藤戸レポート 急騰後の「ヘルシー・コレクション」(健全な調整) 大統領就任前に相場がピーク アウトするのはレアケース (グラフ1) 米長期金利上昇、円安が一服 2017 年 1 月 16 日 2017 年大発会の日経平均は、479 円高の大幅上昇で始まった。昨年は 大発会から 6 連続安と惨憺たる状況だっただけに、ホッと胸を撫で下ろした 投資家も多かったことだろう。ただし、大発会後は、利益確定売りにジリジリ と値を消す展開になっている。この傾向は株価だけではなく、ドル/円相場 でも同様で、1/3 に 1 ドル=118.60 円をマークした後に円高方向に振れて いる。1/12 には、一時 113.76 円までドルが売られる局面があった。米 10 年国債利回りも、昨年 12/15 の 2.639%をピークとして、今年 1/12 には 2.305%まで低下している(グラフ 1)。コモディティ市場に目を転じると、WTI 原油先物は 1/3 に高値 1 バレル=55.2 ドルをマークしたが、1/10 には 50.7 ドルまで下落する局面があった。こうした主要アセットの動きを見ると、 昨年 11 月大統領選挙以降の強烈な「リスク・オン」相場が、やや変容して いることは認めざるを得ない。しかし、「1/20 のトランプ正式就任で相場が 終わる」との説は、あまりに短絡的な見方である。第一、大統領の正式就任 前に相場が終わるケースはほとんどない。1981 年のレーガン以降の大統領 (一期目)を見ても、唯一 2001 年就任のジョージ・ブッシュ(息子)大統領 が、IT バブル相場崩壊の影響で冴えない展開となっただけである。特に、 1993 年就任のビル・クリントン大統領時の相場は素晴らしいパフォーマンス だったが、2009 年就任のオバマ大統領も、3 月にダウ工業株 30 種平均が 米10年国債利回りと円ドルの推移 (%) (円ドル) 3.000 140 (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 2.63 (12/15) 135 2.500 130 2.000 米10年国債利回り(左) 125 118.67 (12/15) 1.500 米大統領選 (11/8) 115 1.000 110 円ドル(右) 105 米利上げ (12/14) 0.500 0.000 2016/7 120 100 95 2016/8 2016/8 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 2016/9 2016/11 2016/12 2017/1 2017 年 1 月 16 日 ストラテジー マーケット分析 安値 6,469 ドルをマークした後は、現在に至るまで雄大な上昇相場が継続 している(グラフ 2)。やはり、昨年 11~12 月の相場があまりの高騰だっただけ に、手の早い海外ファンドの一角が利益確定売りから入ったと見るべきであ ろう。これでトランプ相場のトレンドが屈折したと見るのは、時期尚早である。 (グラフ2) 大統領就任式(1/20)以降も 堅調な傾向のNYダウ平均 NYダウの推移(米大統領選挙年~翌年) 130.0 180.0 大統領選挙年の年末=100で指数化 120.0 レーガン(左) クリントン(左) トランプ(左) オバマ(右) 160.0 110.0 140.0 100.0 120.0 90.0 100.0 80.0 80.0 (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 70.0 2016/1 2016/4 2016/7 2016/10 2016/12 2017/4 2017/7 2017/9 60.0 2017/12 過激な相場に対する反動 昨年の大統領選挙後の相場を、巨視的に捉えてみよう。全世界の株価 の時価総額は、選挙前の11/6に64.3兆ドルだった。これが、今年1/5には 68.2兆ドルに膨張しており、約3.9兆ドルの増加だ。一方、全世界の債券の 時価総額は、昨年11/4の47.0兆ドルから、今年1/3には43.9兆ドルにまでシ ュリンクしている(ブルームバーグ)。約3.1兆ドルの減少だ。日本円に換算 すれば、株式は約450兆円膨張し、債券は約360兆円収縮したことになる。 これこそが、トランプ相場の実相である(グラフ3)。昨年1年間を見ると、原油 急落による2月や、英国のEU離脱による6月には株価が急落する局面があ ったが、そうした超短期の突っ込みを別にすれば、ほぼ株式と債券はパラレ ルに動いていたと見て良い。つまり、超低金利による金融相場が形成され ていたわけだ。ところが、トランプ景気刺激策期待が、株式と債券を典型的 な逆相関の状況に陥らせた。「米国の成長率を倍にする」との御託宣があ れば、「株式買い・債券売り」となるのは自然な流れである。この過激な相場 に対する反動が、年初にやや出ていると見るべきだ。 保護貿易主義の暗い影 ただし、警戒すべき材料が浮上していることも、一方では認めなければな らない。それは、トランプ政策のダークサイドの面である保護貿易主義だ。 選挙戦当時から、トランプ次期大統領の攻撃の矢面に立っていたのは、メ キシコ、中国だった。メキシコは、「NAFTA(北米自由貿易協定)を見直し、 35%の高関税をかけ、国境に壁を築く」と幾度も叩かれていた。中国に対し ても、「大統領就任初日に45%の報復関税を課す」と喧伝されていた。