やはり俺の仮想世界は間違っている。 ID:107068

やはり俺の仮想世界は間違っている。
なしゅう
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じます。
︻あらすじ︼
総武高校二年の比企谷八幡は、ある日妹の小町が町内のくじで当て
たナーヴギアでソードアートオンラインの世界に入った。
しかし、その世界は突如デスゲームと化した。
比企谷八幡はこの世界から脱出するため、100層を目指す。
始まり │││││││││││││││││││││││││
目 次 攻略会議 ││││││││││││││││││││││││
1
大会 ││││││││││││││││││││││││││
潜入 ││││││││││││││││││││││││││
The Gleam eyes ││││││││││││││
ラグーラビット │││││││││││││││││││││
スノードラゴン │││││││││││││││││││││
リズベット武具店 ││││││││││││││││││││
タイタンズハンド ││││││││││││││││││││
迷いの森 ││││││││││││││││││││││││
年越し │││││││││││││││││││││││││
25層 ││││││││││││││││││││││││
宗三左文字 │││││││││││││││││││││││
緊急収集 ││││││││││││││││││││││││
誕生日 │││││││││││││││││││││││││
紫色の影 ││││││││││││││││││││││││
作戦変更 ││││││││││││││││││││││││
22層 ││││││││││││││││││││││││
イルファング・ザ・コボルト・ロード │││││││││││
ボス攻略に向けて ││││││││││││││││││││
7
12
15
25
32
35
42
47
51
55
64
70
75
81
87
114 108 101 95
始まり
俺の名前は比企谷 八幡。 ナーヴギア
ソードアート・オンライン
そして、机の上に置いてある機械は
今日始まる新作ゲーム
てくれたのだ。流石小町
可愛い
を遊ぶための
そして前々から欲しい欲しいと呟いてた俺に小町がプレゼントし
ギアを持ち帰ってきた。 なんと、俺の妹の小町が町内のくじ引きで特賞を当ててこのナーヴ
ーーーーーーと思ってたのも昨日まで。 山だ まあ、人気すぎて手に入らない、並んでも結局売り切れるのが関の
ゲ ー ム で 遊 ん で き た 俺 は も ち ろ ん こ れ に 興 味 が あ り ま く り だ っ た。
これはフルダイブ型のMMORPGで、小さい頃からそう言った
機械だ。 "
"
"
⋮⋮ ま あ、あ と で 遊 ば せ て と あ ざ と く お 願 い さ れ た が な。お
!
する。 ﹁リンクスタート
﹂ はじまりの街
﹂
?
ーーーーーーーーーーーー ﹁っ⋮⋮ここが、
か
そして、SAOの世界へ俺を連れて行ってくれる魔法の言葉を口に
俺はナーヴギアを頭に被り、ベットに横になる。 小町には昼はいらないと言ってあるしのんびり遊ぼうじゃないか。
時計を見ると、サービス開始まで残り1分だ。 い、これプレゼントしたんじゃないのかよ。 !
足元に生い茂る草、歩くとしっかりとした感触が伝わる。頬を伝う
そよ風も見事に再現されている。
1
"
!
目の前にはとてもゲームとは思えない景色が広がっていた。
"
!
"
﹁こりゃ皆やりたくなるわな﹂
一応受験生だからハマりすぎには注意しないとな。
とHPバーが示されていた。
視界の左上を見るとキャラメイキング時に付けた名前
t men
らいに分けた。
﹁筋力値めっちゃ低いが⋮⋮ダメージ出るよな
﹂
Eigh
具体的に言うと、キャラメイキング時に貰ったポイントを2:8く
ば逃げられる。エイトマンとは関係ないぞ。
敏捷に極振りだ、スピードこそ命。囲まれた際もスピードさえあれ
い。
んだろうが。ソロプレイをするつもりの俺はそんな振り方はできな
SAOには筋力値と敏捷値しかない、大抵の人は半々くらいで振る
ステータスは敏捷に振りまくりだ。
らな。
俺の姿は黒髪の好青年にした。ゲームの中まで腐った目は嫌だか
ないからな、俺の名前を弄っただけだ。
このEight menは決して弾丸より早く走るヒーローじゃ
"
﹂
イノシシの後ろに回り込み、ダガーで首元を裂く。
自分でも驚くほどのスピードが出た、これが敏捷極振りの力か
﹁はっ⋮⋮はっや
よくわからないまま、俺はイノシシに向かって走り出す。
﹁そういえば、ソードスキルだっけな⋮⋮どう使うんだあれ﹂
俺は初期装備のダガーを胸前に構えて、攻撃の姿勢を取る。
いつを切ろう。
丁度目の前にイノシシ型のモンスターがポップしてきた。よし、こ
?
﹁ソードスキル、何とかしないとな﹂
しかし、問題は一つ解決するとまた一つ出来てしまうものである。
さて、攻撃力の問題は大丈夫だとしよう。
﹁⋮⋮クリティカルを出せれば攻撃力はカバー出来そうだな﹂
た。
イノシシはブオオオとか言いながらポリゴンの欠片となって散っ
!
!
2
"
幸い、ここはモンスターがよくポップするところみたいだ、すぐ近
くにまたイノシシがいる。
ここならソードスキルの練習もできそうだ。
近くにポップしたイノシシに向かって俺は短剣を振りかぶった。
﹁これなら、どうだっ﹂
あれから数時間、ソードスキルを発動させようと頑張っているが、
﹂
一向に上手くなる気配が見えない。
﹁はぁ、なんでダメなんだ
ダガーを手の中でクルクル回す。戦い終わる度にそうしてたら癖
になってしまったようだ。
遊ぶ相手がいなかったからペン回しとかよくしてただけなんだけ
どな。
﹁おーい、お前さん﹂
おーい、誰か呼んでますよー。
﹂
声のした方を向くとパンダナを巻いた男と黒髪の男が俺を見てい
た。
﹁俺か
で狩ってるのか
﹂
﹁そんなところだ、そっちはパーティーか
﹁おうよ
﹂
﹁教えて貰ってるってことか﹂
いんだ﹂
﹂
﹁いや、こいつキリトってんだけどよ、元βテスターだからすげぇ上手
がら聞く。俺もこんなキャラメイキングにしたな。
パンダナの男の後ろに立っている黒髪の好青年の方を顎で指しな
?
?
キリトさん
﹂
︵但し、ゲーム内のみ︶
﹁あー、なんだ、俺にも教えてくんねぇか
?
!
﹁キリトでいいよ。俺で教えられることならいいぞ﹂
?
俺のコミュ力を発揮するしかないな
上手く使えるようになるのかもしれないな。
ふむ、なるほど。βテスターに教えてもらえば俺もソードスキルが
!
3
?
﹁お前さん以外に誰がいるってんだよ。俺はクラインだ。ここで1人
?
ふははは、見たか俺のコミュ力を
頼み事をして無視されなかっ
た挙句、オーケーまで貰ったぞ。︵但し、目が腐ってなかった場合︶
﹁えーと、エイ⋮⋮エイトマンか。よろしくな﹂
﹁ああ、こちらこそよろしく、キリト﹂
βテスターがキリト、パンダナはクライン。ちぃ覚えた。
それから俺はキリトに教えてもらい、なんとかソードスキルを上手
に使えるようになったのであった。
﹁それにしても、エイトマンは嫌な戦い方だな﹂
﹁なんだよ、悪いか﹂
身体に染み付いてきた動きを繰り返す。
ダガーで素早く相手を切りつける短剣スキル︽ファッドエッジ︾
踏み込んできたイノシシを横、横、横、縦の順番で切りつける。
システムアシストが勝手に身体を動かしてくれるので慣れれば簡
単にソードスキルは使えた。
﹁まあ、こんなもんか﹂
﹁エイトマンは上手いな。すぐに出来るようになった﹂
﹁それを言うならクラインってやつもだろ。あっちで狩ってるが、ほ
ぼソードスキル成功してるぞ﹂
﹁謙遜するなよ﹂
笑うキリト。俺も釣られて口元が緩む。
こんなリア充生活現実でしたことねぇよ。
﹂
﹁キリトー、エイトマンー、俺そろそろ落ちるわ。ピザ頼んでるんだ﹂
﹁もうそんな時間か、エイトマンはどうする
﹁そうだな⋮⋮﹂
﹁俺も一旦落ちるわ﹂
﹁そうか、俺はまだ少し狩ってることにする﹂
まじかよ、廃人かこいつ。飯とか大丈夫なのか
す。
そう思いつつ俺はウィンドウを開く、そしてログアウトボタンを探
?
いな。流石に小町を放っておいてゲームをしてたら怒られかねん。
小町には昼飯はいらないと言ってるが夕飯いらないとは言ってな
?
4
!
﹂
エイトマン﹂
﹁⋮⋮⋮⋮あれ
⋮⋮。
本当にそれだけなのか
﹁うぉっ
﹂
﹂
﹂
一つ、既に何百人か犠牲になっている。
一つ、HPバーが0になるとリアルでも死ぬ。
一つ、このゲームに俺は閉じ込められた。
このゲームを作った張本人に告げられた事実を再認識する。
茅場晶彦。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
﹁なんだこれは⋮⋮﹂
ぼっちに逆戻り⋮⋮ってそんな場合じゃない。
キリトとクラインは⋮⋮この近くにはいないのか。
周りを見ると同じように転移してくる人がたくさんいる。
﹁広⋮⋮場⋮⋮
転移先で見えたのはーーーーーー
βテスターのキリトが言うには転移の光のようだ。
突如、キリトとクライン、そして俺を青い光が 包んでいた。
!?
俺も同意しようと口を開こうとするーーーーーー
確かにそうだな、キリトの言う通りだ。
﹁そりゃそうだが⋮⋮﹂
重大な問題だろ、強制的にゲームを終了させるくらいはしないと﹂
﹁いや、ログアウトボタンがないだなんてこれからの運営にも関わる
?
クラインは短絡的な考え方をしている。普通に考えればそうだが
うちょい狩りしようぜ﹂
﹁まあ、サービス開始初日だしこんなのもあるだろ。せっかくだしも
上から下までしっかり見る。うん、ないな。
もう一度よく探す。
﹁いや、ログアウトボタンが見つからないんだけど﹂
﹁どうした
?
?
5
?
﹁これは⋮⋮転移の光
!?
