第183号 - 三井住友海上

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編集 ㈱日刊海事通信社
第183号
2017.1.1号(毎月1日発行)
内航海運暫定措置事業、一般貨物船の船腹量が大幅回復
開始時からの減船率は 13%
日本内航海運組合総連合会が半年ごとにまとめてい
率 は 50.3 % と 半 減。そ の 他 特 殊 貨 物 船(PCC を 含 む )
る内航海運暫定措置事業の進捗状況(2016 年 9 月末時
は + 8.3 % と 前 年 同 期( + 8.6 %)か ら ほ ぼ 横 ば い。一
点)によると、暫定措置事業開始時(1998 年 5 月時点)に
方、RORO 船・コンテナ船・CGC は+ 76.7%と前年同
5638 隻・667 万 1738 対象トンだった船腹量は、3802 隻・
期(+ 79.8%)から減少しているが一般貨物船(RORO タ
580 万 2881 対象トンまで減少。隻数ベースでは 1836 隻
イプ)として建造するケースが増えたことに伴う調整単
減、減船率(対象トンベース)では 13.02%となった。
位の変更(みなしトン数→重量トン数)が原因で、実質
暫定措置事業の進捗状況を船種別にみると、一般貨物
的には増加傾向が続いている。また、曳船も 1 隻あたり
船は事業開始時点に比べ 9 月末時点の減船率は 19.3%と
の大型化・高馬力化に伴う対象トン増により、船腹量は
なり、前年同期(15 年 9 月末時点)の 22.7%と比べると
+ 32.3%と前年同期(+ 25.4%)から大幅に増加している。
船腹量は大幅に回復した。主要船型である 499 総トン型
一般貨物船、油送船の減船率を船型別(
「100 総トン未
の代替建造が活発化したことや、船型の大型化、積載率
満」
、
「300 総トン未満」
、
「500 総トン未満」
、
「750 総トン
の向上などが要因とみられる。一方、油送船は事業開始
未満」
、
「750 総トン以上」
)
でみると、一般貨物船では
「300
時からの減船率は 17.4%となり、前年同期(17.7%)か
総トン未満」の減船率が対象トンベースで 49.3%と同事
ら船腹量は小幅な回復にとどまっている。14 年度から
業開始時点からほぼ半減しているのに対し、主力船型で
1000 総トン以上の大型船の建造が停滞し、ケミカル船
ある「500 総トン未満」は 7.4%にとどまり、499 総トン型
を中心とした小型船型の建造が目立ち、足元の船腹量は
の代替建造が進んでいることが分かる。一方、油送船で
横ばい傾向となっている。
は黒油船、白油船ともに大型化が進んだことで「750 総ト
その他の船種では、一般貨物船(ガット船)として建
ン以上」が+ 7.2%と増加したほかは各船型で軒並み大幅
造されるケースが増えた石材・砂・砂利専用船の減船
減となり、代替建造の停滞が浮き彫りになっている。
17 年度内航船建造量、前年度水準から弱含みか
内航総連、造船所へのアンケート結果
日本内航海運組合総連合会が内航船建造造船所を対象
を目的に同調査を毎年実施。今回は、各造船所の 16 年度
に実施した内航船舶(内航海運暫定措置事業対象船)建
下半期から 18 年度上半期の 4 期 2 年間の建造(起工ベー
造アンケート調査結果(起工ベース)によると、2017 年
ス)受注量を、船種、船型、契約状態(本契約・仮契約・
度の建造予定隻数は 67 隻・17 万 9390 重量トンとなった。
商談中)に基づき調査。最近の同調査で回答のあった造
今後表面化する商談もあるため上振れすることは間違い
船所
(49 社)
を調査対象とし、うち 38 社から回答があった。
ないが、16 年度(97 隻・21 万 4564 重量トン)の水準ま
調査の結果、16 年度下半期の建造量は、暫定措置事
で届くかどうかは微妙な状況となっている。
業の対象となる一般貨物船、特殊貨物船、石油タンカー、
内航総連では、今後の代替建造促進対策に資すること
(→次ページに続く)
ケミカルタンカーの合計で 46 隻・10 万 4132 重量トンと
船種別・船型別でみると、一般貨物船は 16 年度 50 隻
