相場展望レポート (2017 年 1 月) 2016.12.27 志摩 力男 氏 2017 年相場展望 ドル円 105 - 130 円(通常シナリオ、強気シナリオ) 95 - ユーロドル 120 円(弱気シナリオ、トランプ新⼤統領がドル安政策を採ってきた場合) 0.9500 - 1.1000(通常シナリオ) 1.0000 - 1.2500(弱気シナリオ、理由同上) ユーロ円 115 - 135 円(通常シナリオ) 110 - 125 円(弱気シナリオ、理由同上) 豪ドル円 75 - 95 円(通常シナリオ) 65 - 85 円(弱気シナリオ) 2017 年 1 月相場展望 ドル円 112.00 - 120.00 ユーロドル 1.0200 - 1.0700 ユーロ円 117.00 - 124.00 豪ドル円 82.00 - 87.00 トランプラリーが継続した 2016 年 12 月 2016 年 12 月の為替マーケットも、トランプラリーが継続した 1 ヶ月でした。⽶⻑期⾦利が上昇を続け、そ れに沿ってドル円が上昇を続けました。特に、12 月 14 日 FOMC では、各メンバーが予想する、いわゆる「ド ット」チャートにおいて、これまでの 2017 年は年 2 回利上げ予想がメインだったのが、年 3 回にシフトし ました。 これは驚きで、トランプ⽒がまだ⼤統領に就任したわけでもなく、経済政策も本当のところどうなるのかわ からない中で、FOMC 各メンバーは次期⼤統領の経済政策を慮り、利上げペースを上げてきたのです。つい この前まで、サマーズ⽒の唱える「⻑期停滞論」が席巻し、イエレン議⻑⾃らも「⾼圧経済(High Pressure Economy、インフレ的状況を意図的に加速させることで経済を正常化させる政策)」を唱えていたのに、先 日の会⾒では「⽶国の雇⽤情勢はこの 10 年で最も良い状況だ」と同じ⼈とは思えないぐらいタカ派的な論 調になっていました。FOMC 後、ドル円は 115 円前後から、すぐに 117 円前後へと急騰し、その後 118 円 台後半まで値を伸ばしたのでした。 1 相場展望レポート (2017 年 1 月) 2016.12.27 トランプラリーにリスクはないのか? しかしながら、今ではトランプラリーに乗れなかった⼈まで強気になっています。トランプ政権のリスクを いろいろ喧伝していた⼈も、超楽観シナリオに賭け始めるなど、色々危険なシグナルが出てきている様に感 じます。私⾃信も超楽観シナリオに賭けており、⽶⻑期⾦利の上昇に合わせてドル円も上昇、特に日本が「⻑ 短⾦利操作付き量的質的緩和」を続ける限り、⽶⾦利上昇に円が暴落して⾏くというのがメインシナリオで すが、以下のリスクが有ると思います。 (1)ドル円の購買⼒平価を考えた時のフェアバリューは 90〜95 円。日⽶のインフレ率に差があるので、毎 年ドル円の購買⼒平価は下がっていきます。 (2)トランプ⽒の経済政策実現には時間がかかること。実現は早くても、2017 年後半、もしくは 2018 年。 しかも、経済対策の中⾝が期待外れのものとなると、先取りして⾼くなった⽶⻑期⾦利の影響がもろに 経済に及ぶ事となります。具体的には、住宅購⼊や⾞の購⼊等が、ローン⾦利上昇の影響を受けて、減 速する可能性がある。 (3)保護主義的政策が打ち出される可能性がある。仮に中国が「為替操作国」と認定された場合、そのイン パクトは軽くドル円 5 円下落ぐらいはありそう。おそらく、トランプ政権は、⾒せかけのファイティン グポーズとは違い、直接的に経済にダメージを及ぼす政策は採らないものと考えられますが、トランプ ⽒のコアの支持層がそれを許さない可能性があります。 (4)トランプ経済政策が軌道に乗る前に、新興国経済が持たない可能性がある。特に、今回は中国が危険。 資本流出が⽌まらない。2014 年の 3.7 兆ドルをピークに外貨準備⾼は 3 兆ドルを割り込もうとしてい るが、2 兆ドルを割り込んだりすると投機筋の攻撃にあって⼈⺠元暴落の可能性がある。政府は様々な 規制を掛けて資本流出を⽌めようとしているが、その余波はビットコインに現れており、ビットコイン はあっという間に暴騰した。何が何でも逃げようとするお⾦を⽌めるのは⾄難の業。ゴールドマン・サ ックスは今年⼈⺠元が下落すると予想しており、現状の 6.9 から 7.3 辺りへの軟化も考えられるとして いる。 中国経済は大丈夫か? 特に中国経済が持つのかどうか、⼼配になってくる。僅か⼗数年で、とてつもない富が中国内で⽣まれたが、 ⼈⺠元は中国国内でしか使えない。ある意味、本当の通貨ではないので、それを⽶ドルのような世界中で⾃ 由に使える、本当の通貨に変えたいという意向は相当強いだろう。⽌めることはできない。中国の持つ外貨 準備⾼は世界最⾼⽔準とはいえ、中国国内から逃げようとするお⾦の規模を考えると、その程度ではとても 防ぎきれない。今年は、中国当局と、中国から逃げようとする資⾦、その戦いが更に激しくなるだろう。 資⾦流出に中国当局が神経質になっているため、外に持ち出そうとしても許可が出ないケースが出てきてい る様だ。オーストラリアやニュージーランドでは、中国⼈富裕層による⼤規模不動産購⼊が不動産業を潤わ せてきたが、中国⼈投資家が購⼊したいと思っても当局が許可しないために売買が成⽴しないということが 2 相場展望レポート (2017 年 1 月) 2016.12.27 頻発している。