速
世 に行き交うことになり、短期間で世界の在り様が激変したことを詳述している本です。人類史の名著にジャレド・ダイアモンドの
界 『銃・病原菌・鉄』(204-D71j-1,2)がありますが、『銃・病原菌・鉄』を面白く読むことが出来た人には、太鼓判を押してお勧めしま
す。著者は学者ではなく、ジャーナリスト、サイエンスライターで、語り口も絶妙です。ひとつ残念なことがあります。『1493』を学生
史 の皆さんに読んでほしいと思い、夏の書評特集で特集書架の一番目立つ場所に並べていたのですが、誰も借りてくれませんでし
た。そして、現在まで貸出実績はゼロのままです。悲しい…。誰か『1493』を借りてください!なお、著者の前作『1491 : 先コロンブ
ス期アメリカ大陸をめぐる新発見』(250-Ma45s)では、コロンブス到達以前のアメリカ大陸に、すでに高度な文明が存在していたこ
とが論述されています。アメリカ大陸史の定説を変えたとされる著作です。
1
京都の歴史を歩く / 小林丈広, 高木博志, 三枝暁子著 (岩波新書) 岩波書店 , 2016.1
S-291.62-Ko12k
選者 閲覧係(利用者サービス担当) 佐藤たけひろ 日
本
史
日本近代史と日本中世史を専門とする同志社大、京大、東大の研究者三名による共著で、会心の力作です。京都が好きなの
で、何気なく手に取った本書ですが、前書きを読むと、正に私が読みたいと思っていた京都歴史散策の書であることが分かり、嬉
しくなってしまいました。著者の問題意識は、朝廷・貴族や豊かな町人や寺社など上層の文化に特化された京都の歴史イメージ
に違和感を持っていることにあります。つまり、中央、男性、天皇・貴族に対して地方史、女性史、部落史の視点が重要であると考
え、当時、生活していた市井の人びとを読者が思い描けるように本書を編んでいます。本書を読むと、歩き慣れた京都の町並み
が一変して見えてきます。例えば、幕末の京都御所の外郭に築地塀はなく、お金を払えば天皇の住む禁裏御所内の行事も庶民
が見学できたこと、何故、新京極通のすぐ脇に誓願寺や錦天満宮などが建っているのか、鴨川には洪水と治水、罪人の処刑、飢
饉・疫病にあえぐ民衆の歴史が刻まれていること、舟運が衰退し三百年続いた高瀬舟が廃止された後、高瀬川はどのようにして
保存されたのか等々、興味は尽きません。三条通と高瀬川の近くにある瑞泉寺は、豊臣秀吉によって処刑された豊臣秀次の妻子
数十人を弔うために創建されたお寺ですが、創建したのは高瀬川を支配した角倉一族だったことも、初めて知りました。本書を片
手に京都を散策する楽しみが、しばらく続きそうです。
コーネル・ウェストが語るブラック・アメリカ : 現代を照らし出す6つの魂 / コーネル・ウェスト著 ; クリ
スタ・ブッシェンドルフ編 ; 秋元由紀訳 白水社 , 2016.8
選者 閲覧係(利用者サービス担当) 佐藤たけひろ 人
種
問
題
316.853-W62c
米国の哲学者・コーネル・ウェストがドイツのアメリカ研究者・クリスタ・ブッシェンドルフと、米国の黒人奴隷解放や公民権運動を語
るときに欠かせない六人の黒人の思想家・社会運動家について語ったアメリカ論です。取り上げるのは、フレデリック・ダグラス、
W・E・B・デュボイス、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア、エラ・ベイカー、マルコムX、アイダ・B・ウェルズの六人です。エラ・ベ
イカーとアイダ・B・ウェルズは女性(その他の四名は男性)ですが、本書で初めてその名を知りました。ウェストは本書の執筆動機
を「アイダ・B・ウェルズの勇気ある発言や行動を紹介し、彼女の預言者的精神を感じ取ってもらうこと、またエラ・ベイカーが真に民
主的な感性を持ち、社会を根底から変えるのに運動がどれほど重大な役割を果たすかを六人のなかでもっともよく理解していたこ
とを明らかにすること」と述べています。アイダ・B・ウェルズは人種差別体制下で黒人に何が起きているのかを調査し報道しまし
た。エラ・ベイカーは全米有色人向上協会(NAACP)や学生非暴力調整委員会(SNCC)などで、草の根からの組織化に尽力しま
した。本書が魅力的なのは、ブラックの偉人を多面的に捉えていることと、現代社会と関連付けて論じていることです。キングの団
