医療事故情報収集等事業 第47回報告書

医療事故情報収集等事業
第47回 報 告 書
(2016年7月 ∼9月 )
2016年 12月 26日
Ҕၲʙ૏᧸ഥʙಅᢿ
本事業の内容(報告書、事例等)は、以下のホームページから閲覧・検索していただけます。
(公財)日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業トップページ:http://www.med-safe.jp/
○ 報 告 書 ・ 年 報 :http://www.med-safe.jp/contents/report/
○ 医 療 安 全 情 報 :http://www.med-safe.jp/contents/info/
○ 公開データ検索:http://www.med-safe.jp/mpsearch/SearchReport.action
目次
はじめに …………………………………………………………………………………… 1
医療事故情報収集等事業について ∼第47回報告書の内容を中心に∼ ………… 3
I 医療事故情報収集等事業の概要……………………………… 47
1 経緯 ………………………………………………………………………… 47
【1】ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の経緯 ………………………………47
【2】医療事故情報収集・分析・提供事業の経緯 ………………………………………47
【3】本財団における事業の経緯 …………………………………………………………48
2 医療事故情報収集・分析・提供事業の概要 …………………………… 49
【1】事業の目的 ……………………………………………………………………………49
【2】医療事故情報の収集 …………………………………………………………………49
【3】医療事故情報の分析・提供 …………………………………………………………50
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の概要 …………………… 51
【1】事業の目的 ……………………………………………………………………………51
【2】ヒヤリ・ハット事例の収集 …………………………………………………………51
【3】ヒヤリ・ハット事例の分析・提供 …………………………………………………53
Ⅱ 報告の現況 …………………………………………………… 54
1 医療事故情報収集等事業の現況 ………………………………………… 54
2 医療事故情報収集・分析・提供事業 …………………………………… 55
【1】登録医療機関 …………………………………………………………………………55
【2】報告件数 ………………………………………………………………………………57
【3】報告義務対象医療機関からの報告の内容 …………………………………………61
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業 …………………………… 82
【1】登録医療機関 …………………………………………………………………………82
【2】発生件数情報の報告件数 ……………………………………………………………84
【3】事例情報の報告件数 …………………………………………………………………89
【4】事例情報の報告の内容 ………………………………………………………………93
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況 ……………………………… 110
1 概況 ………………………………………………………………………… 110
【1】分析対象とするテーマの選定状況 ……………………………………………… 110
【2】分析対象とする情報 ……………………………………………………………… 110
【3】分析体制 …………………………………………………………………………… 111
【4】追加情報の収集 …………………………………………………………………… 111
2 個別のテーマの検討状況 ………………………………………………… 112
【1】腫瘍用薬に関連した事例 ③「指示、調剤、準備、患者への説明・指導」の事例 … 112
【2】歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例 ……………………………………… 140
【3】小児用ベッドからの転落に関連した事例 ……………………………………… 153
3 再発・類似事例の発生状況 ……………………………………………… 160
【1】概況 ………………………………………………………………………………… 160
「薬剤の取り違え」
(医療安全情報 No. 4 第2報 No. 68)について ……… 164
【2】
「膀胱留置カテーテルによる尿道損傷」
(医療安全情報 No. 80)について … 177
【3】
参考 医療安全情報の提供 …………………………………… 191
【1】目的 ………………………………………………………………………………… 191
【2】対象医療機関 ……………………………………………………………………… 191
【3】提供の方法 ………………………………………………………………………… 191
【4】医療安全情報 ……………………………………………………………………… 191
はじめに
公益財団法人日本医療機能評価機構
理事長 河北 博文
公益財団法人日本医療機能評価機構は、国民の医療に対する信頼の確保および医療の質の向上を図
ることを目的として、病院機能評価事業や医療事故情報収集等事業など様々な事業を運営し、医療の
質をできるだけ高く保ち、継続的に安心・安全な医療を提供するために、これらの事業に取り組んで
おります。
医療事故情報収集等事業では、収集した医療事故情報やヒヤリ・ハット事例の集計、分析結果を定
期的な報告書や年報として取りまとめるとともに、医療安全情報を作成し、医療従事者、国民、行政
機関等広く社会に対して情報提供を行っております。その上で、医療安全情報については医療安全の
直接の担い手である医療機関により確実に情報提供が行えるよう、希望する病院にファックスで直接
提供する事業を行っております。医療安全情報は2016年2月から全国の約7割の病院に提供する
まで拡大しています。また、医療安全情報はホームページにも公開しておりますので、ご活用下さい。
本事業は2004年に医療法施行規則に基づく登録分析機関として本財団が開始し、現在3期目を迎
えております。この間、医療安全の推進のため、平素より本事業において医療事故情報やヒヤリ・ハット
事例等の情報の提供にご協力いただいております医療機関の皆様や、関係者の皆様に深く感謝申し上
げます。
本事業における報告書の公表は今回が47回目になります。今回は2016年7月から9月までに
ご報告いただいた医療事故情報とヒヤリ・ハット事例の報告をとりまとめたものです。また、本報告
書に掲載した医療安全情報はこれまで121回の情報提供を行ってきたもののうち、2016年7月
から9月に提供した No. 116から No. 118を掲載しておりますので、有効にご活用いただけると
幸いに存じます。
これまでに公表した報告書に対しては、医療事故情報の件数や内容に関するお問い合わせや報道な
ど多くの反響があり、医療安全の推進や医療事故の防止に関する社会的関心が依然として高いことを
実感しております。
今後とも、本事業や病院機能評価事業などの様々な事業を通じて、国民の医療に対する信頼の確保
と、日本の医療の質の向上に尽力して参りたいと考えておりますので、ご理解とご協力を賜りますよ
う宜しくお願い申し上げます。
-1-
-2-
医療事故情報収集等事業について
∼第47回報告書の内容を中心に∼
公益財団法人日本医療機能評価機構
執行理事 後 信 医療事故防止事業部長 坂口 美佐
1 はじめに
平素より本事業の運営にご理解とご協力をいただき、深く感謝申し上げます。
さて今回は、2016年7月から9月までにご報告いただいた医療事故情報とヒヤリ・ハット事例
をとりまとめた第47回報告書を公表いたします。報告書の内容をご参照いただき、安全管理を担当
する方を中心に、それぞれの医療機関の実情に即した有用な部分を院内で周知していただければ幸い
に存じます。
また、医療を受ける立場でこの報告書や本事業のホームページをご覧の皆様におかれましては、
医療事故やヒヤリ・ハットの現状、そして医療機関や医療界が再発防止に向けて取り組んでいる姿を、
ご理解いただければ幸いに存じます。
さらに、このたびの公表にあたり、医療事故情報収集等事業の現況や関連する情報について、以下
にご紹介させていただきます。
2 第47回報告書について
1)参加登録医療機関数
本事業に参加している医療機関数は、2016年9月30日現在で1,447となり、前回の報
告書に記した数より少し増加しました。参加登録医療機関数の内訳を示す図表を54頁に掲載し、
医療事故情報を報告している医療機関数、ヒヤリ・ハット事例を報告している医療機関数、重複を
除いた事業参加医療機関数などをお示ししています。また、この図表の内容は、本事業の参加状況
を示す基本的な内容であることから、ホームページの「参加登録医療機関一覧」において随時情報
を更新しています(http://www.med-safe.jp/contents/register/index.html)
。
2)報告件数など
この報告書が対象としている2016年7月1日から9月30日の間に、999件の医療事故情
報をご報告いただきました。内訳は、報告義務対象医療機関から866件、参加登録申請医療機関、
つまり任意で参加していただいている医療機関から133件でした。この1月∼9月の報告件数
を単純に1年分に換算すれば、昨年の報告件数3,654件とほぼ同様の状況となります。毎年の
報告件数は、前年とほぼ同じか前年を上回る数の報告が続いており、医療事故を報告することが定
着してきているものと考えています。そして、将来、報告範囲に該当する事例が十分報告されるよ
うになった段階で、特定の種類の医療事故がいくつも減少して行くことが観察されるとすれば、そ
れは望ましいことと考えています。そのためにも有用な事例の報告、分析、情報提供という改善の
サイクルを回し続けることが重要です。医療事故の発生予防や再発防止に資する事例のご報告をい
-3-
ただくことにより、わが国の医療安全の推進のために重要な情報が得られ、広く医療機関に共有す
ることが可能になります。医療を取り巻く環境が厳しくなっているという指摘が多くなされる中で、
医療事故情報やヒヤリ・ハット事例をご報告くださる医療機関の皆様のご協力に心より感謝申し上
げます。今後とも、本報告書中の、
「Ⅰ−2 医療事故情報収集・分析・提供事業の概要【2】医
療事故情報の収集」に掲載している報告範囲(49∼50頁)をいま一度ご確認いただき、該当事
例をご報告いただければ幸いに存じます。報告範囲につきましてはホームページに掲載している「事
業の内容と参加方法」(http://www.med-safe.jp/pdf/business_pamphlet_2016_01.pdf)や事業開
始時のお知らせ(http://www.med-safe.jp/pdf/2004.09.21_1.pdf)にも記載しています。
また、全ての事業参加医療機関にとって、報告範囲に該当する事例の発生を把握すること、事実
を確認して整理すること、そしてその内容をまとめて報告することは、決して容易なことではない
と考えています。しかし、本事業に参加し、質の高い報告を継続的に行うことで、事実を把握する
能力や報告する能力が高まることや、医療機関というひとつの組織として医療安全を重視した方針
を決定するための有用な資料となることなどが期待できます。これらは医療機関における医療安全
推進だけでなく、わが国の医療安全の底上げにつながるものと考えられますので、何卒よろしくお
願いいたします。
3)任意参加医療機関からの報告件数∼任意参加医療機関からの報告を期待しています∼
任意参加の医療機関から報告される医療事故情報の件数については、報告義務が課せられている
医療機関の報告件数に比べ随分少ない現状が事業開始後長く続いたあと、2010年は521件と、
それまでの約3倍程度に増加しました。しかし、2011年以降の報告件数は300件前後になり、
2014年も283件にとどまり、2015年も280件となっています。一方で、任意参加の医
療機関数が増加していることは、本事業へのご協力の意思のあらわれと考えられ、大変ありがたく
思っております。そして、
「参加」の段階の次は、
「報告」の段階です。報告件数をみると、私ども
の取り組みを含め、この「報告」の段階の取り組みがまだ不十分であると考えられます。
任意参加の医療機関からの報告件数が、報告義務対象医療機関からのそれよりも随分少ないこと
は、報告に対する意識の違いを示しているとも考えられ、本事業の運営委員会でも指摘されている
ところです。本事業として講演の機会をいただいた際には、この点についてご説明し、出席者の皆
様にご協力をお願いしています。同時に、医療事故情報を外部報告することについて、医療機関や
医療界の中で十分な動機が成熟してこそ、件数だけでなく質の高い内容の報告がなされるという考
え方も併せてご説明しています。つまり、報告件数が少ないことを問題視するあまり、国がいたず
らに報告義務を拡大したり、罰則を課したりする方法で達成されるものではないと考えています。
医療事故情報の報告件数は、医療界が医療安全に積極的に取り組んでいる姿勢が評価されるひと
つの目安になると思われます。報告義務が課せられている医療機関と任意で参加されている医療機
関の間に報告件数の大きな差があることは、必ずしも日常の診療現場の医療安全の努力の実態を反
映していないのではないかと考えられます。任意で参加されている医療機関の皆様におかれまして
は、報告範囲に該当する事例の適切なご報告に引き続きご協力くださいますようお願いいたします。
-4-
表1 医療事故情報の報告件数
年
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
報告義務
報告件数
任意参加
1,296
1,266
1,440
1,895
2,182
2,483
2,535
2,708
2,911
3,374
151
155
179
123
169
521
316
347
341
283
280
1,265
1,451
1,445
1,563
2,064
2,703
2,799
2,882
3,049
3,194
3,654
報告義務
272
273
273
272
273
272
273
273
274
275
275
任意参加
283
300
285
272
427
578
609
653
691
718
743
合計
555
573
558
544
700
850
882
926
965
993
1,018
合計
医療機関数
1,114
4)報告の現況
本報告書の「Ⅱ 報告の現況」に示している多くの図表の数値は、毎回大きな変化は見られない
傾向にあります。本事業は、変化がある場合もない場合も医療事故やヒヤリ・ハットの現状を社会
に継続的に示し、医療の透明性向上に寄与していくことも役割と考えており、集計結果を掲載して
います。
また、
「当事者の直前1週間の勤務時間」
「発生場所」
「事故調査委員会設置の有無」
「事故の概要
×事故の程度」など、報告書に掲載していない図表を、ホームページ(http://www.med-safe.jp/
contents/report/html/StatisticsMenu.html)に掲載しています。ホームページには、各種の集計表の
掲載箇所(報告書またはWeb)を示した集計表一覧も掲載していますので、
ご参照ください(図1)
。
図1 集計表のページ
「報告書・年報」のページの
「集計表(Web 公開分)」をクリック
報告書の表(2016年分)
報告書の表(2015年分)
年報の表(2015年分)
-5-
5)個別のテーマ(112∼159頁)
本報告書の個別のテーマでは、「腫瘍用薬に関連した事例」「歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した
事例」「小児用ベッドからの転落に関連した事例」を取り上げました。これらのうち、「腫瘍用薬に
関連した事例」は、テーマを設定した後、それに該当するヒヤリ・ハット事例を1年間にわたり収
集しながら医療事故情報と総合的に検討し、前方視的に分析していくテーマです。それ以外のテー
マは、2016年7月∼9月に報告された重要な事例をテーマとして設定し、同種事例を過去に遡っ
て、後方視的に分析したものです。このように、個別のテーマの分析には、前方視的分析と後方視
的分析とがあります。
表2 個別のテーマ一覧
①前方視的分析を行うテーマ
(テーマに該当するヒヤリ・ハット事例を1年間収集しながら、医療事故情報と総合的に分析するテーマ)
・腫瘍用薬に関連した事例
②後方視的分析を行うテーマ
(7∼9月に報告された医療事故情報の中からテーマを設定し、同種事例を過去に遡って活用し分析する
テーマ)
・歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例
・小児用ベッドからの転落に関連した事例
テーマ分析の概要を次に紹介します。
(1)腫瘍用薬に関連した事例 ③「指示、
調剤、
準備、
患者への説明・指導」の事例(112∼139頁)
本テーマは、事例を1年間継続的に収集し、第45回報告書から4回にわたって取り上げる予定
で、今回が3回目の掲載となります。
腫瘍用薬は、主に複数の薬剤を使用すること、患者の体表面積や体重によって投与量が決定され
ること、薬剤の取り扱いに注意が必要なこと、患者への影響が大きいことなどから、医療事故情報
およびヒヤリ・ハット事例が本事業に多数報告されています。第45回報告書では腫瘍用薬に関連
した医療事故情報とヒヤリ・ハット事例を概観し、第46回報告書では発生段階が「レジメン登録」
「治療計画」「処方」に該当する事例を取り上げました。今回は、発生段階が「指示」「調剤」「準備」
「患者への説明・指導」に該当する事例を取り上げて分析を行いました。
「指示」の事例では、腫瘍用薬の投与を中止すべきところしなかった「中止時の実施」の事例に
着目して分析を行いました。「調剤」の事例では、報告件数の多かった「薬剤量間違い」を取り上げ、
報告された薬剤名と規格・数量等をまとめました。
「準備」の事例のうち、調製に関する事例では
薬剤量間違いが多く、薬剤の溶解および秤取の際に発生した事例について、事例の内容や間違いに
気付いたきっかけ等を整理して示し、主な背景・要因、改善策を掲載しました。また、
「準備」の
事例では、カテーテル・ポートの不具合・取り扱い間違いも報告されており、薬剤によってフィル
ターの使用の有無が異なることから、主な事例とともに添付文書の記載内容を紹介しています。
医療機関におかれましては、本報告書や第45回∼第46回報告書を活用していただき、同種事
例の発生予防に努めていただければ幸いに存じます。
-6-
表3 「薬剤量間違い」の薬剤の溶解および秤取の内容(図表Ⅲ - 2- 18より一部を抜粋)
薬剤名
予定した量
誤った量
内容
130mg
140mg
・ 薬剤師は130mgのところ、購入した140mg
(10mg×4、100mg×1)を全量調製した。
ジェブタナ点滴静注60mg
24mg
60mg
・ 医師は 1 バイアル60mg投与するものであると思
い込み調製した。
ドキソルビシン塩酸塩注射液
10mg
16mg
20mg
・ ドキソルビシン塩酸塩注射液10mgが他の患者の
分を含め2バイアル届いており、用量の指示がある
ことに気付かず2バイアル(20mg)全て調製した。
60mg
・ 当該患者における最大使用量は55.
8mgであり、
カルテには抜き取り薬剤量が記載されていたが、検査
室では持参された10mgのバイアル1本、50mg
のバイアル1本の全量分を調製した。
7mg
17mg
・ エクザール注射用2本が冷蔵庫に保管されており、
エクザール注射用1バイアル(10mg)を使用
して7mgで調製するところ、エクザール注射用を
2バイアル使用し17mgを調製した。
33mg/
body
38mg/
body
・ 専用の溶解液が付いており、溶解液全量を用いて溶
解し必要量を秤取するところ、全量で溶解しなかっ
た為、濃い濃度でジェブタナ溶解液が作られた。こ
れを原液として必要量を秤取した。
900mg
950mg
・ 薬剤部からは2バイアルが上がっており、1 バイアル
目(500mg)を生理食塩液100mLへ注入し
た。2バイアル目は、生理食塩液10mLで溶解し、
そのうち8mL(400mg)取るところ、9mL
(450mg)を取った。
15mg
30mg
・ フルダラ静注用1バイアルを蒸留水5mLで溶解し、
そのうち1.5mLを取るところ3mLを取り、生理
食塩液と足して10mLとした。
過剰
アクプラ静注用100mg、
10mg
準備されて
いた薬剤を
全量使用した
記載なし
ファルモルビシン注射用50mg、
(最大投与量
10mg
55.8mg)
エクザール注射用10mg
溶解方法
を誤った
ジェブタナ点滴静注60mg
アリムタ注射用500mg
秤取量を
誤った
フルダラ静注用50mg
(2)歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例(140∼152頁)
本事業には、歯科診療の際に発生した事例も報告されており、これまでに報告書や医療安全情
報で取り上げてきました。第15回報告書(2008年12月公表)では歯科診療の際の部位間違
いの事例を共有すべき医療事故情報として紹介し、その後も第21回報告書(2010年7月公
表)
、第38回報告書(2014年9月公表)の再発・類似事例の発生状況で取り上げました。特に
「抜歯部位の取り違え」については、医療安全情報 No. 47(2010年10月)で注意喚起を行い、
その後も第30回報告書(2012年9月公表)で再発・類似事例の発生状況として取り上げました。
歯科診療に関する事例は継続的に報告されていることから、本報告書では歯科治療中に発生した
事例を過去に遡って検索し、概要を整理しました。さらに、本報告書分析対象期間(2016年7月
∼9月)に、歯石除去中にエアスケーラーのチップが破損し、チップの先端を患者が誤飲した事例
が1件報告されたため、患者が歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例を取り上げて分析しました。
歯科治療中に発生した医療事故情報は2011年1月∼2016年9月に155件の報告があり、
そのうち異物を誤飲・誤嚥した事例は30件でした。本分析では、主な事例を紹介し、誤飲・誤嚥
した異物、実施した検査と異物が発見された部位、患者への影響などをまとめました。さらに、報
告された背景・要因と改善策を整理して示しました。
歯科診療に携わる皆様におかれましては、報告された事例の内容や背景・要因、改善策を参考に
していただき、同種事例の防止に努めていただければ幸いに存じます。
-7-
表4 誤飲・誤嚥した異物
誤飲・誤嚥した異物
件数
補綴装置・歯冠修復物
固定性補綴装置
金属冠
支台築造
ポストクラウン
切断したブリッジの一部
可撤性補綴装置
クラスプ
クラスプがついたままの義歯の一部
歯冠修復物
インレー
金属修復物
詳細不明
歯科用医療機器・歯科材料
バー
ワイヤー
根管治療用器具
ミニスクリュー埋入用機器のシャフト
エアスケーラーのチップの先端
印象用コーピング
印象用ピン
シリコン印象材
歯
金属冠が装着された歯
破折した歯冠
合 計
15
9
4
3
1
1
2
1
1
2
1
1
2
13
4
2
2
1
1
1
1
1
2
1
1
30
(3)小児用ベッドからの転落に関連した事例(153∼159頁)
医療機関で使用されている小児用ベッドは、床からマットまでの高さが70cm程度と成人用
ベッドより高く、転落防止のため四方を囲むサークル型の柵が付いています。ベッド柵はスライド
式で、2段階または3段階の高さで固定することができますが、上段以外で固定されている場合は、
ベッドからの転落の危険性が高まります。今回、本報告書分析対象期間(2016年7月∼9月)に、
使用していた小児用ベッドのベッド柵が中段になっていたところ、小児患者がベッド柵に寄り掛か
かってしまい、そのままベッドから転落する事例が1件報告されました。そこで本報告書では、事
例を過去に遡って検索し、同様の事例を取り上げ、分析を行いました。
本報告書では、2011年1月から2016年9月までに報告された4件の事例の概要を紹介し、
患者の年齢、転落による患者への影響を整理し、ベッド柵の状態と転落時の状況をまとめました。
患者の年齢は1歳未満が2名、3歳と4歳がそれぞれ1名であり、患者への影響は、頭部の外傷の
事例が3件、上腕の骨折の事例が1件ありました。小児用ベッドは高さが成人用ベッドに比べ高く、
さらに小児は想定外の行動をとることがあることから、処置等の際以外はベッド柵を上段まで上げ
ておくことを徹底する必要があります。また、患者の家族にも、ベッド柵を上段まで上げておくこ
とや転落による危険性について説明することが重要です。
医療機関におかれましては、同種事例の発生予防のため、本報告書を教育などにご活用いただけ
れば幸いに存じます。
-8-
図2 小児用ベッドのイメージ
事例のイメージ
ベッド柵が上段まで上がっている状態
6)再発・類似事例の発生状況(160∼189頁)
第17回報告書まで掲載していた「共有すべき医療事故情報」や、「個別のテーマの検討状況」、
そして「医療安全情報」で取り上げた事例の中には、一度情報提供しても、実際には引き続き類似
事例が報告されているものがあります。そこで、
「Ⅲ−3 再発・類似事例の発生状況」では、再
び報告があった事例を取り上げ、情報提供後の類似事例の発生件数の推移、類似事例の概要、医療
機関から報告された具体的な改善策などの内容を掲載しています。
過去に掲載した「共有すべき医療事故情報」と「個別のテーマの検討状況」の中から、本報告
書が対象とする2016年7月∼9月に報告された再発・類似事例の件数を161∼163頁に掲
載しています。
「共有すべき医療事故情報」の再発・類似事例の件数は、「体内にガーゼが残存した
事例」が7件、
「左右を取り違えた事例」
「歯科診療の際の部位間違いに関連した事例」がそれぞれ
5件などでした。
「個別のテーマの検討状況」の再発・類似事例の件数は、「凝固機能の管理にワー
ファリンカリウムを使用していた患者の梗塞及び出血の事例」「皮下用ポート及びカテーテルの断
裂に関連した医療事故」がそれぞれ4件、
「画像診断報告書の内容が伝達されなかった事例」
「膀胱
留置カテーテル挿入の際、尿流出を確認せずにバルーンを膨らませ尿道損傷を起こした事例」
「院
内での自殺及び自殺企図に関する事例」がそれぞれ3件などでした。
また、これまでに提供した「医療安全情報」の中から、本報告書分析対象期間に報告された再発・
類似事例の件数を163頁に掲載しています。このうち、「No. 8:手術部位の左右の取り違えおよ
び No. 50:手術部位の左右の取り違え(第2報)
」「No. 47:抜歯部位の取り違え」
「No. 58:
皮下用ポート及びカテーテルの断裂」がそれぞれ4件と多く報告されていました。
それらの中から今回取り上げたのは、「薬剤の取り違え、薬剤の取り違え(第2報)
」(医療安全
情報 No. 4、No. 68)と「膀胱留置カテーテルによる尿道損傷」
(医療安全情報 No. 80)の再発・
類似事例です。概要を次に示します。
-9-
(1)「薬剤の取り違え、薬剤の取り違え(第2報)」(医療安全情報 No. 4、68)について
(164∼176頁)
薬剤の名称が類似していることによる「薬剤の取り違え」については、医療安全情報 No. 4
(2007年3月提供)で取り上げ、その後も第21回報告書(2010年7月公表)
、第25回報
告書(2011年6月公表)
、第29回報告書(2012年6月公表)において再発・類似事例の発生
状況で取り上げています。さらに、医療安全情報 No. 68「薬剤の取り違え(第2報)
」
(2012年
7月提供)では、
「医薬品の販売名の類似性等による医療事故防止対策の強化・徹底について
(注意喚起)
」の通知が厚生労働省より出されたことを紹介し、再び注意喚起を行いました。今回、
本報告書分析対象期間(2016年7月∼9月)に類似の事例が2件報告されたため、再び取り上
げました。
本分析では、医療安全情報 No. 68の集計期間後の2012年6月以降に報告された類似事例
10件を、発生段階が「処方」の事例と「調剤」の事例に分類し、取り違えた薬剤の組み合わせ
を整理しました。また、本財団の薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の年報に掲載している
「名称類似に関する事例」の分析と同様に、薬剤名の頭文字の一致に着目して分析を行い、事例の
内容、主な背景・要因と改善策を紹介しました。さらに、本事業や薬局ヒヤリ・ハット事例収集・
分析事業に報告された事例を活用した製薬企業による注意喚起文書を掲載しています。
このように、継続して報告されている事例に対し、繰り返し情報提供することで、同種事例の再
発防止に取り組んでまいりますので、医療機関におかれましては、本報告書とともに以前に公表し
た医療安全情報や報告書も併せてご参照いただければ幸いに存じます。
表5 名称類似の分類
薬剤名の類似
頭3文字が一致
頭2文字が一致
その他
投与すべき薬剤
取り違えた薬剤
アモキサン
アモキシシリン
プリンペラン
プリンク
ロイコボリン
ロイコン
アスベリン
アスぺノン
ガスコン
ガスロンN
半夏厚朴湯
半夏瀉心湯
アレロック
アテレック
スイニー
スーグラ
デュファストン
フェアストン
ベニロン−I
グロベニン−I
発生段階
処方
処方
調剤
処方
調剤
(2)「膀胱留置カテーテルによる尿道損傷」
(医療安全情報 No. 80)について(177∼189頁)
本事業では、第31回報告書(2012年12月公表)の個別のテーマの検討状況で、
「膀胱留
置カテーテル挿入の際、尿流出を確認せずにバルーンを拡張し尿道損傷を起こした事例」を取り上
げました。その後、医療安全情報 No. 80「膀胱留置カテーテルによる尿道損傷」
(2013年7月
提供:集計期間2010年1月∼2013年5月)を作成し、情報を提供しました。今回、本報告
書分析対象期間(2016年7月∼9月)に医療安全情報 No. 80の類似事例が3件報告されたた
め、再び取り上げました。
- 10 -
本分析では医療安全情報 No. 80の集計期間後の2013年6月以降に報告された類似事例34件
について分析を行い、主な事例を紹介しました。患者の性別や年齢を整理したところ、全ての事例
が男性患者であり、50歳以上の事例が多く見られました。また、報告された内容を基に、挿入時
やバルーン拡張時の抵抗の有無、尿の流出を確認せずにバルーン内に滅菌蒸留水を注入した理由、
尿道損傷に気付いたきっかけなどについてまとめました。尿の流出を確認せずにバルーン内に滅菌
蒸留水を注入した理由としては、
「抵抗なく規定の長さを挿入できた」が最も多く報告されていま
した。
膀胱留置カテーテルを挿入後、尿の流出がない場合はバルーンを拡張しないことを徹底すること
が重要です。医療機関におかれましては、本報告書を教育・研修などにご活用いただき、同種事例
の防止に努めていただければ幸いに存じます。
表6 尿の流出を確認せずに、バルーン内に滅菌蒸留水を注入した理由
バルーン内に注入した理由
抵抗なく規定の長さを挿入できた
件数
15
排尿直後や禁食中であったため、膀胱内に尿が溜まっていないと考えた
5
膀胱を腹部エコーで確認した際に尿が溜まっていなかったため、尿の流出がないと考えた
1
以前、女性患者の膀胱留置カテーテルを挿入した際に、先輩看護師から「尿の流出が無くてもバ
ルーンを膨らませても大丈夫」と言われたことを思い出した
他の看護師に相談したところ「直前に排尿していると尿が出ないこともあるので、とりあえず、
固定してもいいのでは」と助言を受けた
1
1
医師に尿の流出がないことを報告したが、滅菌蒸留水を注入してよいと指示があった
1
ショック状態であったため、尿の流出がないことに疑問を持たなかった
1
潤滑剤を少量の尿だと思った
1
15cm挿入したところでカテーテルが進まなくなったため、とりあえず注入した
1
研修医は、カテーテルが途中で進まなくなったため手を止めて、膀胱に入っていないだろうと考
えていたところ、看護師は医師の手が止まったため膀胱内に入ったと思った
1
不明
5
3 医療事故情報、ヒヤリ・ハット事例データベースとホームページの機能
∼医療事故情報の掲載件数が2万事例を超えました∼
1)事例の公開・検索機能
本事業のホームページの「公開データ検索」のボタンをクリックすると、図3の画面が現れます。
このページ上で、医療事故情報やヒヤリ・ハット事例を検索することができます。また、図の下方
にボタンがあり、選択した事例を「XML」
「PDF」
「CSV」の3つのファイル形式で、皆様の
コンピュータにダウンロードして活用することが可能です。このような事例を参考に、安全な診療、
看護、調剤などのマニュアルの整備や医薬品の表示の改善、医療安全分野の医学的、工学的な研究
が行われています。また、医療事故が発生した場合に、類似事例を閲覧することで、患者の病状の
推移や治療方法などの点が参考になります。本機能の活用に関するアンケート調査では、「医療事
故発生時の参考資料として使用」
「安全管理委員会の参考資料として使用」
「安全管理に関連した研
- 11 -
修会の教材として使用」などが多く回答されました。さらに、2014年に「公開データ検索」の
ページに、関連診療科及び当事者職種を選択できるプルダウンメニューを設定しました。本事業に
対して、各診療領域の基幹的な学会から講演依頼を受けることがあり、学会の医療安全関連の委員
会の事業として、有害事象の収集を検討されている学会もあるようです。しかし、事例収集をシス
テムとして行うことは容易ではないことから、本事業の「公開データ検索」のページの活用を検討
する学会もありました。そのような検討にあたっては、この関連診療科や当事者職種を絞り込む機
能は有用なものと考えられます。また、再来年に予定される新たな専門医制度の中で示されている
モデル的な研修プログラムの中でも、医療安全の知識を身につけ、安全な医療を提供する能力を培
うことが含まれています。「関連診療科」や「当事者職種」の機能を活用することにより、
「公開デー
タ検索」が医療安全の推進のために一層活用されることを願っています。
以上の機能は、本事業に参加しておられる医療機関や研究者の皆様、またその他多くの皆様より、
報告書に掲載される事例が多くなり内容も豊富になっているため、Webを活用した事例の閲覧や
検索ができるシステムの開発を望む声を多くいただいてきたことに対応したものです。そしてこの
検索ページでは、本稿執筆時点で医療事故情報20,127件、ヒヤリ・ハット事例45,635件
が検索できます。このように医療事故情報の掲載件数は2万件を超えました。なお、
このようにデー
タベースの件数が増加したことから、2015年度に実施したシステム改修に伴い、検索結果が
1,000件を超える場合には個別事例は表示されず、検索条件の変更を促すメッセージ「○件の
報告事例が検索されました。検索結果表示の上限は1,000件です。検索条件を変更してくださ
い。」が現れますので、ご留意の上ご活用ください(図4)。
ご報告いただいた情報をこのような形で公表し、それが適切に活用されることによって医療提供
の仕組みやモノの改善が進み、また、紛争解決にも寄与し、その成果が実感されることによりさら
に報告が定着する、といった医療安全の好循環が生じ、医療界だけでなく我が国の社会において重
要な機能となることを願っています。
図3 医療事故情報、ヒヤリ・ハット事例を閲覧できるページ
関連診療科の選択
キーワードの入力
事例概要の選択
ファイル形式毎のダウンロードボタン
- 12 -
図4 検索結果が1,000件を超えた場合のメッセージの表示(点線囲み部分)
2)国立大学附属病院における医療上の事故等の公表に関する指針について
∼本事業を通じた医療機関による医療事故の公表∼
医療事故が発生した場合は、医療機関が医療の透明性を高めることや、事例を他施設での活用に
供することによって、同種事例の再発防止を図ることなどを目的として、また、医療事故の当事者
や家族が、医療事故を再発防止のために活用することを希望することに対応する目的などから、医
療機関が事故を公表することがあります。
国立大学附属病院長会議では、2005年3月に「国立大学附属病院における医療上の事故等の
公表に関する指針」を策定し、医療上の事故等が発生した場合の公表に関する基準を示しました。
その後、本事業を通じた医療事故の概要、再発防止策その他の医療安全に関する社会的な公表シス
テムが定着し、機能するようになっているという認識に基づき、2012年に同指針が改訂されま
した。改訂前の指針と同様、各国立大学附属病院において、医療上の事故等につき、医療の透明性
を高め、国民からの信頼向上をはかるとともに、他医療機関における医療安全管理の徹底及び再発
防止に資することを目的として、公表を行うための一定の基準が示されています。国立大学附属病
院における医療事故の公表に関しては、一部の医療事故事例を医療機関のホームページ等を通じて
公表し、その他の多くの事例を本事業への報告を通じて公表することとされています。昨年来、多
くの大学病院が構成する特定機能病院の医療安全の確保に関心が高まる中、本事業の成果物、特に
公開データ検索の機能は、医療の安全に関する透明性の向上や、各医療機関の医療事故の公表とい
う重要な役割を担っていると考えています。
- 13 -
3)医療事故情報収集等事業のデータベースを活用した医薬品の取り違え防止のための製薬企業の対応
∼「ノルバデックス」と「ノルバスク」、「プリンク」と「プリンペラン」の販売名類似による取り
違えに関する注意喚起 ∼
本事業の事例データベース等を活用し、
「アルマールとアマリール」
、
「ノルバスクとノルバデック
ス」などの名称類似薬の取り違えについて、製薬企業から注意喚起がなされていることを、過去の
報告書や年報でご紹介しました(第34回報告書 19∼21頁、第29回報告書 13∼18頁、
平成24年年報 25∼29頁、平成23年年報 16∼19頁)
。このように、本事業に報告さ
れたことを契機として、本財団以外の関係団体や企業から、医療事故防止のための具体的な注意喚
起が行われることが継続しています。2015年7月には、「デュファストン ® 錠(一般名:ジド
ロゲステロン)」と「フェアストン ® 錠(一般名:トレミフェンクエン酸塩)
:乳癌治療剤」について、
それぞれの製造販売業者である企業から、販売名の類似に関する注意喚起がなされました。それぞ
れの薬効は、デュファストンは、切迫流早産、習慣性流早産、無月経、月経周期異常、月経困難症
などですが、フェアストンは、閉経後乳癌ですので、大きく異なっています。
よく知られた名称類似薬である「ノルバデックス ®(一般名:タモキシフェンクエン酸塩)
:
抗乳がん剤」と「ノルバスク ®(一般名:アムロジピンベシル酸塩)
:高血圧症・狭心症治療薬
/持続性Ca 拮抗薬」の取り違えについても、製薬企業より、本事業の成果を引用した注意喚起
が繰り返し行われてきており、2013年11月に再び注意喚起がなされ、2014年7月及び
2016年3月にもその情報が更新されました(図5)。
また最近では、2016年9月に、
「プリンク ® 注・注シリンジ5μ g/10μ g(アルプロス
(テバ製薬株式会社)と「プリンペラン ® 注射液10mg
タジル)
:プロスタグランジンE1製剤」
(塩酸メトクロプラミド)
:消化器機能異常治療剤」
(アステラス製薬株式会社)が、販売名が類似
していることから、両社が連名で注意喚起文書を作成、公表しました。さらに、「プリンク ® 注・
注シリンジ5μg/10μg」の製造販売元であるテバ製薬株式会社は、根本的な再発防止対策
として、一般名(アルプロスタジル注・注シリンジ)への名称変更手続きを進め、名称変更の代
替新規申請を8月に規制当局へ提出済みであることも説明しています(図6)
。2012年には、
名称類似薬である「アルマール ®(一般名:アロチノロール塩酸塩):高血圧症・狭心症・不整脈
治療剤/本態性振戦治療剤」および「アマリール ®(一般名:グリメピリド):経口血糖降下剤」
のうち、
「アルマール ®」の名称が同様の理由により変更されました。そこで、本事業ではこの度
の変更が2件目の同趣旨の名称変更の事例であると考えています。
医療従事者に対して注意喚起をするために企業名で公表された文書には、本事業に報告された事
例が紹介されているとともに、具体的な表示や検索システムの改善による対策、医薬品の外観の写
真などが紹介されています。また、対策がとられていても、医師に異動や非常勤といった事情があ
ることにより、対策が十分理解されていないことによる取り違えの事例もあることから、周知徹底
を呼びかけています。
このように、国民に安全な医療を提供することに資する医療の現場の安全性の向上のために、本
事業の成果が活用されることは、事業の趣旨に即した適切な取り組みであると考えています。同種
の事例について今後も繰り返し注意喚起することが本事業の役割であるとともに、製造販売業者で
ある企業の皆様にもこのようなご活動を継続していただければありがたいと考えています。
- 14 -
図5 「ノルバデックス ®」と「ノルバスク ®」の販売名類似による取り違え注意のお願い(一部掲載)
図6 「プリンク ®」と「プリンペラン ®」の販売名類似による取り違え注意のお願い
- 15 -
4)
医療事故情報収集等事業の成果を活用した医療機器の適切な取り扱いのための医療機器製造販売
企業の取り組み
本事業では、第43回報告書において、「座位による中心静脈カテーテルの処置に関連した事例」
を取り上げ、中心静脈カテーテルの取扱い時の空気塞栓の発生等について分析しました(http://
www.med-safe.jp/pdf/report_2015_3_T002.pdf)
。また、同内容は医療安全情報 No. 113「中心
静脈カテーテル抜去後の空気塞栓症」(http://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_113.pdf)として作
成して注意喚起をしています。このような成果が、例えば、
「医薬品注入器 医薬品注入器/体内
植込み用カテーテル」である「BARD ポート - Ti」の添付文書において、
「【使用上の注意】
1. 重要な基本的注意」として「
(7)本品を抜去する際は、患者の体位を仰臥位で行うこと。
[座位で行った場合、空気塞栓症を引き起こすおそれがある。
]」のように引用されており、
「【主要
文献及び文献請求先】 1. 主要文献」の項目に、「7)公益財団法人日本医療機能評価機構,医療事
故情報収集等事業 第43回報告書,2015年12月22日」と引用、記載されています(図7)
。
図7 医療機器の添付文書における本事業の成果の活用(例:BARD ポート - Ti)
【使用上の注意】1. 重要な基本的注意
【主要文献及び文献請求先】1. 主要文献
これらの例のように、本事業に報告された事例や分析の内容について透明度を高くして公表する
ことにより、その活用が広がっています。医薬品に関する同様な取り組みの説明において述べたよ
うに、本事業の成果が活用されることは、事業の趣旨に即した適切な取り組みであると考えていま
す。医療機器製造販売業者である企業の皆様にも、このようなご活動を継続していただければあり
がたいと考えています。
- 16 -
5)ホームページにおける「分析テーマ」と「再発・類似事例の発生状況」の閲覧機能
2013年、本事業のホームページに、①「分析テーマ」と②「再発・類似事例の発生状況」の
ボタンを追加しました(図8)。
図8 本事業のホームページ
①「分析テーマ」のボタン
②「再発・類似事例の発生状況」のボタン
図8の①のボタンをクリックすると、第1∼46回報告書で取り上げた分析テーマについて、テーマ
のタイトルと該当するページのPDFファイルを閲覧することができます。
図9 分析テーマのページ
該当ページのPDFファイル
第46回報告書
分析テーマ
第45回報告書
分析テーマ
- 17 -
事業開始後、報告書に掲載したテーマのうち過去3年分を次に示します。
表7 報告書で取り上げた分析テーマ一覧(過去3年分)
年
回数
第47回
2016 年 第46回
第45回
第44回
第43回
2015 年
第42回
第41回
第40回
第39回
2014 年
第38回
第37回
延べテーマ
No.
テーマ
186
腫瘍用薬に関連した事例
③「指示、調剤、準備、患者への説明・指導」の事例
185
歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例
184
小児用ベッドからの転落に関連した事例
183
腫瘍用薬に関連した事例
②「レジメン登録、治療計画、処方」の事例
182
持参薬と院内で処方した薬剤の重複投与に関連した事例
181
永久気管孔にフィルムドレッシング材を貼付した事例
180
腫瘍用薬に関連した事例
①概要
179
外観の類似した薬剤の取り違えに関連した事例
178
人工呼吸器の回路の接続外れに関連した事例
177
インスリンに関連した医療事故
④「無投与、中止時の注射、投与時間間違い、その他」の事例
176
観血的医療行為前に休薬する薬剤に関連した事例
175
気管切開時の電気メスによる引火に関連した事例
174
インスリンに関連した医療事故
③「薬剤量間違い、投与速度間違い」の事例
173
座位による中心静脈カテーテルの処置に関連した事例
172
胃管の誤挿入に関連した事例
171
インスリンに関連した医療事故
②「薬剤間違い、対象者間違い」の事例
170
与薬時の患者または薬剤の間違いに関連した事例
169
パニック値の緊急連絡に関連した事例
168
インスリンに関連した医療事故
①概要
167
手術中の砕石位に関連した事例
166
病室での自殺及び自殺企図に関する事例
165
職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故
④「療養上の世話」の事例
164
カリウム製剤の急速静注に関連した事例
163
放射線治療の照射部位の間違いに関連した事例
162
口頭による情報の解釈の誤りに関連した事例
161
職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故
③「治療・処置、医療機器等、ドレーン・チューブ、検査」の事例
160
皮膚反応によるアレルギーテストの実施時の試薬に関する事例
159
内視鏡の洗浄・消毒に関連した事例
158
職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故
②「薬剤、輸血」の事例
157
後発医薬品に関する誤認から適切な薬物療法がなされなかった事例
156
無線式心電図モニタの送受信機に関連した事例
155
調乳および授乳の管理に関連した事例
154
職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故
①概要
153
気管切開チューブが皮下や縦隔へ迷入した事例
152
事務職員の業務における医療安全や情報管理に関する事例
また、図8の②のボタンをクリックすると、第18∼46回報告書で取り上げた、
「再発・類似
事例の発生状況」のテーマについて、テーマのタイトルと該当するページのPDFファイルを閲覧
することができます。
- 18 -
図10 再発・類似事例の発生状況のページ
該当ページのPDFファイル
第46回報告書
再発・類似事例の
発生状況
第45回報告書
再発・類似事例の
発生状況
第18回報告書から開始した「再発・類似事例の発生状況」で掲載したテーマのうち過去3年分
を次に示します。
表8 報告書で取り上げた「再発・類似事例の発生状況」一覧(過去3年分)
年
回数
第47回
2016 年 第46回
第45回
第44回
第43回
2015 年
第42回
第41回
第40回
第39回
2014 年
延べテーマ
NO.
87
「薬剤の取り違え」
(医療安全情報 No. 4 第 2 報 No. 68)について
86
「膀胱留置カテーテルによる尿道損傷」
(医療安全情報 No. 80)について
85
「アレルギーのある食物の提供」(医療安全情報 No. 69)について
84
「放射線検査での患者取り違え」(医療安全情報 No. 73)について
83
「病理診断時の検体取り違え」(医療安全情報 No. 53)について
82
共有すべき医療事故情報「眼内レンズに関連した事例」(第15回報告書)について
81
「併用禁忌の薬剤の投与」
(医療安全情報 No. 61)について
80
共有すべき医療事故情報「酸素ボンベ残量の管理に関連した事例」
(第17回報告書)について
79
「B型肝炎母子感染防止対策の実施忘れ」(医療安全情報 No. 49)について
78
共有すべき医療事故情報「体内にガーゼが残存した事例」(第14回報告書)について
77
「人工呼吸器の回路接続間違い」
(医療安全情報 No. 24)について
76
「患者の体内に植込まれた医療機器の不十分な確認」
(医療安全情報 No. 62)について
75
「抗リウマチ剤(メトトレキサート)の過剰投与に伴う骨髄抑制」
(医療安全情報 No. 2 第 2 報 No. 45)について
74
「小児への薬剤10倍量間違い」
(医療安全情報 No. 29)について
73
「禁忌薬剤の投与」
(医療安全情報 No. 86)について
72
「画像診断報告書の確認不足」(医療安全情報 No. 63)について
71
共有すべき医療事故情報「三方活栓の閉塞や接続外れ等、使用に関する事例」
(第11回報告書)について
70
「未滅菌の医療材料の使用」(医療安全情報 No. 19)について
69
「清拭用タオルによる熱傷」(医療安全情報 No. 46)について
68
第38回
67
第37回
テーマ
「ガベキサートメシル酸塩使用時の血管外漏出」(医療安全情報 No. 33)
、
「ガベキサートメシル酸塩使用時の血管炎(第2報)
」
(医療安全情報 No. 77)について
共有すべき医療事故情報「歯科診療の際の部位の取り違えに関連した事例」
(第15回報告書)について
66
「小児の輸液の血管外漏出」(医療安全情報 No. 7)について
65
「電気メスによる薬剤の引火」(医療安全情報 No. 34)について
- 19 -
4 医療安全情報の提供
本事業は、特に周知すべき情報を提供することにより、医療事故の発生予防、再発防止を促進する
ことを目的として、医療安全情報を提供しています。医療安全情報は、医療の現場で忙しく業務に従
事している方々が手軽に活用できる情報として、A4サイズ2枚程度に情報量を絞り込み、イラスト
や表を入れるなど視認性に配慮して作成しています。2006年12月から医療安全情報の提供を開
始し、本報告書の対象期間である2016年7月∼9月には No. 116∼ No. 118を作成、提供し
ました(192∼197頁)。
医療安全情報は、医療事故情報収集・分析・提供事業やヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
の参加登録医療機関に対して、毎月1回ファックスで提供するとともに、本事業のホームページにも
掲載しています。さらに、より広く情報を共有するため、事業に参加されていない病院でもご希望が
あれば医療安全情報をファックスで無料配信しています。ファックス配信は医療安全情報の公表日に
行いますので、迅速に情報を受け取ることができ、院内の回覧などに利用していただくことができま
す。2011年12月と2015年9月にはそれぞれ No. 1∼50、No. 51∼100をまとめた医
療安全情報集を作成し配布するとともに、ホームページに掲載しています。
図11 医療安全情報の申し込み方法
本事業のホームページにアクセス
①
①または②
「医療安全情報」をクリック
「FAX申し込み」をクリック
②
「関連文書」をクリック
「■参加登録等に関すること」の
「医療安全情報申し込み用紙」をクリック
申し込み用紙に記入してファックス送信
申し込み完了
※ファックスによる提供は病院を対象としています。
- 20 -
また、2016年3月には、ファックスによる医療安全情報の提供を受けている医療機関名を閲覧
できるボタンを作成しました。 これを押すことにより、2016年9月末時点の 5,931施設が掲
載されたPDFファイルが開きますので、近隣の医療安全情報提供先医療機関名を確認していただく
ことができます。医療安全情報のファックス配信のご依頼は随時受け付けていますので、まだ提供を
受けていない病院の皆様には、地域の医療機関に関するこのような情報を参考にしていただき、病院
の約7割に配信されている医療安全情報をぜひお申し込みいただきますようお願いいたします。
図12 医療安全情報のページ
医療安全情報提供医療機関を閲覧できるボタン
医療安全情報集のPDF
医療安全情報のPDF
5 医療安全情報の提供医療機関拡大とアンケート調査について
本事業では、継続的に医療安全情報のファックスによる提供医療機関数の拡大を図るため、講演
会におけるご案内や、ファックス未受信病院に対する受信希望調査を行ってきました。2011年に
調査を行ったところ、新たに697病院から提供のご希望をいただきました。このように、ご希望を
募る調査を行うたびに、相当数の申し込みがあるのが現状です。そこでこの度、再度同様な調査を行
うとともに、ファックス未受信病院における医療安全情報の活用状況等について2015年12月に
アンケート調査を実施しました。その結果、調査を依頼した3,385病院のうち1,021病院から
回答がありました(回答率30. 2%)。また、今回の調査によって、新たに579病院から提供のご
希望をいただき、ファックスを受信する医療機関は全国の病院の約7割になりました。
表9 医療安全情報提供拡大のためのご希望を募った調査年と増加数
(新規)情報提供を希望した病院数
情報提供医療機関数合計
提供開始した医療安全情報
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
2006年
2007年
2008年
2011年
2015年
1,924
1,039
623
697
579
3,332
4,232
4,838
5,307
5,932
No. 6∼
No. 15∼
- 21 -
No. 27∼
No. 63∼
No. 111∼
アンケート調査の結果では、ファックス未受信病院においても「医療安全情報を見ている」と回
答した病院は67.9%、また、医療安全情報を「活用している」または「どちらかというと活用し
ている」と回答した病院は92.6%でした。このように医療安全情報はファックス未受信病院にお
いても相当程度に知られており、かつ、活用されていることが明らかとなりました。従来、医療安全
情報の普及について、ファックス受信病院数や、全病院に占める割合を目安にしていましたが、実際
はそれ以上に普及が進んでいると考えられました。さらに、医療安全情報を「どちらかというと活
用していない」または「活用していない」と回答した病院に対して、その理由をお尋ねしたところ、
「自施設では内容が合致しない」とする回答が最も多く65.