中国国内の不動産が頭打ちになり、内陸部の開発もかなり進み、国内には投資先がなくなっ てきている。その上、⽶⾦利上昇の影響を受け、中国の国債市場も暴落した。著名な富豪がその結果破産し たというニュースも聞こえている。 また、トランプ政権の政策も中国に対して厳しい。更に中国に投資をするというよりは、どうしても投資を 引き上げたいと考える企業経営者も多いだろう。 1 月もトランプラリー継続と言いたいところだが、バラ色のシナリオを 100%以上織り込んでおり、何か予 想外のことが起こると、現在のラリーは非常に脆弱になる。そのことは必ず、頭に⼊れておきたい。 ドル円 1 月 20 日の⼤統領就任式、その場でトランプ⽒がどの様なことを話すのか、それが目先の⼀⼤イベント。も しかしたら保護主義的政策を打ち出してくるのではないかという懸念が、徐々にドル円の頭を抑える、そう した可能性を感じます。120 円は近いようで、意外に遠いか? 112.00-120.00 ユーロドル 先月、2015 年 3 月の最安値を更新したのですが、市場は⾛らず。わかっていても、つい引っかかってしま います。今後も、基本はダウントレンドながら、何度も簡単に戻って仕切り直しになる、そのような展開を 予想。イタリアの銀⾏問題は深刻ですが、それだけでユーロの売買材料にするのは材料不⾜ 1.0200-1.0700 ユーロ円 下向きの⼤きな三角持ち合いを上抜けし、あっという間に 124 円台まで上昇したが、今月は少し調整気味と なるか。 117.00-124.00 豪ドル円 豪ドルの予想は難しくなってきています。⽶⾦利の上昇は豪ドルにはマイナス材料。ドル円も少し調整する ことを前提に、豪ドル円の調整を予想したい。 82.00-87.00 3 相場展望レポート (2017 年 1 月) 2016.12.27 ■ 志摩 力男 氏 氏プロフィール 慶應義塾大学経済学部卒 1988 年~1995 年 ゴールドマン・サックス証券会社 2006 年~2008 年 ドイツ証券等 大手金融機関にてプロップトレーダー(自己勘定トレーダー)を歴任、 その後香港にてマクロヘッジファンドマネージャー。 世界各地のヘッジファンドや有力トレーダーと交流があり、現在も現役トレーダーとして活躍。 ■ ご留意いただきたい事項 マネックス証券(以下当社)は、本レポートの内容につきその正確性や完全性について意見を表明し、また保証す るものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の 取引を推奨し、勧誘するものではございません。当社が有価証券の価格の上昇又は下落について断定的判断を 提供することはありません。 本レポートに掲載される内容は、コメント執筆時における筆者の見解・予測であり、当社の意見や予測をあらわす ものではありません。また、提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されること がございます。 当画面でご案内している内容は、当社でお取扱している商品・サービス等に関連する場合がありますが、投資判 断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。 当社は本レポートの内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資に かかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。 本レポートの内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに転用・複製・ 配布することはできません。 当社でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品 等には価格の変動・金利の変動・為替の変動等により、投資元本を割り込み、損失が生じるおそれがあります。ま た、発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本を割り込み、損失が 生じるおそれがあります。信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引をご利用いただく場合は、所定 の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元 本)を上回る損失が生じるおそれがあります。 なお、各商品毎の手数料等およびリスクなどの重要事項については、「リスク・手数料などの重要事項に関する説 明」をよくお読みいただき、銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身のご判断で行ってください。 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 165 号 加入協会:日本証券業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会 4
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