幸い 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 2 2017 年 1 月 16 日 ストラテジー マーケット分析 (グラフ3) トランプ景気刺激策期待で 株式と債券が逆相関の動きに (兆ドル) 世界の株式・債券時価総額の推移(2016/1~) (兆ドル) 70.0 54.00 68.2(1/5) 世界株式 時価総額(左) 68.0 52.00 66.0 50.00 64.0 48.00 64.3(11/6) 62.0 46.00 世界債券 時価総額(右) 60.0 英国EU離脱 決定(6/23) 58.0 56.0 2016/2 2016/4 2016/6 42.00 米大統領 選挙(11/8) (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 54.0 2016/1 2016/8 44.00 43.9 (1/3) 2016/10 2016/11 40.00 38.00 にも、日本はこの両国の陰に隠れる展開だったが、1/11の会見では、「米 国の貿易交渉は悲惨な状況で、中国、日本、メキシコなどとの貿易で多額 の損失を被っている」と、両国と同列に扱われてしまった。既に1/5には、「メ キシコ工場での増産計画について、現段階で変更はない」と述べたトヨタ社 長に対して、トランプ次期大統領は「とんでもないことだ。米国内に工場を作 らないのならば、高い関税を払うべきだ」とツイッターで攻撃している。次期 大統領が、個別企業の工場建設計画にまで介入するのは極めて異例であ る。ただし、かなりエキセントリックな人物だけに、今後も個別の案件に介入 する可能性もあろう。要は、「米国第一主義」に賛同するか否か、「踏み絵」 を踏めということなのだろう。フォードやフィアット・クライスラーは踏んだ。GM は沈黙を守っているが、具体的な関税率が俎上に上がる頃までには踏む 可能性が高いものと思われる。米国市場で巨額の利益を挙げている日本 企業も、いずれそれなりの対応を余儀なくされるものと思われる。 「国境税」が具現化へ こうした保護貿易主義が、単なる威嚇に留まるのならば、時間と共に懸念 は後退することになろう。しかし、トランプ次期政権は、既に「国境税」という ネーミングで、輸入関税を引き上げることに着手し始めている。1/9、共和党 のポール・ライアン下院議長と、次期政権の首席戦略官という肩書を持つス ティーブン・バノン氏が、スタッフを含めて「国境税」に関する会合を開いて いる。骨子は、①米国からの輸出品の売上は免税とし、②輸入品には課税 する、というものだ。露骨な保護貿易策で、WTO(世界貿易機関)ルールに 抵触する可能性が濃厚だ。税率を始め、どういうスキームで実行するかは 漠然とした段階だが、選挙戦から強調していた点を考えると、具現化する可 能性が高い。トランプ次期大統領は、ニューヨーク・タイムズへの寄稿で、 「大統領令による5~10%の輸入関税」を提言しているが、米国憲法では税 法を作成するのは議会であり、議会を巻き込んだ対応が必須である。した 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 3 2017 年 1 月 16 日 ストラテジー マーケット分析 がって、ライアン議長との会合は、実現に向けて一歩踏み出しているものと 思われる。特定の対象国や企業のみに課税するのもルール違反だが、「中 国、日本、メキシコを対象とする」リスクも否定しきれない。貿易摩擦は、トラ ンプ政権の4年間で最大の懸念事項となろう。 レーガン政権との類似性 (グラフ4) インフレ対策の高金利で ドル高が進行したレーガン時代 昨年も幾度か指摘したが、どうもトランプ次期政権は、1981年1/20に発進 したレーガン政権と類似するところが多いように思える。「大幅減税」と「強い 米国」を掲げたレーガン政権は、「悪の帝国」と呼んだソ連への対抗から、 軍事予算を膨張させて行く。一方で、歳入増を期待したのは社会保障費の カットと景気拡大に伴う税収増程度で、レーガノミクス(レーガン大統領の経 済政策)は、スタート地点から財政的難題を抱えていたことになる。一方で、 第2次オイル・ショックによるインフレ進行で、米国のCPI(消費者物価・前年 比)は1980年3月には14.8%というハイパー・インフレとなった。これに対して FRB(連邦準備制度理事会)は、政策金利を20%にまで引き上げ、10年国債 利回りも1981年9月には15.8%という空前のレベルに上昇した。これだけの高 金利政策となれば、ドル高となるのは当然である。ドル/円相場は、1981年1 月の1ドル=199.0円から、82年11月の277.6円まで円安・ドル高が進行する (グラフ4)。米貿易赤字・経常赤字は膨張を続け、財政赤字とならんで米国の 宿痾となった(グラフ5)。いわゆる「双子の赤字」である。 米CPI・長期金利・円ドル相場の推移 (%) 40.0 320.0 (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 277.6 (1982/11) レーガン 大統領就任 (1981/1) 35.0 30.0 (円ドル) 300.0 280.0 円ドル(右) 260.0 240.0 25.0 220.0 20.0 14.8% (1980/3) 199.0 (1981/1) 200.0 15.8% (1981/9) 180.0 米10年国債 利回り(左) 15.0 160.0 140.0 10.0 120.0 100.0 5.0 0.0 1979/1 貿易摩擦が難題となる 消費者物価(CPI) (前年同月比・左) 1979/7 1980/2 1980/8 1981/3 1981/9 80.0 60.0 1982/4 1982/11 1983/5 1983/12 イランの「ホメイニ革命」に端を発した第2次オイル・ショックによって、アラ ビアン・ライト(アラビア軽質油)は、1978年1月安値1バレル=13.6ドルから、 81年10月には38.2ドルまで高騰して行った。当然ながら、原油高=ガソリン 高によって、「ガスガズラー」(ガソリンがぶ飲みの悪燃費車)と呼ばれた米 大型車の販売に急ブレーキが掛かり、好燃費の日本製小型車に人気が集 中した。こうした情勢を追い風に、日本車の生産は1980年に初めて1,000万 台の大台を突破し、米国を抜いて世界一に躍り出た。