■ 復興特別所得税の申告納付 平成25年分以後の所得税の確定申告 の際には、所得税と併せて復興特別所得 税も納付されています。 申告時の復興特別所得税は、基準所得 税額に対して2.1%となります。基準所 確定申告の仕組み 率が1.021倍になるものといえます。 ◆外国税額控除 -3 所 得 税 ◆基準所得税額 2 ● 所得税の基礎知識 平成25年以後においては、外国税額 控除はその他の税額控除とは異なる取扱 いをします。 外国税額控除の適用がある場合、 まず、 所得税では、1月1日から12月31日ま 確定申告は、所得と税額を確定させる 得税額とは、外国税額控除以外の税額控 控除限度額の範囲(43ページ参照)で での1年間の収入に対し、所得を確定さ とともに、源泉徴収された税金や、予定 除を行った後の所得税額です。 所得税から控除します。控除し切れない せ、税額を計算して申告と納税を行いま 納税した税金と実際の税額との差額を精 復興特別所得税を考慮すると、基本的 残額がある場合は、以下の控除限度額の す。この申告のことを確定申告といい、 算するという役割も果たしています。ま には、図表のようにあらゆる所得税の税 範囲で復興特別所得税から控除します。 翌年の2月16日から3月15日までの間に た、損失が発生した場合には損失申告、 行うことが必要です。平成28年分の確定 申告内容に誤りがあった場合には、税務 申告書(提出は平成29年)からは、個人 署の指摘前であれば修正申告を行うこと 番号(マイナンバー)の記入が必要とな ができます。 ●復興特別所得税からの外国税額控除の限度額 控除限度額=その年分の復興特別所得税の額× その年分の国外所得総額 その年分の所得総額 復興特別所得税から控除しても、控除 納めるべき税額がある場合は、確定申 し切れない残額がある場合は、住民税か 告時に所得税額と復興特別所得税額を併 ら控除できます(43ページ参照)。 せて納付します。 ◆予定納税 ります。 確定申告の必要な人、確定申告ができる人 ◆ 確定申告の必要な人 納めすぎとなっている場合は、確定申 確定申告をしなければならない人につ っても所得税の計算結果が還付となる場 告時に所得税額と復興特別所得税額が併 いては、たとえば次のような人が該当し 合は、2月16日を待たず、1月1日から還 併せ、復興特別所得税の分も予定納税を せて還付されます。 ます。なお、これらに該当する場合であ 付申告書を提出することが可能です。 行います。予定納税については51ペー ◆延納 平成25年以後においては、所得税に ジを参照して下さい。 ◆確定申告 平成25年以後において、所得税の延 納をする場合には、併せて復興特別所得 平成25年分以後の所得税の確定申告 税も延納することができます。所得税の では、所得税額および復興特別所得税額 延納については50ページを参照して下 について、源泉徴収額・予定納税額を考 さい。 慮した精算を行います。 ●主な申告時の税率(平成28年分) 復興特別所得税を考慮しない税率 復興特別所得税を考慮後の税率(※) 住民税 合計税率 所得税 住民税 合計税率 所得税+ 復興特別所得税 総合課税の各種所得の税率(給与所得、雑所得、 5%〜45% 10% 15% 5.105% 10% 15.105% 事業所得など) 〜55% 〜45.945% 〜55.945% 総合課税を選択した株式等の配当等の実質的な 0%〜40% 7.2%〜 7.2%〜 0% 7.2%〜 7.2%〜 税率(配当控除を考慮) 8.6% 48.6% 〜40.84% 8.6% 49.44% 申告分離を選択した上場株式等の配当等と譲渡 15% 5% 20% 15.315% 5% 20.315% 所得の税率 一般株式等の譲渡所得の税率 15% 5% 20% 15.315% 5% 20.315% 先物取引等の雑所得 15% 5% 20% 15.315% 5% 20.315% ※ 配当控除以外の税額控除や、損益通算などを考慮しない税率です。 