みずほ日本経済情報 - みずほ総合研究所

みずほ日本経済情報
2017年1月号
◆ トピック
回復局面にあるITサイクル
世界のITサイクルは昨年半ばに底入れ。過去の循環を踏
まえれば、少なくとも今年後半にかけて拡大局面が続き、
その下で国内の生産も回復基調を維持する見込み
◆ 景気判断
景気は緩やかに回復。先行きも緩やかな回復が続く
ITサイクルの改善を受け、輸出・鉱工業生産は緩やかに
回復している。個人消費も、堅調な雇用・所得情勢を背景
に持ち直しつつある。
1.総
括
日本経済の現状と先行
き
日本経済は緩やかに回復している。ITサイクルの改善を背景に、輸出・
鉱工業生産は緩やかに回復している。雇用・所得情勢が堅調に推移する中、
個人消費も持ち直しつつある。ただし、経済の活動水準は潜在生産量(物価
変動に対して中立的とみられる生産量)を引き続き下回っている。
先行きの日本経済は、IT産業を中心とする輸出の回復や公共投資の増加、
個人消費が底堅く推移することなどにより、緩やかな回復が続くとみられる。
ただし、経済活動の水準は、潜在生産量を下回る状態が続くだろう。
世界的に製造業の持ち直しが鮮明となっている。各国のPMI(購買担当
トピック
「回復局面に入ったI
Tサイクル」
者指数)は好調を維持し、長らく横ばい圏内の推移が続いていた日本の鉱工
業生産も緩やかな回復の動きに転じている(対外部門・企業部門の節を参照)
。
こうした持ち直しの背景にあるのが、世界的なITサイクルの改善だ。世界
の半導体出荷額は、2014 年初をピークに弱含んでいたが、2016 年半ばに底入
れした(図表 1)
。90 年代後半以降における出荷サイクルの回復局面は 1~2
年程度続いてきたため、少なくとも今年の後半にかけて改善が期待できる状
況だ。日本メーカーに関しては、昨秋発売されたスマートフォンの新型機種
の生産が抑制されるというマイナス要因がある一方、中国における新興スマ
ホメーカーの台頭やIoT需要の高まりが押し上げ要因になることが指摘さ
れている。実際、電子部品・デバイスの在庫調整圧力を表す出荷・在庫バラ
ンス(出荷前年比-在庫前年比)は、昨年の夏場から急速に改善している(図
表 2)
。
電・デバ以外の業種についても、調整が遅れていた素材業種も含め、出荷・
在庫バランスはプラスに転じている。欧州の政治状況やドル高などに伴う新
興国経済の脆弱性には引き続き留意が必要だが、循環的な調整圧力が解消し
たことを踏まえれば、国内景気は当面緩やかな回復が続く可能性が高い。
図表 1 世界半導体出荷額
図表 2
(前年比、%)
80
40
60
業種別の出荷・在庫バランス
(%)
(%)
30
電子部品・デバイス
8
電・デバ除く機械業種
6
その他業種(右目盛)
40
20
4
20
10
2
0
0
0
-20
-10
-2
-40
-20
-4
-6
-30
-60
13
95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(年)
(注) 太線は 3 カ月移動平均。
(資料) WSTS より、みずほ総合研究所作成
14
15
16
(年)
(注) 出荷前年比(%)-在庫前年比(%)
。3 カ月移動平均値。
(資料)経済産業省「鉱工業指数」より、みずほ総合研究所作成
1
みずほ日本経済情報(2017 年 1 月号)
図表 3
景気判断
1月
12月
(現状判断)
(現状判断)
(先行き判断)
総括
対
外
部
門
企
業
部
門
家
計
部
門
政
府
・
物
価
経済活動の方向性
持ち直している
緩やかに回復している
緩やかな回復が続く
経済活動の水準
潜在生産量を下回っている
潜在生産量を下回っている
潜在生産量を下回る状態が続く
海外経済
緩やかに回復している
緩やかに回復している
緩やかな回復を維持する
輸出
底堅く推移している
緩やかに回復している
緩やかな回復が続く
輸入
底堅く推移している
持ち直しつつある
緩やかに回復する
生産・サービス活動
持ち直しつつある
持ち直している
緩やかに回復する
緩やかに回復する
企業収益
底打ちしつつある
底打ちしつつある
企業マインド
持ち直しつつある
持ち直している
底堅く推移する
設備投資
横ばいで推移している
横ばいで推移している
緩やかに回復する
緩やかな回復が続くものの、改善幅は縮小する
雇用者所得
回復傾向にある
回復傾向にある
消費者マインド
改善が一服している
改善傾向にある
底堅く推移する
個人消費
持ち直しつつある
持ち直しつつある
底堅く推移する
住宅着工
増勢が一服している
弱含んでいる
弱含みが続く
緩やかに増加する
公的需要
緩やかに増加している
力強さを欠いている
国内企業物価
前年比マイナス幅が縮小している
前年比マイナス幅が縮小している
プラスに転じる
消費者物価
前年比マイナスで推移している
前年比マイナスで推移している
緩やかに持ち直す
金融政策
金融緩和を進めている
金融緩和を進めている
現行の政策を継続する
(注) 1.矢印の向きは景気の方向性を示している。上向きが拡大局面、横向きが横ばい局面、下向きが後退局面を意味する。
2. 矢印の色は生産の水準感を示している。白は潜在生産量を上回る、紺は潜在生産量を下回る、白紺の縦縞は潜在生産量程度
の生産量を意味する。
3. 先行き判断は、3 カ月程度先の動きに関する判断を示している。
(資料) みずほ総合研究所
図表 4
景気の全体観を示す主要統計
FY2014
景気動向指数
2016Q2
2016Q3
2016Q4
2016/08
2016/09
2016/10
2016/11
2016/12
前期差、Pt
-
-
-
-
-
0.5
▲ 0.5
0.8
1.9
CI 一致指数
前期差、Pt
-
-
-
-
-
▲ 0.3
0.8
1.0
1.6
n.a.