なり、すでに認定されている上半期分(51 隻・11 万 432
に対し、17 年度は 36 隻となった。そのうち、主船型であ
重量トン)と合わせると 97 隻・21 万 4564 重量トンとなっ
る 499 総トン型は、16 年度 25 隻に対し、17 年度は 16 隻
た。一方、17 年度は上半期が 39 隻・10 万 8370 重量トン、
と減少している。バブル期に建造された大量の船舶が代
下半期が 28 隻・7 万 1020 重量トンとなり、合計 67 隻・
替建造時期を迎えているが、長引く市況低迷が建造意欲
17 万 9390 重量トンと 16 年度から減少。ただし、17 年度
に水を差しているようだ。一方、タンカーは 16 年度 18
の建造量に関しては、商談の進捗状況などを踏まえて回
隻に対し、17 年度は 14 隻と減少。原発事故に伴う大型黒
答する造船所側の判断次第で予定建造量と実際の建造量
油船の緊急整備が一段落して以降、建造量の低迷が続い
に多少の誤差が発生するため、上振れすることは確実。
ているが、17 年度もその傾向に大きな変化はなさそうだ。
内航総連、船舶燃料油の硫黄分規制で要望策定へ
環境安全委員会で整理
国際海事機関(IMO)が 2020 年から船舶燃料油の硫黄
など懸念される事項があるほか、もともとは A 重油への
分濃度規制強化を決定したことを受け、日本内航海運組
切り替えが前提だったが、今回の MEPC70 では A・C 重
合総連合会では懸念される事項や要望などについて整理
油および軽油のブレンド油で規制値をクリアできるとの
し、国土交通省海事局に提出する方針を明らかにした。
報告があったことから、
「われわれが聞いていた前提と
IMO では、大気汚染防止対策として、船舶からの硫
は違った新たなステージでの話になる部分がある」
(内
黄 酸 化 物(SOx)排 出 削 減 の た め、08 年 か ら 燃 料 油 中
航総連・小比加恒久会長)など不透明な部分も多い。さ
の硫黄分濃度を段階的に規制している。昨年 10 月末
らには、A 重油にシフトした場合、燃料油コストが約 4
にロンドンで開催された第 70 回海洋環境保護委員会
割増となるという試算に加え、エンジンメーカーからは
(MEPC70)では、一般海域における燃料油中硫黄分の
油が替わることによるエンジンへのダメージを懸念する
規制値(現行 3.5%以下)を 0.5%以下に強化する時期に
声もあるという。
ついて、20 年から開始することを決定している。
そこで内航総連では、これらの懸念を払しょくするた
一方、この規制強化に関しては、
「全国で同一スペック
め、まず傘下 5 組合での懸念・要望事項に関する検討を
の燃料油が入手可能かどうか」、
「規制値を満たした燃料
指示し、その検討結果を環境安全委員会において整理し
油の供給体制」、
「追加で設備投資が発生するかどうか」
た上で、海事局に要望事項を提出することとした。
内航海運暫定措置事業、2016 年 11 月期建造申請は 19 隻
499 総トン型一般貨物船は 6 隻
日本内航海運組合総連合会は先頃、内航海運暫定措置
ン型の建造申請が、9 月期は 2 隻にとどまったのに対し、
事業における 2016 年 11 月期の建造申請状況を公表し
当期は 6 隻と全体に占める割合が増加したこと。RORO
た。今回の受付では申請件数が 19 隻・4 万 8753 対象トン、
船などをはじめとする大型船型の建造が活発化する一方
概算納付額が 12 億 5321 万円となり、前年同期に比べ隻
で、長引く輸送需要の低迷で 499 総トン型の建造は停滞
数は 1 隻減、概算納付額は約 1.3 億円減となった。
期に入ったとの見方もあったが、バブル期に建造された
船種別では、一般貨物船 11 隻(改造 1 隻含む)、油送船、
大量の船舶が代替建造時期に突入していることもあり、
曳船各 3 隻、コンテナ船、石灰石専用船各 1 隻。そのうち、
ここにきて潜在していた建造需要の一部が顕在化したよ
大型船型(1000 総トン以上)は 1 万 1240 総トン型一般
うだ。
貨物船、3950 総トン型油送船、6600 総トン型石灰石専
今回の申請がすべて承認された場合、今年度の建造認
