(Ai)第六弾 シリーズ オートプシー・イメージング 特集 Scene 迫りくる多死社会とAiの役割 ─ 社会インフラとしての現状と今後の展開 Vol.10 Ⅲ 医療事故調査制度におけるオートプシー・イメージング(Ai)の現状と展望 3.茨城県医師会における 医療事故調査制度への取り組み 石渡 勇 石渡産婦人科病院院長 / 茨城県医師会副会長 医療事故調査制度(以下,本制度)の においては,すべての医療機関が対象に 骨子は, 「院内医療事故調査」を基本とし, なるものの,医療機関の規模により調査 第三者機関(医療事故調査・支援センター, の実施が困難な状況にある。当該医療機 以下,センター)および支援団体が一体と 関に過度な負担とならず,同時に「中立・ 医師会は,支援団体として告示され なってその支援・助言をするものである。 公正性」 「専門性」を担保し,適正な「院 た茨城県内の支援団体などの総合的連 医療界自らが,本制度の目的である医療 内医療事故調査」が行えるよう, 「支援」 「助 絡調整を行い,その支援団体としての中 事故の原因究明と再発防止に主体的に取 言」する体制が必要である。 「院内医療事 核的役割,すなわち地域支援団体連絡 り組むことが求められている。 (図 1)1), 故調査の支援マニュアル茨城版」 協議会(図 4)を組織した。支援が円滑 支援の実際 本制度の円滑な運用については,茨城 (図 2) , 「院内医療事故調査の支援の流れ」 に実施できるように,協議会で支援など 県医師会医療安全対策委員会(以下,委 および「マニュアルに沿った院内事故調査 の基本的な方針を決定する。本制度に 員会)で検討し,茨城県医療事故調査等 (図 3)をまとめた。ここに,茨城 の流れ」 おける相談窓口(茨城県医師会内に設置) 支援団体連絡協議会(以下,協議会)で 県医師会(以下,医師会)が作成した茨 の強化を図るため,医療事故調査支援 協議され,方針を決定してきた。本制度 城版の概略を示す。 委員会(窓口業務を支援)を設置した。 1 はじめに 2 「支援」 A.医療事故調査の対象となるか否かの判断の 支援について 1)医療機関からの報告相談窓口の設置の必要性 2)報告に関する相談等窓口と助言者の要件 3)病理解剖・Ai 実施への支援 B.院内医療事故調査の具体的業務の支援 1)院内調査の実施手順マニュアル,報告書作 成等マニュアル 2)院内調査の推進に関する助言の必要性とそ の体制について C.外部の医療専門家としての支援 1)外部委員の派遣体制について 2)公正中立性,第三者性の担保について 3)外部支援者のためのマニュアル整備やその 人材の育成 4)評価活動の支援に対するインセンティブに ついて 3 事故調査報告書等を説明する場の必要性について 4 おわりに マニュアル各種 Ⅰ 茨城県医師会相談窓口対応マニュアル Ⅱ 院内事故調査の手法に関するマニュアル Ⅲ 院内事故調査における報告書作成マニュアル Ⅳ 遺族への説明マニュアル Ⅴ 医療事故調査・支援センターへの報告マニュ アル 図 1 院内医療事故調査の支援マニュアル茨城版 ③管理者は第三者機関 へ事故発生を報告 ⑦管理者は調査結果を 第三者機関へ報告 医療機関 ⑩第三者機関 から当該医療 機関へ報告 第三者機関 院内事故 発生 主治医・管理者が 対象事例か判断 ⑧遺族から 第三者機関への 再調査依頼 ②遺族への 説明 ⑪第三者機関から 遺族への説明 遺族 ⑨管理者・院内事故調査 から第三者機関への 再調査依頼 ⑥管理者は院内 事故調査結果 の遺族への説明 ⑫医療機関からの 最終報告 茨城県医師会 相談窓口 ①報告の対象か否か 相談・支援要請 ⑤支援チーム編成・ 派遣 ④Aiや病理解剖の 依頼または 医師会からの 依頼(仲介) 院内事故調査委員会 医療機関+県医師会支援チーム 大規模病院においても,院内医療事故調査の実施に当たり 中立性・透明性を図るため,外部委員の協力を得ること 〈0913-8919/17/¥300/ 論文 /JCOPY〉 図 2 院内医療事故調査の支援の流れ(特に,中小医療機関) 院内事故が発生すると,当該医療機関の管理者が判断できない場合は, ①事故調査制度の対象事例か否か茨城県医師会の相談窓口に相談し,対 象であると判断された場合は,死亡事案について②遺族に説明するとともに, ③第三者機関にも報告する。病理解剖・Ai などができない場合は④医師会 が剖検・Ai 実施機関に依頼するとともに,⑤支援チームを編成し派遣する。 院内事故調による報告書ができたら,その結果を管理者(希望があれば院 内事故調査チーム)は⑥遺族に説明するとともに⑦第三者機関であるセンター に報告書を提出する。なお,⑧遺族が納得できない場合や⑨当該医療機関 で十分に調査ができない場合は,遺族や医療機関はセンターに調査を依頼 することができる。センターは報告書などを検証し,あるいは追加調査を 医療機関に求め,さらに検証し,管理者に確認の上,最終的調査報告書 を作成し,⑩医療機関と⑪遺族に報告する。医療機関からは医師会に院 内事故調査の終了などを通知するとともに,センターへの報告書のコピー を提出する。 INNERVISION (32・1) 2017 27
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