そしてーーーーーー出るためには、ゲームをクリアしなければなら
ない。
茅場晶彦からのプレゼント、
︽手鏡︾に映っているのは俺のリアルで
の姿。腐った目もバッチリ映っている。
﹁まじ⋮⋮かよ﹂
俺はその場に立ち尽くした。
様々な感情が頭の中を駆け巡る。
それらを言葉に言い表すことは上手くできないが、今一番わかるこ
とはーーーーーー
﹁ゲーム、クリア⋮⋮﹂
絶対、帰ってやる。
現実に。
6
攻略会議
絶望を告げられたあの日からもう一ヶ月。
SAOは最悪の展開へと進んでいっている。
死者は増える一方、それにまだ一層すらクリアしていない。
死者の半分はβテスターらしい。
ため息をつき、迷宮近くの石に座る。
そういえば、キリトはβテスターだったな。
一応会話した相手だから、死んでいたら目覚めが悪い。生きていて
ほしい。
﹁死ぬ、か﹂
俺も一度死にかけた。
あの絶望を伝えられたその日のうちに、俺は無理なレベルのモンス
ターがポップするところでがむしゃらに戦った。
気が狂っていたのだろう、夜まで戦っていて、死にかけた。
なんとかポーションを飲み、頭を冷ませた時に見た光景が今の俺を
支えている。
ここはゲームだ。だが遊びではない、現実だ。
とてもゲームとは思えない、美しい風景を見た。
綺麗な湖で、蛍のようなものも飛んでいた。
これはゲームだ、だがゲームだと割り切るには惜しい風景だ。
そう思うほど魅力的で綺麗だった。
﹁んーっ⋮⋮はぁ﹂
一つ伸びをする。
と、その時、気配がした。
俺は索敵スキル、隠蔽スキル、観察眼スキルをガン上げしている。
ぼっちプレ⋮⋮ソロプレイを極める俺に前二つのスキルは必須だ。
観察眼スキルはクリティカルを出しやすくするので取得した、おか
げで攻撃面は問題ない。
三つに絞って上げているのでかなりレベルは高い、そんな俺の索敵
レーダーに何かが映りこんだようだ。
7
俺は物陰に隠れ、隠蔽スキルを使う。さて、誰が来るか⋮⋮。
﹂
﹁隠れてないで出てこいよ。別に怪しいもんじゃない﹂
この声は⋮⋮。
﹁キリトか⋮⋮って、え
﹂
﹁なんだ、エイトマンか。隠蔽スキルを使って何してる⋮⋮って、エイ
トマンか
﹂
?
てるんだ
﹂
あっさり見破られてる⋮⋮なんか悲しいな。
﹁PKとか怖いだろ﹂
﹁しないよ、ていうか反応早かったな。索敵もあげてるのか
﹁ああ﹂
﹁キリトは何しに来たんだ
﹂
それで、本題はここからだ。
なら高いのだろう。
﹂
人と比べたことないからわからんが⋮⋮まあキリトが高いと言う
だろ﹂
﹁道理ですぐに俺のレーダーから消えたわけだ。俺より索敵上げてる
?
﹁言うなよ、気にしてるんだから。それで、隠蔽スキル使ってまで何し
﹁お前もそんな童顔だったとはな﹂
隠しきれてないぞキリト⋮⋮。
﹁そ、そうか⋮⋮目が随分と個性的なんだな﹂
﹁そうだ、正真正銘、敏捷に極振りのエイトマンだ﹂
﹁え、エイトマン⋮⋮でいいよな
全然顔が違う⋮⋮すっげぇ童顔⋮⋮。
?
?
ろ
俺知らないぞ
だから確認しておこうかと﹂
ナニソレ、ボス部屋
から﹂
!
そう言ってキリトはチラシを渡してくる。
見てみると、メンバー募集、ボスを倒してゲームクリアしよう
﹁⋮⋮あー、エイトマンは知らないかもな。街の方でチラシ配ってた
?
﹁いや、ディアベル達がボス部屋を見つけたっていう情報があっただ
?
8
?
?
?
的なイケイケな文が書いてあった
﹂
オーラを出していたらキリトに
周 り の 奴 ら は す ぐ に 組 み 始 め る。何
前 か ら 決 め て た の 早
まじかよ、その言葉をこの世界でも聞くとは思ってなかったわ。
﹁それじゃ、まずはパーティー組んでくれないか﹂
キリトと話していたらディアベルがあの言葉を発していた。
﹁煽ってんのか﹂
ぞ﹂
﹁エイトマンも人気者になりたいのか⋮⋮まずは目を治した方がいい
﹁いや⋮⋮あいつ人気者っぽいなって﹂
﹁どうしたエイトマン﹂
てるなら俺もしてるわ。いやしてなかったか。
話しかけられた。なんだよリア充滅せよオーラって、リアルに充実し
俺がムンムンとリア充滅せよ
あいつリア充じゃないよな⋮⋮。
こそこ笑いも取れてる。
SAOには職業システムがないので彼なりのギャグなのだろう、そ
た。
ボス会議の集合場所で、初めにリーダーらしきやつが自己紹介をし
ています﹂
﹁えっと、初めまして。俺はディアベル。職業は気分的にナイトやっ
ーーーー
⋮⋮誘われたし行ってみようかな。
そう言い残しキリトは迷宮に入っていった。
部屋見てくる﹂
﹁明日の10時にチラシに書いてるところに来いよ、じゃあ俺はボス
自分で言っててちょっと悲しくなってきた。
こんなやる気が微塵も無さそうな死んだ魚の目の男普通誘うか
﹁俺がかぁ
かったし戦力になるはずだ﹂
﹁そうだ、エイトマンもボス戦に来いよ、索敵、隠蔽スキルなかなか高
﹁街の方にはあまり顔出さないからな⋮⋮﹂
?
!
?
?
9
?
?
くない
﹂
とりあえずキリトと組む、あと誰かいないか⋮⋮。
﹁あのフードのやつはどうだ
﹁誘ってくる﹂
︵ただのコミュ障︶
俺 に 出 来 な い こ と︵コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン︶を
?
そこに痺れる憧れるぅっ
流 石 キ リ ト さ ん
やってくれる
!
!
﹂
?
フード被っててわからん。
?
わからんか
﹂
﹁ワイはキバオウってもんや。この中に謝らんとあかんやつがおるの
こえた。
そんなことを考えながらぬぼーっとしていたら一際大きな声が聞
キリトは割と話せるやつなのでそこら辺ば大丈夫か。
発生する。
ので会議が発展しないどころか喋ったら負けゲームのようなものが
ぼっちも三人寄れば上手くいく、とはならない。寧ろ全員消極的な
﹁一言余計だ﹂
含め﹂
﹁そうだな、連携どころか協調性のなさそうなやつばっかだもんな、俺
﹁とりあえず後で連携確認だけしておこうか﹂
名前は、︽アスナ︾か。女か
﹁失礼な、これはデフォルトだ﹂
﹁⋮⋮顔は元に戻ったんじゃないの
﹁俺はキリト、んでこの腐った目の男はエイトマンだ﹂
!
揺らしたりしているのでわかりやすい。
恐らくβテスターであろうものは視線を逸らしたりしたり、身体を
だな。
隣のキリトを見ると青ざめている。そういやキリトはβテスター
﹁馬鹿か﹂
だからここにいるβテスター、謝れ、身ぐるみ剥ぐぞってことか。
どを独占したからだ。
あいつが言うには、今まで死んだプレイヤーはβテスターが情報な
なんだあの栗頭⋮⋮大人しくそこら辺で転がってろよ。
?
10
?
仕方ない、ここは一つβテスターに借りを作っとくか。
あとワイはキバオウや﹂
﹁おい、栗頭﹂
﹁なんや
なんか文句あるんか
﹂
﹁βテスターは出てきて、謝れ、アイテム寄越せってことでいいか
﹁そ、そうや
﹂
﹂
﹂
なんで前日に
死ぬの
?
﹁な、なにが馬鹿なんや
馬鹿なの
?
﹁考えてみろよ。明日することは
戦力低下しなきゃならねぇの
﹁うっ⋮⋮﹂
よし、もう一押しだ。
?
ボス戦だよな
キバオウの顔が真っ赤になる。かなり頭にきたようだ。
﹁よし、解散しよう。こいつは馬鹿だ﹂
!?
﹂
?
﹂
?
たらも知ってるだろ
これはβテスターの協力によって無料配布
﹁俺はエギルだ。ついでに言わせてもらうがこのガイドブック。あん
不意に、肌が黒い男が手を挙げた。
ここまで言われたら流石に引くだろう。
﹁ぐぬぬぬ⋮⋮﹂
﹁それで、まだなにか文句あるのか
かは知らんが今のこの場を凌げれば十分だ。
周りがザワつく、俺も詳しくは知らんがキリトが言っていた。本当
﹁βテスターだよ。恐らく自分の力に過信したんだろうな﹂
﹁し、知らんわそんなん﹂
レイヤーの半分は誰かわかるか
﹁せめて謝ってほしいってだけならまあわかる。だけどな、死んだプ
?
?
!
か
﹂
されたものだ。ここまでしてくれたβテスターにまだなにかあるの
?
パンパン、と手を叩く音がする。
ディアベルは声を大にして言った。
﹁もうやめよう、ここまでだ。仲間割れしたって意味が無い。﹂
そうして、第一回ボス会議は終わった。
11
!
?
?
﹁ぐぬぬ⋮⋮うぐぐ⋮⋮﹂
?
ボス攻略に向けて
ずっと残ってたら気持ち悪がられるでしょ
俺なりの
あの後、βテスターに借りを作った俺は颯爽とその場から離れた。
いや、何
配慮だぞ。
は関係ない。
不意に、声をかけられた。
ビックリさせんなよ変な声が出ちゃうだろ﹂
﹁エー坊じゃないカ。何してるんダ
﹂
キリトとアスナには嫌な戦い方だと顔をしかめられていたが俺に
キルを使って相手の背後を取り、首スパーン、だ。
俺の戦い方は至ってシンプル。上げに上げまくった敏捷+隠蔽ス
キリトは筋肉バカ、アスナは細剣速攻か、よし覚えた。
のため30分ほどで終わった。
連携確認と言っても、各々の戦い方などを確認する程度だった。そ
﹁なんだよ、大して時間かかんなかったじゃねぇか﹂
ーーーー
すみませんでした。
﹃連携確認するって、言ったよな。○時に○△に集合﹄
キリトからのメールだった。
ら⋮⋮。
俺のフレンドは少ない。その中で俺にメールを送るやつといった
ら寝ようとしたらメールが届いた。
明日に向けてさっさと部屋に戻って武器、ポーションの確認してか
?
サンって言っていたから多分、女性プレイヤー。
?
こいつはアルゴ、情報屋だ。
﹂
﹁ちょうどいいや、アルゴ。短剣クエストでオススメなのあるか
﹁今からやるのカ
﹂
髭ペイントをしている、女性プレイヤー、前に自分のことをオネー
﹁ビックリさせた覚えはないゾ﹂
﹁うぉっ
?
﹁明日のボス戦に備えて少しでも戦力をあげときたいんだ﹂
?
12
?
!?