用船の計 3 隻。
定隻数は 83 隻となる。まだ 1 月期の申請受付が残ってい
当期の特徴は、一般貨物船の主力船型である 499 総ト
ることから、年間 100 隻を上回る可能性は高い。
16 年度上期の内航貨物輸送、全品目で前年割れ
合計では前年比 2%減・1 億 260 万トン
日本内航海運組合総連合会がまとめた 2016 年度上期
ているほか、8 月の台風による輸送障害も影響し、3%減
(4 ~ 9 月)の内航輸送主要元請オペレーター 60 社の貨
の 2152 万 7000 トンと減少。紙・パルプは「紙離れ」な
物船品目別輸送実績によると、太宗貨物の鉄鋼が前年同
ど構造的な問題で需要が漸減傾向にあり、4%減の 117
期比 1%減の 1962 万 7000 トンと微減ながら前年割れと
万 5000 トンと振るわなかった。
なったのをはじめ、全品目で前年同期を下回る結果と
一方、石炭火力向け燃料需要が高水準を維持していた
なった。
燃料
(石炭・コークス)
は、期中に定修が集中したことで1%
鉄鋼は期待される東京オリンピック関連需要がいまだ
減の 718 万 6000トンと微減。雑貨は繁忙期の北海道発青
顕在化せず、輸送需要は低水準が続いている。セメント
果物や飲料などの輸送は堅調だったが、一部で大型船の
も同様の理由で需要が低迷し、5%減の 1408 万 5000 ト
入渠などもあり、増減なしの 1149 万 5000トンとなった。
ンと前年割れ。原料(石灰石等)も鉄鋼・セメント向け
当期は、景気の回復が遅れていることに加え、台風に
の需要が伸びず、3%減の 2750 万 4000 トンとなった。ま
よる輸送障害の影響もあり、全体では 2%減の 1 億 259
た、自動車は増税による軽自動車の販売不振が尾を引い
万 9000 トンと前年同期を下回った。
16 年度上期の内航タンカー輸送、黒・白とも前年割れ
高温液体、耐腐食は増加
日本内航海運組合総連合会がまとめた 2016 年度上期
減少につながった。そのほか、ケミカルは一部プラントの
(4 ~ 9 月)の内航輸送主要元請オペレーター 60 社のタ
定修・故障が響き、2%減の 396 万 6000 トンと前年割れ。
ンカー品目別輸送実績によると、黒油が前年同期比 8%
一方、特殊タンク船部門は、LPG 需要が低迷したこと
減の 1554 万 4000kl、白油が 2%減の 3428 万 7000kl と
から高圧液化は 7%減の 306 万 3000 トンと減少したが、
ともに前年割れとなった。
製油所向けの燃料用アスファルトの需要増などがあった
一般タンカー部門のうち、黒油は期中に電力自由化な
高温液体が 5%増の 65 万トン、苛性ソーダ輸送が堅調に
どを背景に火力発電向けの原・重油輸送が大幅に減少し
推移した耐腐食が 4%増の 246 万 1000 トンとともに増
たほか、製油所の定修も響いた。白油もガソリンをはじめ
加した。
とする構造的な需要減に加え、期中に愛知県内の落雷に
当期は、黒・白油ともに低調に推移したことから、全
よる停電で製油所の稼働が停止したことなどが輸送量の
体では 4%減の 5997 万 kl・トンと前年同期を下回った。
内航総連、海外売船 7 隻を公表
2016 年 11 月報告分、復調の兆しか
日本内航海運組合総連合会の建造認定委員会がまと
ロ件、9 月 4 隻、10 月 2 隻と閑散状態が続いていたが、11
めた「海外売船状況報告」によると、2016 年 11 月の同委
月は 7 隻となり、復調の兆しがみられた。
員会に報告された売船隻数は 7 隻だった。当月に報告さ
れた船舶の平均総トン数は 916 トン、平均対象トン数は
2019 トン、平均船齢は 22.95 年。7 隻の売船先は、フィ
リピン向け、インドネシア向け各 2 隻、韓国向け、香港
向け、バングラデシュ向け各 1 隻。船種は一般貨物船 4
隻、油送船、石灰石船、砂利船各 1 隻。
足元の内航船の海外売船市場に関しては、7・8 月はゼ
石油連盟・鉄鋼連盟、需給動向や今後の課題を解説
内航総連主催「荷主団体講演会」
日本内航海運組合総連合会は昨年 11 月 25 日、
「内航海
た、被災地に石油供給不足が発生した際に石連が事務局
