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地熱発電メルマガキャラクター
ちねつん
地熱発電メールマガジン
〜あの町この町いろんな地熱〜
もくじ
平成
第
05
28
年
号
12
⽉発⾏
経済産業省からのお知らせ
① 経済産業省からのお知らせ
平成29年度 地熱関係予算案について
② ⼤分県における取組のご紹介
平成29年度政府予算案が、平成
28年12⽉22⽇(⽊)に閣議決定
されました。
●平成29年度 地熱関係予算案について
●⼤分県について
●再⽣可能エネルギー トップランナー⼤分県
●再エネ⽇本⼀を牽引する地熱発電所
●⼤分県のエネルギー戦略と地熱推進の取組
●「地熱・温泉熱」と共に⽣きる⼤分県
③ ⼤分県別府市における取組のご紹介
●⼤分県別府市について
●国内の地熱発電発祥の地
●固定価格買取制度が始まって
●今後について
④ JOGMECの取組のご紹介
●北海道7地域でヘリコプターによる空中物理探査を実施
(平成28年度)
●平成28年度「地熱資源開発調査事業費助成⾦交付事業」
の採択結果
⑤ 巻末特集
●再⽣可能エネルギーの「平成29年度以降の調達価格等に関
する意⾒」が取りまとめられました
地熱関係予算案は以下のとおりで
す(カッコ内は前年度予算額)。
(1)理解促進事業
12.0億円(22.0億円)
地熱発電に関する勉強会・講演会
や、地熱発電後の熱⽔利活⽤などを
通じて、地域住⺠等の地熱開発に
対する理解を促進する事業について
⽀援を⾏う事業です。
(3)技術開発事業
22.0億円(18.5億円)
地下情報の不⾜や調査精度の低
さなど、地熱開発を促進する上での
課題に対し、技術開発による解決を
図ることで、本格導⼊を後押しする事
業です。
(4)環境アセスメント迅速化事業
6.0億円(9.0億円)
地熱発電の導⼊加速化のため、環
境アセスメントの⼿続における環境影
響調査を前倒しし、⼿続期間を短縮
化することで、環境アセスメントの迅
速化を図る事業です。
(2)資源量調査事業
90.0億円(100.0億円) (5)探査出資、開発債務保証
地熱資源量の把握に向けた地表
146.0億円(97.0億円)
(※)債務保証基⾦残⾼を含む
調査や掘削調査等の初期調査に対
探査事業に対する出資、発電設
して⽀援を⾏うとともに、新規の有望
地点を探索するための調査を実施し、 備の設置等に対する債務保証を⾏う
事業です。
地熱発電の更なる導⼊拡⼤を図る
事業です。
これらの取組により、引き続き、地
熱発電の更なる導⼊促進に向けて、
しっかり取り組んでいきます。
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第
⼤分県における取組のご紹介①
⼤分県について
⼤分県は「アジアの⽞関⼝」である
九州の北東部に位置し、北側は周
防灘に、東側は伊予灘、豊後⽔道
に⾯しており、18市町村(14市3
町1村)から構成されています。
総⼈⼝は約116.5万⼈(平成
28年2⽉1⽇現在)であり、⼈⼝が
最も多い市町村は県庁所在地であ
る⼤分市です。総⾯積は
約6,340km2です。
再⽣可能エネルギー トップランナー⼤分県
⼤分県は、温暖な気候に恵まれ、
海や⼭などの豊かな⾃然、その中で
育まれた新鮮で安全な⾷材、宇佐
神宮や六郷満⼭、国宝⾅杵⽯仏を
はじめとした磨崖仏などの貴重な歴
史的⽂化遺産など多くの地域資源
があります。
また、なんといっても県内全域に広
がる温泉は、⽇本⼀の源泉数と湧
出量を誇り、地球上にある11種類
の泉質のうち10種類を有しています。
さらには、⽣産者、消費者、流通関
係者が⼀体となって取り組んでいる
「The・おおいた」ブランドには、関あ
じ・関さばや豊後⽜、カボス、しいた
けなど、本県⾃慢の素晴らしい⾷材
