2017 年前半に重要視する 3 つのポイント

【2017年1月4日公開】
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
★2016年の振り返りと2017年前半の展望★
『2017 年前半に重要視する
3 つのポイント』
執筆者:YJFX!分析アナリスト
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
●2016 年の為替相場を振り返る
▽ポイント
・円は年間通して強い通貨、米大統領選以降は最弱通貨
・米ドルは米大統領選以降、比較的に強い通貨
・英ポンドは年間通して最弱通貨、米大統領戦以降から最強通貨
2016 年の為替相場は、11 月 8 日(火)の米大統領選挙を境に基調が大きく変わった。円相
場は、米大統領選まで円は主要通貨1に対して最強通貨であった一方で、それ以降は最弱通
貨となった。
【図表①】は、主要通貨の対円騰落率を比較したグラフだ。円は年間通して比較的に強い
通貨であった。
【図表②】は、期間を 11 月 8 日(火)までとした主要通貨に対する対円騰落率だ。同期間、
円は主要通貨に対して最強通貨だった。11 月 8 日(火)まで(米大統領選まで)は、世界
的にリスクオフが支配的だったため、低リスク通貨とされる円が主要通貨に対して上昇。
一方で、6 月 23 日(木)の英国国民投票による EU 離脱派勝利の結果に、英ポンドが最弱通
貨となった。11 月 8 日(火)までの「米ドル/円」相場(
【図表④】を参照)は、主要通貨
に対する円高要因により、米ドル安・円高が進んだ。
【図表③】は、期間を 2016 年 11 月 9 日(水)から 12 月 9 日(水)までとした主要通貨の
対円騰落率だ。円が主要通貨に対して最弱通貨となっている。市場関係者の間で「トラン
プ次期大統領が掲げる政策→米経済の成長→株高」が意識され、低リスク通貨である円が
主要通貨に対して売られたためだ。一方で、米経済が一段と成長するとの思惑から米ドル
は主要通貨に対して比較的に強い通貨に。また、英ポンドが最強通貨となった。投資家の
リスクを取る動きが活発になった事を背景に、6 月 24 日(金)に対米ドルで約 30 年ぶりの
安値水準を付けていた英ポンドが買い戻されたためだ。11 月 9 日(水)以降(米大統領選
以降)の「米ドル/円」相場は、2 つの要因から米ドル高・円安基調へ。①主要通貨に対す
る米ドル高要因で米ドル高・円安に傾き、②リスクオンな展開から主要通貨に対する円安
要因が重なり米ドル高・円安が一段と強まった。
1
AUD=豪ドル、CAD=加ドル、CHF=スイスフラン、EUR=ユーロ、GBP=英ポンド、NZD=NZ ドル、JPY=円、USD=
米ドル
【図表①】 対円騰落率
(2016年1月1日~12月9日)
【図表②】 対円騰落率
(2016年1月1日~11月8日)
10.0%
0.0%
0.0%
-10.0%
-10.0%
-20.0%
-30.0%
-20.0%
NZD AUD CAD CHF EUR USD GBP
CAD NZD AUD USD CHF EUR GBP
【図表③】 対円騰落率
(2016年11月9日~12月9日)
【図表④】 ドル円・終値
(2016年1月1日~12月9日)
0.15
125
0.1
115
0.05
105
95
0
GBP
CAD
USD
NZD
CHF
AUD
EUR
1/1
3/1
5/1
7/1
9/1
11/1
筆者作成
●2016 年を時系列で振り返る(1 月~7 月)
▽ポイント
・年前半は、リスク回避的な動き
・予想外の英 EU 離脱派勝利の結果を背景に「米ドル/円」相場は 99 円台突入
・
「英ポンド/米ドル」は 31 年ぶりの安値水準
▽2016 年 1 月~7 月の主なできごと
1 月 4 日 日経平均株価
・大発会で 582 円安
1 月 12 日 原油市場
・WTI 原油先物価格が 12 年ぶりの低水準
日経平均株価
・史上初の年初来から 6 営業日連続の下落
1 月 14 日 日本長期金利
・過去最低の利回りを付ける
1 月 29 日 日本銀行
・マイナス金利を導入
2 月 9 日 ドイツ銀行問題
・欧州金融不安が再燃
2 月 11 日 ドル・円
・1 年4ヵ月ぶりに 110 円台突入
2 月 12 日 日経平均株価
・15,000 円台を割り込む
2 月 20 日 Brexit 国民投票
・6 月 23 日に実施する事を決定
2 月 27 日 G20
・通貨安競争の回避について確認
4 月 29 日 米財務省
・日本を為替操作国・監視リストに記載