3%を占め、次に「その他」
(14.3%)、
「自施設で周知する方法がない」(10.2%)等でした。「その他」の回答の自由記載欄には、「精神
科病院なので、内容が合致するものが少ないが、精神科でも身体管理が増えてきているので、今後活
用したい」「当院は医療処置が少ない為、療養上の内容や医療処置・検査等に関係する内容は活用し
ている」「当院では事故はなく、軽微なインシデントが多い」等の記載がありました。このような特
定の診療科の病院や処置が少ない医療現場における有効な情報提供のあり方は、今後の医療安全情報
の内容の充実にとって課題であると考えられました。「医療安全情報を見ていない」と回答された病
院のうち86.9%が「今後医療安全情報を入手する希望の有無について「はい」と回答し、入手の
方法は、
「ファックスの受信を希望する」と回答した病院が74.0%ありました。このように、医療
安全情報のファックス受信のご要望は、まだ潜在的に多いものと考えられました。
- 22 -
図13 医療安全情報の提供拡大のためのファックス未受信病院へのアンケート調査結果(抜粋)
①最新の「医療安全情報」の定期的な閲覧について
項目
見ていない
32.1%
病院数
見ている
693
見ていない
328
合 計
1,021
見ている
67.9%
(①で「見ている」と回答した病院への問い)
②「医療安全情報」の院内での活用について
どちらかというと
活用していない
6.6%
活用していない
0.4%
未回答
0.3%
項目
病院数
活用している
396
どちらかというと活用している
246
どちらかというと活用していない
どちらかというと
活用している
35.5%
46
活用していない
3
未回答
2
活用している
57.1%
合 計
693
●「活用している」または「どちらかというと活用している」と回答した病院での活用方法
䠍㻚⫋ဨ඲య䛻࿘▱
258
䠎㻚ྲྀ䜚ୖ䛢䜙䜜䛯ෆᐜ䛻㛵㐃䛧䛯デ⒪⛉䜔㒊⨫䛻࿘▱
299
䠏㻚Ᏻ඲⟶⌮䛺䛹䛾ጤဨ఍䛷࿘▱䚸䜎䛯䛿㈨ᩱ䛸䛧䛶౑⏝
445
䠐㻚Ᏻ඲⟶⌮䛻㛵㐃䛧䛯◊ಟ఍䛺䛹䛾ᩍᮦ䛸䛧䛶౑⏝
121
䠑㻚䛭䛾௚
䠒㻚ᮍᅇ⟅
31
1
- 23 -
(②で「どちらかというと活用していない」または「活用していない」と回答した病院への問い)
③「医療安全情報」を活用していない理由について
複数回答
2.0%
他の情報を
活用している
8.2%
項目
その他
14.3%
自施設で周知する
方法がない
10.2%
自施設では内容が
合致しない
65.3%
病院数
自施設では内容が合致しない
32
自施設で周知する方法がない
5
他の情報を活用している
4
その他
7
複数回答
1
合 計
49
□その他の回答
・周知する仕組みを考えていなかったが、今後活用する予定である
・職員への意識づけが不十分である
・ 精神科病院なので内容が合致するものが少ないが、精神科でも身体管理が増えてきているので、今後活用したい
・当院は医療処置が少ない為、療養上の内容や医療処置・検査等に関係する内容は活用している
・当院では事故はなく、軽微なインシデントが多い
・当院の現状から判断して関係のあるもののみを必要な部署に伝えている
・活用できる情報は活用しているが、今後もっと活用していきたい
・ホームページからその都度個人でしか情報を収集していない
④今後の「医療安全情報」の入手について(ファックス受信の希望)
●①で「見ている」と回答した病院
●①で「見ていない」と回答した病院
未回答
1.5%
未回答
2.3%
希望しない
11.6%
希望しない
46.5%
項目
希望する
51.2%
希望する
86.9%
項目
病院数
希望する
355
希望する
希望しない
322
希望しない
未回答
合 計
16
未回答
合 計
693
- 24 -
病院数
285
38
5
328
6 医療事故情報収集等事業平成26年年報英語版及び医療安全情報 No. 96∼107
英語版の公表と Canadian Patient Safety Institute(cpsi-icsp)のプロジェクト「Global
Patient Safety Alerts」を通じた情報発信
医療事故情報収集等事業では、平成17年年報より英語版を作成し、ホームページを通じて公表し
たり、海外からの訪問者の方々に差し上げたりして、事業の内容や成果の周知に活用してきました。
2016年3月末に、平成26年年報の英語版である、
「Project to Collect Medical Near-Miss/ Adverse
Event Information 2014 Annual Report」を公表しました(図14)
。この内容は、ホームページで閲覧、
ダウンロードできるとともに、検索のページ(報告書類・年報検索 Full Text Search:<http://www.
med-safe.jp/reportsearch/SearchReportInit>)より、英語による検索が可能です。
図14 医療事故情報収集等事業平成26年年報英語版と目次
また、医療安全情報の英語版も作成して、それらを海外に向けて情報提供しています。2016年
3月末には、医療安全情報 No. 96∼107の英語版を公表しました(図15)
。それらは、本事業
のホームページの英語のページ(http://www.med-safe.jp/contents/english/index.html)に掲載して
いますので、機会がありましたらご活用いただければ幸いに存じます。
また引き続き、カナダの Canadian Patient Safety Institute(cpsi-icsp)
(<http://www.patientsafetyinstitute.ca/
en/Pages/default.aspx>)がWHOと行う共同プロジェクトである「Global Patient Safety Alerts」
(http://
www.patientsafetyinstitute.ca/en/NewsAlerts/Alerts/Pages/default.aspx)において、医療安全情報英
語版を世界的に共有することのご依頼をいただいたことから、そのプロジェクトを通じた情報発信も
続けています。具体的には、
各医療安全情報(英語版)に基づき、それぞれに掲載されている情報の要旨、
関連情報、関連する推奨事項が新たに記述され、同じ画面から医療安全情報(英語版)へのリンクが
設置されています。同プロジェクトのホームページの協力団体には、本財団の名称を掲載していただ
いています。また、閲覧用アプリも提供されています。
- 25 -
図15 医療安全情報 No. 105(英語版)
後述する、有害事象の報告及び学習システムをテーマとした、WHO Inter-regional Consultation
Conference(Colombo)において、同団体の Iona Popescu 氏が International Perspective: Canada
と題した講演を行いました。同団体の様々なプロジェクトの説明には、Global Patient Safety Alert も
含まれていました。その説明の中で、何度も本事業の医療安全情報について言及されました。例え
ば、「Global Patient Safety Alert では、日本のアラートを多く掲載している。日本のアラートの情報
の中から、我々のフォーマットに従って内容を抽出して整理したものを公開している。当然のことと
して、日本のアラートのホームページにもリンクしている。日本の有害事象報告制度のホームページ
には英語版のアラートを掲載したページがある。」とご説明がありました。講演後の質疑応答の時間
に、「2011年だったと記憶しているが、本事業の医療安全情報英語版の提供のご要請を受けた。
このプロジェクトでアラートが閲覧されている頻度を教えてほしい。ある程度閲覧されているとして
も、まだ知らない人も多くいるので、一層の周知をお願いしたい。」と質問及び依頼をしました。ご
回答としては、
「毎年40,000件くらいのアクセスがあり、年々増加している。周知はこれからも
やっていく。活用しやすいようにアプリも作成している。」との返答でした。そこで「このプロジェ
クトやアプリについては、日本の医療事故情報収集等事業の定期報告書や年報の中で記述している。
毎回の報告書で紹介してきた。今後も継続的に医療安全情報英語版をご提供するので、活用と周知
をよろしくお願いする。
」と依頼しました。会を主催されたWHOの担当者は、このご講演や質疑応
答を聞いて、WHOの活動や成果と Global Patient Safety Alert との連携を強化したいご意向でした。
会合の終了後、Iona Popescu 氏及び Global Patient Safety Alert の担当者と連絡を取り、医療安全情報英
語版 No. 107までを本事業のホームページに掲載したので、活用していただくように依頼しました。
先方からは、ホームページを改修し、単なるアラートの紹介だけでなく、関連情報等もあわせて掲載
するよう準備中とのことでした。本稿執筆中、その改修が進捗しており関連情報も併せて閲覧が可能
です。
このように、本事業の英語のホームページの他に、
「Global Patient Safety Alerts」のページの協力
団体のページや検索機能、アプリを通じて、医療安全情報英語版の内容が世界から閲覧されています。
- 26 -
図16 Global Patient Safety Alert のページに掲載された医療安全情報 No. 10
「Magnetic material(e.g. metal products)taken in the MRI room 」と関連情報
Magnetic material(e.g. metal products)taken in the MRI room
View Full Alert (English)
Back to Alerts
7 WHOにおける有害事象報告システム(Minimal Information Model for Patient Safety :
MIM PS)の開発について
WHOでは2004年10月に創設した医療安全プログラムを継続して実施する中で、国際的に
医療安全を推進するための方法論として、本事業と類似の方法論である、有害事象を報告しそれを
分析して再発防止を図る学習システムを開発するプロジェクトを進めています。2005年には、
医 療 安 全 の 分 野 で よ く 知 ら れ て い る「WHO Draft Guidelines for Adverse Event Reporting
and Learning Systems」
(現在改訂作業中)を作成、公表し、その中で、体系的な有害事象の収集
を通じた学習システムの基本原則などが述べられました。本事業も、我が国における有害事象の報
告、学習の仕組みとして紹介されています。
後述するように、有害事象を把握するための基盤的なシステムの一つとして、Conceptual
Framework for the International Classification for Patient Safety(ver.1.1)が作成、公表されまし
た。その中では、インシデントを把握するために、発生に寄与した因子、患者の要因、インシデン
トの特徴、発見の契機、重症度に影響した要因、患者への影響、組織への影響、対策などについ
て様々な項目が提案されています。そしてその成果に基づいて、施設レベルを超えて世界レベル
で学習したり、情報を共有したりできるシステム、Minimal Information Model for Patient Safety
(MIM PS)が開発され、2015年5月12∼13日、ポーランドのワルシャワで開催された
会議 WHO International Consultation on European Validation of the Minimal Information Model
for Patient Safety Incident Reporting and Learning においてその内容が説明されました。同会議
- 27 -
では、日本の有害事象報告制度として、我が国からの参加者によって本事業の説明を含む講演が
行われました。また、同様に本事業の講演を依頼された2016年2月と3月の会議においても、
WHOの担当者からその進捗が講演されました。3月22∼24日にスリランカのコロンボで開催
された WHO Inter-Regional Consultation Patient Safety Incident Reporting and Learning Systems
in Africa and Asia Pacific Regions における講演内容について、次に示します。
The Minimal Information Model for Reporting Patient Safety incidents-progress review
Ms Maki Kajiwara
○MIM PSについて
インシデントレポートを理解し比較するための必須と考えられるコード構造の概念である。そ
れ以上の概念を追加したり、カスタマイズしたりすることもできる。目的は、最低限の有意義
な学習が得られるために重要な特徴を見出すことにより、効果的な報告がなされることを強化
することである。報告制度がない場合は、MIM PSはインシデントを収集する共通のツー
ルとなりうる。
○ 2005年にWHO RLSドラフトガイドラインが作成された。その中で、報告基準と事例
の分類の調和が必要とされた。RLSは医療システムの失敗に学び、非難を回避するために有
用である。また、リスクの様相の分析に基づいた建設的な対応や同種事例の再発を防止するた
めの教訓を周知することが必要である。
○ 2009年には患者安全の国際分類のための概念的な枠組み(Conceptual Framework::CF)
が作成された。重要な10の項目は次の通りであり、それぞれについて20∼40項目の選択
肢がある。
①インシデントの類型
②患者の特徴
③インデントの特徴
④発生に寄与した因子や危険
⑤発見の情報
⑥被害が緩和された要因
⑦患者の予後
⑧組織への影響
⑨改善策
⑩リスクを低減させるために採られた方策
○用語の定義
①患者安全インシデント:不必要な害が患者に及んだ出来事や状況
②医療における安全:医療提供に伴う不必要な害を許容範囲まで低下させること
③エラー:計画通りに行動することに失敗すること、あるいは、誤った計画を実行すること
④ニアミス:患者に到達しなかったインシデント
⑤無害インシデント:患者に到達したが判別できる害が生じなかった事例
⑥有害事象:患者に害を及ぼした事例
- 28 -
⑦ 有害反応: 事象が発生した状況において、正しい過程が行われることにより、正当化さ
れる行為の結果生じた予期しない害
○MIM PSの定義と標準版(8項目)について
①患者情報(直接又は間接的に患者安全インシデントに関与した人、最低限その人の年齢、性
別を把握する)
、②発生時間(インシデントが発生した日時)
、③発生場所(インシデントが
発生した物理的環境)、④関係者、関連機器等(インシデントに影響を与える可能性がある物、
機器、人やあらゆる要素)、⑤インシデント類型(共通の性質で類型化、グループ化されたイ
ンシデントの型を示す記述的な用語)、⑥インシデントの結果(インシデントの一部や全てが
患者や組織に与えた影響)
、⑦改善策(インシデントの結果実施された行動)
、⑧報告者の役
割(インシデントを収集し、記載した人)。
○ 2014∼2015年には、EU(ベルギー、クロアチア、チェコ、デンマーク、イタリ
ア、ルクセンブルグ、ポーランド、スペイン、UK)とEFTA(The European Free Trade
Association)MS(ノルウェー)で試行と検証を実施した。目的は、WHOのMIM案を経験的
に検証して改善(必要な修正を加えること)すること、欧州におけるRLSとして現実的である
か評価することである。手法としては、EU加盟国から事例を選び出し、欧州で稼動している
報告システムの事例情報がMIM案に則したものであるか検証する。その結果は、①MIMの
項目ごとに欧州の報告システムの事例でも情報が報告されている率、②欧州の報告システムご
とにMIMの求める情報が報告されている率、で表すこととした。
○欧州におけるMIMの検証結果について
400件以上の事例が登録された。全てのデータには、MIMの項目の5項目以上に該当する
データが報告されていた。全ての項目を網羅していた国や地域は6つであった。報告されてい
なかった項目には、患者情報、インシデントの発生日時、関係者、関連機器等、インシデント
類型、インシデントの結果及び報告者の役割が挙げられた。
○国際的な専門家による検証について
2015年5月12∼13日にポーランドのワルシャワで会議を開催した。欧州、豪州、インド、
日本から45名の専門家が参加した。目的は、MIMの開発経緯のまとめを検証することやM
IMの医療現場における適用性を検証すること、患者安全情報の報告と学習に関する世界的な
ベストプラクティスや、よい経験、教訓に学ぶこと、比較可能な結果から学習する効果を高め
共通の報告事項に同意すること、現行のMIMのフォーマットを検証し今後の改善を推奨する
こと、RLSの現時点の優先課題を同定し推奨される将来の戦略的な方向性を示すことである。
○検証の結果について
RLSに関し各国が共通した対応を行うことの必要性が認識された。MIM PSがEU加盟国
やその他の国において情報共有や教訓を学ぶための基本的な枠組みであることが検証された。
10個の項目を有するMIMが了解され、また、既存の報告制度が機能している国においても
有用性があるというコンセンサスが得られた。8個の報告項目を有するMIMも報告制度を持
たない国々では報告制度を開始する際によいモデルであると考えられた。既存の報告制度が機
能している国でもしていない国でも、MIM PSの構造は、データによる構造的な部分とフ
リーテキストから成る。RLSの学習の性質を強化することが重要であり、それは、蓄積した
データの体系的分析とその比較や、急速に増加する優先度の高い事象を同定することによって
行われる。
- 29 -
○標準8項目と拡大10項目の比較について
<参考>MIM PS標準版と拡大版(下線部が相違点)
◆ MIM PS標準版
◆ MIM PS拡大版
①患者情報(年齢、性別)
①患者情報(年齢、性別)
②発生時期
②発生時期
③発生場所
③発生場所
④関係者、関連機器等
④原因
⑤インシデント類型
⑤寄与因子
⑥インシデントの結果
⑥エラーの緩和要因
⑦改善策
⑦インシデント類型
⑧報告者の役割
⑧インシデントの結果
⑨改善策
⑩報告者の役割
○拡大版の定義を追加された項目について
④ 原因:インシデントを誘発した中心的な事象、⑤寄与因子:インシデントの原因や、進展、
リスクの増大に部分的に寄与したと考えられる因子、⑥エラーの緩和要因:インシデントが
患者に害を与えることを緩和したり妨げたりした行動や状況。
○医療安全の情報源としてのRLS:EU各国における調査結果の成果について
患者安全を優先することの確立、保健省の推奨、テーマ分析と報告、警告や参照情報の提供。
多くの情報を含んだ冊子、ニュースレター、グッドプラクティスのメモ、特定のエラーの防止
法、新しいプロトコールの提示。ピアレビューの実施、教育セッションの実施、チェックリス
トの作成、統計的分析。その結果明らかとなったことは次の通り。リストにある全ての事象が
全ての国で生じるわけではない。13%の国では、レポートは単に報告されて蓄積されている
のみ。分析はインシデントの種類による。手法としては Failure mode やRCA(Root Cause
Analysis)がある。
○ EUにおける評価を終えた際には、次のメッセージを公表した。MIM PSは、患者安全と
医療の質の強化のためのEU全域にわたる幅広い戦略を組織し、さらに開発するために必須な
共通の枠組みである。
○MIMに関するこの他の方向性について
報告と監視のためのMIM(Cross cutting MIM)。WHOにはいくつかのタスクフォースがあ
り、患者安全のための報告と監視システムの導入機会、利益、方向性を検討している。具体的
には、輸血、医療機器、患者安全、医薬品の副作用監視、放射線の安全、ワクチン、漢方、注
射の安全、診断的検査、労働衛生のタスクフォースがある。
○ 患者安全のための報告と監視システムとしてのMIMに関する非公式会議を2014年4月に
スイスのジュネーブで開催した。10の技術的分野から45名の専門家が出席した。目的は、
MIMの開発経緯のまとめを検証することやMIMの医療現場における適用性を検証すること、
患者安全情報の報告と学習に関する世界的なベストプラクティスや、よい経験、教訓に学ぶこ
と、比較可能な結果から学習する効果を高め共通の報告事項に同意すること、現行のMIMの
- 30 -
フォーマットを検証し、今後の改善を推奨すること、RLSの現時点の優先課題を同定し、推
奨される将来の戦略的な方向性を示すこと(ワルシャワの会合の目的と同じ)である。また、
次のことも目的である。多職種による高いレベルの議論を行う。報告システムの必要性、困難
性とそのギャップについて理解する。
○今後について
アジア、アフリカ地域での試行。MIMの運用による学習効果の強化。多職種・多部門が関与
する領域(薬効・副作用監視、輸血、放射線、医療機器、ワクチン接種)におけるMIMの試
行。患者からの報告を可能にするなど有害事象報告システムに関する新しい考え方の導入(患
者の責任感の養成、患者の声を現場に届ける、患者・住民と医療者とのパートナーシップの形
成が期待できる)。
8 ISQua(International Society for Quality in Health Care)との連携について
I S Q u a(The International Society for Quality in Health Care)
(http://www.isqua.org/) は、
医療の質の向上に関わる国際団体で1985年に設立され、現在本部はダブリン(アイルランド)に
置かれています。そして、約70カ国の組織会員、個人会員とアイルランド政府から資金を得て運営
されています。本財団は組織会員として登録するとともに、24名が個人会員として参加しています。
また、本財団の今中雄一理事はISQuaの理事に就任しています。
ISQuaの主な事業は次の通りです。
・病院等の第三者評価に関する国際認定(IAP : International Accreditation Programme)
・学会誌 International Journal for Quality in Health Care の出版
・医療の質向上に関する教育・啓発事業(ISQua Education)
・国際学術会議 International Conference の開催
2016年は、本財団とISQuaとの共催で、10月16日(日)∼19日(水)に東京国際フォー
ラムにて開催されました(http://jcqhc.or.jp/isqua.html)
。本事業に関しては、
次の発表を行っています。
主な概要を次に示します(表10)。
- 31 -
表10 発表の概要
発表日
発表区分
タイトル、司会、演者
10月18日
Japan's Quality Improvement Body -Its Achievement And Future Role in
Public Healthcare Service As Private Sector Entity
Plenary 3
(55min) Chair: BK Rana; India
Speaker: Shin Ushiro; Japan
10月19日
Improvement Science for Quality and Safety
Session C10
Chair: Sir Liam Donaldson; WHO
(60min) Speakers: Sheila Leatherman; USA, Cliff Hughes; Australia, Shin Ushiro;
Japan
Utilization of Medical Safety Information in Medical Institutions
10月17−19日
Poster
Presenter: Misa Sakaguchi, Hiromi Sakai, Junko Inoue, Shin Ushiro; Japan
1) Plenary 3: Japan's Quality Improvement Body -Its Achievement And Future Role in Public
Healthcare Service As Private Sector Entity, Chair: BK Rana; India, Speaker: Shin Ushiro; Japan
10月18日に行われた基調講演(Plenary session)では、本事業の創設経緯や、匿名性・非
懲罰性に基づいた運営、報告件数の増加、数量的分析とテーマ分析の内容、データベースの提供
が名称類似医薬品のブランド名の取り下げに繋がった実績等について解説しています。類似制度
として薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業についても言及し、医薬品の処方から調剤、投薬
までの切れ目のない安全対策の重要性を強調しています。また、本事業に続き、無過失補償や詳
細な分析、家族に対する説明責任を果たす特徴を有する産科医療補償制度についても解説しまし
た。さらに、死亡事例に関し、2015年に医療事故調査制度が開始されたこと、最近の大学病
院における高度医療の提供における医療事故の発生に関し、特定機能病院等を対象とする病院の
第三者評価の評価体系の検討を行っていることにも短く言及しています。講演後の質疑応答では、
医薬品の医療安全について、医療事故情報収集等事業や薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業
で収集される医薬品に関する情報と国が行う医薬品の医療安全対策との情報連携について、韓国
において法的保護を担保した任意の報告制度が開始されたが報告が少ないことから改善が必要で
あること、WHOが作成した手術室のチェックリストの我が国における普及度、医療機器の取扱
説明書が複雑である現状に対する本制度の成果の影響等について情報提供やコメント、質問がな
されました。
2) Session C10: Improvement Science for Quality and Safety, Chair: Sir Liam Donaldson; WHO,
Speakers: Sheila Leatherman; USA, Cliff Hughes; Australia, Shin Ushiro; Japan
10月19日には、WHOが企画したセッションが行われました。後述するように、本事業
の成果がWHOで注目されていることから、演者としての参加も求められました。セッションが
企画された背景としては、Universal Health Coverage が国連や経済サミットにおける主要な課題
となる中で、医療の量的な充足が測られることが推測される中、同時に質的な充実も行われなけ
ればならないという問題意識があります。そしてWHOとして、主として中低所得国に対する方
策を検討していることから、現段階の検討状況や、我が国や豪州からの助言を期待して開催され
たものです。本財団からの発表内容としては、日本医療機能評価機構が約10年の準備期間を経
- 32 -
て多くの医療関係団体や行政機関によって設立されたことから、①医療の質と安全を改善するた
めの国や地域レベルの官民のリーダーシップの確立、②政府が実施する医療監視とともに医療機
関が民間の第三者機関の病院機能評価を受審し自発的に質や安全の改善を行うこと、③医療事故
情報収集等事業の経験から匿名性・非懲罰性を原則とした施設レベル、国レベルの報告制度を運
営することによってエラーから学ぶ文化を創造すること、④診療ガイドラインの作成支援評価を
行っている事業(Minds:Medical Information Distribution Systems)の経験から世界基準
で評価された診療ガイドラインを普及して診療に活用することの重要性、⑤クオリティ・インディ
ケータ(QIs)の標準化によって国レベルのベンチマークを可能にすることの重要性等につい
て述べました。共同演者である Sheila Leatherman 氏から、WHOが World Bank、OECDと
ともに現在作成中である、WHOにとって初めての本格的な医療の質に関するレポートである
Global Quality Report について、その概要が解説されました。具体的には、中低所得国の現状、
国レベルのポリシーを作成することの重要性と具体的な項目、政府や医療者、関係者の具体的な
役割、行動計画等を内容としていることが説明されました。同じく共同演者であり、ISQua
理事長でもある Cliff Hughes 氏より、サービスを測定することについて概念的な講演がありまし
た。質疑応答では、WHOでは2003年に質に関する報告書を作成したことがあるがあまり知
られていないことから活用が求められること、質や安全が対象とする範囲は団体や学会によって
幅広いことから整理が必要であること等の質問やコメントがありました。また、司会の Liam 卿
より、各演者の講演には出てこなかった「信頼」についてどのように形成すべきかコメントを求
められたことから、本財団の多くの事業では患者の立場の委員が参加しており、時に意見の対立
もあるが、そのことによりバランスが取れた、社会から信頼される事業の運営が可能になってい
るという認識を述べました。このように、患者参加の視点やそれを超えた患者の積極的な関与が
求められるといった考え方が、質や安全分野の世界的なリーダーや先進的な組織から多く聞かれ
ました。
このような機会を活用して、同会との連携を深める中で、国際的な流れに即した取り組みを
実践することだけでなく、国際的な流れの形成に参加することにも取り組んでいます。また、最
近では、本財団はISQuaと共同で、インターネット講義である Webinar の日本語版である
「Japanese Webinar」を運営することによって、一層の情報発信に努めています。同時に、同じ
内容を英語版の Webinar でも情報発信しています。
9 海外に向けた情報発信
医療事故情報収集等事業では、年報や医療安全情報の英語版を公表しており、本事業のホームペー
ジの英語のページに掲載し、事業の内容や成果の周知に活用してきました。
そのような情報発信を続けておりましたところ、2010年度以降、毎年のように、海外から
本事業を含む、本財団の医療の質や安全に関する事業の講演のご依頼を受けるようになりました。
また、本財団がISQua(International Society for Quality in Health Care)との連携を強める中で、
ISQuaの年次会議でも同様の内容で発表を続けています。
- 33 -
最近では、WHOの会議において本事業や本財団の運営している医療の質や安全に関する事業につ
いてご説明する講演やプレゼンテーション等のご依頼を頂いています。後が2015年9月に WHO
West Pacific Region が 主 催 し 香 港 で 開 催 さ れ た WPRO Policy Round Table on Quality in Health
Services (第44回報告書 34∼36頁に概要を掲載)、11月にスイス、ジュネーブのWHO
本 部 で 開 催 さ れ た WHO Strategic Expert Working Group Meeting Developing Vision and Strategic
Directions for Improving Patient Safety and Quality of Care ( 第44回報告書 39頁に概要を掲載)で
講演しました。2016年2月には、オマーンのマスカットで開催された Inter-Regional Technical
Consultation on Best Practices in Patient Safety and Quality of Care 、3月には、スリランカのコロ
ンボで開催された WHO Inter-Regional Consultation Patient Safety Incident Reporting and Learning
Systems in Africa and Asia Pacific Regions 8月には、スイスのジュネーブで開催された WHO
Global Patient Safety Challenge on Medication Safety:Working Groups Meeting 、 9 月 に は、 イ タ
リ ア の フ ィ レ ン ツ ェ で 開 催 さ れ た WHO Global Consultation Setting Priorities for Global Patient
Safety で本事業について講演しました。2016年に開催された4回の会議の概要を次に示します。
1) Inter-Regional Technical Consultation on Best Practices in Patient Safety and Quality of Care,
8-10 February 2016 in Muscat, Oman
○ 2016年2月8∼10日にオマーンのマスカットにおいて、日本およびオマーン政府の協
力を得て、WHOの 4 つの地域(アフリカ地域、東地中海地域、南東アジア地域、西太平洋地域)
の連携を図ることを目的として、WHO本部及びWHO東地中海地域オフィスの主催により
開催された。
○ 会合は、WHO Global Patient Safety and Quality Network を構築するイニシアチブの一環で
あり、同時に、医療の質と安全の強化を望む世界的な関心の高まりに対するものである。
○ 22の国から医療の質や安全に関し、120名の参加者と専門家つまり保健省の政策決定者
や主要な施設、組織、利害関係者が集まる会議に参加した。
○目的は次の通りである。
①対話や経験やノウハウに関する国際的な情報交換の場を提供すること。
②患者安全の推進に成功している取り組みに学び重要な考察を行うこと。
③ 医療安全の強化や、質と安全の改善において、今後患者にどのように参加してもらうこ
とができるか検討すること。
④医療安全や質の改善分野において、世界的ネットワークを構築すること。
○ 当方の役割として、1日目午前に本事業について講演(30分)した。具体的には、日本
の医療安全対策(国レベル:医療事故情報収集等事業、産科医療無過失補償/原因分析・
再発防止制度、病院機能評価事業等、施設レベル:院内インシデント報告制度、紛争対応)
について説明した。1日目午後のパネルディスカッション Panel Discussion on Selected
Evidence Based Interventions for Patient Safety and Quality of Care の司会
(1時間)
を行い、
その他、意見やコメントを述べて議論に参加した。
- 34 -
○会議で提案された推奨事項
各国のプレゼンテーションと3日間の議論を経て、以下の通り多くの推奨事項が導かれた。
① 患者安全におけるリーダーシップの関与:課題実行して患者安全や質の改善を進めるた
めには強力なリーダーシップを必要とする。政治の関与も必須である。また、医療機関
や医療者によるマネジメント能力の発揮も同様である。このことは健康政策上優先され
るべきであり、患者安全の実施プログラムや介入の大規模化を図る上で、必要な資源を
与えられるべきである。
② 政策や実践を説明するエビデンス:報告と学習のシステムが医療の安全や質の即時的モ
ニタリングツールとして、また、エラーに学ぶツールとして確立されるべきである。様々
な規制により、このシステムを非懲罰的なものとしなければならない。そうすることに
より、失敗が正確に報告され、修正されることになる。医療の安全や質の必要性を評価し、
達成された進捗をモニタするための指標の確立も必要である。
③ 知識と技術的な能力の強化:計画された仕事の実行を支援するために、患者安全やコミュ
ニケーションに関するスタッフ教育が促進されるべきである。WHOが作成した患者安
全に関する多職種用のカリキュラムは、卒前、卒後及び継続的な教育プログラムにおい
て有用な資源となりうる。
④ 効果的なコミュニケーション手段:信頼でき効果的なメディアを通じたコミュニケーショ
ンの戦略の作成のために、メディアによる、患者安全問題の根本原因の理解を構築する
初期の段階が必要である。
⑤ 患者安全における患者の強化と関与:患者の能力を養うことは、安全な医療の提供にお
いて、説明を受けたパートナーとして積極的に関与してもらうために必要である。この
中には、患者や地域全体における健康に関する基礎的な能力向上を含み、そのことによっ
て効果的な患者や地域の関与を確実にするものである。
⑥ 優れた事例の共有と適用の促進:患者安全や質の領域におけるコミュニケーションや警
告、優れた取り組みの共有のための基盤として、WHO Global Patient Safety and Quality
Network が確立され維持される必要がある。この基盤によって、効果的で費用対効果の
高い解決を促進するために、資源の少ない状況に適応可能な革新的なアプローチの開発
を可能にする。
WHO Inter-Regional Consultation Patient Safety Incident Reporting and Learning Systems in
2)
Africa and Asia Pacific Regions, 22-24 March 2016, Colombo, Sri Lanka
○ 2016年3月22∼24日にスリランカのコロンボにおいて、日本政府及びスリランカ政
府の支援を受けて、WHOの4つの地域(アフリカ地域、東地中海地域、南東アジア地域、
西太平洋地域)の連携を図ることを目的として、WHO本部及びWHO東南アジア地域オフィ
スの主催により開催された。
○ WHOでは国レベルのインシデント報告制度の創設を希望する加盟国を支援するために、
2005年にドラフトガイドライン(初版)、簡素で機能的な報告項目であるMIM PS
(Minimal Information Model for Patient Safety Incident Reporting and Learning System)を
開発してきた。
- 35 -
○ 会議における議論は、今後作成される WHO Implementation Guidelines on Patient Safety
Incident Reporting and Learning Systems に活かされる予定である。
○ 21の国から医療の質や安全に関し、専門家つまり保健省の政策決定者や主要な施設、組織、
利害関係者が集まる会議に参加した。
○目的は次の通りである。
①報告と学習システムの運営から得られた教訓の情報交換を促進すること。
② 今後作成される WHO Implementation Guidelines on Patient Safety Incident Reporting
and Learning Systems に活かす知見を得ること。
③ MIM PSが試行された4つの地域における結果を、特に資源の少ない地域における運
営に着目してレビューすること及び、幅広く加盟国で運用可能であって、現場で運用可
能なツールとしての有用性についてレビューすること。
④ データ分析の能力を開発すること:組織や需要度、資源に基づく分析方法の選択と適用
に関する能力を開発すること。
⑤ これらの議論から得られる教訓を活用すること及び、報告システムの更なる充実にとい
う方向性に向けた推奨事項を提供すること。
○ 当方の役割として、1日目午後に本事業について講演(15分)した。具体的には、医療
事故情報収集等事業における報告の方法、分析結果、成果の活用例(名称類似薬の解消等)
について説明した。1日目午後のグループワーク Developing WHO Guidance on Patient
Safety Incident Reporting and Learning Systems の司会とまとめ(2時間)を行い、
その他、
意見やコメントを述べて議論に参加した。
○会議で行われた中心的な議論及び提案された推奨事項
○ 報告と学習システム(RLS : Reporting and Learning System)は患者安全の中心であり、
施設レベル、国レベル、WHOの地域レベル、世界レベルの全てのレベルで実践される
べきである。加盟国は、国レベルで効果的かつ持続可能なインシデント報告システムを
構築すべきである。
○ 国レベルの報告システムについて、施設、地域、国のいずれのレベルから開始してもよ
いので、段階的に国レベルのインシデント報告システムを整備する。これにより、次の
ことが期待される。
①患者安全への理解が改善し文化が醸成され、活用しやすい報告システムとなる。
② 政策的枠組み、法や規制の整備を行う。利害関係者を明確化し、公的、私的医療施設
を対象とし、また全ての医療を包括的に対象にした義務的/任意的な報告制度を創設
する。
③ 規制によって報告制度を非懲罰的なものとすることにより、発生した誤りが正確に報
告されるシステムを確立する。
④患者安全のためのナショナル・アクションプランを策定する。
⑤ 国レベルのガイドライン、定義、分類、ツール、SOPs(標準作業手順書)
、インフ
ラが必要であり、その中で報告範囲を明確化する。
⑥この件に関する国レベルの中心や組織レベルの中心を設置することが必要である。
⑦ 報告者とそれに続く対応者とを明確化する。データ分析、推奨事項の作成、フィードバッ
ク、モニタ、周知における役割と責任を明確化する。
- 36 -
⑧ 国や施設レベル、しかも病院だけでなくプライマリケアのレベルでも、リーダーシッ
プの形成とトレーニングの提供を行うべきである。
⑨ 教育にあたっては、WHOが作成した多職種向けカリキュラムを活用して、UG・PG(卒
前・卒後)カリキュラムや、CPD(Continuing Professional Development、継続研修)
を最新の内容に見直す。
⑩報告及び学習システム(RLS)のうち「学習」部分を強化する。
⑪ アンダー・レポーティングの問題と報告の質の問題に取り組む。インセンティブや報
償の仕組みの導入を検討する。
⑫研究機関の参加を得る。
⑬幅広い医療情報と関連させる。患者安全の指標を開発する。
⑭ キャンペーンの実施や、ソーシャルメディアによるネットワーク化、組織間や医療者、
患者代表者間のネットワーク化を図る。
⃝WHOの地域とグローバルレベルの報告制度
①リーダーシップ、政策立案と連携
・エビデンスやリサーチに基づく加盟国の支援
・ 戦 略 的 な 助 言 を 行 う、 よ り 大 き な 目 的 に つ な げ る、 U H C(Universal Health
Coverage)やSDG(Sustainable Development Goals)に関連させる
・政策の誘導、立法の必要性
・UHCや世界患者安全デーの制定に必要なWHO総会決議の作成
・効果的なパートナーシップの構築
− WHO Patient Safety and Quality Network
− Global Patient Safety Alerts(Canadian Patient Safety Institute)
−医師や看護師の教育委員会や大学との連携
−WHO連携センターやNGOとの公的な関係としての連携
−国際機関(ISQua、WONCA)
②基準、スタンダード、ガイドライン
・ WHOによる報告及び学習システム(RLS)の構築と実践のためのガイドライン、
いくつかの異なる技術的システムを統合する組織的なモデルの推奨
・整合性の評価ツール
・ITシステムの確立
・データ収集、分析、周知のための公開ソフトウエアやツールの開発
・WHOの開示指針の策定:
加盟国が患者や家族に対する情報開示の仕組みを開発するための指針
・用語の定義と、最低限の共通化した報告項目の開発
・医療における賠償制度創設の指針
・認定の効果と費用対効果のエビデンスの作成
○技術的指針、施設や人材に対する支援や能力開発
①加盟国との共同作業を行う。RLSの開発や分析をオンサイトで支援する。
② 全ての医療関係者の受講する教育プログラムに患者安全のカリキュラムを組み込む。
卒前、卒後のいずれの教育プログラムも対象とする。
- 37 -
③ 加盟国に対し、フェローシップや研修プログラムを通じて、国際的な能力開発の機会
を提供する。
④国レベルの認定制度を構築する。
⑤MIMを実践の初期段階において技術的支援を行う。
○モニタと測定
①ニーズの評価や進捗のモニタができるように、患者安全の指標を開発する。
② WHOによる Web-based reporting system を構築し、世界レベルでデータ収集を行い、
周知する。
3)
WHO Global Patient Safety Challenge on Medication Safety: Working Groups Meeting, 22-24
August 2016, Steering Board Meeting, 25 August 2016, Geneva, Switzerland
○ WHOは医療の質・安全に関する取り組みとして、過去に2度の Patient Safety Challenge
と称する取り組みを行ってきた。1度目は手指衛生(Hand hygiene)であり、2度目は手
術時のチェックリスト(Surgical checklist)の実施である。これらに続く3度目の Patient
Safety Challenge として、Medication safety が決まっている。そこで、2016年8月22
∼24日にその具体的な内容を検討する会議が開催された。
○ 8月22日の午前は全体会合であり、それ以降8月24日までグループワークと発表が行わ
れた。当方から、医療事故情報収集等事業や薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業が達成
してきた成果は、新たな Patient safety challenge である Medication safety の推進に貢献で
きると考える旨、随時発言した。
○ なお、8月25日に開催された運営委員会(Stirring committee)では、前日までの議論の
まとめおよび新たな Patient safety challenge の開始までの今後の予定が話し合われた。
○ワーキンググループの概要は次の通りである。
① Plenary session(8月22日午前)
特に重視する3つの領域(Flagship projects)がすでに決まっており、知見を有する参加
者からプレゼンテーションがあった。それらは、(1)Polypharmacy(重複処方・投薬)
、
(2)High risk medication(ハイリスクの医薬品の処方・投薬・内服)
、(3)Transition
of care(施設間、部署・部門間における患者情報の受け渡し)である。
② Group work (8月22日午後∼24日)
ワーキンググループごとの発表の概要は次の通りである。
(1)Patient and the public
・目的は、患者のエンパワーメントと医薬品が患者の所有であることの認識向上
・患者が参加した報告制度を創設することが重要
・政府の役割の明確化
・メディアキャンペーンの実施
(2)Medical professionals
・ 教育と医療者に対する支援について、卒前・卒後・キャリアアップの各段階で医薬
品の安全に関する研修を実施する。医療提供システムの構築にあたっては、患者安
全の科学と研究の情報を参考にする。
- 38 -
・ 処方から投薬までの各段階及び、市販後のサーベイランスの段階で安全対策を立案
して導入する。
・政策として、後発医薬品の処方の促進、品目数を減らす政策を実施する。
・ サーベイランスとモニタリングについて、加盟国は国レベルのサーベイランスシス
テムを構築し、エラーの内容を同定して将来のリスクを最小限にするために活用す
る。
・政府や政治家の役割を明確化する。
・医療者と患者とが共同して行う意思決定を促進する。
(3)Medicine
○行政や製薬業界への推奨事項
・グローバルハーモナイゼーションの推進。バーコードの付与等。
・ラベルや名称の改善。名称類似薬、外観類似薬の組み合わせの解消等。
・調製が不要な Ready-to-use 製品の普及。
・ 規制の強化。伝統的な医療、漢方薬、代替医療を含む。規制の仕組みが存在する
現場では、遵守率を向上させる。
○啓発に関する推奨事項
・患者に薬のリストを携行させる。
・患者の内服薬等の定期的な見直しによる最適化。
・医療機関や薬局は、患者の服用歴を把握する。
・患者にアラートカードを携行させる。
・処方時に、患者に適応、理由、目的を説明する。
○医薬品自体に関する推奨事項
・有害事象が発生している医薬品のリストを作成する。
・ 急に中止してはいけない医薬品(抗てんかん薬、抗パーキンソン病薬等)のリス
トを作成する。
・ 報告すべき有害事象(Never Events)のリストを作成する。例えば、ビンクリス
チンの髄腔内投与、メソトレキセートの連日投与、高濃度KCLの投与等。
○個人/医療者への推奨事項
・個人レベルのチャンピオンを見出す。知識を集め、普及する役割等を担う。
・医薬品に関するコミュニケーションシステム/ツールを開発する。
○知識の普及に関する推奨事項
・インシデントに学ぶ大規模なシステムを構築する。
・ 既存のガイダンスや報告書を周知する。薬物相互作用の知識を啓発するシステム
や方法を検討する。
○患者への推奨事項
・患者は薬のリストを携行する。
・患者はアラートカードを携行する。
○優先度の高い推奨事項
・ 規制当局、政府、製薬業界に対して。バーコード、表示やパッケージの改善。
Ready-to-use 製品。
- 39 -
・ 医薬品自体に対する介入。ハイリスク/ハイアラート医薬品に対しては、エラー
の予防のための推奨を作成、提供する。
・特定の医薬品の安全な取り扱いの優良事例を作成する。
(4)System and practice
○次の内容の文献の提示
・ 投入される医療資源の量は、minor なイベントに60%、major なイベントや死
亡事例に40%の割合である。
・ major なイベントや死亡事例に注目されがちであるが、minor なイベントにも注
目しなければならない。
・イベントの発生確率は低いので、多くの事例を収集しなければならない。
○ Pharmacovigilance のシステムや、ヒューマンエラーの報告も可能な報告システム
(ニアミスの報告も含む)の整備、結果の体系的な分析と得られた教訓の普及
○医薬品の登録に当たって、次の考え方の導入
・HTA(Health Technology Assessment)-type approach※ の導入。
※エビデンスに基づいた医療技術の有効性やコストの評価
・ヒューマンファクターの知識や人間工学を用いた安全な利用。
・モノとしての医薬品の監査。
・医薬品の物流の面からの監査。
○5つの質問キャンペーン
・ 患者は、 治療について、これは何ですか?/私 ・ あなたに何が起きますか?
投
薬されている医薬品のリストを患者・看護者と医療者とが共有していますか?
こ
れらの医薬品を服用することで私に利益がありますか?どのくらいの期間服用す
るのですか?
医薬品の効果を常に評価していますか?
患者は病気になったと
きにどうすれば良いか知っていますか? の5つを医療者または患者に問う。
(5)Evaluation and Monitoring
○文献検索によって、基本的な認識となる知識を作成
・ 病院の入院の10%は医薬品に関する有害事象によるもの。その約50%は予防
可能。
・ 医薬品に関する有害事象は、処方せんの不要な薬やビタミンまで含めると件数が
増加するだろう。
・強固な対策やツールは存在する。
○提案は次の通り
・ベースラインの調査が必要である。
・薬に関する入院の削減を目的とする。
・日常の医療を利用して調査を行う。
・経費を具体的に見積もる。
・3つのフラッグシッププロジェクトをカバーする。
・ いくつかの段階を設定して進める(ベースラインの推測、介入方法の開発、パイロッ
トスタディ、正確な評価、日常の医療への導入と調査)。
- 40 -
4) WHO Global Consultation Setting Priorities for Global Patient Safety, 26-28 September
2016, Florence, Italy
○ 2016年9月26∼28日にイタリアのフィレンツェにおいて、WHOと連携関係にあ
り、最近 WHO Collaborating Centre for Human Factors and Communication for the Delivery
of Safe and Quality Care に 指 定 さ れ た、 イ タ リ ア ト ス カ ー ナ 州 の Centre for Clinical Risk
Management and Patient Safety, Department of Health of the Tuscany Region の主催により、
高所得、中所得国の様々な国から専門家や政策決定者が参加して標記会議が開催された。
○目的は次の通りである。
① WHO による患者安全の取り組みやリーダーシップに関し知識を深めること。
② 安全な医療を提供し正しい文化を築くために、専門家や成功している医療関連組織の取り組
みに学ぶこと。
③ 主として中低所得国において患者安全や医療機関、医療提供の環境を改善するための主要な
課題や障壁を学ぶこと。
④患者安全領域の優先課題や新しい方向性、話題のトピックについて議論すること。
⑤WHOと加盟国にとって優先順位の高い課題を見出すこと。
○ 3日間のプログラムのほとんどが専門家等の講演により構成されていた。当方の役割として、
2日目午前のセッション6「Patient Safety Incident Reporting and Learning Systems, Chair:
Dr Ross Baker」において、本事業を中心に、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業、産科
医療補償制度、医療事故調査制度にも言及しながら講演(20分)した。具体的には、医療事
故情報収集等事業における報告の方法、分析結果、成果の活用例(名称類似薬の解消等)に
ついて説明した。そのほか、3日目の午後にグループワーク「Recommendations on Priorities
for Global Patient Safety」に参加し、エラーに学ぶことの重要性を強調し、国レベル、施設レ
ベルの報告制度の導入を促進することを意見として述べた。
表11 Programme of Work(セッション6部分)
Session 6 : Patient Safety Incident Reporting and Learning Systems
Chair : Dr Ross Baker
11 : 00 − 11 : 30
Overview of WHO guidelines
Sir Liam Donaldson
11 : 30 − 11 : 50
Japanese experience with reporting and learning systems
Dr Shin Ushiro
11 : 50 − 12 : 10
Italian experience with reporting and learning systems
Dr Tommaso Bellandi
12 : 10 − 12 : 30
Oman experience with reporting and learning systems
Dr Ahmed Mandhari
12 : 30 − 13 : 00
Moderated discussion
- 41 -
10 依頼講演への対応∼医療事故調査制度に関する内容を含む講演依頼が増えています∼
医療機関、薬局や、関係団体などのご依頼に対応して、本事業の現況や報告書、年報、医療安全
情報などの成果物の内容をご説明する講演を、毎年国内外で50回程度行っています。我が国におい
て、有害事象を調査、収集、分析、学習を行う全国規模の事業は図17の通りです。本財団が担当し
ている事業が多いことから、各事業の相互関係も含め、ご説明させていただいている内容は表12
の通りです。表に示すように、事業や成果の内容全般をご説明することが多いのですが、最近では、
2018年度開始を目途に準備が進められている新しい専門医制度の創設の関係で、制度を運営する
様々な学会からのご依頼もあり、その場合は、当該学会の専門領域に関する医療事故情報やヒヤリ・
ハット事例を詳しくご説明しています。
2015年10月に開始された医療事故調査制度に関する講演に関しては、本財団は、医療事故調
査制度における支援団体ですので、その役割として講演に対応しています。
本事業にご参加いただいている医療機関の皆様の中で、ご希望がございましたらできる限り対応さ
せていただきますので、ご連絡いただければ幸いに存じます。
図17 有害事象(医療事故、ヒヤリ・ハット)の調査、収集、分析、学習を行う全国規模の制度・事業
有害事象(医療事故、ヒヤリ・ハット)の
調査、収集、分析、学習を行う全国規模の制度・事業
2004 ∼
2016 現在
医療事故情報
収集等事業
2008 ∼
薬局ヒヤリ・ハット事例
収集・分析事業
2009 ∼
産科医療補償制度
2015 ∼
医療事故調査制度
- 42 -
表12 講演内容
1. 医療事故をシステムの問題としてとらえる視点とその分析
2. 国レベルの有害事象・ニアミス報告制度
1)医療機関の報告制度∼医療事故情報収集等事業
・医療事故情報、ヒヤリ・ハット事例収集の意義
・事業の趣旨・概要
・報告書の内容(収集結果、テーマ分析の内容)
・医療安全情報(インスリン、カリウム製剤、抗凝固剤等に関する事例等)
・ホームページの活用方法
・原因分析の意義・方法
・海外への情報発信
2)薬局の報告制度∼薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業
・医療事故、ヒヤリ・ハット事例収集の意義
・事業の趣旨・概要
・集計報告、年報の内容(収集結果、疑義照会事例の増加、テーマ分析の内容)
①名称類似に関する事例の紹介、名称類似の販売名の組み合わせ、改善策等
② 疑義照会に関する事例の紹介、事例の内容(薬剤削除、分量変更等)、疑義照会は行わなかったが
その後疑義が生じた事例
③後発変更等に関する事例の紹介、他
・ 薬局と医療機関との連携の重要性(疑義照会が不十分であったために生じた医療事故及び改善策の紹
介等)
・薬局ヒヤリ・ハット分析表(後発変更等に関する事例、配合剤に関する事例等)の活用
・共有すべき事例の活用方法
・ホームページの活用方法
3)医療事故調査制度
・制度創設の経緯
・制度の全体像
・制度における「医療事故」とその判断、報告
・院内事故調査
・遺族説明の方法
・再発防止、医療事故情報収集等事業との類似性
・2016年6月に行われた制度の見直し
3. 分娩医療事故に関する無過失補償制度∼産科医療補償制度
・社会保障とそれを補完する民間の補償制度
・無過失補償の考え方と必要性
・事業の趣旨・概要
・無過失を前提とした補償基準の考え方と審査の現況
・原因分析の現況
・原因分析の考え方
・再発防止の現況
・産婦人科領域の紛争の現況
4. その他
・ISQua国際会議、WHO地域間会合等で学んだ海外の医療安全推進の取り組みについて
- 43 -
11 医療事故調査制度における支援団体としての役割について
2015年10月1日に、医療事故調査制度に関する医療法が施行され、制度が開始されました。
本財団は、法に定める「医療事故調査等支援団体」として告示されています。具体的な支援内容とし
ては、医療機関からの求めに応じ、制度のご説明を含む講演のご依頼に対応することで支援を行っ
ており、既に複数件の実績があります。講演では、制度の概要だけでなく、開始後の報告件数等の現
況、医療事故情報収集等事業や産科医療補償制度における、原因分析や再発防止との方法や内容の類
似性、医療現場における医療事故の判断の現状等についてもご説明しており、本財団が様々な類似
事業を運営していることの特長を生かした内容となっています。医療事故調査制度に関する最近の
話題としては、2016年6月9日開催の社会保障審議会医療部会において、法に定める期限まで
には法改正はできないこと、運用面では必要な改善措置を実施することが報告されました。そして
2016年6月には、医療法に定められていた公布後2年以内の見直しが行われ、中央レベルと地方
レベルに支援団体連絡協議会を制度的に位置づけること、管理者は院内で発生する死亡事例を遺漏
なく把握できる体制を確保すること、遺族からの相談に対応し相談内容等を医療機関に伝達するこ
と、研修の充実や優良事例の共有を行うこと、医療事故調査・支援センターから医療機関に対して院
内事故調査報告書の内容に関する確認や照会等を行うことが見直され、明確化されるなどしました
(図18)。そのような内容も盛り込んだ講演を提供することで、医療機関や関連団体をご支援してい
ます。
図18 医療事故調査制度の見直しの内容(社会保障審議会医療部会資料より)
- 44 -
12 Facebook を活用した情報発信
医療事故防止事業部では、公式の Facebook ページを作成し、2014年4月8日より情報発信を
始めました。Facebook を活用することにより、1)本事業の最新の情報をタイムリーに発信でき、
「いいね!」に登録していただいたユーザはタイムリーに情報を受け取ることができる、2)「いい
ね!」に登録していただいた Facebook ユーザを介して、本事業をご存知ではない方に情報発信でき
る、などのメリットがあると考えています。情報発信する内容としては、①報告書、年報に関する情
報、②医療安全情報に関する情報、③システムメンテナンスに関する情報、④その他 事業の動向(取
材対応など)を考えており、発信頻度は1回/週を目安としています。本稿執筆時点で、本事業の
Facebook のページの「いいね!」に登録していただいたユーザは1,816名となっています。本事
業の Facebook のページ及びコンテンツの例を次に示します(図19)
。
図19 医療事故情報収集等事業の Facebook ページ
(URL:https://www.facebook.com/medsafe.jcqhc)
- 45 -
13
おわりに
事業に参加しておられる医療機関の皆様におかれましては、引き続き本事業において医療事故情報
やヒヤリ・ハット事例をご報告いただきますよう宜しくお願い申し上げます。また、これまで以上に
報告しやすい環境を整備することにより、報告の負担のために本事業への参加を躊躇しておられた医
療機関の皆様の新規のご参加も期待しております。今後とも本事業が我が国の医療事故の防止および
医療安全の推進に資するよう、報告書や年報の内容充実と、一層有効な情報提供に取り組んでまいり
ますので、皆様のご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。
- 46 -
Ⅰ 医療事故情報収集等事業の概要
本事業は、医療事故情報やヒヤリ・ハット事例の収集を基盤として、日々進歩する医療における
安全文化の醸成を図るよう取り組んでいる。
本事業は、医療事故情報収集・分析・提供事業とヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の2つ
の事業より構成されており、以下にそれぞれの事業の概要を述べる。
1 経緯
【1】ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の経緯
厚生労働省は、2001年10月から、ヒヤリ・ハット事例を収集・分析し、その改善方策等医療
安全に資する情報を提供する「医療安全対策ネットワーク整備事業(ヒヤリ・ハット事例収集事業)」
を開始した。事業開始当初、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(現(独)医薬品医療機器総
合機構)が参加医療機関からヒヤリ・ハット事例を収集したのち厚生労働省へ報告し、厚生労働省の
研究班が集計・分析を行う枠組みとなっていた。この枠組みに従ってヒヤリ・ハット事例収集が行われ、
厚生労働省より集計結果の概要を公表する等、収集したヒヤリ・ハット事例に基づく情報提供が行わ
れた。(注1)
2004年度からは、本財団が医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(現(独)医薬品医療機器
総合機構)よりヒヤリ・ハット事例収集事業を引き継ぎ、ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
を行ってきた。集計・分析結果は、本事業のホームページにおいて公表している。(注2)
【2】医療事故情報収集・分析・提供事業の経緯
2002年4月、厚生労働省が設置した医療安全対策検討会議が「医療安全推進総合対策」(注3)を
取りまとめ公表した。同報告書は、2001年10月から開始された医療安全対策ネットワーク整備
事業(ヒヤリ・ハット事例収集事業)に関し、
「事例分析的な内容については、今後より多くの施設から、
より的確な原因の分析・検討結果と改善方策の分析・検討結果を収集する体制を検討する必要がある。
」
と述べるとともに、医療事故事例に関してもその収集・分析による活用や強制的な調査・報告の制度化
を求める意見を紹介しつつ、医療事故の報告に伴う法的な問題も含めてさらに検討する必要があると
述べた。
(注1)厚生労働省ホームページ「医療安全対策」
(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/i-anzen/index.html)
参照。
(注2)公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ(http://www.med-safe.jp/)参照。
(注3)「医療安全推進総合対策」では、
『医療機関における安全対策』、
『医薬品・医療用具等にかかわる安全向上』、
『医療安全に関する教育研修』
、
『医療安全を推進するための環境整備等』を取り組むべき課題として提言がなされた。
厚生労働省ホームページ(医療安全対策のページにおける「3 医療安全推進総合対策」の報告書)(http://www.mhlw.go.jp/topics/
bukyoku/isei/i-anzen/houkoku/index.html)参照。
- 47 -
I
Ⅰ 医療事故情報収集等事業の概要
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
その後、厚生労働省が平成16年9月21日付で医療法施行規則の一部を改正する省令(注1)を公布
し、特定機能病院などに対して医療事故の報告を義務付けた。本財団は、同年10月1日付厚生労働
省告示第三百七十二号を受け(同年9月30日登録)、当該省令に定める事故等分析事業を行う登録
分析機関となり、医療事故情報収集・分析・提供事業を開始した。その後、本財団は5年毎に必要とさ
れている医療法施行規則第十二条の五に基づく登録分析機関として、2009年に2期目の登録更新、
2014年に3期目の登録更新を行った。
【3】本財団における事業の経緯
2004年7月1日、本財団内に医療事故防止センター(現 医療事故防止事業部)を付設し、
2004年10月7日、法令に基づく医療事故情報の収集を開始した。医療事故防止事業部では、
ヒヤリ・ハット事例、医療事故情報を併せて総合的に分析し、当事業部の運営委員会(注2)の方針に
基づいて、専門家より構成される総合評価部会(注3)による取りまとめを経て報告書を作成している。
2006年度からは特に周知すべき事例や個別テーマを医療安全情報として作成・提供し、2010年
度からは、より具体的な個別テーマの分析を開始し、報告書に掲載している。
また、2008年より、医療機関の報告の負担を軽減し、これまで以上に報告しやすい環境を整備
するとともに、医療安全の推進に必要な情報の収集は引き続き行っていく観点から、本事業の運営
委員会や総合評価部会において報告体制の見直しが検討された。その内容を具体化し、2010年
より、インターネットを活用した医療事故情報やヒヤリ・ハット事例の新たな収集方式および情報
提供を開始した。
本財団は、報告書や医療安全情報を、本事業に参加している医療機関、関係団体、行政機関などに
送付するとともに、本事業のホームページ(注4)へ掲載することなどにより広く社会に公表している。
(注1)厚生労働省令第133号。
(注2)医療全般、安全対策などの有識者や一般有識者などで構成され、当事業部の活動方針の検討及び活動内容の評価などを行っている。
(注3)各分野からの専門家などで構成され、報告書を総合的に評価・検討している。また、分析手法などに関する技術的支援も行っている。
(注4)公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ(http://www.med-safe.jp/)参照。
- 48 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業の概要
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
2 医療事故情報収集・分析・提供事業の概要
I
【1】事業の目的
報告義務対象医療機関並びに医療事故情報収集・分析・提供事業に参加を希望する参加登録申請医
療機関から報告された医療事故情報などを、収集、分析し提供することにより、広く医療機関が医療
安全対策に有用な情報を共有するとともに、国民に対して情報を提供することを通じて、医療安全対
策の一層の推進を図ることを目的とする。
【2】医療事故情報の収集
(1)対象医療機関(注1)
対象医療機関は、次に掲げる報告義務対象医療機関と参加登録申請医療機関である。
ⅰ)報告義務対象医療機関(注2)
① 国立研究開発法人及び国立ハンセン病療養所
② 独立行政法人国立病院機構の開設する病院
③ 学校教育法に基づく大学の附属施設である病院(病院分院を除く)
④ 特定機能病院
ⅱ)参加登録申請医療機関
報告義務対象医療機関以外の医療機関であって、医療事故情報収集・分析・提供事業に参加を希
望する医療機関
(2)医療事故情報として報告していただく情報の範囲
報告の対象となる医療事故情報は次の通りである。
① 誤った医療または管理を行ったことが明らかであり、その行った医療又は管理に起因して、患
者が死亡し、若しくは患者に心身の障害が残った事例又は予期しなかった、若しくは予期して
いたものを上回る処置その他の治療を要した事例。
② 誤った医療または管理を行ったことは明らかでないが、行った医療又は管理に起因して、患者
が死亡し、若しくは患者に心身の障害が残った事例又は予期しなかった、若しくは予期してい
たものを上回る処置その他の治療を要した事例(行った医療又は管理に起因すると疑われるも
のを含み、当該事例の発生を予期しなかったものに限る)。
③ ①及び②に掲げるもののほか、医療機関内における事故の発生の予防及び再発の防止に資する
事例。
(注1)対象医療機関は公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ「参加登録医療機関一覧」
(http://www.medsafe.jp/contents/register/index.html)参照。
(注 2) 国立研究開発法人、国立ハンセン病療養所、独立行政法人国立病院機構の開設する病院、学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づく
大学の附属施設である病院(病院分院を除く)
、特定機能病院に対して、厚生労働省は平成16年9月21日付で医療法施行規則の一部
を改正する省令(平成16年 厚生労働省令第133号)を公布し、医療事故情報の報告を義務付けた。
- 49 -
Ⅰ 医療事故情報収集等事業の概要
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
医療事故情報は、
「発生年月及び発生時間帯」
「事故の程度」
「事故の概要」
「患者の数、患者の年齢及
び性別」
「事故の内容、背景・要因、改善策」等、28項目の情報の報告を行う。また、報告は当該事故
が発生した日若しくは事故の発生を認識した日から原則として二週間以内に行わなければならない。
また、以下の①∼⑧の項目を医療事故情報収集等事業事業要綱 第十四条の2(注1)に基づき、
「特に
報告を求める事例」と定めている。
① 汚染された薬剤・材料・生体由来材料等の使用による事故
② 院内感染による死亡や障害
③ 患者の自殺又は自殺企図
④ 入院患者の失踪
⑤ 患者の熱傷
⑥ 患者の感電
⑦ 医療施設内の火災による患者の死亡や障害
⑧ 間違った保護者の許への新生児の引渡し
(3)報告方法
報告はインターネット回線(SSL暗号化通信方式)を通じ、
Web上の専用報告画面を用いて行う。
報告方法は、Web上の報告画面に直接入力し報告する方法と、指定フォーマット(XMLファイル)
を作成し報告する方法とがある。直接入力する方法は、チェックボックスやプルダウンリストから該
当する項目を選択して回答する選択形式と、記述欄に文字入力する記述形式がある(注2)。
【3】医療事故情報の分析・提供
(1)集計・分析
公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部において行っている。
(2)集計・分析結果の公表
本事業の報告書及びホームページ(注3)を通じて、関係者や国民に情報提供している。
(注1)医療事故情報収集等事業事業要綱 第十四条の2 当事業部は、前項の各号に規定する事故の範囲に該当する事例に関する情報を適切に
収集するために、必要な報告項目を定めることができる。
(http://www.