が満載です。
⼤分県の本コラムに関するお問い合わせ先
⼤分県商⼯労働部⼯業振興課 エネルギー政策班
電話番号:097ー506-3263
⼤分県は、1925年に別府市にお
いて⽇本最初の地熱発電に成功し
た「地熱発電発祥の地」としても知ら
れています。
千葉⼤学倉阪研究室+永続地
帯研究会の調査では、⼤分県は再
⽣可能エネルギーの⾃給率が
30.1%(2015年3⽉現在)で、
再⽣可能エネルギーのトップランナー
となっており、その内訳を⾒ると、豊富
な地熱資源を活⽤した地熱発電と
地熱利⽤が全体の約5割を占めて
います。
出典:
千葉⼤学倉阪研究室+永続地帯
研究会 「永続地帯2015」
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第
⼤分県における取組のご紹介②
再エネ⽇本⼀を牽引する地熱発電所
⼤分県の再エネを牽引する地熱
発電は、⽇本最⼤の地熱発電所で
ある九州電⼒⼋丁原発電所がある
⼀⽅で、⺠間ホテルでも取り組むな
ど多様で、年間発電量は全国の約
4割を占めています。さらに、数⼗〜
100kWの⼩規模地熱発電所の建
設が別府市や由布市、九重町など
で進んでいます。
全国の地熱発電電⼒量の
38.0%は、⼋丁原発電所をはじめ
とする、県内の地熱発電所でまかな
われています。
⼤分県のエネルギー戦略と地熱推進の取組
⼤分県では、再⽣可能エネルギー
を含むエコエネルギーの導⼊促進を
⽬的とした「⼤分県エコエネルギー導
⼊促進条例」に基づく、「新エネル
ギービジョン」を策定し、積極的なエ
ネルギー政策を実施しています。
エネルギー基本計画などの国の動
きを⾒据え、⾃然条件の優位性や、
ものづくり産業が集積しているといった、
⼤分県の地域特性を活かして、本
県のエネルギー政策は、「①再⽣可
能エネルギー等の導⼊促進」とそれ
を⽀える「②関連産業の育成」の⼆
本柱で取り組んでいます。
1. 再⽣可能エネルギー等の導⼊促進
九州電⼒⼋丁原発電所
出典:(社)⽕⼒原⼦⼒発電技術協会「地熱発電の現状と動向2015年」
※発電電⼒量は平成26年度のデータ
(1) 特⾊のあるモデル事業
再エネ導⼊に関して、中⼩企業や
地域でのモデルとなる事業に設備補
助を⾏いました。
中⼩企業モデル枠として、既存の
温泉井をレンタルし発電事業を⾏う
新しいビジネスモデルを取り⼊れた別
府市の五湯苑地熱発電所を⽀援し
ています。また、地域モデル枠として、
⼩規模集落の活性化を⽬的に、
既存の温泉井を利⽤したバイナリー
五湯苑地熱発電所
発電所とキクラゲ栽培ハウスを建設
した、由布市湯布院町奥江地区な
どへ⽀援を⾏いました。
この取組により、県内の再エネ導
⼊の促進が図られました。また、住⺠
との合意形成や資⾦調達といった再
エネ導⼊に関する課題を解決したモ
デル事業の創出により、本県の特⾊
ある温泉熱を利⽤した事業への今
後の波及効果が期待されます。
キクラゲ栽培ハウス
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第
⼤分県における取組のご紹介③
(2) 地熱フル活⽤おおいた
⼤分県最⼤の特徴である、地熱・
温泉熱発電については、余すことなく
徹底的に活⽤するための取組も進
めています。
⼤分県農林⽔産研究指導セン
ター農業研究部花きグループでは、
保有する温泉井を活⽤して、発電だ
けでなく農業や観光への利⽤を⽬指
した「地熱フル活⽤おおいた新活⼒
創出事業」の取組を⾏いました。
まず、施設内の⾼温の温泉で、県
内企業が開発した「湯けむり発電シ
ステム(44kW)」を設置しました。
発電後の温泉はまだ熱いため、その
後、地域の⼊浴⽤の温泉として利
⽤されています。
また、同じ温泉井から、花き栽培
⽤ハウスにも熱供給を⾏い、冷暖房
⽤の熱源として利⽤しています。