CI 遅行指数
前期差、Pt
-
-
-
-
-
▲ 0.1
0.8
▲ 0.7
▲ 0.3
n.a.
n.a.
DI 先行指数
%
-
-
-
-
-
36.4
50.0
80.0
66.7
n.a.
DI 一致指数
%
-
-
-
-
-
80.0
60.0
94.4
100.0
n.a.
DI 遅行指数
%
-
-
-
-
-
55.6
55.6
62.5
60.0
n.a.
前期比、%
▲ 1.1
0.9
0.3
0.6
0.3
0.2
0.0
0.2
n.a.
n.a.
鉱工業
前期比、%
▲ 0.5
▲ 1.0
0.2
1.3
1.6
1.3
0.6
0.0
1.5
n.a.
第3次産業
前期比、%
▲ 1.1
1.4
0.2
0.3
▲ 0.1
0.0
▲ 0.3
0.0
0.2
n.a.
建設業
前期比、%
▲ 3.5
1.2
2.0
1.7
0.4
▲ 1.1
1.6
▲ 0.3
n.a.
n.a.
全産業活動指数 全産業
国民経済計算
FY2015
CI 先行指数
実質GDP
前期比、%
▲ 0.4
1.3
0.5
0.3
n.a.
-
-
-
-
-
前期比年率、%
-
-
1.8
1.3
n.a.
-
-
-
-
-
民需
寄与度、%Pt
▲ 1.0
0.8
0.7
▲ 0.1
n.a.
-
-
-
-
-
公需
寄与度、%Pt
0.0
0.3
▲ 0.1
0.1
n.a.
-
-
-
-
-
外需
寄与度、%Pt
0.6
0.2
▲ 0.1
0.3
n.a.
-
-
-
-
-
名目GDP
年率、兆円
517.9
532.2
536.7
537.3
n.a.
-
-
-
-
-
前期比、%
2.1
2.8
0.2
0.1
n.a.
-
-
-
-
-
前年比、%
2.5
1.4
0.4
▲ 0.2
n.a.
-
-
-
-
-
前年比、%
2.1
0.0
▲ 0.7
▲ 0.8
n.a.
-
-
-
-
-
GDPデフレーター
内需デフレーター
(注) 1.全産業活動指数の産業別内訳のうち、鉱工業は鉱工業指数、第 3 次産業は第 3 次産業活動指数の値。
2. 実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。
3. 2016 年 10~12 月期の前期比は、10 月または 10・11 月の 7~9 月期に対する変化・変化率。
(資料) 内閣府「景気動向指数」、「四半期別GDP速報」、経済産業省「全産業活動指数」、「鉱工業指数」、「第 3 次産業活動指数」
2
みずほ日本経済情報(2017 年 1 月号)
2.対外部門
海外経済
海外経済は緩やかに回復している。
米国では 12 月製造業ISM指数が 2014
年 11 月以来の高い水準になった(図表 1)ほか、非製造業ISM指数も前月
の高水準を維持した(図表 2)
。ユーロ圏PMI指数は非製造業が前月から横
ばい圏で推移したものの、製造業が前月をやや上回った。中国は製造業、非
製造業ともに前月から若干低下したものの、景気判断の目安となる 50 を上回
る状況が続いている。
今後の海外経済は、緩やかな回復を維持する見込みである。米国は個人消
費が景気を下支えするだろう。一方、ユーロ圏については、英国のEU離脱
交渉の本格化や欧州各国での選挙を控えるなか、先行き不透明感が設備投資
などの下押し要因となり、回復は緩やかなものにとどまりそうだ。中国経済
は資本ストック調整が重石となるものの、財政出動により下支えされ、当面
横ばい圏で推移するだろう。ただし、ドル高に伴い新興国の資金流出リスク
が高まれば、新興国経済の下押し圧力になる可能性もあり注視が必要だろう。
輸出
輸出は緩やかに回復している。11 月の輸出数量指数は前月比+3.3%(10 月
同+0.0%)と、前月から上昇した。EU向けは横ばい圏での推移となったも
のの、米国及びアジア向けが前月から増加した。財別では、輸送用機器が 4
カ月連続での増加となったほか、化学製品や一般機械が前月から増加した(図
表 3)
。先行きについては、世界経済の持ち直しに伴い、輸出は緩やかな回復
が続くとみている。
インバウンド
11 月の訪日外客数は前年比+13.8%(10 月同+16.8%)と高水準の伸び率
を維持した(図表 4)
。前月の台風発生による悪影響が収束したことで、中国
人が押し上げ要因となった。先行きについては、増加傾向が続く見込みだ。
LCCなどの航空路線の新規就航・増便やクルーズ船の寄港増加といった供
給側からの押し上げが続くと見込まれることに加え、円安も追い風となろう。
輸入
輸入は持ち直しつつある。11 月の輸入数量指数は前月比+1.2%(10 月同
+0.6%)と増加した。鉱物性燃料の輸入が前月から増加したほか、食料品や
化学製品などが持ち直した。先行きについては、国内の生産活動の持ち直し
経常収支
に伴い、緩やかに回復する見通しである。
経常収支(季節調整値)は、高めの黒字が続いている。11 月の経常黒字は
21.6 兆円(年率換算値)と前月(23.1 兆円の黒字)から若干減少した。輸送
用機器や化学製品の輸出の増加が寄与し貿易収支の黒字幅が拡大したものの、