そう言うと少しアルゴは考える素振りを見せた。
すぐに顔を上げ、俺に言う。
頼む、教えてくれ﹂
﹁それなら、とっておきのがあるヨ。エー坊にピッタリのガ﹂
﹁本当か
﹁エー坊ならクエストフラグも立ってるはずだヨ。オレっちより敏捷
高いよナ﹂
﹁ああ、多分高い﹂
敏捷値がクエストフラグ、更に俺のスピードが加速されるのか。頭
痛が痛くなるぜ。
ーーーー
まあ勝てたからよし
アルゴに教えて貰ったクエストは比較的簡単だった。
いや、俺の敏捷が高いから簡単だったのか
とする。
50%される。その後10秒の間敏捷値が│50%される。
︽瞬間瞬足︾ってなんだよ⋮⋮効果を読むと、5秒間現在の敏捷値が+
特殊スキルとして︽瞬間瞬足︾というのが使えるようになるらしい。
装備すると敏捷が+10%筋力値+2%される。
からか。
色は紫のようだ、緑にも見えるのはさっきまでリザードを狩ってた
︽コートオブファスト︾
手に入れた緑にも紫にも見えるコートの詳細を確認する。
フラグ立つために必要な敏捷値にこの時点では達せてないのか。
序盤にしては美味すぎるクエストだったな。いや、普通はクエスト
﹁クエスト報酬は敏捷値+10、それとこの装備か﹂
てひたすら首を狩ってたがな。
そんなソルジャーモンスターの二倍近くのスピードで後ろに回っ
とか言っててぶっちゃけ煽られてるのかと思ってたぞ。
シュンシュン音を出しながら俺の周りを回っていた。シュロロロ
相手はめちゃくちゃ速いトカゲ型のソルジャーモンスターだ。
?
ほう⋮⋮俺の敏捷が+50%もしたら即座に逃げられるじゃない
13
?
か、素晴らしい。
5秒あれば俺の隠蔽スキルと組み合わせて視界から消えられるぞ。
なかなかの収穫だった。ホクホク顔で俺は宿に帰り、明日の備え眠
りにつくのだった。
14
イルファング・ザ・コボルト・ロード
一夜明け、ボス攻略の日となった。
ボス部屋の前で、ディアベルが先頭で士気を上げている。
その行為も、もう終わったようだ。
﹁皆、準備はいいな﹂
ディアベルがゆっくりとボス部屋のドアを開ける。
ボスの名前はイルファング・ザ・コボルト・ロード。なげぇ、略し
て雑魚ボルトでいいよ。大して略せてない。
雑魚ボルトにしてはなかなかの風格を放っている。ボスとなると
威圧感が違う。
﹁まあ俺らはボスとは戦わんけどな﹂
ルイン・コボルト・センチネルが俺らの受け持ちだ。
﹂
そこらの雑魚モンスターよりは強い雑魚モンスターだ。なにそれ
突撃ぃぃっ
かかる。
﹁キリト、行くぞ﹂
﹁エイトマンがやる気を見せる日が来るとは⋮⋮﹂
﹁うるせえ﹂
こちとらさっさと現実に帰って小町と戸塚に抱きつきたいんだよ。
一瞬だ。
俺は隠蔽スキルを使いターゲットから外れる。
そして、鍛え上げた敏捷値にものを言わせコボルト達の脇を通る。
すれ違いざまに全員ダガーでダメージを与える。
﹂
﹁クリティカルは出したんだがな、やっぱHP高ぇ﹂
﹁やっぱり⋮⋮エイトマンは速い、なっ
﹁攻撃が足りなきゃ意味ねぇよ﹂
二つにしていく。
ヘイトを集めた俺へ襲いかかるコボルトをキリトが容赦なく真っ
!
15
ややこしい。
﹁全軍
!!
ディアベルの声を合図にみんな雄叫びをあげながらボスへと切り
!
﹁武器、変えたらどうだ
﹂
ズイ、と大剣を見せつけてくる。
俺は横に首を振る。
﹁ないな。身軽なダガーこそ最強だ。コソコソ逃げ回って削るのまじ
神、おっと﹂
﹁陰湿だなぁ⋮⋮っと﹂
ポップしたコボルトをキリトと俺で滅多刺しにする。
﹁ボス戦だからな、もう無駄話はやめるぞ﹂
﹁⋮⋮おうよ﹂
キリトに咎められた。
初ボス戦、死んだら終わりのデスゲーム。
緊張感で頭がおかしくなりそうなのをキリトとのお喋りで誤魔化
す。
アスナはというとキリトの後ろに引っ付いている。俺が知らない
ところで何かあったんですかね⋮⋮。
﹂
再びポップしたコボルトに向かって俺はダガーを構えた。
﹁はぁっ
ない。
やはり攻撃力が足りない。
そんな俺をカバーするが如く、コボルトを真っ二つにするキリト。
しかし運が悪くキリトが攻撃をやめたと同時にほかのコボルトが
﹂
ポップする。
﹁っ
﹁もう少し周り見てよね﹂
サンキュ﹂
﹁エイトマン、ポーション飲め﹂
﹁⋮⋮
俺はほかのヤツらより身軽にしているので、一撃一撃がかなりのダ
メージになる。
16
?
コボルトの首を切る。クリティカルは出たが致命傷は与えられて
!
が、そんなコボルトを滅多突きにするアスナ。
!
キリトとアスナが俺を守っている間に俺はポーションを飲む。
!
総体的にはキリトやアスナと同じくらいしか攻撃を受けてないが
HPの減りは俺が一番だ。嬉しくねぇ一番だなおい。
﹁回復したぞキリト、アスナ﹂
﹁いい具合に全員HP減らしといたぞ﹂
﹁了解﹂
スイッチの掛け声で俺はキリト、アスナと前後交代をする。
ダガーを構え、ソードスキルを発動する。
︽ラビット・バイト︾
ダッシュして、すれ違いざまに標的を切りつけるソードスキルだ。
これは溜めれば溜めるほど、一気に遠くの方まで切りつけられる。
俺は三秒ほど力を溜める。
グググ⋮⋮と足に力が入る。
﹂
シュン、と風を切る音がしたかと思うとコボルト六体がポリゴンの
欠片となって崩れた。
﹁相変わらず速いな、それ熟練度200のスキルだろ
﹁敏捷値が高ければ威力も高くなるからな、俺にピッタリだ。それに
遠くまで行けるから切りつけた後に攻撃される心配もない。ローリ
スク・ミドルリターンだ﹂
﹁本当にピッタリだな⋮⋮っと、そろそろボスが武器チェンジしてく
るぞ﹂
そんな情報があったな。βテスターに感謝だ。
確かHPが減ると、曲刀に武器を切り替えてくるのだ。
ボスは手に持っている剣と盾を放り捨てる。
まああの人数なら平気だろう、俺は安堵の息を漏らしていた。
下がれ
﹂
﹂
17
?
しかし、事態は悪化した。ある男の発した言葉が原因だ。
﹁皆
ディアベルだ。
﹂
なに、今なんて
﹁俺が仕留める
﹁馬鹿野郎、何してんだあいつ⋮⋮
周りの連中は素直に下がっている。
!
!
!
?
!
俺は急いでディアベルの方に駆け寄ろうとするが、またポップした
邪魔だっ﹂
コボルトに道を阻まれる。
﹁くそ
ボスが手に持っていたのは太刀、情報と違うっ
俺の近くにいたコボルトが突如ポリゴンの欠片となり、前が見え
﹂
!
た。
俺じゃ間に合わない
﹂
﹁エイトマン
﹁わかった
!
﹂
るしかないのか⋮⋮
﹁おおおおっ
﹁くそっ⋮⋮やめろディアベルっ
!
﹂
﹂
!
れない。
﹁ディアベル、馬鹿野郎
何してんだ
頭上を太刀が切り裂いた。あと一歩遅かったら死んでいたかもし
バイトの勢いでディアベルを横に押し倒す。
太刀が今にもディアベルに切りかかる、その寸前に俺はラビット・
きなり発動させた。
これに合わせてラビット・バイト、距離は大丈夫だ。溜めなしでい
︽瞬間瞬足︾
させた。
間に合うか⋮⋮っ 俺は直感的にこの前目にしたスキルを発動
!
!!
!?
キリトが俺の取り巻きを倒した。キリトじゃ間に合わない、俺がや
!
﹁ラストアタックボーナス⋮⋮それを手に入れて、取り合いにならな
﹁なんだよ、ボス戦後じゃダメか﹂
﹁エイトマン⋮⋮君に頼みたいことが、ある﹂
無理やりポーションを飲ませる。
﹁俺の名前は覚えてるとはな、あとで言い訳は聞くからこれ飲め﹂
﹁エイトマン⋮⋮か﹂
メージを与えてしまっている。
急いでポーションを取り出す。俺のソードスキルで少しばかりダ
!
18
!
!
いようにしてほしい﹂
﹁ラストアタックボーナス⋮⋮ああ、なるほどな。わかった﹂
恐らくラストアタックボーナスとは、トドメをさした人に送られる
アイテムのことだろう。
それで取り合いになることを恐れたディアベルは自分から⋮⋮辻
褄が合う。
﹁ディアベルを回復させといてくれ﹂
近くにいたやつに言う。
俺はダガーをボスに向かって構える。
要は、ラストアタックボーナスを取って喧嘩にするなってことだろ
う
だけど普通に俺が取っただけだとこのあとディアベルは責められ
る。βテスターってのもバレるかもしれない。
なら、俺が、比企谷八幡がやるべきことはなんだ。
﹁ゲームでもこれか﹂
引きつった笑みを浮かべながら俺はボスに向かって走った。
︽瞬間瞬足︾のデバフ時間の10秒が過ぎた瞬間、俺は隠蔽スキルを使
﹂
い駆け出す。
﹁おらっ
﹁エイトマン
いつの間に
﹂
!
スヒッキーここにあり。
そんな冗談口に出す暇はないがな。
﹁いいか、よく聞け。ディアベルからの指示だ
その一言でまず周りのヤツらがザワつく。
﹂
とのことだ﹂
!
﹂
!
!
﹁ディアベルは負傷したから前線に出てこれない
俺
剣士、キリトの指示で動け
﹁はぁ
!?
ここからはあの
キリトの索敵にも引っかからないレベルになったみたいだ、ステル
!?
そうするとボスはダウンした、よし、時間は稼げた。
完全に死角から攻撃をする、ボスの足の関節を綺麗に切る。
!
﹁とりあえず俺が時間稼ぐから作戦内容でも伝えといてくれ、頼んだ﹂
!?
19
?
キリトの肩に手を置く。
キリトは頭をガシガシかくが、納得した表情で頷いた。
﹂
﹁俺が死ぬ前までには頼むぞ﹂
﹁そこは、倒してくる、だろ
あぶねぇ﹂
﹁それで、作戦は
﹂
﹁悪い、遅くなった﹂
そろそろやばい、と思ってた時、ボスの太刀が弾かれた。
耐久が薄いのでHPはガンガン減る。
何発か掠ったりもする。
いくら俺の敏捷が高くても攻撃を全て避けられるわけじゃない。
10秒、20秒、30秒と経過する。
太刀の間合いはかなり大きい、間一髪で避ける。
﹁っと
とりあえずターゲットを俺から逸らさないようにする。
すぐさまボスに向かって走り出す。
﹁死亡フラグは作らない主義だ﹂
?
!
ぞ。
﹂
チリツモってのは塵も積もれば山となるの略称だ、テストに出る
俺の攻撃力はそこまで高くないが、チリツモというやつだな。
気づいたらボスの最後のHPバーが4割を切っていた。
﹁全員で攻撃。残りのこのHPなら平気だ﹂
?