更には、地熱利⽤PRコーナーを設
けた⾒学⽤の熱帯温室もあり、⾒学
者に対する情報発信を⾏い、観光
資源としての利⽤も⾏っています。
このような取組を⾏うことにより、⼀
つの温泉井から得られる温泉エネル
ギーを、⼀つの⽬的ではなく、産業、
農業、観光業と多段階に活⽤され
ることと、地熱開発の理解促進が図
られることを期待して、本県における
地熱フル活⽤の取組をPRしています。
地熱フル活⽤おおいた新活⼒創出事業(平成26年度)
(3) 湯けむり発電システム
「湯けむり発電システム」は、地場
企業により開発された、熱⽔と蒸気
両⽅を利⽤するトータルフロー発電と
いう、全く新しい技術を採⽤していま
す。
新たな掘削がいらず、既存の温泉
井で利⽤することが可能なため、⼤
規模地熱発電と違い、導⼊が⽐較
的容易です。
また、熱⽔と蒸気をそのまま利⽤で
き、また、⾮常にシンプルな構造であ
るため、省スペース、設置・メンテナン
ス費⽤の低コスト化などのメリットがあ
げられます。
現在、各地で導⼊が進んでいる
「バイナリー発電」とあわせて、新しい
地熱・温泉熱発電の⽅法として、注
⽬されています。
「湯けむり発電システム」
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第
⼤分県における取組のご紹介④
(4) 温泉熱等利⽤加速化事業
温泉熱等の有効的な利⽤を⼀層
加速させるために、地場企業がもつ
技術⼒などを活⽤し、温泉熱等を
利⽤した設備の導⼊に要する経費
について2件の補助を実施しました。
■対象者
県内に事業所を置く事業者等
■補助条件
①温泉熱⼜は地中熱エネルギーを
利⽤した設備導⼊を⾏うこと
②国の「エネルギー熱利⽤加速化⽀
援対策費補助⾦(⺠間事業者
枠)」の対象とならない規模の事業
であること
③事業実施にあたり、次のいずれか
により、地場企業(県内に本社を
置く企業)が必ず参加すること
・地場企業が開発あるいは製造に
関わった製品及び技術を導⼊も
しくは活⽤すること
・地場企業が各種機器間の連携
を⾏うなど、事業全体の総合調
整を⾏うこと
■補助内容
①補助率 1/3以内
(上限額 1,000万円)
②補助対象経費
本⼯事費、機械装置・⼯具器具
費、設計費など
平成27年度 採択・事業実施案件
事業者
⼤分県内 旅館事業者
⼤分県内 温泉事業者
実施場所 別府市
別府市
概要
酸性の強い温泉熱⽔を熱源として、
地下⽔を温めたお湯に温泉蒸気を吹
き込むことで温泉を造成する
旅館における客室内温⽔プール
⽤給湯設備の新設
プール昇温循環ろ過装置
温泉熱を利⽤した温泉造成設備
(5) おおいた⾃然エネルギーファン
ドへの出資
温泉熱発電など⼤分県の特⾊あ
る再⽣可能エネルギー等の導⼊促
進及びエネルギー関連企業の事業
拡⼤を図るため、県内⾦融機関等
と組成するファンドに出資し、リスクが
⽐較的⾼く、専⾨的な投資判断が
必要になる事業を⽀援しています。
おおいた⾃然エネルギーファンド
■ファンド規模
25億円(うち⼤分県2.5億円)
■組合期間
平成25年4⽉〜平成34年12⽉
■投資対象
主として、⼤分県内の温泉事業者が保有する泉源を活⽤した再⽣可能エネル
ギーの発電事業
■出資者
⼤分銀⾏をはじめとする銀⾏グループ2社、地場企業1社、
グリーンファイナンス推進機構、⼤分みらい信⽤⾦庫、⼤分県信⽤組合、
⼤分県、⼤分ベンチャーキャピタル
■投資⼿法
設備投資への融資、SPCへの株式出資、調査費⽀払
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第
⼤分県における取組のご紹介⑤
2. 関連産業の育成
■取組紹介(平成27年度活動実績)
〇地熱・温泉熱ワーキンググループの取組
①バイナリー発電腐⾷対策 [参加企業:2社]
