相場展望レポート (2017 年 1 月) 2016.12.27 水上 紀行 氏(元インターバンク・ディーラー) 2017 年の予想レンジ ドル/円 100.00〜125.00 ユーロ/ドル 0.9500〜1.1500 ユーロ/円 95.00〜130.00 豪ドル/円 72.50〜90.00 2017 年 1 月の予想レンジ ドル/円 115.00〜125.00 ユーロ/ドル 0.9900〜1.0600 ユーロ/円 110.00〜130.00 豪ドル/円 75.00〜90.00 ドル/円 ドル/円 日足 1 相場展望レポート (2017 年 1 月) 2016.12.27 ⽶⼤統領選挙の形勢が判明した 11 月 9 日からドル/円の上昇は止まらず、12 月に入り、15 日には 118.66 円の高値をつけています。 この間に、当初ドル高に懐疑的だったマーケット参加者も、現在では、かなりブル(ドルに強気)になって きているように思われます。 〜誰がこれだけ相場を円安にしたのか〜 実は、私は、⽶⼤統領選の後の予想外のドル高は、⽶系ファンドの仕業だと思っていました。 しかし、その後の相場展開を⾒てみると、どうも彼ららしい動きではないことを感じていました。 そして、ドル/円が一本調子に上げ、ユーロ/ドルが下げて来たこの時期に来ても、千載一遇のチャンスを逃 すまいとする⽶系ファンドであれば、かなり積極的に攻めてくるはずなのに、マーケットでは⼤統領選後、 ロスカットが⼤幅に出ていることから、少なくとも⽶系ファンドは勝ち組としては⽴ち回ってはいないと思 われます。 ユーロ/ドルもトレンドとして下げて来ていることを考えれば、やはり誰かがドル買いのフロー(資⾦の流れ) を作っているということになると思います。 また、投機筋の可能性もありますが、12 月の本決算の時期を迎えて、彼らは、新規にポジションを作るのは、 新年度となる、早くても 12 月末、より現実的には、1 月になってからだと思っています。 そこで、私は、消去法で考えると中国ではないかと、⾒ています。 なぜなら、現在、中国は、各⽅⾯でオーバープレゼンス(目⽴ち過ぎ)になるほどの進出をしてきており、 これは、通貨の世界もまた例外ではないと思っているからです。 これが、彼らの世界戦略だと思います。 今年の 2 ⼤イベントであった 6 月のブレグジット(EU 離脱の是非を問う英国⺠投票)と 11 月の⽶⼤統領選 挙にしても、国⺠投票で離脱決定後のこれまでとは桁違いのリスク回避の円買いがでている上に、⽶⼤統領 選では、トランプ氏当選ならドル売りと言われながらも、実際発表されると桁違いのドル買いが入り急騰し、 これまでには考えられなかったような⾦額での売り買いがなされたものと思われます。 2 相場展望レポート (2017 年 1 月) 2016.12.27 これが、今出来るのは中国ぐらいしか⾒当たりません。 一⽅、欧⽶の中でも、特にヨーロッパは、リーマンショックでかなりのダメージを受けています。 銀⾏批判も厳しくなり、コンプライアンス(法令順守)や規制により、欧州を中⼼に銀⾏はがんじがらめに なっています。 従って、ヨーロッパは、それ程簡単には、⽴ち直れないと思います。 欧⽶の⾦融システム(仕組み)の維持を担っていたヨーロッパが後退し、全く価値観の異なる中国が入って くると、システム自体は多少の時間はかかるにしても、いずれ中国のシステムが⼤きく前⾯に出てくるもの と思われます。 そういう意味では、十分な警戒が必要です。 なお、中国はブレグジットでリスク回避の円買いを⼤量にし、そのリスク回避で買った⼤量の円は、⼤統領 選で、円を売って、リスク回避解除の円売りをして、これまた⼤量に⾏ったものと⾒ています この間隙を縫って、中国が台頭していると思います。 つまり、主役の交代が起きてきているように思います。 問題は、欧⽶勢が作った⾦融システム(仕組み)と、中国のやり⽅は違うことが多く、いろいろギクシャク するのではないかと思われます。 そこのところを、理解しているかが、⼤変⼤事だと思います。 今回は、相場の根本が、主役の交代によって変わる可能性が高いので、それを認識しながら相場を⾒ていく 必要がある点に触れ、来年は、そういう原因なりきっかけによる相場増えることになると思います。 実際、今の段階でも、11 月からの 10 円もの上昇がなんだったのか、その真相はわかりませんが、 事実として、ドル買い圧⼒は強いことは、否定できません。 3 相場展望レポート (2017 年 1 月) 2016.12.27 そうした買いの強さの中に、資⾦を継続的に一⽅向に流す、いわゆる投資家、そして輸入サイドの実需など に加えて、中国の存在も既に無視できないものと⾒ています。 ドル/円の当⾯の目標は、124 円〜125 円を⾒ています。 ユーロ/ドル ユーロ/ドル 月足 とうとう、12 月 15 日のニューヨーククローズで、日足の実体(ロウソク足の寄り付きと引け値の間の 太い部分)で、1.0500 ドルを割り込んできています。 したがって、まずは 1.0000 ドル(パリティ、等価)に向けて、進むものと思われます。 しかし、1.0000 ドルが、ゴールではないと思っています。 2015 年 3 月から今月まで続いたサポートを下にブレイクするまでの間のレンジは、 ざっくり言って、 1.0500 〜1.1500 ドルの 1000 ポイントレンジでした。 4 相場展望レポート (2017 年 1 月) 2016.12.27 したがって、そのレンジの下限である 1.0500 ドルを割り込むということは、1.0500-(1.1500-1.0500) =0.9500 ドル近辺がターゲットになるものと思われます。 ただし、最近、ダブル・ノータッチ・オプション(※)が盛んになり、レンジの下限、上限の節目には、防 戦買い、防戦売りが入ってギクシャクすることが、ドル/円と共に多く、ここは、ある程度じっくりと攻める しかありません。 ※ダブル・ノータッチ・オプション ある一定期間内に二つのバリア(レンジの上限・下限の価格、たとえば 1.0000 ドルと 1.0500 ドル)に到 達するか否かを賭けるオプション取引のことです。 