46 16税金読本̲p017-052̲02.indd 46-47 一般の人 各種所得金額の合計額から所得控除を行い税率を適用して計算した税額 年金受給者※ が、配当控除及び年末調整による住宅ローン控除額の合計額より多い人 給与所得者 給与収入が2,000万円超などの一定の人 退職所得者 「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった人などで一定の人 (27ページを参照) ※ ただし、例外的に年金等の収入金額が400万円以下で、雑所得以外の所得金額が20万円以下の場合は所得 税の申告は不要です(252ページ参照)。 ◆ 確定申告ができる人 確定申告の義務のない人でも、予定納 している場合には、還付を受けられるな 税額や源泉徴収税額などを考慮した結 ど確定申告した方が有利な場合もありま 果、実際に支払うべき税額を超えて納付 す。たとえば次のような場合です。 ①雑損控除、医療費控除、寄附金控除(ワンストップ特例を除く)、住宅 ローン減税を受けられる場合 47 16.10.31 4:48:48 PM ②給 与所得者が年の途中で退職し、その後就職しなかったために年末調 ③予 定納税をしたが、災害等により実際の所得金額が大きく減少してし まった場合(予定納税については51ページを参照) サラリーマンと確定申告 一定の場合には、例外的に確定申告を行 時に所得税が源泉徴収され、年末調整に い、納税しなくてはなりません。また、 よって税額の精算が行われるのが原則で 前述の通り確定申告の必要がない場合で す。年末調整では、雑損控除・医療費控 も、確定申告をした方が有利なケースも 除・寄附金控除を除く大部分の所得控除 あります。 行われますので、一般にサラリーマンは サラリーマンが確定申告する場合のチ ェックポイントとして以下のようなもの ん、申告義務のない人でも申告した方が 有利になるかもしれません。 があります。申告義務のある人はもちろ ①特定支出控除を受けられる可能性はあるか。 サラリーマンは、毎月の給料の支払い なお、住民税の申告については、63ペ と、適用2年目以降の住宅ローン控除が ◆ 確定申告に関するチェックポイント 所 得 税 整を受けなかった場合 ● 所得税の基礎知識 ージを参照して下さい。 ②家 族の医療費について医療費控除を受けられるかどうか。その際、領 収証は持っているか。 ③社 会保険料控除の適用を受けることを忘れていないか。特に、家族の 国民年金保険料を忘れていないか。 ④災害(台風・雪害など) ・盗難・横領などにより損害を被っていないか。 ⑤マ イホームを取得したり、増改築を行った人は、住宅ローン減税や投 資型減税の適用を受けることを忘れていないか。 ⑥家 賃収入などの不動産所得がある場合、その家屋の減価償却費を計算 確定申告の必要はありません。しかし、 したか。 ⑦認定NPO法人の支援金などの寄附をした場合、寄附金控除を忘れてい ◆ 確定申告の必要なサラリーマン サラリーマンで確定申告をしなければ ないか。 ような場合があげられます。 ならないケースとしては、たとえば次の ①給与収入が年間2,000万円を超える場合 ⑧年末に結婚したり、子供が生まれた場合等で、年末調整で配偶者控除・ 配偶者特別控除・扶養控除の適用を受けることを忘れていないか。 ⑨譲 渡損失の繰越控除の対象となる上場株式等の譲渡損失が発生してい ないか。 ②給 与を1か所から受けている人で、給与・退職所得以外の各種の所得 金額の合計が20万円を超える場合(たとえば、総合課税の対象となる 利子や配当、あるいは原稿料などの雑所得その他の所得の合計が20万 円を超える場合) ③給与を2か所以上から受けている人で、従たる給与の収入金額と給与・ 退職所得以外の各種の所得金額との合計額が20万円を超える場合(た だし、その年中の給与収入から社会保険料控除・小規模企業共済等掛 金控除・生命保険料控除・地震保険料控除・障害者控除・寡婦(寡夫) 控除・勤労学生控除・配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除の額の 合計額を引いた残りが150万円以下で、かつ給与・退職所得以外の各種 の所得金額の合計が20万円以下の場合は確定申告不要) ④同 族会社の役員や親族などで、給与以外に、貸付金の利子や、店舗・ 工場などの賃貸料、機械器具の使用料等の支払いをその会社から受け ている場合 ⑤災 害により被害を受け災害減免法により源泉徴収を猶予または還付を 損失の申告 損失の控除や繰戻還付を受ける場合に は、以後3年間にわたって繰越控除を受 は、損失の申告をすることができます。 