(1) ⼤分県エネルギー産業企業会
⼤分県では、エネルギー産業を県
経済の牽引企業に成⻑させることを
⽬的に、平成24年6⽉、「⼤分県エ
ネルギー産業企業会」を設⽴しまし
た。分野別のワーキンググループを設
置し、研究開発から販路開拓まで
幅広く企業の取組を⽀援しています。
平成28年度総会(平成28年6⽉9⽇)
⼤分県エネルギー産業企業会
■概要
設⽴: 平成24年6⽉2⽇
会⻑: 佐藤廣⼠(神⼾製鋼所相談役)
企画運営委員会: 地元8企業で構成
会員数: 222社(企業:202、⼤学:10、⾏政:10)
事務局: ⼤分県商⼯労働部⼯業振興課
※会員数は平成28年11⽉1⽇現在
温泉噴気に含まれる硫化⽔素をフィルターにより
除去し電⼦機器等の腐⾷を防⽌
②スケール付着防⽌対策
[参加企業:2社]
微弱電磁波周波数変調処理装置により、
⽔中のカルシウムやスケールの付着を防⽌
③温度差発電の発電効率向上[参加企業:5社]
温泉熱などの熱と熱電素⼦を使った
温度差発電システムの効率改善と商品化
温度差発電
〇⼈材・育成・会員交流の取組
①展⽰会への出展
・ENEX2016
(@東京ビッグサイト)
・ものづくり王国総合展 (@別府ビーコンプラザ)
②セミナーの開催
・省エネ補助⾦セミナー
・地熱事業推進セミナー
[参加企業:6社]
[参加企業:7社]
「地熱・温泉熱」と共に⽣きる⼤分県
⼤分県では、このように恵まれた地
域資源である地熱・温泉熱を最⼤
限に活かすためにも、地域の理解と、
適切・適正な資源の利⽤を前提に、
地熱・温泉熱の活⽤を推進していき
ます。
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第
⼤分県別府市における取組のご紹介①
⼤分県別府市について
別府市は、九州北東部、⼤分県
の東海岸のほぼ中央に位置していま
す。南は野⽣のニホンザルで有名な
⾼崎⼭を隔てて県都⼤分市と、 北
は県北・国東テクノポリス地域として
ハイテク関連企業が進出する国東
半島の市や町と接しています。⻄は
阿蘇国⽴公園に属する由布岳、鶴
⾒岳の連⼭を中⼼に南北に半円形
に連なる鐘状⽕⼭(トロイデ)に囲
まれ、その裾野はなだらかな扇状地
が、波静かな別府湾に続いています。
市内には、別府⼋湯という8ヵ所の
温泉地があり、これらをまとめて別府
温泉郷と称しています。別府⼋湯と
は、別府・浜脇(はまわき)・観海寺(か
んかいじ)・堀⽥(ほりた) ・明礬(みょうば
ん)・鉄輪(かんなわ)・柴⽯(しばせき)・
⻲川(かめがわ)を指し、それぞれが特
徴を持っています。
別府湾⼀帯から、九重・阿蘇を経
て島原半島を含む広⼤な地域は、
地盤が沈む地溝帯で、この地溝を
中⼼に活性化した⽕⼭活動は地熱
温泉活動をもたらしました。この⽕⼭
活動により、別府の地形には⼆つの
⼤きな断層が⽣じています。この断
層と鶴⾒岳や伽藍岳の⽕⼭活動が
影響しあい、地下のマグマからの熱に
より⾼温⾼圧の「熱⽔だまり」が地下
数千mの所にできます。地下に浸透
した⾬⽔は、マグマの熱で温められた
「熱⽔だまり」に触れ、再び地表に噴
き出す途中、さまざまな成分を取り
込み、温泉⽔となります。
別府市内には2,217の源泉があり、
毎分の湧出量は83,058ℓであり、
⽇本⼀の源泉数・湧出量を誇ります。
源泉から湯けむりがたなびく景観は
別府市を象徴するものであり、鉄
輪・明礬地区の景観は国の重要⽂
化的景観になっています。
⼈⼝は約12万⼈で徐々に減少し
ています。観光業、サービス業を中
⼼に第三次産業の就業⼈⼝が約9
割を占めます。また、地元⼤学で留
学⽣を積極的に受け⼊れており、留
学⽣が多いのが特徴です。
別府市の本コラムに関するお問い合わせ先
別府市⽣活環境部環境課環境企画室
電話番号:0977-21-1134
別府市の湯けむり
(写真:別府市提供)