(注2)「報告入力項目(医療事故情報)」は公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ「関連文書」
med-safe.jp/pdf/accident_input_item.pdf)参照。
(注3)公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ(http://www.med-safe.jp/)参照。
- 50 -
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の概要
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の概要
I
【1】事業の目的
参加医療機関からヒヤリ ・ ハット事例を収集し、分析・提供することにより、広く医療機関が医療安
全対策に有用な情報を共有するとともに、国民に対して情報を提供することを通じて、医療安全対策
の一層の推進を図ることを目的とする。
【2】ヒヤリ・ハット事例の収集
(1)対象医療機関(注)
対象医療機関は、ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業に参加を希望する医療機関である。
ヒヤリ・ハット事例には「発生件数情報」と「事例情報」の2種類の情報がある。
ⅰ)「発生件数情報」を報告する医療機関(参加医療機関)
ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業に参加を希望する全ての医療機関である。
ⅱ)「事例情報」を報告する医療機関(事例情報報告参加医療機関)
ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業に参加を希望する医療機関のうち、事例報告を
希望する医療機関である。
(2)ヒヤリ・ハット事例として報告していただく情報の範囲
ⅰ)ヒヤリ・ハット事例の定義
① 医療に誤りがあったが、患者に実施される前に発見された事例。
② 誤った医療が実施されたが、患者への影響が認められなかった事例または軽微な処置・
治療を要した事例。ただし、軽微な処置・治療とは、消毒、湿布、鎮痛剤投与等とする。
③ 誤った医療が実施されたが、患者への影響が不明な事例。
ⅱ)報告内容
① 「発生件数情報」の報告
発生件数情報は、
ヒヤリ・ハット事例を「薬剤」
「輸血」
「治療・処置」
「医療機器等」
「ドレーン・
チューブ」
「検査」
「療養上の世話」
「その他」といった事例の概要で分類する。同時に、まず、誤っ
た医療行為の実施の有無を分け、さらに誤った医療行為の実施がなかった場合、もしその医療行
為が実施されていたら、患者にどのような影響を及ぼしたか、といった影響度で分類し(発生
件数情報入力画面参照)、それぞれの分類に該当する件数を報告する。
発生件数情報の報告期間は、各四半期(1∼3、4∼6、7∼9、10∼12月)の翌月初め
から月末としている。
(注) 対象医療機関は公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ「参加登録医療機関一覧」(http://www.medsafe.jp/contents/register/index.html)参照。
- 51 -
Ⅰ 医療事故情報収集等事業の概要
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
【発生件数情報入力画面】
誤った医療の実施の有無
実施なし
影響度
項 目
当該事例の内容が仮に実施された場合
実施あり
合 計
死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が必要
な状 況に至ったと が 必 要 であると もしくは処置・治療が不要
考えられる
考えられる
と考えられる
(1)薬剤
件
件
件
件
件
(2)輸血
件
件
件
件
件
(3)治療・処置
件
件
件
件
件
(4)医療機器等
件
件
件
件
件
(5)ドレーン・チューブ
件
件
件
件
件
(6)検査
件
件
件
件
件
(7)療養上の世話
件
件
件
件
件
(8)その他
件
件
件
件
件
件
件
件
件
件
【1】薬剤の名称や形状に関連する事例
件
件
件
件
件
【2】薬剤に由来する事例
件
件
件
件
件
【3】医療機器等に由来する事例
件
件
件
件
件
【4】今期のテーマ
件
件
件
件
件
合 計
再 掲
注)「【4】 今期のテーマ」とは、収集期間ごとに定められたテーマに該当する事例のことである。
② 「事例情報」の報告
事例情報は次のⅰ∼ⅴに該当する事例の情報(
【発生件数情報入力画面】実線囲み部分)を
収集する。
ⅰ 当該事例の内容が仮に実施された場合、死亡もしくは重篤な状況に至ったと考えられる事例
ⅱ 薬剤の名称や形状に関連する事例
ⅲ 薬剤に由来する事例
ⅳ 医療機器等に由来する事例
ⅴ 収集期間ごとに定められたテーマに該当する事例
なお、2016年のテーマは「腫瘍用薬に関連した事例」である。
ヒヤリ・ハット事例は、「発生年月及び発生時間帯」
「事例の概要」
「医療の実施の有無」
「事例
の治療の程度または影響度」「発生場所」「患者の数、患者の年齢及び性別」「事例の内容、背景・
要因、改善策」等、24項目の情報の報告を行う。
事例情報の報告期限は、事例が発生した日もしくは事例の発生を認識した日から1ヶ月として
いる。
- 52 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の概要
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(3)報告方法
報告はインターネット回線(SSL暗号化通信方式)を通じ、
Web上の専用報告画面を用いて行う。
ⅰ)「発生件数情報」の報告
Web上の報告画面に発生件数を直接入力する。
ⅱ)「事例情報」の報告(注1)
Web上の報告画面に直接入力し報告する方法と、指定フォーマット(XMLファイル)を
作成し報告する方法とがある。直接入力する方法は、チェックボックスやプルダウンリストから
該当する項目を選択して回答する選択形式と、記述欄に文字入力する記述形式がある。
【3】ヒヤリ・ハット事例の分析・提供
(1)集計・分析
公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部において行っている。
(2)集計・分析結果の提供
本事業の報告書及びホームページ(注2)を通じて、関係者や国民に情報提供している。
(注1)
「報告入力項目(ヒヤリ・ハット事例)
」は公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ「関連文書」
(http://www.med-safe.jp/pdf/hiyarihatto_input_item.pdf)参照。
(注2)公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ(http://www.med-safe.jp/)参照。
- 53 -
I
Ⅱ 報告の現況
1 医療事故情報収集等事業の現況
医療事故情報収集等事業は、医療事故情報収集・分析・提供事業とヒヤリ・ハット事例収集・分析・
提供事業の2つの事業により構成されている。
2016年9月30日現在、それぞれの事業に参加している医療機関は以下の通りである。
(注)
図表Ⅱ - 1- 1 (QI-01)
参加登録医療機関の登録状況
ヒヤリ・ハット事業
登録状況
参加する
参加しない
義務
発生件数と
事例情報
参加する
124
参加する
356
合計
発生件数のみ
82
480
任意
医療事故事業
参加しない
70
300
218
276
252
182
164
251
644
551
合計
1,032
756
415
252
1,447
1,195
各事業の報告の現況を、2 医療事故情報収集・分析・提供事業、3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・
提供事業に示す。
(注)各図表番号に併記される( )内の番号はWeb上に掲載している同図表の番号を示す。
- 54 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集・分析・提供事業は、報告義務対象医療機関と本事業に参加を希望する参加登録
申請医療機関から医療事故情報の収集を行う。本報告書には、報告義務対象医療機関より報告された
内容を中心に集計結果を掲載している。事故の概要や事故の程度等の集計結果は、2016年7月
から9月の集計値と2016年の累計値とを併記して掲載した。
Ⅱ
【1】登録医療機関
(1)報告義務対象医療機関数及び参加登録申請医療機関数
2016年9月30日現在、医療事故情報収集・分析・提供事業に参加している医療機関数は以下の
通りである。なお、医療機関数の増減の理由には、新規の開設や閉院、統廃合の他に、開設者区分の
変更も含まれる。
図表Ⅱ - 2- 1 (QA-01)
報告義務対象医療機関数及び参加登録申請医療機関数
開設者
国立大学法人等
独立行政法人国立病院機構
国立研究開発法人
国立ハンセン病療養所
国
独立行政法人労働者健康安全機構
独立行政法人地域医療機能推進機構
その他の国の機関
都道府県
市町村
自治体
公立大学法人
地方独立行政法人
日本赤十字社
恩賜財団済生会
北海道社会事業協会
自治体以外の公的 厚生農業協同組合連合会
医療機関の開設者 国民健康保険団体連合会
健康保険組合及びその連合会
共済組合及びその連合会
国民健康保険組合
学校法人
医療法人
公益法人
法人
会社
その他の法人
個 人
合 計
報告義務対象
医療機関
参加登録申請
医療機関
45
143
8
13
0
0
0
2
0
9
1
0
0
0
0
0
0
0
0
54
0
1
0
0
0
276
1
0
0
0
31
40
0
20
84
2
21
56
19
1
18
1
1
11
0
13
307
46
12
29
43
756
※参加登録申請医療機関とは、報告義務対象医療機関以外に任意で本事業に参加している医療機関である。
- 55 -
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(2)参加登録申請医療機関数の推移
2016年1月1日から同年9月30日までの参加登録申請医療機関数の推移は以下の通りである。
図表Ⅱ - 2- 2 (QA-02)
参加登録申請医療機関数の推移
2016 年
1月
2月
3月
新規登録
医療機関数
3
5
登録取下げ
医療機関数
0
746
累 計
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10 月
11 月
12 月
0
3
3
1
1
1
2
−
−
−
0
0
1
1
1
1
0
2
−
−
−
751
751
753
755
755
755
756
756
−
−
−
- 56 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
【2】報告件数
(1)月別報告件数
2016年1月1日から同年9月30日までの報告義務対象医療機関及び参加登録申請医療機関の
月別報告件数は以下の通りである。
図表Ⅱ - 2- 3 (QA-03)
報告義務対象医療機関及び参加登録申請医療機関の月別報告件数
2016 年
報告義務対象
医療機関報告数
参加登録申請
医療機関報告数
報告義務対象
医療機関数
参加登録申請
医療機関数
10 月 11 月 12 月
合計
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
316
228
321
281
244
288
298
278
290
−
−
−
2,544
50
16
19
33
11
39
74
33
26
−
−
−
301
275
275
275
275
276
276
276
276
276
−
−
−
−
746
751
751
753
755
755
755
756
756
−
−
−
−
(2)医療事故情報の報告状況
① 報告義務対象医療機関の報告状況
報告義務対象医療機関の2016年7月1日から同年9月30日までの報告医療機関数及び報告
件数を図表Ⅱ - 2- 4に、事業開始からの報告件数を開設者別に集計したものを図表Ⅱ - 2- 5に、病床
規模別に集計したものを図表Ⅱ - 2- 6に、地域別に集計したものを図表Ⅱ - 2- 7に示す。また、
同期間内における報告医療機関数を報告件数別に集計したものを図表Ⅱ - 2- 8に示す。なお、報告
義務対象医療機関については、集計期間中に特定機能病院の認定や医療機関の廃止等の変更が行われ
ることがあるため、医療機関数等の数値が他の図表と一致しない場合がある。2016年9月30日
現在、報告義務対象医療機関は276施設、病床数合計は141,167床である。
図表Ⅱ - 2- 4 (QA-04)
開設者別報告義務対象医療機関の報告医療機関数及び報告件数
開設者
国立大学法人等
国
独立行政法人国立病院機構
国立研究開発法人
国立ハンセン病療養所
報告医療機関数
報告件数
自治体
医療機関数
※ 2016 年
9月30日現在
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月(累計)
2016 年
7月∼9月
45
33
41
205
615
143
96
127
319
1,047
8
6
7
24
64
13
6
9
6
23
12
10
10
85
219
54
29
39
224
568
2016 年
1月∼9月(累計)
都道府県
市町村
公立大学法人
地方独立行政法人
法人
学校法人
公益法人
合 計
1
1
1
3
8
276
181
234
866
2,544
- 57 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 2- 5 (QA-05)
報告義務対象医療機関の報告件数(累計)
報告件数
開設者
2004 年10月∼
2016 年9月
国立大学法人等
6,066
独立行政法人国立病院機構
国
10,960
国立研究開発法人
1,012
国立ハンセン病療養所
292
都道府県
自治体
市町村
1,728
公立大学法人
地方独立行政法人
法人
学校法人
5,869
公益法人
44
合 計
25,971
図表Ⅱ - 2- 6 (QA-06)
病床規模別報告義務対象医療機関の報告医療機関数及び報告件数
病床数
医療機関数
※ 2016 年
9月 3 0日現在
報告医療機関数
2016 年
7月∼9月
報告件数
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月
(累計)
0 ∼ 19 床
0
0
0
0
0
20 ∼ 49 床
15
3
5
4
9
50 ∼ 99 床
5
0
1
0
1
100 ∼ 149 床
8
3
5
4
12
150 ∼ 199 床
7
5
5
8
28
200 ∼ 249 床
16
9
13
24
59
250 ∼ 299 床
16
7
13
16
61
300 ∼ 349 床
28
15
25
37
113
350 ∼ 399 床
16
10
14
39
139
400 ∼ 449 床
27
21
25
71
246
450 ∼ 499 床
19
17
18
68
201
500 ∼ 549 床
10
5
7
19
50
550 ∼ 599 床
9
8
9
38
132
600 ∼ 649 床
26
20
24
139
376
650 ∼ 699 床
7
6
7
44
127
700 ∼ 749 床
11
9
11
32
96
750 ∼ 799 床
3
2
3
2
14
800 ∼ 849 床
12
10
11
74
234
850 ∼ 899 床
4
1
3
5
61
900 ∼ 999 床
11
9
11
44
132
1000 床以上
26
21
24
198
453
276
181
234
866
2,544
合 計
- 58 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 2- 7 (QA-07)
地域別報告義務対象医療機関の報告医療機関数及び報告件数
地域
医療機関数
※ 2016 年
9月 3 0日現在
報告医療機関数
2016 年
7月∼9月
報告件数
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月
(累計)
北海道
10
4
9
6
32
東北
25
16
21
56
134
関東甲信越
87
60
70
302
838
東海北陸
38
25
34
147
445
近畿
35
21
28
102
250
中国四国
35
26
33
149
440
九州沖縄
合 計
46
29
39
104
405
276
181
234
866
2,544
図表Ⅱ - 2- 8 (QA-08)
報告件数別報告義務対象医療機関数
報告医療機関数
報告件数
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月(累計)
0
95
42
1
45
25
2
40
16
3
20
26
4
14
23
5
19
16
6
8
20
7
6
10
8
5
11
9
6
9
10
4
8
11 ∼ 20
9
36
21 ∼ 30
2
18
31 ∼ 40
2
8
41 ∼ 50
0
3
51 ∼ 100
1
3
101 ∼ 150
0
2
151 ∼ 200
0
0
200 以上
合 計
0
0
276
276
- 59 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
② 参加登録申請医療機関の報告状況
参加登録申請医療機関の2016年7月1日から同年9月30日までの報告医療機関数及び
報告件数を図表Ⅱ - 2- 9に、事業開始からの報告件数を開設者別に集計したものを図表Ⅱ - 2- 10
に示す。
図表Ⅱ - 2- 9 (QA-09)
参加登録申請医療機関の報告医療機関数及び報告件数
開設者
国
報告医療機関数
医療機関数
※ 2016 年
9月30日現在
2016 年
7月∼9月
72
報告件数
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月
(累計)
3
8
16
36
自治体
127
9
17
24
85
公的医療機関
107
10
14
24
40
法 人
407
18
30
69
140
個 人
43
0
0
0
0
合 計
756
40
69
133
301
図表Ⅱ - 2- 10 (QA-10)
参加登録申請医療機関の報告件数(累計)
開設者
報告件数
2004 年10月∼ 2016 年9月
国
157
自治体
737
公的医療機関
792
法 人
1,490
個 人
6
合 計
3,182
- 60 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
【3】報告義務対象医療機関からの報告の内容
2016年7月1日から同年9月30日までの報告義務対象医療機関からの医療事故情報の
報告の内容は以下の通りである。
なお、各表は、医療事故情報報告入力項目(注)を集計したものである。
図表Ⅱ - 2- 11 (QA-28-A)
当事者職種
当事者職種
件数
医師
544
歯科医師
28
看護師
591
准看護師
1
薬剤師
11
臨床工学技士
2
助産師
5
看護助手
5
診療放射線技師
8
臨床検査技師
3
管理栄養士
0
栄養士
0
調理師・調理従事者
0
理学療法士(PT)
7
作業療法士(OT)
4
言語聴覚士(ST)
0
衛生検査技師
0
歯科衛生士
0
歯科技工士
0
その他
合計
Ⅱ
13
1,222
※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。
(注) 「報告入力項目(医療事故情報)
」は公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ「関連文書」
(http://www.
med-safe.jp/pdf/accident_input_item.pdf)参照。
- 61 -
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 2- 12 (QA-29-A)
当事者職種経験
当事者職種経験
医師
歯科医師
看護師
准看護師
薬剤師
臨床工学
技士
助産師
看護助手
診療放射線 臨床検査
技師
技師
0年
14
0
46
0
0
0
1
1
0
0
1年
8
1
68
0
2
0
0
0
1
0
2年
36
1
51
0
0
0
0
2
2
1
3年
32
1
46
0
0
0
0
0
0
0
4年
19
3
40
0
0
0
0
0
1
0
5年
27
2
38
0
0
0
0
0
0
1
6年
32
0
21
0
0
0
0
0
0
0
7年
22
2
23
0
0
0
0
1
0
0
8年
20
1
14
0
0
1
0
0
1
0
9年
22
5
13
0
1
0
0
0
0
0
10 年
24
1
25
0
0
0
0
0
1
1
11 年
20
1
14
0
1
0
0
0
0
0
12 年
26
1
12
0
0
0
0
0
0
0
13 年
29
0
14
0
0
0
0
0
0
0
14 年
23
1
11
0
0
0
0
0
0
0
15 年
19
1
8
0
0
1
0
0
0
0
16 年
15
1
8
0
0
0
0
0
0
0
17 年
14
0
6
0
0
0
1
1
0
0
18 年
16
1
7
0
1
0
0
0
0
0
10
0
1
0
1
0
0
0
19 年
13
0
20 年
15
0
9
0
0
0
0
0
0
0
21 年
4
1
11
0
0
0
0
0
1
0
22 年
8
1
5
0
2
0
0
0
0
0
23 年
14
1
8
0
0
0
0
0
0
0
24 年
12
0
3
0
0
0
0
0
0
0
25 年
11
0
9
0
0
0
0
0
0
0
26 年
2
0
6
0
1
0
0
0
0
0
27 年
8
0
10
0
0
0
0
0
0
0
28 年
7
1
6
0
0
0
0
0
0
0
29 年
4
0
8
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
30 年
12
0
9
0
2
31 年
3
0
6
0
0
0
0
0
0
0
32 年
2
0
1
0
0
0
1
0
0
0
33 年
1
1
6
0
0
0
0
0
0
0
34 年
0
0
3
0
0
0
0
0
1
0
35 年
3
0
7
0
0
0
1
0
0
0
36 年
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
37 年
1
0
1
0
0
0
0
0
0
0
38 年
2
0
3
0
0
0
0
0
0
0
39 年
3
0
0
1
0
0
0
0
0
0
40 年超
1
0
4
0
0
0
0
0
0
0
合 計
544
28
591
1
11
2
5
5
8
3
※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。
- 62 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
管理栄養士
栄養士
調理師・ 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 衛生検査
歯科衛生士 歯科技工士
調理従事者 (PT)
(OT)
(ST)
技師
その他
合計
0
0
0
0
2
0
0
0
0
1
65
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
82
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
94
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
79
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
63
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
68
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
54
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
50
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
39
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
42
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
54
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
38
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
39
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
44
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
36
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
29
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
24
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
22
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
26
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
25
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
26
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
17
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
16
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
23
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
15
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
21
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
9
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
18
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
14
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
12
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
23
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
9
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
4
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
8
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
5
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
11
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
4
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
0
0
0
7
4
0
0
0
0
13
1,222
- 63 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 2- 13 (QA-30-A)
当事者部署配属期間
当事者部署配属期間
医師
歯科医師
看護師
准看護師
薬剤師
臨床工学
技士
助産師
看護助手
診療放射線 臨床検査
技師
技師
0年
123
1
126
0
2
0
1
3
4
1
1年
74
4
127
0
3
0
0
0
1
0
2年
46
3
95
0
0
0
1
0
1
1
3年
46
4
72
0
1
0
0
0
0
0
4年
22
3
56
1
0
0
0
0
1
0
5年
33
0
39
0
0
1
0
0
0
1
6年
27
0
27
0
0
0
0
2
0
0
7年
24
2
14
0
0
0
1
0
0
0
8年
23
1
4
0
0
1
0
0
1
0
9年
18
0
5
0
1
0
0
0
0
0
10 年
23
1
5
0
1
0
1
0
0
0
11 年
8
1
3
0
0
0
0
0
0
0
12 年
17
1
2
0
0
0
0
0
0
0
13 年
3
0
5
0
1
0
0
0
0
0
14 年
10
2
0
0
0
0
0
0
0
0
15 年
6
0
1
0
0
0
0
0
0
0
16 年
10
1
0
0
0
0
0
0
0
0
17 年
4
0
1
0
0
0
0
0
0
0
18 年
4
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
19 年
2
0
0
0
0
0
20 年
4
0
1
0
0
0
0
0
0
0
21 年
1
2
0
0
0
0
0
0
0
0
22 年
4
0
0
0
1
0
0
0
0
0
23 年
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
24 年
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
25 年
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
26 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
27 年
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
28 年
0
1
1
0
0
0
0
0
0
0
29 年
3
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
30 年
4
0
0
0
0
31 年
0
0
2
0
0
0
1
0
0
0
32 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
33 年
0
1
1
0
0
0
0
0
0
0
34 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
35 年
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
36 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
37 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
38 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
39 年
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
40 年超
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
合 計
544
28
591
1
11
2
5
5
8
3
※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。
- 64 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
管理栄養士
栄養士
調理師・ 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 衛生検査
歯科衛生士 歯科技工士
調理従事者 (PT)
(OT)
(ST)
技師
その他
合計
0
0
0
1
2
0
0
0
0
3
267
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
211
0
0
0
0
1
0
0
0
0
3
151
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
124
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
83
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
74
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
56
0
0
0
1
0
0
0
0
0
2
44
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
30
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
24
0
0
0
2
0
0
0
0
0
1
34
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
14
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
20
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
10
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
12
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
7
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
12
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
6
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
4
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
7
4
0
0
0
0
13
1,222
- 65 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 2- 14 (QA-35-A)
事故の概要
事故の概要
2016 年7月∼9月
件数
%
2016 年1月∼9月(累計)
件数
%
薬剤
68
7.9
164
6.4
輸血
2
0.2
5
0.2
治療・処置
273
31.5
764
30.0
医療機器等
21
2.4
68
2.7
ドレーン・チューブ
56
6.5
177
7.0
検査
療養上の世話
その他
合 計
37
4.3
102
4.0
322
37.2
962
37.8
87
10.0
302
11.9
866
100.0
2,544
100.0
※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。
図表Ⅱ - 2- 15 (QA-37-A)
事故の程度
事故の程度
死亡
2016 年7月∼9月
件数
%
62
7.2
2016 年1月∼9月(累計)
件数
209
%
8.2
障害残存の可能性がある(高い)
90
10.4
268
10.5
障害残存の可能性がある(低い)
230
26.6
685
26.9
障害残存の可能性なし
256
29.6
698
27.4
障害なし
202
23.3
576
22.6
不明
合 計
26
3.0
108
4.2
866
100.0
2,544
100.0
※事故の発生及び事故の過失の有無と事故の程度とは必ずしも因果関係が認められるものではない。
※「不明」には、報告期日(2週間以内)までに患者の転帰が確定していない事例が含まれる。
※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。
- 66 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 2- 16 (QA-40-A)
関連診療科
関連診療科
2016 年7月∼9月
件数
2016 年1月∼9月(累計)
%
件数
%
内科
79
7.2
210
6.7
麻酔科
34
3.1
101
3.2
循環器内科
64
5.8
173
5.5
神経科
19
1.7
82
2.6
呼吸器内科
41
3.7
150
4.8
消化器科
68
6.2
188
6.0
血液内科
15
1.4
48
1.5
循環器外科
3
0.3
16
0.5
アレルギー科
1
0.1
2
0.1
3
0.3
9
0.3
小児科
リウマチ科
44
4.0
133
4.2
外科
86
7.8
277
8.8
整形外科
153
13.9
415
13.1
形成外科
12
1.1
27
0.9
美容外科
0
0
0
0
脳神経外科
50
4.6
151
4.8
呼吸器外科
16
1.5
45
1.4
心臓血管外科
39
3.6
123
3.9
小児外科
4
0.4
12
0.4
ペインクリニック
0
0
1
0
皮膚科
15
1.4
41
1.3
泌尿器科
34
3.1
83
2.6
0
0
0
0
性病科
肛門科
産婦人科
産科
婦人科
眼科
耳鼻咽喉科
心療内科
精神科
リハビリテーション科
放射線科
歯科
0
0
0
0
16
1.5
55
1.7
8
0.7
14
0.4
10
0.9
27
0.9
8
0.7
36
1.1
33
3.0
74
2.3
1
0.1
3
0.1
73
6.6
200
6.3
7
0.6
27
0.9
12
1.1
37
1.2
5
0.5
14
0.4
矯正歯科
0
0
0
0
小児歯科
0
0
1
0
15
1.4
38
1.2
1
0.1
3
0.1
歯科口腔外科
不明
その他
合 計
129
11.7
340
10.8
1,098
100.0
3,156
100.0
※関連診療科は複数回答が可能である。
※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。
- 67 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 2- 17 (QA-41-A)
発生要因
発生要因
当事者の行動に関わる要因
確認を怠った
観察を怠った
報告が遅れた(怠った)
記録などに不備があった
連携ができていなかった
患者への説明が不十分であった(怠った)
判断を誤った
ヒューマンファクター
知識が不足していた
技術・手技が未熟だった
勤務状況が繁忙だった
通常とは異なる身体的条件下にあった
通常とは異なる心理的条件下にあった
その他
環境・設備機器
コンピュータシステム
医薬品
医療機器
施設・設備
諸物品
患者側
その他
その他
教育・訓練
仕組み
ルールの不備
その他
合 計
2016 年7月∼9月
2016 年1月∼9月(累計)
件数
%
件数
%
979
248
252
24
17
99
124
215
486
136
155
97
16
26
56
422
10
22
34
41
18
263
34
364
151
33
44
136
2,251
43.6
11.0
11.2
1.1
0.8
4.4
5.5
9.6
21.6
6.0
6.9
4.3
0.7
1.2
2.5
18.7
0.4
1.0
1.5
1.8
0.8
11.7
1.5
16.2
6.7
1.5
2.0
6.0
100.0
2,917
742
730
66
59
335
329
656
1,354
394
441
266
32
56
165
1,230
30
51
110
100
58
793
88
1,153
479
90
138
446
6,654
43.9
11.2
11.0
1.0
0.9
5.0
4.9
9.9
20.3
5.9
6.6
4.0
0.5
0.8
2.5
18.6
0.5
0.8
1.7
1.5
0.9
11.9
1.3
17.4
7.2
1.4
2.1
6.7
100.0
※発生要因は複数回答が可能である。
※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。
図表Ⅱ - 2- 18 (QA-42-A)
特に報告を求める事例
特に報告を求める事例
汚染された薬剤・材料・生体由来材料等の使用
による事故
院内感染による死亡や障害
患者の自殺又は自殺企図
2016 年7月∼9月
件数
2
2016 年1月∼9月(累計)
%
件数
0.2
5
%
0.2
0
0
1
0
15
1.7
40
1.6
入院患者の失踪
1
0.1
8
0.3
患者の熱傷
7
0.8
24
0.9
患者の感電
0
0
0
0
医療施設内の火災による患者の死亡や障害
0
0
2
0.1
間違った保護者の許への新生児の引渡し
本事例は選択肢には該当しない
合 計
0
0
0
0
841
97.1
2,464
96.9
866
100.0
2,544
100.0
※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。
- 68 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 2- 19 (QA-64-A)
発生場面 × 事故の程度
障害残存の 障害残存の
障害残存の
可能性がある 可能性がある
可能性なし
(高い)
(低い)
死亡
発生場面×事故の程度
障害なし
不明
合計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
薬剤に関する項目
処方
手書きによる処方箋の作成
オーダリングによる処方箋の作成
口頭による処方指示
手書きによる処方の変更
オーダリングによる処方の変更
口頭による処方の変更
その他の処方に関する場面
調剤
内服薬調剤
注射薬調剤
血液製剤調剤
外用薬調剤
その他の調剤に関する場面
製剤管理
内服薬製剤管理
注射薬製剤管理
血液製剤管理
外用薬製剤管理
その他の製剤管理に関する場面
与薬準備
与薬準備
与薬
皮下・筋肉注射
静脈注射
動脈注射
末梢静脈点滴
中心静脈注射
内服
外用
坐剤
吸入
点鼻・点耳・点眼
その他与薬に関する場面
輸血に関する項目
処方
手書きによる処方箋の作成
オーダリングによる処方箋の作成
口頭による処方指示
手書きによる処方の変更
オーダリングによる処方の変更
口頭による処方の変更
その他の処方に関する場面
輸血検査
準備
実施
その他の輸血検査に関する場面
放射線照射
準備
実施
その他の放射線照射に関する場面
輸血準備
製剤の交付
その他の輸血準備に関する場面
輸血実施
実施
その他の輸血実施に関する場面
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
2
0
0
1
0
1
0
0
0
0
1
0
0
0
2
0
0
2
0
1
1
2
0
0
0
0
0
1
9
1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
2
0
0
1
0
1
1
14
1
1
3
0
2
1
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
2
0
0
0
0
2
0
0
0
0
2
0
0
0
0
1
0
0
0
2
1
2
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
0
0
0
2
6
2
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
1
2
5
0
0
2
6
1
0
0
1
0
2
0
0
0
0
1
1
1
0
2
0
3
0
0
0
0
2
0
2
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
2
1
0
0
0
0
0
2
0
2
0
2
0
2
0
0
0
0
1
2
5
0
4
0
5
0
0
0
0
2
1
0
0
1
1
4
0
1
0
0
2
2
5
0
4
5
10
0
1
0
0
2
1
4
0
16
2
5
0
0
0
0
0
2
12
0
28
5
10
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
2
0
0
0
0
0
3
8
0
22
3
13
0
1
0
0
4
7
26
0
40
11
30
0
1
0
0
10
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
0
0
0
1
0
1
0
4
0
- 69 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
障害残存の 障害残存の
障害残存の
可能性がある 可能性がある
可能性なし
(高い)
(低い)
死亡
発生場面×事故の程度
障害なし
不明
合計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
治療・処置に関する項目
指示
手書きによる指示の作成
オーダリングによる指示の作成
口頭による指示
手書きによる指示の変更
オーダリングによる指示の変更
口頭による指示の変更
その他の指示に関する場面
管理
管理
その他の管理に関する場面
準備
準備
その他の準備に関する場面
実施
実施
その他の治療・処置に関する場面
医療機器等・医療材料の使用・管理に関する項目
指示
手書きによる指示の作成
オーダリングによる指示の作成
口頭による指示
手書きによる指示の変更
オーダリングによる指示の変更
口頭による指示の変更
その他の指示に関する場面
管理
管理
準備
準備
使用
使用中
ドレーン・チューブ類の使用・管理に関する項目
指示
手書きによる指示の作成
オーダリングによる指示の作成
口頭による指示
手書きによる指示の変更
オーダリングによる指示の変更
口頭による指示の変更
その他の指示に関する場面
管理
管理
準備
準備
使用
使用中
検査に関する項目
指示
手書きによる指示の作成
オーダリングによる指示の作成
口頭による指示
手書きによる指示の変更
オーダリングによる指示の変更
口頭による指示の変更
その他の指示に関する場面
管理
管理
準備
準備
実施
実施中
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
1
0
0
1
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
6
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
6
0
1
0
0
0
0
0
1
2
3
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
1
5
5
0
0
0
14
4
1
12
3
2
0
10
2
9
1
22
1
3
1
11
1
3
3
14
3
0
0
7
0
21
6
76
10
1
0
2
0
1
0
1
0
0
0
4
0
1
0
2
1
1
0
6
1
0
0
0
0
4
0
15
2
12
4
47
9
34
6
94
12
53
4
128
8
72
6
178
10
37
6
112
7
5
1
25
6
213
27
584
52
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
1
0
1
0
0
0
0
3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
1
0
0
0
0
6
0
1
1
2
0
1
2
3
2
4
0
3
5
14
0
0
0
1
0
1
1
1
0
2
0
0
1
5
3
6
0
3
4
8
2
9
4
11
1
5
14
42
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
1
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
0
3
1
0
0
0
2
0
1
0
1
2
8
3
12
3
12
0
1
8
35
0
0
0
0
0
0
1
1
1
1
1
1
3
3
0
5
5
16
8
31
12
35
15
39
3
7
43
133
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
1
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
2
1
0
0
0
0
4
0
1
1
2
1
2
0
1
1
3
0
1
3
10
0
0
0
0
0
2
1
3
2
3
0
1
3
9
0
6
5
9
6
19
10
17
9
23
0
2
30
76
- 70 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
障害残存の 障害残存の
障害残存の
可能性がある 可能性がある
可能性なし
(高い)
(低い)
死亡
発生場面×事故の程度
障害なし
不明
合計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
療養上の世話に関する項目
計画又は指示
手書きによる計画又は指示の作成
オーダリングによる計画又は指示の作成
口頭による計画又は指示
手書きによる計画又は指示の変更
オーダリングによる計画又は指示の変更
口頭による計画又は指示の変更
その他の計画又は指示に関する場面
管理・準備・実施
管理
準備
実施中
その他
合 計
1
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
3
0
1
0
0
0
0
4
2
3
0
1
0
0
17
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
2
1
0
0
1
0
0
0
6
3
0
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
11
0
3
14
62
25
1
18
55
209
14
0
8
8
90
41
0
24
34
268
55
1
49
20
230
186
3
133
67
685
59
2
42
24
256
161
4
117
81
698
25
0
32
17
202
97
0
76
52
576
6
0
5
4
26
12
1
18
13
108
※事故の発生及び事故の過失の有無と事故の程度とは必ずしも因果関係が認められるものではない。
※「不明」には、報告期日(2週間以内)までに患者の転帰が確定していない事例が含まれる。
- 71 -
2
1
0
1
0
0
6
11
6
0
2
0
0
26
170 522
3
9
139 386
87 302
866 2,544
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 2- 20 (QA-65-A)
事故の内容 × 事故の程度
障害残存の
障害残存の
障害残存の
可能性がある 可能性がある
可能性なし
(高い)
(低い)
死亡
事故の内容×事故の程度
障害なし
不明
合計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
薬剤に関する項目
処方
処方忘れ
処方遅延
処方量間違い
重複処方
禁忌薬剤の処方
対象患者処方間違い
処方薬剤間違い
処方単位間違い
投与方法処方間違い
その他の処方に関する内容
調剤
調剤忘れ
処方箋・注射箋鑑査間違い
秤量間違い調剤
数量間違い
分包間違い
規格間違い調剤
単位間違い調剤
薬剤取り違え調剤
説明文書の取り違え
交付患者間違い
薬剤・製剤の取り違え交付
期限切れ製剤の交付
その他の調剤に関する内容
製剤管理
薬袋・ボトルの記載間違い
異物混入
細菌汚染
期限切れ製剤
その他の製剤管理に関する内容
与薬準備
過剰与薬準備
過少与薬準備
与薬時間・日付間違い
重複与薬
禁忌薬剤の与薬
投与速度速すぎ
投与速度遅すぎ
患者間違い
薬剤間違い
単位間違い
投与方法間違い
無投薬
混合間違い
その他の与薬準備に関する内容
与薬
過剰投与
過少投与
投与時間・日付間違い
重複投与
禁忌薬剤の投与
投与速度速すぎ
投与速度遅すぎ
患者間違い
薬剤間違い
単位間違い
投与方法間違い
無投薬
その他の与薬に関する内容
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
2
0
1
0
1
0
0
0
0
2
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
4
1
0
0
0
0
0
1
0
0
2
0
1
0
0
0
0
0
1
0
6
0
1
0
1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
4
0
2
0
0
0
0
1
3
0
11
1
2
0
1
1
0
4
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
2
0
1
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
2
0
1
0
0
0
0
2
0
2
1
0
0
2
0
1
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
2
1
0
0
0
0
0
0
1
2
0
0
0
0
3
1
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
0
1
0
0
0
1
2
0
1
2
0
1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
1
0
2
2
0
0
0
1
2
0
2
4
0
1
2
1
3
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
2
1
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
4
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
3
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
1
3
3
1
1
0
0
0
0
1
1
0
0
3
6
3
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
2
6
0
0
1
2
3
0
0
2
0
4
0
4
4
0
0
0
1
4
0
1
0
0
0
2
15
12
0
1
0
1
7
0
4
6
0
2
3
22
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
10
0
0
0
2
4
0
2
1
0
0
3
26
25
2
2
1
5
10
0
5
9
0
8
6
41
- 72 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
障害残存の
障害残存の
障害残存の
可能性がある 可能性がある
可能性なし
(高い)
(低い)
死亡
事故の内容×事故の程度
障害なし
不明
合計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
輸血に関する項目
指示出し
指示出し忘れ
指示遅延
指示量間違い
重複指示
禁忌薬剤の指示
対象患者指示間違い
指示薬剤間違い
指示単位間違い
投与方法指示間違い
その他の指示出しに関する内容
輸血検査
未実施
検体取り違え
判定間違い
結果記入・入力間違い
その他の輸血検査に関する内容
放射線照射
未実施
過剰照射
過少照射
患者間違い
製剤間違い
その他の放射線照射に関する内容
輸血管理
薬袋・ボトルの記載間違い
異物混入
細菌汚染
期限切れ製剤
その他の輸血管理に関する内容
輸血準備
過剰与薬準備
過少与薬準備
与薬時間・日付間違い
重複与薬
禁忌薬剤の与薬
投与速度速すぎ
投与速度遅すぎ
患者間違い
薬剤間違い
単位間違い
投与方法間違い
無投薬
その他の輸血準備に関する内容
輸血実施
過剰投与
過少投与
投与時間・日付間違い
重複投与
禁忌薬剤の投与
投与速度速すぎ
投与速度遅すぎ
患者間違い
薬剤間違い
単位間違い
投与方法間違い
無投薬
その他の輸血実施に関する内容
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
0
1
0
0
0
0
3
- 73 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
障害残存の
障害残存の
障害残存の
可能性がある 可能性がある
可能性なし
(高い)
(低い)
死亡
事故の内容×事故の程度
障害なし
不明
合計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
治療・処置に関する項目
指示
指示出し忘れ
指示遅延
対象患者指示間違い
治療・処置指示間違い
日程間違い
時間間違い
その他の治療・処置の指示に関する内容
管理
治療・処置の管理
その他の治療・処置の管理に関する内容
準備
医療材料取り違え
患者体位の誤り
消毒・清潔操作の誤り
その他の治療・処置の準備に関する内容
実施
患者間違い
部位取違え
方法(手技)の誤り
未実施・忘れ
中止・延期
日程・時間の誤り
順番の誤り
不必要行為の実施
誤嚥
誤飲
異物の体内残存
診察・治療・処置等その他の取違え
その他の治療・処置の実施に関する内容
医療機器等・医療材料の使用・管理に関する項目
指示
指示出し忘れ
指示遅延
対象患者指示間違い
使用方法指示間違い
その他の医療機器等・医療材料の
使用に関する内容
管理
保守・点検不良
保守・点検忘れ
使用中の点検・管理ミス
破損
その他の医療機器等・医療材料の
管理に関する内容
準備
組み立て
設定条件間違い
設定忘れ
電源入れ忘れ
警報設定忘れ
警報設定範囲間違い
便宜上の警報解除後の再設定忘れ
消毒・清潔操作の誤り
使用前の点検・管理ミス
破損
その他の医療機器等・医療材料の
準備に関する内容
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
1
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
1
1
0
1
0
0
7
4
1
8
4
3
1
9
4
8
1
19
4
2
1
13
2
3
1
14
1
0
0
2
6
20
5
65
21
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
2
0
0
0
3
0
0
0
0
0
0
0
3
0
1
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
2
1
1
0
9
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
15
0
0
3
1
0
0
0
0
1
0
1
0
53
0
2
6
0
0
0
0
0
0
0
0
0
29
0
2
18
1
0
0
0
2
1
0
2
1
79
0
2
4
0
0
0
0
1
0
0
2
0
48
0
4
17
1
0
0
0
2
0
1
10
1
106
0
4
10
0
0
0
0
2
0
0
7
0
55
0
8
34
0
0
0
0
3
0
2
20
0
124
1
2
8
1
0
0
0
0
0
1
7
1
26
2
6
20
1
0
2
0
4
2
2
17
1
72
0
2
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
2
1
0
0
0
0
0
0
0
3
0
24
1
12
31
1
0
0
0
3
0
1
16
1
176
2
22
93
4
0
2
0
11
4
5
53
3
458
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
0
2
0
0
0
0
1
0
0
1
1
0
0
1
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
1
1
1
0
6
3
0
1
0
0
0
1
1
1
1
1
0
0
2
4
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
2
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
2
1
0
1
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
1
0
0
1
2
- 74 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
障害残存の
障害残存の
障害残存の
可能性がある 可能性がある
可能性なし
(高い)
(低い)
死亡
事故の内容×事故の程度
障害なし
不明
合計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
使用
医療機器等・医療材料の不適切使用
誤作動
故障
破損
その他の医療機器等・医療材料の
使用に関する内容
ドレーン・チューブ類の使用・管理に関する項目
指示
指示出し忘れ
指示遅延
対象患者指示間違い
使用方法指示間違い
その他のドレーン・チューブ類の
使用・管理の指示に関する内容
管理
点検忘れ
点検不良
使用中の点検・管理ミス
破損
その他のドレーン・チューブ類の
管理に関する内容
準備
組み立て
設定条件間違い
設定忘れ
消毒・清潔操作の誤り
使用前の点検・管理ミス
その他のドレーン・チューブ類の
準備に関する内容
使用
点滴漏れ
自己抜去
自然抜去
接続はずれ
未接続
閉塞
切断・破損
接続間違い
三方活栓操作間違い
ルートクランプエラー
空気混入
誤作動
故障
ドレーン・チューブ類の不適切使用
その他のドレーン・チューブ類の
使用に関する内容
検査に関する項目
指示
指示出し忘れ
指示遅延
対象患者指示間違い
指示検査の間違い
その他の検査の指示に関する内容
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
0
0
1
1
0
0
0
0
1
2
2
0
1
3
0
0
0
0
3
0
1
0
1
0
0
2
3
0
0
6
1
0
0
0
2
1
1
1
2
1
1
4
12
2
3
10
3
5
0
2
1
1
1
3
2
5
0
0
7
16
Ⅱ
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
0
0
0
2
0
0
0
1
0
0
0
4
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
7
1
0
0
0
0
1
1
0
3
0
2
0
0
1
6
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
1
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
0
0
0
1
0
1
1
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
3
1
0
3
0
0
0
0
1
0
0
0
1
2
0
0
0
0
2
0
0
1
0
0
0
0
3
8
0
2
0
1
7
0
0
1
0
0
0
0
0
1
2
0
0
0
3
0
1
0
0
0
0
0
2
8
2
0
0
0
6
0
1
0
0
1
0
0
0
3
0
1
0
0
1
1
2
0
0
0
0
0
2
8
4
1
0
2
2
1
2
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
1
1
0
0
0
2
1
0
0
0
0
0
0
2
6
3
2
0
1
6
2
3
1
0
0
0
0
11
25
10
4
0
7
17
2
3
1
2
1
0
1
0
4
2
7
3
16
7
22
10
23
3
3
25
75
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
- 75 -
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
障害残存の
障害残存の
障害残存の
可能性がある 可能性がある
可能性なし
(高い)
(低い)
死亡
事故の内容×事故の程度
障害なし
不明
合計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
管理
分析機器・器具管理
試薬管理
データ紛失
計算・入力・暗記
その他の検査の管理に関する内容
準備
患者取違え
検体取違え
検体紛失
検査機器・器具の準備
検体破損
その他の検査の準備に関する内容
実施
患者取違え
検体取違え
試薬の間違い
検体紛失
検査の手技・判定技術の間違い
検体採取時のミス
検体破損
検体のコンタミネーション
データ取違え
結果報告
その他の検査の実施に関する内容
療養上の世話に関する項目
計画又は指示
計画忘れ又は指示出し忘れ
計画又は指示の遅延
計画又は指示の対象患者間違い
計画又は指示内容間違い
その他の療養上の世話の計画又は指
示に関する内容
管理・準備・実施
拘束・抑制
給食の内容の間違い
安静指示
禁食指示
外出・外泊許可
異物混入
転倒
転落
衝突
誤嚥
誤飲
誤配膳
遅延
実施忘れ
搬送先間違い
患者間違い
延食忘れ
中止の忘れ
自己管理薬飲み忘れ・注射忘れ
自己管理薬注入忘れ
自己管理薬取違え摂取
不必要行為の実施
その他の療養上の世話の管理・準備・
実施に関する内容
その他
合 計
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
1
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
2
0
0
0
1
6
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
0
2
0
0
0
0
0
1
0
1
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
1
2
1
0
5
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
7
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
3
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
8
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
6
0
0
1
0
1
2
0
0
0
2
16
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
9
0
0
1
0
1
0
0
0
0
0
15
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
8
1
0
0
0
6
1
0
0
0
2
16
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
1
0
1
2
0
0
0
3
26
1
0
2
0
9
4
0
0
0
4
64
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
1
4
0
0
0
0
0
0
1
4
0
0
0
0
0
0
6
1
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
11
2
0
11
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
12
2
0
3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
38
4
0
6
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
74
7
1
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
210
21
2
5
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
63
9
1
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
3
4
0
0
0
0
0
180
20
5
1
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
5
0
0
0
0
0
0
26
4
1
2
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
90
10
3
4
5
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
0
0
0
0
0
6
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
20
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
187
23
3
10
2
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
4
4
1
0
0
1
0
549
57
10
29
7
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
8
7
23
5
20
25
100
25
67
23
68
4
10
89
288
14
62
55
209
8
90
34
268
20
230
67
685
24
256
81
698
17
202
52
576
4
26
13
108
※事故の発生及び事故の過失の有無と事故の程度とは必ずしも因果関係が認められるものではない。
※「不明」には、報告期日(2週間以内)までに患者の転帰が確定していない事例が含まれる。
- 76 -
87 302
866 2,544
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
Ⅱ
- 77 -
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 2- 21 (QA-68-A)
関連診療科 × 事故の概要
薬剤
関連診療科×事故の概要
2016 年
7月∼9月
輸血
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
治療・処置
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
医療機器等
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月
(累計)
10
25
0
0
12
28
1
4
麻酔科
4
12
0
1
23
66
0
4
循環器内科
4
8
0
0
32
68
4
8
神経科
1
1
0
0
3
11
1
1
呼吸器内科
2
5
0
0
2
10
2
7
消化器科
5
9
0
1
27
76
1
4
血液内科
3
11
1
2
1
6
0
0
循環器外科
1
1
0
0
1
5
0
0
アレルギー科
0
0
0
0
0
0
0
0
リウマチ科
1
3
0
0
0
1
0
0
小児科
1
15
0
0
8
15
0
5
内科
11
15
0
0
36
116
1
6
整形外科
2
2
0
1
37
83
2
5
形成外科
0
1
0
0
7
15
1
2
美容外科
0
0
0
0
0
0
0
0
脳神経外科
1
5
0
0
15
54
1
1
呼吸器外科
2
2
0
0
7
23
0
0
心臓血管外科
3
8
0
0
27
73
0
6
小児外科
1
3
0
0
2
4
0
0
ペインクリニック
0
0
0
0
0
1
0
0
皮膚科
1
3
0
0
0
2
0
0
泌尿器科
5
8
1
1
14
41
1
2
性病科
0
0
0
0
0
0
0
0
肛門科
0
0
0
0
0
0
0
0
産婦人科
1
4
0
0
9
31
3
3
産科
1
1
0
0
4
8
0
0
婦人科
3
4
0
0
3
10
1
3
眼科
0
0
0
0
5
19
0
1
耳鼻咽喉科
3
6
0
0
16
35
2
5
心療内科
0
0
0
0
0
0
0
0
精神科
2
2
0
0
0
2
0
1
リハビリテーション科
0
0
0
0
2
7
0
0
放射線科
0
1
0
0
4
14
1
1
歯科
0
0
0
0
4
9
0
0
矯正歯科
0
0
0
0
0
0
0
0
小児歯科
0
0
0
0
0
0
0
0
歯科口腔外科
2
3
0
0
10
20
0
0
外科
不明
その他
合 計
0
0
0
0
0
0
0
0
11
29
0
0
34
96
2
10
81
187
2
6
345
949
24
79
※関連診療科は複数回答が可能である。
- 78 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
ドレーン・チューブ
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月
(累計)
検査
2016 年
7月∼9月
療養上の世話
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
その他
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
合 計
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月
(累計)
5
14
2
8
41
103
8
28
79
210
4
10
0
0
0
0
3
8
34
101
0
9
0
3
20
55
4
22
64
173
2
4
0
0
10
56
2
9
19
82
3
11
2
12
30
96
0
9
41
150
4
11
5
16
22
51
4
20
68
188
1
2
0
1
6
20
3
6
15
48
0
6
0
1
0
2
1
1
3
16
0
0
0
0
1
2
0
0
1
2
0
0
0
0
2
4
0
1
3
9
7
23
3
4
21
62
4
9
44
133
8
28
5
12
19
64
6
36
86
277
4
7
2
5
81
260
25
52
153
415
0
0
0
0
3
7
1
2
12
27
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
4
16
1
5
18
46
10
24
50
151
1
5
2
2
4
10
0
3
16
45
4
11
1
4
2
13
2
8
39
123
0
1
0
1
1
3
0
0
4
12
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
2
6
0
0
9
25
3
5
15
41
1
4
2
2
9
22
1
3
34
83
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
2
0
5
2
9
16
55
0
0
0
1
0
0
3
4
8
14
0
3
0
0
1
3
2
4
10
27
0
0
0
2
3
9
0
5
8
36
0
4
5
5
5
12
2
7
33
74
0
0
0
0
0
1
1
2
1
3
1
1
1
1
59
162
10
31
73
200
0
0
0
0
2
16
3
4
7
27
3
5
4
10
0
5
0
1
12
37
0
0
0
0
0
2
1
3
5
14
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
1
4
0
1
2
6
0
4
15
38
0
0
0
0
0
0
1
3
1
3
11
27
14
28
43
97
14
53
129
340
67
213
49
126
414
1,220
116
376
1,098
3,156
- 79 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 2- 22 (QA-71-A)
発生要因 × 事故の概要
薬剤
発生要因×事故の概要
2016 年
7月∼9月
輸血
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
治療・処置
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
医療機器等
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月
(累計)
当事者の行動に関わる要因
確認を怠った
38
117
0
1
71
202
8
37
観察を怠った
18
28
0
0
44
115
5
14
報告が遅れた(怠った)
1
3
0
0
7
16
0
0
記録などに不備があった
1
12
0
0
5
13
1
1
連携ができていなかった
6
29
1
2
30
80
3
9
患者への説明が不十分で
あった(怠った)
13
19
0
0
20
44
0
2
判断を誤った
13
33
0
2
70
184
2
5
知識が不足していた
27
64
1
3
29
75
5
14
技術・手技が未熟だった
14
23
0
1
61
172
3
8
勤務状況が繁忙だった
14
33
0
0
18
40
2
10
3
5
0
0
5
14
1
1
6
10
0
0
10
21
1
1
7
17
0
0
14
49
1
3
6
19
0
0
3
7
0
1
12
29
0
0
2
6
0
0
医療機器
2
2
0
2
17
43
9
34
施設・設備
1
2
0
0
8
13
1
2
諸物品
0
0
0
0
4
13
1
4
患者側
5
7
0
1
50
133
1
2
その他
3
6
0
0
4
20
0
0
21
44
0
2
36
100
4
12
仕組み
4
12
0
0
9
30
3
5
ルールの不備
9
22
0
0
15
39
3
9
その他
7
20
1
1
66
213
2
7
231
556
3
15
598
1,642
56
181
ヒューマンファクター
通常とは異なる身体的条
件下にあった
通常とは異なる心理的条
件下にあった
その他
環境・設備機器
コンピュータシステム
医薬品
その他
教育・訓練
合計
※発生要因は複数回答が可能である。
- 80 -
2 医療事故情報収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
ドレーン・チューブ
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月
(累計)
検査
2016 年
7月∼9月
療養上の世話
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
その他
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
合 計
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月
(累計)
979
2,917
30
77
15
32
69
220
17
56
248
742
24
59
5
11
137
450
19
53
252
730
3
8
2
5
7
25
4
9
24
66
1
3
0
1
7
26
2
3
17
59
7
28
5
15
39
141
8
31
99
335
2
3
1
4
79
236
9
21
124
329
18
63
6
20
93
298
13
51
215
656
486
1,354
10
31
1
9
54
156
9
42
136
394
18
50
6
19
45
134
8
34
155
441
4
15
3
7
51
136
5
25
97
266
1
1
1
1
5
6
0
4
16
32
3
5
1
3
3
10
2
6
26
56
4
8
4
8
16
53
10
27
56
165
422
1,230
0
0
1
1
0
0
0
2
10
30
1
3
3
6
4
7
0
0
22
51
2
12
1
3
3
9
0
5
34
110
1
2
0
4
24
62
6
15
41
100
4
12
0
0
7
24
2
5
18
58
11
34
6
19
163
499
27
98
263
793
3
3
1
3
14
31
9
25
34
88
364
1,153
8
29
0
6
71
250
11
36
151
479
1
2
6
9
8
22
2
10
33
90
0
8
2
6
10
36
5
18
44
138
4
23
6
28
24
63
26
91
136
446
160
479
76
220
933
2,894
194
667
2,251
6,654
- 81 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業で収集する情報には発生件数情報と事例情報がある。
発生件数情報はヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業に参加を希望する全ての医療機関から収集
を行う。事例情報は、ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業に参加を希望する医療機関のうち、
事例情報の報告を希望した医療機関から収集を行う。本報告書には、2016年7月1日から同年9月
30日までの発生件数情報と事例情報の集計結果を掲載している。
【1】登録医療機関
(1)参加医療機関数
2016年9月30日現在、ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業に参加している医療機関数
は以下の通りである。なお、医療機関数の増減の理由には、新規の開設や閉院、統廃合の他に、開設
者区分の変更も含まれる。
図表Ⅱ - 3- 1 (QH-01)
参加医療機関数
開設者
参加医療機関
国立大学法人等
独立行政法人国立病院機構
国立研究開発法人
国
国立ハンセン病療養所
独立行政法人労働者健康安全機構
独立行政法人地域医療機能推進機構
その他の国の機関
都道府県
市町村
自治体
公立大学法人
地方独立行政法人
日本赤十字社
恩賜財団済生会
北海道社会事業協会
自治体以外の公的 厚生農業協同組合連合会
医療機関の開設者 国民健康保険団体連合会
健康保険組合及びその連合会
共済組合及びその連合会
国民健康保険組合
学校法人
医療法人
法人
公益法人
会社
その他の法人
個 人
合 計
- 82 -
29
118
5
11
31
44
0
27
130
9
24
80
20
0
20
2
1
20
1
47
414
53
12
45
52
1,195
事例情報報告
参加医療機関
18
69
3
4
26
24
0
17
72
5
11
45
10
0
8
0
0
12
1
33
204
24
3
22
33
644
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(2)参加医療機関数の推移
2016年7月1日から同年9月30日までの参加医療機関数の推移は以下の通りである。
図表Ⅱ - 3- 2 (QH-02)
参加医療機関数の推移
2016 年
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月 11月 12月
新規登録
医療機関数
1
3
2
3
4
3
1
3
3
−
−
−
登録取下げ
医療機関数
0
0
0
3
1
0
0
0
2
−
−
−
1,179 1,182 1,184 1,184 1,187 1,190 1,191 1,194 1,195
−
−
−
累 計
事例情報報告
新規登録
医療機関数
1
0
0
1
2
1
1
1
0
−
−
−
事例情報報告
登録取下げ
医療機関数
0
1
1
2
1
0
0
0
1
−
−
−
644
643
642
641
642
643
644
645
644
−
−
−
累 計
- 83 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
【2】発生件数情報の報告件数
(1)発生件数情報の報告状況
2016年7月1日から同年9月30日までの発生件数情報の報告は以下の通りである。
図表Ⅱ - 3- 3 (QNR-01)
発生件数情報の報告件数
誤った医療の実施の有無
実施なし
影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合)
項 目
死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が
実施あり
な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・
考えられる
考えられる
治療が不要と考えら
れる
合計
(1)薬剤
257
1,261
21,739
49,241
72,498
(2)輸血
34
63
445
849
1,391
(3)治療・処置
99
474
3,179
9,219
12,971
(4)医療機器等
60
197
2,701
4,624
7,582
(5)ドレーン・チューブ
95
528
6,376
25,311
32,310
(6)検査
94
482
7,202
12,346
20,124
(7)療養上の世話
197
885
13,104
33,504
47,690
(8)その他
132
452
12,442
13,415
26,441
968
4,342
55
151
合 計
67,188 148,509 221,007
再 掲
【1】薬剤の名称や形状に関連する事例
1,505
3,669
5,380
188
731
8,281
20,971
30,171
【3】医療機器等に由来する事例
50
142
1,166
2,800
4,158
【4】今期のテーマ
49
171
637
2,794
3,651
【2】薬剤に由来する事例
報告医療機関数
病床数合計
- 84 -
503
200,141
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(2)病床規模別の発生件数情報
2016年7月1日から同年9月30日までの病床規模別の発生件数情報を図表Ⅱ - 3- 4∼図表
Ⅱ - 3- 10に示す。
図表Ⅱ - 3- 4 (QNR-02)
病床規模別発生件数情報の報告件数(病床数が0∼99床の医療機関)
誤った医療の実施の有無
実施なし
Ⅱ
影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合)
項 目
死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が
実施あり
な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・
考えられる
考えられる
治療が不要と考えら
れる
合計
(1)薬剤
0
5
280
243
528
(2)輸血
0
0
2
0
2
(3)治療・処置
1
3
103
102
209
(4)医療機器等
0
2
40
15
57
(5)ドレーン・チューブ
0
2
34
93
129
(6)検査
0
3
105
123
231
(7)療養上の世話
0
3
212
195
410
(8)その他
1
2
223
101
327
2
20
999
872
1,893
【1】薬剤の名称や形状に関連する事例
0
2
8
20
30
【2】薬剤に由来する事例
0
3
146
163
312
【3】医療機器等に由来する事例
0
2
10
7
19
【4】今期のテーマ
0
0
0
1
1
合 計
再 掲
報告医療機関数
病床数合計
- 85 -
30
1,624
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 3- 5 (QNR-03)
病床規模別発生件数情報の報告件数
(病床数が100∼199床の医療機関)
誤った医療の実施の有無
実施なし
影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合)
項 目
(1)薬剤
(2)輸血
(3)治療・処置
(4)医療機器等
(5)ドレーン・チューブ
(6)検査
(7)療養上の世話
(8)その他
合 計
死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が
実施あり
な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・
考えられる
考えられる
治療が不要と考えら
れる
合計
31
0
6
4
13
3
45
32
134
60
1
6
8
15
8
33
31
162
1,159
20
192
128
350
426
1,087
977
4,339
1,787
17
238
184
690
492
1,634
938
5,980
3,037
38
442
324
1,068
929
2,799
1,978
10,615
1
13
2
0
4
51
4
1
79
430
42
5
36
804
66
28
120
1,298
114
34
再 掲
【1】薬剤の名称や形状に関連する事例
【2】薬剤に由来する事例
【3】医療機器等に由来する事例
【4】今期のテーマ
75
11,499
報告医療機関数
病床数合計
図表Ⅱ - 3- 6 (QNR-04)
病床規模別発生件数情報の報告件数
(病床数が200∼299床の医療機関)
誤った医療の実施の有無
実施なし
影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合)
項 目
(1)薬剤
(2)輸血
(3)治療・処置
(4)医療機器等
(5)ドレーン・チューブ
(6)検査
(7)療養上の世話
(8)その他
合 計
死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が
実施あり
な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・
考えられる
考えられる
治療が不要と考えら
れる
合計
14
3
6
4
3
7
12
16
65
69
3
39
17
50
32
98
58
366
1,874
30
259
238
356
623
1,950
1,240
6,570
3,182
53
609
331
1,549
893
3,831
1,196
11,644
5,139
89
913
590
1,958
1,555
5,891
2,510
18,645
5
8
4
2
17
46
15
5
111
605
92
9
195
1,355
231
35
328
2,014
342
51
再 掲
【1】薬剤の名称や形状に関連する事例
【2】薬剤に由来する事例
【3】医療機器等に由来する事例
【4】今期のテーマ
報告医療機関数
病床数合計
- 86 -
78
18,999
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 3- 7 (QNR-05)
病床規模別発生件数情報の報告件数(病床数が300∼399床の医療機関)
誤った医療の実施の有無
実施なし
影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合)
項 目
(1)薬剤
(2)輸血
(3)治療・処置
(4)医療機器等
(5)ドレーン・チューブ
(6)検査
(7)療養上の世話
(8)その他
合 計
死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が
実施あり
な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・
考えられる
考えられる
治療が不要と考えら
れる
合計
15
4
7
8
9
6
2
17
68
131
5
58
27
53
56
91
63
484
3,096
52
572
464
907
845
1,997
1,570
9,503
6,850
77
1,223
637
3,202
1,774
5,443
2,258
21,464
10,092
138
1,860
1,136
4,171
2,681
7,533
3,908
31,519
4
7
7
0
15
43
14
5
142
767
141
51
337
2,444
388
150
498
3,261
550
206
再 掲
【1】薬剤の名称や形状に関連する事例
【2】薬剤に由来する事例
【3】医療機器等に由来する事例
【4】今期のテーマ
96
32,022
報告医療機関数
病床数合計
図表Ⅱ - 3- 8 (QNR-06)
病床規模別発生件数情報の報告件数
(病床数が400∼499床の医療機関)
誤った医療の実施の有無
実施なし
影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合)
項 目
(1)薬剤
(2)輸血
(3)治療・処置
(4)医療機器等
(5)ドレーン・チューブ
(6)検査
(7)療養上の世話
(8)その他
合 計
死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が
実施あり
な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・
考えられる
考えられる
治療が不要と考えら
れる
合計
33
13
15
10
12
18
21
13
135
220
11
95
50
113
51
197
62
799
3,841
59
589
608
1,151
791
2,307
2,856
12,202
9,738
173
1,773
1,065
5,844
2,094
7,096
2,088
29,871
13,832
256
2,472
1,733
7,120
2,954
9,621
5,019
43,007
4
20
9
2
14
121
37
17
136
877
216
69
292
3,314
546
325
446
4,332
808
413
再 掲
【1】薬剤の名称や形状に関連する事例
【2】薬剤に由来する事例
【3】医療機器等に由来する事例
【4】今期のテーマ
報告医療機関数
病床数合計
- 87 -
81
35,574
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 3- 9 (QNR-07)
病床規模別発生件数情報の報告件数
(病床数が500∼599床の医療機関)
誤った医療の実施の有無
実施なし
影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合)
項 目
(1)薬剤
(2)輸血
(3)治療・処置
(4)医療機器等
(5)ドレーン・チューブ
(6)検査
(7)療養上の世話
(8)その他
合 計
死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が
実施あり
な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・
考えられる
考えられる
治療が不要と考えら
れる
合計
68
4
23
17
23
33
74
21
263
190
7
66
24
45
150
129
62
673
3,083
49
356
283
945
1,051
1,355
870
7,992
6,447
106
1,318
596
3,613
1,769
4,279
1,463
19,591
9,788
166
1,763
920
4,626
3,003
5,837
2,416
28,519
6
54
10
2
19
102
14
15
149
1,742
145
100
651
2,426
297
238
825
4,324
466
355
再 掲
【1】薬剤の名称や形状に関連する事例
【2】薬剤に由来する事例
【3】医療機器等に由来する事例
【4】今期のテーマ
50
26,963
報告医療機関数
病床数合計
図表Ⅱ - 3- 10 (QNR-08)
病床規模別発生件数情報の報告件数
(病床数が600床以上の医療機関)
誤った医療の実施の有無
実施なし
影響度(当該事例の内容が仮に実施された場合)
項 目
(1)薬剤
(2)輸血
(3)治療・処置
(4)医療機器等
(5)ドレーン・チューブ
(6)検査
(7)療養上の世話
(8)その他
合 計
死亡もしくは重篤 濃厚な処置・治療 軽微な処置・治療が
実施あり
な状況に至ったと が 必 要 で あ る と 必要もしくは処置・
考えられる
考えられる
治療が不要と考えら
れる
合計
96
10
41
17
35
27
43
32
301
586
36
207
69
250
182
334
174
1,838
8,406
233
1,108
940
2,633
3,361
4,196
4,706
25,583
20,994
423
3,956
1,796
10,320
5,201
11,026
5,371
59,087
30,082
702
5,312
2,822
13,238
8,771
15,599
10,283
86,809
35
86
18
43
80
365
56
128
880
3,714
520
403
2,138
10,465
1,265
2,017
3,133
14,630
1,859
2,591
再 掲
【1】薬剤の名称や形状に関連する事例
【2】薬剤に由来する事例
【3】医療機器等に由来する事例
【4】今期のテーマ
報告医療機関数
病床数合計
- 88 -
93
73,460
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
【3】事例情報の報告件数
(1)事例情報の月別報告状況
2016年1月1日から同年9月30日までの事例情報の月別報告件数は以下の通りである。
図表Ⅱ - 3- 11 (QH-03)
事例情報の月別報告件数
1月
事例情報
報告数
事例情報報告
参加医療機関数
2月
3月
4月
5月
2016 年
6月
7月
8月
4,206 1,422 1,937 3,758 1,500 1,535 4,571 2,050
644
643
642
641
642
643
- 89 -
644
645
9月
10月 11月 12月
合計
945
−
−
−
21,924
644
−
−
−
−
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(2)事例情報の報告状況
事例情報報告参加医療機関の2016年7月1日から同年9月30日までの報告医療機関数及び報告
件数を図表Ⅱ - 3- 12に、病床規模別に集計したものを図表Ⅱ - 3- 13に、地域別に集計したもの
を図表Ⅱ - 3- 14に示す。また、同期間内における報告医療機関数を報告件数別に集計したものを
図表Ⅱ - 3- 15に示す。2016年9月30日現在、事例情報報告参加医療機関は644施設、病床
数合計は211,354床である。
図表Ⅱ - 3- 12 (QH-04)
開設者別事例情報報告参加医療機関数及び報告件数
報告医療機関数
医療機関数
開設者
国
※ 2016 年
9月 3 0日現在
報告件数
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼9月
1月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
(累計)
(累計)
国立大学法人等
18
4
5
24
58
独立行政法人国立病院機構
69
7
16
94
131
国立研究開発法人
3
1
1
629
1,052
国立ハンセン病療養所
4
0
0
0
0
独立行政法人労働者健康安全機構
26
6
8
243
766
独立行政法人地域医療機能推進機構
24
4
5
773
1,956
0
0
0
0
0
105
20
26
2,188
8,041
その他の国の機関
自治体
都道府県
市町村
公立大学法人
自治体以外の公的医療機関
の開設者
地方独立行政法人
日本赤十字社
45
6
8
806
2,521
恩賜財団済生会
10
1
2
554
1,091
0
0
0
0
0
北海道社会事業協会
厚生農業協同組合連合会
8
0
1
0
1
国民健康保険団体連合会
0
0
0
0
0
健康保険組合及びその連合会
0
0
0
0
0
12
2
3
3
11
共済組合及びその連合会
法人
1
0
0
0
0
学校法人
国民健康保険組合
33
5
6
293
972
医療法人
204
14
20
1,072
2,874
公益法人
24
2
2
5
14
3
0
0
0
0
22
4
4
882
2,396
個 人
33
0
2
0
40
合 計
644
76
109
7,566
21,924
会社
その他の法人
- 90 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 3- 13 (QH-05)
病床規模別事例情報報告参加医療機関数及び報告件数
病床数
医療機関数
※ 2016 年
9月 3 0日現在
報告医療機関数
2016 年
7月∼9月
報告件数
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月
(累計)
0 ∼ 19 床
54
0
2
0
8
20 ∼ 49 床
22
1
2
90
212
50 ∼ 99 床
40
3
6
70
194
100 ∼ 149 床
43
1
4
24
41
150 ∼ 199 床
73
7
9
373
977
200 ∼ 249 床
43
4
6
149
429
250 ∼ 299 床
36
7
8
659
1,891
300 ∼ 349 床
74
9
13
1,657
4,069
350 ∼ 399 床
36
2
7
25
475
400 ∼ 449 床
62
7
10
526
1,926
450 ∼ 499 床
30
4
6
137
398
500 ∼ 549 床
26
8
8
749
2,112
550 ∼ 599 床
20
3
4
19
44
600 ∼ 649 床
20
5
6
1,042
1,964
650 ∼ 699 床
13
4
5
460
1,238
700 ∼ 749 床
13
2
2
11
58
750 ∼ 799 床
4
1
1
5
9
800 ∼ 849 床
8
3
3
1,469
5,503
850 ∼ 899 床
3
0
1
0
1
900 ∼ 999 床
11
4
5
36
76
1000 床以上
13
1
1
65
299
644
76
109
7,566
21,924
合計
図表Ⅱ - 3- 14 (QH-06)
地域別事例情報報告参加医療機関数及び報告件数
地域
医療機関数
※ 2016 年
9月 3 0日現在
報告医療機関数
2016 年
7月∼9月
報告件数
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月
(累計)
北海道
52
7
7
90
227
東北
64
8
10
280
1,087
関東甲信越
167
22
28
2,697
6,996
東海北陸
110
8
17
1,776
6,103
近畿
94
12
18
1,960
4,906
中国四国
79
13
18
530
2,122
九州沖縄
78
6
11
233
483
644
76
109
7,566
21,924
合計
- 91 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 3- 15 (QH-07)
報告件数別事例情報報告参加医療機関数
報告医療機関数
報告件数
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月
(累計)
0
568
535
1
14
30
2
6
6
3
3
2
4
5
5
5
4
3
6
1
3
7
3
2
8
1
0
9
1
2
10
1
2
11 ∼ 20
2
10
21 ∼ 30
4
5
31 ∼ 40
2
3
41 ∼ 50
2
1
51 ∼ 100
8
5
101 ∼ 150
4
1
151 ∼ 200
1
5
200 以上
合計
14
24
644
644
- 92 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
【4】事例情報の報告の内容
2016年7月1日から同年9月30日までの事例情報報告参加医療機関からのヒヤリ・ハット
事例情報報告の内容は以下の通りである。
なお、各表はヒヤリ・ハット事例「事例情報」報告入力項目(注)を集計したものである。
図表Ⅱ - 3- 16 (QH-28)
当事者職種
当事者職種
件数
医師
Ⅱ
326
歯科医師
5
看護師
6,562
准看護師
50
薬剤師
409
臨床工学技士
64
助産師
134
看護助手
42
診療放射線技師
65
臨床検査技師
100
管理栄養士
18
栄養士
29
調理師・調理従事者
34
理学療法士(PT)
84
作業療法士(OT)
37
言語聴覚士(ST)
6
衛生検査技師
0
歯科衛生士
4
歯科技工士
0
その他
334
合 計
8,303
※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。
(件)
その他
歯科技工士
歯科衛生士
衛生検査技師
言語聴覚士︵ST︶
作業療法士︵OT︶
理学療法士︵PT︶
調理師 調・理従事者
栄養士
管理栄養士
臨床検査技師
診療放射線技師
看護助手
助産師
臨床工学技士
薬剤師
准看護師
看護師
歯科医師
医師
7,000
6,500
6,000
5,500
5,000
4,500
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
(注)
「報告入力項目(ヒヤリ・ハッ
ト事例)
」は公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ「関連文書」
(http://www.