キリトに続けえええ
﹂
﹁おおおおお
﹁おらぁっ
!!
﹁キリト、現時点での最高火力出すわ﹂
﹁⋮⋮あと少しで倒せるのにやる意味は
﹁ディアベルからの依頼だ﹂
?
キリトは深く聞かずにボスへと向かう。
﹁⋮⋮⋮⋮わかった﹂
﹂
しかしディアベルからの依頼を達成するにはーーーーーー
これなら、勝てる。
後ろにいたヤツらがボスに攻撃を始める。
!
20
!
その間に俺はソードスキルの準備だ。
﹂
消費MPが今の俺の最大MPとほぼ同じなのでMPポーションを
飲む。
﹂
よし、行くぞ。
﹁キリト
﹁よし、皆、退け
俺の前にいたやつが左右に分かれる。
綺麗にボスへの道ができた。
ボスと目が合う。なんだよその目。
ポリゴンの塊が俺を殺すのか
﹁︽ミラージュ・ファング︾
﹂
やれるもんならやってみな。
ポリゴンごときに殺されてたまるか。
?
﹁終わった⋮⋮のか
﹂
ボスは断末魔をあげたあと、ポリゴンの欠片となって消えた。
崩れたところで、最後の1撃を胸に突き刺し、風穴を開ける。
撃。
太刀の攻撃が入らないところまで一足で進み、膝のところを5連
一気にボスとの間合いを詰める。
!
ト︾を確認した。
皆が喜びあってる中、一際大きな声が聞こえた。
!
なんでディアベルはんは1人で突っ込んだんや
﹂
俺はその中にラストアタックボーナス︽コート・オブ・ミッドナイ
浮かび上がりクエスト報酬が入る。
誰かが呟いたと同時に、Congratulationsの文字が
?
21
!
!
﹁なんでや
!
やはりな。そう言われると思ってた。
奉仕活動が染み付いているとは考えたくないが、帰ったあと奉仕部
の活動を停止したとは言いたくないしな。案外気に入ってたみたい
だ、あの部活。
答えろや
﹂
解決の仕方は、リアルでもゲームでも変わらないようだ。
﹁なんでや
﹁それは⋮⋮﹂
たりするんじゃないんやろか
そうなんやろ
﹂
!
﹂
その中にはキリトやアスナ、ディアベルも含まれていた。
に思うような視線が集まる。
どこぞのボスキャラのような笑い方をしているとみんなの不思議
﹁ククク⋮⋮アッハッハッ⋮⋮﹂
して耳に届く。
初めは忍んだ笑い声。だが静かになった場所ではそんな声も反響
静かに喉から漏らす。
俺はキバオウが叫んだあと、一瞬静かになったタイミングで笑い声
ここだ。
﹁答えろや
ところどころ、非難する声も聞こえる。
キバオウの言葉に周りの奴らもざわざわしだす。
!?
﹁もしかしてやけどな、最後に一撃入れたやつにはなんか報酬があっ
ーーーーーーだが、失敗した。
そのせいで犠牲者が出たらたまったもんじゃない。
と向かうだろう。
ラストアタックボーナスなんてものがあったら皆、我先にとボスへ
に止めようとしただけだ。
ディアベルはラストアタックボーナスを自分で取って、争いを事前
ディアベルが苦い顔になる。
!
﹂
キバオウは肩をわなわな震わせ叫ぶ。
﹁何がおかしいんや
!
22
!
!!
何にもわかってないんだな⋮⋮ってな﹂
﹁いや
が取ったんだよ﹂
﹁そ、そんな⋮⋮ディアベルはん
﹁い、いやーーーーーー﹂
そうなんか
﹂
?
そ も お か し い と 思 わ な か っ た か な ん で 武 器 を 変 え た ボ ス に 向
﹁そいつは全然使えなかったよ、それにこの装備も全然ダメだ。そも
間髪入れずに俺が答える。
ディアベルに答えさせる暇は与えない。
!
と交換しようと思ってたんだが⋮⋮まあ、失敗した。だから、直接俺
﹁ラストアタックボーナスだ。ディアベルに取らせた後、これをコル
周りの奴らは目を見開く、がそれを無視し俺は話を続ける。
ナイト︾を装備する。
俺はウィンドウを操作し、手に入れた装備︽コート・オブ・ミッド
﹁そんなの、これを取るに決まってるからだろ﹂
用意しておいた言葉を即座に返す。
キバオウの近くにいるやつが聞いてきた。
﹁な、なんでそんな事を⋮⋮﹂
﹁俺がディアベルに頼んだんだよ、最後の一撃はお前が決めろってな﹂
といった顔を向けるキバオウ。俺は説明を続ける。
はぁ
?
﹁ふ、ふざけんなや
おかしいやろ
﹂
を使っているモンスターと戦ったんだよ﹂
﹁そうだ、俺はβテスターだ、βテスター時にもっと上の階で同じ武器
﹁まさか⋮⋮﹂
かって俺が1人で時間を稼げたか﹂
?
!
ろ﹂
﹁現 時 点 じ ゃ お 前 ら は 俺 に は 勝 て な い。こ こ で の 戦 い で わ か っ た だ
キバオウ達に背を向け、第二層への扉に向かう。
︽コート・オブ・ミッドナイト︾を仕舞う。
きたやつには容赦はしないぞ﹂
はボス攻略にも参加するし迷宮にも潜る。だがな、PKしようとして
﹁うるさい、言っておくがお前らがどれだけ俺嫌おうと関係ない。俺
!
23
?
﹂
﹁この装備はいらん、βテストの時と違う、俺には必要ない。指揮を務
めたキリトに譲る﹂
﹁おっ、おい⋮⋮エイトマン
これでいい、キリト、ディアベルはこれから先必要な人材だ。
ゲームでもぼっち確定か。
まあいい、PKにさえ気をつければ今まで大して変わらん。
﹁エイトマン。そのやり方、俺は嫌いだ﹂
﹁ああ、そうかよ。じゃあな﹂
ーーーーーーやはり俺の解決の仕方は間違っているのだろうか。
しかし、俺の生き方は変わらないのだろう。
ここでも、リアルでも。
24
!
22層 ﹁⋮⋮もう半年経ったのか﹂
22層の宿屋︵もちろん誰も寄り付かなさそうなところ︶で俺は
ベッドの上でゴロゴロしながら呟いた。
現在俺の使っている武器は刀だ。
、あとはクライン率いる
アイン
DPSが高いのでダガーよりいい、ある程度のリーチも取れてピッ
聖龍連合
風林火山
"
タリだ。
と
"
最近はギルドもよく作られていて、今のところ有名なのは
クラッド解放軍
などだ。
"
"
黒の剣士
と呼ばれている、アスナは
俺はもちろんソロだ。べ、別に寂しくねぇよ
キリトは今では
だとか。
"
攻略の鬼
"
ーーーー
﹁⋮⋮はっ
﹂
攻略のために俺は迷宮へと足を運んだ。
刀を装備して俺は宿を出る。
﹁⋮⋮行くか﹂
時計を見ると午前9時。いい時間だ。
らな。
一度こちらから切ったのにまた入れるというのもどうかと思うか
がやんわりと断っている。
ボス攻略の度にキリトとアスナにはフレンド申請を送られている
あいつらは大分出世したな⋮⋮。
"
!
あとはソロや中小ギルド、それか攻略組に所属している感じだ。
あいつのカリスマのおかげで攻略の際も助かる。
アインクラッド解放軍はディアベルがリーダーとして動いている。
"
ギリギリ相手の攻撃が届かないところから刀を振り抜く。
短く息を吐き、更に踏み込む。
!
25
"
"
ソルジャー型のモンスターはそのままHPが0になりポリゴンの
欠片となって崩れ落ちた。
いい具合にマッピングも進んだ、今日はここまででいいだろう。
そろそろ帰るか。刀を納刀する。
転移結晶というものもあるが高価なので滅多に使わない。
一応1つだけ持っている、緊急時に使うためだ。
﹁よっ、エイトマン﹂
﹁じゃあな﹂
﹂
後ろを振り向いたら黒いあいつがいた。
そう、キリトだ。
﹁おい待て待て。マッピング中か
﹁今終わったところだ、じゃあな﹂
﹁まだ11時だぞ⋮⋮﹂
﹁飯食うんだよ、じゃあな﹂
﹁よし、じゃあ一緒に食いに行くか﹂
くっそ、空気読まねぇなこいつ。俺の帰りたいオーラを感じ取りな
がらも無理やり話してきやがる。
リア充なら空気読んで去れよ。⋮⋮いやリア充ならサービス開始
直後にinしないか。
﹁⋮⋮わかった﹂
引く気が無いと見た俺はとりあえず了承した。
別にこのあと何かするっていう予定もなかったしな。
ホモホモしい路線はちょっと海老名さん思い出すのでや
キリトは小さくガッツポーズをしていた。何、そんなに俺のこと好
きなの
店に連れていかれた。
飯はいつもパンか自分の料理スキルでラーメンを作って食べてた
からこういうところは初めてだ。
黒
やら
"
剣士
"
、
"
影
"
とか聞こえ
周りでご飯を食ってる他のプレイヤーがコソコソ何かを話してい
る。全ては聞こえないものの
"
"
26
?
キリトがオススメやらここがいいやら言って俺はよくわからない
めてください⋮⋮。
?
る。多分黒の剣士だな。
んでその近くにいる俺はよくわからない影が薄い野郎⋮⋮なんだ
この自己分析。
﹁エイトマン、目が死んでるぞ﹂
﹁常時そんな感じだから気にするな﹂
﹂
キリトが勝手に頼んだセットをもぐもぐと食べる。うん美味しい。
﹁そういや、これ何コルだ
﹁いいよ、俺の奢りだ﹂
なんか裏ないだろうな﹂
﹂
﹁ああ。働かないで食う飯は美味い﹂
﹁美味しいだろ
欲を言えば小町の手料理が⋮⋮うぅ、小町⋮⋮。
ミルクのセット。和風じゃないのが残念だが洋食もなかなかだ。
よくわからない肉が入ったシチュー、それに柔らかいパン、あとは
苦笑するキリト。本当にいいんだな⋮⋮ふりじゃないぞ。
﹁ないから安心して食え﹂
﹁まじ
?
﹂
﹁何言ってんだ、この後迷宮攻略に行くんだから働くだろ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮は
!
?
幡聞いてない
﹁奢りって⋮⋮﹂
﹁奢りだぞ、でも迷宮には行くぞ﹂
﹁裏もないって⋮⋮﹂
俺を嵌めやがった
﹁ああ、だからこれはただのお願いだ﹂
こ、こいつ⋮⋮
人に奢られて何もせずにはいられない、俺の優しさを利用したな
!
﹁そんな怒るなよ、お前と一緒に攻略するの結構楽しいんだからな﹂
﹁さっさと行くぞ﹂
急いで飯をかき込み、立ち上がる。
えばいいんだ。
仕方ない、今回は俺が引こう。美味しい店という情報を買ったと思
!
!
思わず食べる手が止まる、え、なに、そんなの聞いてないよ 八
?