体の意思決定過程が上意下達式で男性優位的な点や、奴隷解放の闘士だったダグラスが奴隷解放後に共和党員になり政治体
制に取り込まれてしまった点などを批判しています。また、キングは軍国主義、物質主義、人種差別、貧困を「病んだ国」の重大問
題と考えていましたが、ウェストは、現代のアメリカ社会が依然として、これらの問題を抱えたままである事実を指摘しています。
先生はえらい / 内田樹著 (ちくまプリマー新書) 筑摩書房 , 2005.1
370.4-U14s
選者 参考係 篠原貴士
教
育
振り返れば、保育園・幼稚園のころから今に至るまで、たくさんの先生にお世話になってきたと思いますが、「えらい先生」に出
会った経験はありますか。著者の内田氏いわく、今の若い人は「えらい先生」に出会っていないと思える、と言います。
それは、どういうことでしょうか?
そもそも「えらい先生」とは、どういう先生で、どこにいるのでしょうか。
読み進めるうちに、「誤解」がキーワードになってくるということがわかります。しかし話は「恋愛」「ジャック・ラカン」「村上春樹」
「Amazon」と縦横無尽に飛び回り、そうこうしているうちにある結論に着地します。
あなたは、もしかすると…読了後、今日にでも「えらい先生」に出会うことができるかもしれませんよ。
最後の秘境東京藝大 : 天才たちのカオスな日常 /二宮敦人著
新潮社 , 2016.9
377.28-N76s
選者 閲覧係 髙島 豊
大
学
本当は藝大に入りたかった僕は、学生時代からほぼ毎年藝大の学園祭「藝祭」に入りびたって創造のシャワーを浴びまくり、その
度に藝大生のパワーと独創性、自由な気風に惚れ直しています。「常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクション」というアイ
ンシュタインの言葉があります。藝大生は、この「常識」から最も遠い存在かも知れません。この本を読むと、そんな藝大生の凄さ、
面白さ、破天荒さを体験でき、「芸術」を生み出す源が何か、輝いて生きるとはどういうことかを教えられます。「人生って素晴らし
いと根っから信じてるんです」「人って意味とか文脈とか抜きに、『何かいいぞ』ってシンパシーを感じることがあるじゃないですか」
「藝大ってやっぱり楽しいです。最高です。頭がおかしい人がいっぱいいて、自由で…」。将来の計画もろくに立てず、今やりたい
ことに没頭する藝大生は「卒業生の半数が行方不明」とのことですが、その姿は輝いています。
2
私の子ども文化論 / 加古里子 あすなろ書房 , 1981.11
384.5-Ka27w
選者 図書館職員
子 絵本作家のかこさとしさんをご存知ですか?
供 かこさんの絵本は私が幼い頃母に読んでもらった思い出の本で、私の子どもも大好きです。ある日、絵本の作者紹介で著者の経
歴を読んでみると、東京大学工学部応用化学学科で有機合成化学を専攻と書いてありました。私はてっきり美術を専攻されたと
の 思い込んでいため、大変驚き、かこさんのことをもっと知りたいと思いました。そこで、本学図書館OPACで検索したところ、本書が
自動書庫にありすぐに出庫請求しました。
生 世代を越えて愛される絵本の理由にはかこさんの子どもへの愛、丁寧な観察、鋭い洞察力と尽きない好奇心や探究心、人間味
活 のある温かさやユーモアによるものだとよく分かりました。著者を知ることで今まで何気なく読んでいた絵本の一文にもかこさんの
思いを感じながら読んでいます。また、本書はほぼ私の生まれた年に出版されていて、当時の育児に関しての時代背景をも知る
ことができました。本屋さんで新刊本を眺めるのも楽しいですが、古い本にも目を向けてみませんか。興味のあるキーワードを
OPACで検索してみてください。思いがけない本に出会えて世界が広がるかもしれませんよ。
ハトはなぜ首を振って歩くのか / 藤田祐樹著 (岩波科学ライブラリー ; 237)
岩波書店 , 2015.4
自
然
科
学
選者 図書館職員
ハトは、その辺で頻繁に見かける、私たちには身近な鳥です。独特な動きで歩き回る姿を、つい目で追ってしまうことも。その動き
の秘密に迫ったのが本書です。どっぷりと理系の本なのですが、文章がユーモラスでとても読みやすいです。なんと、ハトが歩く
パラパラ写真付き!