同年の輸出台数は 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 4 2017 年 1 月 16 日 ストラテジー マーケット分析 (グラフ5) 「双子の赤字」に苦しんだ レーガン政権 (%) 米貿易収支と財政赤字の推移 (億ドル) 100 2.0 レーガン 大統領就任 (1981/1) 50 1.0 貿易収支(左) 0.0 0 -1.0 -50 -2.0 -100 財政赤字 (対GDP比率・右) -3.0 -150 -4.0 -200 -5.0 -250 -6.0 (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 -300 -7.0 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 597万台に達し、国内販売と逆転するまでになっている(グラフ6)。一方、 GM、フォード、クライスラーの米ビッグ3は軒並み赤字・無配転落となり、日米 自動車メーカーの好不調は、一段と鮮明化することになった。ここに至って、 日米貿易摩擦は激化し、「日本は失業を輸出している」というエモーショナ ルな批判が澎湃と湧き上がることになった。まさに、こうした状況で81年1月 に誕生したのがレーガン政権だった。USTR(米通商代表部)のウィリアム・ ブロック代表は日本の通産省と協議を重ね、輸入規制や報復関税で威嚇 しながら、1981年4月に年間160万台上限の対米自動車輸出自主規制を呑 ませることに成功した。皮肉なことに、レーガン政権で鉄鋼等の日本製品輸 出規制で活躍したのが、USTR次官として実務を担当したロバート・ライトハ イザー氏である。御存知の通り、トランプ政権ではUSTR代表に就任すること が決まっている。現在の肩書は、「対中強硬論者」となっているが、正しくは 「対アジア強硬論者」と言うべきであろう。日本にとってはタフ・ネゴシエータ ーであることは間違いない。レーガン政権と同様に、トランプ次期政権でも 貿易摩擦が日本とっての難題となろう。 「ロシア問題」でメディアとの 闘争が始まる 選挙期間中のトランプ次期大統領は、相手を敵と味方に識別し、敵には 徹底的な攻撃を加える手法を採ってきた。さすがに、大統領選の勝利が確 定した初の会見では、非常にソフトなトーンで、選挙期間中は一種のパフォ ーマンスと解釈して、「ソフト・トランプ」を歓迎する向きが多かった。ところ が、1/11の会見では、「ロシア問題」を追及されたこともあって、逆上して地 が出てしまったようだ。「ロシア問題」とは、トランプ次期大統領がロシアに弱 みを握られているのではないかとの疑惑だ。英情報機関MI6(イアン・フレミ ングの小説では、ジェームズ・ボンドも所属していたとされる)の元職員の35 ページにわたる調査報告書で、モスクワのリッツカールトン・ホテルでの乱痴 気騒ぎの映像を撮られているとか、ロシアがトランプ氏の企業や選挙チーム 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 5 2017 年 1 月 16 日 ストラテジー マーケット分析 (グラフ6) 1979~1980年に急増した 日本車の輸出台数 (万台) 日本の自動車生産・輸出台数の推移(月次) 130.0 輸出台数 (出所)e-AURORAのデータをもとにMUMSS作成 生産台数 110.0 90.0 70.0 50.0 30.0 10.0 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 に資金援助した、といったネガティブ情報が満載されている。もちろん事実 確認のしようもないが(KGB・現FSBの緻密な仕事ぶりからすれば、証拠が 残るような下手を打つはずがない。トランプ次期大統領は全否定してい る)、CNNは詳細な内容を伏せたまま報じた。その後、ネットメディアの「バズ フィード」はレポート内容を公開するに至っている。この経緯があって、1/11 会見では、質問の許可を求めるCNN記者に対して、「お前の所はフェイクニ ュース(偽情報)を流す」と罵倒し、一切質問させなかった。スラングを交え た異常な映像を御覧になった方も多いことだろう。「ソフト・トランプ」は消え 去って、「ポリティカル・インコレクト」(政治的不適切)用語の嵐となってしま ったわけだ。 「大人の対応」 このエキセントリックな人物と、日本政府、企業は少なくとも4年間は付き 合って行かなければならない。敵と味方に識別する手法は、今後も継続す ると看做さざるを得ないだろう。1/11会見でも、メキシコへの工場移転や、メ キシコ新工場建設を放棄したフォード、フィアット・クライスラーは賞揚され、 中国、日本、メキシコは名指しで批判された。無用な軋轢を避け、ビジネス の果実を採るとすれば、「踏み絵」を踏むことも必要と思われる。この相手 に、「正論」をぶつけても、より反撃が厳しくなるだけだ。極めて象徴的なの は、トランプ当選後に株価が低迷していたアマゾン・ドット・コムの動きだ。選 挙前からトランプ次期大統領と犬猿の仲になっていたジェフ・ベゾスCEOだ ったが、1/12に「2018年までに、米国内のフルタイム雇用者を10万人以上 新規創出する」との計画を発表した。その結果、アマゾンの株価は14.6ドル 高・+1.83%となって、久々の800ドルの大台回復である。投資家や株主が 求めているのは、「大人の対応」であることが如実になった。ソフトバンク・グ ループの孫正義社長、アリババ・グループのジャック・マー会長は、既にトラ ンプ次期大統領との笑顔のツーショットが世界に報道されている。ソフトバ ンクGの株価堅調の大きな要因である(グラフ7)。 