med-safe.jp/pdf/hiyarihatto_input_item.pdf)参照。
- 93 -
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 3- 17 (QH-29)
当事者職種経験
当事者職種経験
医師
歯科医師
看護師
准看護師
薬剤師
臨床工学
技士
助産師
看護助手
診療放射線 臨床検査
技師
技師
0年
57
0
627
0
79
4
16
7
7
26
1年
24
2
824
6
65
3
15
2
2
2
2年
23
0
665
0
31
6
11
1
4
1
3年
21
1
502
0
18
3
17
4
4
9
4年
13
0
441
1
14
8
10
3
2
4
5年
16
0
380
0
10
5
5
5
4
3
6年
8
0
248
0
3
0
8
5
2
1
7年
9
0
241
0
22
2
3
1
2
2
8年
4
0
195
0
22
5
5
2
5
3
9年
9
0
206
2
5
10
3
0
2
4
10 年
13
0
246
3
15
0
5
3
2
4
11 年
2
0
166
0
5
5
2
0
1
1
12 年
9
0
150
2
10
3
4
1
0
0
13 年
10
0
143
0
10
0
0
1
0
0
14 年
8
0
165
1
7
1
7
1
4
1
15 年
9
0
150
0
12
0
2
1
1
2
16 年
9
0
137
0
6
0
1
1
4
6
17 年
4
0
97
2
1
4
3
1
3
3
18 年
5
0
113
1
2
0
2
0
0
1
19 年
2
0
64
0
3
1
0
0
1
1
20 年
15
0
132
3
4
0
2
1
1
3
21 年
4
0
79
2
1
1
4
0
1
1
22 年
5
0
81
2
8
1
0
0
3
1
23 年
5
0
57
0
3
0
3
1
3
0
24 年
2
0
53
0
9
0
0
0
0
0
25 年
4
1
53
0
14
0
0
0
0
2
26 年
1
0
38
2
4
1
1
0
0
1
27 年
1
0
39
0
1
0
1
0
2
2
28 年
6
1
49
3
4
0
2
0
1
1
29 年
3
0
32
1
4
0
0
0
0
1
30 年
10
0
56
5
8
0
0
0
1
4
31 年
0
0
22
2
3
0
0
0
1
1
32 年
4
0
13
1
1
0
0
0
0
0
33 年
2
0
15
0
1
0
1
0
0
3
34 年
0
0
17
1
1
0
0
0
0
4
35 年
2
0
14
3
3
0
0
0
0
0
36 年
1
0
11
1
0
0
1
1
1
1
37 年
0
0
7
2
0
0
0
0
1
0
38 年
1
0
5
0
0
0
0
0
0
1
39 年
1
0
2
0
0
0
0
0
0
0
40 年超
4
0
27
4
0
1
0
0
0
0
合 計
326
5
6,562
50
409
64
134
42
65
100
※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。
- 94 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
管理栄養士
栄養士
調理師・ 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 衛生検査
歯科衛生士 歯科技工士
調理従事者 (PT)
(OT)
(ST)
技師
その他
合 計
0
2
4
14
6
0
0
0
0
146
995
0
1
0
11
5
1
0
0
0
17
980
4
4
3
6
5
1
0
0
0
9
774
0
6
2
13
4
0
0
0
0
33
637
2
1
1
4
4
1
0
0
0
8
517
1
0
2
5
1
0
0
0
0
13
450
0
1
3
8
1
1
0
0
0
5
294
0
1
3
3
2
0
0
1
0
1
293
0
2
1
1
0
1
0
0
0
6
252
0
3
1
3
1
0
0
0
0
7
256
0
2
2
3
2
0
0
2
0
4
306
0
0
1
0
2
0
0
0
0
3
188
1
0
0
0
1
0
0
0
0
6
187
1
0
0
0
1
0
0
0
0
1
167
1
0
0
0
1
0
0
0
0
4
201
1
0
1
0
0
0
0
1
0
5
185
0
0
1
1
0
0
0
0
0
1
167
0
0
1
0
1
1
0
0
0
0
121
2
0
0
0
0
0
0
0
0
3
129
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
74
3
2
3
0
0
0
0
0
0
4
173
0
2
1
1
0
0
0
0
0
0
97
0
0
1
3
0
0
0
0
0
1
106
0
0
1
1
0
0
0
0
0
1
75
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
65
0
0
1
4
0
0
0
0
0
0
79
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
51
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
46
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
68
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
41
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
87
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
29
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
21
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
22
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
23
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
24
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
18
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
11
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
7
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
0
1
0
0
0
0
0
0
47
84
18
29
34
84
37
6
0
4
0
334
8,303
- 95 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 3- 18 (QH-30)
当事者部署配属期間
当事者部署配属期間
医師
歯科医師
看護師
准看護師
薬剤師
臨床工学
技士
助産師
看護助手
診療放射線 臨床検査
技師
技師
0年
123
0
1,413
0
99
4
27
11
12
29
1年
46
3
1,484
9
79
3
31
7
2
14
2年
22
0
1,002
2
33
8
16
3
5
4
3年
16
0
692
3
24
5
12
7
6
8
4年
16
0
525
2
12
13
14
2
5
4
5年
17
0
479
4
17
4
4
3
4
3
6年
13
0
272
7
6
0
9
2
2
6
7年
3
0
187
8
28
3
3
0
1
0
8年
3
0
107
0
14
5
6
1
4
1
9年
7
0
98
1
2
11
2
0
1
5
10 年
16
0
101
0
14
0
5
2
4
4
11 年
7
0
44
2
7
1
1
1
0
1
12 年
3
1
34
0
6
0
0
0
2
0
13 年
2
0
20
1
4
0
0
1
1
1
14 年
1
0
15
0
4
1
2
0
1
0
15 年
6
1
15
0
5
0
0
0
0
1
16 年
2
0
6
2
6
0
0
1
2
6
17 年
2
0
10
0
0
5
1
0
1
0
18 年
0
0
7
0
1
0
0
0
0
1
19 年
1
0
3
2
2
0
1
0
0
0
20 年
6
0
12
2
4
0
0
0
1
1
21 年
1
0
2
1
2
0
0
0
1
1
22 年
0
0
0
0
4
0
0
1
2
0
23 年
0
0
4
0
1
0
0
0
2
1
24 年
0
0
4
0
9
0
0
0
0
0
25 年
0
0
10
0
8
0
0
0
0
1
26 年
0
0
6
2
8
0
0
0
0
0
27 年
0
0
1
0
1
0
0
0
2
2
28 年
2
0
2
0
3
0
0
0
1
1
29 年
0
0
1
0
1
0
0
0
0
1
30 年
9
0
1
0
1
0
0
0
0
2
31 年
0
0
0
1
1
0
0
0
1
1
32 年
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
33 年
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
34 年
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
35 年
1
0
1
0
2
0
0
0
0
0
36 年
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
37 年
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
38 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
39 年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
40 年超
0
0
4
0
0
1
0
0
0
0
合 計
326
5
6,562
50
409
64
134
42
65
100
※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。
- 96 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
管理栄養士
栄養士
調理師・ 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 衛生検査
歯科衛生士 歯科技工士
調理従事者 (PT)
(OT)
(ST)
技師
その他
合 計
1
1
4
26
11
0
0
0
0
149
1,910
2
9
3
19
6
1
0
1
0
25
1,744
6
4
6
9
10
1
0
0
0
16
1,147
1
9
4
9
6
0
0
1
0
34
837
2
2
2
3
0
1
0
0
0
12
615
0
0
3
1
0
0
0
0
0
8
547
1
0
2
5
0
1
0
0
0
8
334
0
0
2
3
1
1
0
1
0
4
245
0
0
1
1
0
1
0
0
0
3
147
0
0
0
0
1
0
0
0
0
5
133
0
1
0
1
1
0
0
1
0
3
153
0
0
1
1
0
0
0
0
0
2
68
1
0
0
0
0
0
0
0
0
3
50
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
32
0
1
0
0
1
0
0
0
0
1
27
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
33
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
26
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
20
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
11
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
9
0
2
2
1
0
0
0
0
0
2
33
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
10
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
9
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
8
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
15
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
20
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
16
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
7
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
10
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
14
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
5
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
6
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
47
52
18
29
34
84
37
6
0
4
0
334
8,303
- 97 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 3- 19 (QH-31)
事例の概要
事例の概要
薬剤
2016 年7月∼9月
%
件数
%
3,154
41.7
8,772
40.0
輸血
治療・処置
医療機器等
ドレーン・チューブ
0.6
110
0.5
4.1
899
4.1
245
3.2
575
2.6
14.4
3,354
15.3
554
7.3
1,674
7.6
1,232
16.3
3,858
17.6
その他
合 計
43
307
1,086
検査
療養上の世話
2016 年1月∼9月(累計)
件数
945
12.5
2,682
12.2
7,566
100.0
21,924
100.0
※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。
図表Ⅱ - 3- 20 (QH-33)
影響度
影響度
死亡もしくは重篤な状況に
至ったと考えられる
濃厚な処置・治療が必要
であると考えられる
軽 微 な 処 置・ 治 療 が 必 要
もしくは処置・治療が不要
と考えられる
合 計
2016 年7月∼9月
件数
2016 年1月∼9月(累計)
%
件数
%
70
1.8
176
1.7
155
4.0
418
4.0
3,632
94.2
9,946
94.4
3,857
100.0
10,540
100.0
※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。
- 98 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 3- 21 (QH-36)
発生要因
2016 年7月∼9月
発生要因
件数
%
10,207
4,770
1,703
168
239
1,098
870
1,359
4,159
908
613
1,491
100
368
679
2,158
183
427
167
141
165
835
240
2,554
805
281
472
996
19,078
当事者の行動に関わる要因
確認を怠った
観察を怠った
報告が遅れた(怠った)
記録などに不備があった
連携ができていなかった
患者への説明が不十分であった(怠った)
判断を誤った
ヒューマンファクター
知識が不足していた
技術・手技が未熟だった
勤務状況が繁忙だった
通常とは異なる身体的条件下にあった
通常とは異なる心理的条件下にあった
その他
環境・設備機器
コンピュータシステム
医薬品
医療機器
施設・設備
諸物品
患者側
その他
その他
教育・訓練
仕組み
ルールの不備
その他
合 計
53.6
25.0
8.9
0.9
1.3
5.8
4.6
7.1
21.8
4.8
3.2
7.8
0.5
1.9
3.6
11.4
1.0
2.2
0.9
0.7
0.9
4.4
1.3
13.4
4.2
1.5
2.5
5.2
100.0
2016 年1月∼9月(累計)
件数
%
30,817
13,920
5,183
537
667
3,442
2,663
4,405
13,469
2,476
1,707
5,008
313
1,578
2,387
6,322
585
1,157
484
471
462
2,386
777
7,618
2,379
757
1,228
3,254
58,226
52.9
23.9
8.9
0.9
1.1
5.9
4.6
7.6
23.1
4.3
2.9
8.6
0.5
2.7
4.1
10.8
1.0
2.0
0.8
0.8
0.8
4.1
1.3
13.1
4.1
1.3
2.1
5.6
100.0
※発生要因は複数回答が可能である。
※割合については、小数点第2位を四捨五入したものであり、合計が 100.0 にならないことがある。
図表Ⅱ - 3- 22 (QH-61)
事例の概要 × 影響度
事例の概要×影響度
軽微な処置・治療が必要
死亡もしくは重篤な状況 濃厚な処置・治療が必要
も し く は 処 置・ 治 療 が
に至ったと考えられる
であると考えられる
不要と考えられる
合 計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1 月∼9月
1 月∼9月
1 月∼9月
1 月∼9月
7月∼9月 (累計) 7月∼9月 (累計) 7月∼9月 (累計) 7月∼9月 (累計)
薬剤
22
55
69
166
1,568
4,095
1,659
4,316
輸血
0
0
1
2
24
51
25
53
治療・処置
20
35
9
36
147
377
176
448
医療機器等
5
12
6
17
110
264
121
293
ドレーン・チューブ
2
12
25
81
465
1,298
492
1,391
検査
8
17
10
19
335
958
353
994
療養上の世話
3
13
23
66
672
1,928
698
2,007
その他
合 計
10
32
12
31
311
975
333
1,038
70
176
155
418
3,632
9,946
3,857
10,540
- 99 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 3- 23 (QH-64)
発生場面×影響度
発生場面×影響度
薬剤に関する項目
処方
手書きによる処方箋の作成
オーダリングによる処方箋の作成
口頭による処方指示
手書きによる処方の変更
オーダリングによる処方の変更
口頭による処方の変更
その他の処方に関する場面
調剤
内服薬調剤
注射薬調剤
血液製剤調剤
外用薬調剤
その他の調剤に関する場面
製剤管理
内服薬製剤管理
注射薬製剤管理
血液製剤管理
外用薬製剤管理
その他の製剤管理に関する場面
与薬準備
与薬準備
与薬
皮下・筋肉注射
静脈注射
動脈注射
末梢静脈点滴
中心静脈注射
内服
外用
坐剤
吸入
点鼻・点耳・点眼
その他与薬に関する場面
輸血に関する項目
処方
手書きによる処方箋の作成
オーダリングによる処方箋の作成
口頭による処方指示
手書きによる処方の変更
オーダリングによる処方の変更
口頭による処方の変更
その他の処方に関する場面
輸血検査
準備
実施
その他の輸血検査に関する場面
放射線照射
準備
実施
その他の放射線照射に関する場面
輸血準備
製剤の交付
その他の輸血準備に関する場面
輸血実施
実施
その他の輸血実施に関する場面
死亡もしくは重篤な状況 濃 厚 な 処 置・ 治 療 が 必 軽微な処置・治療が必要
もしくは 処 置・ 治 療 が
に至ったと考えられる
要であると考えられる
不要と考えられる
合 計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1 月∼9月
1 月∼9月
1 月∼9月
1 月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
0
1
0
0
0
0
0
0
5
0
0
0
0
2
0
1
2
0
0
0
6
0
11
4
0
0
1
7
4
46
5
0
12
5
36
8
97
11
7
21
6
92
4
48
7
0
12
5
42
8
113
15
7
21
7
101
0
4
0
1
0
5
7
0
2
0
0
6
0
0
0
4
14
0
0
0
99
51
1
9
9
262
148
5
16
19
99
61
1
10
9
271
169
5
18
19
1
0
0
0
0
1
0
0
0
1
1
1
0
0
0
2
1
0
1
4
20
16
1
5
14
37
47
5
8
44
22
17
1
5
14
40
48
5
9
49
4
11
15
38
234
603
253
652
2
0
0
1
0
8
0
0
0
0
0
2
2
0
2
3
11
0
0
0
0
1
1
6
0
5
5
15
0
1
2
1
1
5
15
1
13
6
32
1
1
2
1
2
78
112
2
141
49
520
23
7
10
16
43
183
298
11
378
122
1,408
80
10
23
40
106
81
118
2
147
54
543
23
8
12
17
44
190
315
12
393
131
1,451
81
11
25
41
109
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
0
7
0
1
3
0
0
7
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
4
2
9
1
4
2
9
0
0
0
0
0
1
1
1
10
6
18
11
10
7
19
12
- 100 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
発生場面×影響度
治療・処置に関する項目
指示
手書きによる指示の作成
オーダリングによる指示の作成
口頭による指示
手書きによる指示の変更
オーダリングによる指示の変更
口頭による指示の変更
その他の指示に関する場面
管理
管理
その他の管理に関する場面
準備
準備
その他の準備に関する場面
実施
実施
その他の治療・処置に関する場面
医療機器等・医療材料の使用・管理に関する項目
指示
手書きによる指示の作成
オーダリングによる指示の作成
口頭による指示
手書きによる指示の変更
オーダリングによる指示の変更
口頭による指示の変更
その他の指示に関する場面
管理
管理
準備
準備
使用
使用中
ドレーン・チューブ類の使用・管理に関する項目
指示
手書きによる指示の作成
オーダリングによる指示の作成
口頭による指示
手書きによる指示の変更
オーダリングによる指示の変更
口頭による指示の変更
その他の指示に関する場面
管理
管理
準備
準備
使用
使用中
検査に関する項目
指示
手書きによる指示の作成
オーダリングによる指示の作成
口頭による指示
手書きによる指示の変更
オーダリングによる指示の変更
口頭による指示の変更
その他の指示に関する場面
管理
管理
準備
準備
実施
実施中
死亡もしくは重篤な状況 濃 厚 な 処 置・ 治 療 が 必 軽微な処置・治療が必要
もしくは 処 置・ 治 療 が
に至ったと考えられる
要であると考えられる 不要と考えられる
合 計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1 月∼9月
1 月∼9月
1 月∼9月
1 月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
0
0
0
0
0
0
0
1
0
1
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
3
2
0
2
0
8
2
6
4
1
2
4
35
1
3
2
0
2
0
8
3
6
5
1
2
4
37
1
0
2
1
1
0
7
2
12
2
35
9
14
2
44
12
3
0
6
0
2
1
6
1
27
6
76
14
32
7
88
15
16
0
23
0
5
0
16
3
69
15
153
36
90
15
192
39
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
0
1
0
0
1
0
4
0
2
0
1
1
0
31
0
1
0
0
1
0
5
0
2
0
1
1
0
32
1
5
2
3
36
74
39
82
1
2
1
4
19
41
21
47
3
5
2
9
49
114
54
128
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
15
1
0
3
0
0
0
29
1
2
3
0
1
0
140
1
0
3
0
0
0
31
1
2
3
0
1
0
155
0
3
8
19
82
182
90
204
1
2
0
0
5
9
6
11
1
7
15
47
345
960
361
1,014
1
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
2
4
9
5
1
4
0
25
12
19
8
1
8
4
141
5
9
5
1
4
0
26
14
19
8
1
8
4
143
0
1
1
2
24
69
25
72
4
7
2
4
72
195
78
206
3
8
6
10
191
501
200
519
- 101 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
発生場面×影響度
療養上の世話に関する項目
計画又は指示
手書きによる計画又は指示の作成
オーダリングによる計画又は指示の作成
口頭による計画又は指示
手書きによる計画又は指示の変更
オーダリングによる計画又は指示の変更
口頭による計画又は指示の変更
その他の計画又は指示に関する場面
管理・準備・実施
管理
準備
実施中
その他
合計
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
死亡もしくは重篤な状況 濃 厚 な 処 置・ 治 療 が 必 軽微な処置・治療が必要
もしくは 処 置・ 治 療 が
に至ったと考えられる
要であると考えられる 不要と考えられる
合 計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1 月∼9月
1 月∼9月
1 月∼9月
1 月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
0
6
1
3
2
0
1
1
42
4
8
3
0
3
4
246
1
3
2
0
1
1
43
4
8
3
0
4
4
252
0
0
3
10
70
4
0
9
32
176
3
3
16
12
155
12
3
44
31
418
189
36
397
311
3,632
492
94
1,074
975
9,946
192
39
416
333
3,857
508
97
1,127
1,038
10,540
- 102 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 3- 24 (QH-65)
事例の内容 × 影響度
事例の内容×影響度
死亡もしくは重篤な状況 濃厚な処置・治療が必要 軽微な処置・治療が必要
もしくは 処 置・ 治 療 が
に至ったと考えられる
であると考えられる
不要と考えられる
合 計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
薬剤に関する項目
処方
処方忘れ
処方遅延
処方量間違い
重複処方
禁忌薬剤の処方
対象患者処方間違い
処方薬剤間違い
処方単位間違い
投与方法処方間違い
その他の処方に関する内容
調剤
調剤忘れ
処方箋・注射箋鑑査間違い
秤量間違い調剤
数量間違い
分包間違い
規格間違い調剤
単位間違い調剤
薬剤取り違え調剤
説明文書の取り違え
交付患者間違い
薬剤・製剤の取り違え交付
期限切れ製剤の交付
その他の調剤に関する内容
製剤管理
薬袋・ボトルの記載間違い
異物混入
細菌汚染
期限切れ製剤
その他の製剤管理に関する内容
与薬準備
過剰与薬準備
過少与薬準備
与薬時間・日付間違い
重複与薬
禁忌薬剤の与薬
投与速度速すぎ
投与速度遅すぎ
患者間違い
薬剤間違い
単位間違い
投与方法間違い
無投薬
混合間違い
その他の与薬準備に関する内容
与薬
過剰投与
過少投与
投与時間・日付間違い
重複投与
禁忌薬剤の投与
投与速度速すぎ
投与速度遅すぎ
患者間違い
薬剤間違い
単位間違い
投与方法間違い
無投薬
その他の与薬に関する内容
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
2
0
1
0
0
1
0
3
4
0
0
0
0
0
0
0
1
6
5
0
5
2
2
0
2
0
2
7
43
3
27
2
2
5
9
7
10
44
154
5
59
11
7
12
22
8
17
111
47
3
27
2
2
5
9
7
11
51
159
5
66
13
10
12
24
9
19
121
0
0
0
0
0
1
0
3
0
0
0
0
2
0
0
0
3
0
1
0
7
0
0
0
0
4
0
2
0
0
0
2
0
2
0
0
1
0
1
0
2
0
1
0
3
0
7
0
0
2
0
5
9
17
1
30
4
20
4
34
0
3
6
0
46
18
35
3
79
14
48
7
99
2
12
15
1
117
9
19
1
30
4
23
4
39
0
3
7
0
49
18
37
3
83
14
52
7
113
2
12
17
1
126
0
0
0
0
1
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
6
4
0
0
2
40
10
0
0
4
107
4
0
0
2
41
10
0
0
4
115
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
1
1
0
0
0
0
0
0
2
1
1
0
2
2
1
1
0
0
1
0
0
2
1
1
1
0
1
2
4
1
1
1
2
0
0
6
5
2
1
4
1
6
11
13
31
3
1
6
2
10
17
6
6
43
8
73
38
38
57
13
3
10
5
30
57
12
13
102
18
202
13
14
31
3
2
6
2
12
18
7
7
43
9
77
43
40
58
14
5
10
5
36
64
15
15
106
21
210
1
1
0
0
0
0
0
1
0
0
1
4
3
2
1
2
0
0
0
0
3
1
0
2
5
5
7
2
2
0
0
3
0
1
2
1
3
12
6
14
5
5
2
0
6
0
5
3
1
5
18
17
120
114
95
27
10
44
15
19
29
8
31
308
146
318
297
239
66
27
119
37
62
78
15
80
812
370
128
117
97
27
10
47
15
21
31
9
35
324
155
334
303
246
68
27
125
37
70
82
16
87
835
392
- 103 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
事例の内容×影響度
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
死亡もしくは重篤な状況 濃厚な処置・治療が必要 軽微な処置・治療が必要
もしくは 処 置・ 治 療 が
に至ったと考えられる
であると考えられる
不要と考えられる
合 計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
輸血に関する項目
指示出し
指示出し忘れ
指示遅延
指示量間違い
重複指示
禁忌薬剤の指示
対象患者指示間違い
指示薬剤間違い
指示単位間違い
投与方法指示間違い
その他の指示出しに関する内容
輸血検査
未実施
検体取り違え
判定間違い
結果記入・入力間違い
その他の輸血検査に関する内容
放射線照射
未実施
過剰照射
過少照射
患者間違い
製剤間違い
その他の放射線照射に関する内容
輸血管理
薬袋・ボトルの記載間違い
異物混入
細菌汚染
期限切れ製剤
その他の輸血管理に関する内容
輸血準備
過剰与薬準備
過少与薬準備
与薬時間・日付間違い
重複与薬
禁忌薬剤の与薬
投与速度速すぎ
投与速度遅すぎ
患者間違い
薬剤間違い
単位間違い
投与方法間違い
無投薬
その他の輸血準備に関する内容
輸血実施
過剰投与
過少投与
投与時間・日付間違い
重複投与
禁忌薬剤の投与
投与速度速すぎ
投与速度遅すぎ
患者間違い
薬剤間違い
単位間違い
投与方法間違い
無投薬
その他の輸血実施に関する内容
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
1
0
0
0
5
2
2
0
0
8
1
0
0
0
6
2
2
0
0
9
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
13
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
13
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
1
1
0
0
0
1
0
7
1
0
0
0
0
1
3
0
0
1
1
0
14
1
0
0
0
0
1
1
0
0
0
1
0
7
1
0
0
0
0
1
3
0
0
1
1
0
15
- 104 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
事例の内容×影響度
治療・処置に関する項目
指示
指示出し忘れ
指示遅延
対象患者指示間違い
治療・処置指示間違い
日程間違い
時間間違い
その他の治療・処置の指示に関する内容
管理
治療・処置の管理
その他の治療・処置の管理に関する内容
準備
医療材料取り違え
患者体位の誤り
消毒・清潔操作の誤り
その他の治療・処置の準備に関する内容
実施
患者間違い
部位取違え
方法(手技)の誤り
未実施・忘れ
中止・延期
日程・時間の誤り
順番の誤り
不必要行為の実施
誤嚥
誤飲
異物の体内残存
診察・治療・処置等その他の取違え
その他の治療・処置の実施に関する内容
医療機器等・医療材料の使用・管理に関する項目
指示
指示出し忘れ
指示遅延
対象患者指示間違い
使用方法指示間違い
その他の医療機器等・医療材料の
使用に関する内容
管理
保守・点検不良
保守・点検忘れ
使用中の点検・管理ミス
破損
その他の医療機器等・医療材料の
管理に関する内容
準備
組み立て
設定条件間違い
設定忘れ
電源入れ忘れ
警報設定忘れ
警報設定範囲間違い
便宜上の警報解除後の再設定忘れ
消毒・清潔操作の誤り
使用前の点検・管理ミス
破損
その他の医療機器等・医療材料の
準備に関する内容
死亡もしくは重篤な状況 濃厚な処置・治療が必要 軽微な処置・治療が必要
もしくは 処 置・ 治 療 が
に至ったと考えられる
であると考えられる
不要と考えられる
合 計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
6
3
1
2
4
2
2
9
5
2
11
0
0
0
6
3
1
2
4
2
2
9
5
2
14
0
1
0
3
0
1
5
3
10
5
24
21
10
7
29
27
1
0
0
2
1
0
0
5
0
0
0
3
0
1
1
6
0
0
2
32
3
2
5
80
1
0
2
37
4
3
6
91
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
15
1
0
1
0
0
0
0
2
0
0
0
0
20
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
4
0
0
4
1
0
1
0
0
0
0
1
0
12
2
0
11
9
0
2
0
3
0
0
2
2
55
5
4
20
27
1
3
0
9
1
0
12
3
122
2
0
12
9
0
2
0
4
0
0
2
2
74
6
4
25
28
1
4
0
11
1
0
13
3
154
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
1
0
0
1
0
0
0
1
1
0
0
1
1
2
5
3
6
0
0
1
0
0
0
4
0
0
0
1
0
0
0
3
0
3
4
13
3
8
6
37
5
3
4
15
3
8
6
44
5
0
1
0
0
14
34
14
35
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
1
0
1
2
2
3
0
0
1
0
6
1
6
4
4
5
0
0
1
2
13
1
2
2
2
3
0
0
1
0
6
1
7
4
4
5
0
0
1
2
15
1
1
2
1
3
5
12
7
17
- 105 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
事例の内容×影響度
使用
医療機器等・医療材料の不適切使用
誤作動
故障
破損
その他の医療機器等・医療材料の
使用に関する内容
ドレーン・チューブ類の使用・管理に関する項目
指示
指示出し忘れ
指示遅延
対象患者指示間違い
使用方法指示間違い
その他のドレーン・チューブ類の
使用・管理の指示に関する内容
管理
点検忘れ
点検不良
使用中の点検・管理ミス
破損
その他のドレーン・チューブ類の
管理に関する内容
準備
組み立て
設定条件間違い
設定忘れ
消毒・清潔操作の誤り
使用前の点検・管理ミス
その他のドレーン・チューブ類の
準備に関する内容
使用
点滴漏れ
自己抜去
自然抜去
接続はずれ
未接続
閉塞
切断・破損
接続間違い
三方活栓操作間違い
ルートクランプエラー
空気混入
誤作動
故障
ドレーン・チューブ類の不適切使用
その他のドレーン・チューブ類の
使用に関する内容
検査に関する項目
指示
指示出し忘れ
指示遅延
対象患者指示間違い
指示検査の間違い
その他の検査の指示に関する内容
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
死亡もしくは重篤な状況 濃厚な処置・治療が必要 軽微な処置・治療が必要
もしくは 処 置・ 治 療 が
に至ったと考えられる
であると考えられる
不要と考えられる
合 計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
1
1
0
0
1
1
0
0
1
0
1
0
2
0
4
0
9
3
3
7
23
7
11
21
11
4
4
7
26
8
15
21
1
2
0
2
27
57
28
61
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
2
0
0
0
1
0
0
0
2
0
1
0
0
5
10
5
11
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
4
1
0
1
5
4
1
1
15
0
3
4
41
6
1
1
19
1
3
5
46
10
0
2
1
7
54
116
55
125
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
2
3
0
1
0
2
1
0
0
0
3
3
0
1
0
3
0
1
0
0
1
3
1
4
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
2
0
0
1
0
0
0
1
0
0
1
1
6
5
0
0
0
1
1
2
0
0
0
0
2
2
32
10
1
0
2
6
1
2
2
0
0
0
3
9
252
28
27
3
12
10
5
12
5
1
0
0
3
29
712
92
69
5
34
43
7
21
22
2
0
0
14
10
259
33
27
3
12
11
6
14
5
1
0
0
5
31
746
102
72
5
36
50
8
23
24
3
0
0
18
0
0
1
3
17
57
18
60
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
0
0
1
0
1
6
3
1
8
22
8
7
2
12
54
6
3
1
8
24
8
7
3
12
56
- 106 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
事例の内容×影響度
管理
分析機器・器具管理
試薬管理
データ紛失
計算・入力・暗記
その他の検査の管理に関する内容
準備
患者取違え
検体取違え
検体紛失
検査機器・器具の準備
検体破損
その他の検査の準備に関する内容
実施
患者取違え
検体取違え
試薬の間違い
検体紛失
検査の手技・判定技術の間違い
検体採取時のミス
検体破損
検体のコンタミネーション
データ取違え
結果報告
その他の検査の実施に関する内容
療養上の世話に関する項目
計画又は指示
計画忘れ又は指示出し忘れ
計画又は指示の遅延
計画又は指示の対象患者間違い
計画又は指示内容間違い
死亡もしくは重篤な状況 濃厚な処置・治療が必要 軽微な処置・治療が必要
もしくは 処 置・ 治 療 が
に至ったと考えられる
であると考えられる
不要と考えられる
合 計
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
2016 年
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
1月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
7月∼9月
(累計)
(累計)
(累計)
(累計)
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
0
0
0
3
19
4
0
0
7
65
0
0
0
3
20
4
0
0
7
66
0
0
0
0
0
4
0
0
0
0
0
7
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
4
4
4
0
11
0
54
14
15
2
27
0
142
4
4
0
11
0
60
14
15
2
27
0
153
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
2
1
0
0
0
0
1
0
0
0
1
6
1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
4
1
1
0
0
1
1
0
0
0
0
8
16
3
2
9
10
26
3
1
1
17
112
34
12
3
22
40
73
8
2
7
41
357
17
4
2
9
10
27
3
1
1
17
118
36
13
3
22
41
75
8
2
7
42
371
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
1
0
0
2
0
1
3
5
1
3
5
2
1
1
3
6
2
3
5
0
0
0
0
8
22
8
22
拘束・抑制
0
0
0
0
1
6
1
6
給食の内容の間違い
0
0
0
0
6
37
6
37
安静指示
禁食指示
外出・外泊許可
異物混入
転倒
転落
衝突
誤嚥
誤飲
誤配膳
遅延
実施忘れ
搬送先間違い
患者間違い
延食忘れ
中止の忘れ
自己管理薬飲み忘れ・注射忘れ
自己管理薬注入忘れ
自己管理薬取違え摂取
不必要行為の実施
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
4
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
16
5
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
42
12
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
8
10
5
8
382
101
2
2
1
11
2
11
0
12
0
3
9
0
1
3
16
26
22
13
1,079
322
11
2
3
28
4
37
3
19
1
4
14
0
10
11
8
10
5
8
399
107
2
2
1
11
2
11
0
12
0
3
9
0
1
3
17
27
22
13
1,125
336
11
2
3
28
4
37
3
19
1
4
14
0
10
11
その他の療養上の世話の管理・準備・
実施に関する内容
1
6
1
9
80
224
82
239
10
70
32
176
12
155
31
418
311
3,632
975
9,946
333
3,857
1,038
10,540
その他の療養上の世話の計画又は
指示に関する内容
管理・準備・実施
その他
合計
- 107 -
Ⅱ
Ⅱ 報告の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅱ - 3- 25 (QH-67)
発生要因×事例の概要
薬剤
輸血
治療・処置
2016 年
7月∼9月
確認を怠った
2,580
7,284
28
74
177
535
168
391
観察を怠った
438
1,230
0
15
51
164
44
114
報告が遅れた(怠った)
89
244
2
9
10
34
5
12
記録などに不備があった
117
323
4
8
9
32
11
20
連携ができていなかった
517
1,576
14
32
53
159
37
94
患者への説明が不十分で
あった(怠った)
251
690
2
2
8
46
3
12
判断を誤った
439
1,249
11
23
61
163
14
59
知識が不足していた
491
1,288
9
22
45
122
41
101
技術・手技が未熟だった
312
831
0
6
45
122
29
66
勤務状況が繁忙だった
764
2,464
10
29
32
128
30
92
発生要因×事例の概要
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月
(累計)
医療機器等
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月
(累計)
当事者の行動に関わる要因
ヒューマンファクター
通常とは異なる身体的
条件下にあった
通常とは異なる心理的
条件下にあった
44
142
2
4
1
9
4
7
208
797
2
7
7
63
3
22
その他
287
972
2
12
28
85
17
56
91
280
3
8
4
19
7
18
384
1,035
0
3
6
16
2
4
医療機器
30
73
0
1
10
58
80
188
施設・設備
29
93
1
3
4
11
5
19
諸物品
23
68
2
4
11
27
10
25
患者側
138
379
0
2
24
72
3
6
その他
89
302
0
7
12
38
5
22
教育・訓練
433
1,184
4
18
36
98
29
86
仕組み
137
373
3
5
15
39
21
48
ルールの不備
260
633
9
19
12
50
31
54
その他
260
901
4
9
24
91
22
54
8,411
24,411
112
322
685
2,181
621
1,570
環境・設備機器
コンピュータシステム
医薬品
その他
合計
※発生要因は複数回答が可能である。
- 108 -
3 ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
,
ドレーン・チューブ
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月
(累計)
検査
2016 年
7月∼9月
療養上の世話
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月
(累計)
その他
2016 年
7月∼9月
合計
2016 年
1月∼9月
(累計)
2016 年
7月∼9月
2016 年
1月∼9月
(累計)
10,207
30,817
450
1,423
422
1,274
408
1,338
537
1,601
4,770
13,920
500
1,574
35
129
453
1,430
182
527
1,703
5,183
10
35
19
69
12
47
21
87
168
537
5
18
11
65
11
51
71
150
239
667
97
329
109
374
138
458
133
420
1,098
3,442
135
486
29
83
336
1,025
106
319
870
2,663
309
1,100
50
196
346
1,201
129
414
1,359
4,405
4,159
13,469
65
240
75
222
104
271
78
210
908
2,476
83
273
37
96
66
184
41
129
613
1,707
209
715
102
368
207
757
137
455
1,491
5,008
10
38
8
21
21
65
10
27
100
313
39
177
28
144
38
173
43
195
368
1,578
100
397
65
195
80
334
100
336
679
2,387
2,158
6,322
2
8
32
99
7
27
37
126
183
585
12
39
6
16
11
27
6
17
427
1,157
22
75
9
33
4
17
12
39
167
484
6
60
7
26
78
220
11
39
141
471
15
69
15
35
52
148
37
86
165
462
226
684
11
38
377
1,039
56
166
835
2,386
20
65
26
76
37
116
51
151
240
777
2,554
7,618
73
282
39
131
127
395
64
185
805
2,379
21
62
28
77
25
63
31
90
281
757
25
73
43
128
41
123
51
148
472
1,228
99
339
42
177
71
324
474
1,359
996
3,254
2,533
8,561
1,248
4,072
3,050
9,833
2,418
7,276
19,078
58,226
- 109 -
Ⅱ
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
1 概況
【1】分析対象とするテーマの選定状況
本事業においては、収集された情報を基に、医療事故の発生予防・再発防止に資する情報提供を行
うために、分析対象とするテーマを設定し、そのテーマに関連する事例をまとめて分析、検討を行っ
ている。テーマは、①一般性・普遍性、②発生頻度、③患者への影響度、④防止可能性、⑤教訓性といっ
た観点から、専門家の意見を踏まえ選定している。なお、医療事故情報とヒヤリ・ハット事例を総合
的に検討するテーマについては、ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業において収集期間ごとに
定められたテーマに該当する事例情報を収集し、分析している。
本報告書における分析テーマについて図表Ⅲ - 1- 1に示す。
図表Ⅲ - 1- 1 本報告書における分析テーマ
①前方視的分析を行うテーマ
(テーマに該当するヒヤリ・ハット事例を1年間収集しながら、医療事故情報と総合的に分析するテーマ)
・腫瘍用薬に関連した事例
②後方視的分析を行うテーマ
(7∼9月に報告された医療事故情報の中からテーマを設定し、同種事例を過去に遡って活用し分析する
テーマ)
・歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例
・小児用ベッドからの転落に関連した事例
【2】分析対象とする情報
本報告書対象期間内に収集した医療事故情報及びヒヤリ・ハット事例のうち、対象とするテーマに
関連する情報を有している事例を抽出し、分析対象とした。
さらに、分析の必要性に応じて、本報告書対象期間外の過去の事例についても、抽出期間を設定し
た上で、同様の抽出を行い、分析対象とした。
- 110 -
1 概況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
【3】分析体制
医療安全に関わる医療専門職、安全管理の専門家などで構成される専門分析班を月1回程度の頻度
で開催し、本事業で収集された事例の概要の把握を行っている。その上で、新たな分析テーマに関す
る意見交換や、すでに分析対象となっているテーマについての分析の方向性の検討、助言などを行っ
ている。
さらに、事例の集積の程度や専門性に応じて設置が必要と判断されたテーマについては、テーマ別
専門分析班を設置し、分析を行っている。テーマ別専門分析班の開催頻度は報告書での公表のタイミ
ングや事例の集積の程度に応じて全体で月1∼2回程度としている。また、テーマによってはテーマ
別専門分析班を設置せず、専門分析班の助言を得ながら当事業部の客員研究員や事務局員が分析を
行っている。
最終的に専門分析班、テーマ別専門分析班の意見を踏まえ、当事業部で分析結果を取りまとめ、
総合評価部会の審議を経て分析結果の公表を行っている。
Ⅲ
【4】追加情報の収集
専門分析班において、医療機関から報告された事例の記述内容を分析する上で、さらに詳細な
事実関係を把握する必要があると判断される事例に関しては、文書による問い合わせや、医療機関の
協力を得て現地状況確認調査を行っている。追加情報の内容は、医療安全対策を検討するために活用
している。医療機関への現地状況確認調査は、2016年7月1日から9月30日までに4事例の調
査を実施した。
概況
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
- 111 -
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
2 個別のテーマの検討状況
【1】腫瘍用薬に関連した事例 ③「指示、調剤、準備、患者への説明・指導」の事例
がん治療において腫瘍用薬(抗がん薬)を用いた薬物療法は、手術療法や放射線療法とともに重要
である。腫瘍用薬を用いた薬物療法は、がんの治癒及び患者のQOLを高めることを目的とし、対象
疾患も多く、治療法、使用する薬剤も様々である。腫瘍用薬は単剤で使用することもあるが、多くは
複数の薬剤を組み合せた多剤併用療法がなされている。また、腫瘍用薬を投与する際の副作用の軽減
などを目的とした支持療法に用いる制吐剤や抗アレルギー薬などの薬剤と併用することも多い。
腫瘍用薬は、がん細胞に効果がある一方で、正常な細胞に損傷を与える危険もある。そのため、
医療機関では、腫瘍用薬を用いる化学療法に関して、科学的根拠に基づき薬剤の種類、投与量、投与方
法、投与期間、投与日、投与順などを決定し、時系列に明記した治療計画を作成し、院内の委員会で審
査した上でレジメン登録し実施するなど、組織的な管理がなされている。さらに、患者の治療過程に
おいては、患者の状態把握、治療効果の判断が重要であり、医師のみならず、薬剤師や看護師などが
レジメンや患者の病態などの情報を共有し、安全に治療できるよう、チームで取り組んでいる。
厚生労働科学研究「
『医薬品の安全使用のための業務手順書』作成マニュアル(2007年3月)
」1)
において、抗がん剤は特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)の投与等に注意が必要な医薬品とさ
れている。また、一般社団法人日本病院薬剤師会による「ハイリスク薬に関する業務ガイドライン
(Ver.2.2)(2016年6月4日改訂)」2)では、抗悪性腫瘍薬はハイリスク薬に該当している。
本事業では、報告された事例を基に、これまでに腫瘍用薬に関連する医療安全情報を3回提供し、
事例を紹介するとともに注意喚起を行ってきた(第45回報告書114頁 図表Ⅲ - 2- 1)。また、
第18回報告書(2009年9月公表)及び第20回報告書(2010年3月公表)では「化学療法
に関連した医療事故」として主な事例の紹介を行った。さらに、第34回報告書(2013年6月公
表)では「リツキシマブ製剤投与後のB型肝炎再活性化に関連した事例」を分析テーマとして取り上げ、
発生要因の分析やB型肝炎治療ガイドラインの紹介を行った。
腫瘍用薬は主に複数の薬剤を使用すること、患者の体表面積や体重によって投与量が決定されるこ
と、当日の検査値などから減量や投与中止の判断など薬剤の取り扱いに注意が必要なこと、患者への
影響が大きいことなどから、医療事故情報およびヒヤリ・ハット事例が本事業に多数報告されている。
そこで、本事業では腫瘍用薬に関連した医療事故情報やヒヤリ・ハット事例を個別のテーマとして
取り上げ、事例を1年間継続的に収集し、4回の報告書にわたって分析を進めることとした。第45回
報告書では、医療事故情報やヒヤリ・ハット事例を概観し、第46回報告書では、「レジメン登録」
「治療計画」
「処方」の事例を取り上げ、分析を行った。今回は、本報告書の分析対象期間(2016年
7月∼9月)に報告された事例を追加して現状を紹介するとともに、報告された事例の中から発生段
階が「指示」「調剤」「準備」「患者への説明・指導」に該当する事例を取り上げて分析を行った。
- 112 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(1)腫瘍用薬に関連した医療事故情報の現状
①腫瘍用薬に関連した医療事故情報の考え方
本分析の対象は、2010年以降に報告された医療事故情報のうち、以下のキーワードを含む事
例を検索し、その中で、腫瘍用薬やその作用、薬剤の投与中の管理に関わる事例を対象とした。また、
腫瘍用薬を投与する際、副作用の軽減のため支持療法として投与される薬剤に関わる事例も対象と
した。
なお、本分析では、腫瘍用薬投与中の患者の転倒、転落、誤飲、誤嚥、自殺などに関連した事例
や留置されているカテーテルの腫瘍用薬を投与している時以外の管理に関する事例、医薬品の臨床
試験に関連した事例などは対象に含めないこととした。
キーワード
腫瘍用薬
抗がん剤
抗癌剤
腫瘍薬
腫瘍剤
プロトコール
プロトコル
レジメン
ケモ
化学療法
Ⅲ
②発生状況
前回の第46回報告書では、2010年1月から2016年6月までに報告された医療事故情報
のうち、上記の基準に合致する腫瘍用薬に関連した医療事故情報250件の分析を行った。今回は、
分析対象期間(2016年7月∼9月)に報告された25件を追加し、
275件を分析の対象とした。
報告された事例について、事例の内容と発生段階で整理し、発生状況を集計した(図表Ⅲ - 2- 1)
。
事例の内容としては、「薬剤の血管外漏出・血管炎」が最も多く87件であり、次いで「腫瘍用
段階では、「実施に伴う確認・観察」が最も多く155件、次いで「処方」が50件と多かった。
図表Ⅲ - 2- 1 発生状況(医療事故情報)
事例の内容
薬剤量間違い
薬剤 対象者
間違い 間違い
過剰
過少
不明
カテー 腫瘍用
薬剤の カテー テル 薬投与
投与日
・
血管外 テル
投与
投与
支持
投与
中の
中止時
・
ポート
外れ
漏出
経路 無投与
時間
速度
状態の 療法の その他
の不具合
の投与
日数
・
・
間違い
間違い 間違い
悪化 間違い
・
間違い
血管炎 漏れ 取り扱い(副作用
間違い 等)
合計
レジメン登録
0
0
3
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
治療計画
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
2
処方
5
1
24
2
0
0
4
4
0
1
2
0
0
0
0
6
1
50
指示出し
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
2
0
0
0
0
0
1
5
指示受け
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
1
指示
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
4
調製
0
0
8
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
10
その他
0
0
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
患者への説明・指導
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
実施
3
5
0
0
0
7
2
1
8
4
0
0
0
4
0
3
1
38
実施に伴う確認・観察
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
87
9
0
57
0
1
155
発生段階
その他
調剤
準備
その他
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
2
合 計
10
6
38
2
0
10
7
8
8
7
4
87
9
4
57
10
8
275
- 113 -
腫瘍用薬に関連した事例
③﹁指示、調剤、準備、患者への説明・指導﹂の事例
薬投与中の状態の悪化(副作用等)
」が57件、
「薬剤量間違い/過剰」が38件と多かった。発生
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(2)腫瘍用薬に関連したヒヤリ・ハット事例の現状
①腫瘍用薬に関連したヒヤリ・ハット事例の考え方
2016年1月から12月までの1年間、ヒヤリ・ハット事例の今期のテーマとして「腫瘍用薬
に関連したヒヤリ・ハット事例」を収集している。分析対象は、医療事故情報と同様に、以下のキー
ワードを含む事例を検索し、その中で、腫瘍用薬やその作用、薬剤の投与中の管理に関わる事例を
対象とした。また、腫瘍用薬を投与する際、副作用の軽減のため支持療法として投与される薬剤に
関わる事例も対象とした。
なお、医療事故情報と同様に、腫瘍用薬投与中の患者の転倒、転落、誤飲、誤嚥、自殺などに
関連した事例や留置されているカテーテルの腫瘍用薬を投与している時以外の管理に関する事例、
医薬品の臨床試験に関連した事例は対象に含めないこととした。
キーワード
腫瘍用薬
抗がん剤
抗癌剤
腫瘍薬
腫瘍剤
プロトコール
プロトコル
レジメン
ケモ
化学療法
②発生状況
前回の第46回報告書では、2016年1月から6月までに報告されたヒヤリ・ハット事例のうち、
上記の基準に合致する腫瘍用薬に関連したヒヤリ・ハット事例374件の分析を行った。今回は、
分析対象期間(2016年7月∼9月)に報告された241件を追加し、615件を分析の対象
とした。報告された事例について、事例の内容と発生段階で整理し、発生状況を集計した(図表
Ⅲ - 2- 2)。
事例の内容としては、
「薬剤の血管外漏出・血管炎」が118件、
「無投与」と「支持療法の間違い」
がそれぞれ70件と多かった。発生段階では、
「実施」が252件と多く、
腫瘍用薬に関連したヒヤリ・
ハット事例全体の41%を占めていた。
図表Ⅲ - 2- 2 発生状況(ヒヤリ・ハット事例)
事例の内容
薬剤量間違い
薬剤 対象者
間違い 間違い
過剰
過少
不明
カテー 腫瘍用
薬剤の カテー テル 薬投与
投与日
・
血管外 テル
投与
支持
投与
中の
投与
中止時
・
ポート
外れ
漏出
経路 無投与
時間
状態の 療法の その他
速度
の不具合
の投与
日数
・
・
間違い
悪化 間違い
間違い 間違い
・
間違い
血管炎 漏れ 取り扱い(副作用
間違い 等)
合計
レジメン登録
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
治療計画
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
処方
6
0
10
13
2
0
1
5
0
5
1
0
0
0
0
5
10
58
指示出し
0
0
1
0
0
0
1
2
0
3
3
0
0
0
0
2
1
13
指示受け
0
0
0
0
0
1
1
5
0
5
8
0
0
0
0
7
2
29
その他
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
調剤
4
4
5
5
0
0
0
2
0
0
2
0
0
0
0
0
1
23
調製
6
2
13
2
1
1
0
2
0
2
6
0
0
0
0
1
6
42
その他
0
0
2
0
0
0
1
1
0
0
0
0
1
15
0
1
8
29
患者への説明・指導
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
4
5
実施
6
3
4
3
1
56
39
6
2
55
0
0
2
10
0
51
14
252
実施に伴う確認・観察
0
0
0
0
0
3
0
0
0
0
0
118
22
0
4
0
5
152
その他
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
2
8
11
合 計
22
9
35
23
4
61
44
23
2
70
20
118
25
25
4
70
60
615
指示
発生段階
準備
- 114 -
1
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(3)「指示」に関する医療事故情報およびヒヤリ・ハット事例の分析
①発生状況
発生段階が「指示」の事例は医療事故情報が6件、ヒヤリ・ハット事例が42件であった。事例
の内容は、中止時の投与が13件と最も多く、支持療法の間違いが10件、無投与が8件などであっ
た。「指示」の事例が腫瘍用薬に関する事例全体に占める割合は、医療事故情報の2.2%、ヒヤリ・
ハット事例の6.8%であった。
図表Ⅲ - 2- 3 「指示」の事例の発生状況
医療事故情報
ヒヤリ・ハット事例
合計
指示出し
薬剤量間違い
過剰
指示受け
小計
指示出し
指示受け
%
小計
0
0
0
1
0
1
1
2.