著者は、学生時代に研究テーマを「鳥の歩行にする」と話したところ、ハトの首振りの理由を多くの友人に問われたため、研究を始
めたとのこと。もともとは人類学が専攻で、研究テーマは「遊び半分で決めた」というのですが、今では首振り研究の第一人者で
す。
どんなきっかけでも、興味を持ったことをとことん突き詰める。とても素敵で幸せなことですね。学生の皆さんにも、夢中になれるこ
とに出会ってほしいです。
本書は、「岩波科学ライブラリー」というシリーズのうちの一冊なのですが、このシリーズは他にもおもしろいテーマの本が出ていま
す。ぜひ、他の本も手に取ってみてください。
洞窟のなかの心 / デヴィッド・ルイス=ウィリアムズ著 ; 港千尋訳
講談社 , 2012.8
芸
術
史
408-I95b-237
702.02-L591d
選者 図書館職員
ラスコーに代表される旧石器時代後期の洞窟芸術について解き明かそうと著者は本書で果敢に試みます。その試みは洞窟の
中という場の分析とヒトの心の分析を中心になされます。
まず壁画を残したクロマニョン人(ホモ・サピエンス)と残さなかったネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)というヒト
の違いについて考察がなされます。その後、われわれの祖先が、まだ弱々しい火しか扱えない時代に漆黒の闇に覆われた深淵
なる「地下世界」へ足を踏み入れ、絵や彫刻を残したのは何故か?という問いについてさまざまな考察がなされます。その考察に
おける著者の知的挑戦は、読むものを飽きさせません。また忘れ去られていた先行研究を正当に評価しようとする努力には著者
の人柄とバランスのよい知性が感じられます。
読者にとって本書は、洞窟芸術のみならず、より深くわれわれヒトについて考える機会となることでしょう。
新編太陽の鉛筆 / 東松照明 [写真] ; 伊藤俊治, 今福龍太編著
赤々舎, 2015.12
748-To491s-1975
748-To491s-2015
選者 図書館職員
写
真
集
この写真集は、東松照明(とうまつ・しょうめい 1930-2012)の代表的な作品「太陽の鉛筆」を復刻した「1975」と既発表・未発表の
作品を収録した「2015」から構成されています。
東松は、1969年に占領下の沖縄での取材のあと、1971年から1973年を沖縄、波照間島、宮古島で過ごし、沖縄復帰の瞬間を目
撃しています。その後、1973年9月に東南アジアへ旅立ち、翌1974年に東京に戻ります。その成果として1975年に「太陽の鉛筆」
が刊行されました。作品からは、沖縄諸島から、宮古列島、八重山列島、台湾から東南アジアへと続く島々の連なりのなかで、国
境線にとらわれない普遍的な人々の姿、力強く生きる人々の営みを感じることができます。
「1975」の一枚目の写真は、波照間島から南の海を向いて撮った写真だそうです。日本の最果てであるという地理的な「縁(ふ
ち)」と、沖縄返還という歴史的な「縁(ふち)」の、二つの境界を内包しているという点で、記念碑的な作品であると言えます。
3
トランボ : ハリウッドに最も嫌われた男 / ブルース・クック著 ; 手嶋由美子訳 世界文
化社 , 2016.7
778.253-Tr8Yc
選者 閲覧係(利用者サービス担当) 佐藤たけひろ 映
画
2016年公開のアメリカ映画『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(主演ブライアン・クランストン、監督ジェイ・ローチ)は、魂が震
えるほどの傑作で、3回も観てしまいました。本書は、その映画が製作される契機となった原作で、原書は1977年に刊行されてい
ます。米ソ冷戦の真っ只中、共和党上院議員ジョセフ・マッカーシーの告発により、国益を裏切ったとされた共産党員が公職から
