論文紹介

論文紹介
放送局アーカイブス検索における画像解析技術の実用化に向けた検証実験
映像情報メディア学会誌,Vol.70,No.10,pp.J238-J248 (2016)
望月貴裕,河合吉彦,佐野雅規,住吉英樹
我々は,放送アーカイブスの有効利用を目的とし,手動で付与されたテキスト情報に頼らない検索の手法として,画像解析による検索技術の研究を
進めてきた。そして,2015年1月から約4か月間,関連部署との連携により,番組制作者が実際に使用するアーカイブス情報システムにおいて,画像
解析を用いた新しい検索システムの検証実験を行った。さらに,ユーザーからの評価および操作ログの解析により,今後の実用化に向けて有用なデー
タを得た。本論文では,導入した技術の紹介,システムや機能の概要に加え,実際のユーザーによる評価と操作ログの解析結果,および主な検索
機能の精度について述べる。
A Study about Integrating Video Contents with WEB Services Based on the RDF
The International Journal of Space-Based and Situated Computing,Vol.6,No.2,pp.65-73 (2016)
浦川 真,宮崎 勝,山田一郎,藤沢 寛,中川俊夫
本論文では,学校教育向け動画をインターネットで公開している「NHK for School」の生物に関する映像コンテンツをRDF(Resource Description
Framework)により構造化し,
外部のWEBサービスに展開する手法を提案する。外部サービスに展開するためには,各動画が説明している内容をデー
タとして記述する必要がある。そこで,Wikipediaでの生物説明記述の傾向から,「外部形態」
「内部形態」
「生活史・生活環」
「食性」
「分布」という説
明分類と,各分類で使用されている単語(「食性」の場合は「捕食」など)を抽出した。その上で,各動画で使用されている単語を基に,各動画の
説明内容(「食性」など)をメタデータとして付与した。これにより,Wikipediaで「食性」を説明している箇所に,その内容に合った動画を連携させ
ることが可能となる。生物を説明するための知識を基にサービス連携を行うことで,例えばWikipediaで,ある生物の「分布」についての記述がない
場合に,NHKの映像コンテンツで補完することも可能となる。
Transmission and Functionality Test of MMT-Based Next-Generation Satellite
Broadcasting System over “KIZUNA(WINDS)
” Satellite
Transactions of the Japan Society for Aeronautical and Space Sciences,Aerospace Technology Japan,Vol.14,
No.ists30,pp.Pj_1-Pj_6 (2016)
河村侑輝,小島政明,鈴木陽一,大槻一博,中村直義,木村武史,田中祥次
デジタル放送の実用化以後,インターネットやモバイル端末の普及などにより,映像コンテンツの流通環境は大きく変化した。4K・8K衛星放送では,
インターネット技術を取り入れた新たな伝送技術であるMMT(MPEG Media Transport)が導入される。従来のデジタル放送では,伝送路ごとに
異なるクロックで映像の表示タイミングを制御するため,各映像のクロック間の相対関係に関する情報を与える仕組みがなければ,放送通信連携サー
ビスとして放送映像と同期する別アングルの映像をインターネットで配信する場合に,受信側でこれらの映像を同期させることはできなかった。一方,
MMTではユニバーサルな時刻により映像の表示タイミングを制御するため,特別な仕組みがなくても高精度な映像同期が可能となる。4K・8K衛星
試験放送を前に,実験用通信衛星である「きずな」
(WINDS)を用いて,MMTの同期機能を検証する伝送実験を行った。4K・8K衛星放送と同じ
伝送方式を用いて伝送遅延時間が異なる2つのチャンネルを構築し,各チャンネルで伝送した2つの映像を受信して,意図したとおりに同期表示が
できることを確認した。
Application of Hydrogen Injection and Oxidation to Low Temperature
Solution-processed Oxide Semiconductors
AIP Advances,Vol.6,No.8,085016,pp.085016.1-085016.7 (2016)
宮川幹司,中田 充,辻 博史,藤崎好英,山本敏裕
大画面シート型ディスプレーの実現を目指し,酸化物半導体を用いた薄膜トランジスター
(TFT : Thin Film Transistor)の研究を進めている。真空
プロセスを用いずに塗布製膜により大気下で簡便に作製することができる塗布型酸化物半導体は,超大面積化という点で有望な手段である。しか
しながら,塗布型酸化物半導体膜は真空装置を用いて作製された半導体膜と比較すると膜質が悪く,移動度が低いという課題があった。今回,塗
布型酸化物TFT の特性を改善する手法として,水素導入処理と酸化処理を組み合わせた低温形成技術を開発した。300℃の低温焼成条件下にて
作製したIn-Ga-Zn-OおよびZn-Sn-Oの塗布型酸化物TFTに対して上記の処理を行うことにより,高い移動度(それぞれ5.2cm2/Vsおよび3.1cm2/
Vs)が得られることが分かった。化学分析を行った結果,この高い移動度は,不純物除去と膜質改善による効果で得られたことを確認した。この手
法は,塗布型酸化物材料に対して幅広く適用可能であると考えている。
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NHK技研 R&D ■ No.161 2017. 1