職員一人ひとりが広報担当!「むろけんRUN」

特集 土木の魅力が伝わる広報へ 職員一人ひとりが広報担当!「むろけんRUN」
国土交通省 北海道開発局 室蘭開発建設部 広報官*
国土交通省北海道開発局室蘭開発建設部では、平成26年10月から地域の方々に当部の事業や取組みを発
信し、当部がどんな組織であり、どんな人がどんな仕事をしているのか、そして地域とどんな関わりを持っ
ているかを知っていただくとともに、
職員のモチベーション向上を図ることを目的とする広報の取組み「む
ろけんRUN」を推進している。本稿では「むろけんRUN」の具体的な取組み等について紹介する。
1.はじめに
本取組みを進めるにあたっては、職員一人ひとり
人口減少や高齢化、さらには自然災害の多発など、
が広報担当という自覚を持ち、各部門が連携した広
地域が抱える課題がさまざまに増えていくなか、室
報広聴活動を行うことによって、職員が一丸となっ
蘭開発建設部(以下、
「当部」という)がその役割
て国民・地域住民との信頼関係の構築に取り組むこ
を果たしていくためには、地域との連携が不可欠で
ととした。
ある。そのためには当部がどんな組織で、どんな人
⑴ むろけんの3つの姿
が、
どんな仕事を担っているのか、そして地域とどん
当部の姿を分かりやすい内容で発信するため、
な関わりを持っているかなどを積極的に発信してい
①「生活に不可欠な社会資本を整備するプロ組織」
く必要があると考えている。
②「災害時にいち早く駆けつけて働く組織」③「国
い ぶり
当部が管轄する胆振・日高管内の行政機関に目を
の出先機関として、国、自治体、民間団体等との幅
向けると、当部が存する室蘭市だけでも、国土交通
広いネットワークを持つ組織」に分類し、地域の元
省の地方機関が4つ(運輸支局、海上保安部及び気
気や地域の安全のために働く3つの姿を持つ組織で
象台)ある外、北海道庁の出先機関である室蘭建設
あることを広報することとした。
管理部という名称の組織もある。このようにさまざ
⑵ ロゴマーク
まな行政機関があるなか、地域の方々に、当部がど
本取組みを効果的に進めるため、取組みの顔とな
のような組織で、どのような仕事をしているのか、
る「ロゴマーク」(図−1)を作成することとし、
正しく知られているだろうか。
視覚的にイメージしやすいシンボリックなものを当
このような認識のもと、当部では地域の方々に当
部職員に公募した。
部を知ってもらうための広報の取組みを「むろけん
ロゴマークとして選定された作品は、一番上はヘ
RUN」
(以下、
「本取組み」という)と称して進め
ルメット、中段は駆け足、一番下は胆振・日高管内
ている。
を表す図形を組み合わせたもので、社会資本の整備
2.「むろけんRUN」とは
本取組みの名称は、過年度から発行している外部
や災害発生時など、職員が胆振・日高管内を駆け巡
る姿をイメージしたものである。
ロゴマークは、ホームページや広報誌、報道提供
向け広報誌が由来となっており、地域のために管内
資料の表紙、職員の名刺(任意)(図−2)のほか、
を駆け巡る職員の働きぶりをイメージしている。
管内事業概要などで活用している。さらには、地域
*0143-22-9171
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⑵ ホームページを活用した発信
①トップページのフラッシュ動画
当部ホームページ(トップページ)に、複数枚
の写真をスライド表示するフラッシュ動画を掲載
することとした。これは、当部の事業や職員が活
図-1 ロゴマーク
図-2 ロゴマークの活用(名刺)
動している姿を一目で理解していただくことを
狙った取組みである(図−4)。
の方々とのさまざまな関わりにおいて、このロゴ
マークを活用していくことにより、本取組みを外に
向かって積極的に発信していくことや「生活に不可
欠な社会資本を整備する」や「災害時にいち早く駆
けつけて働く」といった当部の役割を職員一人ひと
りが再認識することを期待している。