1%
投与速度間違い
1
0
1
0
1
1
2
4.
2%
投与時間間違い
1
0
1
1
1
2
3
6.
3%
投与日・日数間違い
0
0
0
2
5
7
7
14.
6%
無投与
0
0
0
3
5
8
8
16.
7%
中止時の投与
2
0
2
3
8
11
13
27.1%
支持療法の間違い
0
1
1
2
7
9
10
20.
8%
その他
1
0
1
1
2
3
4
8.
3%
合計
5
1
6
13
29
42
48
100.
0%
②事例の内容
Ⅲ - 2- 4に示す。
図表Ⅲ - 2- 4 「指示」の事例の内容及び専門分析班・総合評価部会の議論
No.
報告事例
事故の内容
事故の背景要因
改善策
指示出し/無投与
ヒヤリ・
ハット
事例
1
左腎臓摘出術を施行した。乳癌の 術後5日目、タモキシフェン錠を内服し ・ 術後の内服薬について
主治医に確認し、指示
既 往 に 対 し て 術 前 か ら タ モ キ シ ていないことが判明した。
を出してもらう。
フェン錠20mgを内服していた。
術後、嘔気が強くなかなか食事摂
取が進まなかった。本日朝、患者
本人から「乳癌の薬を術後から飲
んでないんですけど、いいですか」
と質問があった。術後の内服薬に
ついての指示はなく、主治医の記
録に、
「手術で飲水中止中のみ薬剤
の投与を中止で問題ないことを薬
剤部に確認した」と記録があった。
専門分析班・総合評価部会の議論
○手術で絶飲食になった際に中止した腫瘍用薬を術後に再開することを忘れた事例である。
○ 中止の指示はされるが再開は忘れがちであるため、事例のように術後の飲水が可能になれば再開することが可能な
薬剤に関しては、パスやカレンダー機能で、事前に再開を入力しておくとよいだろう。
- 115 -
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
腫瘍用薬に関連した事例
③﹁指示、調剤、準備、患者への説明・指導﹂の事例
「指示」に関する代表的な事例を取り上げ、専門分析班および総合評価部会の議論を付して図表
Ⅲ
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
No.
報告事例
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
事故の内容
事故の背景要因
改善策
指示出し/中止時の投与
ヒヤリ・
ハット
事例
2
ティーエスワン配合OD錠が1日 ティーエスワン配合OD錠の内服に関し ・ 処方カレンダー上で中
2回朝・夕に投与されていたが、 て、指示簿上で終了実施があり、内服中 止指示を行う。
副作用による血球減少のため中止 止等の文言がなかったため看護師に伝わ ・ 必要時には、指示簿に
となった。医師はティーエスワン らなかった。医師は、処方カレンダー上 も中止指示を入力し、
配合OD錠内服中止に関して指示 で中止指示を行わなかったため、処方カ 情報共有を行う。
簿 上 で 終 了 実 施 は 行 っ た が、 処 レンダー上にはティーエスワン配合OD ・ 内服中止の指示が出た
方カレンダーで中止指示を行わな 錠を与薬する状態で残ってしまった。薬 時点で、中止する薬剤
かった。中止後2日目、
看護師Aは、 袋に「○日∼○日分」とコメント入力さ の処理を行う。
翌日の内服準備を行った。この時 れていたが、中止処理がされない状態で
ティーエスワン配合OD錠の薬袋 残っていたため、看護師Aは配薬準備を
には「○日から○日分」とコメン 行い患者に与薬した。
トが印字されていたため、看護師
Aは、印字通りに内服準備を行っ
た。その後、処方カレンダーを用
いて看護師Bとダブルチェックを
行い、朝の薬を患者に与薬した。
夕方、中止中のティーエスワン配
合OD錠が患者の配薬箱に準備さ
れていたことに疑問を持った看護
師Cが、誤投与を発見した。医師
へ報告を行い経過観察となった。
専門分析班・総合評価部会の議論
○ 指示簿と処方カレンダーは連動していることが多いが、事例のように指示の入力や記載が複数必要になると意図し
た指示が伝わらない可能性が高まる。できるだけシステム内で指示簿と処方カレンダーを連動させることを検討す
ることが重要である。
○事例のように指示変更する場合、医師と看護師が情報のやり取りをどう共有するか検討しておく必要がある。
- 116 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
No.
報告事例
事故の内容
事故の背景要因
改善策
指示受け/中止時の投与
ヒヤリ・
ハット
事例
3
・ 指 示 は 速 や か に メ ン
バーに伝える。
・ 再開する可能性があり
一旦中止している場合
は中止していることが
わかるよう輸液ポンプ
に付箋を貼って表記す
るか撤去する。
・ 輸液ポンプの電源が切
られている点滴を発見
した際には、必ず指示
簿を確認しリーダーに
声をかける。
・ 思い込むのではなく、
少しでも疑問に思った
ことは必ずリーダー、
ペアに相談する。
・ 点滴投与時の手順を遵
守する。
・ キロサイド注投与時は
腫瘍量や好中球量に
よって流量が変動する
ことを理解する。
専門分析班・総合評価部会の議論
○ リーダー看護師Aは、医師がキロサイド注を中止にした意図を知っていれば、キロサイド注を速やかに片付けた可
能性がある。治療の目的を明確にし、共有することは重要である。
○ リーダー看護師Aには、一度中止した腫瘍用薬を再開したという経験があるのかも知れない。指示の際に、
「中止」
なのか再開の可能性がある「一時的な中止」なのか、明確に伝える必要がある。
③「指示」の「中止時の投与」の事例の分析
「指示」に関する医療事故情報6件、ヒヤリ・ハット事例42件のうち、報告件数の多かった
「中止時の投与」の事例に着目して、医療事故情報2件とヒヤリ・ハット事例11件を総合的に分
析した。なお、指示出しや指示受けの際に、投与中止の連絡や伝達が適切に行われず、薬剤の調製
に至った事例も「指示」に含んでいる。
- 117 -
Ⅲ
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
腫瘍用薬に関連した事例
③﹁指示、調剤、準備、患者への説明・指導﹂の事例
入院時から血中腫瘍量が多く化学 <リーダー看護師A>
療法(キロサイド注を24時間持 中止の指示を受けた際、キロサイド注の
続投与)を施行していた。血中腫 輸液ポンプの電源がOFFになっている
瘍 量 が 減 少 し た た め 本 日 1 1 時 ことを確認したが撤去しなかった。主治
30分に中止の指示が出ており、 医にキロサイド注を再開する予定がある
リーダー看護師Aが確認した。主 か否かを確認した後に、看護師Bに伝え
治医は11時30分に点滴ルート ようと思っていた。中止にしたキロサイ
に接続したままの状態でクレンメ ド注が再開されてしまう可能性を考慮し
を閉じ、キロサイド注の輸液ポン ていなかった。
プ の 電 源 を O F F に し た。 リ ー <看護師B>
ダー看護師Aは患者の部屋を訪室 輸液ポンプのバッテリーがなくなりそう
し、キロサイド注を投与している だったので、リーダー看護師Aがキロサ
輸液ポンプの電源がOFFになり、 イド注の投与を中断して眼科に出棟した
クレンメが閉じられていることを と思い込み、なぜ投与が中断されている
確認した。患者はその状態で眼科 のかを考えなかった。他の入院患者でキ
を受診した。リーダー看護師Aは ロサイド注を24時間投与している患者
看護師Bに患者が眼科を受診して がおり、短時間なら投与中断可の指示が
いることは伝えたが、キロサイド あったため、患者も短時間であれば投与
注の中止指示は伝えていなかった。 中断可の指示があると思い込んだ。リー
患者が帰室後、看護師Bは訪室し ダー看護師Aが眼科出棟のためにキロサ
た際に、キロサイド注が投与され イド注の投与を中断したと思い込んでい
ていないことに気づいたが、眼科 たため、再開する前に点滴ラベルの流量
受診の間だけキロサイド注の投与 だけを見て開始し、指示簿や注射箋の確
を中断し出棟していたと思い込み、 認等、点滴投与時の手順を遵守しなかっ
輸液ポンプの電源をつけ、キロサ た。
イド注を7mL/hで開始した。
約10分後、リーダー看護師Aが
主治医にキロサイド注を本日再開
する予定がないことを確認し、薬
剤を破棄するために患者の部屋を
訪室した際、キロサイド注が再開
されており、約10分間過剰投与
されたことが判明した。
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
1)分類
「中止時の投与」の13件を、指示出し、指示受けのそれぞれの内容ごとに分類した(図表
Ⅲ - 2- 5)。
図表Ⅲ - 2- 5 「指示」の「中止時の投与」の分類
分類
件数
指示出し
5
中止の指示をしなかった
2
中止の指示が伝わらなかった
2
その他
1
指示受け
8
中止の指示受け後、伝達すべき部署や人に連絡しなかった
3
中止の指示受け後、思い込みにより指示を継続した
2
指示を見落とした
1
指示受け後、内服薬の薬袋の中止の処理をしなかった
1
その他
1
合 計
13
指示出しの事例は、中止の指示をしなかった、中止の指示が伝わらなかった事例がそれぞれ
2件であった。副作用による血球減少のためティーエスワン配合OD錠の内服を中止する際に、
医師は指示簿と処方カレンダーの両者に中止の指示をする必要があったが、処方カレンダーに中止
の指示を行わず、患者に投与が継続された事例などがあった。腫瘍用薬は、患者の検査値や病態に
より、内服中の薬剤を中止したり、事前に注射薬の処方を出していても実施日に中止や変更を行うこ
とがある。そのような場面にも適切に対応できるように、医師は自分の出す指示が次の工程にどのよ
うに影響するのかを認識しておくことが重要である。また、医師が指示する際に指示簿や処方オーダ
など複数の入力が必要となるような煩雑なシステムの改善を検討することも重要である。
指示受けの事例は、中止の指示を受けた後に伝達すべき部署や人に連絡しなかった事例が3件、
思い込みにより中止すべき指示を継続した事例が2件などであった。具体的には、血液や尿の検
査結果によりアバスチン中止の指示が出た際、看護師は薬剤部への連絡は済んでいると思ったが、
薬剤部への連絡はなされていなかった事例などがあった。
関連する部署に指示変更が伝わらなかったため、変更前の指示が実施された事例については、
本事業の医療安全情報 No. 20「伝達されなかった指示変更」(2008年7月提供)においても
注意喚起をしている。(http://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_20.pdf)
2)「中止時の投与」の影響
報告された13件のうち、事例に患者への影響について記載があったのは、次の1件であった。
○白血球・血小板減少を呈していたが全身状態は安定していた。
また、患者の身体へ直接的な影響はなかったが、薬剤の調製後に中止であることに気付いた事例
が5件あり、高額な腫瘍用薬を廃棄するに至ったことについて記載がなされていた。
- 118 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
3)気付いたきっかけ
間違いに気付いたきっかけは、医療機関において医療安全対策を検討する上で重要な情報となる
ため、報告された事例の内容に記載があったものの中から、主なものを以下に示す。
ⅰ指示出し
○患者への説明の際に気付いた
・医師が中止であることを患者に伝えに行ったところ、中止した薬剤が既に投与されていた。
○他のスタッフが気付いた
・中止中の内服薬が患者の配薬箱に準備されていたことに別の看護師が疑問を持った。
・中止したことを知っていた外来看護師が電子カルテを確認して気付いた。
ⅱ指示受け
○システムでの認証の際に気付いた
・システムで認証できなかったので確認すると中止指示が出ていた。
Ⅲ
○薬剤部からの搬送の際に気付いた
・ 薬剤部から化学療法室に中止のはずの腫瘍用薬が調製されて届いたことから、指示が伝達さ
れていないことに気付いた(複数報告あり)。
○患者への準備や実施を見た他のスタッフが気付いた
・翌日、チームの他の看護師より内服薬と点滴の腫瘍用薬を投与してよいのか疑問があがった。
4)主な背景・要因
あるものについて指示出し、指示受けの内容ごとに整理し、図表Ⅲ - 2- 6に示す。
図表Ⅲ - 2- 6「指示」の「中止時の投与」の主な背景・要因
指示出し
○中止の指示をしなかった
・ 有害事象があり当日の抗癌剤投与は中止であったが、外来医師は中止の指示をせず、患者にも説明しな
かった。
・医師は、指示簿上で内服終了としたが、処方カレンダー上で中止指示を行わなかった。
○中止の指示が伝わらなかった
・医師は時間外に出した指示について、看護師に伝達しなかった。
・前日に「確定」が入力されていたが、当日に中止の電話連絡がなされなかった。
○その他
「メインルート用のソルデム
・ 医師は、看護師の「開始していいですか」という抗癌剤開始の指示の確認を、
3Aの開始」と思い、実施指示を出した。
指示受け
○中止の指示受け後、伝達すべき部署や人に連絡しなかった
・看護師は口頭指示を受けた際、薬剤師へ伝達しなかった。(複数報告あり)
・担当看護師以外の看護師が医師からの口頭指示を受けた。
- 119 -
腫瘍用薬に関連した事例
③﹁指示、調剤、準備、患者への説明・指導﹂の事例
「指示」の「中止時の投与」に関する事例の主な背景・要因について、報告された内容に記載の
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
○中止の指示受け後、思い込みにより指示を継続した
・ 看護師は採血の検査結果のみ確認し、患者の状態を確認しないまま治療可能と思い込み、薬剤部に調剤
を依頼した。
・ 当日、投与時間ぎりぎりまで主治医より指示がなかったため、看護師は化学療法を行うものであると思
い込んだ。
○指示を見落した
・看護師は医師の指示を見ていなかった。
5)主な改善策
「指示」の「中止時の投与」に関する事例の主な改善策について、指示出し、指示受け、連携に
ついて整理し、図表Ⅲ - 2- 7に示す。
図表Ⅲ - 2- 7「指示」の「中止時の投与」の主な改善策
指示出し
・指示変更の場合は、医師は担当看護師へ直接指示を伝える。
指示受け
・看護師はペア同士で指示受けを行う。
・中止指示があった場合、担当看護師が速やかに薬剤師へ申し送る。
・各部署への確認は、担当看護師が責任を持って行う。
・「検査結果待ち」と指示を受けた段階で、内服薬の薬袋に情報を記載することを徹底する。
連携
・指示変更の場合の情報伝達について、部署で意思統一を図る。
・チーム間で情報共有を行う。
(4)「調剤」に関する医療事故情報およびヒヤリ・ハット事例の分析
①発生状況
発生段階が「調剤」の事例は医療事故情報が4件、ヒヤリ・ハット事例が23件であった。事例
の内容は、薬剤量間違いが12件と多く、薬剤間違い6件、対象者間違い4件などであった。「調剤」
の事例が腫瘍用薬に関する事例全体に占める割合は、医療事故情報の1.5%、ヒヤリ・ハット事
例の3.7%であった。
図表Ⅲ - 2- 8 「調剤」の事例の発生状況
医療事故情報
ヒヤリ・ハット
事例
合計
%
薬剤間違い
2
4
6
22.2%
対象者間違い
0
4
4
14.8%
過剰
2
5
7
25.9%
過少
0
5
5
18.5%
投与日・日数間違い
0
2
2
7.
4%
中止時の投与
0
2
2
7.
4%
その他
0
1
1
3.
7%
合計
4
23
27
100.0%
薬剤量間違い
- 120 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
②事例の内容
「調剤」に関する代表的な事例を取り上げ、専門分析班および総合評価部会の議論を付して図表
Ⅲ - 2- 9に示す。
図表Ⅲ - 2- 9 「調剤」の事例の内容及び専門分析班・総合評価部会の議論
No.
報告事例
事故の内容
事故の背景要因
改善策
薬剤量間違い/過剰
専門分析班・総合評価部会の議論
○ ティーエスワンは後発医薬品が多く、さらに後発医薬品は適応疾患が少ないので、保険薬局の薬剤師は後発医薬品
への変更に伴う適応疾患の確認に注意が向き、規格の確認が疎かになった可能性がある。
○ 経験年数18年の薬剤師が調剤し、経験年数1年の薬剤師が鑑査をしているが、腫瘍用薬はハイリスク薬であり、
他の薬剤より鑑査が精密にできる体制の検討が必要であろう。
○医療機関が中心となって近隣の保険薬局と事例の共有ができたことはよかった。
- 121 -
Ⅲ
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
腫瘍用薬に関連した事例
③﹁指示、調剤、準備、患者への説明・指導﹂の事例
1
保険薬局による剤形の誤った交付 保険薬局において、患者に誤った 【当院】
によって本来エヌケーエスワン配 量の薬剤が手渡された。
・ 当該薬局へ薬局から日本医療
合OD錠20mg×6錠(120 <保険薬局からの報告内容>
機能評価機構の薬局ヒヤリ・
mg)のところ、25mg×6錠 調剤者は後発医薬品への変更に注 ハット事例収集・分析事業へ
(150mg)を16日間服用し 意力が集中してしまい規格の確認 の報告、周辺薬局への情報共
た結果、著明な白血球減少と血小 が不十分であった。 鑑査者は後発 有を依頼した。
板減少が生じ、出血性腸炎、口腔・ 医薬品への変更の際に適応症につ ・ 当院薬剤部より門前の保険薬局
外耳道粘膜障害、出血、発熱を来 いて処方医へ疑義照会を行い、変 へ、特に抗がん薬の調剤時の
たし、当院救急部に搬送され入院 更可否に気をとられ、規格の確認 取扱いを注意喚起するファック
となった。保険薬局に確認したと が不十分だった。 交付者は薬を薬 スを送付した。
ころ、薬剤師が後発医薬品への変 袋から全て出して説明したが、処 ・ 当院薬剤部と門前の保険薬局
更の意向を患者に確認し、ティー 方せん、薬剤情報提供文書を用い 10店との合同勉強会の場で、
エスワン配合OD錠からエヌケー て確認を行わなかったことで誤り 当該保険薬局から要因分析と
エスワン配合OD錠へ変更した。 に気づかず交付した。
改善策を含めた事例報告を行
その際に規格を間違えて調剤し
い情報共有した。
た。その後もチェックできず、そ
【保険薬局】
のまま患者に交付していた。
<調剤時>
・ 医薬品名・規格・用量・用法
まで全て指差し声出し調剤を
徹底する。できていない職員
に対してその場で相互に注意
医療事故
指導する内規とした。
・ 調剤者は全ての調剤後に自己
情報
鑑査する事とし、その後に処
方せんに押印し鑑査者へ引き
継ぐ事に内規を変更した。
<鑑査時>
・ 医薬品名、規格、用法用量の
処方せん確認事項全てに
チェックマークをつける事と
し、チェック機能を強化した。
<交付時>
・ 処 方 せ ん と 医 薬 品 名、 規 格、
用 法・ 用 量 を 確 認 し た 上 で、
全 て の 薬 剤 を 薬 袋 か ら 出 し、
患者と相互に確認した上で渡
すことを徹底する。
<環境>
・ 錠剤台には規格間違いが発生
しないように規格注意を喚起
する札を認識しやすいように
設置した。
・ 引出しの保管薬剤は使用頻度
の高いものを手前に配置した。
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
No.
報告事例
事故の内容
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
事故の背景要因
改善策
薬剤量間違い/過少
薬剤師Aは当直時間帯に、エピル
ビシン塩酸塩注射液50mg1瓶
を調剤しなければならないとこ
ろ、 エ ピ ル ビ シ ン 塩 酸 塩 注 射 液
10mg1瓶を調剤した。薬剤師B
の鑑査でも発見されず、病棟へ搬
送された。
ヒヤリ・
ハット
事例
2
<調剤した薬剤師A>
・ 業務が忙しい場合でも、必ず
保険薬局からの問い合わせ、医師 規格まで確認して払い出す。
からの問い合わせ、救急外来の患 ・ 病棟には薬剤部の当直体制を
者対応で、院内の調剤に割ける時 理解してもらい、依頼の優先
間が少なかった。さらに翌日分の 順位を考えてもらう。
注射薬であり、調剤が終わり次第、・ 医師に時間内にオーダを行う
連絡することを病棟看護師に伝え ことを依頼する。
ていたが、遅いとの連絡があり、
急いで調剤したため、規格を良く
確認しなかった。注射せんには、
通常複数規格存在する薬品に付く
●印が付いていなかった。
<鑑査した薬剤師B>
払い出し時、2規格あると思った
が、複数規格存在する薬品に付く
●印が注射せんになかったため、
勘違いと思い規格の確認をしな
かった。抗がん剤であり、素手で
業務を行っていたため、袋上から
の確認となり規格まで目が行き届
かなかった。
<その他>
薬剤部の当直は2人体制をとって
いるものの、救急外来での薬剤交
付業務もあり、多忙である。本件
と一緒に、他患者の当日夕分と翌
日分の払い出しの依頼を受けてい
た。業務が多忙であること、翌日
の日中使用分であることなどから、
分けて払い出すことを病棟に提案
したが、何度も薬剤部に取りに行
けないと提案を拒否された。
専門分析班・総合評価部会の議論
○ 薬剤の規格間違いへの対策は、医療機関によりさまざまであり、複数規格を意識するため薬剤同士を近くの棚に配
置する方法と、取り違えを防ぐために離れた棚に配置する方法があるようである。医療機関の状況に合わせた検討
がなされるとよいだろう。
○ 夜間の腫瘍用薬の払い出しであるが、緊急の薬剤の払い出しのルールが不明である。緊急の薬剤の払い出しのルー
ルを院内で明確にするための検討が必要であろう。
○ 調剤鑑査をした薬剤師は「複数規格あるのでは?」と疑問を感じている。このような場面は、必ず疑問に対して確
認を行うことが重要である。
中止時の投与
医療事故
情報
3
腫瘍用薬5- FU注の○月3日∼
16日までの連投患者であった
が、○月10日以降、門注用カテー
テ ル 閉 塞 の た め、 投 与 が 中 止 に
なった。○月14日までは調剤し
ていなかったが、○月15日投与
分について中止に気がつかず調剤
し病棟に搬送した。病棟から連絡
があり投与前に回収した。
5- FU注の連投レジメンについて ・ 調剤、鑑査、調製時に薬歴を
は、投与日数が決められており途 確認することを徹底する。
中で削除を行うと再入力出来ない
システムである。再開もあるので、
中止日以降をまとめて処方削除を
行わず、中止日以降の処方せんを
発行しないよう発行操作時に注意
をしている。また、印刷された薬
歴に手書きで中止の記入をして調
剤時に確認し対応している。今回
処方せんが発行され、調剤者がこ
の薬歴を確認せず調剤した。
専門分析班・総合評価部会の議論
○ システム上、一旦中止すると、再開ができないのであれば、
「中止」の指示を出して、再開時は指示を出し直すこ
とが望ましいだろう。医師が意図している治療内容が反映されていない指示を、後の工程で処理することを原則と
するルールは、誤りを生じやすいだろう。
- 122 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
③「調剤」の「薬剤量間違い」の事例の分析
「調剤」に関する医療事故情報4件、ヒヤリ・ハット事例23件のうち報告件数の多かった「薬剤量
間違い」の事例に着目して、医療事故情報2件とヒヤリ・ハット事例10件を総合的に分析した。
1)内容
「調剤」の「薬剤量間違い」の事例12件を大別すると、規格間違いが11件、数量間違いが
1件であった。調剤の際の規格間違いは1回に投与する薬剤量が不適切になり、患者へ与える影響
が大きくなる可能性があるため、より注意が必要である。
報告の内容に記載があった事例について、薬剤名、予定した規格や数量、間違えた規格や数量を
図表Ⅲ - 2- 10に示す。ティーエスワン配合OD錠に関連した事例が、後発医薬品であるエヌケー
エスワン配合カプセルを含めると5件あった。
図表Ⅲ - 2- 10 「調剤」の「薬剤量の間違い」の内容
Ⅲ
予定した規格や
数量
誤った規格や
数量
件数
100mg
150mg
2
ティーエスワン配合OD錠
T20
T25
2
エヌケーエスワン配合カプセル
T20
T25
1
40mg
30mg
3
ティーエスワン配合OD錠
T25
T20
1
エピルビシン塩酸塩注射液
50mg
10mg
1
1包
2包
1
分類
薬剤名
規格間違い
タルセバ錠
過剰
ジオトリフ錠
過少
過剰
ティーエスワン配合OD錠T25
(1包:14錠1シート、2シート入り)
※事例の内容に薬剤名、予定した規格や数量、誤った規格や数量の記載があったもののみ図表とした。
2)患者への影響
報告された事例の記述情報に、患者への影響について記載があったのは、著明な白血球減少と血
小板減少が生じ、出血性腸炎、口腔・外耳道粘膜障害などを来たし救急入院となった1件であった。
- 123 -
腫瘍用薬に関連した事例
③﹁指示、調剤、準備、患者への説明・指導﹂の事例
数量間違い
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
3)気付いたきっかけ
間違いに気付いたきっかけは医療機関において医療安全対策を検討する上で重要な情報となるた
め、報告された事例の内容に記載があったものの中から、主なものを以下に示す。なお、報告され
た事例のうち2件は保険薬局での調剤であり、持参薬鑑別時に気付いた事例と、副作用の出現によ
り入院となった際に気付いた事例であった。
○持参薬鑑別の際に気付いた
・入院支援センターでの持参薬鑑別時に、保険薬局の調剤間違いに気付いた。
○内服薬の投与準備をする際に気付いた
・ 追加処方を薬剤師がセットする際に、前回セットしていたものと規格が違うことに気付いた。
・追加処方をセットする際に、薬剤のPTPシートの色が違うことに気付いた。
・ 服用開始から2日後の深夜帯で与薬準備をする際、看護師2名で薬剤と電子カルテでダブル
チェックを行い、指示と薬袋の記載はジオトリフ錠40mgであるが、薬袋内のジオトリフ錠
は30mgであることに気付いた。
○副作用の出現
・出血性腸炎、口腔・外耳道粘膜障害などを来たし救急に搬送され、原因を検索した。
4)主な背景・要因
「調剤」の「薬剤量間違い」に関する事例の主な背景・要因について整理して、図表Ⅲ - 2- 11
に示す。
図表Ⅲ - 2- 11 「調剤」の「薬剤量の間違い」の主な背景・要因
○ルール違反
・ 複数規格ある薬剤で処方せんに「規格注意!」の注意喚起がなされている場合は、監査時に処方せんに
チェックを入れることになっていたが、当該処方せんにはチェックを入れていなかった。
○確認不足や思い込み
・後発医薬品への変更に注意が集中してしまい規格の確認が不十分であった。
・ 薬剤は2規格あると思ったが、複数規格ある薬剤につくチェックの印が注射せんになかったため、勘違
いと思い規格の確認をしなかった。
・腫瘍用薬であり、袋上からの確認となり規格まで目が行き届かなかった。
・思い込み、確認不足があった。
・1包に入っている錠数を間違えて思い込んでいた。
○知識不足
・ タルセバ錠の規格が150mg、100mgと複数あることの知識が不足しており、注意して確認しなかっ
た。
○勤務体制
・当直時間帯であり、1人で調剤と鑑査を行っていた。
・当直時間帯であり、業務が多忙で急いで調剤していた。
- 124 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
5)主な改善策
「調剤」の「薬剤量間違い」に関する事例の主な改善策について、調剤時の確認、鑑査時の確認、
環境整備、情報の共有、勤務体制に整理し、図表Ⅲ - 2- 12に示す。
図表Ⅲ - 2- 12 「調剤」の「薬剤量の間違い」の主な改善策
○調剤時の確認
・薬剤名、規格、用量、用法まで全て指差し声出し調剤を徹底する。
・調剤者は全ての調剤後に自己鑑査したうえで処方せんに押印し、鑑査者へ引き継ぐ。
・複数規格あることを認識し、セット時に再確認を行う。
・腫瘍用薬の調剤はトリプルチェックで行う。
・薬剤の規格を目視するだけでなく、チェックをつけるなど調剤時に印をつけて行う。
○鑑査時の確認
・ 薬剤名、規格、用量、用法について、処方せん確認事項全てにチェックをつける事とし、チェック機能
を強化した。
Ⅲ
・ 梱包されている錠数は袋に記載されているため、開封せずに鑑査を行う場合は記憶に頼らず、その確認
を怠らないようにする。
○環境整備
・規格間違いが発生しないように、規格注意を喚起する札を認識しやすいように設置した。
・引出しの保管薬剤については使用頻度の高いものを手前に再配置した。
○情報の共有
・ 当該保険薬局へ評価機構の薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業への報告や周辺薬局への情報共有を
・ 薬剤部と保険薬局との合同勉強会の場で、要因分析と改善策を含めた事例報告を行い情報の共有を行った。
○勤務体制
・ 業務が多忙であること、依頼の優先順位を考えて調剤を行っていることを他部門に理解してもらい、日
中業務で対応できる体制を検討する。
④薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の事例の紹介
本財団で行っている薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業3)に、保険薬局で発生した、または
発見したヒヤリ・ハット事例の報告がなされており、腫瘍用薬に関する事例の報告も含まれている。
そこで、2015年に報告された事例4, 779件の中から薬価基準収載医療品コードをもとに事例
の概要が「調剤」の腫瘍用薬に関連した事例を抽出した。そのうち、
「数量間違い」の事例は11件
であり、
「規格間違い」の事例はなかった。報告の内容に記載されている薬剤名、予定した数量や間
違えた数量について図表Ⅲ - 2- 13に示す。調剤する際の計算間違いやPTPシートの1シートに
包装されている錠剤の個数が薬剤により異なることによる思い込みのほかに、服薬スケジュールや
体調変化の確認事項について前回の薬歴の参照に時間を要したことにより数量の確認が不十分に
なったことなどが背景要因に挙げられていた。
- 125 -
腫瘍用薬に関連した事例
③﹁指示、調剤、準備、患者への説明・指導﹂の事例
依頼した。
・薬剤部より、保険薬局へ特に腫瘍用薬の調剤時の取扱いを注意喚起するファックスを送付した。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅲ - 2- 13 腫瘍用薬の数量間違いに関連した薬局ヒヤリ・ハット事例
分類
薬剤名
予定した数量
誤った数量
65錠
89錠
364錠
366錠
カソデックス錠80mg
90錠
91錠
フェマーラ錠2.5mg
28錠
56錠
140カプセル
160カプセル
56錠
40錠
364カプセル
182カプセル
1包
0.5包
112包
84包
84カプセル
74カプセル
84カプセル
64カプセル
アロマシン錠25mg
イマチニブ錠100mg「明治」
過剰
ユーエフティ配合カプセルT100
ザイティガ錠250mg
タシグナカプセル150mg
過少
ペラゾリン細粒400mg
ユーエフティE配合顆粒T100
ユーエフティ配合カプセルT100
※事例の内容に薬剤名、予定した規格や数量、誤った規格や数量の記載があったもののみ図表とした。
(5)「準備」に関する医療事故情報およびヒヤリ・ハット事例の分析
①発生状況
発生段階が「準備」の事例は医療事故情報が12件、ヒヤリ・ハット事例が71件であった。
事例の内容は、
「準備」のうち「調製」
(以降「準備/調製」とする)は薬剤量間違いが24件と多く、
「準備」のうち「その他」
(以降「準備/その他」とする)はカテーテル・ポートの不具合・取り扱
い間違いが15件と多かった。「準備」の事例が腫瘍用薬に関する事例全体に占める割合は、医療
事故情報の4.7%、ヒヤリ・ハット事例の11.5%であった。
図表Ⅲ - 2- 14 「準備」の事例の発生状況
医療事故情報
ヒヤリ・ハット事例
合計
調製
その他
小計
調製
その他
%
小計
薬剤間違い
0
0
0
6
0
6
6
7.
2%
対象者間違い
0
0
0
2
0
2
2
2.
4%
過剰
8
1
9
13
2
15
24
28.
9%
過少
0
0
0
2
0
2
2
2.
4%
その他
0
0
0
1
0
1
1
1.
2%
投与速度間違い
0
1
1
1
0
1
2
2.
4%
投与時間間違い
0
0
0
0
1
1
1
1.
2%
投与日・日数間違い
0
0
0
2
1
3
3
3.
6%
無投与
2
0
2
2
0
2
4
4.
8%
中止時の投与
0
0
0
6
0
6
6
7.
2%
カテーテル外れや漏れ
0
0
0
0
1
1
1
1.
2%
0
0
0
0
15
15
15
18.1%
支持療法の間違い
0
0
0
1
1
2
2
2.
4%
その他
0
0
0
6
8
14
14
16.9%
10
2
12
42
29
71
83
100.
0%
薬剤量間違い
カテーテル・ポートの不具合・
取り扱い間違い
合計
- 126 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
②事例の内容
「準備」に関する代表的な事例を取り上げ、専門分析班および総合評価部会の議論を付して図表
Ⅲ - 2- 15に示す。
図表Ⅲ - 2- 15 「準備」の事例の内容及び専門分析班・総合評価部会の議論
No.
報告事例
事故の内容
事故の背景要因
改善策
調製/薬剤量間違い/過剰
1
処方せんには「エクザール注射用 冷所医薬品が患者個別に保管され ・ 冷所医薬品を患者個別に保管
。
10mg 7mg 生食PB20 ていなかった。前日に1患者1ト する(1患者 1 トレイ)
m L」と記載されていた。エクザー レイで外来化学療法室に払いださ ・ 腫瘍用薬の調製内容の記載の
ル注射用は冷所保存の薬剤であっ れていたが、抗がん剤の調製内容 統一を行った。
たため、1患者1トレイになって の記載「7/ 10/ 17m L(抜き ・ 化学療法処方監査者、調製者、
いた薬剤のセットをばらしてエク 取り量 / 溶解量 / 最終的な溶解量)
」 鑑査者の役割を明確にし、そ
ザール注射用のみ冷蔵庫に保管し の統一がされていなかった。エク れぞれが担う役割を再度見直
た。その際、もう1名の患者の分 ザール注射用は使用頻度の少ない し、明文化した。
と同じトレイに無記名でエクザー 薬剤で、調製者は2バイアルを当
医療事故 ル注射用が保管されていた。当日、 該患者に使用するものだと思った。
調製者は、冷蔵庫より2バイアル ダブルチェックが十分に機能して
情報
を取り出した。そのため、調製時、 いなかった。鑑査者は、注射器に
本来エクザール注射用1バイアル 17m L が充填されていることは
(10mg)を使用し7mgを調製 確認したが、使用されたバイアル
するところ、調製者はエクザール 数と処方せんに記載されているエ
注射用を2バイアル使用し17mg クザール注射用の投与量7mgと
調製した。鑑査者も間違いに気づ の照合が不十分であった。
かず、患者に投与された。同日、
調製者が調製内容を入力した際、
間違いに気づいた。
○ 処方の内容を適切に読めていれば、調製者は溶解量を間違えなかった可能性がある。処方せんに調製方法を記載す
る場合、誰でも分かりやすい内容に統一することを医療機関で取り決めることが重要である。
○腫瘍用薬を冷蔵庫で保管する際も、1 患者1トレイで保管するとよい。
ヒヤリ・
ハット
事例
2
前立腺癌治療薬ジェブタナ点滴静 ジェブタナ点滴静注は患者限定薬 ・ 処方せんに「全量溶解」と記
注の投与量を間違え、過量投与と で、院内では1名のみ使用してい 載し、注意を促すこととした。
なった。ジェブタナ点滴静注には る。準備した薬剤師は全量で溶解
専用の溶解液が付いており、溶解 することを知らなかった。またそ
液全量を用いて溶解し、必要量を れを鑑査する薬剤師も確認しな
秤取する。しかし、全量で溶解し かった。
なかったため、濃い濃度でジェブ
タナ溶解液が作られた。これを原
液として必要量を秤取し投与した
為、処方量の約20%増量で投与
されてしまった(医師処方量33
mg/body、実際に投与した
と思われる量38mg/body)
。
専門分析班・総合評価部会の議論
○ 溶解方法が特殊な薬剤は、製薬企業の医薬情報担当者から医療機関へ情報提供がされるので、情報共有できる仕組
みを作っておくことが大切である。
○ 溶解方法が特殊な薬剤は、薬剤ラベルにその旨が表記されるなど、製薬企業による注意喚起の工夫があるとよいの
ではないか。
- 127 -
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
腫瘍用薬に関連した事例
③﹁指示、調剤、準備、患者への説明・指導﹂の事例
専門分析班・総合評価部会の議論
Ⅲ
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
No.
報告事例
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
事故の内容
事故の背景要因
改善策
調製/薬剤量間違い/過少
ヒヤリ・
ハット
事例
3
サンラビン点滴静注用250mg 初めて取り扱う薬剤であり、サン ・ 腫瘍用薬などの勉強会を計画
1バイアルは25mLの溶解液で ラビン点滴静注用の計算式を知ら し、一覧表の必要性の有無に
ついて話し合い、今後の再発
溶解して使用する薬剤であり、一 なかった。
防止に努める。
般的な計算式であれば1mLあた
り10mgの薬剤が含有されるが、
本剤は1.1mLあたり10mgの
エノシタビンが含有されるという
特徴のある薬剤だった。その特徴
を知らず300mgの指示に対し
て30mLをミキシングし患者に
投与した。翌日、27mgの過少
投与が判明した。
専門分析班・総合評価部会の議論
○溶解方法が特殊な薬剤は、溶解前に必ず手順を確認する必要がある。
○サンラビン点滴静注用の具体的な調製方法の資料を製薬企業が作成しているので、調製室に準備しておくとよい。
○ サンラビン点滴静注用の調製には専用の「溶解鍋」と「溶解ラック」が必要であり、調製できる部署を決めている
医療機関もある。
その他/カテーテル・ポートの不具合・取り扱い間違い
ヒヤリ・
ハット
事例
4
化学療法当日、アブラキサン点滴 薬剤の分類表の確認で見落とし
静注用とカルボプラチン点滴静注 た。初めて扱う薬剤であり、フィ
液を投与する指示があった。アブ ルターを通さず投与しなければな
ラキサン点滴静注用をフィルター らない薬剤であることの知識がな
を通して準備し投与開始した。開 かった。当日は化学療法を施行す
始後すぐに閉塞アラームが鳴り、 る患者が3人いたため、慌ててい
解決できなかったため他のスタッ た。ダブルチェックの際にルート
フを呼び確認したところ、フィル を流れ作業で確認した。
ターを通さず投与する薬剤である
ことがわかった。医師に報告し投
与量が微量であるため、継続して
投与して良いと指示を受けた。
・ 初めて扱う薬剤のときは先輩
スタッフに声をかける。
・ フィルターあり、なしの確認
も薬剤分類表を用いてダブル
チェックの際に行う。
・ 化学療法を施行する患者が複
数いるときは、流れ作業で確
認をしない。
・ 新人看護師が初めて行う点滴
(化学療法)の時には、ルート
の接続方法やフィルターの必
要性など具体的に指導し、患
者に施行する前に点検する。
・ 新人看護師は初めての処置の
時には必ず先輩看護師にその
ことを伝え、患者に施行前に確
認してもらってから実施する。
専門分析班・総合評価部会の議論
○フィルターを使用する薬剤、使用しない薬剤を一覧表で確認できるように明示しておくとよい。
○ 特定の腫瘍用薬については、薬剤部から薬剤を払い出すときに「フィルターなし」などと記したカードをつけて注
意喚起を促すという方法もある。
ヒヤリ・
ハット
事例
卵巣癌で中心静脈ポートから腫瘍
用薬の投与を実施した。当事者が
前投薬に続いてパクリタキセル注
射液を投与し、100m L 投与さ
れたあと、先輩看護師がルートに
フィルターがついていないことに
気付いた。ルート内に目視で確認
できる析出はなかった。
5
当事者は、パクリタキセル注射液 ・ 同じ技術や治療でも思い込み
はフィルター付きのルートを使用 で実施せず、その都度確認す
することは理解していた。しかし、 る。
以前同じ治療を担当したときに、・ 注射ラベルの薬剤の部分だけ
前投薬もフィルター付きのルート ではなく、
「フィルター」など
を使用していたため、今回も同様 注意事項が書かれた部分も確
だろうと思い込んだ。そのため、 認する。
パクリタキセル注射液投与時に
ルートの確認をせずに、前投薬と
同様のルートで投与した。また、
注射ラベルの薬剤の部分は確認し
ていたが、その下の注意事項に目
を留めていなかった。
専門分析班・総合評価部会の議論
○ 特定のフィルターが必要な腫瘍用薬については、薬剤部から薬剤と一緒に払い出すという取り組みをしている医療
機関もある。
- 128 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
No.
報告事例
事故の内容
事故の背景要因
改善策
その他/その他
ヒヤリ・
ハット
事例
6
腫瘍用薬を病室に持っていく時に
カゴや袋に入れずに、手で持って
歩いていたため、運んでいる時に
注射器が身体に当たって薬液が漏
れた。腫瘍用薬の取り扱いについ
ての知識が不足していた。腫瘍用
薬の開始予定時間が迫っていたた
め、焦りがあった。
5- F U 注 の 投 与 予 定 の 患 者 で、・ 腫瘍用薬の取り扱いについて
詰め所で投与の準備を行い患者の 医療安全マニュアルを再読す
病室へ行った。訪室後5- FU注 る。
をシリンジポンプにセットしよう ・ 腫瘍用薬の運搬時は点滴用の
とした時に、詰め所で確認した量 カゴやビニール袋で運び、漏
とシリンジポンプにセットしよう れない様に注意して取り扱う。
とした時の量が違うことに気がつ
いた。5- FU注のルートの先端
を確認するとルートの先端から薬
液が漏れていて、病室の床にも薬
液が漏れていた。
専門分析班・総合評価部会の議論
○ 病棟内では、薬剤はトレイに入れて搬送するのが基本であろう。院内で定められたマニュアルを遵守することが重
要である。
Ⅲ
③「準備/調製」の「薬剤量間違い」の分析
「準備/調製」に関する医療事故情報10件、ヒヤリ・ハット事例42件のうち、報告件数の多かっ
た「薬剤量間違い」の事例に着目して、医療事故情報8件とヒヤリ・ハット事例16件を総合的に
分析することとした。
1)分類
「準備/調製」の「薬剤量間違い」の事例24件を、発生場面で薬剤の溶解および秤取、輸液と
腫瘍用薬を混合する生理食塩液等の輸液の量を誤ったなどの輸液との混合の場面が8件であった。
図表Ⅲ - 2- 16 「準備/調製」の「薬剤量間違い」の分類
発生場面
薬剤の溶解および秤取
輸液との混合
合 計
件数
16
8
24
2)調製した職種
報告された事例の内容から調製した職種をまとめた(図表Ⅲ - 2- 17)
。調製者は薬剤師が多かっ
たが、看護師や医師の報告もあった。
図表Ⅲ - 2- 17 調製した職種
調製した職種
件数
薬剤師
15
看護師
8
医師
2
合 計
25
※1事例に、医師と看護師が一緒に調製した事例が含まれる。
- 129 -
腫瘍用薬に関連した事例
③﹁指示、調剤、準備、患者への説明・指導﹂の事例
の混合に分類した(図表Ⅲ - 2- 16)
。薬剤の溶解および秤取の場面が16件と多かった。また、
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
3)内容
「準備/調製」の「薬剤量間違い」の事例のうち、報告件数が多かった「薬剤の溶解および秤
取」を取り上げ、報告の内容に記載があった事例について、
「準備されていた薬剤を全量使用した」、
「溶解方法を誤った」
、「秤取量を誤った」
、「前回の量で調製した」
、「計算を誤った」
、「その他」に
分類し、薬剤名、予定した量、誤った量、事例の内容を図表Ⅲ - 2- 18に整理した。
図表Ⅲ - 2- 18 「薬剤量間違い」の薬剤の溶解および秤取の内容
薬剤名
予定した量
誤った量
内容
130mg
140mg
・ 薬剤師は130mgのところ、購入した140mg
(10mg×4、100mg×1)を全量調製した。
ジェブタナ点滴静注60mg
24mg
60mg
・ 医師は 1 バイアル60mg投与するものであると思
い込み調製した。
ドキソルビシン塩酸塩注射液
10mg
16mg
20mg
・ ドキソルビシン塩酸塩注射液10mgが他の患者の
分を含め2バイアル届いており、用量の指示がある
ことに気付かず2バイアル(20mg)全て調製した。
記載なし
ファルモルビシン注射用50mg、
(最大投与量
10mg
55.8mg)
60mg
・ 当該患者における最大使用量は55.
8mgであり、
カルテには抜き取り薬剤量が記載されていたが、検査
室では持参された10mgのバイアル1本、50mg
のバイアル1本の全量分を調製した。
エクザール注射用10mg
7mg
17mg
・ エクザール注射用2本が冷蔵庫に保管されており、
エクザール注射用1バイアル(10mg)を使用
して7mgで調製するところ、エクザール注射用を
2バイアル使用し17mgを調製した。
33mg/
body
38mg/
body
・ 専用の溶解液が付いており、溶解液全量を用いて溶
解し必要量を秤取するところ、全量で溶解しなかっ
た為、濃い濃度でジェブタナ溶解液が作られた。こ
れを原液として必要量を秤取した。
900mg
950mg
・ 薬剤部からは2バイアルが上がっており、1 バイアル
目(500mg)を生理食塩液100mLへ注入し
た。2バイアル目は、生理食塩液10mLで溶解し、
そのうち8mL(400mg)取るところ、9mL
(450mg)を取った。
フルダラ静注用50mg
15mg
30mg
・ フルダラ静注用1バイアルを蒸留水5mLで溶解し、
そのうち1.5mLを取るところ3mLを取り、生理
食塩液と足して10mLとした。
ゲムシタビン点滴静注液
1, 300mg
1, 500mg
・ 前回コース時から減量となっていることに気付かず
同じ投与量で調製した。
95mg
120mg
・ 薬剤師は備考欄の減量の記載を見逃して、前日と同
じ量で調製した。
過剰
アクプラ静注用100mg、
10mg
準備されて
いた薬剤を
全量使用した
溶解方法
を誤った
ジェブタナ点滴静注60mg
アリムタ注射用500mg
秤取量を
誤った
前回の量で
調製した
パクリタキセル注射液
計算を
誤った
ハーセプチン注射用
その他
ブスルフェクス点滴静注用
60mg
270mg
283mg
・ 薬剤師が電卓を押し間違え、計算を誤った。
(12.9mL) (13.5mL)
12mg
36mg
・ 製剤は10mLであり、看護師は6mg=1mLと計算
したが、医師はレジメンのmgとmLを見間違えて
「6mL」と指摘した。看護師は自身の計算間違いと
考え6mLで調製した。
300mg
(33mL)
約273mg
(30mL)
・ 本剤はエノシタビン10mgに対し、日局注射用水
を1mLの割合で加え、加熱し溶解すると1.1mL
あたり10mgのエノシタビンが含有されるという
特徴があるが、300mgの指示に対して30mL
を調製した。
0.04%
0.004%
・ 点眼薬の調製手順を作成した際、濃度の計算でmg
と%を混同した。
過少
溶解方法
を誤った
計算を
誤った
サンラビン点滴静注用
マイトマイシン注用2mg
- 130 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
また、図表Ⅲ - 2- 18の「溶解方法を誤った」事例のうち、調製方法が特殊なため添付文書に
調製方法の詳細が記載されている薬剤は2つあり、ジェブタナ点滴静注4)、サンラビン点滴静注用5)
であった。添付文書に記載されている溶解方法について、事例に関係する部分を次に示す。この他
の腫瘍用薬にも、注射液の調製方法について添付文書に明記されているものがあるため、注意が必
要である。
<参考> 報告された事例の腫瘍用薬の調製方法(添付文書より抜粋)
ジェブタナ点滴静注
調製時の注意事項
注意: 本剤は投与前に必ず2段階の希釈を行う必要がある。以下に示す調製の全過程を予め確認したうえ
で、調製操作を始めること。
ジェブタナ点滴静注60mg/1.
5mLバイアル(充填量:1.
83mL中にカバジタキセル73.
2
mgを含む)及び添付溶解液バイアル(充填量:5.