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 6 2017 年 1 月 16 日 ストラテジー マーケット分析 (グラフ7) 上値追いのソフトバンクG 持ち直したアマゾン ソフトバンクGとアマゾン・ドット・コムの株価推移 (円) 10,000 (ドル) 1,100 (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 8590 (1/10) 9,000 米大統領選挙 (11/8) 8,000 1,050 1,000 ソフトバンクG(左) 7,000 950 6,000 900 5953 (11/9) 814 (1/12) 5,000 4,000 850 800 3,000 750 アマゾン(右) 2,000 1,000 2016/7 好実態銘柄に海外実需筋の買 いが続く (グラフ8) ソニー、東京エレクが 昨年来高値更新 700 710 (11/14) 650 2016/8 2016/9 2016/10 2016/11 2016/12 2017/1 昨年暮れまでは、異様な楽観論が兜町を覆いつくし、「2016年内に日経 平均2万円」との呼び声も高かった。ところが、大発会後の調整モードで、「ト ランプ相場は終わった」との弱気節が台頭している。この振幅の大きさは兜 町特有のものだが、おそらく双方ともに誤認識と思われる。例えば、1/12に 日経平均は229円安となったが、東証一部の値下がり銘柄数1,600という全 面安の中で、ソニー22円高、東京エレクトロン95円高(グラフ8)、ダイキン85 円高、安川電機27円高等(グラフ9)、個別で健闘する銘柄が目立った。いず ソニーと東京エレクトロンの株価推移 (円) (円) 16,000 3,800 (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 3562 (1/12) 15,000 14,000 3,600 3,400 13,000 3,200 ソニー(右) 12,000 11,000 10,000 11320 (12/28) 2930 (11/9) 2,800 2,600 東京エレクトロン(左) 9,000 2,400 8527 (10/14) 8,000 7,000 2016/7 3,000 2,200 2,000 2016/8 2016/9 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 7 2016/10 2016/11 2016/12 2017/1 2017 年 1 月 16 日 ストラテジー マーケット分析 (グラフ9) 史上最高値を更新した ダイキン、安川電機 ダイキンと安川電機の株価推移 (円) 2,800 (円) 11350 (1/13) (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 12,000 2,600 11,000 2,400 ダイキン(右) 10,000 2,200 1921 (1/12) 2,000 1,800 1,600 9,000 8,000 安川電機(左) 7,000 1,400 6,000 1,200 1,000 2016/7 5,000 2016/8 2016/9 2016/10 2016/11 2016/12 2017/1 れも好実態銘柄だが、綺麗な上昇波動を描いており、昨年初来高値か高値 近辺で推移している。インデックスがこれだけ売られている中での強さは目 を引くが、明らかに継続的な買いが入っていることを窺わせる動きだ。この 買い主体は、おそらく海外アクティブ・ファンドの可能性が濃厚である。トラ ンプ相場の比較的早い段階で、デリバティブを駆使して日本株のウェイトを 高めたのはヘッジファンドと思われる。ウォールストリート・ジャーナルは、 「ジョージ・ソロス氏が、トランプ勝利を受けた株式相場の上昇で10億ドル (約1,140億円)近くの損失を被った」と報じているが、老舗のソロス氏を踏み 台にして儲かったヘッジファンドは少なくなかったことだろう。しかし、ソロス 氏でさえ大損するような急激な動きでは、「ロング・オンリー」と呼ばれる海外 ペンション・ファンド(年金基金)や、ミューチュアル・ファンド(投信)は、十分 に日本株のウェイトを高めることができなかったものと思われる。パッシブ系 のファンドは、MSCI、FTSE構成銘柄のバスケット買いを行うが、アクティブ 系はミクロの十分な精査を行った上で、出撃しているのだろう。好決算を発 表した7&I-HDが大幅高したのも、同様なアクティブ系ファンドの動きが反 映したものと推測される。 ヘッジファンド御用達のファ ーストリテイリング 大発会の大幅高の後、俄に弱気節が広まった要因には、先行したヘッジ ファンドの巻き戻しが起こった可能性が濃厚だ。なぜならば、彼らが売り崩 す時の常套手段は、為替と株式を同時に仕掛ける。板が薄い昼休み中に 円高に仕掛けて、株式も売り崩すといったパターンが常套手段だ。そして、 日経平均を売り崩すアイテムとして、ヘッジファンド御用達のファーストリテイ リングが活躍することになる。1/5、ファーストリテイリングは、ユニクロの既存 店売上高(12月)が前年比▲5%と発表したが、これで翌6日2,870円安、10日 1,030円安、11日130円安、12日550円安と下げ、都合4,580円安・▲12.0%の 急落となった。兜町のプロの中では、既存店売上高▲5%で4,580円安すると 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 8 2017 年 1 月 16 日 ストラテジー マーケット分析 考えている筋は皆無だ。日経平均を売り崩すアイテムとして、最大の構成ウ ェイトを持つファーストリテイリングを利用したと見る向きがほとんどである。 逆に、11/10以降のトランプ相場においても、11/9安値33,520円~12/21高 値44,370円までの高騰ぶりである(グラフ10)。 (グラフ10) ファーストリテイリング1銘柄で 日経平均100円超下落(1/6) ファーストリテイリングの日経平均寄与度 (円) 400 (円) 50,000 (出所)AstraManagerのデータをもとにMUMSS作成 米大統領選挙 (11/8) 44370 (12/21) 45,000 300 ファーストリテイリング(右) 40,000 200 35,000 米利上げ (12/14) 100 30,000 25,000 0 20,000 -100 日経平均への与度(左) 15,000 -200 10,000 8/1 一時的な需給の乱れには買い 向かう ビジネス・モデルの優れた銘 柄に注力 8/23 9/13 10/6 10/28 11/21 12/13 1/6 昼休みに円高に振れる為替相場、ファーストリテイリングを利用した売り 崩しに加えて、某為替ストラテジストの円高宣言が、怪しくミックスされたの が、今回の調整の真因と考えている。もちろん、トランプ次期大統領の保護 貿易主義が寄与したことは言うまでもないが、トレンドの根本転換というより は、「ヘッジファンドがポジションを一部巻き戻した」一時的調整と見るべき であろう。国境税の全貌が判明し、大型インフラ投資や大幅減税への期待 が剥落した場合には、本格的調整の可能性もあるが、それは春以降の展開 であろう。少なくとも、1~3月期の段階で、トランプ相場のトレンドが屈折する 可能性は低いものと想定している。第一、ヘッジファンドは、「これ以上下が らない」と見たならば、直ちに再び買い転換する迅速性を有している。超楽 観論で買い上げ、悲観論で弱気になれば、何度やっても運用ロスを免れる ことは難しい。海外の実需筋のアクティブ買いが目立っていることを考える と、短期的な需給の乱れによる調整局面は、買い対処で成果を生むものと 思われる。 TV、ラジオでも述べたように、物色対象では、FA関連が今年の主軸と考 えている。国内では、円安傾向もあって、企業経営者のマインドが好転して いる。今年は、設備投資計画が実行される可能性が高まるだろう。海外に おいても、毎年賃金の二桁上昇が続いており、中国だけではなくASEAN (東南アジア諸国連合)でも顕著になっている(グラフ11)。2012年を100とし た一般工の賃金は、2016年には中国深圳で約4割増、ベトナムのホーチミン 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 9 2017 年 1 月 16 日 ストラテジー マーケット分析 (グラフ11) 高騰する新興国の人件費 (pt) 新興国一般工の月額基本給の推移 160.0 (2012年=100とした指数) (出所)JETROデータをもとにMUMSS作成 150.0 バンコク 140.0 ジャカルタ ダッカ 130.0 深セン ホーチミン 120.0 110.0 100.0 90.0 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 市に至っては約5割増の高騰だ。世界のアパレル産業が集中するバングラ デシュのダッカでさえ約3割の上昇である(グラフ10)。中国では省力化投資 が盛り上がっているが、早晩アジア全域でFA投資は活発化するものと思わ れる。キーエンス、ファナック、オムロン、三菱電機、安川電機等(11ページ に特集)。第二の柱は、昨年に続いて、半導体・同製造装置関連である。 3D-NANDフラッシュメモリー、有機EL等、イノベーションに伴う設備投資の 需要は強い。アップルに続いて、ソニーもスマホの上級機種に有機EL投入 を発表している。東京エレクトロン、日立国際、日立ハイテク、ディスコ、信越 化学等(12ページ)。内需では、選別受注を強化して好決算が期待できる4 大ゼネコン。金融は、銀行に偏らず、保険、証券等分散を心掛けたい。小 売りは、ビジネス・モデル、既存店売上高の精査が必要で選別投資となる。 7&I-HD、しまむら、ニトリHD等(13ページ)。ダークホースは防衛関連株。トラ ンプ次期政権は、「力による平和」を目指す(14ページ)。好戦的なジェーム ズ・マティス次期国防長官を擁し、必要とあらば中東、アジアでも軍事力の 行使を躊躇しないだろう。防衛省の納入実績から、三菱重工、川崎重工、 三菱電機等。円安転換、リストラの進捗もあって、戦雲がたなびけば株価に プレミアムが付くことになろう。 藤戸 則弘 投資情報部長 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 10 2017 年 1 月 16 日 業界動向 工場自動化の進展 新興国で人件費の上昇が続いて いる。これは工場などを構える製 造業にとってコスト増の要因とな る。人件費を削減するため、今後 産業用ロボットの普及が進もう。 国内では、政府が「ロボット新戦 略」を掲げている。サービス分野 向けロボットの拡大が続こう。 技術革新と工場の進化 作業効率を高めるため、製造現場 でAI等を活用する取り組みが国内 外で行われている。産学官が連 携し普及を推進するスマート工場 は、センサー技術等の活用に加 え、システムや設備を一つのネッ トワークに接続することで、生産効 率 を引き上げ る。工場 の IoT(Internet of Things)化が進展し よう。 関連銘柄 キーエンス(6861)はセンサーや測 定器など多様な製品群であらゆる 製造現場の自動化を提案。営業 利益率50%超の高収益体質を誇 り、海外展開にも注力。 ファナック(6954)はAI(人工知能)を 搭載し作業効率を高めるロボット の開発を進める。 オムロン(6645)は、円安による国 内顧客の投資マインド改善のメリ ットを受け、制御機器事業が業績 のドライバーになるとMUMSSでは みている。 そ の 他 、 三 菱 電 (6503) 、 安 川 電 (6506) 、 SMC(6273) 、 東 芝 機 (6104)、アマダHD(6113)などが挙 げられる。 