サービス収支が赤字に転換したほか、第一次所得収支の黒字幅が縮小した。
ただし経常収支の 10・11 月平均は 7~9 月平均対比では黒字幅がやや拡大し
ており、均してみれば大幅な黒字基調が続いている。
先行きについては、原油価格の持ち直しにより輸入物価の上昇が見込まれ
るものの、輸出数量が持ち直すことから、貿易収支は黒字を維持すると予想
する。また円安の影響から第一次所得収支は大幅な黒字が続くと考えられ、
経常収支は当面高水準の黒字を維持する見通しである。
3
みずほ日本経済情報(2017 年 1 月号)
図表 1
60
米欧中の景況感(製造業)
図表 2 米欧中の景況感(非製造業)
(指数)
(指数)
60
米国製造業ISM
ユーロ圏製造業PMI
中国製造業PMI
55
55
50
50
米国非製造業ISM
ユーロ圏非製造業PMI
中国非製造業PMI
45
45
14/1
14/7
15/1
15/7
16/1
16/7
14/1
(年/月)
14/7
15/1
15/7
16/1
16/7
(年/月)
(注)指数が 50 以上で景況感の回復、50 未満で景況感の悪化を示唆。
(注)指数が 50 以上で景況感の回復、50 未満で景況感の悪化を示唆。
(資料)米サプライマネジメント協会、Markit、中国物流購買連合会より、 (資料)米サプライマネジメント協会、Markit、中国物流購買連合会より、
みずほ総合研究所作成
みずほ総合研究所作成
図表 3
輸出数量指数(財別)
(2010年=100)
図表 4
100
中国
欧米豪諸国
(前年比、%)
一般機械
化学製品
電気機器
輸送用機器
総合
110
訪日外国人客数
70
NIEs
その他
ASEAN
全体
60
50
40
90
30
20
80
10
0
70
14/1
14/7
15/1
15/7
16/1
16/7
▲ 10
(年/月)
(注) みずほ総合研究所による季節調整値。
(資料) 財務省「貿易統計」より、みずほ総合研究所作成
14/01
14/07
15/01
15/07
16/01
16/07 (年/月)
(資料) 日本政府観光局より、みずほ総合研究所作成
図表 5 対外部門の主要統計
FY2014
海外経済
CPB生産指数
米国
FY2015
2016Q2
2016Q3
2016Q4
2016/08
2016/09
2016/10
2016/11
2016/12
前期比、%
2.2
1.1
0.3
0.5
n.a.
1.1
▲ 0.2
0.0
n.a.
n.a.
前期比、%
3.1
▲ 0.7
▲ 0.2
0.5
n.a.
▲ 0.1
▲ 0.2
0.1
n.a.
n.a.
ユーロ圏
前期比、%
0.8
1.4
▲ 0.3
0.4
n.a.
2.1
▲ 0.8
▲ 0.1
n.a.
n.a.
アジア
前期比、%
4.3
2.7
1.4
0.7
n.a.
0.6
0.2
▲ 0.1
n.a.
n.a.
DI
▲ 3.1
▲ 2.7
▲ 4.6
14.6
0.1
▲ 1.1
19.1
1.5
0.7
n.a.
2.9
3.2
49.4
51.7
50.4
20.8
0.1
▲ 10.9
51.5
52.6
50.4
16.2
1.9
9.5
51.9
53.5
51.2
16.3
0.0
▲ 0.0
53.2
53.7
51.7
14.3
3.3
2.1
54.7
54.9
51.4
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
製造業の業況
米国(ISM)
ユーロ圏(PMI)
中国(PMI)「国家統計局版」
実質実効為替レート
輸出
輸出数量
米国向け
欧州向け
前期比、%
▲ 4.9
1.3
0.1
前期比、%
3.4
4.7
▲ 2.0
1.0
1.1
▲ 0.7
1.0
0.6
0.1
前期比、%
1.9
▲ 1.7
1.6
1.4
2.4
0.5
▲ 1.4
2.3
1.6
n.a.
前期比、%
▲ 2.3
▲ 2.7
0.5
1.4
6.3
▲ 3.2
1.9
5.3
1.6
n.a.
実質輸出
前期比、%
インバウンド 訪日外客数
訪日外国人旅行消費額
輸入
輸入数量
実質輸入
対外収支
経常収支
貿易・サービス収支
前年比、%
年率、兆円
2.8
33.6
48.0
▲ 2.0
▲ 0.7
8.7
0.7
45.6
60.6
▲ 2.1
1.2
18.0
1.1
19.0
7.2
▲ 0.1
▲ 1.4
18.5
0.7
17.1
▲ 2.9
0.6
0.6
19.9
2.8
n.a.
n.a.
0.7
▲ 0.5
22.4
1.3
12.7
▲ 1.5
▲ 0.7
23.6
0.9
19.0
0.0
0.9
18.4
0.1
16.8
0.6
▲ 1.3
23.1
3.4
13.8
1.2
0.8
21.6
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
年率、兆円
▲ 9.3
▲ 0.6
3.3
4.8
7.2
6.3
4.8
7.6
6.9
n.a.
年率、兆円
20.0
20.6
17.3
17.7
17.5
19.9
16.6
17.9
17.0
n.a.