!
27
?
﹁俺は終わったと思ったらまた降り掛かってくるタイプのことが一番
嫌いだ、つまり働きたくない﹂
﹁⋮⋮⋮⋮将来こうはなりたくないな⋮⋮﹂
﹁人を騙すようなやつはもう遅いぞ﹂
満腹になって眠いのを我慢しながら俺はキリトと共に再度25層
﹂
の迷宮へと向かった。
﹁スイッチ
前にいるキリトと後ろにいる俺の位置が入れ替わる。
キ リ ト に よ っ て H P を 半 6.7 割 ほ ど 削 ら れ た 3 体 の モ ン ス
ターに向かって俺は刀を振る。
スタンしているモンスターは簡単に切り裂かれた。
範囲攻撃なので3体纏めて、だ。
﹁エイトマン、攻撃力もなかなか高くなってきたな﹂
﹁武器が違うんだよ、刀と短剣を比べるな﹂
キリトがその気になればあの程度のモンスター1.2発で沈めら
れるだろう。このパワー厨が。
﹂
敏捷依存のスキルあるしリーチ長いしDPS高いからだ﹂
﹁なんで刀使い始めたんだ
﹁あ
?
﹁なんだよ俺らしいって﹂
キリトと2人合わせてばったばった敵を薙ぎ倒していく。うん、ソ
ロよりやりやすいな。
無言で進んでいくとキリトが耐えられなくなったのか話しかけて
きた。よし、無言耐久レースは俺の勝ちだな。
﹁そういえば、今の攻略組でのトップはエイトマン、アスナ、ディアベ
トップが5人いたらそれはトップじゃねぇだろ﹂
ル、ヒースクリフ、俺らしいぞ﹂
﹁あん
キリトがウィンドウを開きこちらに見せてくる。見てみれば、アル
ゴが毎週発行している週刊誌の質問コーナーだった。
今回の質問コーナーは攻略組への質問みたいだ、ちなみに前回はリ
28
!
﹁エイトマンらしい理由だったな﹂
?
﹁そういう捻くれたのはいいから⋮⋮ほら、これ﹂
?
ズベット武具店への質問だ。
と目でキリトに問いかける。
﹁攻略組で一番かっこいい人は⋮⋮ほうほう、んで
なんだこれ
﹁ここの欄、攻略組で一番PvPしたくない相手は
イトマン1位だろ﹂
﹁一層でのことがあるからな﹂
﹂
ってところ、エ
﹁いやいや、敏捷極振り+隠蔽スキルでのヒットアンドアウェイ戦法
という質
と か 誰 も 戦 い た く な い ぞ、い つ の 間 に か 後 ろ に 回 ら れ そ う
だーーーーーーってそうじゃなくて、ほらここも﹂
キリトが指さしたのは、攻略組で一番強いと思う人は
問のところだ。
﹁エイトマン、5位だぞ﹂
﹁微妙すぎてなんとも⋮⋮てかお前2位⋮⋮﹂
マンの強さも認められてるぞ
﹂
﹁ラストアタックよく取ってるからな、多少は仕方ない。でもエイト
?
﹁なんでだよ、カッコイイじゃないか﹂
﹁やめろやめろ、中二病時代を思い出しそうだ﹂
﹁エイトマンのはなーーーーーー﹂
﹁ああ、黒の剣士とか閃光のアスナとかだろ﹂
﹁それに皆二つ名とか付けられてるんだぞ﹂
てるだけなんだけどなぁ⋮⋮。
アンドアウェイ戦法らしい。俺は逃げ回って一発一発ダメージ与え
んで5位が俺⋮⋮キリト曰く敏捷極振り+隠蔽スキルでのヒット
技だな。
4位はアスナ、まあ言わずともわかるだろうがレイピアでの高速剣
3位はディアベル、片手剣と盾を使って堅実に戦うスタイルだ。
ぎて誰もHPゲージが黄色になってるのを見たことないとか。
ちなみに1位はヒースクリフ、あのタンクおっさん⋮⋮防御力硬す
ことあるから票入れてやろう、的な奴らが多かったんだよ﹂
﹁一層でのことがあるから少しだけ名前が広がってるんだろ。聞いた
?
そうか、こいつの歳はだいたい中一∼中三くらいか。こういうのに
29
?
?
?
はどストライクの時期か。
﹁⋮⋮ 将 来 恥 じ 掻 か な い よ う に だ け 気 を つ け ろ よ。年 上 か ら の 忠 告
だ﹂
﹁お、おう⋮⋮﹂
﹁マッピング、続けるぞ﹂
﹁なんだよ、結局やる気あるじゃないか﹂
﹁今すぐ帰りてぇよ﹂
そんな雑談を交えながら俺らは迷宮を進んでいった。
ーーーー
かれこれ数時間、俺たちはボス部屋の前に立っていた。
﹁まさかボス部屋見つけるまで帰らせてくれなかったとは⋮⋮﹂
アルゴには俺から伝えるから帰っ
﹁いいレベリングにもなっただろ、あと目がいつもより腐ってるぞ﹂
﹂
﹁疲れてんだよ、もういいだろ
ていいか
出るぞ。
そっちが強行手段に出るなら、こっちはシステム的に有効な手段に
ぽけなプライドがある。
でも俺にもプライドはある、野菜の国の王子様ほどではないがちっ
はぁ、と溜息をつく。友達か、ずいぶんリア充になったな俺も。
﹁友達だからな﹂
﹁何お前、どんだけ俺とフレンドになりたいの﹂
通さないぞ﹂
﹁後ろはボス部屋、前は俺が塞いでいる。フレンド申請受理しなきゃ
キリトを見るとニッコリ笑っている。
見るとキリトからのフレンド申請だった。
と、思ってたらメッセージが届いた。誰だ⋮⋮。
早く帰りたくて足がうずうず⋮⋮いや寧ろ疲れてガクガク。
﹁なんだよ﹂
﹁そうだな、いい時間だし⋮⋮あ、忘れてた﹂
?
﹁いいんだな、俺とやり合うってことがどんなことかわかってるんだ
な﹂
30
?
﹂
転移結晶なんて高価なものをーーーーーー﹂
﹁エイトマン⋮⋮フレンド受理するだけだぞ﹂
﹁転移
﹁あっ、おい
街に戻り宿に直行した。
31
!
!
作戦変更
﹁もうボス部屋を見つけたのカ﹂
﹁黒の剣士様に無理やり連れてかれたんだよ、くそ、過労死するぞ﹂
やっぱ俺に仕事は合わねぇな、専業主夫希望します。
﹁攻略組トッププレイヤーの揃い踏みカ、見てみたかったナ﹂
﹁トップ2人いたらそれはもうトップじゃねぇよ、それに俺なんかよ
りアスナやヒースクリフ、ディアベルがいるだろ﹂
﹁エー坊もなかなか有名だけどナ﹂
﹁そりゃ一層でのことがあるからな﹂
有名になりたいならまず騒ぎを起こせって偉い人が言ってました、
偉い人すごい︵小学生並みの感想︶
でも騒ぎすぎるとIPぶっこ抜かれるって言っていました、ネット
の人怖い︵材木座より︶
紫色の影
︵シショクノカゲ︶だゾ﹂
!
タック総ナメじゃないのカ。攻略組の実力でも影しか追えないから
32
﹁エー坊は自分のことがわかってないのカ、現実でもそう言われたこ
とがあるんじゃないカ﹂
アルゴに言われる。
思い出すのは修学旅行、文化祭⋮⋮。
⋮⋮雪ノ下、由比ヶ浜⋮⋮。
﹁⋮⋮⋮⋮リアルの話を持ち出すんじゃねぇよ﹂
思っていたより低い声が出た。
アルゴは一瞬、目を見開いたがすぐにいつもの調子に戻った。
﹂
﹁悪かったナ、だけどエー坊は本当に強いゾ。巷ではなんて呼ばれて
るか知っているカ
﹁
中二病時代を思い出しそうだ てい
﹁うわあああ、なんで言うんだよ馬鹿野郎
﹂
﹁キリトにも言われたが興味無い、過去の黒歴史を思い出しそうだ﹂
?
なんだよ紫色の影って
うか思い出した
!
"
﹁ボス戦が始まったと同時にダメージを入れるからナ。ファーストア
!
!
"
エー坊の着ている服の色と合わせて、紫色の影ダ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮はぁ、まあいい。所詮この世界での評価だ。ボス情報は伝
えたぞ。じゃあな﹂
強引に話を打ち切り、帰る。
通り名のことを忘れようと無心で帰る。
帰ったあと、頭の中に紫色の影のことが横切る。
横切るだけじゃ済まなく駆け巡った。
ベッドの上で悶絶した。
ーーーー
三日後、いつものように転移門前でボス会議が行われる。
俺も勿論行く、がーーーーーー
﹁やべぇ、寝坊した⋮⋮﹂
﹁これはちょっと昨日あれであれだったんですみませんでした﹂
﹁よろしい﹂
33
現在時刻は10時半、集合は10時だ。
初めて遠い宿に泊まったのを嫌に
まずいまずいと思いながら支度をし全速力で街を駆ける。
くそ、宿から転移門が遠い
思ったぞ。
ぜぇぜぇと息が荒くなる。
﹂
頭に彼らをサポートしてください﹂
﹁はぁ
しまった、つい声が。
﹁⋮⋮あら、もしかしてエイトマン君
隠蔽スキルなんか使わない
﹁今回はキリト君、エイトマン君を軸にディアベル、ヒースクリフを筆
いやこれアスナだわ。
隠蔽スキル使いながら近づくと女の作戦を伝える声が聞こえた。
かに⋮⋮遅刻したとか思われたくないし。
息を整えながら集合場所へ行く。なるべく見つからないように静
!
で出てきなさい。会議に遅刻なんてずいぶんといいご身分ね﹂
?
?
﹂
とりあえず謝るべきだと思った。だってアスナの目が怖かったん
だもの⋮⋮。
﹁質問いいかな、なんで今回は2人を主体にするんだ
キリト君を軸にするべきだと思ったからです﹂
﹁なるほどね、わかった﹂
おいおい、このままじゃ⋮⋮。
﹁じ、じゃあパーティー申請送るぞ⋮⋮エイトマン
﹁⋮⋮わかった﹂
仕方なく申請を受理する。
ディアベルとかいるから平気か。
﹁それでは、よろしく頼むぞエイトマン君﹂
﹁⋮⋮⋮⋮ヒースクリフか、マジで頼むぞ。死にたくない﹂
﹁ははは、思っていたよりも臆病な性格なようだ﹂
﹁元からだ﹂
不意にヒースクリフに話しかけられ一瞬戸惑った。
こ い つ が 本 当 に 先 立 っ て 統 率 す る よ う に な っ た ら 危 な い な ⋮⋮
有無を言わせぬ物言いに皆たじろぐ。流石攻略の鬼。
は恐らく現れるであろう取り巻きを倒してください﹂
﹁風林火山は2人のカバー、サポートを。軍と聖龍連合とその他の人
その間にも説明は続いていた。
﹂
で現時点で最も早く攻撃ができるエイトマン君と最も攻撃力が高い
に乗っているので今までよりも機動力が優れているはずです。なの
﹁ボスは馬に乗った武士のようです。先行隊が確認してきました。馬
ディアベルが手を挙げ質問する。まあ誰もが思うわな。
?