グローバルな需要を取り込む FA 関連 新興国 一般工の月額基本給推移 150 (pt) 140 (12年=100とした指数) 深セン バンコ ク 130 120 ジャカ ルタ 110 100 ホーチ ミン 90 ダッカ 12 13 14 15 16 国内ロボット産業の見通し 1200 (百億円) 1000 800 600 400 200 0 12 (予)15 AI技術などを活用し、 IoTプラットフォームの 日本:Society5.0 構築を目指す。ロボット 技術、センサー技術な どを強化する。 北米:Industrial 米国のIoTに対する取 Internet り組み 欧州: 製造業高度化に向けた Industrie4.0 アクションプラン 中国: ロボット等を活用し製造 中国製造2025 工程をスマート化 出所:内閣府、日立資料をもとにMUMSS作成 キーエンス 業績推移と強み 営業利益(左) (%) 56 営業利益率(右) 55 54 53 52 51 50 49 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q (予) 17/3 16/3 ・直販により顧客のニーズを掴み製品化。 ・ファブレス経営で少量多品種生産を実現。 ・業績連動給で社員の業績意識が高い。 (億円) 出所:会社資料をもとにMUMSS作成 従来の工場 スマート工場 分断されている 統合 生産シ ステム 350 150 -50 IABの国内売上高比率 は16/3期実績で約39%) 17/3予 18/3予 19/3予 HCB(ヘル スケア) SSB(車載 システム) AEC(車 載) EMC(電 子部品) IAB(制御 機器) 出所:会社資料をもとにMUMSS作成、MUMSS予想 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 11 生産シ ステム A社 設備 B社 設備 B社 設備 検査 装置 A社 設備 検査 装置 出所:MUMSS作成 ファナック セグメント別売上高推移 3000 (億円) 2500 FA ロボット ロボマシン ロボットが売上の けん引役になると MUMSSでは予想 2000 1500 (予) 1000 16/3 17/3 18/3 19/3 出所:会社資料をもとにMUMSS作成、MUMSS予想 その他 550 25 (年) 35 スマート工場のイメージ オムロン セグメント別営業利益推移 (億円) 750 20 出所:経産省資料をもとにMUMSS作成 各国のIoT・技術革新の取り組み 950 農林水産 製造 ・サービス分野:医 療、物流、警備分 野など。 ・ロボテク製品:自動 運転システムなど (年) 出所:JETRO資料をもとにMUMSS作成 650 600 550 500 450 400 350 300 サービス ロボテク製品 FA関連銘柄 三菱電 FA機器 安川電 SMC ロボット、インバータ等 空気圧機器の世界最大手 東南アジアの 東芝機 ダイカストマシンに強み アマダHD ファイバーレーザーの需要増 シスメックス(6869)と共同で 川重(7012) 手術支援ロボット デンソー 手術支援ロボット等 (6902) 出所:各社資料をもとにMUMSS作成 2017 年 1 月 16 日 業界動向 日本製半導体製造装置受注高と関連4社時価総額推移 1,600 1,200 2 1.5 600 400 1 200 0.5 0 0 1 7 1 11年 7 1 7 12年 340 1 15年 8% 12 8 4% 6 310 2% 50 10億ドル 45 世界計(右) 40 中国(左) 35 30 欧州 25 日本 20 韓国 15 北米 10 5 その他 0 台湾 10億ドル 4 0% 2 -2% 290 -4% 280 -6% 16予 兆円 16年 10 6% 15 7 世界の半導体製造装置市場見通し(同) 10% 出荷額(左) 14 7 出所:日本半導体製造装置協会をもとにMUMSS作成 320 13 1 14年 12% 前年比 (右) 330 7 13年 10億ドル 0 17予 出所:MUMSS(左)、SEMI(右)をもとにMUMSS作成 予想はMUMSS(左)、SEMI(右) アプライドマテリアルズ業績推移 同社株価とコンセンサスの推移 14000 営業利益(右) 3500 35 4.0 12000 売上高(左) 3000 30 3.5 10000 2500 25 8000 2000 20 6000 1500 15 4000 1000 10 2000 500 5 0 0 百万ドル 百万ドル AMAT株価(左) 3.0 18/10予想 2.5 2.0 17/10予想 コンセンサスEPS(右) 0 1.5 1.0 ドル ドル 出所: 会社資料、BloombergをもとにMUMSS作成 左図予想はコンセンサス1/11現在 3000 2000 1000 0 億円 億円 億円 200 150 100 50 0 -50 -100 出所:会社資料をもとにMUMSS作成 予想はMUMSS 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 12 16/3 4000 売上高(左) 250 18/3予 5000 14/3 6000 営業損益(右) 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 12/3 7000 日立国際業績推移 10/3 売上高(左) 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 -100 18/3予 営業利益(右) 16/3 億円 日立ハイテク業績推移 14/3 16/3 億円 14/3 9000 8000 7000 6000 5000 4000 3000 2000 1000 0 18/3予 売上高(左) 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 -200 10/3 東エレク業績推移 営業利益(右) 12/3 東エレク(8035)はアプライドマテリ アルズに次ぐ世界2位メーカー。 