アジア向け
うち中国向け
第一次所得収支
DI
DI
前年比、%
前期比、%
前年比、%
前期比、%
前期比、%
(注) 1.実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。
2. 2016 年 10~12 月期の前期比は、10 月または 10・11 月の 7~9 月期に対する変化・変化率。
3.輸出数量及び輸入数量はみずほ総合研究所による季節調整値。
(資料) 財務省「貿易統計」
、日本銀行「実質輸出入」
、
「国際収支統計」
、
「外国為替相場」
、日本政府観光局「訪日外客数」
、観光庁「訪日外国人
消費動向調査」
、米サプライマネジメント協会、Markit、中国物流購買連合会、CPB Netherlands Bureau for Economic Policy Analysis
4
みずほ日本経済情報(2017 年 1 月号)
3.企業部門
生産・サービス活動
生産・サービス活動は、持ち直している。11 月の鉱工業生産は、前月比
+1.5%と 2 カ月ぶりに上昇した(図表 1)
。一部の素材業種が小幅にマイナス
寄与となったものの、多くの業種がプラス寄与となった。世界的なITサイ
クルの改善から、電子部品・デバイス工業が増産傾向を維持し、内需の好調
などから輸送機械工業も堅調だった。11 月の第 3 次産業活動指数は、4 カ月
ぶりの増加となり、底堅く推移している。
先行きについては、緩やかに回復するとみている。製造業は、12~1 月にか
けて増産計画となっている。計画の実現率が下振れしやすい業種の寄与が大
きいものの、出荷在庫バランスの改善にみられるように在庫調整局面を脱し
ていることもあり、緩やかな増産テンポが維持されよう。サービス活動も、
個人消費の底堅さを受けて、緩やかに回復しよう。
企業収益・財務
企業収益は、底打ちしつつある。法人企業統計では、7~9 月期の経常利益
は前年比で大幅に改善し、個社要因による上振れを除いても前年比マイナス
幅は縮小した。
12 月調査の日銀短観では、経常利益計画が 9 月調査からほぼ変わらなかっ
た(図表 2)
。非製造業は上方修正となったものの、想定為替レートが円高修
正(104.9 円/ドル)されたことにより、製造業の利益計画が下方修正となっ
た。ただし、調査対象企業は、米大統領選挙前の 7~9 月期決算時に固めてい
た想定レートを回答したとみられ、次回調査では実勢レートの動きに合わせ
て想定レートが円安修正される可能性が高い。先行きについては、円安が進
展していることや、世界経済が持ち直していくことなどにより、収益は緩や
かに回復するだろう。
企業マインド
企業マインドは、持ち直している。12 月調査の日銀短観では、大企業の現
状判断DIが製造業を中心に改善した(図表 3)
。輸出の持ち直しなどが寄与
したとみられる。また、12 月の景気ウォッチャー調査の現状判断DIは前月
から横ばいで推移し、改善傾向を維持した。
今後の企業マインドは、底堅く推移するだろう。世界経済の持ち直しや円
安はプラス要因となる一方、トランプノミクスや欧州の政治動向などに対す
る不透明感が重石となりそうだ。
設備投資
設備投資は、横ばいで推移している。なお、11 月の資本財出荷は 4 カ月連
続のプラスとなり、足元の機械設備投資には持ち直しの兆しがみられる。
先行指標をみると、建築着工(民間非居住用)は底堅く推移しており、機
械受注(船舶、電力除く民需)は製造業に持ち直しの兆しがみられる。12 月
調査の日銀短観では、設備投資計画は 9 月調査から下方修正され、例年と比
較して弱めの結果となった(図表 4)
。ただし、上述のように、次回調査では
収益計画の修正に伴い、投資計画も上方修正される可能性がある。加えて、
オリンピックおよびインバウンド対応、また無形資産などへの投資は引き続
き底堅くするだろう。先行きの設備投資は緩やかに回復する見通しである。
5
みずほ日本経済情報(2017 年 1 月号)
図表 1 鉱工業生産、第 3 次産業活動指数
(2010=100)
図表 2 経常利益計画(全規模全産業)
(2010=100)
(前年比、%)
106
115
鉱工業生産指数
35
第3次産業活動指数(右目盛)
2013年度
30
105
110
25
予測指数
20
104
15
105
2014年度(旧ベース)
2015年度
10
103
5
100
102
0
▲5
95
101
▲ 15
100
90
13/1 13/4 13/7 13/10 14/1 14/4 14/7 14/10 15/1 15/4 15/7 15/10 16/1 16/4 16/7 16/10 17/1
2014年度(新ベース)
▲ 10
2016年度
3月調査
(年/月)
(資料) 経済産業省「鉱工業指数」
、
「第 3 次産業活動指数」より、みずほ総合
総合研究所作成
12月調査
見込
実績
図表 4 設備投資計画(全規模全産業)
大企業非製造業
30
9月調査
(資料)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より、みずほ総合研究所作成
図表 3 大企業の業況判断DI
(%Pt)
6月調査
先行き
20
2014年度(旧ベース)
(前年比、%)
2015年度
10
8
2013年度
10
6
0
4
▲ 10
▲ 20
▲ 30
2014年度
(新ベース)
2
大企業製造業
2016年度
0
▲ 40
▲2
▲ 50
▲ 60
▲4
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17 (年)
3月調査
(資料)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より、みずほ総合研究所作成
図表 5
活動
マインド
見込
実績
(注)土地除くソフトウェア含む。
(資料)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より、みずほ総合研究所作成
FY2015
2016Q2
2016Q3
2016Q4
2016/08
2016/09
2016/10
2016/11
2016/12
▲ 0.5
▲ 1.0
0.2
1.3
1.6
1.3
0.6
0.0
1.5
鉱工業出荷指数
前期比、%
▲ 1.2
▲ 1.2
0.2
0.7
3.3
▲ 1.1
1.8
2.0
0.9
n.a.
鉱工業在庫指数
前期比、%
6.1
1.8
▲ 1.3
▲ 2.6
0.5
0.3
▲ 0.5
▲ 2.1
▲ 1.5
n.a.
n.a.
n.a.
%Pt
▲ 7.3
▲ 3.0
▲ 2.0
▲ 1.4
n.a.
3.2
2.7
1.0
9.8
製造工業設備稼働率指数
前期比、%
0.6
▲ 2.6
▲ 2.0
1.9
n.a.