完全に歳が離れてるからな⋮⋮平塚先生くらいの年齢か
﹁では、解散﹂
相手は馬に乗った武士か。
気を引き締めて、今まで通り倒すだけだ。
?
34
?
紫色の影
﹁皆さん、準備はいいですね﹂
ボス部屋前でアスナが問いかける。
皆真剣な表情だ。
﹁ヒースクリフ、頼むぞ﹂
﹁任せたまえ﹂
ヒースクリフの余裕の表情が俺の緊張を和らげる。
﹁行きます﹂
アスナが扉を開ける。
ギギィ⋮⋮と固い音を立てながら扉が開かれる。
中には馬に乗った鎧を着たモンスターがいた。
入ってきたこちらに気づくボス。
﹂
俺は最速でボスへと走り、斬りつけーーーーーーようとしたが、馬
に乗っているので届かない。
﹁届かねぇ⋮⋮﹂
﹂
﹂
仕方なく馬の足を切りつける。
﹁らぁっ
﹁オオオッ
ボスが声を上げる。馬の足が1つ折れる。
﹂
足にHPバーが表示されている、4つ削れば本体に届くのか
﹁キリトッ
﹂
﹁ーーーーーーッ
﹂
なかなかいいダメージが入っている。
キリトがボスを片手剣で攻撃を与える。
﹁ああっ
!
!
?
!
!
!
35
キラリと目が赤く光り、馬が雄叫びを上げた。
﹂
﹁全軍、位置に着いて
﹁了解
!
アスナの指示が飛ぶ。
!
ボスの刀攻撃がキリトを狙う。
間一髪キリトはそれを避けたが、まだボスはキリトを狙っている。
ある程度下がり、ターゲットから逸れるキリト。
﹁どうだ、キリト﹂
﹁攻撃が思ったよりも速い、ヒットアンドアウェイ戦法かいいっての
は本当だな﹂
﹁てことは⋮⋮﹂
﹁エイトマンの出番だ﹂
﹁だよなぁ⋮⋮﹂
俺を軸にする作戦なんて嫌いだ。
覇気がないやつを軸にしてもろくなことがない。
でも、これがベストだというのならばそれに従うだけだ。
刀を抜刀し、構える。
後ろにはキリト、ディアベル、ヒースクリフと頼もしい面子が揃っ
36
ている。
今のところ湧いている雑魚も後ろのヤツらが十分倒してくれてい
る。
大丈夫だ、落ち着け、俺。
﹁行くぞ、鎧野郎﹂
スッと出た言葉。おかげで心臓の音が静かになった気がした。
ボスに向かって俺はいつもの、紫色の影と呼ばれる所以となった戦
い方を始めた。
ーーーー
キリトside
と強い音が鳴ったかと思うとボスがスタンする。
﹁すごいな⋮⋮﹂
ダァン
﹁これが、エイトマンの本当の戦い方⋮⋮﹂
その間に1度下がり、MPポーションを飲み、息を整える。
でまたもやスタンさせる。
倒れたボスを滅多打ち、ボスがスタンから復活した瞬間他のスキル
その間に復活した馬の四肢のHPをすぐさま削りきる。
!
いつも飄々としていて、やる気がなさそうな、あのエイトマンの本
気。
﹁行くぞ、鎧野郎﹂と答えたエイトマンの雰囲気は確実に違った。
﹁おい、余所見すんな。俺1人であのHPを削り切れるわけないだろ﹂
﹁あ、ああ﹂
エイトマンがポーションを飲み、バフをかけている間に俺が追撃す
る。
俺の一撃、二撃、三撃。
﹂
﹁スイッチだ、キリト﹂
﹁わかった、スイッチ
前に出るエイトマン。すぐにボスをスタンさせ、またさっきの流れ
に持ち込む。
スタンで攻撃を止め、流れを変え、バフで上げに上げた攻撃力で削
る。
敏捷が高すぎるせいで姿を追うのもやっとだ。
辛うじて服の色、紫色が移動してるのがわかる。
これが、エイトマンの二つ名の由来か。
﹁紫色の影、か﹂
本当に、似合う二つ名だな。
と、HPを半分まで削ったあたりでボスの行動が変わった。
﹂
﹂
大技が来るぞ
明らかにモーションが大きくなる、これは⋮⋮。
﹁エイトマン
﹁わかってるーーーーーーッ
!
﹂
まずい、スキル硬直でエイトマンは動けない
﹁ふんっ
ヒースクリフだ。
﹁ナイスだヒースクリフ﹂
﹁君のことは任せろと言っただろう﹂
エイトマンがスキルを発動する。
!
37
!
エイトマンがスキルを発動するタイミングで大技が来る。
!
!
ボスの攻撃が弾かれる。
!
5回の直進突き。
刀スキルの奥義︽散華︾
特大攻撃の
﹁おおおおお
﹂
ガクン、とボスのHPが減る。
残り3分の1ほどだ。
﹁攻撃パターンが変わるぞ、下がれ
!
だ。
﹂
わからない。
よかった、と思いつつもーーーーーーよかった
キリトに嫌われずに
?
慌ててキリトの方を見るがキリトはなんとも思っていないみたい
つい、強く言いすぎてしまう。
﹁うっせ、そんな余裕ねぇ﹂
﹁流石だな、エイトマン﹂
生きるために。
それでも俺は切り続ける、挑み続ける。
少しでもミスしたら一発食らって俺のHPは赤、それか0になる。
本当にギリギリだ。
八幡side
ーーーー
そんなエイトマンに頼られるってのは、嬉しいもんだ。
﹁⋮⋮ああ
﹁攻撃パターンがわかったらまたハメるから、頼むぞキリト﹂
エイトマンの顔に余裕が確かにない。
この戦い方はかなり神経を削るみたいだな。
﹁うっせ、そんな余裕ねぇ﹂
﹁流石だな、エイトマン﹂
エイトマンは素直に下がり、体制を整える。
ディアベルの指示が飛ぶ。
﹂
それにエイトマンはバフを数個かけている。
×
!!
何がよかったんだ
?
?
38
!
ここはゲームだ、だけど現実だ。
キリトとの関係は、なんだ。
ーーーーーーそんなのを考えている余裕はない。
﹂
﹁攻撃パターンがわかったらまたハメるから、頼むぞキリト﹂
﹁⋮⋮ああ
ボスが雄叫びをあげる。
馬から降りるボス。馬はポリゴンの欠片となって消える。
﹁形態チェンジか、あと2回されたりしないよな﹂
﹁フリーザかよ。冗談言う余裕はあるんだな、エイトマン﹂
﹁余裕持ったふりでもしないと持たねぇよ。足なんかガクブルだわ﹂
ボスが手に持っていた刀を捨て、もう一つ、腰にあった方の刀を抜
刀する。
その瞬間、俺とキリトの後ろにいたディアベルとヒースクリフ、そ
れと他のクランメンバー達の間に炎が燃え上がる。
キリト
﹂
そのまま切り離される。
﹁エイトマン
!
﹁ああ
﹂
﹁ともかくだ、2人でやるしかない。行くぞ、キリト﹂
やることは一つだ。
周りを炎で囲まれながらも、思考は冷えている。
ねぇな﹂
﹁あれだろ、一騎打ち的なやつ。⋮⋮いや2人いるから一騎打ちじゃ
﹁エイトマン、これって⋮⋮﹂
ディアベルの声が聞こえる。炎で遮られ姿は見えない。
!
ーーーー
﹂
襲いかかってくるボスの刀。
﹁はぁっ
﹁らぁっ
﹂
片手剣スキル︽ホリゾンタル・スクエア︾
その攻撃を避けながらキリトがソードスキルを発動する。
!
!
39
!
ボスとの最終決戦が始まった。
!
キリトにヘイトが移っている間に俺は︽ウェポン・バッシュ︾でス
タンさせる。
﹂
そのまま次のソードスキルを発動。
﹁オオオ⋮⋮ッ
﹂
しまーーーーーー﹂
﹁エイトマン
ボスがよろめく、HPバー最後の1本の残り3分の1ほどだ。
!
HPバーが一気にレッドゾーンにまで減る。
死ーーーーーーんでたまるか
︽レイジスパイク︾
回復が間に合わない、くそっ
﹁おおおっ
﹂
!
!
追撃してくるボス、いつの間にかヘイトが俺に移っていた。
!
!
﹁ぐっ⋮⋮︽ヒーリングサークル︾ーーーーーー
﹂
ボスが放った刀スキルによって俺は吹っ飛ばされる。
スタンしていると思っていたら失敗していた。
﹁ッ
!
ーーーーーーッ
スイッチ﹂
!
ボスの一撃がキリトを襲う。
﹁エイトマンは早く回復を
キリトは1人でボスと切り合う。
!
その間に素早く回復を済ませる。
﹂
﹁エイトマン
﹁ああ
!
﹂
キリトが突進技で無理やりヘイトを自分に移した。
!
スキルを放つ。
刀スキル︽緋扇︾の三連撃。
﹂
﹂
!
キリトが片手剣重攻撃技スキルでボスに攻撃する。
﹁︽ヴォーパル・ストライク︾
まだスタンしているボスに俺はソードスキルを発動する。
!
再びスタンするボス。
一気に行くぞ
﹁キリト
!
﹂
﹁はぁっ
!
40
!
間に合った、キリトの一撃でスタンしているボスに向かってソード
!
だが、削りきれていない。大技は発動後の硬直時間が長い。
動けないでいるキリトの後ろ姿は、俺を信じているように見えた。
俺がそう見えただけ、だけどーーーーーー。
﹁信じられてるなら、応えないとな﹂
刀スキル︽窮奇︾
怒涛の6連撃でボスに反撃を与えない。
﹂
どんどん減るボスのHP。
﹁っらぁっ
︽窮奇︾の最後の一撃、最も威力が高い攻撃を与えーーーーーーボスの
HPが0となった。
ボスはポリゴンとなって消滅する。
同時に炎も消え、ボスの取り巻きも消滅する。
︽Congratulations︾の文字が浮かび上がった。
俺達の、勝利だ。
41
!
誕生日
﹁ハッピーバースデートゥーミー﹂
そんな歌を口ずさむ俺ガイル。
今日は8月8日、SAO開始から約10ヵ月。
そして、俺の誕生日。
﹁ケーキでも作るか﹂
俺は甘いものが結構好きだ、いやかなり好きだ。練乳とか大好き。
MAXコーヒーとラーメンを作るためにせっせと料理スキルを上
げた。
おかげさまで大体のものは作れる。専業主夫になるならこのスキ
ルは必須だな。
卵やらスポンジやら用意していたらメッセージが来ていた。
たわ。
てか、隣にいる奴ら誰
﹂
と目で促す。
42
﹁キリトか﹂
ボスを倒したあと、結局フレンド削除はしなかった。
信頼し合える仲間という認識になったからか
削除ボタンを押せなかった。
﹁フレンド欄からサーチ出来るだろ
﹁なんで俺の泊まってる宿がわかったんだよ﹂
ドアの前にはキリト⋮⋮と知らない面子が揃っていた。
作りかけのケーキを放っておいて、とりあえずドアを開ける。
なんでですかね⋮⋮
﹃お前の宿の前にいる﹄
とりあえずメッセージ内容を確認する。
ことだろう。
よくわからない感情が渦巻いていたが、キリトと友達になったって
?
