特集 土木の魅力が伝わる広報へ 知ってる建設業の知らない魅力を発信 山口県 土木建築部 監理課 建設業班* 山口県では、建設産業の担い手確保・育成を目的とする関係団体・機関による協議会が設置され、会員 間の連携により建設産業の持つ役割や魅力について情報発信する等、建設産業の将来を担う若い人材の確 保・育成に繋げていく取組みを行っている。本稿では、協議会による協力体制のもと、県が実施している 取組みについて紹介する。 1.はじめに 山口県の建設産業は、長年続いた建設投資の減少 や就労環境の悪化等により、就業者は減少を続け、 とりわけ、若年就業者はピーク時から約6割減少す るなど深刻な状況にある。この状態が続けば、近い 将来、熟練技術・技能の次の世代への承継が困難と なり、多発する大規模災害や、今後本格的に迎える こととなる社会資本の維持更新時代への対応にも支 障が生じることが懸念されることから、建設産業の 担い手確保・育成は喫緊の課題となっている。 2.山口県地域を支える建設産業担い手確保・ 育成協議会の設立 図−1 協議会の概要 3.民間事業者の知見を活用した事業推進 県は、平成26年度から人材関係民間事業者に担 い手確保・育成事業の一部を委託している。民間事 業者は、協議会の会員から企画立案への助言などを 受けつつ、自らの知見を生かし、各種セミナーの開 これまで、建設業界・建設関係行政機関は、それ 催や企業訪問による求人手法の習得支援、求職者に ぞれの立場から担い手の確保・育成の取組みに努め 対する建設企業の紹介などの取組みを行っている。 てきた。しかし、建設産業が直面する喫緊の課題に 迅速に対応し、その取組みをさらに発展させていく ためには、建設産業の人材育成に関わる者が相互協 力・連携を深め、それぞれの取組みを効率的・効果 的に、また一体的に実施することが重要である。 この考えのもと、平成26年4月、建設業界・建 設関係行政機関・教育機関・就業支援機関からなる 「山口県地域を支える建設産業担い手確保・育成協 議会」 (以下、 「協議会」という)が設立され、総会 での定期的な情報交換や、関係者による作業部会で の連絡調整等により相互連携を図っている。 *083-933-3629 28 月刊建設16−09 図−2 事業スキーム 4.県が進める主な取組み ⑶ 業界研究セミナー 県では、協議会の会員との相互連携をベースにさ 地域を支える建設産業の役割や重要性をよく知っ まざまな確保・育成に取り組んでいる。この章では てもらうことを目的に今年度初めて実施し、土木建 そのうちの主な取組みについて紹介する。 築系の高校生約130名が参加した。 ⑴ 現場見学会 セミナーは、東日本大震災で建設業が果たした役 土木建築系の高校生に、建設産業の魅力を感じ、 割についての「講演」、地元の総合・専門工事業団 理解を深めてもらうことを目的に、山口県と一般社 体による「説明・作業体験」、県の代表的な土木建 団法人山口県建設業協会、一般社団法人山口県建築 築構造物を有する山口きらら博記念公園での「現場 協会の共催により実施している。参加者は実際に工 見学会」の3部構成で実施した。生徒からは「授業 事が行われている建設現場を見ることで、建設業に では教わらない具体的な建設業の仕事を知ることが 対するイメージを明確にすることができる。平成 できた」 「建設産業は僕たちを求めていることを知っ 26年度からは参加対象を保護者にも拡大し、家族 た」などの声があり、建設業への理解を深める良い 単位での職業理解を図っている。 機会になった。 写真−1 現場見学会の様子 写真−3 講演の様子 ⑵ 出張セミナー 建設業団体から推薦を受けた県内建設企業の経営 者や技術者・技能者を講師に招き、土木建築系の高 校・高専の生徒に建設業の仕事内容ややりがいを伝 える出張セミナーを平成27年度から実施している。 生徒からは、建設業で働く先輩の話は進路選択の参 考になったとの声が届いている。 写真−4 鉄筋結束体験の様子 ⑷ 巡回会社説明会 県内の各ハローワークと連携して、地元で就職を 希望する者と建設企業の出会いの場となる巡回会社 説明会を実施している。 平成27年度は、説明会に参加した求職者のうち 8名の就職が決定しており、求職者と求人企業の 写真−2 出張セミナーの様子 マッチングを図る場としての役割を果たしている。 月刊建設16−09 29 ⑹「やまぐちけんせつ新聞」の発行 就職の選択肢に建設業を考えてもらうため、進路 選択前の早い段階にある小中学生に、建設業への関 心を持ってもらうことを目的として、建設業の仕事 内容を紹介する「やまぐちけんせつ新聞」を発行し、 県内の小中学校・公民館等に配布した。 図−3 巡回会社説明会のチラシ ⑸ 女性の活躍支援 ①意見交換会の開催 建設業における女性の活躍支援を目的として、 女性技術者・技能者による意見交換会を実施した。 意見交換会では、現場におけるトイレや更衣室の 整備、出産・子育てとの両立といった課題につい て積極的な意見が出され、それらの意見をメール マガジン等により業界団体や関係機関に向けて情 報発信を行った。 ②「女性もやっちょる建設業!」の発行 建設業の魅力発信の一環として、建設業で活躍 している女性を紹介する冊子「女性もやっちょる 建設業!」を発行した。 図−5 やまぐちけんせつ新聞 5.おわりに 少子高齢化による若年求職者の減少等に伴い、他 産業においても人材獲得の動きが高まるなか、建設 業の担い手確保への環境は厳しさを増している。 一方、このような状況のなか、県その他関係者の 学生や求職者に建設業で働くイメージを持って 取組みや企業の求人活動により、土木建築系の高校 もらうため、一日のスケジュールや仕事の魅力、 生の建設企業への就職率が向上するなど一定の効果 苦労した点等を掲載し、県内の中学校・高校、ハ も見られている。 ローワーク等に配布したところ、進路選択や就職 「選ばれる建設業」の実現に向けて、建設業の仕 の参考になると多くの方から好評をいただいた。 事内容や魅力等の情報発信をしっかり行うとともに、 車の両輪として就業環境の改善を図っていくことも 重要である。現在、全国的に就業環境の改善の動き があり、山口県も国や業界団体のこれらの動きに呼 応していく必要がある。 建設業の担い手確保・育成は一朝一夕には達成で きないものであり、継続して取り組んでいくことが 大切である。県ではこれまで、協議会での連携体制 のもと、数々の取組みを実施してきており、今後も これらのつながりを基盤として、担い手確保・育成 に向けた取組みを推し進めていきたい。 図−4 冊子「女性もやっちょる建設業」の1ページ 30 月刊建設16−09
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