67mL)は、いずれも調製時の損失を補うため、
過量充填されている。
Ⅲ
本剤全量に対し添付溶解液全量を使用して溶解したときカバジタキセル濃度10mg/mLのプレ
ミックス液が調製される。
サンラビン点滴静注用
注射液の調製・保存方法
1. 調製方法
(1)エノシタビン10mgに対し、日局注射用水を1mLの割合で加える。
バイアルを溶解ラックに入れ、あらかじめ沸騰させた水浴中で約10分間加熱する。その間、3回
(2)
沸騰水浴中から取り出し、強く振り混ぜる(各回 10 秒間に 10 ∼ 15 回程度)。
[空焚きによりバイアルが破裂し、内容液とガラス片が飛散するおそれがある。]
沸騰水浴中から取り出し、小さな塊あるいは透明なゲル状物のない均一な乳白色の液が得られたこ
(3)
とを確認する。
注意:乳白色の液が得られない場合は、再度上記(2)の操作を行う。
(4) バイアルを熱い溶解ラックごと、好ましくは氷水中(流水中でも可)で約3分間振り混ぜながら急
冷すると無色澄明な液が得られる。この溶液1.1mLには約10mgのエノシタビンが含まれる。
注意: 無色澄明な液を得るためには、急冷することが最も重要なポイントであるため、放置しないこと。
(急冷操作前にバイアルを放置する等により冷ましたような場合には、再度沸騰水浴中で加熱後、
ただちに急冷操作を行う。)
本剤の水溶液を輸液で希釈する際には、泡立ちを極力抑え、注入後の撹拌は穏やかに行う。(輸液容
(5)
器の液中に本剤の水溶液を注入する針を浸けて注入するか、または壁を伝わせてゆっくり注入する。)
4)患者への影響
報告された事例に患者への影響について記載があったのは、次の3件であった。
○副作用確認のため予定外の採血を実施した。
○ 半量程度が投与された時点で両上肢に発疹が出現し、サクシゾン注射用とアタラックス−P
注射液を投与した。
○ 抗癌剤投与直後に胸部苦悶感や心窩部痛、および検査数時間後より発熱や嘔気が出現したこと
について、それぞれ腫瘍用薬自体の影響が大きいと思われた。
- 131 -
腫瘍用薬に関連した事例
③﹁指示、調剤、準備、患者への説明・指導﹂の事例
注意:本剤溶解操作時に溶解鍋の空焚きをしないこと。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
5)気付いたきっかけ
間違いに気付いたきっかけは医療機関において医療安全対策を検討する上で重要な情報となるた
め、報告された事例の内容に記載があったもの中から、主なものを以下に示す。
○調製後の確認の際に気付いた
・調製者が調製内容を入力した際、間違いに気づいた。
・点滴の実施前に主治医に混注量を確認したところ、量が多いことを指摘された。
○薬剤投与を実施する際に気付いた
・投与直前にカルテを確認した際、減量であることに気付いた。
○薬剤投与中の患者観察の際に気付いた
・ 投与開始から30分経過した時点で、本来なら残量が50mLほどのはずがボトルには200mL
以上残っていることに気付いた。
○次の腫瘍用薬の調製の際に気付いた
・ 薬剤部内で腫瘍用薬の溶解方法が統一されていなかったため、前日の調製方法を参考にしよう
と思い調製記録を確認した際、2倍量で調製されていたことに気付いた。
・ 次の時間分の調製をしようとした薬剤師が必要なバイアルが無くなっていることに気付き、病
棟に確認した。
○その他
・ 以前作成した調製記録書を確認したところ、濃度が10分の1である手順書になっていること
が判明した。
6)主な背景・要因
「準備/調製」の「薬剤量間違い」の事例のうち、件数が多かった「薬剤の溶解および秤取」の
事例16件の主な背景・要因を整理し、図表Ⅲ - 2- 19に示す。
図表Ⅲ - 2- 19「準備/調製」の「薬剤量間違い」の主な背景・要因
薬剤の溶解および秤取
○調製のルール
・1日目から5日目までの調製記録を確認した結果、薬剤師によって調製方法が3通りあった。
・調製方法(溶解液量や量り取る量)については、個々の薬剤師の裁量に委ねていた。
・腫瘍用薬の調製内容の記載方法が統一されていなかった。
・調製手順を作成した際、濃度の計算でmgと%を混同した。
○秤取量の計算
・調製を行った薬剤師は、抗がん剤溶解後の濃度の計算を暗算で行った。
・ 混合指示書の記載内容をチェックした鑑査者は電卓を使わなかったため、記載された調製方法でよいと
判断した。
・個々に一任されていたため、薬剤師は様々な計算方法を行っていた。
・電卓を使用して計算しているため、テンキーの押し間違いの可能性がある。
- 132 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
○システム
・ カルテ上でオーダ量と抜き取り量が別々に記載されており、総量がわかりにくい。
・現在の処方オーダシステムは、小児科領域の化学療法に対応できていない。
○薬剤の取り扱い
・ サンラビン点滴静注用は、普段調製しない特殊な溶解方法や計算式で薬剤量を投与しなければならない
薬剤であり、知識不足もあった。
・初めて取り扱う薬剤であり、サンラビン点滴静注用の計算式を知らなかった。
・ 薬剤師はジェブタナ点滴静注の全量に対し、溶解液全量を使用して溶解することを知らず、鑑査する薬
剤師も確認しなかった。
○体制
・ 調製方法に間違いはないか等の最終チェックを3名もしくは4名で行っているが、休日で調製件数が少
なかったことから2名で対応し、チェックが十分に機能しなかった。
・ 外来点滴センターでは点滴治療を行う全ての患者の薬剤を調製しているため繁忙であり、その終了後で
気が緩んだ可能性がある。
Ⅲ
・ 薬剤師は日中の外来で使用する腫瘍用薬の調製を担当したことがなく、2人分ほぼ同時に調製依頼が来
て、外来から調製をせかされやや焦っていた。
・ 抗腫瘍剤に関しては本来前日に秤取量の計算を薬剤師が二重で確認した後、実施確認が出た当日に調剤
者に調剤を依頼しているが、今回は実施確認が出る直前に減量の変更が出たため人手が足らず、1人確
認のみで秤取量の計算を行った。
○確認
・ダブルチェックしていたが、具体的な溶解量や混注量についてはダブルチェックできていなかった。
・ダブルチェックが十分に機能していなかった。(複数報告あり)
・ワークシートと準備された薬剤が正しいかを確認せず、調製を開始してしまった。
・前の患者と同じレジメンであり、思い込みからワークシートを細部まで確認しなかった。
・ 鑑査者は、注射器に充填された量は確認したが、使用されたバイアル数と処方せんに記載されている投
与量との照合が不十分であった。
・薬剤部の確認は、使用量(mg)の確認に重点が置かれており、容量について確認が不足していた。
・医師は、単独で調製を行い、処方せんと照らし合わせて確認しなかった。
○薬剤の管理
・ 前日に1患者1トレイで患者の薬剤が外来化学療法室に払い出されていたが、エクザール注射用は冷所
保存の薬剤であったため、1患者1トレイになっていた薬剤のセットをばらしてエクザール注射用のみ
冷蔵庫に保管した。その際、もう1名の患者の分と同じトレイに無記名でエクザール注射用が保管され
ていた。
- 133 -
腫瘍用薬に関連した事例
③﹁指示、調剤、準備、患者への説明・指導﹂の事例
・調製者はキャビネット外部に貼ってある調製記録が見づらく確認を怠った。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
7)主な改善策
「準備/調製」の「薬剤量間違い」の事例のうち、件数が多かった「薬剤の溶解および秤取」の
事例16件の主な改善策を整理し、図表Ⅲ - 2- 20に示す。
図表Ⅲ - 2- 20「準備/調製」の「薬剤量間違い」の主な改善策
薬剤の溶解および秤取
○ルールの改訂
・ 計算間違いによる調製間違いを防止するために、
「抗がん剤溶解液一覧」にすべての腫瘍用薬の溶解後の
濃度も併記した。
・腫瘍用薬の調製内容の記載の統一を行った。
・冷所医薬品の保管を患者個別にする(1患者1トレイ)。
・ジェブタナ点滴静注は患者限定薬で、院内では1名のみ使用しており、処方せんに「全量溶解」と記載した。
○計算方法
・確認を行う際は、必ず電卓を使用する。
・ 鑑査を行う者は調製記録に印字される比例係数を使用した「溶解液量 × 比例係数=採取液量」の計算を
行うこととした。
○システム
・溶解液量や採取液量の計算をコンピュータ上で自動的に行うシステムの導入を検討する。
○環境
・時間ごとに調製カセットを分ける。
・ 調製者が確認しやすいように、キャビネット内にオーダなどが表示されるキャビネットを購入する予定
である。
○適切な確認
・調製方法の計算、記載内容の監査、調製、最終鑑査の一連の手順については常に3名以上で行う。
・調製する前に、使用する注射薬、調製方法を確認する。
・調製前に、ダブルチェックで処方せんと照らし合わせて確認する。(複数報告あり)
・ 薬剤の溶解量と混注量が異なる場合は、溶解方法や混注量の確認もダブルチェックする(それぞれが別
に計算し、その量が一致するか確認する)。
・ 化学療法処方監査者、抗がん剤調製者、鑑査者の役割を明確にし、それぞれが担う役割を再度見直し、
明文化した。
・調製手順の作成時には、内容についてダブルチェックをする。
・実施確認の当日に変更になった際は必ず二重確認を行い、調製者に依頼する。
○情報の共有
・ 電子カルテ上の薬剤師連絡事項を有効に活用し、薬剤師同士で調製方法や注意事項などの情報が共有で
きるよう検討する。
・ 「抗がん剤溶解液一覧」を改訂し、凍結乾燥製剤の各製剤の添付文書に記載された溶解液と溶解液量を併
記した。
・誰が見ても分かるような一覧表(注意点を含む)の作成を検討する。
○教育
・ 看護部、医療安全管理室において、調製量の計算に関する研修や問題集等の作成を企画中であり、それ
らを利用して計算力のスキルアップに努める。
・腫瘍用薬の勉強会を計画し、一覧表の必要性の有無について話し合い、今後の再発防止に努める。
・調製開始時にラベル、薬剤、補液の確認を確実に行うことを部内に周知した。
○その他
・初回投与は、できるだけ平日の日勤帯に行うよう検討する。
・腫瘍用薬の調製については薬剤師が介入する。
- 134 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
④「準備/その他」の「カテーテル・ポートの不具合・取り扱い間違い」の分析
「準備/その他」に関する医療事故情報2件、ヒヤリ・ハット事例29件のうち、報告件数の多かっ
た「カテーテル・ポートの不具合・取り扱い間違い」の事例に着目して分析した。
1)内容
「準備/その他」の「カテーテル・ポートの不具合・取り扱い間違い」の事例15件はすべてヒヤリ・
ハット事例であった。その内訳はフィルターを使用しない薬剤を投与する際にフィルターを使用し
た事例が6件、フィルターを使用する薬剤を投与する際にフィルターを使用しなかった事例が4件、
医療機関内で取り決めている輸液セットを使用しなかった事例が2件、特定のフィルターを使用す
るべきところ通常のフィルターを使用した事例が1件であった。また、その他にはフィルターや輸
液セットの取り扱い間違いの事例が2件あり、同じメーカーの輸液ポンプと輸液ルートを使用する
ところ、別のメーカーの輸液ルートを使用した事例、院内のルールで腫瘍用薬は閉鎖式輸液システ
ムを使用するところ、準備されていた通常の輸液セットを接続して点滴を開始した事例であった。
Ⅲ
図表Ⅲ - 2- 21 「準備/その他」の「カテーテル・ポートの不具合・取り扱い間違い」の内容
薬剤名
件数
フィルターを使用しない薬剤を投与する際にフィルターを使用した
6
※
アブラキサン点滴静注用100mg
フィルターを使用する薬剤を投与する際にフィルターを使用しなかった
4
パクリタキセル注射液
医療機関内で取り決めている輸液セットを使用しなかった
2
1
エトポシド点滴静注液100mg
その他
2
合 計
15
※アブラキサン点滴静注用100mgは人血清アルブミンを添加したパクリタキセル注射剤である。
次に、報告のあったアブラキサン点滴静注用6)、パクリタキセル注射液7)∼13)、エトポシド点滴
静注液14)∼19)について、添付文書に記載されている内容を図表Ⅲ - 2- 22に整理した。
アブラキサン点滴静注用はパクリタキセル注射剤(アルブミン懸濁型)であるが、他のパクリタ
キセル注射液とは、適応や投与方法等が異なるので、医療者が薬剤の適応や組成を理解しておくこ
とが必要である。また、思い込みで調製することを防ぐために、薬剤ごとに簡潔に確認する取扱い
手順等を整備しておくことも重要である。
- 135 -
腫瘍用薬に関連した事例
③﹁指示、調剤、準備、患者への説明・指導﹂の事例
パクリタキセル注射液
特定のフィルターを使用するべきところ通常のフィルターを使用した
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅲ - 2- 22 フィルターや輸液セットについての添付文書の記載内容(添付文書抜粋)
薬剤名
フィルターや輸液セットに関する添付文書の記載
アブラキサン点滴静注用100mg※ ・本剤投与時には、インラインフィルターは使用しないこと。
・ 本剤の希釈液は、過飽和状態にあるためパクリタキセルが結晶とし
て析出する可能性があるので、本剤投与時には、0.22ミクロン
以下のメンブランフィルターを用いたインラインフィルターを通し
て投与すること。
パクリタキセル注射液
・ 点 滴 用 セ ッ ト 等 で 本 剤 の 溶 解 液 が 接 触 す る 部 分 に、 可 塑 剤 と
し て D E H P〔di-(2-ethylhexyl)phthalate: フ タ ル 酸 ジ −
(2 −エチルヘキシル)〕を含有しているものの使用を避けること。
・ エトポシド製剤を希釈せずに用いると、セルロース系のフィルター
エトポシド点滴静注液100mg
を溶解するとの報告があるので、1.0mg/mL以上の高濃度で
のセルロース系のフィルターの使用を避けること。
※アブラキサン点滴静注用100mgは人血清アルブミンを添加したパクリタキセル注射剤である。
2)主な背景・要因
「準備/その他」の「カテーテル・ポートの不具合・取り扱い間違い」に関する事例の主な背景・
要因を図表Ⅲ - 2- 23に整理した。
図表Ⅲ - 2- 23 「準備/その他」の「カテーテル・ポートの不具合・取り扱い間違い」の主な背景・要因
○確認
・ 化学療法マニュアルには、フィルターの使用の有無に関して掲載されていたが、当事者は確認していな
かった。
・薬剤の分類表の確認で見落とした。
・薬剤と照合時、ルートの確認(フィルターの使用の有無)の習慣がなく、確認しなかった。
・曖昧な記憶だけでフィルターを使用していいと考え、直前に確認しなかった。
・注射ラベルの薬剤名は確認していたが、その下の注意事項に目を留めていなかった。
・ 受け持ち看護師やダブルチェックをした看護師は注射ラベルに目がとまり、ルートまでは確認しなかった。
ルート準備時にフィルター
・ アブラキサン点滴静注用にフィルター付きルート使用不可の知識はあったが、
なしルートを準備したと思い込み、再度確認しなかった。
○思い込み
・アブラキサン点滴静注用の薬剤情報の全文を確認せず、一般名を見てパクリタキセルと判断した。
・抗がん剤のルートは1つだけだと思い込んでいた。
○知識
・初めて扱う薬剤であり、フィルターなしで投与するという知識がなかった。
・フィルターを使用することを知らなかった。
○その他
・当日は化学療法を施行する患者が3人いたため、慌てていた。
・レジメンにはフィルター使用のコメントがあったが、オーダに反映されていなかった。
- 136 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
3)主な改善策
「準備/その他」の「カテーテル・ポートの不具合・取り扱い間違い」に関する事例の主な改善
策を図表Ⅲ - 2- 24に整理した。
図表Ⅲ - 2- 24 「準備 / その他」の「カテーテル・ポートの不具合・取り扱い間違い」の主な改善策
○指示や処方の際の記載
・フィルターを使用して投与する薬剤は、オーダ時にフィルター付セット使用を入力する。
・ 化学療法レジメン(パクリタキセル)の投与時間の横に「PVCフリー輸液セット使用」と記載するよ
うにした。
○一覧表の作成
・フィルターの有無に関する一覧表を化学療法担当薬剤師が作成し、関係部署へ配布した。
○適切な確認
・フィルターなし、ありのルートの確認も薬剤分類表を用いてダブルチェックの際に行う。
・薬剤だけでなくルートもダブルチェックする。
Ⅲ
・ミキシングの際、薬剤と使用する輸液セットも横に一緒に並べてから、ダブルチェックする。
・情報確認時、ルート準備時の最低2回、処方せんとルートの指差し確認を行う。
・同じ治療でも思い込みで実施せず、その都度確認する。
・注射ラベルの薬液の部分だけではなく、「フィルター」など注意事項が書かれた部分も確認する。
○教育
・薬剤の学習会の際にフィルター使用の有無についても追加する。
・ 新人看護師が初めて行う点滴(化学療法)の時には、ルートの接続方法やフィルターの必要性などを
○その他
・抗がん剤投与時は他の業務で追われていても落ちついて更新する。
(6)「患者への説明・指導」に関する医療事故情報およびヒヤリ・ハット事例の分析
発生段階が「患者への説明・指導」の事例は医療事故情報が1件、
ヒヤリ・ハット事例が5件であった。
事例の内容は、週1回内服のメソトレキセート錠を退院時処方で1日1回5日分と記載された薬袋を
みて、看護師が毎日内服するよう説明した事例(第45回報告書127頁図表Ⅲ - 2- 9 No. 10)
の他に、治療前に経口補水液を飲むことを説明しておくべきところ失念した事例、一般的な治療期間
の説明に対し、患者は具体的治療計画だと思い込んだ事例などであった。
- 137 -
腫瘍用薬に関連した事例
③﹁指示、調剤、準備、患者への説明・指導﹂の事例
具体的に指導し、患者への施行前に点検する。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(7)まとめ
本報告書では、腫瘍用薬に関連した医療事故情報とヒヤリ・ハット事例のうち、
「指示」
「調剤」
「準備」「患者への説明・指導」の事例について分析を行った。
「指示」の事例のうち「中止時の投与」の事例では、指示変更の際、
変更すべきものがなされておらず、
関連する部署に伝わらなかった事例や、指示受け後、伝達すべき部署に連絡しなかった事例が報告さ
れていた。
「調剤」の事例のうち「薬剤量間違い」では、ティーエスワン配合OD錠に関連した事例が、後発
医薬品であるエヌケーエスワン配合ODカプセルを含めると5件報告されていた。
「準備」の事例のうち「調製」の事例は薬剤量間違いが多く、薬剤の溶解および秤取の際に発生した
事例を取り上げ事例の主な背景・要因、間違いに気付いたきっかけ、及び主な改善策を整理した。また、
「その他」の事例はカテーテル・ポートの不具合・取り扱い間違いが多く、フィルターを使用しない薬
剤を投与する際にフィルターを使用した事例とフィルターを使用する薬剤を投与する際にフィルター
を使用しなかった事例があり、背景・要因や改善策について整理した。
今後も事例の収集を継続し、専門分析班において各分類の代表的な事例に焦点を当てて分析を行っ
ていくこととしている。
(8)参考文献
1. 平成18年度厚生労働科学研究「医薬品等の安全管理体制の確立に関する研究」主任研究者
北澤 式文.「医薬品の安全使用のための業務手順書」作成マニュアル(2007年3月)
(Online)available from < http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/
dl/070330-1a.pdf >( last accessed 2016-12-02)
.
2. 一般社団法人日本病院薬剤師会 . ハイリスク薬に関する業務ガイドライン(Ver. 2. 2)
(Online)available from < http://www.jshp.or.jp/cont/16/0609-1.html >(last accessed
2016-12-04).
3. 公益財団法人日本医療機能評価機構.薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 http://www.
yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/
4.ジェブタナ点滴静注60mg添付文書.サノフィ株式会社.2016年10月改訂(第3版).
5. サンラビン点滴静注用150mg/サンラビン点滴静注用200mg/サンラビン点滴静注
用250mg添付文書.旭化成ファーマ株式会社.2014年4月改訂(第8版).
6. アブラキサン点滴静注用100mg添付文書.大鵬薬品工業株式会社.2014年12月
改訂(第6版).
7. タキソール注射液30mg/タキソール注射液100mg添付文書.ブリストル・マイヤー
ズ スクイブ株式会社.2016年4月改訂(第25版).
8. パクリタキセル注射液30mg「サワイ」/パクリタキセル注射液100mg「サワイ」/
パクリタキセル注射液150mg「サワイ」添付文書.沢井製薬株式会社.2016年8月改訂
(第13版).
9. パクリタキセル注射液30mg「サンド」/パクリタキセル注射液100mg「サンド」添
付文書.サンド株式会社.2015年10月改訂(第9版).
- 138 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
10. パクリタキセル注射液30mg「ファイザー」/パクリタキセル注射液100mg「ファイ
ザー」添付文書.ファイザー株式会社.2016年9月改訂(第9版).
11. パクリタキセル点滴静注液30mg/5m L「ホスピーラ」/パクリタキセル点滴静注
液100mg/16.7m L「ホスピーラ」添付文書.ホスピーラ・ジャパン株式会社.
2015年9月改訂(第3版).
12. パクリタキセル注30mg/5m L「NK」/ パクリタキセル注100mg/16.7m L
「NK」添付文書.日本化薬株式会社.2015年9月改訂.
13. パクリタキセル注射液30mg「NP」/ パクリタキセル注射液100mg「NP」添付文書.
ニプロ株式会社.2015年9月改訂(第4版).
14. ベプシド注100mg添付文書.ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社.2016年5月
改訂(第16版).
15. ラステット注100mg/5m L 添付文書.日本化薬株式会社.2016年5月改訂24.
16. エトポシド点滴静注液100mg「サンド」添付文書.サンド株式会社.2016年6月改
Ⅲ
訂(第8版).
17. エ ト ポ シ ド 点 滴 静 注 1 0 0 m g「 タ イ ヨ ー」 添 付 文 書. 武 田 テ バ フ ァ ー マ 株 式 会 社.
2016年10月改訂(第4版).
18. エトポシド点滴静注液100mg「DK」添付文書.大興製薬株式会社.2016年5月改訂
(第2版).
19. エトポシド点滴静注液100mg「SN」添付文書.シオノケミカル株式会社.2016年
5月改訂(第4版).
腫瘍用薬に関連した事例
③﹁指示、調剤、準備、患者への説明・指導﹂の事例
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
- 139 -
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
【2】歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例
本事業では、これまでに第15回報告書(2008年12月公表)において、歯科診療の際の部位間
違いの事例を共有すべき医療事故情報として紹介し、第21回報告書(2010年7月公表)の再発・
類似事例の発生状況では、
「歯科診療の際の部位の取り違えに関連した事例」を取り上げた。その後も
抜歯をする際に部位を取り違えた事例が継続して報告されたことから、医療安全情報 No. 47「抜歯部
位の取り違え」
(2010年10月)を作成し、提供した。その後、医療安全情報 No. 47の提供以降
に13件の類似事例が報告されたことから、第30回報告書(2012年9月公表)の再発・類似事例
の発生状況で「抜歯部位の取り違え」を取り上げ、事例を報告した医療機関からご提供いただいたCT・
エックス線画像を掲載した。さらに、第38回報告書(2014年9月公表)の再発・類似事例の発
生状況では、「歯科診療の際の部位の取り違えに関連した事例」を再度取り上げ、主に左右の歯を取
り違えた事例について分析を行った。以上のように、本事業には歯科診療の際に部位を取り違えた事
例が多く報告されていることから、報告書などで繰り返し注意喚起をしてきた。
本報告書では、歯科診療の際に部位を取り違えた事例を含め、医療事故情報として報告された歯科
治療中に発生した事例を過去に遡って検索し、事例の概要を整理した。さらに、本報告書分析対象期間
(2016年7月∼9月)に、歯石除去中にエアスケーラーのチップが破損し、チップの先端を患者が
誤飲した事例が1件報告されたため、歯科治療中に患者が異物を誤飲・誤嚥した事例について分析す
ることとした。
(1)歯科治療中に発生した事例について
①対象とする事例
キーワードを「歯科」として、2011年1月から2016年9月までの間に報告された事例を
検索したところ、458件が該当した。それらの事例の中から、転倒・転落など歯科治療中以外に
発生した事例、顎骨や顎関節、頚部の手術や処置に関する事例を除いた医療事故情報を対象とした。
②報告件数
2011年1月から2016年9月までに報告された医療事故情報のうち、対象とする事例は
155件であった。報告年ごとの件数を図表Ⅲ - 2- 25に示す。
図表Ⅲ - 2- 25 報告件数
報告年
2011
2012
2013
2014
2015
2016
(1∼9月)
合計
件数
24
20
26
27
35
23
155
- 140 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
③歯科治療中に発生した事例の概要
対象とした155件の事例の概要を図表Ⅲ - 2- 26に整理した。部位間違いの事例が57件と
最も多く、治療に伴う合併症・偶発症などが32件、誤飲・誤嚥の事例が30件であった。
図表Ⅲ - 2- 26 事例の概要
事例の概要
件数
部位間違い
57
誤抜歯
44
抜歯以外の処置
13
治療に伴う合併症・偶発症など
32
7
抜歯時の歯根残存
5
出血
3
縦隔気腫
2
咬合調整による偶発症
2
上顎洞への歯の迷入
2
下顎への歯の迷入
2
髄床底への穿孔
2
骨折による咬合不全
1
薬剤によるアナフィラキシー様反応
1
薬剤性の炎症
1
知覚・味覚麻痺
1
軟口蓋の腫脹
1
上顎洞へのインプラントの穿孔
1
インプラント植立時の位置異常
1
誤飲・誤嚥
Ⅲ
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
30
補綴装置・歯冠修復物
15
歯科用医療機器・歯科材料
13
歯
2
異物残存
13
器具等による切創
8
器具等による熱傷
5
その他
10
合 計
155
- 141 -
歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例
皮下気腫
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(2)歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例の分析
本稿では、歯科治療中に発生した事例のうち、異物を誤飲・誤嚥した30件の事例について
分析した。厚生労働科学研究費補助金 地域医療基盤開発推進研究事業「歯科診療所における恒常的な
医療安全管理の基盤構築に関する研究」1)において、歯科診療所からのインシデントとして、受付・
応対・接遇に次いで口腔内への落下、誤飲・誤嚥の事例が多く報告されている。
①事例の内容
歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例のうち、主な事例を図表Ⅲ - 2- 27に示す。
図表Ⅲ - 2- 27 事例の内容
No.
事故の内容
事故の背景要因
改善策
歯科医師は、左下 8 のメタルコアの試適 修復物の試適・装着時には、ガーゼス ・ 口腔内での装着操作では、落下
の際に口腔内にコアを落とした。胸部エッ クリーンやラバーダムで誤飲・誤嚥を 事故が起こる可能性があること
を意識する。
クス線撮影で、右気管支に不透過像を認 予防するが、できていなかった。
・ 落下事故は、水平位診療が最も
め、他院救命救急センターに搬送した。
多いことを認識する。
CТ撮影後、全身麻酔下で気管支内異物
・ ガーゼスクリーンやラバーダム
除去術が行われた。
使用による予防を徹底する。
・ 落 下 し や す い 小 器 具 に は、
1
チェーンや糸など落下防止器具
を装着して用いる。
・ 洗浄針などの緩みを処置前に確
認する。
・ 落下事故発生時には必ずエック
ス線撮影を行い、内科医師の診
断を受け、最終排出まで確認し
て診療録に記録する。
歯科医師は、印象用のコーピングを外す しっかり把持しておくべきだったが、・ ラバーダム等の使用や、コーピ
際に誤って口腔内に落としてしまい、患 落としてしまった。ラバーダム等を装 ングに糸を通しておくことを推
着せず、コーピングに糸を通していな 奨する。
2 者が誤飲してしまった。
かった。
・ 誤嚥時の対応フローチャートを
作成する。
左下3歯冠修復処置時、研修医 1 人で歯
科用エアータービン及び形成用バーにて
歯牙を切削中、タービンから形成用バー
が外れ、舌後方口腔内へ落下した。目視
にて口腔、咽頭にバーを確認できず、誤
飲したと判断し上級医に報告した。確認
のため胸部・腹部エックス線撮影をした
ところ、胃内にバー様の不透過像を認め
たため、消化器内科医師に相談し、内視
鏡下でバーを摘出した。落下したバーに
よる患者への影響はなかった。
3
使用前に、形成用バーをタービンに装 ・ 歯科用タービンの器械の点検を
着した際の確認不足であり、奥まで挿 実施したが問題はなかった。
入していなかった。バーの把持状態の ・ 点検表を作成し、月 1 回定期的
確認不足であり、バーを下に向けて空 にハンドピースの点検を実施す
回しして、外れないことを確認してい る。
なかった。担当指導医が不在時に、経 ・ 歯科用タービンハンドピース使
験不足の研修医が単独で処置にあたっ 用時の注意事項、チェック事項、
ていた。診療補助者がおらず、1人で 歯科治療中の誤飲・誤嚥予防策
歯牙の切削を行っていたため、バーの を医局員、外来スタッフ全員で
落下に対する対処が遅れた。
再確認し、実施を徹底した。
・ 原則として研修医は担当指導医
と一緒に診療することを再確認
し徹底した。
・ シフトを点検し、指導医と研修
医が一緒に診療できるようにし
た。
・ 歯科口腔外科診療における医療
事故防止マニュアルを整備し、
医局内で研修会を実施した。
・ マニュアルは縮小印刷し、病院
の医療事故防止ポケットマニュ
アルに挟み携帯し、常に確認で
きるようにしている。
- 142 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
No.
事故の内容
事故の背景要因
改善策
歯科医師が口腔内を歯石除去中に、エア エアスケーラーチップの先端が破損し ・ スケーラーの破損は起こり得る
ものとして、迅速な対応を行え
スケーラーのチップの先端が破損した。 た(院内で他の報告事例あり)。
るように準備する。
破損確認後、直ちに患者の口腔内を確認
・ 破損片不明時のチェアサイド、
し、口頭での状況確認と洗口の指示をし
院内、院外紹介の流れについて
たが、破損片は確認できなかった。スピッ
シミュレーションを行う。
トン内や周囲を捜索したが、破損片は発
4
見されなかったため、院内の医科を受診
し、胸部・腹部エックス線撮影を行った。
撮影の結果、胃内に破損片が発見された
ため、担当医同伴のもと他院を受診し、
内視鏡検査を行ったところ、経過観察の
診断となった。
歯科医師は、感染根管治療中にカルテを
確認するため、口腔内より目を離し診察台
より離れた。その際、患者が2、3度むせ
込み、上体を起こして含嗽した。再度水
平位にして口腔内を確認し、予定の診察
を終了した。患者は、夕方より腹痛を自
覚し近医を受診したが、様子観察となり
6 帰宅した。腹痛に対しては鎮痛剤を服用
したが改善なく、翌日(日曜日)昼間に
救急外来を受診した。CT上、胃壁部に
金属製の異物を認め、内視鏡下にて摘出
した。摘出した金属性の異物は、根管治
療の際に使用する器具で、むせた時に誤
飲したものだった。
患者がむせた時に、口腔内に根管治療 ・ 鋭利な器具を使用する際には、
用器具は見当たらなかった。カルテの 口腔内に留置せず、患者から目
確認のため診察台を離れる際に、診察 を離さないことを徹底する。
台に同様の器具があったため、口腔内 ・ 誤飲の可能性がある場合、体位
からその治療用器具を除去したと誤認 を完全水平位にはしない。
した。
・ むせた時には誤飲の可能性を考
え器具を確認する。
・ 使用前後での器具の数の確認を
徹底する。
・ 数の確認を容易にするため、必
要最小限の器具を収納するボッ
クスを使用する。
・ ラバーダム(防湿器具であるが
器具の誤飲予防に有効)の使用
を検討する。
②誤飲・誤嚥した異物
患者が異物を誤飲・誤嚥した30件の事例から、誤飲・誤嚥した異物の名称を抽出し、それらを
補綴装置・歯冠修復物、歯科用医療機器・歯科材料、歯に分類して、図表Ⅲ - 2- 28に整理した。
誤飲・誤嚥した異物の多くは金属であり、エックス線画像で確認できるものであった。
- 143 -
Ⅲ
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例
歯科医師は、患者が誤嚥しないよう座位で 金属冠の着脱を行う際、患者が口を開 ・ 歯科領域では口腔内への異物落
治療を行っていた。当日は、左上 4 番と けた時に金属冠が自然脱落する可能性 下への効果的な対策があまりな
6 番の金属冠を装着する予定であった。最 があることに十分注意を払えなかった く、基本は術者の注意深さにか
終的な使用感の確認後、冠を外そうと口を ことが、最も大きな要因だったと考え かってくる。
開けてもらったところ、左下顎臼歯部舌側 る。患者は以前から誤嚥を繰り返して ・ 本患者のように誤嚥する可能性
の口腔底に左上 6 番の冠が自然脱落した。 おり、歯科治療中も頻回にうがいが必 が高い患者には、その場の状況
冠を把持するためピンセットを取ろうとし 要なため、少量の水でもなるべく誤嚥 に合わせて柔軟に対応する(金
たところ、患者が喀出しようと突然起き上 しないように細心の注意を払い毎回座 属冠がゆるめであれば、先に装
がって前傾姿勢になった。直後に、口腔 位で処置を行っていた。金属冠の着脱 着してから最終的な咬合調整を
内、咽頭部を直視下で確認したが金属冠は 時に患者が臥位の場合、術者が手を滑 する等)ことが必要である。
なかった。胸部エックス線撮影し、左主気 らせて冠が口腔咽頭内に落ちることは ・ 術者本人は誤嚥に注意していて
5 管支に金属冠と認める不透過性像を確認し あり得る状況のため、術者のミスによ も事故につながったという点か
た。
る誤嚥を防ぐために当日も座位で治療 ら、事故は常に起こり得ること、
していた。上顎の金属冠装着のため、 自分では注意していても十分で
座位になると重力により金属冠が口腔 はない可能性があることを念頭
内に落ちる可能性がある。その可能性 におき、細心の注意を払いなが
に注意していたものの、金属冠の咬合 ら診療を行っていくことを再確
調整で何度も出し入れを問題なくでき 認する。
ていたため、最後の調整で注意力が失
われたことが要因と考える。患者は、
摂食嚥下機能評価で、嚥下機能の低下
を認めていた。特に咽頭収縮能の低下
および喀出機能の低下があった。
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅲ - 2- 28 誤飲・誤嚥した異物
誤飲・誤嚥した異物
件数
補綴装置・歯冠修復物
固定性補綴装置
金属冠
支台築造
ポストクラウン
切断したブリッジの一部
可撤性補綴装置
クラスプ
クラスプがついたままの義歯の一部
歯冠修復物
インレー
金属修復物
詳細不明
歯科用医療機器・歯科材料
バー
ワイヤー
根管治療用器具
ミニスクリュー埋入用機器のシャフト
エアスケーラーのチップの先端
印象用コーピング
印象用ピン
シリコン印象材
歯
金属冠が装着された歯
破折した歯冠
合 計
15
9
4
3
1
1
2
1
1
2
1
1
2
13
4
2
2
1
1
1
1
1
2
1
1
30
③患者の年齢
患者の年齢を図表Ⅲ - 2- 29に示す。70歳代および80歳以上が9件ずつであった。事例の
背景・要因に、患者の状況として高齢であることを挙げている事例が複数報告されていた。
図表Ⅲ - 2- 29 患者の年齢
(件数)
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
0∼9歳 10歳代 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳代
- 144 -
80歳
以上
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
④実施した検査と異物が見つかった部位
誤飲・誤嚥したために実施した検査は、エックス線撮影が17件であり、エックス線撮影後、
精査のためにCT撮影をした事例は7件であった(図表Ⅲ - 2- 30)
。CT撮影のみ実施した1件
の事例は、歯科医師は、治療中に患者が根管治療用器具を誤飲したことに気付かず診察を終了した
が、患者は治療当日夕方より腹痛を自覚し、翌日救急外来を受診した際にCT撮影をした事例であっ
た。患者が異物を誤飲・誤嚥したことを認識、もしくはその疑いがある事例については、エックス
線撮影を実施し異物の位置を確認していた。
また、誤飲・誤嚥した異物が見つかった部位を集計したところ、胃が11件、気管支が8件など
であった(図表Ⅲ - 2- 31)
。気管支では、左気管支が3件、右気管支が4件、左右の記載がされ
ていなかった事例が1件であった。
図表Ⅲ - 2- 30 実施した検査
実施した検査
エックス線撮影
図表Ⅲ - 2- 31 異物が見つかった部位
件数
異物が見つかった部位
17
件数
喉頭蓋付近
1
エックス線撮影・CT撮影
7
喉頭
1
CT撮影
1
梨状窩(左側)
1
記載なし
5
食道
2
合 計
30
気管支
8
左気管支
3
右気管支
4
左右の記載なし
1
11
腸
1
記載なし
5
合 計
30
⑤患者への影響
事故の程度は、多くの事例で「障害残存の可能性なし」や「障害なし」を選択しており、患者
へ大きな影響を及ぼした事例の報告はなかった。しかし、治療の程度で「濃厚な治療」を選択した
事例は15件であり、「軽微な治療」を選択した事例と合わせると、患者に何らかの治療を要した
事例は約80%を占めていた。
ま た、 図 表 Ⅲ - 2- 3 2 に 誤 飲・ 誤 嚥 し た た め に 実 施 し た 処 置 に つ い て 整 理 し た。 患 者 が
異 物 を 誤 飲・ 誤 嚥 し た 際 に は、 エ ッ ク ス 線 撮 影 や C T 撮 影 を 行 い 異 物 の 位 置 を 把 握 し た 上
で、異物の種類や位置によっては速やかに取り出す必要がある。報告された多くの事例では、
内視鏡や気管支鏡を実施しており、さらに処置をするために全身麻酔や鎮静剤の投与を必要とした
事例もあった。また、内視鏡で確認した事例には、破損したチップの先端が胃にあることを確認し
た後に経過観察とした事例、エックス線撮影にてワイヤーの位置を確認したが、内視鏡で摘出しよ
うとした際に位置が移動しており、自然排泄が可能と判断され経過観察とした事例などがあった。
経過観察とした場合には、異物が確実に体外へ排出されたことを確認することが重要である。
- 145 -
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例
胃
Ⅲ
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅲ - 2- 32 誤飲・誤嚥したために実施した処置
実施した処置
件数
院内の診療科で対応
14
内視鏡で摘出
9
気管支鏡で摘出
2
内視鏡で確認中、咳き込みにて口腔内に戻り鉗子で摘出
1
内視鏡で確認し、経過観察
1
内視鏡を実施しようと試みたが、食道狭窄のため摘出できず
1
他院へ搬送
5
気管支鏡で摘出
2
内視鏡で摘出
1
耳鼻科にて異物の除去
1
内視鏡で確認し、経過観察
1
詳細不明
3
内視鏡で摘出
2
気管支鏡で摘出
1
記載なし
8
合 計
30
⑥異物を誤飲・誤嚥することになった要因
患者が異物を誤飲・誤嚥することになった要因について図表Ⅲ - 2- 33に分類した。把持して
いたものを口腔内に落としたこと、補綴装置など装着していたものが脱落したこと、歯科用医療機
器の接続が外れてその一部が落下したことなどが要因であった。治療する際には、使用する機器の
破損や接続が外れる可能性を認識することや、治療前には使用する機器の接続を確認することが重
要である。なお、歯科用切削機器については、口腔内での治療前に安全確認として、事前の動作確
認をする必要がある。
図表Ⅲ - 2- 33 異物を誤飲・誤嚥することになった要因
異物を誤飲・誤嚥することになった要因
件数
把持していたものの落下
10
装着していたものの脱落
6
歯科用医療機器の接続外れ
4
歯科用医療機器や補綴装置の破損
3
歯の破折
2
その他
5
合 計
30
⑦実施していた治療と内容
図表Ⅲ - 2- 33で分類した要因をもとに、患者が異物を誤飲・誤嚥した際に実施していた治療と
誤飲・誤嚥した異物などの内容を図表Ⅲ - 2- 34に整理した。
- 146 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅲ - 2- 34 実施していた治療と内容
実施していた治療
内容
把持していたものの落下
ポストコアを口腔内に落とした
試適
メタルコアを口腔内に落とした
金属冠を口腔内に落とした
印象採得
印象用のコーピングを外す際、口腔内に落とした
印象用ピン(2×30mm)を口腔内に落とした
歯牙を固定する際、固定用のワイヤーを口腔内に落とした
ワイヤーで固定
臼歯部を固定するためにワイヤーを埋め込む際、ピンセットで把持していた
ワイヤーを口腔内に落とした
ミニスクリューの埋入
電動埋入器先端のシャフトを外そうとした際、シャフトを口腔内に落とした
抜歯
脱離したポストクラウンを鉗子で把持したが、鉗子から落とした
ブリッジの除去
歯牙に残った切断されたブリッジの一部を口腔内に落とした
装着していたものの脱落
試適したメタルコアが外れなくなったため探針で除去を試みたところ、メタ
ルコアが外れ口腔内に落下した
歯牙の抜去
専用の器具で刺激を加えたところ、金属冠が脱落し口腔内に落下した
歯石除去
患者の開口が困難で口腔内がよく見えない状況で処置を行ったため、インレー
が脱落し落下した
金属冠の装着
装着した金属冠を外そうと口を開けてもらった際、口腔内に金属冠が落下し
ていた
金属修復物の装着
装着した金属修復物を外そうとした際、修復物が口腔内に落下していた
抜歯
処置を一旦中断し再開した際、金属冠が脱離し口腔内に落下していた
歯科用医療機器の接続外れ
ブリッジの切断
5倍速コントラからバーが外れ、口腔内に落下した
歯冠の修復処置
タービンから形成用バーが外れ、口腔内に落下した
充填後の咬合面形態修正
FGコントラからバーが外れ、口腔内に落下した
根管治療
超音波洗浄器の設定回転数の変更を忘れたため、接合部でファイルの先端が
外れ、口腔内に落下した
歯科用医療機器や補綴装置の破損
補綴物の除去
歯科用バーの先端が破損し、口腔内に落下した
歯石除去
エアスケーラーのチップの先端が破損し、口腔内に落下した
クラスプの装着
新しいクラスプを義歯に付ける操作を口腔内で行った際、クラスプがついた
ままの義歯の一部が破損し、口腔内に落下した
歯の破折
歯を鉗子で把持したところ歯冠が破折し、その一部が落下した
抜歯
抜歯する歯とその隣の歯にヘーベルを挿入した直後、金属冠がついた隣の歯
が歯根部から破折し舌側に落下した
その他
固定式補綴物の除去
固定式補綴物の連結部を切断した直後に補綴物を見失った
義歯の調整
患者が突然強く咳込んだ際、補綴物を見失った
印象採得
患者が嘔吐、咳き込みを激しく行ったため、印象材が咽頭へ流れ込んだ
クラスプの装着
患者の突発的な舌の動きによりクスラプが舌に引っかかり、口腔内に落下した
根管治療
患者が2、3度むせ込んだ際、根管治療用器具が口腔内に落下したが気付か
なかった
- 147 -
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例
試適
Ⅲ
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
⑧事例の背景・要因
報告された事例の内容から、背景・要因について抽出し、図表Ⅲ - 2- 35に示す。
図表Ⅲ - 2- 35 主な背景・要因
○患者の状態の把握に関すること
・高齢者の反応の鈍さなどの特性の理解が不足していた。
・患者の嚥下機能障害等の把握が不十分であった。
・患児がおしゃぶりをするという情報を聴取していなかったため、アセスメントが不足していた。
○治療部位の状態に関すること
・歯根部の大きな動揺が認められなかったので、破折の危険性を過小評価した。
・固定源の歯牙や金属が予想以上に脆い状態であった。
・齲蝕が進行しており、専用の器具で刺激を加えたところ冠が容易に脱落した。
・抜歯予定の歯には金属冠が合着していたが、抜歯時の操作では容易に脱落する状態であった。
○治療時の判断に関すること
・ 患児は啼泣しており、唾液も多くワイヤーがくっつかない状況であったが、粘着不良の状況下にも関わ
らず、ワイヤーで固定しようとした。
・ 金属冠の着脱を行う際、患者が口を開けた時に金属冠が自然脱落する可能性があることに十分な注意を
払えなかった。
・患者が破損片を舌の先端にのせ差し出した際、すぐに顔を横に向けることが必要であった。
・ 患者がむせた時に口腔内に根管治療用器具は見当たらず、診察台に同様の器具があったため、診察台を
離れる際に口腔内から根管治療用器具を除去したと誤認した。
・ 上顎の金属冠装着のため、座位になると重力で金属冠が口腔内に落ちる可能性があり注意していたが、
金属冠の咬合調整で何度も問題なく出し入れができていたため、最後の調整で注意力が散漫になった。
○治療時の確認に関すること
金属冠処置がされていたので歯根部齲歯の確認ができなかった。
・ 抜歯前にエックス線撮影をして確認したが、
・ 患者は体動が激しく座位が取れず、自ら開口状態を保つことが困難であったため、抜歯前にエックス線
画像で齲蝕の進行状態を確認できなかった。
・印象材挿入時に咽頭への流れ込みを確認しなかった。
・ 歯牙破折時、歯冠は鉗子に挟んだままであると思い込み、破折した歯冠が口腔外にあることを目視で確
認しなかった。
・患者の開口が困難であり、口腔内がよく見えない状況で歯石除去を行った。
○治療時の手技に関すること
・ブリッジを一塊にして取り出すべきだったが、一部切断され歯牙に残った。
・メタルコアを支台歯から外す際、慎重に外さず力を入れて外そうとした。
○治療中の体位に関すること
・水平位で行った。(複数報告あり)
・ 患者は体動が激しく座位が取れず、開口状態を保つことが困難であったため、仰臥位で開口器を使用し
て抜歯を行った。
・ 金属冠の着脱時に患者が臥位の場合、術者が手を滑らせて冠が口腔咽頭内に落ちることはあり得るため、
当日は座位で診療していた。
- 148 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
○使用した歯科用医療機器や歯科材料に関すること
・印象材の使用量を誤り、必要以上に多く使用した。
・治療時間の短縮のため、破損しやすい種類のバーを使用した。
・修復物が小さく(8mm×5mm×7mm)、脱落しやすい形状だった。
・義歯は3∼4年目のものであり、経年劣化を考慮する必要があった。
・超音波洗浄器にて根管洗浄中に設定回転数の変更を忘れたため、接合部でファイルの先端が外れた。
・使用前に形成用バーをタービンに装着した際、奥まで挿入されているかの確認が不足していた。
・形成用バーを下に向けて空回しして、外れないことを確認しなかった。
○ガーゼ等を使用した誤飲・誤嚥予防対策に関すること
・口腔内をガーゼで覆うなどの予防をしなかった。
・ガーゼを置く位置が適切ではなかった。
・ 修復物の試適や装着時には、ガーゼスクリーンやラバーダムで誤飲・誤嚥を予防することにしていたが、
できていなかった。
・ラバーダム等を装着せず、コーピングに糸を通していなかった。
・リムーバルノブを付与していなかった。
Ⅲ
○患者への説明に関すること
・患者に舌を動かさないように説明することが不十分であった。
○診療体制に関すること
・担当指導医が不在時に、経験不足の研修医が単独で処置をした。
・診療補助者がいなかったため1人で歯牙の切削を行っており、バーの落下に対する対処が遅れた。
○その他
・当事者の経験不足があった。
⑨事例が発生した医療機関の改善策について
事例が発生した医療機関の改善策を、1)誤飲・誤嚥予防に関すること、2)誤飲・誤嚥発生時
の対応に関すること、3)その他に整理して、図表Ⅲ - 2- 36に示す。
図表Ⅲ - 2- 36 事例が発生した医療機関の改善策
1)誤飲・誤嚥予防に関すること
○患者の状態の把握について
・ 誤嚥する可能性が高い患者には、その場の状況に合わせて柔軟に対応する(金属冠が緩めであれば、先
に装着してから最終的な咬合調整をする等)ことが必要である。
・患者の年齢や病態に応じて、体位の配慮や処置、特に吸引操作を確実に行う。
・ 他院に入院中の患者を診療する際は、患者の病状や嚥下機能等を把握するために、入院先の病院との連
携を密にして情報の共有を図る。
○治療部位の状態について
・治療済みの歯の動揺などについて十分評価する。
・補綴物装着歯の抜歯時には、補綴物が脱落すると想定して抜歯を行う。
・脱落しやすい補綴物等は積極的に除去する。
- 149 -
歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例
・患者が入院している病院との連携が不足していた。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
○治療時の手技について
・口腔内での装着操作は、落下事故が起こる可能性があることを意識する。
・鋭利な器具を使用する際には、器具を口腔内に留置せず、患者から目を離さないことを徹底する。
・ブリッジの除去は、ブリッジに切れ目を入れるが切断しないよう一塊にして取り出す。
・ミニスクリュー着脱時に、シャフトを埋入器本体から切り離さず一塊としてミニスクリューから外す。
・抜歯時には歯科用バキュームを添える。
○治療中の体位について
・座位で行う。(複数報告あり)
・落下事故は、水平位での診療が最も多いことを認識する。
・水平位での診療は誤嚥を起こしやすいことから、可能な限り座位での診療を行う。
○使用する歯科用医療機器・歯科材料の選択について
・ワイヤーを把持する際は、滑り止め付きピンセットを使用する。
・破損しにくいバーを使用する。
・修復物を設計する際に配慮する。
・使用材料の変更および術式の変更を検討する。
○使用する歯科用医療機器の確認について
・コントラにバーを装着する際の確認を十分に行う。
・処置前に洗浄針などの緩みを確認する。
・コントラの緩みがないか定期的に確認する。
・点検表を作成し、月1回定期的に歯科用タービンハンドピースの点検を実施する。
・ 使用前後での器具の数の確認を徹底する。数の確認を容易にするため、必要最小限の器具を収納するボッ
クスを使用する。
○落下防止器具などの使用について
・コーピングに糸を通しておくことを推奨する。
・落下しやすい小器具には、チェーンや糸など落下防止器具を装着して使用する。
・修復物にデンタルフロスを結びつけるなど、口腔内に落としても飲み込まないための工夫をする。
・誤嚥防止のためにリムーバルノブを付与する。
・補綴装置に可能な限り落下防止のためのデンタルフロスが装着可能なループ付きノブを装着するように
する。
○ガーゼ等で口腔内を覆うことによる落下防止について
・口腔、咽頭内への落下防止策として、処置時は口腔内へガーゼ等を置く。(複数報告あり)
・咽喉部をガーゼで覆う。
・誤嚥のリスクがある患者は、可能な限り座位にして、咽頭部にガーゼを置く。
・試適時に反対の手でガーゼを保持するなど、ガーゼの扱いに注意する。
・ガーゼを使用する際は、ガーゼの量や設置場所に留意し、患者の呼吸状態等を観察する。
・ラバーダム(防湿器具であるが器具の誤飲予防に有効)の使用を検討する。
・ガーゼスクリーンやラバーダム使用による予防を徹底する。
・口峡部にガーゼを置いた状態もしくはラバーダムを装着して処置を行う。
- 150 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
2)誤飲・誤嚥発生時の対応に関すること
○誤飲・誤嚥を確認した際の対応について
・咽頭部に異物が入った時は、すぐに患者の顔を横に向ける。
(複数報告あり)
○異物の確認について
・歯が破折した場合には、すぐに破折片の所在を確認する。
・患者がむせた時には誤飲の可能性を考え器具を確認する。
・必ずエックス線撮影を行い、内科医師の診断を受け、最終排出まで確認して診療録に記録する。
3)その他
○患者への説明について
・バーなどの器具の落下が起こる可能性について説明する。(複数報告あり)
・落下時には患者にも落ち着いて吐き出してもらうように、事前に伝える。
・処置前に誤嚥の危険性を説明して、なるべく舌を動かさないように患者に依頼する。
・外れやすいものについては患者に説明しておく。
・患者にむせそうな際には左手を挙げて知らせてもらうなどの対応をあらかじめ伝える。
・バーなどが落下した時は、患者に状況を説明し冷静に対処する。
Ⅲ
・ 患児の機嫌や状態を観察し、体動が激しい時は無理に外来診察室で処置を行わず、家族へ説明して鎮静
下で処置を行う。
○マニュアル等の作成や教育について
・歯科口腔外科診療における医療事故防止マニュアルを整備し、医局内で研修会を実施した。
・ マニュアルは縮小印刷し、病院の医療事故防止ポケットマニュアルに挟み、携帯して常に確認できるよ
うにしている。
歯科治療中の誤飲・誤嚥予防策を医局員、
・ 歯科用タービンハンドピース使用時の注意事項やチェック事項、
外来スタッフ全員で再確認し実施を徹底した。
ための改善策を行うこととした。
・誤嚥時の対応フローチャートを作成する。
・破損片不明時のチェアサイド、院内、院外紹介の流れについてシミュレーションを行う。
・スケーラーの破損は起こり得るものとして、迅速な対応を行えるように準備する。
・ワイヤーを用いての整復固定の基準を教育する。
○診療体制について
・アシストに1人ついてもらい、落下後すぐに対応してもらう。
・インプラント埋入時はアシストをつけ、2人以上で診療を行う。
・ 原則として研修医は担当指導医と一緒に診療することを再確認し、シフトを点検し、指導医と研修医が
一緒に診療できるようにした。
<参考> 歯科治療時の局所的・全身的偶発症に関する標準的な予防策と緊急対応のための指針に
ついて
日本歯科医学会厚生労働省委託事業である「歯科保健医療情報収集等事業」では、「歯科治療時
の局所的・全身的偶発症に関する標準的な予防策と緊急対応のための指針」2)において、誤飲・誤
嚥発現時の診療体位はリクライニング位や水平位での診療が多く、座位での発現が最も少ないと報
告されていることから、可能な状況であれば座位で施行することや、水平位で歯科治療を行う際に
は舌根部にガーゼを置くことが勧められるとする内容を掲載している。同指針には、その他にも誤
飲・誤嚥の予防のために勧められる事項が解説とともに掲載されているため、本報告書と併せて参
考にしていただきたい。
- 151 -
歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例
・ 治療時の誤嚥に対する確認を歯科医師とともにスタッフも認識することにより、院内全体で再発防止の
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(3)まとめ
本報告書では、医療事故情報として報告された歯科治療中に発生した事例について整理し、そのう
ち治療中に患者が異物を誤飲・誤嚥した30件の事例について分析を行った。
患者が異物を誤飲・誤嚥することになった要因として、把持していたものを口腔内に落とした事例
が10件と多かった。また、誤飲・誤嚥した異物の多くは金属であり、エックス線画像で確認できる
ものであった。患者が異物を誤飲・誤嚥したと認識した際は、エックス線画像などで異物の位置を把
握し、異物の種類や位置によっては速やかに取り出す必要がある。なお、異物の種類や位置により経
過観察とした際には、体外へ異物が排出されたことを確認することが重要である。
また、事例が発生した医療機関の改善策では、誤飲・誤嚥の予防対策として座位で治療を行うこと
やガーゼやラバーダムで口腔内を覆うことなどが挙げられており、誤飲・誤嚥発生時の対応とともに
整理した。治療時は可能な限り予防対策を講ずることや、患者が誤飲・誤嚥した際には速やかに対応
できるようにすることが必要である。
(4)参考文献
1. 平成26年度厚生労働科学研究費補助金 地域医療基盤開発推進研究事業.研究代表者 森崎市
冶郎.
「歯科診療所における恒常的な医療安全管理の基盤構築に関する研究」
(2015年5月).
(online)available from < http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.
do?resrchNum=201424022A >(last accessed 2016-10-18)
.
2. 厚生労働省委託事業「歯科保健医療情報収集等事業」作業班班長 一戸達也.
「歯科治療時の局
所的・全身的偶発症に関する標準的な予防策と緊急対応のための指針」(2014年3月).
(online)available from < http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000Iseikyoku/0000109094.pdf >(last accessed 2016-10-18)
.