2.6
▲ 2.0
1.4
n.a.
n.a.
第3次産業活動指数
前期比、%
▲ 1.1
1.4
0.2
0.3
▲ 0.1
0.0
▲ 0.3
0.0
0.2
n.a.
経常利益
前年比、%
5.9
4.9
▲ 10.0
11.5
n.a.
-
-
-
-
-
前期比、%
5.9
n.a.
7.5
7.9
n.a.
-
-
-
-
-
製造業
前年比、%
6.3
▲ 4.6
▲ 22.4
▲ 12.2
n.a.
-
-
-
-
-
非製造業
前年比、%
5.6
10.3
▲ 3.1
24.5
n.a.
-
-
-
-
-
大企業業況判断DI
%Pt
-
-
12
12
14
-
-
-
-
-
製造業
%Pt
-
-
6
6
10
-
-
-
-
-
非製造業
%Pt
-
-
19
-
18
-
18
-
46.3
47.7
48.3
48.3
48.8
中小企業景況判断指数
景気ウォッチャー調査DI
設備投資
12月調査
前期比、%
出荷・在庫バランス
収益・財務
9月調査
企業部門の主要統計
FY2014
生産・サービス 鉱工業生産指数
6月調査
%Pt
-
-
-
-
-
46.0
46.3
48.4
51.4
51.4
前期比、%
5.2
7.5
▲ 1.2
0.4
n.a.
-
-
-
-
-
前期比、%
7.0
11.2
0.3
▲ 2.5
n.a.
-
-
-
-
-
前期比、%
4.3
5.6
▲ 2.1
2.1
n.a.
-
-
-
-
-
資本財出荷(除く輸送機械)
前期比、%
資本財総供給(除く輸送機械)
機械受注(船舶・電力除く民需)
建築物着工床面積(非居住用)
前期比、%
4.4
9.8
▲ 2.3
▲ 1.6
3.4
2.4
1.0
1.6
3.6
2.8
0.2
1.5
0.3
▲ 0.2
2.1
2.5
2.2
n.a.
n.a.
n.a.
ソフトウェア受注額
前年比、%
名目設備投資(ソフトウェア除く)
製造業
非製造業
前期比、%
0.8
4.1
▲ 9.2
7.3
▲ 1.5
▲ 2.2
▲ 3.3
4.1
▲ 5.1
n.a.
前期比、%
▲ 6.9
3.6
▲ 4.9
1.3
8.3
1.5
▲ 2.5
0.7
▲ 2.0
n.a.
33.6
2.9
▲ 9.4
0.2
▲ 9.6
▲ 0.3
11.7
3.1
n.a.
n.a.
(注)1. 実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。
2. 2016 年 10~12 月期の前期比は、10 月または 10・11 月の 7~9 月期に対する変化・変化率。
(資料) 経済産業省「鉱工業指数」
、
「第 3 次産業活動指数」
、
「鉱工業総供給表」
、
「特定サービス産業動態統計調査」
、財務省「法人企業統計」
、日本銀行「全国企業
短期経済観測調査」
、帝国データバンク「全国企業倒産集計」
、商工組合中央金庫「中小企業月次景況観測」
、内閣府「景気ウォッチャー調査」
、
「機械受注
統計調査報告」
、国土交通省「建築着工統計調査報告」
6
みずほ日本経済情報(2017 年 1 月号)
4.家計部門
雇用者所得
雇用者所得は回復傾向にある。11 月の失業率は 3.1%と 0.1%Pt 上昇した
ものの、有効求人倍率(図表 1)は、1.41 倍と 3 カ月連続で上昇した。11 月
の名目賃金は、前年比+0.2%と小幅な増加が続いた。所定外給与、特別給与
の減少が押し下げに寄与したが、所定内給与は堅調に推移した。実質雇用者
所得(常用雇用×実質賃金(※)
)は、実質賃金が 11 カ月ぶりにマイナスに
転じたことで、同+1.2%と前月から伸びが鈍化した(図表 2)
。
今後、雇用者所得は緩やかな回復が続くものの、改善幅は縮小するだろう。
日銀短観(12 月調査)をみると、中小企業を中心に人手不足感は強まってお
り、雇用情勢は緩やかな改善が続く見込みである。名目賃金も所定内給与を
中心に緩やかに増加するだろう。実質賃金については、生鮮食品価格の上昇
が一服していることから、食品による押し下げ効果は緩和される見込みだが、
原油価格が持ち直しているため、今後はエネルギー価格が実質雇用者所得の
押し下げ要因になる公算が大きい。
(※)消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)を用いて実質化。
消費者マインド
消費者マインドは改善傾向にある。12 月の消費者態度指数は、3 カ月ぶり
に前月を上回った。生鮮食品価格の上昇が一服したことに加え、円安による
企業収益の改善期待や株高もプラスに働いた模様だ。今後の消費者マインド
は、雇用者所得の緩やかな回復を背景に底堅く推移する見込みである。
個人消費
個人消費は持ち直しつつある。11 月の消費活動指数(旅行収支調整済)は
前月比▲0.1%とマイナスに転じたが、10~11 月平均でみると 7~9 月期比
+0.5%となった(図表 3)
。実質消費支出(家計調査)は前月比▲0.6%、10
~11 月平均でみても 7~9 月期比▲0.7%となった。家計調査はサンプル要因
の影響もあり、実勢より弱めの結果となっている可能性がある。足元(12 月)
については、新車販売台数の増加基調が続いているほか、株高を背景に高額
品等の販売が好調だったことを背景に、大手百貨店売上高は 5 社中 3 社(※)
が増収となった。
(※)大丸松坂屋は建替え工事中の心斎橋店を除くベース。