配当性向50%を掲げており、連続 増配の予想。日立ハイテク (8036)は半導体内部の構造をチ ェックする検査装置が好調。日立 国際(6756)は成膜装置で高シェア を確保する。他、ディスコ(6146)、 スクリン (7735) 、荏原(6361)が 関 連銘柄。 1 世界の半導体市場見通し(暦年) 350 10/3 日系メーカーにおいても同様。今 17/3期、来18/3期と高水準が続く とMUMSSでは予想している。 2.5 800 300 関連メーカーの業績は国内外で 好調 半導体製造装置業界の最大 手 は、米国のアプライドマテリアル ズ (AMAT) 。 17/10 期 、 18/10 期 と 高水準の売上・利益が予想されて いる。同社株価は16年以降、EPS 予想の向上とともに、上昇してき た。 3 1,000 億円 ユーザーである半導体メーカーの 環境も良好。中国でのスマホ普及 本格化もあり、世界の半導体市場 は、15年、16年の停滞から復調で きる見通し。豊富なプロジェクトを 背景に、半導体製造装置市場は 16年、17年と拡大が続く見通し。 3.5 4社時価総額(右) 半導体製造装置(左) FPD製造装置(左) 1,400 12/3 半導体製造装置の月次統計が好 調 新技術である3DNAND用新工場 プロジェクトや、IoT時代を見据え た微細化技術のプロジェクト、そし て中国での産業育成と、新工場プ ロジェクトが豊富。日本半導体製 造装置協会がまとめる月次受注 統計の好調が続いている。 受注好調の半導体製造装置に注目 億円 2017 年 1 月 16 日 業界動向 専門店:一部は天候不順影響を跳ね返した 既存店売上高(前年同月度比) 秋の残暑はマイナスだった +20% +20% +10% +10% セリア (2782JQ-S) 15年10月 16年7月 -30% 14年4月 前年同期比 16年7月 通期会社予(イ) 進捗率 (ア/イ) 進捗率 (前年同期) +16.7% +8.2% 88.9% 74.9% +11.3% +15.8% 85.6% 77.4% +14.5% +0.8% +10.3% 78.0% 75.2% アダストリア -5.0% -10.2% +6.2% 80.2% 89.6% ファーストリテイ +16.7%(17/8期1Q) +37.5% 50.6% 59.6% 17/2期3Q累計(ア) 3Q3ヶ月 ニトリHD +28.3% しまむら +28.1% 良品計画 過去最高 出所:会社資料をもとにMUMSS作成 ニトリ HD 営業利益等 平均決済為替(¥/$) 80 91.9 79.9 60 しまむら 収益性 約103 予約済み (10億円) 98.9 約108 粗利益率(左) 営業利益率(右) 35% 34% 10% 9% 101.7 33% 8% 都市部出店を加速 40 32% 7% 31% 過去最高(17/2期以降はMUMSS予想) 30% 1Q 2Q 13/2期 14/2期 15/2期 16/2期 17/2期 18/2期 (3Q累計分、調整前) 東アジア(含中国) 国内 3Q 6% 17/2期 (店) 150 100 17/2期は会社予想 50 17/2期 17/2期 16/2期 16/2期 15/2期 15/2期 14/2期 14/2期 0 13/2期 好調 50 出所:会社資料をもとにMUMSS作成 出所:会社資料をもとにMUMSS作成 ファーストリテイ 営業損益増減 (主要部門、前年同期比、調整前) +15 +10 +5 0 -5 -10 -15 -20 -25 2Q 良品計画 中国の店舗数 200 為替の 影響等 100 0 1Q 16/2期 良品計画 主要地域営業利益 250 4Q 出所:会社資料をもとにMUMSS作成 出所:会社資料をもとにMUMSS作成 (億円) 300 3Q 12/2期 0 150 セ リ ア (2782JQ-S)(100 円 シ ョ ッ プ、3月本決算)はITを駆使した科 学的収益管理と魅力的な店舗が 強み。集客力の高さからテナント 出店要請も強く、新規出店の面で も有利。 15年10月 2 月・8 月本決算の専門店企業 直近決算での営業利益動向 200 ファーストリテイ(9983)の17/8期 1Qは主力のユニクロ事業が引き 続き改善を示した(特に海外が順 調)。 15年1月 出所:会社資料をもとにMUMSS作成 出所:会社資料をもとにMUMSS作成 20 良品計画(7453)は17/2期3Qにお いて東アジア(含中国)が為替変 動の影響を受けた。ただ、国内の 好調でカバー。中国も実態面で は堅調で、店舗数は拡大してい る。 15年1月 11/2期 しまむらは商品管理など自助努 力も奏功、収益性が改善してい る。 -30% 14年4月 ファーストリテイ(9983) 9月頃に残暑の影響 -20% 良品計画(7453) ニトリHD(9843) 10/2期 ニトリHDは18/2期分まで為替を ほぼ予約済み。円高メリットを“こ れから”享受する見込み。都市部 の店舗は人気を博し、出店を加 速。 しまむら(8227) -10% 09/2期 直近決算をみると、アダストリア (2685)は秋物でやや苦戦したが、 ニトリHD(9843)やしまむら(8227) は堅調な収益を確保した。 アダストリア(2685) 0% 0% -10% -20% そのなかで堅調な企業も 既存店売上高(前年同月度比) +30% 14年4月度-16年12月度(右図も) 08/2期 専門店各社の既存店売上高(前 年同月度比)。概ね底堅いが、ア パレル中心に9月頃の残暑は響 いた。 +30% (10億円) セリア 営業利益 (億円) ・発注支援システムなどIT武装で先行 140 ・スタイリッシュな店舗で集客力あり。