オプションの購入者は、一定期間内に約定時点で設定した上下のバリアに一度もタッチしなかった場合に、 ⽀払ったプレミアム(オプション料)の何倍ものキャッシュフローをリベート(ペイアウト)として受け取 ることができます。 たとえば、防戦売りと買い戻しの流れを⾒てみましょう。 たとえば、118.00 円にダブル・ノータッチ・オプションのレンジの上限があるとすると、それをつけない ようにするため、118.00 円⼿前、例えば 117.90 円近辺で防戦売りが出ます。 しかし、買い上げきれなくなれば、買った⽅が不利になり、たとえば、116.50 円割れでロスカットし、た とえば 116.00 円近辺まで下げますが、それ以下には下がらない。 なぜなら、117.90 円近辺で防戦売りをしていたところが、116 円台前半で利⾷っているからです。 これを、繰り返しやると、防戦している⽅は、リベート以外にも、為替益がどんどん膨らむことになり、こ れはもうやめられなくなる麻薬のようなものです。 この、ダブル・ノータッチ・オプションを、ビッグプレーヤーが尋常でない額でやっているため、相場がギ クシャクしているのだと思います。 そして、これを繰り返すと、相場が動かなくなってしまうことがよくあります。 5 相場展望レポート (2017 年 1 月) 2016.12.27 ユーロ/円 ユーロ/円 月足 ⽶⼤統領選以降の、ドル/円の急騰を受け、⼤きく反発しました。 そして、現在の相場が、ドルの相場になっているため、その後、ユーロ/円は横ばいになっています。 ただし、ユーロの先安観は強いと⾒ており、結局は、再び下げてくるものと⾒ています。 しばし、様子⾒で良いように思います。 6 相場展望レポート (2017 年 1 月) 2016.12.27 豪ドル/円 豪ドル/円 月足 月足で⾒ますと、今年はラウンディング・ボトム(鍋底)を形成し、鍋の⼝にあたる⽔準(ネックライン) 近辺に、現在います。 今回のラウンディング・ボトムのボトムは 76 円あたり、ネックラインは 86 円ですので、上にブレイクする と、86 円+(86 円-76 円)=96 円がターゲットになります。 しかし、より⻑期的に⾒てみますと、90 円近辺が強いレジスタンスになっている一⽅で、70 円近辺も強い サポートになっており、どちらにもなかなか⾏きづらそうで、この間で往ったり来たりというのが、現実的 なように思えます。 7 相場展望レポート (2017 年 1 月) 2016.12.27 ■ 水上 紀行 氏 氏プロフィール 1978 年三和銀行(現、三菱東京 UFJ 銀行)入行。 1983 年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。 1995 年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジスト として広く活躍中。バーニャ マーケット フォーカスト代表。 長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。 公式ホームページ:「Banya Market Forecast」 ■ ご留意いただきたい事項 マネックス証券(以下当社)は、本レポートの内容につきその正確性や完全性について意見を表明し、また保証す るものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の 取引を推奨し、勧誘するものではございません。当社が有価証券の価格の上昇又は下落について断定的判断を 提供することはありません。 本レポートに掲載される内容は、コメント執筆時における筆者の見解・予測であり、当社の意見や予測をあらわす ものではありません。また、提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されること がございます。 当画面でご案内している内容は、当社でお取扱している商品・サービス等に関連する場合がありますが、投資判 断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。 当社は本レポートの内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資に かかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。 本レポートの内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに転用・複製・ 配布することはできません。 当社でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品 等には価格の変動・金利の変動・為替の変動等により、投資元本を割り込み、損失が生じるおそれがあります。ま た、発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本を割り込み、損失が 生じるおそれがあります。信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引をご利用いただく場合は、所定 の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元 本)を上回る損失が生じるおそれがあります。 なお、各商品毎の手数料等およびリスクなどの重要事項については、「リスク・手数料などの重要事項に関する説 明」をよくお読みいただき、銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身のご判断で行ってください。 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 165 号 加入協会:日本証券業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会 8
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