3.「むろけんRUN」の具体的な取組み例
本取組みの柱となる具体例を以下に紹介する。
⑴ 広報誌による発信
広報誌「むろけんRUN」は、当部の事業を紹介
する広報誌として、平成21年度から発行しており、
前述のとおり本取組みの名称の由来となっている。
図- 4 ホームページ(トップページ)
当初は事業内容や効果等、事業に焦点を当てた紙面
掲載する写真は、職員が担当する現場でどのよ
構成としていたが、編集方針を見直して事業等の紹
うな活動を行っているのか、自然体の仕事ぶりが
介や地域との関わりに加え、職員が大きく映ってい
一目で感じられるようなものを選定し、どのよう
る写真や職員のコメント等を掲載して「人」に焦点
に見せるか、そのためにはどのように加工するか
を当てた構成とした。「人」に焦点を当てることで、
を考え、トリミングして無駄な部分をなくし、見
当部が実施している事業に対する職員の熱意(汗と
せたい部分が強調されるように加工している
涙)を伝えるとともに、掲載されている内容に親し
(図−5)。
みとメッセージ性を持たせることができるものと考
えている(図−3)
。
図- 5 写真の加工
②コンテンツ「むろけんの現場から」
「むろけんの現場から」は、当部の活動状況を
1)「工事・維持管理」、2)「災害・防災」、3)「見
学会、パネル展など」の3つのジャンルに区分し、
写真を載せて紹介しているページである。ここに
図-3 広報誌「むろけん RUN」vol.22
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掲載する写真も可能な限り職員が活動する姿が
写っているものを選び、トリミング等の加工をし
災害対応で活躍した方や、女性、若者といった「人」
て、事業だけではなくその現場の中に、「人」つ
に焦点を当て、仕事上での抱負や活躍などをイン
まり職員の存在を感じてもらえるようなページ作
タビュー形式で紹介し、建設産業の現場を応援す
りを行うよう心掛けている(図−6)
。
るページである。これは建設産業の役割や価値に
ついて理解促進を図り、魅力の向上と活性化へと
繋げていくことを狙ったものである(図−8)。
図- 6 ホームページ「むろけんの現場から」
さらに、
「活動アルバム」というページを設け、
トップページのフラッシュ動画で使用した写真を
まとめて掲載した。これはフラッシュ動画に使用
した写真のアルバム化である。フラッシュ動画は、
現在進行形でその時々の事業と職員の活動状況を
テンポ良くタイムリーに紹介する役割を担い、
「活
動アルバム」は、各年度における職員の活動状況
図- 8 ホームページ「けんせつの現場から」
をアーカイブ化し、記録写真として紹介する役割
を担うものである。写真の下にはコメント(概要、
このような試みを企画した背景は2つある。1
日付、課所名)を記載して職員の活動状況を分か
つ目は、建設産業は社会資本の整備・維持を担い、
りやすく紹介し、また、写真をクリックすると大
災害時には初動対応から応急・復旧作業に至るまで、
きな写真が開くよう工夫した(図−7)
。
現場の最前線で重要な役割を果たしてきた、いう
なれば、地域社会の安全・安心を支える「国土の
守り手」であるということ。2つ目は、当部が社
会資本の整備や災害対応などを通じて、国土を守
り地域の発展に寄与していくという社会的使命を
達成するためには、カウンターパートたる建設産
業の力が必要であり、連携を図りながら各種施策
に取り組んでいく必要があるということである。
インタビューにあたっては、現場での活躍だけ
ではなく、仕事に対する熱意、やりがい、苦労し
ていることなど、生の声を聞き取ることに心掛け
ている。紹介者の人柄、例えば、災害の現場で頑
張る人たちの意気込み、男性が多い社会の中で
図- 7 ホームページ「活動アルバム」
③コンテンツ「けんせつの現場から」
さっそうと輝きながら活躍する女性の姿、仕事に
対する若者らしい情熱などを紹介し、建設産業の
魅力が感じられるようなページ作りを行っている。