先行きの個人消費は、耐久消費財のストック調整が緩和していることなど
から底堅く推移すると予測する。もっとも、円安による日用品の値上がりが
下押し圧力となる可能性がある。
住宅着工
住宅着工は弱含んでいる。11 月の新設着工戸数(季調済み年率)は 93.7
万戸と 2 カ月連続で減少した。利用関係別にみると、持家(前月比▲1.6%)
・
貸家(同▲1.1%)
・分譲住宅(同▲4.8%)のすべてが減少した(図表 4)
。減
少幅の大きかった分譲住宅は、マンションと一戸建て共に首都圏が低下に寄
与した。
貸家は、受注が力強さを欠いており、相続税対策による押し上げ効果がピ
ークアウトした可能性が高い。住宅着工は、今後も弱含みが続く見込みであ
る。
7
みずほ日本経済情報(2017 年 1 月号)
図表 1 失業率・有効求人倍率の推移
図表 2
(倍)
(%)
3.6
3.5
(前年比、%)
4.0
1.45
失業率
有効求人倍率(右目盛)
実質雇用者所得の推移
物価要因
名目賃金要因
雇用者数要因
実質雇用者所得
3.5
1.40
3.0
3.4
3.3
1.35
2.5
1.30
2.0
3.2
1.5
1.25
3.1
1.0
1.20
3.0
0.5
0.0
1.15
2.9
▲ 0.5
1.10
2.8
15/1
15/4
15/7
15/10
16/1
16/4
16/7
▲ 1.0
15/11
16/10
16/01
16/03
16/05
16/07
16/09
(年/月)
(資料)総務省「労働力調査」
、厚生労働省「一般職業紹介状況」より、
みずほ総合研究所作成
図表 3
(資料) 厚生労働省「毎月勤労統計調査」より、みずほ総合研究所作成
個人消費関連指標の推移
(2015年=100)
106
実質消費支出
図表 4 利用関係別着工の推移
(年率、万戸)
消費活動指数
45
104
持家
貸家
分譲住宅
マンション
一戸建
20
18
40
102
16
35
100
14
12
30
98
10
25
96
8
6
20
94
14/07
15/01
15/07
16/01
13
16/07
(年/月)
マインド
個人消費
住宅着工
名目賃金
実質賃金
名目雇用者所得(雇用者数×名目賃金)
実質雇用者所得(雇用者数×実質賃金)
消費者態度指数
消費総合指数
消費活動指数(実質・旅行収支調整済)
実質消費支出(二人以上の全世帯)
実質小売業販売額
新車販売台数(乗用車)
合計
持家
貸家
分譲住宅
%
前期差、万人
倍
前期比、%
前期比、%
前年比、%
前年比、%
前年比、%
前年比、%
%
前期比、%
前期比、%
前期比、%
前期比、%
年率、万台
年率、万戸
年率、万戸
年率、万戸
年率、万戸
15
13
16
14
15
16
(年)
(注)マンションおよび一戸建ては、みずほ総合研究所による季節調整値。
(資料)国土交通省「建築着工統計」より、みずほ総合研究所作成
図表 5
雇用・所得 完全失業率
就業者数
有効求人倍率
新規求人数
所定外労働時間
14
(年)
(資料)総務省「家計調査」
、日本銀行「消費活動指数」より、
みずほ総合研究所作成
(注) 1.
2.
3.
4.
5.
(資料)
16/11
(年/月)
家計部門の主要統計
FY2014 FY2015
3.5
3.3
38
28
1.12
1.24
3.6
4.2
2.0
▲ 1.4
0.5
0.2
▲ 2.9
▲ 0.2
1.3
1.1
▲ 2.2
0.8
▲ 2.3
0.7
▲ 2.2
0.1
▲ 5.0
▲ 1.6
▲ 4.6
0.5
445.3
411.5
88.0
92.1
27.8
28.4
35.8
38.4
23.6
24.7
2016Q2 2016Q3 2016Q4
3.2
3.0
3.1
9
39
▲ 14
1.36
1.37
1.41
2.7
0.5
0.8
0.0
▲ 0.2
0.6
0.6
0.5
n.a.
1.1
1.1
n.a.
2.2
2.0
n.a.
2.7
2.6
n.a.
0.1
0.3
0.0
0.1
0.6
0.5
▲ 0.2
▲ 0.5
▲ 0.7
▲ 0.1
1.0
0.7
414.4
415.5
437.4
100.5
98.2
95.7
29.8
29.8
28.3
42.8
44.9
42.3
27.1
23.7
24.2
2016/08 2016/09 2016/10 2016/11 2016/12
3.1
3.0
3.0
3.1
n.a.
▲ 12
▲ 15
6
▲ 11
n.a.
1.37
1.38
1.40
1.41
n.a.
▲ 0.8
0.9
0.7
▲ 0.3
n.a.
▲ 0.8
1.9
▲ 0.1
▲ 0.6
n.a.
0.0
0.0
0.1
0.2
n.a.
0.6
0.8
0.0
▲ 0.2
n.a.
1.5
1.5
1.7
1.7
n.a.
2.1
2.2
1.6
1.2
n.a.
42.0
43.0
42.3
40.9
43.1
▲ 0.8
0.9
0.1
▲ 0.8
n.a.
▲ 0.6
0.3
0.6
▲ 0.1
n.a.
▲ 3.7
2.8
▲ 1.0
▲ 0.6
n.a.
▲ 1.0
0.1
1.2
▲ 0.4
n.a.
424.5
415.9
423.0
441.6
447.5
95.6
98.4
97.8
93.7
n.a.
29.9
28.5
28.5
28.1
n.a.
44.6
44.8
42.5
42.1
n.a.
21.1
26.1
24.8
23.6
n.a.