運 荷主団体講演会」を東京・平河町の海運クラブで開
業務を担当し、石油元売各社の被災状況・在庫量などの
催した。今回は石油連盟、日本鉄鋼連盟の 2 団体から講
情報を収集し、緊急供給体制を確保する仕組みが、熊本
師を招き、両産業の需給動向や今後の課題などについて
地震でその機能を発揮した一方で、
「電力業界との連携」、
講演した。
「自家用発電機の整備」、
「パニック買い対策」などの課題
冒頭の主催者代表あいさつで内航総連の小比加恒久会
が浮かび上がったことを説明。そのほか、全国内航タン
長は、
「内航海運は日本の国内物流の 4 割、産業資材物資
カー海運組合との共同活動として実施している「内航連
に関しては 8 割超の輸送を担う『物流の大動脈』と自負し
絡会」におけるこれまでの成果などを紹介した。
ている。事業者としてはやはり主要貨物の動向が気になる。
次に講演した日本鉄鋼連盟国際協力・調査本部の浅
できれば直近の動向だけでなく、中長期的な動きも知るこ
岡裕之国内調査グループリーダーは「鉄鋼素材・鉄鋼
とができればと思う」と述べ、講演内容に期待を寄せた。
業の特性」、
「鉄鋼の分類」、
「日本鉄鋼業の位置づけ・特
初めに講演した石油連盟調査・流通業務部の小野森
徴」、
「日本鉄鋼業の業界構造」、
「鉄鋼の流通経路・販売
彦副部長は、石油業界の国際競争力強化のため、エネル
形態」、
「鉄鋼の輸送形態」など基礎的な知識を解説。また、
ギー供給構造高度化法に基づき、2008 年度末に約 489
二度の石油危機で落ち込みながらも、バブル期には内需
万バレル/日だった原油処理能力を、14 年 4 月には約 2
が 1 億トンを超え、リーマンショック前も世界経済の成
割減となる約 395 万バレル/日に削減、さらに高度化法
長に伴い市場が拡大するなど粗鋼需給の足取りを解説し
新基準の対応期限となる 16 年度末には 1 割減となる見
た。一方、鉄鋼市場の現況として、普通鋼鋼材の国内出
通しを説明。また、競争力強化に向け、今後は「海外事業」
荷が 6 月を底に上向きに転じており、建築関連では住宅
(上流部門への投資、石化・潤滑油事業など)、
「再生可能
(貸家)や倉庫が下支えする中で、今後の五輪案件の本格
エネルギーの取り組み」
(風力・太陽光・地熱)、
「電力自
化が期待される状況を紹介。また、造船向けは海運の世
由化への取り組み」、
「ガス事業関連の取り組み」
(LNG
界的低迷が響いているが、自動車は 6 月を底に回復傾向
ターミナルの建設・操業、LPG 会社の統合)、
「製油所の
にあり、下期以降も期待できる状況であるとした。その
抜本的な生産性向上」
(地域における精製事業の統合・
ほか、地域別の鋼材需要動向(鉄鋼受注)については、東
連携による設備の最適化、製油所と石油化学工場との連
北地区、中国地区では「一進一退」ながら、北海道、関東、
携)、
「企業再編」の必要性を指摘した。
東海、北陸、関西、四国、九州の各地区では回復の兆しが
また、
「東日本大震災の経験を踏まえた熊本地震への
みられると分析し、先行指標として内航海運の今後に期
対応と課題」として、東日本大震災を契機に構築され
待感を持たせる説明となった。
関東運輸局、退職予定自衛官に内航船員職を PR
合同企業説明会に出展
関東運輸局は昨年 11 月 22 日、若年内航船員確保の
員対策協議会の中楯幸一氏(全国内航輸送海運組合・事
ため、関東地方船員対策協議会と連携し、都内で開催さ
務局長)が説明。当日は、全国から任期制自衛官 188 人
れた「任期制退職予定自衛官合同企業説明会」に参加し、
が参加し、ブースには 8 回の面談時間の間に陸・海・空
「船員職業相談コーナー」を設置した。任期制自衛官に対
の自衛官 22 人が訪れ、内航海運業界の現状、船内生活、
する企業説明会にブースを出展するのは同局としては初
船員の処遇、海技資格の取得方法等について耳を傾けた。
めての試み。
自衛官からは、
「集団生活や上下関係には慣れており、携
ブースには内航船員の仕事を分かりやすく PR するた
帯電話が通じなくても大丈夫」、
「勤務地の近くに引っ越
めの資料を用意し、同局船員労政課の職員や関東地方船
さなくてもいいのは魅力」といった声が寄せられた。