けることができます。 損失の申告とは、純損失や雑損失等が発 ◆損失の繰戻還付 生した場合に、損失用の申告書を用いて 純損失が発生し、かつ青色申告を行っ その内容を申告するものです。具体的に ている場合には、その年の損失が前年に は次の通りです。 発生したと仮定して、前年に納めた税金 ◆損失の繰越控除 の還付を受けることができます。これを 「損失の繰越控除」でも述べましたが 繰戻還付といいます。なお、繰戻還付を (29ページ参照)、その年に発生した純 受けた金額について、重ねて繰越控除を 損失や雑損失などの一定の損失について 受けることはできません。 受けた場合 48 16税金読本̲p017-052̲02.indd 48-49 49 16.10.31 4:48:48 PM ● 所得税の基礎知識 ◆ 税金の納付方法 申告所得税の納付方法には、次の3種 先ほどの「損失の申告」のところで、損失用の申告書を 使用すると書いてありました。内容によって使用する申 告書が違うのでしょうか? 提出する必要があります。なお、振替納 類があります。 税の引き落とし日は3月15日ではなく、 ◆ (1)納付書で現金納付する方法 金融機関又は所轄の税務署で納付書を 用いて納付することができます。 所得税の確定申告書には、 る所得の種類に応じてAかBかが決 大きく分けて申告書A、申 まり、さらに目的に合わせて必要な 告書B、別表の3種類があります。 別表を組み合わせます。これらの申 さらに別表は、分離課税用(三表) 、 告書の組み合わせを一覧にすると、 損失申告用(四表)、修正申告用(五 次のようにまとめられます。 は、コンビニエンスストアでの納付も可 能です。 ●所得の種類と使用する申告書 確認しておくだけで、金融機関又は税務 振替納税を利用すると、預貯金残額を 申告する所得と目的 A 給与所得・雑所得・配当所得・一時所得の4 種類だけを申告する場合 ○ B ※1 ○ 損失申告を行う場合※2 ○ ※1 ※2 分離 署に出向かなくても自動的に納付ができ 表 損失 総合課税対象の所得のみの場合 ○ 分離課税対象の所得がある場合 ○ 一定の条件を満たす人は予定納税を行 ○ ○ ○ ○ ○ 所得税の納付 ◆ 納付の原則と延納 申告と同様に2月16日から3月15日まで とされています。 す。これを延納といいます。 定の延納届出書を提出するか、確定申告 書の「延納の届出」欄に必要事項を記入 ない場合は、税金の1/2以上を期限内に することが必要です。延納の際には、所 納付すれば、残額については同年の5月 得税の残額に一定の利子税を加えた金額 31日まで納付を延期することができま を納付することになります。 16税金読本̲p017-052̲02.indd 50-51 事前に「開始届出書」の提出が必要とな ります。 くわしくは52ページのCheck Point!を 参照して下さい。 ただし、その年の所得税の見積り額が、 う必要があります。税務署は、前年の確 災害等により通知された予定納税基準額 定申告をした人について、前年分の所得 より少なくなる見込みのときは、予定納 金額や税額などをもとに予定納税基準額 税額の減額を申請することができます。 を計算します。予定納税基準額が15万円 具体的には、6月30日時点を基準に計算 以上である場合には、その年の所得税の した見積り額、申請理由などを記載した 一部を事前に納付することが求められま 「予定納税額の減額申請書」を、7月15 す。これを予定納税といいます。対象と 日までに所轄税務署長に提出します(11 なる納税者には、その年の6月15日まで 月分については10月31日時点の見積り額 に予定納税基準額、予定納税額が通知さ とし、11月15日までに提出します。