実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。
2016 年 10~12 月期の前期比・前期差は、10 月または 10・11 月の 7~9 月期に対する変化・変化率。
消費総合指数は四半期系列、月次系列ごとに季節調整がかけられるため、月次平均と四半期値は一致しない。
実質小売業販売額は、みずほ総合研究所による計算値。
新車販売台数はみずほ総合研究所による季節調整値。
総務省「労働力調査」
「家計調査」
、厚生労働省「一般職業紹介状況」「毎月勤労統計」、内閣府「消費動向調査」「消費総合指数」、
経済産業省「商業動態統計」、国土交通省「建築着工統計」、日本銀行「消費活動指数」、日本自動車販売協会連合会等
8
みずほ日本経済情報(2017 年 1 月号)
5.政府部門・物価
公的需要
公的需要は力強さを欠いている。10 月の公共工事出来高は、2 カ月ぶりに
減少した。建設技能労働者の不足が続き、公共工事の進捗が遅れているよう
だ(図表 1)
。今後について、先行指標である 12 月の公共工事請負金額は 2
カ月連続で増加している。第二次補正予算などの経済対策が進捗することか
ら、公共投資は緩やかに増加するとみられる。政府消費は社会保障給付の拡
大により増加傾向が続き、公的需要全体では緩やかに増加する見込みである。
経済政策
政府は 12/22 に 2017 年度当初予算案を閣議決定した。一般会計の総額は
2016 年度当初予算比+0.8%の 97.4 兆円と 5 年連続で過去最高水準を更新し
た(図表 2)
。注目された社会保障関係費の伸びは、5,000 億円(自然増では
6,400 億円)に抑えられた。内訳をみると、①介護納付金の総報酬割の導入(前
年度差▲443 億円)や②高額療養費・高額介護サービス費の見直し(同▲237
億円)
、③後期高齢者の保険料軽減特例の見直し(同▲187 億円)
、④高額薬剤
の薬価引下げ(同▲196 億円)が決められた。高齢者負担分の増加(②、③)
といった痛みを伴う改革に踏み込んだ点は評価できるが、現役世代にとって
は社会保険料の増加が続く中で更なる負担増(①)となった。持続可能な社
会保障制度の整備に向けて、一段の改革が不可欠であろう。
国内企業物価
国内企業物価は前年比マイナス幅が縮小している。
11 月は前年比▲1.2%と、
7 カ月連続で前月からマイナス幅が縮小した(図表 3)
。原油価格の持ち直し
を受け、石油・石炭製品が約 2 年ぶりに前年比プラスに転じたことなどが寄
与した。なお、輸入物価のマイナス幅の縮小を受け、対外交易条件の改善幅
は低下が続いた。円安や原油価格の持ち直しがエネルギー価格に反映される
と想定されることから、企業物価指数は今後プラスに転じる見通しである。
消費者物価
消費者物価は前年比マイナスで推移している。11 月の全国コアCPI(生
鮮食品を除く)は、前年比▲0.4%と前月から横ばいで推移した(図表 4)
。エ
ネルギー価格が持ち直したものの、外国パック旅行費や宿泊料のプラス幅が
縮小したことが寄与し、米国基準コアCPI(食料(酒類除く)
・エネルギー
を除く)の伸びが同+0.1%と前月から鈍化した。12 月の都区部コアCPIは
同▲0.6%となり、前月からマイナス幅が拡大した。生鮮食品を除く食料の伸
びの鈍化などが寄与した。今後、全国コアCPIは、円安やエネルギー価格
の上昇を受けて緩やかに持ち直す見通しである。ただし、家計の節約志向が
残存するため、米国基準コアCPIの伸びは横ばい圏での推移が続くだろう。
金融政策
日銀は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に即して、金利水準を目
標に据えて金融緩和を進めている。12 月 20 日に開かれた金融政策決定会合で
は、現状の政策を維持することを決定した。黒田総裁は会合後の記者会見で、
マクロ的な需給バランスの改善や中長期的な予想物価上昇率の上昇により、
今後コアCPIは 2%に向けて上昇率を高めていくと考えられるとした。また、
コアCPIの実績値が安定的に 2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方
針を継続するとした。日銀は現行の政策を継続する見通しである。
9
みずほ日本経済情報(2017 年 1 月号)
図表 1
建設技能労働者過不足率の推移
図表 2
2017 年度当初予算案の内訳
29年度予算額
28年度予算額
(当初)
国債費
23.53
23.61
▲0.4%
一般歳出
58.36
57.83
+0.9%
32.47
31.97
+1.6%
文教及び科学振興費
5.36
5.36
▲0.0%
防衛関係費
5.13
5.05
+1.4%
公共事業関係費
5.98
5.97
+0.0%
その他
9.43
9.47
▲0.4%
地方交付税交付金等
15.57
15.28
+1.9%
合計
97.45
96.72
+0.8%
項目
(過不足率、%)
3.0
建設技能労働者不足率
(8職種計)
2.0
社会保障関係費
1.0
0.0
過
剰 ▲ 1.0
1
2
3
4
1
13
2
3
4
14
1
2
3
4
1
15
2
3
4
16
(年/四半期)
増減率
(注)過不足率の定義は以下の通り。
(確保できなった労働者数-過剰となった労働者数)/(確保している労働者 (注)予算額の単位は、兆円。
数+確保できなかった労働者数)×100
(資料) 財務省「平成 29 年度予算のポイント」より、みずほ総合研究所作成
(資料)国土交通省「建設労働需給調査結果」より、みずほ総合研究所作成
図表 3
国内企業物価指数
図表 4
生鮮食品を除く総合CPI
(前年比、%)
(前年比、%)
3
1.5
2
1.0
1
0.5
0
▲1
0.0
▲2
その他
非鉄金属
鉄鋼
石油・石炭製品
食料品
国内企業物価
▲3
▲4
▲5
13/1
13/7
14/1
▲ 0.5
エネルギー
食料(生鮮食品・酒類を除く)
米国基準コア
生鮮食品を除く総合
▲ 1.0
▲ 1.5
14/7
15/1
15/7
16/1
13/1
16/7 (年/月)
(注) 消費税率引き上げの影響を除くベース。
(資料) 日本銀行「企業物価指数」より、みずほ総合研究所作成
13/7
14/1
14/7
15/1
15/7
16/1
16/7
(年/月)
(注) 消費税率引き上げの影響を除くベース。
(資料) 総務省「消費者物価指数」より、みずほ総合研究所作成
図表 5 政府部門・物価の主要統計
FY2014
公的需要
税収
商品市況
2016Q2
2016Q3
2016Q4
2016/08
2016/09
2016/10
2016/11
2016/12
前期比、%
5.0
▲ 2.0
1.9
▲ 0.6
▲ 1.7
▲ 1.7
1.1
▲ 1.9
n.a.