- 152 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
【3】小児用ベッドからの転落に関連した事例
医療機関において特に乳幼児に使用される小児用ベッドは、治療・処置のしやすさや、患者自身が
ベッドを乗り降りすることを想定していないため、床面からマットレスまでの高さが70cm程度と
成人用ベッドより高い。また、小児用ベッドには患者の転落防止のため四方を囲むサークル型の柵が
あり、平均的な身長が85cm∼110cmの2∼5歳の幼児が容易にベッド柵を越えられないよう
柵の高さは80cm程度に設計されている。しかし、左右側にあるベッド柵はスライド式で、2段階
または3段階の高さで固定することが可能であり、上段以外で固定されている場合は、ベッドからの
転落の危険性が高まる。
小児の患者は年齢によって発達段階に大きな違いがあり、ベッドからの転落の危険性を認識していな
い場合がある。また、成人と比べると小児の体型は体長に比較し頭が大きいなどの特徴があり、ベッド
柵を下げている場合に頭から転落する危険性が高い。さらに、小児の患者の入院には付き添いの家族
がいることが多く、付き添いの家族がベッド柵を下げたまま目を離し、患者が寝返りをうったりベッド
柵を乗り越えたりしてベッドから転落してしまうこともある。
Ⅲ
今回、本報告書分析対象期間(2016年7月∼9月)に、使用していた小児用ベッドのベッド柵
が中段になっていたところ、患者がベッド柵に寄り掛かり、ベッドから転落する事例が1件報告され
た。そこで本報告書では、事例を過去に遡って検索し、小児用ベッドからの転落に関連した事例を分
析した。
<参考>
事例のイメージ
ベッド柵が上段まで上がっている状態
小児用ベッドからの転落に関連した事例
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
(1)発生状況
①対象とする事例
本分析では、2011年以降に報告された医療事故情報の中から、
「小児」
「ベッド」のキーワード
を含む事例を検索し、さらに15歳未満の患者がベッドから転落した事例を抽出した。その中から、
成人用ベッドを使用していた事例を除き、
「小児用ベッド」
「サークルベッド」などの言葉から小児
用ベッドを使用していることが明らかな事例を対象とした。
- 153 -
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
②報告件数
2011年1月から2016年9月までに報告された医療事故情報のうち、対象とする事例は
4件であった。報告年ごとの報告件数を、図表Ⅲ - 2- 37に示す。
図表Ⅲ - 2- 37 報告件数
報告年
2011
2012
2013
2014
2015
2016
(1∼9月)
合計
件数
0
0
0
1
1
2
4
(2)事例の概要
①転落時のベッド柵の状態
事例の内容から、転落時のベッド柵の状態をまとめた(図表Ⅲ - 2- 38)
。ベッド柵を中段にし
ていた事例は3件で、ベッド柵を上げていなかった事例は1件であった。
図表Ⅲ - 2- 38 転落時のベッド柵の状態
ベッド柵の状態
件数
ベッド柵を中段にしていた
3
ベッド柵を上げていなかった
1
②患者の年齢
患者の年齢を集計した(図表Ⅲ - 2- 39)
。1歳未満の乳児が2名、3歳と4歳の幼児がそれぞ
れ1名であった。
図表Ⅲ - 2- 39 患者の年齢
年齢
件数
1歳未満
2
3歳
1
4歳
1
③患者への影響
対象となった事例には、事故の程度が「死亡」や「障害残存の可能性がある(高い)
」が選択さ
れた事例はなかった。しかし、小児用ベッドは成人用ベッドと比較して床面からマットレスまでの
高さが高く、ベッドからの転落は患者に何らかの影響を与える可能性が高い。そこで、事例の内容
から、ベッドからの転落による患者への影響と行った治療・処置をまとめた(図表Ⅲ - 2- 40)
。
4事例のうち、頭部の外傷の事例が3件、上腕の骨折の事例が1件であり、その後、手術を行っ
た事例は2件であった。
- 154 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅲ - 2- 40 患者への影響と行った治療・処置
患者への影響
行った治療・処置
左急性硬膜下血腫
穿頭洗浄術
右側頭部3cm大の円形の陥没
脳神経外科医師の診察、CT検査
外傷性くも膜下出血、後頭骨骨折
記載なし
上腕骨顆上骨折
手術
(3)事例の内容
小児用ベッドからの転落に関連した事例4件を図表Ⅲ - 2- 41に示す。
図表Ⅲ - 2- 41 事例の内容
No.
事故の内容
事故の背景要因
改善策
ベッド柵を中段にしていた事例
- 155 -
Ⅲ
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
小児用ベッドからの転落に関連した事例
4歳の患者は、ベッド上安静中であった。9時20 通 常、 母 親 は ベ ッ ド の 右 側 に お ・ ベッド柵に注意喚起の掲示
分、看護師Aはバイタルサイン測定のため訪室し、 り、左側はカーテンが足元中央ま を追加した。
患者に向かって右側から体温測定を行った。その で引かれていた。左側のベッド柵 ・ 移動用ノートPCに「ベッ
後、母親が横シーツの交換を希望したため、看護師 はいつも最上部まで上げられてい ド柵確認」の注意喚起を掲
Aは患者に向かって左側へ移動し、作業がしやすい た。患者の身長は約98cmであ 示した。
ようにベッド柵を一番下まで下げ横シーツを交換し り、ベッドのマットレスから中段 ・ 病棟PCに転棟転落アセス
た。右側のシーツは母親が整えた。シーツ交換中 になったベッド柵の上部までの高 メントシートの再評価の時
に、ペア看護師Bが病室へ来た。看護師Aは横シー さは28cm、床面から中段になっ 期とタイミングの一覧を掲
ツを交換後、左側のベッド柵を中段まで上げ、患者 たベッド柵上部までの高さは97 示した。
の血圧測定と聴診を行い、測定結果を看護師Bへ報 cmであった。看護師Aは、母親 ・ 朝のカンファレンスの時に、
告した。その際、ベッド柵が中段であることに気付 がいるから上段まで上がっていな 転棟転落アセスメントスコ
いていた。この時、看護師Bはカーテン越しに患者 くても大丈夫と判断した。看護師 アシートの再評価が必要な
の足元で電子カルテの入力作業を行ったため、看護 Aは、母親にベッド柵が上段まで 患者をチェックする。
師Aのいる左側のベッド柵は見えていなかった。バ 上がっていないことを伝えなかっ ・ 病棟スタッフでKYTを実
イタルサイン測定が終了後、看護師Aは母親がいる た。マニュアル遵守ができておら 施した。
から大丈夫だと思い左側ベッド柵を一番上まで上げ ず、危機管理意識も不足していた。・ 今回の事象を時系列で整理
ず、中段のままで看護師Bと退室した。この時、母 ペア看護師Bは、カーテン越しに し、P-mSHELL 分 析 を 病 棟
親へ左側のベッド柵が中段になっていることは伝え 患者の足元で電子カルテの入力作 スタッフで実施した。
1 なかった。看護師Bもベッド柵の確認は行わず退室 業を行っており、看護師Aに十分 ・ パートナーシップ・ナーシ
した。20分後、別の病室付近を歩いていた看護師 注意を払えていなかった。加えて、 ング・システム体制におけ
Aが「ドン」という音を聞き病室へ駆けつけた。同 バイタルサイン測定時、ベッド柵 る 確 認 に つ い て 話 し 合 い、
時にナースコールがあり看護師Bも同室へ駆けつけ が中段であったことに気付いてい 意識の共有を行った。
た。看護師AとBが駆けつけた時は、母親が患者を たが、退室時にベッド柵の確認を
抱っこし、ベッド右側の椅子に座っていた。患者は 怠った。看護師Bは、看護師Aが
「痛い、痛い」と啼泣していた。看護師Aがすぐに ベッド柵を上げないことはないと
当直医師へ報告した。意識レベル清明、血圧137 の思い込みがあった。ベッド柵に
/92mmHg、脈拍120回/分であった。母親 対する教育は常日頃から看護師に
に聞くと、尿器を片付けようとベッドサイドを離れ 行っており、いつもベッド柵は上
た際に転落したとのことであった。患者は通常右側 げていたので、ベッド柵に対する
からベッドの乗り降りをしており、左側の柵はいつ 安全管理意識は身についていると
も一番上まで上がっていた。今回、患者がベッドの 思い込んでいた。危険度1の患者
上に立った状態でいつものように左側の柵に寄り掛 の再評価が漏れがちであった。看
かろうとし、柵が中段までしか上がっておらず転落 護師Aは、新採用から2ヶ月がた
したと考えられる。
ち、療養上の世話に関する看護行
為は自立しているという認識があ
り、ペアで行う看護行為の最終確
認ができていなかった。
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
No.
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
事故の内容
兄妹で入院していたため、2つのベッドを隣接させ
て設置しており、患者はそれぞれ自分のベッド上に
いた。看護師は母親に抱かれた妹の点滴挿入部の
テープ交換をしていた。その際、兄(3歳)が自分
のベッド上で飛び跳ね遊んでいたため、中止するよ
2
う声掛けを行っていた。看護師がテープ交換に集中
していたところ物音が聞こえ、確認すると兄がベッ
ドの下に仰臥位で倒れていた。主治医が診察し、エッ
クス線撮影後、整形外科にコンサルトした。左上腕
骨顆上骨折と診断され、翌日、手術を実施した。
事故の背景要因
改善策
看護師は、妹の点滴挿入部のテー ・ 入院時、転落事故防止パン
プ交換に意識が集中していた。兄 フレットを配布する。
側 の ベ ッ ド 柵 は 中 段 ま で し か 上 ・ 転落防止ポスターをベッド
がっていなかった。兄がベッド上 に貼付する。
で飛び跳ねていたが、転落するか ・ 訪室時は必ずベッド柵を確
もしれないというリスク感性が欠 認する。
如 し て い た。 付 き 添 い の 母 親 は、
妹を抱いていた。
6時の巡視時、0歳10ヶ月の患者の胸郭の動きを 入院時のオリエンテーションの際、・ 入院という環境の変化を踏
確認した。その際、小児用ベッド内で母親が添い 患者から離れる時にはベッド柵を まえて家族に転落に対して
寝しており、ベッド柵は患者側が一番上まで、母 一番上まで上げるよう母親へ説明 の注意の説明を行い、転落
親側は中段になっていた。50分後、啼泣してい していた。母親がおもちゃをとろ 予防に参画してもらう。
る患者を抱っこした母親がナースステーションへ来 うとして患者に背を向けた際、患 ・ パンフレットの内容を読ん
て「ベッドから転落した」とリーダー看護師に伝え 者が床に転落していた。ベッド柵 で説明するだけでなく、実
た。受け持ち看護師は血圧121/80mmHg、 は 中 段 で あ っ た。 患 者 の 身 長 は 例を上げて説明する。
SpO2:100%、四肢の動きは活発で視線が合 71cm、ベッドのマットレスか ・ 患者の発達段階に合わせた
うこと、右側頭部に3cm大の円形の陥没があるこ ら中段の柵までの高さは27cm 転倒・転落予防対策を立て
3 とを確認した。小児科当直医に報告し診察、小児科 であった。患者から離れるときは る。
医から脳神経外科当直医へ連絡し診察を受けた。脳 ベッド柵を上げるよう入院時に説 ・ 最低限行わなければならな
神経外科医師の指示にてCT検査を施行し、骨の陥 明していたが、患者から目を離す い説明内容のチェックリス
没を認めるが頭蓋内に出血は認められず、様子観察 とき、背を向けるときにもベッド トを作成し、使用すると共
となった。脳神経外科医師より食事摂取可能との指 柵を一番上まで上げるように説明 に、 説 明 内 容 を 各 自 が 理
示を受け、半量の食事を摂取しミルク200mLを は行っていなかった。また、患者 解して説明できるようなス
哺乳したが、その後、消化器症状はなかった。母親 の身長、成長発達段階に応じたア タッフ用の詳細なマニュア
へ確認するとベッド柵を半分の高さまで下げた状態 セスメントが不十分であり、患者 ルを作成する。
で、母親が患者に対し背中を向けた際に転落したと に対する個別性のある説明、計画
言われた。
が不十分であった。
ベッド柵を上げていなかった事例
入院時 転倒転落の危険性について口頭で説明し 入院時にベッドからの転落につい ・ 家族に対して転落に対する
た。翌日夕方、母親がベッド柵を下ろした状態で ての説明を行い、ベッド柵を上げ 危険性を口頭で説明するだ
ベッド上に座り、0歳7ヶ月の患者を抱っこしてい る こ と を 指 導 し て い た。 し か し、 けでなく、発達に応じた危
たため、看護師が転落に注意するよう声掛けを行っ ベッド柵を上げることが守られて 険性の説明について書面を
た。21時前、母親から患者がベッドから落ちたと いなかった。訪室時ベッド柵を下 使用して行う。
ナースコールがあり訪室した。訪室時は母親がすで げているのを発見した時、柵を上 ・ 看護師は訪室時にベッド柵
に患者を抱いており、患者の口唇より出血を認めた。 げるように指導したが守られてい を下げている状況を発見し
すぐにバイタルサイン測定を行っていたが呼吸数の なかった。また、看護師が柵を上 た時はベッド柵を直ぐに上
げる。
減少、徐脈、意識レベルの低下を認めたため、他 げなかった。
・ ベッド柵を上げることを守
の看護師と一緒に処置室に移動した。HR:70∼
れない家族は、転落に対す
130回/分、SpO2:88∼100%。母親は
「ベッドの端のほうでオムツを換え、ごみ箱に捨て
る認識が低いと考え、転落
ようと目を離した時に寝返り、お腹を下にして転落
の危険性と転落防止の必要
4
した。」と転落時の状況を述べた。直ちに他の看護
性を再度説明し、適宜床面
師に応援要請を行い、外科・小児科当直医師、当直
に衝撃吸収マットレスを敷
師長に報告した。処置室にてモニタを装着した。医
くようにする。
師到着後も意識レベル低下があり呼吸状態が不安定
であったため医師の指示のもと肩枕を入れ、酸素8
∼9L/分マスクにて施行した。その後、SpO2
の低下無く、医師の指示にて酸素は中止したが、刺
激しないと意識レベルが低下した。頭部CT撮影を
行った結果、左急性硬膜下血腫と診断され、脳神経
外科医師が診察を行った。脳神経外科医師より父親
に病状及び手術の必要性について説明し、手術につ
いての同意を得た。その後、穿頭洗浄術を施行した。
手術後は全身管理のためPICUに転棟となった。
- 156 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(4)事例の背景・要因
①ベッド柵の状態と転落時の状況
事例に記載されていた内容から、ベッド柵の状態と転落時の状況をまとめた(図表Ⅲ - 2- 42)
。
いずれも付き添いの家族がいた事例であった。
ベッド柵の状態を見ると、看護師がベッド柵を中段にした事例が1件(事例1)であり、付き添
いの家族がベッド柵を中段または下段まで下げていた事例が2件(事例3、4)であった。事例2
については、ベッド柵が中段になっていた背景は分からなかったが、そばに看護師がいたものの、
別の患者の対応に集中しており、転落した患者のベッド柵の状況に注意が向かなかった事例であっ
た。看護師はベッド柵を上段まで上げていないことによる危険性を十分に認識し、患者の安全を守
る必要がある。
転落時の状況のうち、看護師がそばにいなかった事例3、4については、付き添いの家族が目を
離した隙に転落した事例であった。特に小児においては、想定外の行動を取ることがあるため、付
き添いをする家族に入院時オリエンテーションなどでベッド柵を上げることを説明する際に、ベッ
Ⅲ
ドから転落した場合に患者に与える影響など、具体的な危険性について説明する必要性が示唆され
た。
図表Ⅲ - 2- 42 ベッド柵の状態と転落時の状況
No.
ベッド柵の状態
転落時の状況
看護師
付き添いの家族
患者
ベッド柵を中段にしていた事例
2
兄妹で入院していたた ・ 妹の点滴挿入部のテー 妹を抱っこしていた。
め2つのベッドを隣接 プ 交 換 に 集 中 し て い
し て 設 置 し て お り、 転 た。
落 し た 患 者( 兄 ) 側 の ・ ベッド上で飛び跳ねて
ベッド柵が中段になっ いる患者(兄)に注意
が向かなかった。
ていた。
3
添い寝をしていた母親
側のベッド柵が中段に
なっていた。
ベッド柵が中段になっ ベッドの上に立った状
て い る こ と を 知 ら ず、 態でベッド柵に寄り掛
尿 器 を 片 付 け よ う と かかった。
ベッドサイドを離れた。
ベッド上で飛び跳ねて
いた。
おもちゃを取ろうとし 詳細不明。
て患者に背を向けた。
−
ベッド柵を上げていなかった事例
4
おむつ交換直後でベッ
ド柵が上がっていな
かった。
ベッドの端でオムツを 寝返りをうった。
換 え、 ご み を 捨 て よ う
と目を離した。
−
- 157 -
小児用ベッドからの転落に関連した事例
1
看護師が血圧測定を行 ・ 母親がいるので、ベッ
う 際、 ベ ッ ド 柵 を 中 段 ド柵を上段まで上げな
にした。
かった。
・ 母親にベッド柵を中段
にしたことを伝えな
かった。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
②事例に記載された主な背景・要因
小児用ベッドからの転落に関連した事例の背景・要因をまとめ、図表Ⅲ - 2- 43に示す。
図表Ⅲ - 2- 43 主な背景・要因
ベッドやベッド柵
・ 通常、ベッドの右側に母親がおり、左側のベッド柵はいつも上段まで上げられていたが、左側の足元中
央までカーテンが引かれていたため、立つ位置によっては左側のベッド柵の状況が見えなかった。
・患者の身長は98cmのところ、中段にしたベッド柵上部の高さはマットレスから28cmであった。
・患者の身長は71cmのところ、中段にしたベッド柵上部の高さはマットレスから27cmであった。
看護師
○危機管理意識の不足
・新人看護師は職種経験0年2ヶ月であり、危機管理意識が不足していた。
・ 看護師は、サークルベッド柵が上段まで上がっていない状況で、患者がベッド上で飛び跳ねていること
に対して、転落するかもしれないというリスク感性が欠如していた。
・訪室時、看護師はベッド柵を下げているのを見たが、柵を上げなかった。
・ 看護師は、別の患者の点滴挿入部のテープ交換に意識が集中し、ベッド上で飛び跳ねている患者に注意
が向かなかった。
・看護師は、母親がいるからベッド柵が上段まで上がっていなくても大丈夫と判断した。
○アセスメント不足
・患者の身長、成長発達段階に応じたアセスメントが不十分であった。
・患者に対する個別性のある説明や、計画立案が不十分であった。
○説明不足
・ 入院時、患者から離れるときはベッド柵を上げるよう家族に説明していたが、患者から目を離す際や、
背を向ける際にもベッド柵を一番上まで上げることなどを具体的に説明していなかった。
・看護師がベッド柵を中段にした際に、母親にベッド柵が上段まで上がっていないことを伝えなかった。
○新人看護師への確認不足
・ ペア看護師は、カーテン越しに患者の足元で電子カルテの入力作業を行っており、新人看護師へ十分注
意を払えていなかった。
・ 新採用から2ヶ月がたち、療養上の世話に関する看護行為は自立しているという認識があり、ペアで行
う看護行為の最終確認ができていなかった。
・ペア看護師は、新人看護師が退室時にベッド柵を上げていないとは思っていなかった。
○その他
・ 常日頃から看護師に対してベッド柵に対する教育を行っていたため、ベッド柵に対する安全管理意識は
身についていると思い込んでいた。
家族
・ 入院時オリエンテーションの際や訪室した際にベッド柵を下げているのを発見した場合には、ベッド柵
を一番上まで上げるよう母親へ説明していたが、母親は守っていなかった。(複数報告あり)
- 158 -
2 個別のテーマの検討状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(5)事例が発生した医療機関の改善策について
事例が発生した医療機関の主な改善策をまとめて以下に示す。
①ベッド柵の確認
・訪室時は必ずベッド柵を確認する。
・訪室時にベッド柵を下げている状況を発見した時は、ベッド柵を直ぐに上げる。
②家族への説明
・ 最低限行わなければならない説明内容のチェックリストを作成して使用すると共に、説明内容
を各自が理解して説明できるようなスタッフ用の詳細なマニュアルを作成する。
・ 家族に対して転落の危険性を口頭で説明するだけでなく、発達に応じた危険性について実例を
挙げて具体的に説明する。
・ 入院という環境の変化を踏まえ、家族に転落について説明を行い、転落予防に参画してもらう。
Ⅲ
③注意喚起
・ベッド柵に注意喚起の掲示を追加した。
・転落防止ポスターをベッドに貼付する。
・移動用ノートPCに「ベッド柵確認」の注意喚起を掲示した。
④その他
・患者の発達段階に合わせた転倒・転落予防の対策を立てる。
・ 朝のカンファレンスの時に、転棟転落アセスメントスコアシートの再評価が必要な患者をチェック
する。
・ ベッド柵を上げることを守れない家族は、転落に対する認識が低いと考え、転落の危険性と転
落防止の必要性を再度説明し、適宜床面に衝撃吸収マットレスを敷く。
・ 病棟スタッフでKYTを実施した。また、今回の事象を時系列で整理し、P-mSHELL 分析を実
施した。
(6)まとめ
本報告書分析対象期間に、小児用ベッドから患者が転落した事例が1件報告された。過去に遡って
本事業への報告事例を検索すると類似事例が3件あった。本報告書では、患者の年齢や転落による患
者への影響を整理するとともに事例を掲載し、さらにベッド柵の状態と転落時の状況をまとめた。
小児用ベッドのベッド柵は、患者の転落防止のため高さ80cmのサークル型になっている。しか
し、左右側にあるベッド柵はスライド式で低い位置で固定できるため、転落の危険性がある。小児用ベッ
ドは床面からマットレスまでの高さが成人用ベッドに比べ高く、さらに小児においては想定外の行動
を取ることがあり、患者の安全を守るため、処置等以外はベッド柵を上段まで上げておくことを徹底
する必要がある。
また、小児患者の場合は付き添いの家族がいることも多く、患者の家族へベッド柵を上段まで上げ
ておくことや転落による危険性について説明することが重要であることが示唆された。
- 159 -
小児用ベッドからの転落に関連した事例
・病棟PCに転棟・転落アセスメントシートの再評価の時期の一覧を掲示した。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
3 再発・類似事例の発生状況
本事業では、第3∼17回報告書において「共有すべき医療事故情報」として、医療事故情報を分析
班等で個別に検討し、広く共有すべきであると考えられた事例の概要を公表してきた。また、第1回
∼本報告書において「個別のテーマの検討状況」として、分析対象となるテーマを設定し、そのテーマ
に関連する事例をまとめて分析、検討を行っている。
さらに、これまでに「共有すべき医療事故情報」や「個別のテーマの検討状況」として取り上げた
事例の中から、特に周知すべき情報を提供するため「医療安全情報」を公表している。
ここでは、
「共有すべき医療事故情報」
、「個別のテーマの検討状況」や「医療安全情報」として取
り上げた内容の再発・類似事例の発生状況について取りまとめた。
【1】 概況
これまでに取り上げた「共有すべき医療事故情報」の再発・類似事例の件数について図表Ⅲ - 3- 1、
「個別のテーマの検討状況」の再発・類似事例の件数について図表Ⅲ - 3- 2にまとめた。
本報告書分析対象期間に報告された「共有すべき医療事故情報」の再発・類似事例の内容は21で
あり、事例数は53件であった。このうち、類似事例が複数報告されたものは、「体内にガーゼが残
存した事例」が7件、「左右を取り違えた事例」、「歯科診療の際の部位間違いに関連した事例」がそ
れぞれ5件、
「インスリン投与間違いの事例」
、「熱傷に関する事例(療養上の世話以外)
」がそれぞれ
4件、「『療養上の世話』において熱傷をきたした事例」、「ベッドなど患者の療養生活で使用されてい
る用具に関連した事例」、「病理検体に関連した事例」がそれぞれ3件、「薬剤の名称が類似している
ことにより、取り違えた事例」、「小児の輸液の血管外漏出」、「三方活栓使用時の閉塞や接続はずれ等
に関する事例」、「薬剤の注入経路を誤って投与した事例」、「ベッドからベッドへの患者移動に関連し
た事例」、「ベッドのサイドレールや手すりに関連した事例」がそれぞれ2件であった。
また、本報告書分析対象期間に報告された「個別のテーマの検討状況」の再発・類似事例のテーマ
は20であり、事例数は39件であった。このうち類似事例が複数報告されたものは、
「凝固機能の
管理にワーファリンカリウムを使用していた患者の梗塞及び出血の事例」、「皮下用ポート及びカテー
テルの断裂に関連した医療事故」がそれぞれ4件、
「画像診断報告書の内容が伝達されなかった事例」、
「膀胱留置カテーテル挿入の際、尿流出を確認せずにバルーンを膨らませ尿道損傷を起こした事例」
、
「院内での自殺及び自殺企図に関する事例」がそれぞれ3件、「薬剤内服の際、誤ってPTP包装を飲
んだ事例」、「散剤の薬剤量間違い」、「気管切開チューブが皮下や縦隔へ迷入した事例」、「与薬時の患
者または薬剤の間違いに関連した事例」、「胃管の誤挿入に関連した事例」、「観血的医療行為前に休薬
する薬剤に関連した事例」、「外観の類似した薬剤の取り違えに関連した事例」がそれぞれ2件であっ
た。
- 160 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅲ - 3- 1 2016年7月から9月に報告された「共有すべき医療事故情報」の再発・類似事例
内容
掲載報告書(公表年月)
薬剤の名称が類似していることにより、取り違えた事例
2
第 3 回(2005 年 10 月)
ガベキサートメシル酸塩を投与する際、輸液が血管外に漏出した事例
1
第 3 回(2005 年 10 月)
抗リウマチ剤(メトトレキサート)を過剰投与した事例
1
第 3 回(2005 年 10 月)
インスリン投与間違いの事例
4
第 4 回(2006 年 3 月)
3
第 5 回(2006 年 6 月)
左右を取り違えた事例
5
第 8 回(2007 年 2 月)
小児の輸液の血管外漏出
2
第 8 回(2007 年 2 月)
熱傷に関する事例(療養上の世話以外)
4
第 9 回(2007 年 6 月)
MRI検査室に磁性体を持ち込んだ事例
1
第 9 回(2007 年 6 月)
注射器に準備された薬剤の取り違えの事例(名前の記載なし)
1
第 10 回(2007 年 9 月)
未滅菌の医療材料・器材を使用した事例
1
第 11 回(2007 年 12 月)
三方活栓使用時の閉塞や接続はずれ等に関する事例
2
第 11 回(2007 年 12 月)
ベッドなど患者の療養生活で使用されている用具に関連した事例
3
第 11 回(2007 年 12 月)
薬剤の注入経路を誤って投与した事例
2
第 12 回(2008 年 3 月)
アレルギーの既往がわかっている薬剤を投与した事例
1
第 12 回(2008 年 3 月)
ベッドからベッドへの患者移動に関連した事例
2
第 13 回(2008 年 6 月)
ベッドのサイドレールや手すりに関連した事例
2
第 13 回(2008 年 6 月)
体内にガーゼが残存した事例
7
第 14 回(2008 年 9 月)
病理検体に関連した事例
3
第 15 回(2008 年 12 月)
眼内レンズに関連した事例
1
第 15 回(2008 年 12 月)
歯科診療の際の部位間違いに関連した事例
5
第 15 回(2008 年 12 月)
「療養上の世話」において熱傷をきたした事例
- 161 -
Ⅲ
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
概況
件数
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅲ - 3- 2 2016年7月から9月に報告された「個別のテーマの検討状況」の再発・類似事例
内容
件数
掲載報告書(公表年月)
貯血式自己血輸血に関連した事例
1
第 18 回(2009 年 9 月)
生殖補助医療に関連した事例
1
第 19 回(2009 年 12 月)
凝固機能の管理にワーファリンカリウムを使用していた患者の梗塞及び
出血の事例
4
第 20 回(2010 年 3 月)
皮下用ポート及びカテーテルの断裂に関連した医療事故
4
第 21 回(2010 年 6 月)
薬剤内服の際、誤ってPTP包装を飲んだ事例
2
第 23 回(2010 年 12 月)
散剤の薬剤量間違い
2
第 24 回(2011 年 3 月)
医療用照明器の光源により発生した熱傷に関連した医療事故
1
第 25 回(2011 年 6 月)
画像診断報告書の内容が伝達されなかった事例
3
第 26 回(2011 年 9 月)
薬剤処方時の検索結果としての画面表示に起因した医療事故
1
第 26 回(2011 年 9 月)
医薬品添付文書上【禁忌】の疾患や症状の患者へ薬剤を投与した事例
1
第 29 回(2012 年 6 月)
東日本大震災による影響を一因とした事例
1
第 30 回(2012 年 9 月)
膀胱留置カテーテル挿入の際、尿流出を確認せずにバルーンを膨らませ
尿道損傷を起こした事例
3
第 31 回(2012 年 12 月)
薬剤の自動分包機に関連した医療事故
1
第 36 回(2014 年 3 月)
気管切開チューブが皮下や縦隔へ迷入した事例
2
第 37 回(2014 年 6 月)
事務職員の業務における医療安全や情報管理に関する事例
1
第 37 回(2014 年 6 月)
院内での自殺及び自殺企図に関する事例
3
第 41 回(2015 年 6 月)
与薬時の患者または薬剤の間違いに関連した事例
2
第 42 回(2015 年 9 月)
胃管の誤挿入に関連した事例
2
第 43 回(2015 年 12 月)
観血的医療行為前に休薬する薬剤に関連した事例
2
第 44 回(2016 年 3 月)
外観の類似した薬剤の取り違えに関連した事例
2
第 45 回(2016 年 6 月)
次に、これまでに取り上げた「医療安全情報」の再発・類似事例の件数について、図表Ⅲ - 3- 3
にまとめた。本報告書分析対象期間に報告された「医療安全情報」の再発・類似事例の内容は23で
あり、事例数は43件であった。このうち、類似事例が複数報告されたものは、「No. 8:手術部位
の左右の取り違えおよび No. 50:手術部位の左右の取り違え(第2報)」、「No. 47:抜歯部位の取
り違え」、「No. 58:皮下用ポート及びカテーテルの断裂」がそれぞれ4件、
「No. 63:画像診断報
告書の確認不足」
、「No. 71:病理診断報告書の確認忘れ」
、「No. 80:膀胱留置カテーテルによる
尿道損傷」がそれぞれ3件、「No. 4:薬剤の取り違えおよび No. 68:薬剤の取り違え(第2報)」、
「No. 7:小児の輸液の血管外漏出」
「No. 46:清拭用タオルによる熱傷」、
、
「No. 54:体位変換時の気管・
気管切開チューブの偶発的な抜去」
、「No. 57:PTPシートの誤飲および No. 82:PTPシート
の誤飲(第2報)」がそれぞれ2件であった。
- 162 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅲ - 3- 3 2016年7月から9月に報告された「医療安全情報」の再発・類似事例
No.
タイトル
提供年月
No. 4 薬剤の取り違え
No. 68 薬剤の取り違え(第2報)
2
2007 年 3 月
2012 年 7 月
No. 6 インスリン単位の誤解
1
2007 年 5 月
No. 7 小児の輸液の血管外漏出
2
2007 年 6 月
No. 8 手術部位の左右の取り違え
No. 50 手術部位の左右の取り違え(第 2 報)
4
2007 年 7 月
2011 年 1 月
No. 10 MRI検査室への磁性体(金属製品など)の持ち込み
No. 94 MRI検査室への磁性体(金属製品など)の持ち込み(第 2 報)
1
2007 年 9 月
2011 年 1 月
No. 19 未滅菌の医療材料の使用
1
2008 年 6 月
No. 33 ガベキサートメシル酸塩使用時の血管外漏出
No. 77 ガベキサートメシル酸塩使用時の血管炎(第 2 報)
1
2009 年 8 月
2013 年 4 月
No. 38 清潔野における注射器に準備された薬剤の取り違え
1
2010 年 1 月
No. 46 清拭用タオルによる熱傷
2
2010 年 9 月
No. 47 抜歯部位の取り違え
4
2010 年 10 月
No. 54 体位変換時の気管・気管切開チューブの偶発的な抜去
2
2011 年 5 月
No. 57 PTPシートの誤飲
No. 82 PTPシートの誤飲(第 2 報)
2
2011 年 8 月
2013 年 9 月
No. 58 皮下用ポート及びカテーテルの断裂
4
2011 年 9 月
No. 63 画像診断報告書の確認不足
3
2012 年 2 月
No. 70 手術中の光源コードの先端による熱傷
1
2012 年 9 月
No. 71 病理診断報告書の確認忘れ
3
2012 年 10 月
No. 78 持参薬を院内の処方に切り替える際の処方量間違い
1
2013 年 5 月
No. 80 膀胱留置カテーテルによる尿道損傷
3
2013 年 7 月
No. 85 移動時のドレーン・チューブ類の偶発的な抜去
1
2013 年 12 月
No. 87 足浴やシャワー浴時の熱傷
1
2014 年 2 月
No.101 薬剤の投与経路間違い
1
2015 年 4 月
No.105 三方活栓の開閉忘れ
1
2015 年 8 月
No.116 与薬時の患者取り違え
1
2016 年 7 月
※医療安全情報の事例件数は、共有すべき医療事故情報や、個別テーマの検討状況に計上された事例件数と重複している。
本報告書では、本報告書分析対象期間において報告された再発・類似事例のうち、医療安全情報と
して取り上げた「No. 4:薬剤の取り違えおよび No. 68:薬剤の取り違え(第2報)
」、「No. 80:
膀胱留置カテーテルによる尿道損傷」について事例の詳細を紹介する。
- 163 -
Ⅲ
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
概況
件数
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
【2】「薬剤の取り違え」(医療安全情報 No. 4 第2報 No. 68)について
(1)発生状況
薬剤の名称が類似していることによる「薬剤の取り違え」については、医療安全情報 No. 4
(2007年3月提供)で取り上げ、注意喚起を行った。その後、第21回報告書(2010年7月公表)
では、分析対象期間に類似の事例が報告されたことから、再発・類似事例の発生状況で取り上げた。
さらに、第25回報告書(2011年6月公表)、第29回報告書(2012年6月公表)におい
ても再発・類似事例の発生状況で取り上げている。また、医療安全情報 No. 68「薬剤の取り違え
(第2報)
」
(2012年7月提供:集計期間2007年1月∼2012年5月)では、
「医薬品の販売名
の類似性等による医療事故防止対策の強化・徹底について(注意喚起)
」の通知1)が厚生労働省より
出されたことを紹介し、再び注意喚起を行った。
今回、本報告書分析対象期間(2016年7月∼9月)に類似の事例が2件報告されたため、再び
取り上げることとした。医療安全情報 No. 68の集計期間後の2012年6月以降に報告された類似
事例の報告件数を図表Ⅲ - 3- 4に示す。
図表Ⅲ - 3- 4 「薬剤の取り違え」の報告件数
1∼3月
(件)
4∼6月
(件)
0
0
0
0
2013年
0
0
0
0
0
2014年
2
0
1
0
3
2015年
2
0
1
1
4
2016年
0
1
2
―
3
2012年
7∼9月
(件)
図表Ⅲ - 3- 5 医療安全情報 No. 4 「薬剤の取り違え」
- 164 -
10∼12月
(件)
合計
(件)
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅲ - 3- 6 医療安全情報 No. 68 「薬剤の取り違え(第2報)」
Ⅲ
(2)事例の概要
①発生段階
分類したところ、処方の事例が5件、調剤の事例が5件であった。
図表Ⅲ - 3- 7 事例の分類
発生段階
件数
処方
5
調剤
5
合 計
10
﹁薬剤の取り違え﹂︵医療安全情報№ 第 報№
医療安全情報 No. 68の集計期間後の2012年6月以降に報告された事例10件を発生段階で
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
4
②当事者職種
報告された事例の当事者職種には、処方を行う医師、調剤を行う薬剤師の他に、内服薬の与薬や
図表Ⅲ - 3- 8 当事者職種
当事者職種
医師
件数
6
看護師
10
薬剤師
5
合 計
21
※当事者とは当該事象に関係したと医療機関が判断した者であり、複数回答が可能である。
- 165 -
︶について
注射薬の準備・投与に関わる看護師が多く含まれていた。
2
68
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(3)事例の内容
2015年以降に報告された事例7件の内容を以下に示す。
図表Ⅲ - 3- 9 事例の内容
No.
事故の内容
事故の背景要因
改善策
処方の事例
医師はアモキサンカプセルの処方を意図し、 外来で疼痛管理と共に化学療法中の患者であっ ・ 処 方 内 容 の 再 確 認 が 必
誤ってアモキシシリンカプセルの処方を行っ た。毎回化学療法の内容変更が続いていたため、 要である。
1 た。誤った内服薬の処方が継続され、在宅医 指示出しの煩雑な状態が続いており新規内服薬
療目的で他院に紹介した際に処方内容の照会 の処方の確認を怠った。
があり、判明した。
患者はアレルギー性鼻炎があり、他院から 他院で処方されたアレロック錠5は、屯用で5 ・ 持参薬の処方希望があっ
アレロック錠5が処方され内服していた。 回分の処方であった。入院時、担当した看護師 た 時、 検 薬 さ れ て い な
入院中にアレロック錠5を飲み切ったため、 が内服状況を確認し、持参薬、お薬手帳を預か い 場 合 に は 検 薬 後 の 処
当院からの処方を希望した。回診時に看護 り、薬剤科に検薬を依頼することになっていた 方 と す る( 医 師 は 検 薬
師はアレロック錠5の空シートを読み上げ、 が、今回は患者からの情報提供がなく、検薬用 用 紙 を 見 な が ら 処 方 の
口頭にて医師に処方を依頼した。オーダリ 紙が作成されていなかった(当院にはアレロッ 入力を行う)。
ング入力をした際、
「アテレック錠(10) ク錠がないため、同効薬を処方するためにも ・ オーダリング入力の際、
0.5錠 5回分」と入力されていたが、確 検薬を行っておく必要があった)。検薬は、土 処 方 間 違 い を し や す い
認をせずに指示受けを行った。内服自己管 日祝日の日中は平日と同じく薬剤科で対応する 薬 剤 に つ い て は 薬 剤 名
理中であったため、薬剤科から届いた薬剤 が、夜間は翌朝の処理となる。オーダリング入 の 後 に 種 類 な ど の 注 意
を夜勤看護師が患者に渡した。内服をした 力の際、3文字入力での入力だが、看護師もし 書きが入れられるので、
2 患者から「いつもと薬が違う気がする」と くは医師が薬剤名を勘違いし、 アテレ と伝 アテレック(降圧剤)と
言われ、内服薬が間違っていることに気が えたか入力をした。回診前に別件で患者から訴 注意書きを入れる。
付いた。
えがあり、すぐに対応しなければという焦りが ・ 自 己 管 理 の 内 服 薬 を 患
あった。処方依頼を行った看護師は、アレロッ 者 に 渡 す 際 に は、 薬 剤
ク錠・アテレック錠の薬効を知っており、処方 情 報 用 紙 を 患 者 に 見 せ
間違いしやすい薬剤という認識はあった。持参 ながら説明し、薬剤につ
薬の切り替え時に検薬結果用紙を医師に見せな い て 理 解 し て い る か 評
がら依頼するというルールがあったが、検薬さ 価 を 必 ず 行 う。 理 解 し
れていなかったため、医師から薬剤名を問われ、 て い な い 場 合 に は、 自
口頭で伝えた。空のシートを残してあったが、 己管理を中止する。
医師に見せて処方の依頼をするというルールは
なかった。
抗がん剤治療目的で入院し、翌日からMEC 他の患者への対応に追われており、確認を怠っ ・ 処 方 画 面 に は 薬 剤 名 を
最 後 ま で 入 力 し、 処 方
療法(メソトレキセート、エピルビシン、 た。
した薬剤の名称と量、投
シスプラチン)を行うことになった。前日
与日数を何度も確認す
13時頃に、翌日投与のメソトレキセート
る。
の副作用防止のため、ロイコボリン錠1日
4回1回1錠を処方するつもりでオーダリ
ングシステムの処方画面に「ロイコ」と入
3 力し、ロイコボリン錠を処方したつもりで
誤ってロイコン錠1日4回1回1錠を処方
した。患者は翌朝8時頃にロイコン錠を内
服した。その日の朝9時頃に薬剤部より誤っ
ていることの指摘があり、残りのロイコン
錠を返品し、ロイコボリン錠を改めて処方
した。
嘔気があり、脱水で入院予定の患者の点滴 「プリン」で3文字検索した医師は、上部に候 ・ プ リ ン ク を 別 の 後 発 医
に制吐剤のプリンペラン0.
6Aを入れるた 補表示されたプリンク(劇 プリンク10μg 薬 品 の ア ル プ ロ ス タ ジ
めに処方しようとして、誤ってプリンクを処 2mL(パルクス)と表示された)をクリック ル に 変 更 し た( 当 院 の
方した。間違った処方(プリンク10μg して処方した。施行した看護師に尋ねられた 電 子 カ ル テ で の 警 告 は
0.
6A+KN1号200mL)を受けた看 看護師は、血液をさらさらにする薬と答えた 今以上出せない)。
護師は、初めて使用する薬剤で疑問を持ち が、それ以上の判断はできなかった。薬剤師は ・ ニ ュ ー ス の 発 信 と 医 局
4
ながらも、別の看護師に薬剤の効能を尋ね、 小児に使用すると聞いたが、0.6Aなので考 報告を行った。
薬剤師から払い出しを受ける時に添付文書 慮された上での処方と思い尋ねなかった。施行
ももらったが、医師に確認せずに施行した。 した看護師は、初めて使用する薬剤であり、別
診療を引き継いだ別の医師が気づいた。薬 の看護師に薬効を確認し、薬剤師に添付文書を
剤による影響はないと判断した。
もらったが、それ以上尋ねず医師にも確認しな
かった。
- 166 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
No.
事故の内容
事故の背景要因
改善策
調剤の事例
スイニー錠(100mg)56日分 1日 調剤する薬は、錠剤台に薬の効能別にまとめて ・ ス イ ニ ー 錠 と ス ー グ ラ
量2錠 朝1錠夕1錠内服と処方されたが、 おり、今回取り間違えたスイニー錠とスーグラ 錠 を 配 置 す る 棚 を 変 更
薬 剤 部 で 調 剤 時 に 取 り 違 え、 ス ー グ ラ 錠 錠は、同じ糖尿病に対して使用されることから、 す る こ と に よ り、 薬 剤
(50mg)56日分 1日量2錠 朝1錠 同じ棚で隣同士の配置となっていた。また、両 の位置を離した。
夕1錠を調剤した。薬をピッキングする薬 薬剤の名称が似ていたこと、外観の包装が類似 ・ リ ス ク の 高 い 一 部 の 薬
剤師と鑑査する薬剤師は別の者であったが、 していたこと、採用されて間もないため意識が 剤 に 関 し て は、 別 の 薬
両方の確認をすり抜けた。患者は口渇・ふ 低かったことなどから、調剤者と鑑査者の両方 剤 師 が 確 認 を 行 う こ と
らつき・倦怠感が生じたが、薬が異なって を通過した。また、患者に薬の内容について説 に よ り チ ェ ッ ク 体 制 を
いる事に気が付かずに服用を継続した。次 明を十分に行っていなかった。受け取った患者 強化した。
5
の受診日の直前に薬の説明書と内服してい も、薬剤名が少し異なるが後発医薬品へ変更さ
る薬の名前が異なることに気が付き、病院 れたものだと思い込んでいた。
へ連絡をして誤調剤が判明した。この時点
まで患者は異なる薬を約2か月間内服して
いた。今回の服用により8%前後であった
HbA1cが9%に上昇し血糖コントロー
ルが乱れた疑いがあるために、予定されて
いた眼科の手術は中止となり、血糖コント
ロール目的の入院となった。
・ 漢 方 薬 の 番 号 の 確 認 を
徹底する。
・ 内 服 薬 準 備・ 投 薬 時 の
指差し呼称を徹底する。
・ 投薬時の確認方法
(6R)
の周知と監査を行う。
・ 漢 方 薬 は 名 称 類 似 が 多
いことはよく知られて
い る た め、 必 ず 番 号 も
含め最後まで呼称して
調剤をするように指導
を行った。
- 167 -
4
2
︶について
5時にベニロン−I(2.5g)8Vが処方 グロベニン−Iとベニロン−Iは過去にも誤調 ・ 輸 血 同 様 ク ロ ス チ ェ ッ
された。当直の 薬 剤 師 が、7時30分 頃、 剤があり、様々な注意喚起がなされてきた。そ クを実施する。
ICU看護師より薬剤を取りに行くとの連 の上で必ず薬剤名を指でなぞりながら呼称する ・ 同 時 に 読 み 上 げ る の で
絡を受け、誤ってグロベニン−I(2.
5g) ように厳しく指導されてきた。しかしながら、 は な く、 1 人 ず つ 読 み
8Vを調剤し、鑑査をすり抜け払い出された。 当事者はそのルールを遵守していなかった。夜 上げる。
ICU看護師が、薬剤をICUに持ち帰り、 勤帯の単独業務のために特に慎重に行うべきで ・6Rを遵守する。
看護師B・Cで指示を確認後、8時より1V あった。薬剤部の払い出しに間違いはないとい ・ 臨時カンファレンスで、
目の投与を開始した。11時、看護師D・E う思い込みと、急変対応による焦りがあった。 血 液 製 剤 が 輸 血 同 様 の
でダブルチェック後、2V目の投与を開始し 環境因子としてお互いの声が聞き取りにくい状 重 要 性 が あ る こ と を 再
た。16時、看護師D・Eでダブルチェック 況であったが、思い込みもありそのまま投与し 認 識 し、 投 与 す る 責 任
について話し合い共有
後、3V目を開始した。18時、夜勤看護師 た。
を 行 っ た。 ま た、 特 に
F・Gで確認の際、指示薬剤と投与されてい
救急対応時は間違うリ
る薬剤が異なることに気がついた。
スクが高いことを認識
し、 気 持 ち の 焦 り や 環
7
境に左右されない常に
基本的な信頼できる確
認が実践できるよう注
意喚起した。
・ グ ロ ベ ニ ン − I と ベ ニ
ロン−Iの誤調剤はこ
れまでも複数回あり、そ
の都度対策を立ててき
た。 指 差 し 呼 称 の 徹 底
と と も に、 処 方 せ ん へ
の印字色を製品イメー
ジカラーに合わせてグ
ロ ベ ニ ン − I が 緑、 ベ
ニロン−Iが赤で表示
されるように変更した。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
﹁薬剤の取り違え﹂︵医療安全情報№ 第 報№
「半夏厚朴湯」が処方されたが、薬剤師が誤っ 「半夏」で始まる名称類似薬剤のため、思い込
て「半夏瀉心湯」を払い出した。病棟に薬 みが生じた。薬剤部では誤調剤を防ぐために薬
剤が払い出され、夜勤看護師A・Bで翌日 剤名の前にツムラ○番と番号を印字するように
分の準備の際、看護師Aが指示画面を「ハ しており、その番号も含めて読み上げるように
ンゲコウボクトウ」と読み上げ、看護師B 指導している。今回はそれを怠っていた。漢方
は現品を薬袋から取り出し、「ハンゲコウボ 薬の番号の確認不足と類似薬(漢方薬)に関す
6
クトウ」と声に出し、一日分を各食前薬の る知識不足も要因としてある。内服準備時や投
袋に入れる作業を行った。翌朝、朝食前に 与時のルールに沿った確認方法や、誤認を防止
看護師Bが当該薬剤を投与し、昼食前の分 するための指差し呼称などが不足していた。
を看護師Cが投与した。夜勤の看護師Dが
夕食前薬を投与しようとした際に、指示と
薬剤の現品の名称が違うことに気がついた。
Ⅲ
68
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(4)事例の分析
①取り違えた薬剤の組み合わせ
報告された事例に記載された内容から、
「投与すべき薬剤」と「取り違えた薬剤」
、および主な薬
効を次に示す。
図表Ⅲ - 3- 10 取り違えた薬剤の組み合わせ
発生段階
種類
投与すべき薬剤
取り違えた薬剤
主な薬効※1
主な薬効※1
アスベリン錠※2
鎮咳剤
アスぺノンカプセル※2
不整脈治療剤
※2
アモキサンカプセル
内服薬
処方
うつ病・うつ状態治療剤
合成ペニシリン製剤
アレロック錠5
アテレック錠10(0.5錠)
アレルギー性疾患治療剤
持続性Ca拮抗降圧剤
※2
ロイコボリン錠
注射薬
ロイコン錠10mg
抗葉酸代謝拮抗剤
白血球減少症治療剤
プリンペラン注射液10mg
プリンク注10μg
消化器機能異常治療剤
プロスタグランジンE1製剤
ガスコン錠40mg
ガスロンN・OD錠2mg
消化管内ガス駆除剤
粘膜防御性胃炎・胃潰瘍治療剤
スイニー錠100mg
スーグラ錠50mg
選択的DPP - 4阻害剤
−2型糖尿病治療剤−
選択的SGLT2阻害剤
−2型糖尿病治療剤−
ツムラ半夏厚朴湯エキス顆粒(医療用)
ツムラ半夏瀉心湯エキス顆粒(医療用)
漢方製剤
漢方製剤
内服薬
調剤
アモキシシリンカプセル※2
デュファストン錠5mg
フェアストン錠40
レトロ・プロゲステロン製剤
乳癌治療剤
献血ベニロン−I 静注用2500mg
献血グロベニン−I静注用2500mg
血漿分画製剤
静注用人免疫グロブリン製剤
血漿分画製剤
静注用人免疫グロブリン製剤
注射薬
※1 主な薬効は添付文書の記載をもとにした。
※2 事例の内容に正式な販売名が記載されていないため規格は不明である。
報告された事例10件のうち、主な薬効が異なる組み合わせが7件と多かった。主な薬効が異な
る薬剤と取り違えると、患者への影響が大きくなる可能性がある。また、漢方製剤は、主な薬効は
同じ分類に入るが成分は異なり、効能又は効果が異なるため注意が必要である。
②薬剤名の類似について
本財団が運営する薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業は、保険薬局で発生した、または発
見したヒヤリ・ハット事例を収集・分析し、情報提供を行っている。同事業では、平成21年年報
∼平成27年年報で、分析テーマとして名称類似に関するヒヤリ・ハット事例を取り上げている。
それらの分析では、名称が類似した医薬品を取り違えた事例について、頭文字が3文字以上一致す
る組み合わせ、頭文字が2文字一致する組み合わせ、その他の組み合わせに分類しており、本報告
書でも同様に事例を分類して分析を行った。
- 168 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅲ - 3- 11 名称類似の分類
薬剤名の類似
頭3文字が一致
頭2文字が一致
その他
投与すべき薬剤
取り違えた薬剤
アモキサン
アモキシシリン
プリンペラン
プリンク
ロイコボリン
ロイコン
アスベリン
アスぺノン
ガスコン
ガスロンN
半夏厚朴湯
半夏瀉心湯
アレロック
アテレック
スイニー
スーグラ
デュファストン
フェアストン
ベニロン−I
グロベニン−I
発生段階
処方
処方
調剤
処方
調剤
頭3文字が一致している組み合わせの事例は3件あり、いずれも処方の事例であった。薬剤の処
Ⅲ
方オーダでは、3文字入力を行って表示された薬剤名一覧の中から薬剤名を選択することが広く行
われているが、その際の選択を誤ると意図していない薬剤を処方することになる。薬剤名を選択す
る時の確認と、オーダを確定する時の再確認が重要である。
頭文字が2文字一致している組み合わせの事例は3件あり、処方が1件、調剤が2件であった。
いずれの組み合わせも頭文字2文字の他に一致する文字が含まれており、音韻的および視覚的な類
似性が高いことが取り違えの要因として考えられた。
その他の組み合わせは4件あり、そのうち3件は調剤の事例であった。これらの組み合わせでは
の過程においては、処方せんに記載されている薬剤名と薬剤棚や薬剤に表示されている薬剤名を目
で見て確認するため、視覚的な類似性が高いことが薬剤取り違えの要因と考えられた。
﹁薬剤の取り違え﹂︵医療安全情報№ 第 報№
頭文字の2文字以上の一致はないが、薬剤名の中に一致する文字が2文字以上含まれていた。調剤
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
4
2
︶について
68
- 169 -
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(5)医療機関から報告された事例の背景・要因
報告された事例の内容から、主な背景・要因を場面別に整理し、図表Ⅲ - 3- 12に示す。
図表Ⅲ - 3- 12 主な背景・要因
処方時
○処方の入力
・ 当院では処方時「アスヘ」と検索するとアスペノンカプセルが表示されるが、外来医師は非常勤であり、他
院ではアスベリン錠が出るので無意識にクリックして処方した。
「プリン」で3文字検索した医師は、上部に候補表示されたプリンク注(劇 プリンク10μ g2mL
・ (パルクス)と表示された)をクリックして処方した。
・ オーダリングシステムの処方画面に「ロイコ」と入力し、ロイコボリン錠を処方したつもりで誤ってロイコ
ン錠を処方した。
○処方の確認
・ 毎回化学療法の内容変更が続いていたため、指示出しの煩雑な状態が続いており新規内服薬の処方の確認を
怠った。
・他の患者への対応に追われており、確認を怠った。
○その他
・ 持参薬の切り替え時に検薬結果用紙を医師に見せながら依頼するというルールがあったが、検薬されていな
かったため、医師から薬剤名を問われ、口頭で伝えた。
調剤時
○調剤時の確認
・ 必ず薬剤名を指でなぞりながら呼称するように厳しく指導されてきたが、当事者はそのルールを遵守してい
なかった。
・ 薬剤部では誤調剤を防ぐために漢方製剤の薬剤名の前にツムラ○番と番号を印字するようにしており、その
番号も含めて読み上げるように指導しているが、今回はそれを怠っていた。
○調剤鑑査
・ 本来であれば、処方せん監査、調剤、調剤鑑査はそれぞれ別の薬剤師が行うことになっているが、急いでい
たため、処方せん監査と調剤を同一人物が行い、最終鑑査のみ別の薬剤師が行った。
・ 調剤鑑査を行った薬剤師は、処方せんの薬剤名を確認したが、薬袋に入っていた薬剤の錠数のみ確認しただ
けで薬剤名を確認しないまま、鑑査を終了した。
○調剤室の状況
・名前が類似した薬剤が同一棚の同一列に配置されていた。
・スイニー錠とスーグラ錠は、同じ糖尿病に対して使用されることから、同じ棚で隣同士の配置となっていた。
・薬剤棚と調剤の作業棚が離れているため、薬剤師は処方せんを見ながらピッキングを行っていなかった。
・調剤スペースが狭くなってから、ピッキングしたその場で薬袋に入れることがあった。
○その他
・外観の包装が類似していた。
・夜勤帯の単独業務のために特に慎重に行うべきであった。
・薬剤が採用されて間もないことから意識が低かった。
・院外処方であり、当院への疑義照会はなかった。
- 170 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
外来患者への交付時
・交付する際、薬剤師は患者とともに薬剤を確認せずそのまま渡し、説明や指導はしなかった。
・患者に薬の内容について説明を十分に行っていなかった。
・ 薬を受け取った患者は、薬剤名が少し異なることに気付いたが、後発医薬品へ変更されたものだと思い込ん
でいた。
病棟での準備・投与時
○看護師による確認
・ 看護師は、初めて使用する薬剤であり、別の看護師に薬効を確認し、薬剤師に添付文書をもらったが、
それ以上尋ねず医師にも確認しなかった。
・薬剤部の払い出しに間違いはないという思い込みがあった。
・内服準備時や投与時のルールに沿った確認方法や誤認を防止するための指差し呼称などが不足していた。
・漢方薬の番号の確認が不足した。
・ダブルチェック時、お互いの声が聞き取りにくい状況であった。
Ⅲ
・多忙な業務で焦り、確認が不十分だった。
○その他
・ ガスロン錠とガスコンN・OD錠の名称・外観が似ていたため、PTPシートに記載された文字を「ガスコン」
と見間違えた。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
・漢方薬に関する知識不足があった。
・急変対応による焦りがあった。
﹁薬剤の取り違え﹂︵医療安全情報№ 第 報№
4
2
︶について
68
- 171 -
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(6)事例が発生した医療機関の改善策
事例が発生した医療機関の主な改善策を整理して図表Ⅲ - 3- 13に示す。
図表Ⅲ - 3- 13 主な改善策
処方時
・処方画面には薬剤名を最後まで入力し、処方した薬剤の名称と量、投与日数を何度も確認する。
・処方内容の再確認が必要である。
・ 持参薬の処方希望があった時、検薬されていない場合には検薬後に処方する。医師は検薬用紙を見ながら
処方の入力を行う。
オーダリングシステム
・ オーダリング入力の際、処方間違いをしやすい薬剤については薬剤名の後に種類などの注意書きが入れら
れるので、アテレック(降圧剤)と注意書きを入れる。
・ オーダリング画面の薬剤検索の仕様を、濁点を含む正規の薬剤名3文字でなければ、選択画面に表示され
ないよう検討している。
・ 処方せんへの印字色を製品のイメージカラーに合わせてグロベニン−Iが緑、ベニロン−Iが赤で表示さ
れるように変更した。
採用薬剤
・プリンクを別の後発医薬品のアルプロスタジルに変更した。
調剤時
・調剤の手順を遵守する。
・指差し呼称を徹底する。
・ 調剤時の指差し声出し確認を周知徹底し、調剤室のリーダーが1日2回10時・14時に見廻り確認する。
実行できていない場合は、その場で注意する。
・ 漢方薬は名称類似薬が多いことはよく知られているため、必ず番号も含め最後まで呼称して調剤をするよ
うに指導を行った。
・リスクの高い一部の薬剤に関しては、別の薬剤師が確認を行う事によりチェック体制を強化した。
調剤室の工夫
・ 名前が類似した薬剤の同一列を禁止し、同じ棚に置く場合は棚段を2つ以上離すことで、取り間違いをし
ないように薬剤の配置を見直す。
・使用頻度に関わらず、類似した名称の薬剤は離れた場所に配置することにした。
・スイニー錠とスーグラ錠を配置する棚を変更することにより、薬剤の位置を離した。
・抗がん剤については棚の薬剤名に紫色のラインを引き、他の薬剤と区別がつくようにした。
外来患者への交付時
・ 交付窓口での患者との薬剤確認を、ハイアラート薬のうち特に誤薬が重大な事故につながる薬が処方され
ている患者を対象に開始し、全科・全処方に対応できるよう進めていく。
病棟での準備・投与時
・内服薬準備・投与時の指差し呼称を徹底する。
・投与時の確認方法(6R)の周知と監査を行う。
・ ダブルチェックのシミュレーションを行い、意識付けを図り、忙しい業務の時こそ正しい6Rのダブル
チェックを実施する意識を持つよう注意喚起する。
・ダブルチェック時は同時に読み上げるのではなく、1人ずつ読み上げる。
・自己管理の内服薬を患者に渡す際には、薬剤情報用紙を患者に見せながら説明する。
その他
・ニュースの発信と医局報告を行った。
・ 特に救急対応時は間違うリスクが高いことを認識し、気持ちの焦りや環境に左右されない常に基本的な
信頼できる確認が実践できるよう注意喚起した。
- 172 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(7)薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業に報告された事例
薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の平成27年年報では、分析テーマの一つとして「名称類似
に関する事例」21)を取り上げ、調剤の際に薬剤を取り違えた事例を分析している。同年報では、テー
マ毎に事例を集計し、分析するとともに、
「事例から学ぶ」というページで、代表的な事例に専門家に
よるポイントを付して掲載している。「事例から学ぶ」に掲載された名称類似に関する事例とポイン
トを以下に紹介する。
図表Ⅲ - 3- 14 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成27年年報
【1】名称類似に関する事例−「事例から学ぶ」22)
Ⅲ
【名称類似に関する事例】
○ クレメジン細粒分包2gを調剤するところ、クレスチン細粒を誤って調剤した。調剤直後に気
付き、調剤し直した。
○ アレロック錠5をアテレック錠5と取り違えて調剤し、鑑査・交付した薬剤師も間違いに気付
かないまま患者に薬を渡した。付添いのヘルパーから「前回と違う薬が入っている」と電話が
﹁薬剤の取り違え﹂︵医療安全情報№ 第 報№
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
4
2
あり、判明した。
ン錠100mg90錠のうち、セレスタミン配合錠が10錠混在していた。自宅に帰った患者本
人が気付き、薬局に連絡をした。この2つの医薬品の棚は上下隣り合わせで、外見もよく似て
いるため、棚への戻し間違いが発生していた。
○ ツムラ柴胡桂枝湯エキス顆粒(医療用)をツムラ柴胡桂枝乾姜湯エキス顆粒(医療用)と間違
えた。薬剤服用歴を記載する時に気付き、直ちに患者宅へ連絡し薬を交換した。入力者は、名
称が類似していたために誤入力して、調剤者は誤入力された調剤支援表に基づき調剤していた。
鑑査者は医薬品本体を調剤支援表と照合し、処方せんと照合しないまま鑑査を終了していた。
交付者は、薬をみて薬効の確認と説明のみに集中していた。
- 173 -
︶について
○ セレキノン錠100mg3錠分3毎食後30日分の処方せんを受け、調剤・交付したが、セレキノ
68
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
名称類似に関するポイント
調剤を含め、物品取り揃え時には、人間は慣れるにつれ、また急いでいる時ほど、名称をすべて読まず、
「包装(箱サイズ、デザインパターン、色使い等)の印象」
「名称の文字数(名称の長さ)
」「名称の最初
の2∼3文字」を手掛かりにパターン識別により業務を進める傾向がある。
● 自局で採用している名称類似・外観類似の医薬品について把握し、ミーティングなどの機会を通じて
取り違えが生じやすい旨の注意喚起・情報共有を行う。
● 医薬品名を指さし、名称を読み上げて(声出しして)調剤する。
● 類似医薬品は、医薬品棚や引き出しに配置する際に場所を離して保管する。
● 取り違えやすい医薬品のうちハイリスク薬などに対しては、医薬品棚の配置場所に類似医薬品の取り
違え注意を促すラベルを貼りつけるなどの対策も有効である。
● 取り違えの頻発が懸念される名称類似や外観類似の医薬品については、製薬企業に対して改善を申し
入れるなどの対策も必要な場合がある。
(8)製薬企業による注意喚起
本事業および薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の事例データベース等を活用して、製薬企業
から注意喚起が行われている。本報告書で取り上げた事例のうち、
「デュファストンとフェアストン」
、
「プリンクとプリンペラン」の取り違えについて、製薬企業から注意喚起が公表されているので紹介
する。なお、「プリンク ® 注・注シリンジ5μ g /10μg」の製造販売元では、根本的な再発防止対
策として一般名(アルプロスタジル注・注シリンジ)への名称変更手続きを進めていることが、当該
文書に記載されている。このように、名称類似による薬剤の取り違えを防止するには、注意喚起だけ
ではなく、薬剤の名称を変更することがより有効な対策と考えられる。
図表Ⅲ - 3- 15 「デュファストン ® 錠」と「フェアストン ® 錠」の取り違え事例発生のお知らせ
- 174 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅲ - 3- 16 「プリンク ® 注・注シリンジ5μ g/10μ g」と「プリンペラン ® 注射液10mg」
の販売名類似による取り違え注意のお願い
Ⅲ
(9)まとめ
ついて、医療安全情報 No. 68の集計期間後の2012年6月から本報告書分析対象期間(2016年
7月∼9月)に報告された事例を分析した。本稿では、事例の発生段階、当事者職種を分類し、
2015年以降に報告された事例の内容を掲載した。また、取り違えた薬剤の組み合わせと主な薬効、
薬剤の名称類似パターンを整理して示した。さらに、本財団が運営する薬局ヒヤリ・ハット事例収集・
分析事業に報告された事例や、製薬企業による注意喚起の取り組みを紹介した。
発生段階が処方の事例では、3文字入力によるオーダリングの際に誤った薬剤を選択した事例が
報告されており、改善策として処方内容の確認やシステムの工夫が挙げられていた。発生段階が調剤
の事例では、頭文字の2文字以上の一致はないが、薬剤名の中に一致する文字が2文字以上含まれ、
視覚的に名称が類似している薬剤名の組み合わせがあり、調剤時、鑑査時の確認とともに、調剤室内の
薬剤の配置などに関する改善策が報告されていた。
注目し、注意喚起を行っていく。
- 175 -
4
2
︶について
名称類似による薬剤の取り違えの事例は継続的に報告されていることから、今後も引き続き推移に
﹁薬剤の取り違え﹂︵医療安全情報№ 第 報№
医療安全情報 No. 4「薬剤の取り違え」および医療安全情報 No. 68「薬剤の取り違え(第2報)
」に
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
68
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(10)参考文献
1. 厚生労働省.医薬品の販売名の類似性等による医療事故防止対策の強化・徹底について
(注意喚起)
.平成20年12月4日付医政発第1204001号・薬食発第1204001号.