テ ナント出店要請も強く、有利な立場に 120 100 減損影響など 80 国内ユニクロ 海外ユニクロ グローバルブランド 1Q 2Q 3Q 16/8期 出所:会社資料をもとにMUMSS作成 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 13 4Q 1Q 17/8期 60 40 20 0 過去最高(17/3期は会社予想) 11/3期12/3期13/3期14/3期15/3期16/3期17/3期 出所:会社資料をもとにMUMSS作成 2017 年 1 月 16 日 業界動向 需要拡大が想定される防衛関連 日米防衛政策の動向 日本の防衛関連費は、前年比微 増が続いている。一方、中国の国 防費(公表値)は拡大。近隣国との 領土問題に対する緊張の高まり を受け、自衛隊の緊急発進回数 も増加。より一層島しょ防衛の重 要性が増している。米国では、中 東やウクライナ情勢の不安定化 を受け16年度国防予算が前年度 比増加。17年度も前年並みの予 算を要求。 ロッキード・マーチン(LMT)の戦闘 機F-35の調達予算は高水準で推 移。17年度は約83億ドルの予算 で調達予定。牧野フ(6135)は米 国防総省にF35部材加工向けチ タン加工機の納入実績が豊富。 トランプ次期大統領の政策次第 では、日本は軍備増強の必要に 迫られよう。防衛省の29年度契約 ベース事業費内訳は、戦闘機・艦 船などの修理費・購入費や、誘導 弾・火器・車両など装備品購入費 が過半を占める。 主な防衛関連企業 インド国防省は、新明和(7224) の水陸両用救難飛行艇「US-2」 を約1600億円で購入する方針。 三菱重(7011)は戦車やイージス 艦、潜水艦などの開発・生産を行 い、防衛省に納入、運用支援まで 手掛ける。三菱電(6503)は、対 空レーダーシステムや通信機器 など高性能レーダー装置を設計・ 製造している。 川重(7012)は国産初の固定翼哨 戒機「P-1」を生産。 日中の国防費推移 日本(左) 日本(前年比、右) 20 (兆円) 国・地域別の自衛隊緊急発進回数 中国(左) 中国(前年比、左) 15 (%) 15 10 10 *1元=16円での円換算表示 5 0 24 25 26 27 その他 ロシア 中国 28年度上 期時点の 出動回数 は過去5 年で最高 600 400 0 200 出所:防衛省資料をもとにMUMSS作成 (回) 800 5 -5 29 (年度) 28 1000 近隣諸国、とくに対中国で緊張 感が高まっていることが窺える 0 24 25 26 27 出所:防衛省資料をもとにMUMSS作成 米国防予算推移 28 上期 (年度) F-35関連の予算 研究開発 調達 120 5200 (億ドル) (億ドル) 要求額 5000 100 要求額 80 4800 60 4600 4400 40 4200 20 4000 13 14 15 16 (年度)17 出所:米国防総省資料をもとにMUMSS作成 艦船建 造費, 1281 その 他, 8707 13 14 15 16 (年度)17 出所:米国防総省資料をもとにMUMSS作成 29年度要求予算 主要な装備品等 (億円) 0 新明和 救難飛行艇「US-2」 維持 費, 13160 ( 大 半 は 装備品の 修理費) 航空機 購入 費, 3922 装備品 (誘導弾、 等購入 火 器 、 車 費, 両など) 6154 : 出所:防衛省資料をもとにMUMSS作成 インド国防省は救難飛行艇「US-2」12機を購 入する方針。総額は約1600億円を見込む。 出所:会社資料、ヒアリングをもとにMUMSS作成、 写真提供:新明和工業株式会社 防衛産業 関連銘柄 契約企業 比率 主な調達品 三菱重(7011) 16.7% F-35下請け生産業務委託、ヘリコプター、戦車等 川重(7012) 12.2% P-1固定翼哨戒機、潜水艦用発電機、深海救難艇 NEC(6701) 6.4% 野外通信システム、固定式警戒管制レーダー装置等 三菱電(6503) 5.5% 対空誘導弾、対空戦闘指揮統制システム等 IHI(7013) 3.9% ガスタービン機関、P-1用エンジン、等 富士通(6702) 3.4% 通信電気機器、指揮システム、情報処理システム等 東芝(6502) 3.0% 電波監視装置、対空誘導弾、捜索用レーダ等 コマツ(6301) 2.2% 装甲車、対戦車りゅう弾等 *比率は、26年度契約額1兆5717億円に対する比率 出所:防衛省、各社資料をもとにMUMSS作成 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 14 【重要な注意事項】 (本資料使用上の留意点について) ・ 本資料は当社が信頼できると考える情報ベンダーから取得したデータをもとに作成されておりますが、機械作業 上データに誤りが発生する可能性があります。当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに 示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示しているに過ぎません。本資料は、お客様への情報提供の みを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的としたものではありま せん。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に 関するアドバイスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは 今後発行する可能性があります。本資料でインターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自 身のアドレスが記載されている場合を除き、アドレス等の内容について当社は一切責任を負いません。本資料の 利用に際してはお客様御自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 (利益相反情報について) ・ 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