まじかよ、今までフレンド欄ほとんど開かなかったから知らなかっ
?
キリトは思い出したように説明を始めた。
?
﹁俺、月夜の黒猫団ってギルドに所属したんだ。それでこいつらがそ
のメンバー﹂
﹂
﹁お前がギルドにな⋮⋮ぼっち脱却か﹂
﹁エイトマンも入るか
﹁絶対嫌だ﹂
見た感じ中高生のイケイケ系のグループのようだ、同級生か
﹁えーと、紹介すると⋮⋮月夜の黒猫団のリーダーがケイタってやつ
だ。で、そっちのメイスを持ってるのがテツオで、ソードを持ってる
のがササマル、槍を持ってるのがダッカー。ケイタの後ろに隠れてる
のが⋮⋮サチだ﹂
﹁よろしくな、えーと﹂
﹁エイトマンだ﹂
何しに
ケイタ、というやつが気楽に話しかけてくる。ほほん、こいつ俺の
ぼっちオーラを無視するタイプか
﹁それで、ギルドメンバー紹介に来たわけじゃないんだろ
来たんだ、俺は忙しい﹂
﹁断る、じゃあな﹂
﹁待ってくれエイトマン
⋮⋮⋮⋮いい武具店紹介するぞ﹂
俺の返答は決まっている。
チラチラ俺を見てくるキリト。なるほど、そういうことか。
くなると嬉しいと思ってな﹂
﹁俺1人だと少し厳しくてな、監督してくれるメンバーがもう一人多
﹁キリトが適任じゃねぇか﹂
⋮⋮﹂
﹁いやさ、攻略組に参加したいらしくて。それでレベリングとかをな
?
?
に他のに切り替えている。
だが、キリトの武器はほとんど耐久が切れていない、いい武具店に
入り浸っているのだろう。
気になるな⋮⋮。
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
43
?
?
武具店⋮⋮俺の武器は基本的にドロップ品だ。耐久力が切れる度
!
俺が黙っていると、キリトは仕方ないと言った表情で口を開いた。
﹁美少女いるぞ﹂
﹁よし、乗った﹂
あっさり俺は承諾したのだった。
後ろのメンバーは苦笑いしていた。
いやだって⋮⋮俺も男の子だし⋮⋮。
ーーーー
ここは23層の迷宮区。
トラップが比較的多い迷宮だ。
ちなみに攻略は今のところ24層まで進んでいる。今は25層の
迷宮に挑んでるところだろう。
一応攻略組の俺は月夜の黒猫団のメンバー方に連れられてここで
レベリングの手伝いをしていた。
﹁はぁ⋮⋮面倒くさい⋮⋮働きたくねぇ﹂
属してたら⋮⋮⋮⋮。
そう考えると、1層での俺のヘイト稼ぎは結果的に良かったってこ
とか。
﹁じゃあ、俺はサチに片手剣の戦い方とか教えてくるよ﹂
44
﹁そんなこと言うなって、ほらまたポップしたぞ﹂
クランのメンバーがえいえいとモンスターを倒している。
俺はその隣でぼーっとしているだけだ。
キリトからは、危なくなったら助けろとしか言われていない。
﹁お前の速さなら間に合うだろ﹂
⋮⋮そう言われたら何も言い返せないだろ。
信頼するなよ恥ずかしい。
何とか話を変えようとあれこれ模索すると1つ聞きたいことを思
い出した。
﹂
攻略組になりたいみたいだしさ﹂
﹁そういえば、キリト、βテスターってことは伝えてるのか
﹁ああ、そっちの方がいいだろ
﹁そうか﹂
?
もしキリトがβテスターってことを隠したりしてこのクランに所
?
﹁ああ、わかった﹂
月夜の黒猫団はアタッカーが少ないみたいで、サチを片手剣使いの
アタッカーにしたいみたいだ。
攻略組の片手剣使いのキリトはうってつけの専属教師になるって
ことか。刀使いの俺は誰の教師になればいいんですか。クライン
﹂
嫌だよおっさん。
﹁お、宝箱
﹁っと、目を離した隙に⋮⋮﹂
のか真面目に返事をしてくれた。
おお、俺上司みたい。
﹂
黒猫団のメンバーはポカーンとしていたが、事の重大さをわかった
開けるな、いいな﹂
﹁ここはトラップだらけのエリアだって言ったろ。ここの辺りは宝箱
慌てて止めに入る。開ける寸前だった。
﹁ばっか、何してんだ﹂
﹁じゃあ開けるぞー﹂
エリアだ。先にそう伝えてあるしどう動くか⋮⋮。
隠し部屋の宝箱を発見したケイタ達、まあここはトラップだらけの
?
ケ ー キ 作 っ て た ん だ よ ⋮⋮ 思 い 出 し た ら 今 日 俺 の 誕 生 日
﹁そういえばエイトマン、家では何してたんだ
﹁あ あ
?
﹁誕生日だったのか
﹁は
それは⋮⋮﹂
いやいい、まじやめろ﹂
﹁そうだ、せっかくだし俺たちが祝ってやるよ﹂
しまった、誕生日のこと言ってしまった。
!?
﹁なら美少女でも紹介しやがれ﹂
﹂
紹介されても話せる自信はないがな。
﹁キリト、誕生日なの
聞いてたのかよ⋮⋮。
前衛の練習をしているサチが俺のところへやってきて言った。
?
45
!
じゃねぇか⋮⋮ゆっくりしたかった⋮⋮﹂
?
﹁まあまあ、これのお詫びってことで﹂
?
﹂
よくよく周りを見渡すと他のメンバーを俺のことを見ていた。
﹁もしそうなら、皆でお祝いしよっか
﹁⋮⋮いや
﹂
﹁それは⋮⋮ほら、会ったばかりだろ﹂
?
﹂
﹁うっせ﹂
﹁女には弱いなぁ、エイトマン﹂
隣から視線を感じた。キリトが俺をニヤニヤしながら見ている。
なぁ⋮⋮。
そ ん な 自 分 の こ と の よ う に 喜 ば れ た ら ⋮⋮ い や っ て 言 え な い よ
他のメンバーに嬉しそうにパーティーのことを伝えに行くサチ。
﹁やった
﹁いや、じゃないが⋮⋮﹂
だろ。
ていうか声が雪ノ下に似てるからあいつのことを思い出しちゃう
で見るな。
身をよじらせて上目遣いでこちらを見てくるサチ。やめろ、その目
?
結局、この日は夜が明けるまでパーティーで騒いだ。
46
!
緊急収集
明くる日、俺は惰眠を貪っていた。
ピコン、とメッセージが届く音で目が覚めた。
俺 の フ レ ン ド は キ リ ト と ア ル ゴ し か ⋮⋮ キ リ ト は こ こ に い る し
と思いながらメッセージを開く。
⋮⋮じゃあアルゴか。
なんだ
そこに書かれていた内容を見て、目を見開く。
﹂
﹃ディアベル反対派の軍がボスに挑んだみたいだゾ﹄
﹁⋮⋮はぁ
一気に頭が覚める。同時に血の気が引く。
待て、今は何時だ。
時間を見ると既に昼を回っている。
大慌てで仕度をする。惰眠を貪っていたことがバレたらキリトや
アスナになんて言われるか⋮⋮。
パンを頬張った直後、ピコんとメッセージの音が届く。
キリトからだ。
﹃エイトマン、ディアベルとヒースクリフから緊急収集がかかった、大
至急○○に来てくれ﹄
危ない、寝てたら絶対に怒られていた。
それにしても緊急収集か⋮⋮。
多分、いや絶対軍についてだろう。
﹁なんで俺が⋮⋮﹂
再び思い出す、アルゴからのメッセージ。
﹃軍がボスに挑んだ﹄
それだけならいい、だけど、勝利の報告がない。
それはつまり⋮⋮⋮⋮。
俺はボーッと何も無い壁を見つめていた。
頭の中が、真っ白になった。
ーーーー
俺はディアベルとヒースクリフに指定された部屋に行った。
47
?
?
ドアを開けると、キリトがディアベルに掴みかかっている場面だっ
た。
胸ぐらを掴み怒気を孕ませた声でキリトが問う。
﹁どういうことだディアベル。軍はお前の指揮下にあるんじゃないの
か﹂
﹁⋮⋮⋮⋮どうにも、僕の意見と噛み合わない者がいたんだよ。そい
つらが軍の中でグループを作り今回のことをーーーーーー﹂
﹂
﹁そういうことを聞いてるんじゃない、なんでわかっていて止められ
なかった
ここには俺とキリトとディアベル、ヒースクリフしかいない。静か
なのは当たり前だがキリトの声でいっそう静かになった。
コホン、とヒースクリフが小さな咳をする。
それは物凄く静かなこの部屋に響いた。
キリトも冷静になったのか、ディアベルに一言﹁すまない﹂と入れ
てヒースクリフの方を向く。
﹁これからの方針について話そうと思う。⋮⋮アスナ君はまだ来ない
ようだね﹂
﹁ヒースクリフ⋮⋮それでいいのか﹂
﹁おいキリト、やめろ﹂
﹁⋮⋮けど﹂
食い下がるキリト。過ぎた事をまだ言うのか。
今大事なのは、軍の戦力がダダ下がりしたこと、それと軍が思って
いたより統率が取れていないことだ。
﹁ディアベル、どのくらい死んだんだ﹂
﹂
﹁⋮⋮軍の古参はほとんど僕についている。だから中参、新参辺りが
⋮⋮﹂
﹁じゃあ古参はいるのか、戦力はまだ維持できるのか
か﹂
﹁てことは、これからは聖竜とかを中心にアタッカーするしかないの
てなら問題は無いはずだ﹂
﹁メインアタッカーはもう出来ないと思うけど、サポートなどに関し
?
48
!