6 月 24 日 Brexit 国民投票
・EU 離脱派が勝利
ポンド・ドル
・31 年ぶりのポンド安水準、1.3229 ドル
ドル・円
・2 年 7 ヵ月ぶりの円高、99 円台に突入
世界の株式時価
・1 日で約 330 兆円が消失
7 月 5 日 ポンド・ドル
・ポンド安水準を更新、1.3000 ドル
7 月 8 日 日本長期金利
・過去最低を更新
米長期金利
・過去最低の 1.36%
2016 年は、世界的な同時株安でスタートした。2015 年 12 月に米連邦準備銀行(FRB)が
リーマン・ショック以降初めて政策金利を引き上げた事が一因だ。日経平均株価が史上初
の大発会から 6 営業日連続の下落を記録。日本の長期金利も過去最低を記録した。ドイツ
銀行の経営問題を端に欧州金融不安が再燃した事も投資家のリスク回避姿勢を強めた。2 月
11 日(木)には「米ドル/円」相場が 1 年 4 カ月ぶりに 110 円台をつけ、2 月 12 日(金)
は日経平均株価が 15,000 円台を割った。
6 月 24 日(金)
、英国国民投票で EU 離脱派が勝利した結果に金融市場は大荒れに。世界の
株式時価総額で約 330 兆円が消失。為替市場では、英ポンドが主要通貨に対して大幅下落。
「英ポンド/米ドル」は 31 年ぶりの英ポンド安水準をつけた。
「米ドル/円」も 2 年 7 カ月
ぶりに 99 円台へ突入した。7 月には、Brexit の余波により、
「英ポンド/米ドル」は 6 月 24
日(金)の安値水準を更新。日本と米国の長期金利は過去最低を更新した。年初来から 7
月までの「米ドル/円」相場は、約 20 円程度の下落。
●2016 年を時系列で振り返る(8 月~12 月)
▽ポイント
・トランプ氏当選をきっかけに、リスク選好な動き
・OPEC が 8 年ぶりに減産で正式合意
・12 月の FOMC で、2017 年の利上げペースを年 3 回
・日米金利差を材料に、
「米ドル/円」相場は 117 円台まで上昇
▽2016 年 8 月~12 月の主なできごと
8月2日
豪中銀
・政策金利を過去最低の 1.50%へ引き下げ
8月4日
英中銀
・政策金利を過去最低の 0.25%へ引き下げ
8 月 11 日
NZ 中銀
・政策金利を過去最低の 2.00%へ引き下げ
9月5日
日経平均株価
・3 ヵ月ぶりの 17,000 円台を回復
9 月 21 日
日本銀行
イールドカーブ・コントロール政策を導入
9 月 28 日
OPEC
・8 年ぶりの減産に暫定合意
10 月 2 日
英メイ首相
・ハードブレグジット懸念
10 月 7 日
ポンド・ドル
・数分間に 10%以上の暴落
10 月 14 日
米財務省
・継続して日本を為替操作国・監視リストに
11 月 1 日
日本銀行
・2%の物価上昇目標の達成を 18 年頃に下方修正
11 月 9 日
米大統領選
・トランプ氏が当選
11 月 18 日
ドル・円
・110 円台を回復
日経平均株価
・18,000 円台を回復
11 月 23 日
米長期金利
・1 年 4 ヵ月ぶりの高水準、2.40%
11 月 30 日
OPEC
・8 年ぶりの減産に正式合意
12 月 4 日 イタリア国民投票 ・改憲反対派の勝利
12 月 8 日
ECB 理事会
・量的緩和政策の延長等を決定
12 月 9 日
ドル・円
・今年 2 月以来の 115 円台を回復
日経平均株価
・19,000 円台に突入
12 月 10 日 OPEC 非加盟国 ・15 年ぶりに減産で合意
12 月 14 日
FOMC
・利上げを決定、来年の利上げペースを年 3 回に
ドル・円
・117 円台を回復
秋以降、
「米ドル/円」相場は日米金利差の方向性が材料視され、米ドル高・円安基調。9
月 21 日(水)
、日銀は 10 年国債利回りをゼロ%程度に固定させる政策(YCC 政策)を導入。
一方で FRB は、利上げ時期を探っている段階。YCC 政策の影響で日本の長期金利はゼロ%程
度に固定されるため、日米金利差の変動は米長期金利の動向に依存する構造となった。
「米長期金利上昇→日米金利差拡大→米ドル高・円安」な関係性が成り立ち、秋以降は米
長期金利が上昇に転じたため、米ドル高・円安が進行。そして、米長期金利の上昇要因は、
トランプ次期大統領が掲げるインフラ投資や減税だ。景気刺激的な政策によるインフレ期
待の高まりから、米長期金利は上昇に転じた。
11 月 30 日(水)
、石油輸出機構(OPEC)で 8 年ぶりの減産に正式合意。
「原油価格上昇→イ
ンフレ期待上昇」との見方から、米長期金利は上昇。12 月 14 日(水)、米連邦公開市場委