一掃されました。猛威を振るった赤狩り(マーカーシズム)は、ハリウッドも例外ではなく、脚本家ダルトン・トランボも下院非米活動
委員会への協力を拒んだために投獄されてしまいます。トランボが証言を拒否したのは、米国憲法修正第一条で言論の自由が
保証されているからです。出所後、名前を伏せて数多くの脚本を執筆し、『ローマの休日』『黒い牡牛』『スパルタカス』など数々の
名作を生み出しました。さて、本書は映画を観た人にこそ、読んでほしい一冊です。映画では、脚本家として活躍し始めてから以
後の逆境と勝利が描かれていますが、それは本書の後半部分です。前半では、トランボの生い立ちが描写されおり、それが実に
劇的なのです。父親の失業によってパン工場で8年間も働くことになり、家族を養ったことや、妻となったクレオを手に入れるまでの
信じられない恋愛騒動は、それだけで一本の映画が作れるほど波乱万丈です。恐怖と暗黒の時代、国家権力の暴力に対して徹
底的に闘ったトランボは、終始一貫して不屈の男だったのです。なお、映画評論家の上島春彦氏が2006年に発表した『レッド
パージ・ハリウッド : 赤狩り体制に挑んだブラックリスト映画人列伝』(778.253-Ka37r)では、3つの章でトランボと『ローマの休日』
『黒い牡牛』『スパルタカス』について考察しています。
ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本 / 向山淳子, 向山貴彦著 ; たかしまてつを絵 幻
冬舎 , 2001.2
830-Mu21b
選者 図書館職員
英 この本の最大の特徴は「読む」ことに着目して、英語の仕組みを教えている点です。英語が聞き取れない……というのは、発音が
分からない・相手の話すスピードが速すぎる、からではなく、「相手の言っている文を見たことがないから」であり、だから英語を読も
語 う!とこの本は呼びかけています。英文の形をかわいいイラストに置き換えて、文法用語は使わずに易しい言葉で説明がされてい
ることで、親しみやすいのも良い所です。「a」と「the」の違いでこんなに意味が変わったりということなど、英語を勉強していた時に
感じる疑問点が解消されてスッキリします。また、用意された練習用の読み物は、和訳がなくても楽しめる工夫がされていて、読め
る喜びを味わえたりもします。英語の勉強で途中で挫折してしまった方、ぜひこちらの本を手に取ってみてください。「英語って楽
しい!」と感じるキッカケを与えてくれるかもしれません。
/ 温又柔著
エ 台湾生まれ日本語育ち
914.6-O651t
白水社 , 2016.1
ッ 選者 雑誌情報係 高澤玲子
セ 著者の温又柔(おんゆうじゅう)は、台湾人の両親のもと台湾で生まれたが、3歳のとき父の仕事で東京に引っ越し、以来日本語
を使いこなして生きてきた。小・中・高と日本人と変わらない生活を送ってきた著者であったが、成長するにつれ選挙権やパス
イ ポートなど、自分は日本人ではない、ということにいやおうなく突きつけられてきた。この本は、そんな彼女の「自分は日本人では
ない、しかし日本語で生きている」ということにとことん向き合った4年間の日々を書いたエッセイである。
心地よい優しい言葉遣いでつづられる文章の中に、大学生になって改めて中国語への向き合った際に感じた挫折や、日本人
随 でないために必要になった各種の手続きには緊張感が漂い、どんどん引き込まれてしまった。
飛行機に乗れば国境を越えて世界のどこへでも行ける現代。将来自分の子どもや孫はどこに住んでどんな言葉を話しているの
筆 だろう。そんなことを考えさせられる1冊です。
獨協大学図書館 2017.1.24
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