国内の地熱発電発祥の地
地熱発電について、国内で初めて
発電に成功したのは、本市です。
1919年に別府坊主地獄周辺で
掘削を⾏った深度約24mの井⼾か
ら湧出させた噴気を利⽤して、
1925年に東京電灯(株)(東京電
⼒(株)の前⾝)の太⼑川平治博
⼠が⽇本最初の地熱発電として出
⼒1.12kWの発電に成功しました。
その後、約1年5か⽉に及ぶ連続運
転を⾏っています。
これは、世界で初めて地熱発電に
成功した、イタリアのラルデレロにおけ
る実験から15年後のことでした。
このように、本市で国内初の地熱
発電が⾏われたのは、古くから⾼温
の噴気が出ていたこともあり、蒸し湯
や地獄蒸しなどの独特の習俗が構
築され、湧出する温泉熱の利⽤に
関して積極的に取り組むという姿勢
が関係しています。
ただ、同時に、これまでの研究によ
り、鉄輪断層、堀⽥・朝⾒川断層が
別府温泉の成り⽴ちに関係している
ことが分かっていることから、市全体と
して温泉に関する影響を懸念すると
いう考え⽅も存在しています。昭和
50年代、別府温泉北部地域の熱
源となる伽藍岳付近での地熱開発
計画においても、下流域に当たる鉄
輪温泉の関係者から懸念の声が上
がりました。
この2つの考え⽅は現在でも踏襲さ
れています。
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第
⼤分県別府市における取組のご紹介②
固定価格買取制度が始まって
別府市では、固定価格買取制度
が開始されて以降、⺠間事業者に
よる温泉発電等の導⼊が進んでいま
す。九州は元々地熱発電の認定設
備数が多いことで注⽬されていますが、
その中でも別府市は特に多くなって
おり、噴気沸騰泉が多く存在するエ
リアで導⼊が進んでいます。平成27
年度以降、急激にその数は増えてい
ます。このような動きを受け、別府市
では、『導⼊の基本⽅針を定めてい
く』『事業者に法令や⼿続きを遵守さ
せる』『近隣地域の理解を得る』『持
続的な温泉の活⽤を図る』を⽬的と
して、取組を図っています。
【取組1】
別府市地域新エネルギー
フィジビリティ調査
【出典 別府市作成】
【取組2】
別府市地域新エネルギー
ビジョンの策定
【取組3】
別府市地域新エネルギー導⼊
の事前⼿続等に関する要綱
平成27年3⽉に別府市の新エネ
ルギー導⼊の基本⽅針として、「別
府市地域新エネルギービジョン」を策
定しました。
温泉発電等の導⼊に関しては、こ
れまでの研究成果等も考慮し、温
泉資源の持続的な利活⽤を視野に
⼊れ、既存泉源や周辺環境への影
響がほとんどないと判断できる⼩規
模地熱バイナリー発電等を中⼼に導
⼊促進を図ることを市の基本⽅針と
しています。
別府市が所管する⼿続に関して、
新エネルギーを導⼊しようとする事業
者が担当各課と円滑に相談⼿続等
が⾏うことができるよう、”交通整理”
を図るために、平成26年9⽉に別府
市地域での新エネルギー発電設備
の設置に関する事前⼿続を定めまし
た。この要綱の⽬的と事業者に求め
る事項は下図のとおりです。
時期を同じくして、発電所周辺の
⽣活環境への対応が不⼗分なまま、
同⼀地域に集中的に温泉発電の
導⼊が進むことで、発電所敷地内か
らの騒⾳被害、噴気公害、不適切
な排⽔処理などについて住⺠から対
策を求める声が上がりました。このこと
が温泉発電等に特化した条例の制
定につながります。
別府市地域新エネルギービジョン
平成25年度に地域新エネルギー
フィージビリティ調査を⾏い、その利⽤
可能量から別府市の新エネルギー特
性を探りました。
結果は、発電や熱利⽤などの地熱
関係が利⽤可能量の約8割を占め
るものとなり、太陽光(太陽熱)が
約12%、⾵⼒発電が約8%というも
のになりました。
【出典 別府市作成】
URL:
https://www.city.beppu.oita.jp