員会(FOMC)の結果を受け、「米ドル/円」相場は今年 2 月以来の 117 円台を回復した。
●2017 年上半期の為替相場注目ポイント
注目ポイントとして、①トランプ氏の政策実現性、②原油価格、③欧州の選挙、があげ
られる。
①トランプ氏の政策実現性
▽ポイント
・トランプ氏が掲げる政策の実現度合いによって米長期金利が変動
・米長期金利の変動は、主要通貨に対するドルの強弱に影響
米大統領選以降(11 月 9 日(水)以降)の「米ドル/円」相場は、トランプ氏の政策期待を
背景とした米長期金利の上昇により米ドル高・円安へ向かった。トランプ氏は 5,500 億ド
ルをインフラに投資すると主張しているが、実際に政策が実行できるかまだ判らない。理
由として、
(1)
「資金を確保できるのか依然として不透明」、
(2)
「投資規模が大規模である
ため、
“小さな政府”を目指す共和党から反対されてしまい、投資規模が想定よりも小さく
なる可能性」
、があげられる。米長期金利は、次第に明らかになってくるトランプ氏の政策
実現性の度合いによって今後変動してくる。11 月 9 日(水)以降の主要通貨に対する米ド
ル高は米長期金利の上昇に起因するものであり、今後の米長期金利の変動は、主要通貨に
対する米ドルの強弱に影響を及ぼす可能性がある。
②原油価格
▽ポイント
・原油価格の推移は、米利上げを背景とした為替相場の方向性に影響
12 月 14 日(水)
、FOMC は 0.25%の利上げを決定。2017 年に 3 回の利上げを想定している事
も判明した。先進国で量的緩和政策が行われて以降、先進国の利上げは株式市場にとって
マイナス材料と解釈される場合が多い。実際、2015 年 12 月の FRB による利上げが一因で世
界的に株安が進行し、円は主要通貨に対して円高になった。もう一つ要因がある。それは
当時、原油価格が下落基調にあった事だ。今回の利上げと 2015 年 12 月の利上げの違いは、
原油相場にある。現在(12 月中旬)の原油相場は、OPEC の減産合意などにより、原油価格
が上昇基調へ反転の兆しにある。つまり、2016 年の年初来から続いた「利上げ→リスクオ
フ」な相場にはなりづらい。言い換えると、今後の原油価格が下落に転じると、
「利上げ→
リスクオフ」な相場へ向かう可能性は潜んでいる。
③欧州の選挙
▽ポイント
・2017 年秋まで ECB は、量的緩和の縮小政策を採りづらい
・反 EU などを掲げる右派政党の躍進は政治リスク
2017 年の欧州は、選挙の年だ。 3 月にオランダ総選挙、4 月にフランス大統領選、6 月に
フランス総選挙、秋にドイツ総選挙が控えている。 欧州中央銀行(ECB)は 2016 年 12 月 8
日(木)に、量的緩和政策の延長など金融政策の変更を決定した。ドラギ ECB 総裁は会見
で、欧州経済の見通しについて下振れリスクがあると発言。さらに、経済見通しが不透明
になった場合に、緩和の拡大をする方針も示した。つまり、ECB は欧州主要国で実施される
選挙動向が市場へ与える影響を警戒している。2017 年秋に実施予定のドイツ総選挙が終わ
るまで、ECB は量的緩和の縮小的政策には舵を切りづらい。よって、ユーロは主要通貨に対
して安くなる傾向がある。そして、政治リスクが意識された場合、リスク回避的な動きか
ら債券が買われ、低リスク通貨の円が主要通貨に対して上昇する可能性が想定される。
(12 月 16 日までの相場状況に基づき執筆)
-------------------------------------------------------------------------------【本レポートの趣旨】
本レポートは情報提供のみを目的としております。本レポート中のコメントは独自の見解
に基づいたものであり、弊社所属の為替アナリスト、およびワイジェイFX株式会社共にレ
ポート中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも
一切保証するものではありません。
また、本レポート内のコンテンツ、データに関する著作権はワイジェイFX株式会社に帰属
しております。コンテンツ、データ等は私的利用の範囲内で使用し、無断転載、無断コピ
ー等はおやめください。
さらに、かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、弊社所属
の為替アナリスト、およびワイジェイFX株式会社は一切責任を負いません。最終的な投資
判断は、他の資料等も参考にしてご自身の判断でなさるようお願いいたします。