「けんせつの現場から」は、建設産業において、
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⑶ 出前講座等のツールを活用した発信
出前講座、現場見学会、講習会、各種パネル展など
地域の方々が私たちを理解し、その仕事ぶりや成
果を評価してくれれば、とても喜ばしいことであり、
は、当部が行っている事業について、直接的に地域
この喜びが充実感や意欲の向上として、各職員の仕
の方々に説明でき、また、さまざまなご意見など生
事ぶりにも反映され、プラスのスパイラルとなって
の声を聞かせていただくことができる機会でもある。
組織全体へと広がり、組織運営の活性化にも繋がる
参加者にはアンケートを行い、その結果はグラフ
等で見える化を図り、イントラ掲示版で職員に周知
ものと考える。
⑵ 今後に向けた課題等
しているところであるが、参加者の生の声(特に当
ホームページ「けんせつの現場から」の災害対応
部職員の働きぶり対する評価)は職員のモチベー
のコーナーについては、もう少し幅広な考え方で紹
ション向上に寄与するものと考えている。
介しなければ、継続的な更新は難しい。女性の活躍
のコーナーについても、胆振・日高管内の建設業界
の現場で働く女性職員はまだまだ少ない現状にある
ため、アンテナを高くし、広い考え方で紹介者を探
していきたい。
出前講座等で実施しているアンケート調査につい
ては、幅広に地域の方々の声を聞くために、各事業
たる まえ さん
写真-1 樽前山の火山噴火対策に関する出前講座を現地で開催
4.まとめ
⑴ 取組みの効果
部門の協力を得て、各種イベントや現場見学会等、
実施する機会を増やしていく必要があると考える。
また、集計したアンケート結果については、部内報
においてイベント等の開催の様子と合わせて紹介し
これまで述べたことを総括すると次のとおりとな
ていくなど、イントラ掲示板への掲載のほかにも、
る。
「むろけんRUN」とは、①当部の姿を知っても
職員へフィードバックする方法を検討する必要があ
らうための取組みであること、②取組みを進めるに
ると考える。
あたっては、職員が活躍する姿を中心に据えた戦略
さらに、上記の課題とは別に、本取組みをより効
的な広報活動を進めていること、③これらの活動を
果的に進めていくため、災害発生時においては災害
通じて、
国民や関係機関、そして何よりも地域の方々
状況や職員の活動状況を記録した写真を使って、災
との信頼関係を深め、当部の役割や施策に対する理
害時の活動状況等を効果的に発信していく必要があ
解の促進を図り、社会的使命の達成を図るための取
ると考える。
組みであるということである。
そして、本取組みのポイントは、その主体がいず
れにおいても「人」つまり「職員」ということであ
広報に関する書籍に「広報はマラソンのようなも
る。「むろけんRUN」という旗印のもと、
「地域の
の」1)と書かれていたとおり、1〜2年取り組んだ
ためにこんな仕事をしています」や「地域に役立つ
からといって、目に見えるような成果が出るわけで
取組みを進めています」など、職員一人ひとりが、
はなく、継続していくことが大切であると考える。
私たちの仕事・働きを知ってもらいたいという気持
今後も、職員一人ひとりが広報担当という意識を持
ちを持って日々の業務に取り組んでいくことが、組
ち、日々の業務の中で「むろけんRUN」に取り組ん
織全体の広報広聴意識の向上に繋がる。さらに前述
でいきたいと考えている。
のツールで、戦略的に広報していくことによって、
<参考文献>
1)荷堂淳:広報を面白くするための十三章
今よりも地域の方々に理解、信頼され、必要とされ
る組織となっていけるものと考える。
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5.おわりに
月刊建設16−09
※本稿は、第 59 回(平成 27 年度)北海道開発技術研究発
表会発表論文を加筆修正したものである。