/sangyou/environment/torikumi
_index.html
事前⼿続等に関する要綱の⽬的と事業者に求める事項
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第
⼤分県別府市における取組のご紹介③
【取組4】
別府市温泉発電等の地域共⽣を図る条例
【取組5】
別府市の地熱発電⽀援策
平成28年5⽉より、「別府市温泉
発電等の地域共⽣を図る条例」を
施⾏しています。この条例では、『関
係法令⼿続の遵守』、『⾃然環境
及び⽣活環境との調和』、『周辺住
⺠(近隣関係者等)との共⽣』、
『地域の温泉資源の持続可能な利
温泉発電を⾏う場合には、発電
設備内の蒸発した媒体を冷却する
⼯程で冷却⽔が必要になります。多
くの場合は地下⽔を使⽤しています
が、別府市では平成27年1⽉より、
温泉発電を⾏う事業者に対する給
⽔⽤途として「地熱発電給⽔」を設
け、1㎥あたり152円で販売していま
す。
【事前協議の流れ】
活⽤』を基本スタンスとして、事前協
議及び環境に関する規制事項等を
整理し、対応を強化しています。
事前協議の流れおよび環境関連
の規制事項については下図のように
規定しています。
この収益を地区の共同浴場に関
する⽔道料⾦の減額分に充て、地
区の共同浴場の運営の⼀助とする
ことで地域還元を図ろうとしています。
また、地下⽔を⽔道⽔に変更する
ことで冷却⽔の質が安定すると共に
地下⽔の保全につなぐことを想定し
ています。
今後について
【環境に関する規制事項等】
別府市温泉発電等の地域共⽣を
図る条例の施⾏以降、5件の案件
(経過措置を含む。)が事前協議
完了の承認を受けています。今後と
も事業者に対して条例が規定する
事前⼿続を遵守するよう指導してい
くこととしています。
これとは別に、平成28年度、環境
省の補助事業を活⽤した「温泉エネ
ルギー事業可能性検討調査事業」
を⾏い、30年ぶりに温泉資源の状
況を調査しています。
海⾯下100mでの地温分布と⾃然温泉徴候地
前回の調査結果は現在でも別府 (●)及び別府⼋湯
→⾷塩型温泉⽔の流動⽅向
市の温泉を説明する上で貴重な資
【出典:『べっぷの⽂化財』 No. 39】
料となっています。今回の調査結果
も、温泉資源の持続的な活⽤を図
るための取組に活⽤する予定です。
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第
JOGMECの取組のご紹介①
北海道7地域でヘリコプターによる空中物理
探査を実施(平成28年度)
JOGMECは、地熱発電の導⼊拡
⼤に向けた取組として、平成25年度
からヘリコプターを⽤いた空中物理探
査を実施しています。空中物理探査
は、重⼒・電磁・磁気等の物理データ
を取得し、解析することによって、広域
的な地質構造や熱⽔変質帯を把握
するとともに、地熱資源の賦存状況を
推定し、有望地域の絞込みに役⽴て
るものです。
調査開始以来、これまでに5地域
(「くじゅう」、「霧島」、「湯沢・栗駒」、
「⼋幡平」、「ニセコ」)のデータ取得が
終了し、平成28年度は北海道の7
地域(継続2地域:「⼤雪⼭( 上
川)」、「武佐岳」、新規5地域:「⼤
雪⼭(上⼠幌)」、「弟⼦屈」、「豊⽻」、
「登別」、「濁川(森・熊⽯)」)で調査
しました。
調査内容としては、①地下の重⼒
分布を調べて岩⽯密度を推測し、広
域的な地質構造(断裂系や断層
帯)を把握する「空中重⼒偏差法探
査」、②地下の電気的な構造を調べ
て⾼温の熱⽔や蒸気が存在する地熱
貯留層上部の変質帯を把握する「時
間領域空中電磁法探査/磁気法探
査」を⾏いました。
平成28年度調査地域位置図
今後、取得したデータを解析し、調
査地域の地熱資源の賦存状況評価
につなげていく予定です。
