プラスチックと耐熱性無機材料との複合化に関する研究(1)

プラスチックと耐ま剥生無機材料との複合化に関する研究①
機械釡属部
田中久
機械研究室
化学食品部
ネ畠ラ云^
工業化学研究室
21世紀に向けて,省資源,りサイクル,省エネルギーなどの循環型社会ヘの転換が叫
ばれている.本研究では,プラスチックのりサイクル率の向上と軽量化および難燃性を
図るために,熱可塑性プラスチック廃棄物と火山ガラス質堆積物の一種である微細中空
ガラス球状体との複合化を試みた.その結果,以下のことが明らかになった.a)複合材
を生成するための押出機の製造条件と微細中空ガラス球状体の破壊率との相関はなかっ
た.(2)ポリスチレンに微細中空ガラス球状体(密度0.66)を30M%添加した複合材を作
製したが,その時の微細中空ガラス球状体の破壊率は25Wt%であった.(3)その時の複合
材の密度は0.91であり,ポリスチレン単体に比ベて約10%の軽量化が達成できた.(4)軽
量化の度合いは,微細中空ガラス球状体の種類および添加量によって左右され,例えぱ,
全体の50M%微細中空ガラス球状体を添加した場合は理論密度が0.8となり,ポリスチ
レンの約20%軽量化が可能となる.
1,はじめに
20世紀は大量生産,大量消費,大量廃棄の社会で
あり,エネルギーならびに資源の浪費を基礎とする
経済システムであった.当センターが佐賀県プラス
チックエ業会とともに実施したアンケート調査(回
答数44社)から,平成9年度佐賀県におけるプラ
スチックの年間使用量は68,326,0Ⅸ)kgで,そのうち
2,BO,oookgが工場外に産業廃棄物として排出され
は株式会社日本油機製(型式SRV・4のであり,図 1に
示すような構造である.ホッパーから投入された試
料は,枯胡旨の溶吊嚇品度に設定されているシリンダ内
で溶融されながらシリンダーヘッド部ヘと送られ
る.完全に溶融した枝朔旨はシリンダーヘッドから連
続的にストランド状に水冷槽ヘと押し出され,
^^
、^、^
で冷却・固化した後,カッターでペレツト状に小さ
く裁断される
ていることが明らかになった.地球全体では天文学
寸ヌッノ{」一
的な排出量になることは当県の数字から容易に想、像
できる、その結果地球環境の破壊が問題となり,多
くの社会問題が発生した.そこで,21世紀では,省
力
ノ
への転換が迫られ,国内外の多くの企業は環境マネ
ジメントシステムの構築を進展しようとしている.
夕一
〆
資源,りサイクル,省エネルギーなどの循環型社会
ド
ンリンダ
本研究では,プラスチック系産業廃棄物の排出量
の削減を目指し,プラスチック系廃棄物の樹脂別排
出量第1位であるポリスチレンと国内に無尽蔵にあ
る火山ガラス質堆積物との複合化を図った.実験に
...
.
水面
. .
.
.
ペレット
は,火山ガラス質堆積物を原料として工業技術院九
州工業技術研究所で開発された微細中空ガラス球状
水冷櫓
図1
押出機
体を使用し,軽量嘆を燃性などの特性をもった複合
材の開発を目標とした.
22 供試材
2.実験方法
とも呼ばれ,セメント系建築材料に多く利用されて
いる.また,軽量・難燃性の特徴を活かして軽量壁
材,床材,内装材などへの需要も伸びている.ポリ
2.1 実験装置
ポリスチレンと微細中空ガラス球状体との複合材
を作製するために押出機を用いた.使用した押出機
ーフフー
実験に使用した微細中空ガラス球状体の物性を表
1に示す.微細中空ガラス球状体はシラスバルーン
スチレンは,密度 1.024の一般グレードを用いた.
表1 微細中空ガラス球状体のヰ勿性
試料
試料
2
平均粒径
(μ m)
粒子密度
非破壊率(wt%)
(gl'cm 3)
(圧縮荷重5Mpa)
非破壊率(M%)
静水圧加圧(8Mpa)
16.1
0.66
74.2
979
23.0
1.11
723
80.1
次に,試料1を用いて微細中空ガラス球状体の
3.実験結果および考察
押出機の製造条件で,溶融状態のポリスチレンと
混合率を変化させた場合の複合材の密度の関係を
微細中空ガラス球状体を複合化し,かつ中空状態を
破壊せずに連続的に押し出すため,スクリュー回転
数は重要な要因である.図2 は,シリンダー温度を
図3 に示す.理論値とは,破壊率0%の場合の複
合材密度である.今回の実験では,混合率30%ま
190゜Cに設定した状態で,スケリュー回転数を変化
10%程度軽量化できることを確認、した.混合率50
させた場合の破壊率の結果である.ここで,破壊率
は複合材の密度を実測して,以下の式で算出した
%の複合材の生成も十分可能であるので,理論的
には20%の軽量化が実現できる.しかしながら,
PP
での実測値を求め,複合材密度がポリスチレンの
混合率の増加に伴い,機械的特性の低下が予想さ
WT/(WP/PP十WBXB/100/PG
れるので,機械的特性等を考慮した混合率の決定
が必要である
+WBX (100- B )/'100/ρ B)
ここで,
複合材密度(四号J
B:破壊率ψの
複合材の密度(g/cm3)
P PP
P :ポリスチレンの密度(g/cm3)
P :微細中空ガラス球状体の密度(創Cm3)
1.0
オ実測値
09
P :ガラス密度(235g/cm3)
W :全体重量(g)
W :ポリスチレン重量(g)
W :微細中空ガラス球状体重量(g)
理論値
0.8
0
同図より,スクリュー回転数による破壊率ヘの影
10
30
50
響がないことが明らかになった.また,密度が小さ
微細中空ガラス球状体の混合率(制
い試料1が密度が大きい試料2に比ベて破壊率が大
図3 混合率と密度との関係
きい結果であった.しかしながら,複合材の軽量化
のためには試料1を採用する必要があり,破壊率の
4.まとめ
低減のための新たな技術開発の必要性がある
(1)ポリスチレンと微細中空ガラス球状体からなる
複合材は,押出機を用いることで製造可能となる
破壊率(Wt
(2)複合材中に混合された微細中空ガラス球状体の
破壊率は 10 25%程度であった
30
試料1
(3)試料1を混合した複合材は軽量化に特徴があり,
\
ポリスチレンの80%程度の密度を実現できる
最後に,本研究の遂行にあたり,多大な協力と
種々のご教示を賜った九州工業技術研究所の木村邦
20
%)
試料2
夫主任研究官並びに株式会社戸上化成松尾一部長に
深く感謝いたします
10
参考文献
D木村邦夫,神尾典:超微粒化に展望を見いだすシ
0
25
35
45
スクリユー回転数(印m)
図2
ラスバルーン.工業材料V01.42NO.15a994)
2)VS1研究会編: VS1研究会ニュース,"01.BNO.3
(1998)
スクリュー回転数と破壊率の関係
ーフ8-