公共工事請負金額
前期比、%
▲ 0.3
▲ 3.8
6.9
▲ 4.7
▲ 5.3
18.2
▲ 1.0
▲ 19.5
14.6
6.9
兆円
-
-
-
-
-
4.1
3.1
3.5
7.2
n.a.
会計年度累計、兆円
54.0
56.3
-
-
-
12.9
16.0
19.5
26.7
n.a.
同・前年比、%
14.9
4.3
-
-
-
▲ 4.2
▲ 4.8
▲ 4.1
▲ 3.6
n.a.
前年比、%
▲ 18.8
▲ 35.3
▲ 18.7
▲ 4.7
27.7
▲ 2.6
4.8
14.2
22.0
50.7
一般会計租税・印紙収入
日本銀行国際商品指数
n.a.
前年比、%
2.8
14.5
12.0
8.9
2.9
9.6
7.3
5.2
2.5
1.0
輸出物価
前年比、%
2.9
▲ 1.5
▲ 11.8
▲ 13.5
▲ 6.5
▲ 14.6
▲ 11.6
▲ 9.8
▲ 7.8
▲ 1.8
輸入物価
前年比、%
0.2
▲ 13.7
▲ 21.3
▲ 20.5
▲ 9.1
▲ 22.1
▲ 17.6
▲ 14.3
▲ 10.0
▲ 2.8
前年比、%
2.7
▲ 3.2
▲ 4.4
▲ 3.6
▲ 2.0
▲ 3.6
▲ 3.2
▲ 2.7
▲ 2.2
▲ 1.2
前年比、%
▲ 0.0
▲ 3.3
▲ 4.3
▲ 3.5
▲ 2.0
▲ 3.6
▲ 3.1
▲ 2.6
▲ 2.1
▲ 1.1
対外交易環境 対外交易条件
国内企業物価 総平均
(消費増税の影響を除く)
企業向け
FY2015
公共工事出来高
総平均
サービス価格 (消費増税の影響を除く)
国際運輸を除く
消費者物価 総合
前年比、%
3.3
0.4
0.1
0.3
n.a.
0.2
0.2
0.5
0.3
n.a.
前年比、%
0.6
0.4
0.1
0.2
n.a.
0.1
0.3
0.5
0.4
n.a.
前年比、%
3.3
0.5
0.3
0.5
n.a.
0.4
0.4
0.6
0.5
n.a.
前年比、%
2.9
0.2
▲ 0.4
▲ 0.5
0.3
▲ 0.5
▲ 0.5
0.1
0.5
n.a.
生鮮食品を除く
前年比、%
2.8
0.0
▲ 0.4
▲ 0.5
n.a.
▲ 0.5
▲ 0.5
▲ 0.4
▲ 0.4
n.a.
酒類を除く食品・エネルギーを除く
前年比、%
2.2
0.7
0.5
0.2
0.2
0.2
0.0
0.2
0.1
n.a.
都区部・総合
前年比、%
2.6
0.2
▲ 0.4
▲ 0.5
0.2
▲ 0.5
▲ 0.5
0.1
0.5
0.0
都区部・生鮮食品を除く
前年比、%
2.5
0.0
▲ 0.3
▲ 0.4
▲ 0.5
▲ 0.4
▲ 0.5
▲ 0.4
▲ 0.4
▲ 0.6
(注) 1.公共工事出来高、公共工事請負金額はみずほ総合研究所による季節調整値。
2. 公共工事出来高の 10~12 月期平均は、2016 年 7~9 月期に対する 2016 年 10 月の変化率。
3. 物価指数は実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。
(資料) 国土交通省「建設総合統計」、保証事業会社「公共工事前払金保証統計」、財務省「租税及び印紙収入、収入額調」、日本銀行「企業物価指数」
「日本銀行国際商品指数」、総務省「消費者物価指数」より、みずほ総合研究所作成
10
みずほ日本経済情報(2017 年 1 月号)
2 01 7年 1月 17 日
発行
[執筆担当]
市川雄介(総括)
03-3591-1289
yusuke.ichikawa@m iz uho-ri.co.jp
有田賢太郎(外需・物価)
03-3591-1419
kentaro.arita@miz uh o-ri.co.jp
大野晴香(個人消費)
03-3591-1243
haruka.ono@mizuho -r i.co.jp
宮嶋貴之(企業・インバウンド)
03-3591-1434
takayuki.miyajima @m izuho-ri.co.jp
上里 啓(雇用・政府)
03-3591-1284
hiromu.uezato@miz uh o-ri.co.jp
高瀬美帆(住宅)
03-3591-1416
miho.takase@mizuh o- ri.co.jp
●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではあり
ません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが、その正
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ることもあります