実際 れます。納税者は、税務署から通知され に減額を受けるには税務署長の承認が必 た予定納税基準額の1/3ずつを7月と11 要です)。予定納税基準額は、次のよう 月の2回に分けてあらかじめ納付する必 に計算されます。 要があります。 この場合、納税者は3月15日までに所 ただし、この期限内に全額を納付でき 50 による電子納税方法です。利用の際には、 修正 申告書Bは、所得の種類にかかわらず使用可能です。 その年の一定の損失を翌年以後に繰り越す場合や、前年からの繰越損失額があり、かつ翌年 以後への繰越損失額がある場合など 所得税の納付期限は、原則として確定 ◆ (3)インターネットバンキング 等を利用して電子納税する方法 ◆ 予定納税 分離課税の所得、山林所得、退職所得がある 場合(損失申告の場合は除く) 修正申告 の場合 別 平成29年1月から、領収証書の送付が 取りやめとなりました。 国税電子申告・納税システム(e-Tax) 表)の3種類に分かれます。申告す 使用する確定申告書 申告書 申告書 4月中旬頃となります。 納付税額が30万円以下など一定の場合 ◆ (2)指定した金融機関の預貯金 口座から振替納税する方法 ます。利用の際には、口座振替依頼書を 所 得 税 確定申告書の種類 予定納税基準額 =前年の各種所得金額に対する所得税額 −前年の各種所得に対する所得税の源泉徴収税額※ ※ 成25年以後においては、復興特別所得税の分も予定納税を行うため、上記の計算結果 平 に1.021を乗じます。 51 16.10.31 4:48:48 PM 国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用した電子納税 申告所得税等については、国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用 した電子納税が利用できます。 電子納税は自宅に居ながらにして納付手続が可能となるため、納税手続の ための場所的・時間的制約がない便利な方法です。また、確定申告書の添付 書類のうち一定のものについては、添付・提出を省略できます。 e-Taxを利用するためには、事前手続が必要です。具体的には、 「電子証 明書」の取得および電子申告・納税等の「開始届出書」の所轄税務署長への 提出が必要となります。電子証明書については、個人番号カード(マイナン バーカード)に搭載された電子証明書をICカードリーダライタで読み込む ことでも利用できます。 納付方法は、ダイレクト納付またはインターネットバンキング等による電 子納税の2つがあります。 ダイレクト納付とは、事前に税務署へ届出等をしておき、e-Taxを利用し て電子申告等又は納付情報登録をした後に、届出をした預貯金口座からの振 替により納付する方法です。申告所得税、贈与税等の電子申告等が可能な税 目の全てについて、納税が可能です。 インターネットバンキング等による電子納税とは、事前に納付情報データ をe-Taxに登録するか(登録方式) 、納付情報データの登録をせずに(入力 方式)、インターネットバンキング等からの振替により納付する方法です。 インターネットバンキングのほか、モバイルバンキングやATMを利用した 納税も可能です。また、平成29年1月4日以後の納付委託からは、クレジッ トカードの利用もできるようになりました。 登録方式では全税目について納税が可能ですが、 入力方式では申告所得税、 法人税、地方法人税、消費税および地方消費税、申告所得税および復興特別 所得税、復興特別法人税の6税目のみ納税が可能となります。 なお、電子納税では領収証書は発行されないため、領収証書が必要な場合 は従来どおり、窓口に納付書を持参して納付を行う必要があります。 52 16税金読本̲p017-052̲02.indd 52 16.10.31 4:48:48 PM
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