(online)available from < http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/
dl/081204-1.pdf > (last accessed 2016-9-26).
2.アスベリン錠10添付文書.田辺製薬販売株式会社.2015年4月改訂(第12版).
3.アスペノンカプセル10添付文書.バイエル薬品株式会社.2010年11月改訂(第10版).
4.アモキサンカプセル10mg添付文書.ファイザー株式会社.2010年8月改訂(第12版).
5.アモキシシリンカプセル125mg「NP」添付文書.ニプロ株式会社.2015年12月改訂
(第4版).
6.アレロック錠5添付文書.協和発酵キリン株式会社.2015年11月改訂(第18版).
7.アテレック錠10添付文書.持田製薬株式会社.2016年9月改訂(第16版).
8.ロイコボリン錠5mg添付文書.ファイザー株式会社.2010年10月改訂(第11版).
9.ロイコン錠10mg添付文書.大原薬品工業株式会社.2007年11月改訂(第6版).
10. プリンペラン注射液10mg添付文書.アステラス製薬株式会社.2015年7月改訂
(第10版).
11.プリンク注10μg添付文書.武田テバファーマ株式会社.2016年10月改訂(第11版).
12.ガスコン錠40mg添付文書.キッセイ薬品工業株式会社.2007年6月改訂(第4版).
13.ガスロンN・OD錠2mg添付文書.日本新薬株式会社.2010年4月改訂(第3版).
14.スイニー錠100mg添付文書.興和株式会社.2015年12月改訂(第6版).
15.スーグラ錠50mg添付文書.アステラス製薬株式会社.2016年6月改訂(第7版).
16. ツムラ半夏厚朴湯エキス顆粒(医療用)添付文書.株式会社ツムラ.2011年8月改訂
(第5版).
17. ツムラ半夏瀉心湯エキス顆粒(医療用)添付文書.株式会社ツムラ.2014年10月改訂
(第8版).
18.デュファストン錠5mg添付文書.マイランEPD合同会社.2016年7月改訂(第10版).
19. フェアストン錠40添付文書.日本化薬株式会社.2014年8月改訂14.献血ベニロン
−I 静注用2500mg添付文書.帝人ファーマ株式会社.2016年3月改訂
(第27版).
20. 献血グロベニン−I静注用2500mg添付文書.日本製薬株式会社.2016年9月改訂(第
30版).
21. 公益財団法人日本医療機能評価機構.薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成27年
年報【1】各称類似に関する事例.2016年11月8日.
(online)available from <http://www.
yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/year_report_2015_T001.pdf>(last accessed 2016-11-8).
22. 公益財団法人日本医療機能評価機構.薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成27年
年 報「 事 例 か ら 学 ぶ 」 ① 名 称 類 似 に 関 す る 事 例.(online)available from < http://www.
yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/learning_case_2015_01.pdf >(last accessed 2016-11-8)
.
- 176 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
【3】
「膀胱留置カテーテルによる尿道損傷」
(医療安全情報 No. 80)について
(1)発生状況
第31回報告書(2012年12月公表)の個別のテーマの検討状況において「膀胱留置カテー
テル挿入の際、尿流出を確認せずにバルーンを拡張し尿道損傷を起こした事例」を取り上げた。その
後、医療安全情報 No. 80「膀胱留置カテーテルによる尿道損傷」(2013年7月提供:集計期間
2010年1月∼2013年5月)を作成し、情報を提供した。
今回、本報告書分析対象期間(2016年7月∼9月)において医療安全情報 No. 80の類似事例
が3件報告されたため、再び取り上げることとした。医療安全情報 No. 80の集計期間後の2013
年6月以降に報告された類似事例の報告件数を図表Ⅲ - 3- 17に示す。2013年7月以降、3ヶ月
ごとの各集計期間において再発・類似事例の報告が続いており、本報告書では34件の事例を分析す
る。
Ⅲ
図表Ⅲ - 3- 17 No. 80「膀胱留置カテーテルの尿道損傷」の報告件数
1∼3月
(件)
4∼6月
(件)
0
3
1
4
2014年
2
4
6
2
14
2015年
2
2
3
3
10
2016年
1
2
3
−
6
2013年
7∼9月
(件)
10∼12月
(件)
図表Ⅲ - 3- 18 医療安全情報 No. 80「膀胱留置カテーテルによる尿道損傷」
合計
﹁膀胱留置カテーテルによる尿道損傷﹂︵医療安全情報№ ︶について
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
80
- 177 -
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(2)膀胱留置カテーテルを挿入する際の手順
膀胱留置カテーテルの挿入について、カテーテルの挿入と滅菌蒸留水を注入しバルーンを拡張する
までの手順の一部を示す。膀胱留置カテーテルを挿入後、尿の流出を確認したうえで、バルーン内に
滅菌蒸留水を注入することが記載されている。しかし、報告された事例はいずれも尿の流出の確認を
行わずに、バルーン内に滅菌蒸留水を注入している。
院内の手順書等においては、尿の流出がない場合に具体的にどのように対応するのかを記載してお
いた方がよいだろう。
1)患者に口で深呼吸を行ってもらいながら、膀胱留置カテーテルを少しずつ挿入し、尿の
流出を確認する。
※尿の流出により、膀胱に達したことが確認できる。
※挿入時、異常な抵抗がある場合は無理に挿入せず、膀胱留置カテーテルを抜去する。
※尿の流出が確認できない場合は、続けて挿入する。さらに流出がなければ、下腹部
を軽く圧迫する。
※ それでも尿の流出が確認できない場合は、いったん膀胱留置カテーテルを抜去し、
医師の指示を求める。
2)滅菌蒸留水注入口に注射器を接続し、規定量の滅菌蒸留水をバルーンに注入する。
※「完全版 ビジュアル 臨床看護技術ガイド」1)を参考に作成
また、医療安全情報 No. 80には、留置時の手順と事例のイメージを簡略化してイラストで示した
(図表Ⅲ - 3- 19)。院内の手順書などにおいても、イラストで示すと状況が視認でき理解しやすいで
あろう。
図表Ⅲ - 3- 19 医療安全情報 No. 80のイラスト部分
- 178 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(3)事例の内容
医療安全情報 No. 80の再発・類似事例について、本報告書分析対象期間(2016年7月∼9月)
に報告された事例を含む主な事例を図表Ⅲ - 3- 20に示す。
図表Ⅲ - 3- 20 事例の内容
No.
1
3
事故の内容
医師
心臓カテーテル検査前、膀胱留置カテーテル
の挿入を研修医と看護師で行った。研修医は
膀胱留置カテーテルを尿道へ挿入していたと
ころ途中で進まなくなったため、まだ膀胱ま
で達していないと考えていた。しかし、介助
していた看護師は研修医の手が止まったので
膀胱内に入ったと判断し、
「入れますね」と
声をかけてバルーン内に滅菌蒸留水を5mL
注入した。この時に抵抗はなかった。研修医
はすぐにバルーン内の滅菌蒸留水を抜くよ
うに指示した。出血がなかったため、研修医
はさらに膀胱留置カテーテルを奥に進め、膀
胱留置カテーテルがすべて入った状態で尿の
流出を確認し、滅菌蒸留水を注入してバルー
ンを拡張させた。その後、血尿はなかったが
外尿道口から出血を認めたため尿道の損傷と
判断し、膀胱留置カテーテルで圧迫している
状態で予定通り心臓カテーテル検査を施行し
た。検査終了後、膀胱留置カテーテルを抜去
したところ出血が続いており、泌尿器科にコ
ンサルテーションを行った。尿道鏡で確認し
たところ尿道球部に損傷があり、圧迫止血の
ために再度膀胱留置カテーテルを留置した。
医師
医師
事故の背景要因
改善策
看護師は研修医の手が止まったこ ・ 膀胱留置カテーテル内
とで膀胱内にカテーテルが入った に尿の流出があること
と思った。バルーンを拡張させて を確認してからバルー
よいか研修医に確認しなかった。 ンを拡張させる。
看護師は膀胱留置カテーテル内に ・ お 互 い に 声 を 掛 け 合
尿が流出したことを確認しないで い、共通認識を持って
バルーンに滅菌蒸留水を注入し 対処する。
た。
・ 事 例 を 院 内 で 周 知 し
て、同様の事例の発生
を防ぐ。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
医師は、膀胱留置カテーテルを挿入後にバ 膀胱留置カテーテルの挿入の際に ・ 膀胱留置カテーテルの
ルーンを拡張し固定を行った。その後、尿の 抵抗を感じたにも関わらず、無理 挿 入 困 難 例 に 対 し て
流出がないため抜去を試みたが途中で抜去困 に挿入を進めたことが、カテーテ は、挿入操作の際に先
難となり、陰茎部の一部に膨隆がみられた。 ルの先端部が湾曲した要因と考え 端部が湾曲する可能性
出血を認めたため泌尿器科医師へ連絡し、抜 る。また、膀胱留置カテーテル内 があり、抜去の際はそ
去を依頼した。しかし、膀胱留置カテーテ への尿の流出を確認せずバルーン の可能性も十分考慮す
ルの先端が湾曲していることにより抜去が困 を拡張したことや、カテーテルの る必要がある。
難であった。泌尿器科医師が膀胱留置カテー 先端が湾曲した状態で抜去を試み ・ 挿入困難例や挿入の際
テルを抜去後に再挿入し、5病日目に抜去し たことが尿道損傷の要因と考え に出血がある例につい
ては、早い段階で泌尿
たが、尿道部からの出血が続くため、6病日 る。
器科へ相談する。
目に泌尿器科に紹介し、透視で尿道部からの
リークを確認し、1ヶ月程度膀胱留置カテー
テルを留置することになった。
患者は吐血のため救急搬送され、ショック状
態(血圧・意識レベル低下)であった。気管
挿管し、人工呼吸器管理を開始した。医師が
尿量の観察のために膀胱留置カテーテルを留
置した。その際、尿の流出により膀胱内に留
置されたことを確認しないまま滅菌蒸留水に
てバルーンを拡張して固定した。他の医師が
尿の流出がないことに気づき、エコー下にて
膀胱留置カテーテルが膀胱内に留置されてい
ないことを確認した。抜去したところ、外尿
道口より血尿を認めた。
Ⅲ
出血性ショックにより救急搬送さ ・ 膀胱留置カテーテル挿
れ、意識レベル・全身状態が悪く、 入時の手技について、
緊急処置が必要な状態であった。 留意点、観察点、危険
患者は人工呼吸器を装着し鎮静さ 性について指導した。
れていたため、苦痛を訴えること ・ 研修医は、必ず上級医
がなかった。
医師は膀胱留置カテー の指示のもとに実施す
テルの挿入の経験があり、男性へ る体制を検討した。
の膀胱留置カテーテルの挿入と女
性への膀胱留置カテーテルの挿入
の手技は変わりないと考え、膀胱
留置カテーテルを挿入した。医師
は膀胱留置カテーテルを挿入して
も尿の流出がないことに疑問を持
たず、膀胱内にカテーテルが留置
されたかどうか確認せずに、滅菌
蒸留水にてバルーンを拡張した。
- 179 -
﹁膀胱留置カテーテルによる尿道損傷﹂︵医療安全情報№ ︶について
2
挿入した
職種
80
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
No.
4
5
6
挿入した
職種
看護師
看護師
看護師
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
事故の内容
事故の背景要因
改善策
胃瘻造設の当日で安静指示あり、患者と家族 指導目的にて、新人看護師が挿入 ・手順を遵守する。
の希望で膀胱留置カテーテルを留置すること し、先輩看護師は介助に入った。・ 膀胱留置カテーテルの
になった。胃瘻造設後に一年目の看護師とカ 先輩看護師は、自身が挿入してい 挿入時に尿の流出がな
テーテルを挿入した。その際、尿の流出を目 ないので挿入時の抵抗感などはわ い 場 合 は、 絶 対 に バ
視できなかったが、20cm以上スムーズに からなかったが、見ていてスムー ルーンに滅菌蒸留水を
入った。また、1時間30分前に自尿を確認 ズに20cm以上挿入できてい 注入しないことを看護
していたため、痛みがないことを確認し滅菌 た。尿の流出を確認したうえでバ 部全体に周知した。
蒸留水を注入した。1時間後、膀胱留置カテー ルーンを固定することになってい ・ 新人看護師の指導の際
テル内に数滴の血液と少量の尿を確認した。 たができていなかった。腹部を圧 は、正しい手順で指導
尿量が増えるか観察をしていたが増えず、挿 迫したが尿の流出を確認できず、 することを併せて周知
入から2時間後に担当医に報告した。その後、 患者に痛みがないため、滅菌蒸留 した。
泌尿器科医師が透視下にて確認し、膀胱留置 水をバルーンに注入し尿の流出を
カテーテルが膀胱に到達する前にバルーンを 待つことにした。
拡張したことが分かった。膀胱留置カテーテ
ルを2週間挿入することになった。
看護師は、肝動脈塞栓術のために膀胱留置カ
テーテルを留置したところ、患者より尿道痛
の訴えがあった。カテーテルを抜去すると出
血し、尿道損傷を起こしていた。
カテーテルの挿入時に尿の流出が ・ マ ニ ュ ア ル を 遵 守 す
認められなかったが、患者が排尿 る。
したばかりだと発言したため滅菌 ・ 経験の浅い看護師への
蒸 留 水 を 注 入 し た。 看 護 業 務 マ 教育を充実する。
ニュアルでは、尿の流出が認めら
れなければ滅菌蒸留水を注入して
はいけないルールとなっていた
が、守られていなかった。
看護師は、定期の膀胱留置カテーテルの交換 膀胱留置カテーテルが規定の長さ ・ 決 め ら れ た 手 順 や
を実施した。カテーテルは抵抗なく規定の長 まで挿入されていたが、尿の流出 チェックリストの意味
さまで挿入できたが、尿の流出はなく、下腹 が な か っ た こ と か ら、 尿 道 で カ を考え遵守する。
部を圧迫しても尿の流出を認めなかった。し テーテルが屈曲していた可能性が ・ 膀胱留置カテーテル挿
かし、時間が経てば流出があると考え、バ あり、尿道でバルーンを膨らませ 入時のチェックリスト
ルーンに滅菌蒸留水を注入した。しばらくし たことで尿道損傷が生じた。一度 を見直し、周知する。
ても尿の流出がないため、滅菌蒸留水を抜き 止血後、カテーテルのサイズを変 ・ 前立腺肥大や尿道損傷
カテーテルを抜去したところ、尿道口より鮮 更し、何度も再挿入を試みたこと の危険性のある患者を
紅色の出血があった。すぐに尿道口を圧迫し、 で尿道の損傷部を刺激し、出血を アセスメントし、危険
止血を確認後、担当看護師に報告した。その 助長させたと思われる。膀胱留置 性の高い患者への膀胱
後、主治医に報告し、新しい膀胱留置カテー カテーテル挿入時のチェックリス 留置カテーテルの挿入
テルを再挿入し、挿入できなければカテーテ トを確認しながら挿入していた は医師に依頼する。
ルを16Fr、14Frとサイズダウンし が、以前に同様のケースで、時間 ・ モデル人形を使用し、
て再挿入するよう指示があった。看護師は、 が経った後に尿の流出を認めた経 手技の確認を行う。
18Fr、16Fr、14Frを再挿入しよ 験があったため、大丈夫だと思い、
うとしたが抵抗があり挿入できなかった。主 滅菌蒸留水を注入した。患者は、
治医が診察し、止血剤の投与を指示した。そ 膀胱留置カテーテルの挿入が難し
の後、外科医へ応援を要請し、外科医はエコー いという情報があったことから、
下でガイドワイヤーを使用し、フォーリーカ 年齢的にも前立腺肥大の可能性も
テーテル16Frを挿入し、尿の流出を確認 あり、膀胱留置カテーテルの挿入
した。
自体がハイリスクだったと思われ
る。
- 180 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
No.
7
挿入した
職種
看護師
5名
事故の内容
事故の背景要因
改善策
Ⅲ
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
﹁膀胱留置カテーテルによる尿道損傷﹂︵医療安全情報№ ︶について
チェッ
午前中、看護師Aは、膀胱留置カテーテルの 膀胱留置カテーテルを規定の長さ ・ 決められた手順、
定期交換を実施した。カテーテルの1/2ま まで抵抗なく挿入していたが、尿 クリストの意味を考え
で挿入した際に抵抗があり、カテーテルを抜 の流出がなかったこと、カテーテ 遵守する。
去した。その後、看護師B、Cに交代し挿入 ルの挿入後に規定量の滅菌蒸留水 ・ 膀胱留置カテーテル挿
を試みたが、同じく途中で抵抗を感じ、交換 が注入できなかったことから、尿 入時のチェックリスト
を一旦中止した。カテーテル交換ができな 道でカテーテルが屈曲していた可 を見直し、周知する。
かったことを主治医、病棟師長に報告した。 能性が高く、尿道でバルーンを拡 ・ 教育研修にモデル人形
午後、看護師D、Eにカテーテル交換を依頼 張し尿道損傷が生じた。患者の膀 を使用し、解剖生理を
した。依頼された看護師Dはカテーテルを規 胱留置カテーテルの交換に計5名 理解した手技を確認す
定の長さまで抵抗なく挿入したが、陰嚢下部 の看護師が交代してカテーテルの る。
にカテーテルの先端が触れ抜去した。看護師 挿 入 を 試 み て い る。 度 重 な る カ
Eに交代し、カテーテルを1/2程度挿入し テーテルの挿入が刺激となり尿道
たところ、カテーテルから約20mLの尿の 粘膜の胞弱化、抗凝固剤服用等に
流出があり、ベッドサイドの主治医にバルー より出血等を助長させたと考え
ンの固定を行っても良いか確認した。医師の る。出血後、カテーテルのサイズ
指示のもと、看護師Eが滅菌蒸留水を4mL を変えて何度も挿入を試みた事が
注入したところ抵抗があり、滅菌蒸留水を回 損傷部を刺激したと考える。
収、カテーテルを抜去した。尿道口から出血
はなかった。再度、看護師Eはカテーテルを
分岐部まで抵抗なく挿入したが、尿の流出は
なかった。看護師Eは挿入に抵抗がなかっ
たため、固定のためバルーンに滅菌蒸留水を
9mLまで注入したところ抵抗があった。カ
テーテルを引き、固定を確認し膀胱内に留置
されたと考えた。ルートに薄ピンク色の尿が
少量流出していたが、看護師Eは、数回のカ
テーテル交換による出血と考え処置を終了し
た。他の処置で訪室していた外科医師と看護
師Fは、患者の膀胱留置カテーテルの挿入の
長さが浅いことに気付き、患者の陰嚢の下部
を触診したところ、バルーンに触れた。外科
医師はカテーテルを抜くよう指示し、看護師
Fがカテーテルを抜いた。直後、尿道口から
出血があり、外科医師、内科主治医はエコー
ガイド下にチーマン・カテーテルのサイズを
変え挿入を試みたが挿入できず、泌尿器科医
師に往診を依頼した。泌尿器科医師は超音
波ガイド下、金属カテーテルの挿入は可能で
あったが、膀胱留置カテーテルの挿入が困難
であったため、膀胱瘻を造設することになっ
た。
80
- 181 -
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(4)事例の概要
①患者について
1)患者の性別および年齢
報告された34件の事例について患者の性別を集計したところ、すべての事例において患者は男
性であった(図表Ⅲ - 3- 21)。女性の尿道は約3∼4cmであるのに比べ、男性の尿道は約17
cmと長く、膀胱留置カテーテルが何らかの要因により尿道の途中で止まったり、尿道内で折り返
したりすることによって、膀胱まで到達しない可能性がある。
図表Ⅲ - 3- 21 患者の性別
性別
件数
男性
34
女性
0
また、患者の年齢を年代で集計すると(図表Ⅲ - 3- 22)
、50歳以上の事例が多く、50、
60歳代はそれぞれ8件、70歳代は7件の報告があった。
図表Ⅲ - 3- 22 患者の年齢
(件数)
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
0 ∼ 9 歳代
10 歳代
20 歳代
40 歳代
50 歳代
60 歳代
70 歳代
80 歳以上
2)患者側の要因
事例の内容や背景・要因から膀胱留置カテーテルの挿入時に影響を与えたと考えられる要因が記
載されていたものについてまとめた(図表Ⅲ - 3- 23)
。
34件中4件は、尿道が狭窄していたことが記載されていた。また、麻酔下で患者に違和感など
を確認できなかった事例や、患者の状態から下腹部の圧迫が行えなかったと記載されている事例が
あった。
前立腺肥大症は、加齢とともに前立腺の内腺が肥大し、尿路を圧迫する疾患であり、70歳代以
降の男性ではほぼ全例で認め、そのうち10∼20%で排尿障害を呈する2)とされ、特に50歳代
から増加する。報告された事例の患者の年齢は50歳以上が多いことから、事例内に記載がない場
合も尿道の狭窄などにより膀胱留置カテーテルの挿入に何らかの影響があった可能性がある。
- 182 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
図表Ⅲ - 3- 23 膀胱留置カテーテルの挿入に関連する患者側の要因
患者側の要因
件数
尿道が狭窄していた
4
前立腺肥大の既往
2
前立腺部尿道に複数の結石が存在
1
尿道球部から膜様部にかけての狭窄
1
患者は小児で、尿道が細かった
1
脊髄くも膜下麻酔後に挿入したため、患者に違和感などを確認
できなかった
1
腹部大動脈瘤、腸骨大動脈瘤の患者のため、下腹部圧迫による
尿の流出確認ができなかった
1
3)患者に行った処置
対象となった事例34件中、事故の程度が「死亡」や「障害残存の可能性がある(高い)
」が選
択された事例はなかった。しかし、膀胱留置カテーテルのバルーンを誤って尿道で拡張した結果、
Ⅲ
患者の尿道を損傷し、何らかの処置を必要とした事例が報告されている。そこで、事例に記載さ
れた内容から、尿道損傷の有無の確認、または尿道損傷の診断後に、患者に行った処置をまとめた
(図表Ⅲ - 3- 24)
。
患者に行った処置が記載されていなかった6件を除いた28件の事例のうち、25件は泌尿器科、
1件は外科に対応を依頼し、依頼された科の医師が処置を行っていた。最も多かったのは、泌尿器
科医師による診察が9件であり、これらは何らかの検査等を行った可能性があるが記載はなく、そ
査が6件、X線透視検査が4件などであった。また、下記に示す処置の後、最終的に腎盂バルンカ
テーテルを挿入した事例や膀胱瘻を造設した事例がそれぞれ3件、予定していた手術が延期になっ
た事例が2件あった。膀胱留置カテーテルの留置を安易に行うのではなく、患者の安全を優先した
手順で行うことが望まれる。
図表Ⅲ - 3- 24 患者に行った処置
処置を依頼された
診療科
行った処置
件数
泌尿器科
25
診察
9
膀胱鏡、尿道鏡などの内視鏡
6
X線透視検査(膀胱造影、尿道造影)
4
ガイドワイヤーを使用した膀胱留置カテーテルの挿入
3
超音波ガイド下の金属カテーテルの挿入
1
超音波検査、膀胱鏡、尿道ブジー
1
超音波検査、直腸診
1
外科
80
1
ガイドワイヤーを使用した膀胱留置カテーテルの挿入
1
超音波検査
2
依頼せず
2
記載なし
6
合 計
34
- 183 -
﹁膀胱留置カテーテルによる尿道損傷﹂︵医療安全情報№ ︶について
の後、泌尿器科医師が膀胱留置カテーテルを挿入している。次に、膀胱鏡や尿道鏡などの内視鏡検
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
②膀胱留置カテーテルの挿入に関して
1)挿入の目的
膀胱留置カテーテルを挿入した目的をまとめた(図表Ⅲ - 3- 25)。手術や生検の際に膀胱留置
カテーテルを挿入した事例が15件と最も多かった。
図表Ⅲ - 3- 25 膀胱留置カテーテルの挿入の目的
挿入の目的
手術・生検
件数
15
定期交換
5
採尿、尿量の測定や管理
6
心臓カテーテル検査
4
仙骨部の褥瘡の汚染防止
1
安静のため患者・家族が希望
1
記載なし
2
合 計
34
2)膀胱留置カテーテルを挿入した職種
事例に記載された内容から、膀胱留置カテーテルを挿入した職種をまとめた(図表Ⅲ - 3- 26)
。
このうち、職種経験年数1年未満は7名であった。
挿入した職種が看護師であった事例のうち2件は、複数の看護師が交代して挿入を試みたと報告
されていた。また、尿の流出が得られないため、看護師が医師の指示に基づき、膀胱留置カテーテ
ルのサイズダウンまたは素材を変更しながら複数回挿入を繰り返した事例が2件あった。
図表Ⅲ - 3- 26 膀胱留置カテーテルを挿入した職種
挿入した職種
人数
看護師
27※
医師
11
歯科医師
1
※複数の看護師が挿入を試みた事例が含まれる。
- 184 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
3)膀胱留置カテーテルの挿入時およびバルーン内への滅菌蒸留水注入時の抵抗について
報告された事例の内容から、膀胱留置カテーテルの挿入時の抵抗の有無、バルーン内への滅菌
蒸留水注入時の抵抗の有無を集計した(図表Ⅲ - 3- 27)
。カテーテルの挿入時に抵抗がなかった
事例が17件、バルーン内への滅菌蒸留水注入時に抵抗がなかった事例が20件と多い。さらに、
どちらも抵抗がなかった事例が15件であり、膀胱留置カテーテル挿入時の抵抗の有無や、バルー
ンへの滅菌蒸留水注入時の抵抗では、膀胱まで到達したかどうかを判断することは困難である。
図表Ⅲ - 3- 27 挿入時の抵抗の有無および滅菌蒸留水注入時の抵抗の有無
注入時の抵抗
なし
あり
3
5
1
9
挿入時の抵抗 なし
2
15
0
17
0
0
8
8
5
20
9
34
詳細不明
合 計
詳細不明
合計
あり
Ⅲ
4)尿の流出を確認せずに、バルーン内に滅菌蒸留水を注入した理由
尿の流出を確認せずに、バルーン内に滅菌蒸留水を注入した理由についてまとめた(図表
Ⅲ - 3- 28)
。「抵抗なく規定の長さを挿入できた」ため、バルーン内に滅菌蒸留水を注入した事
例が15件と多かった。また、
「排尿直後や禁食中であったため、膀胱内に尿が溜まっていないと
考えた」事例が5件であった。膀胱留置カテーテルが膀胱に入ったことを確認できるのは尿の流出
によってのみであり、挿入後に尿の流出がない場合は、バルーンは拡張しないことを徹底すること
図表Ⅲ - 3- 28 尿の流出を確認せずに、バルーン内に滅菌蒸留水を注入した理由
バルーン内に注入した理由
抵抗なく規定の長さを挿入できた
件数
15
排尿直後や禁食中であったため、膀胱内に尿が溜まっていないと考えた
5
膀胱を腹部エコーで確認した際に尿が溜まっていなかったため、尿の流出がないと考えた
1
以前、女性患者の膀胱留置カテーテルを挿入した際に、先輩看護師から「尿の流出が無くてもバ
ルーンを膨らませても大丈夫」と言われたことを思い出した
他の看護師に相談したところ「直前に排尿していると尿が出ないこともあるので、とりあえず、
固定してもいいのでは」と助言を受けた
1
1
医師に尿の流出がないことを報告したが、滅菌蒸留水を注入してよいと指示があった
1
ショック状態であったため、尿の流出がないことに疑問を持たなかった
1
潤滑剤を少量の尿だと思った
1
15cm挿入したところでカテーテルが進まなくなったため、とりあえず注入した
1
研修医は、カテーテルが途中で進まなくなったため手を止めて、膀胱に入っていないだろうと考
えていたところ、看護師は医師の手が止まったため膀胱内に入ったと思った
1
不明
5
- 185 -
﹁膀胱留置カテーテルによる尿道損傷﹂︵医療安全情報№ ︶について
が重要である。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
80
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
③その他
1)尿道損傷に気付いたきっかけ
膀胱留置カテーテルの挿入後、尿道損傷に気付いたきっかけをまとめた(図表Ⅲ - 3- 29)。
最も多かったのは「出血した」事例であり、
「尿道口から出血」した事例が13件、「カテーテル内
に出血または血尿」があった事例が9件であった。その他には、患者から痛みの訴えがあった事例
や挿入後しばらく様子を見ても尿の流出がなかった事例が報告されている。
図表Ⅲ - 3- 29 尿道損傷に気付いたきっかけ
きっかけ
件数
尿道口から出血
出血した
13
カテーテル内に出血または血尿
9
尿道口とカテーテル内の両方から出血
1
尿の流出がなかった
4
尿道口付近の痛みの訴えがあった
2
陰嚢付近に拡張した膀胱留置カテーテルのバルーンを触知した
1
撮影予定であったCT検査を行った
1
記載なし
3
合 計
34
2)膀胱留置カテーテル挿入の手順書の有無について
事例を報告した医療機関における膀胱留置カテーテル挿入の手順書の有無について図表Ⅲ - 3- 30
に示す。手順書があったことが分かる事例は16件であった。そのうち、手順書に「尿の流出がな
い場合は、滅菌蒸留水を注入してバルーンを拡張しないこと」を記載していた事例は9件であった。
今後、「尿の流出がない場合、バルーンを拡張しない」ことを追加すると記載していた事例は3件、
具体的な内容は分からないが手順書を見直すとした事例が4件であった。
膀胱留置カテーテル挿入の手順書に「尿の流出がない場合、バルーンを拡張しない。拡張すると
尿道損傷の危険性がある」などと具体的に明記し、それを医師や看護師が遵守できるよう周知する
ことが必要である。
また、手術室内用の膀胱留置カテーテル挿入の手順書がなかったと記載している事例が1件あり、
院内で手順書を共有することが望まれる。
図表Ⅲ - 3- 30 挿入時の手順書の有無
手順書の有無
あり
件数
16
手術室用はなかった
記載なし
1
17
合 計
34
- 186 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(5)事例の背景・要因
報告された事例の背景・要因から、膀胱留置カテーテルの挿入に関する主な背景・要因を図表
Ⅲ - 3- 31に整理した。
図表Ⅲ - 3- 31 主な背景・要因
○手順に関すること
・ 手順を基に挿入を実施したが、「尿の流出を確認し滅菌蒸留水を注入する」の手順を守らなかった。
・院内における膀胱留置カテーテルの挿入(特に男性)についてのルールが示されていなかった。
・手術室における持続的導尿マニュアルが無かった。
○認識の誤りに関すること
・ 看護師は、尿の流出が確認できない理由を、挿入の直前∼1時間半前に自尿があったためだと思った。
(複数報告あり)
・看護師はこれまで男性の膀胱留置カテーテルの挿入で失敗したことはなかったため、大丈夫だと思った。
・看護師は、膀胱留置カテーテルの挿入が医療行為であることの認識がなかった。
Ⅲ
・ 医師は膀胱留置カテーテルの挿入の経験があるため、男性の場合と女性の場合の手技は変わりないと考
えていた。
・医師は膀胱留置カテーテルを挿入しても尿の流出がないことに疑問を持たなかった。
○判断の誤りに関すること
・看護師は膀胱留置カテーテル内の尿の流出を確認しないで、バルーンを拡張した。(複数報告あり)
・ 医師は、尿の流出がないため膀胱内にカテーテルが留置できていない可能性を推測していたが、尿道か
ら出血したため「圧迫が必要」と判断してバルーンを拡張した。
・滅菌蒸留水の注入時に抵抗があったが規定量を注入した。(複数報告あり)
・ 膀胱留置カテーテルを留置するため、何度も入れなおす、または複数の看護師が交代して挿入を試みた。
(複数報告あり)
・ 看護師は膀胱留置カテーテル挿入時のチェックリストを確認しながら挿入していたが、以前に同様のケース
で、時間が経った後に尿の流出を認めた経験があったため、大丈夫だと思った。
○教育・経験に関すること
・ 看護師は男性の膀胱留置カテーテルの挿入の経験はあったが知識や経験が十分ではなく、尿道内でのカ
テーテルの屈曲を予測できていなかった。
・ 1年目看護師の看護技術チェックの進捗状況を把握しないまま、半年過ぎたので一人でできるであろう
と判断し1年目看護師一人に膀胱留置カテーテルの挿入を任せた。
・ 新人看護師で手技が未熟であり、膀胱留置カテーテルの挿入を3回ほど行ったことがあった。しかし、
清潔操作、挿入の手技において指導者より自立と判断されておらず、一人で実施したことはなかった。
○業務上の環境に関すること
・病棟が繁忙で早く準備や処置を進めていかなければいけないという焦りがあった。
- 187 -
﹁膀胱留置カテーテルによる尿道損傷﹂︵医療安全情報№ ︶について
・看護師は研修医の手が止まったことで膀胱内にカテーテルが入ったと思った。
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
80
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
(6)事例が発生した医療機関の改善策
事例が発生した医療機関の主な改善策を以下に整理して示す。
①医師への相談
・男性患者で挿入時のリスクが高い患者に対しては、主治医と十分に相談して施行する。
・男性患者の場合、尿の流出がない時、抵抗がある時などは無理をせずに医師に挿入を依頼する。
・挿入困難例や挿入の際に出血がある例については、早い段階で泌尿器科へ相談する。
・ 挿入時に少しでも抵抗を感じるようであれば、それ以上カテーテルを進めることは中止し、泌
尿器科にコンサルトする。
②手順の確認
・患者が50歳以上の男性であれば、前立腺肥大の可能性があることを念頭に置いて行う。
・男性患者に膀胱留置カテーテルを挿入する場合は、カテーテルの根元まで挿入する。
・膀胱留置カテーテルの挿入時に抵抗があればすぐに抜去する。
・ 膀胱留置カテーテルの挿入後、必ず尿の流出を確認してからバルーンを拡張させる。(複数報
告あり)
・ 以前、院内で膀胱留置カテーテルの挿入による尿道損傷の事例が発生した際、警鐘事例として
分析し、泌尿器科医師のアドバイスのもと、手順に以下の2つを追加していた。
1) カテーテルを根元まで挿入して、尿の流出を確認後、滅菌蒸留水を注入すること。挿入
が浅いと、尿の流出が確認できても尿道でバルーンを拡張することになる。
2) 正しい手順で行っても尿の流出がなければ、誰が挿入しても同じため、早めに泌尿器科
へコンサルトすること。出血がひどくなると挿入がさらに難しくなる。
③マニュアルの作成・改訂
・手術室における膀胱留置カテーテル挿入のマニュアルを作成する。
・ 「膀胱留置カテーテルの留置と管理」マニュアルの「カテーテルの根元まで挿入しても尿の流
出を確認できない場合は、バルーンを安易に拡張しない」という文章を改訂した。
1)「安易に」ではなく「絶対」と強調した。
2)「根元」を太字で強調した。
・ 膀胱留置カテーテル挿入時のチェックリスト、看護手順、ガイドラインなどを見直し、周知する。
(複数報告あり)
④教育
・膀胱留置カテーテルの挿入は尿道損傷のリスクが高いことについて学習会を行い、再認識する。
・ 1年目看護師全員を対象に膀胱留置カテーテルの管理(挿入の技術も含む)の研修を行う。
その後、シミュレーターを用いた膀胱留置カテーテルの挿入の技術チェックを行い、技術チェッ
クに合格しないと膀胱留置カテーテルの挿入はできないことにした。
・研修医が実施する際には必ず上級医の指示のもとに実施する体制を検討した。
・泌尿器科医師による技術教育を実施し、技術向上に努める。
- 188 -
3 再発・類似事例の発生状況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
⑤業務の調整
・ 夜勤帯での膀胱留置カテーテルの挿入については、できるだけ業務が集中する時間を避ける、
もしくは、業務調整をして余裕を持って実施する。
(7)まとめ
本報告書では、医療安全情報 No. 80「膀胱留置カテーテルによる尿道損傷」について、医療安全
情報の集計期間後の2013年6月から本報告書分析対象期間(2016年7月∼9月)に報告された
事例について分析した。患者の性別や年齢を整理したところ、全ての事例が男性患者であり、50歳
以上の事例が多かった。また、膀胱留置カテーテルを挿入した目的、職種、挿入時やバルーン拡張時
の抵抗についてまとめた。いずれも、挿入後尿の流出が確認できないままバルーンを拡張させた事例
であり、報告された事例の主な背景・要因や改善策をまとめた。
膀胱留置カテーテルを挿入後、尿の流出がない場合はバルーンを拡張しないことを徹底することが
重要である。院内のマニュアルや手順書などを再確認し、改めて膀胱留置カテーテルの挿入時の注意
Ⅲ
事項を認識する必要がある。
今後も引き続き類似事例の発生について、その推移に注目していく。
(8)参考資料
1. 坂本すが,井出尾千代美 監修.完全版 ビジュアル 臨床看護技術ガイド 第3版第4刷.
照林社,2016;510.
2. 伊 藤 正 男, 井 村 裕 夫, 高 久 史 麿. 医 学 大 辞 典 第 2 版 第 2 刷. 医 学 書 院, 2 0 1 0;
﹁膀胱留置カテーテルによる尿道損傷﹂︵医療安全情報№ ︶について
1
2-〔1〕
2-〔2〕
2-〔3〕
3-〔1〕
3-〔2〕
3-〔3〕
1663.
80
- 189 -
Ⅲ 医療事故情報等分析の現況
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
- 190 -
参考 医療安全情報の提供
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
参考 医療安全情報の提供
2006年12月より医療事故情報収集等事業において、報告書、年報を作成・公表する情報提供
に加え、特に周知すべき情報を医療安全情報として、事業に参加している医療機関などに対してファッ
クスなどにより提供することとした。
【1】目的
医療事故情報収集等事業で収集した情報に基づき、特に周知すべき情報を提供し、医療事故の発生
予防、再発防止を促進することを目的とする。
【2】対象医療機関
① 医療事故情報収集・分析・提供事業の報告義務対象医療機関及び参加登録申請医療機関
② ヒヤリ・ハット事例収集・分析・提供事業の参加医療機関
③ ファックスによる情報提供を希望した病院
なお、事業に参加していない病院からも、ファックスによる情報提供の依頼を随時受け付けている。
また、2015年12月にも医療安全情報の提供を受けていない病院に対し、第5回目の情報提供の
希望を募った。医療安全情報 No. 111より、約6,
000医療機関へ情報提供を行っている。
【3】提供の方法
主にファックスにより情報提供している。
【4】医療安全情報
2016年7月∼9月分の医療安全情報 No. 116∼ No. 118を次に掲載する。
(注)公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業ホームページ(http://www.med-safe.jp/)参照。
- 191 -
参考
なお、本事業のホームページ(注)にも掲載し、広く社会に公表している。
参考 医療安全情報の提供
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
医療事故情報収集等事業 医療安全情報 No.116 2016年7月
公益財団法人 日本医療機能評価機構
医療事故情報収集等事業
医 療 与薬時の患者取り違え
安全情報
No.116 2016年7月
与薬時、患者氏名の確認が不十分であったため、患者を取り違えた事例が6件報告
されています
(集計期間:
2013年1月1日∼2016年5月31日)
。
この情報は、
第42回
報告書「個別のテーマの検討状況」
(P129)
で取り上げた内容を基に作成しました。
与薬時、
患者氏名を確認しなかった、
または確認
する方法が適切でなかったため、患者を取り
違えた事例が報告されています。
事例1のイメージ
○山 夫さんですね。
患者確認の一例
薬を持ってきました。
名前をフルネームで
お願いします。
はい。
□川
△
□川△郎
です。
郎様
○山 夫様
□川△郎
□川△郎
◆報告された事例には、
この他に姓のみで確認した事例や、名乗れない患者のネームバンドを
確認しなかった事例があります。
- 192 -
参考 医療安全情報の提供
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
医療事故情報収集等事業
医療事故情報収集等事業
医療
No.116 2016年7月
安全情報
与薬時の患者取り違え
事例1
看護師は、患者Bの氏名が記載してある薬を持って患者Aのところに行った。
看護師は患者Aを患者Bと思い、患者Bの薬を見せながら「Bさんですね」と
フルネームで声をかけた。患者Aは「はい」と返答し、患者Bのフロセミド錠
40mg1錠を内服した。看護師は、
その直後に患者Aのネームバンドの名前が
目に入り、間違いに気づいた。
事例2
看護師は、患者Bに睡眠薬を投与する際、患者Aを患者Bと思い込み、同性で
同年代の患者Aの病室に行った。看護師は、薬包の患者氏名とネームバンド
の照合を行わず、患者Bの薬を患者Aの胃管より投与した。その後、患者Aが
舌根沈下を起こした際、看護師は患者Aには睡眠薬の指示がなかったことに
気付いた。患者Aのゴミ箱を見ると患者Bの氏名が記載された空の薬包が
あった。
・与薬時、薬包などの氏名とネームバンドを照合する。
・口頭で患者を確認する際は、患者に氏名を名乗ってもらい、
薬包などの氏名と照合する。
※この医療安全情報は、
医療事故情報収集等事業(厚生労働省補助事業)
において収集された事例をもとに、
本事業の一環として総合評価
部会の専門家の意見に基づき、
医療事故の発生予防、
再発防止のために作成されたものです。本事業の趣旨等の詳細については、
本事業
ホームページに掲載されている報告書および年報をご覧ください。
http://www.med-safe.jp/
※この情報の作成にあたり、
作成時における正確性については万全を期しておりますが、
その内容を将来にわたり保証するものではありません。
※この情報は、
医療従事者の裁量を制限したり、
医療従事者に義務や責任を課したりするものではありません。
▼カラー版はこちらから▼
公益財団法人 日本医療機能評価機構
医療事故防止事業部
〒101-0061 東京都千代田区三崎町1-4-17 東洋ビル
電話:03-5217-0252 FAX:03-5217-0253
http://www.med-safe.jp/
- 193 -
参考
事例が発生した医療機関の取り組み
参考 医療安全情報の提供
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
医療事故情報収集等事業 医療安全情報 No.117 2016年8月
公益財団法人 日本医療機能評価機構
医療事故情報収集等事業
医療
安全情報
No.117 2016年8月
他施設からの食種情報の
確認不足
他施設からの食種の情報を確認しなかったため、患者に適さない食事を提供した
事例が3件報告されています
(集計期間:2013年1月1日∼2016年6月30日)。
この情報は、第26回報告書「個別のテーマの検討状況」
(P109)
で取り上げた内容
を基に作成しました。
食種に関する情報を確認しなかったため、患者
に適さない食事を提供した事例が報告されて
います。
他施設からの
食種情報
提供した
食事
全粥・粗刻み食
常食
・医師は入院時の食事の指示をする際に、
80代 診療情報提供書に記載された食種を
確認しなかった
全粥・軟菜・
刻み食
常食
・医師は、入院時に食種に関する情報を
得ておらず、とりあえず「常食」を
70代 オーダした
・看護師は、転入前の施設からの看護
サマリの内容を確認しなかった
粥・刻み食
常食
80代
患者の
年齢
背景
・転入前の施設からの食種の情報提供が
遅れた
- 194 -
参考 医療安全情報の提供
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
医療事故情報収集等事業
医療事故情報収集等事業
医療
No.117 2016年8月
安全情報
他施設からの食種情報の確認不足
事例1
医師は入院時の食事の指示をする際に、診療情報提供書に記載された食種
を確認せず、
「常食」
と入力した。看護師は食事をセッティングした際、患者の
咀嚼・嚥下状態を観察しなかった。
15分後、患者がむせていると報告があり
訪室すると、SpO2は80%に低下していた。米飯が多量に吸引され、SpO2
は97%に改善した。その後、看護師が転入前の食種を確認すると、前医では
「全粥・粗刻み食」を提供していたことが分かった。
事例2
医師は入院時の食事の指示をする際に、
転入前の施設から食種に関する情報
を得ていなかったため、とりあえず「常食」をオーダした。看護師は夕食の
セッティングをして、食事の摂取を3口ほど見守り退室した。その後、食事摂
取状況の確認のために訪室すると、患者はベッド上でぐったりしており、呼名
に反応せず、口腔内にはミカンや米飯などが多量にあった。入院時に患者が
持参した看護サマリに「全粥・軟菜・刻み食」
と食種が記載されていたが、看護
師は確認していなかった。
・他施設からの診療情報提供書や看護サマリを確認し、
患者に適した食種を選択する。
※この医療安全情報は、
医療事故情報収集等事業(厚生労働省補助事業)
において収集された事例をもとに、
本事業の一環として総合評価
部会の専門家の意見に基づき、
医療事故の発生予防、
再発防止のために作成されたものです。本事業の趣旨等の詳細については、
本事業
ホームページに掲載されている報告書および年報をご覧ください。
http://www.med-safe.jp/
※この情報の作成にあたり、
作成時における正確性については万全を期しておりますが、
その内容を将来にわたり保証するものではありません。
※この情報は、
医療従事者の裁量を制限したり、
医療従事者に義務や責任を課したりするものではありません。
▼カラー版はこちらから▼
公益財団法人 日本医療機能評価機構
医療事故防止事業部
〒101-0061 東京都千代田区三崎町1-4-17 東洋ビル
電話:03-5217-0252 FAX:03-5217-0253
http://www.med-safe.jp/
- 195 -
参考
事例が発生した医療機関の取り組み
参考 医療安全情報の提供
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
医療事故情報収集等事業 医療安全情報 No.118 2016年9月
公益財団法人 日本医療機能評価機構
医療事故情報収集等事業
外観の類似した
医療
安全情報 薬剤の取り違え
No.118 2016年9月
アンプルや包装の色が類似していたことが薬剤取り違えの一つの要因となり、患者に
誤った薬剤を投与した事例が4件報告されています(集計期間:2012年1月1日∼
2016年7月31日)
。
この情報は、
第45回報告書
「個別のテーマの検討状況」
(P135)
で取り上げた内容を基に作成しました。
薬剤を取り違えた背景・要因として、アンプル
や包装の色が類似していたと記載されている
事例の報告があります。いずれも、薬剤名を
確認していなかった事例です。
種類
形態
色
投与すべき薬剤
セレネース注5mg
注射薬 アンプル
茶 ラシックス注20mg
取り違えた薬剤
サイレース静注2mg
プリンペラン注射液10mg
プリンペラン注射液10mg ペルジピン注射液2mg
内服薬 PTP包装 赤 ワーファリン錠1mg
事例1の注射薬
(イメージ)
ラシックス錠40mg
事例2の内服薬
(イメージ)
R
ぺルジピン注射液2mg
R
プリンペラン注射液 10mg
mg
◆第45回報告書(2016年6月公表)
のP141に薬剤のカラー写真を掲載しています。
(http://www.med-safe.jp/pdf/report_2016_1_T002.pdf)
- 196 -
参考 医療安全情報の提供
医療事故情報収集等事業 第 47 回報告書(2016年7月∼9月)
医療事故情報収集等事業
医療事故情報収集等事業
医療
No.118 2016年9月
安全情報
外観の類似した薬剤の取り違え
事例1
手術中、患者が吐き気、気分不快感を訴えた。術者の医師Aより
「プリンペランi
v」と口頭指示が出た
際、看護師は他の処置を行っていたため、医師Bがプリンペランは茶色のアンプルという認識で薬剤を
取り出し、一人で準備し、投与した。その後、患者の血圧は60∼80mmHg台となりエフェドリンを
投与した。手術終了後、
看護師が術中使用した薬剤のアンプルを確認した際、
プリンペランの空アンプル
がなく、使用していないはずのペルジピンの空アンプルがあった。医師Bに確認したところ、薬剤を取り
違えてペルジピンを投与したことが分かった。
事例2
患者は外来を受診し、保険薬局で内服薬を受け取り、帰宅した。受診後より食欲不振、倦怠感が強く、
歩行困難となった。2日後、症状が改善しないため外来を受診し、脱水状態で入院となった。入院後、
持参薬を確認したところ
「ワーファリン錠1mg3錠 1日1回夕食後」の薬袋に、
ラシックス錠40mgが
入っていることに気付いた。保険薬局へ確認すると、薬剤師は調剤の際に同じ棚の赤いPTP包装を
見てワーファリン錠だと思い込み、
鑑査でも間違いに気付かないまま患者に渡していたことが分かった。
事例が発生した医療機関の取り組み
・薬剤を手に取った際、アンプルや包装に記載された薬剤名を確認する。
・アンプルや包装の色が類似した薬剤が存在することを認識しましょう。
・アンプルや包装の色で判断せず、薬剤を手に取った際に薬剤名を確認する
手順を決め、遵守しましょう。
※この医療安全情報は、
医療事故情報収集等事業(厚生労働省補助事業)
において収集された事例をもとに、
本事業の一環として総合評価
部会の専門家の意見に基づき、
医療事故の発生予防、
再発防止のために作成されたものです。本事業の趣旨等の詳細については、
本事業
ホームページに掲載されている報告書および年報をご覧ください。
http://www.med-safe.jp/
※この情報の作成にあたり、
作成時における正確性については万全を期しておりますが、
その内容を将来にわたり保証するものではありません。
※この情報は、
医療従事者の裁量を制限したり、
医療従事者に義務や責任を課したりするものではありません。
▼カラー版はこちらから▼
公益財団法人 日本医療機能評価機構
医療事故防止事業部
〒101-0061 東京都千代田区三崎町1-4-17 東洋ビル
電話:03-5217-0252 FAX:03-5217-0253
http://www.med-safe.jp/
- 197 -
参考
総合評価部会の意見
公益財団法人日本医療機能評価機構(以下「本財団」という)は、本報告書に掲載する内容について、善良なる市民および医療の質に関わ
る仕事に携わる者として、誠意と良識を持って、可能なかぎり正確な情報に基づき情報提供を行います。また、本報告書に掲載する内容につ
いては、作成時点の情報に基づいており、その内容を将来にわたり保証するものではありません。
したがって、これらの情報は、情報を利用される方々が、個々の責任に基づき、自由な意思・判断・選択により利用されるべきものであり
ます。
そのため、本財団は、利用者が本報告書の内容を用いて行う一切の行為について何ら責任を負うものではないと同時に、医療従事者の裁量
を制限したり、医療従事者に義務や責任を課したりするものでもありません。