なお、得られた調査結果は、地熱資
源の調査・開発だけではなく、温泉資
源把握や⽕⼭地帯の地すべり対策
等にも有⽤と考えられ、地熱開発企
業をはじめ、関係省庁や関係⾃治体、
⼤学等研究機関などにも広く提供し
ていきます。
空中電磁法 / 磁気法
調査⼿法と期待される効果
⼿
法
特
徴
期待できる効果
空中重⼒偏差
法探査
地下の岩⽯密度分布を測定
広域的な地質構造(断裂系や断層
帯)の把握
時間領域
空中電磁探査
地下500m程度までの岩⽯の
電気抵抗の分布を測定
⾼温の熱⽔や蒸気が存在する地熱貯
留層上部の変質帯の把握
空中磁気探査
岩⽯の磁気的な性質を測定
地熱や熱⽔と関係のある⽕⼭岩(地
熱変質帯)の分布の把握
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05号|平成28年12⽉発⾏
第
JOGMECの取組のご紹介②
平成28年度「地熱資源開発調査事業費
助成⾦交付事業」の採択結果
JOGMECは、平成28年度「地熱
資源開発調査事業費助成⾦交付
事業」について、平成28年3⽉3⽇か
ら11⽉30⽇まで公募を⾏い、厳正な
審査を⾏った結果、26件(うち、新
規案件10件、継続案件16件)の
事業を採択しました。
本助成⾦交付事業は、地熱資源
量の把握や地下構造を明らかにする
ための調査事業に対し、「地元の地熱
関係法⼈等*1」及び「地熱資源開発
事業者等 *2 」が地表調査等事業⼜
は坑井掘削等事業の実施に必要な
平成28年度助成⾦採択事業⼀覧
経費のうち、JOGMECが認める経費
について助成⾦を交付し、地下資源
特有の開発リスクの軽減を図り、我が
国の地熱資源開発の取組を促進す
るものです。
*1 「地元の地熱関係法⼈等」:地元の地
熱資源を活⽤して発電事業を実施し、地
域活性化のための事業を⾏う法⼈等。
*2 「地熱資源開発事業者等」:「地元の地
熱関係法⼈等」以外の法⼈等。
平成28年度助成⾦採択事業の内容
助成事業者の区分
新規案件
継続案件
合
計
地元の地熱関係法⼈等
3
4
7
地熱資源開発事業者等
7
12
19
10
16
26
合
計
お問い合わせ先
(独)⽯油天然ガス・⾦属鉱物資源機構(JOGMEC)地熱部
電話 : 03-6758-8001
E-mail : [email protected]
地熱発電メールマガジン
〜あの町この町いろんな地熱〜
05号|平成28年12⽉発⾏
第
巻末特集
再⽣可能エネルギーの「平成29年度以降の
調達価格等に関する意⾒」が取りまとめられ
ました
平成28年12⽉13⽇に開催され
た「第28回調達価格等算定委員
会」において、平成29年度以降に
再⽣可能エネルギー事業に参⼊さ
れる⽅の調達価格等に関する意⾒
が取りまとめられました。
本意⾒における地熱発電のポイン
トは次のとおりです。
(1) 複 数 年 度 の 調 達 価 格 等 の
設定
FIT法の改正により、地熱発電等
のリードタイムの⻑い電源の更なる導
⼊拡⼤を図るため、予め複数年度
の調達価格等の設定を⾏うことが可
能となり、今般、その期間が3年間と
決定されました。
(2) リプレースをFITの対象に設定
我が国の再エネ⽐率を継続的に
⾼め、エネルギーミックスを達成するた
め、リプレースについてもFITの対象と
することとしました。
以上を踏まえた詳細は、右の表
(※「調達価格等に関する意⾒」の
資料抜粋)のとおりです。
地熱発電がもっと活躍できる
ようになると良いっチ
次回は、北海道森町さん
を特集するっチ
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資源エネルギー庁 資源・燃料部政策課
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