﹁その必要は無いわ﹂
部屋ドアからアスナが顔を覗かせていた。
呼吸が多少荒く、肩が上下に動いている。
アスナが遅刻⋮⋮ってわけがないから、何が他のことをヒースクリ
フにでも頼まれて、それを今終わらせて走ってきた⋮⋮って感じだろ
うか。
﹁これからは、私、キリト、エイトマンがメインアタッカー、ディアベ
ル、ヒースクリフはサブアタッカー及びタンク。22層での経験を糧
にすれば充分戦えるはずよ﹂
﹁おお、アスナ君。ようやく来たか﹂
﹁ごめんなさい、用事があったので﹂
ペコリと頭を下げるアスナ。
おい、遅刻だったのかよ。用事ってなんだよ⋮⋮。
﹁異論はない、軍にメインアタッカーを務める度量は今ないからね﹂
現実逃避ってすごい︵但し現実は変わらない︶
﹁それでは、最後にフレンド交換をしておこうか﹂
ヒースクリフが解散間際にそんなことを口にした。
﹁そうね、交換しておいた方が何かと便利よね⋮⋮って言っても私ほ
とんど交換してるんだけど﹂
﹁僕もだな﹂
﹁俺も﹂
皆の視線が俺に集まる。
﹁お、俺も交換してありましゅ⋮⋮﹂
49
﹁私もだ、現在の攻略組トップの3人にメインアタッカーを譲ろう﹂
﹁ははは、冗談はやめてください﹂
﹁おいエイトマン、乾いた笑い声あげるな。目の腐りと相まって傀儡
人形に見えるぞ﹂
22層のあれをやれって
なんていい草だ、俺じゃなかったら今頃泣いて喚いてたぞ。
まじかよ⋮⋮メインアタッカー
なんかもう話進んでるし⋮⋮。
?
俺が口を挟む余地がないみたいだ、もう俺はボーッとしてよう。
?
﹁エイトマン君、交換しよっか﹂
﹁あっはい﹂
あっさり嘘を見破られ、皆とフレンド交換する。
⋮⋮⋮⋮メアド交換みたいなのに全然嬉しくねぇ。
50
宗三左文字
﹁キリト、ちょっといいか
﹁珍しいな﹂
﹂
これなん
?
﹂
いつも使っているお前のより刀身が長いな、the・日
本剣って感じだな。これがどうした
﹁刀⋮⋮か
それをキリトに手渡す。
ズッシリとした重さが手に伝わる。
そう言ってウィンドウを開き、刀を取り出す。
だよ﹂
﹁25層のラストアタックボーナス、伝えてなかったろ
25層でドロップしたこいつについて相談するためだ。
まあいい、俺はキリトに用があるんだ。
からな。
思い返せば、俺は確かに解散と言われた次の瞬間には背を向けてた
﹁ああ、いつもならすぐお前は帰るからな﹂
﹁⋮⋮珍しいか
﹂
解散後、俺はキリトを呼び止めた。
?
﹁そうだ。刀カテゴリーの武器なんだがな、それ、宗三左文字︵そうざ
さもんじ︶って言うんだが、多分織田信長の刀﹂
﹁へぇ⋮⋮だから炎に囲まれたのか﹂
﹁本能寺の変の演出かもな。だとしたら切腹しないと⋮⋮ってそれは
どうでもいい﹂
慌てて方向修正をする。
キリトと話すとさらっと変な話題に飛んでいくことがよくあるん
だよな。
ここからが本題だ。
かなりの要求値だな﹂
﹁これ、装備するには要求値が後少し足りないんだ。敏捷だからまだ
助かるんだが⋮⋮﹂
﹁お前の敏捷で足りないのか
?
51
?
キリトは持ち上げてみたり、振ってみたりして感想を言う。
?
?
しげしげと刀を見つめるキリト。
﹁ああ、俺のレベルだと1人だとモンスターのポップも遅いからな、だ
からーーーーーー﹂
メインアタッカーとなったからにはそれ相応の攻撃力を持たなけ
ればならないだろう。
今まではいいやと思っていたが今回ばかりはそうはいかない。
キリトとは友達、のはずだ。
だから、頼んでも断られることはない⋮⋮はずだ。
いいよ、俺で役立てるなら﹂
不安に包まれる俺は、なんとか言い切ろうと次の言葉を口から出そ
うとする。
﹁だからーーーーーー﹂
﹁レベリングの手伝いか
﹁ぁ⋮⋮お、おう⋮⋮﹂
あっさりと返事来た、拍子抜けだ。
そのせいか変な返事をしてしまった気がする。恥ずかしい。
﹁なんだよ、エイトマンが強くなるのは攻略組として嬉しいし、エイト
マンにお願いされるってのも珍しいしな﹂
﹁⋮⋮あー、⋮⋮なんだ、ありがとな﹂
﹁レベリング終わってからそれ言えよ﹂
ケラケラ笑うキリトを見ていると、本当にこいつとは友達になれた
んだなと、俺は素直にそう思えた。
ーーーー
キリトと協力してレベリングを始めて2時間。
﹂
やっと俺は宗三左文字を装備するために必要な敏捷値に達した。
﹁ついに、ついに装備できたぞ⋮⋮
とにするわ﹂
﹁おかげさまでスキルポイントも増えたから後で何かに振っておくこ
﹁俺の筋力値より高いな、この階層でそれはバケモノだろ﹂
まっている。
こんな敏捷値をこの階層で要求してくる装備なんて、絶対強いに決
!
52
?
﹁それより、どんな感じだエイトマン
食い気味に迫ってくるキリト。
俺も興奮気味だ。
回振っただろ
﹂
﹂
﹁多少は筋力も上げた方がよかったんじゃないのか
﹁かもな、今度は筋力上げることにするわ﹂
﹂
﹁前の刀とは刀身の長さも違うし、何より色がな。実際重い、キリト一
﹁おおっ、装備してる時としてない時じゃ、なんだか感じも違うな﹂
装備した宗三左文字も抜刀してみる。
?
︽緋扇︾
﹁自虐が激しすぎるぞ
﹂
太郎に真っ先に倒される役目の鬼だ﹂
﹁悪いが俺は鬼なんて大それたものじゃない。鬼は鬼でも下っ端で桃
な﹂
﹁敏 捷 高 い エ イ ト マ ン に 更 に 攻 撃 力 ま で 追 加 し た ら ⋮⋮ 鬼 に 金 棒 だ
かったんだよ﹂
﹁刀ってのは本来攻撃力くそ高いはずだからな、今までの俺がおかし
﹁すごい攻撃力だな、二撃目で沈んでたぞ﹂
大体なら三撃目でHPを0にできるが⋮⋮ーーーーーー
いつもの要領でスキルを発動させる。
﹁はぁっ
﹂
親しんだソードスキル
試しに近くにいたモンスターに向かってスキルを発動する。慣れ
ブンブンと振ってみる。重いからいつもより少し遅い。
?
?
強化とかもしていきたいな⋮⋮。
ふむ、新しい武器。
そんな俺にキリトは笑いながら、﹁どういたしまして﹂と言った。
慣れない言葉に背中が痒くなる。
﹁ああ⋮⋮あー、ごほん、ありがとなキリト﹂
﹁まあ、ボス戦までに装備できてよかったな﹂
キリトのツッコミがキレを増した気がする。誰のせいだよ。
!?
53
!
ん
﹂
前にキリトが武具店を紹介してくれるとか言ってたような
⋮⋮。
﹁そういえば、武具店紹介してくれるんじゃなかったか
﹁あー⋮⋮﹂
ギクリ、といった表情で目をそらすキリト。
おい⋮⋮まさか⋮⋮。
﹁その、なんていうかな、あるにはあるんだけどまだないっていうか﹂
ジトーっとした目で、逸らさずキリトを見つめる。
﹁まだ武具店建ててないみたいですすみません﹂
﹂
観念したのかキリトが白状した。
﹁まだ建ててない⋮⋮
﹁だよな
﹂
とでチャラだ﹂
﹁なるほどな、まあいいよ。このレベリングを手伝ってくれたってこ
﹁アスナの友人が、武具店を建てるらしいんだ、でもまだ先で⋮⋮﹂
?
﹁もちろん
﹂
﹁でも出来たらすぐ呼べよ﹂
!
楽しそうに話すキリトを見て俺も口を緩ませていた。
スラスラと会話ができる。
!
54
?
?
25層 宗三左文字が装備できてから3日後、ボス会議が行われた。
俺は軍が残していったマッピングデータを再度確認する。
アスナは前回俺らで話し合ったことを皆に伝える。
皆、特に不満はないようだ。軍に至っては申し訳ないという顔をし
ている者がほとんどだ。
そんなこんなで話し合いは終わった。
俺もさっさと帰宅しようと他の攻略組に紛れて立ち去ろうとする
と、肩に手を置かれた。
アスナだ。
数秒間、黙って見つめ合う。
﹂
やめろよ、目を逸らしちゃうだろ。
﹁エイトマン君、緊張してるの
やっとのことで口を開いたアスナ。
﹂
そこから飛び出した言葉は俺の心配だった。
﹁⋮⋮なんでそう思ったんだ
﹂
俺は帰る
﹁お前どんだけ俺の顔見てたのかよ、そんな微々たる差がわかるなん
てエイトマン検定準二級はあげられるぞ﹂
﹁なにその検定⋮⋮エイトマン君⋮⋮、いやエイト君
﹂
って、逆ギレっぽくして逃げよう
﹁なんだよエイト君って、俺からマンを取るんじゃねぇ
ぞ
﹁マンってそんな大事だったの
!
!
終わったようだ。
﹂
?
する。
いや由比ヶ浜ならもっとうるさいか
?
ツッコミしながら話を続けてくるあたり由比ヶ浜に似ている気が
﹁ほら、エイトマン君じゃ長いじゃない
だからエイト君﹂
話が長くなりそうだったので打ち切って逃げようとしたが失敗に
だなんて許すわけないでしょ
!?
55
?
﹁会議中もそわそわしてたし、何より目がいつもより腐ってるから﹂
?
!
!
﹁ああ、そうですか⋮⋮﹂
めちゃくちゃどうでもいい、という表示を醸し出しながらサラッと
その場を離れようとするーーーーーーが、俺の腕はがっしり掴まれ
る。
どんだけ俺を帰らせないんですか。
﹁大丈夫だよ、今回は前回みたいにキリト君とエイト君二人だけじゃ
ない、私もいるし、何よりヒースクリフ達のサポートもしっかりして
るわ﹂
﹁何が言いたい﹂
﹁だから、一人で背負い込むのはやめて﹂
﹁⋮⋮﹂
つい、現実での出来事を思い出してしまった。
だめだ、ここはゲームであって、現実のことを持ち出すべきじゃな
い。
開かれると同時に中に入り、陣形を整える。
⋮⋮おかしいな、いつもならすぐ灯などが点いて明るくなるという
のに。
﹁⋮⋮暗いな﹂
キリトが呟く。
俺は索敵スキル発動させてボスの襲撃に備える。
56
﹁忠告ありがとよ、明日に備えてさっさと寝ろ﹂
腕を振り払うと俺は宿に戻った。
後ろは振り向かなかった。振り向いたら、何かに負けた気がするか
ら。
ーーーー
﹂
ボス部屋前にて、今回のアタッカーの俺らは前に出る。
﹂﹂﹂
﹁皆、今回のボス戦も勝ちましょう
﹁﹁おおお
!
⋮⋮⋮⋮この先に軍のメンバーを殺したボスがいる。
アスナが扉に手をかけ、開く。
アスナの掛け声で士気は十分だ。
!!!
だが、何もいない、何も起きない。
﹁いないな、エイトマン﹂
キリトも索敵スキルを使ったのだろうか、そんな事を口にする。
まずいな、周りの奴らも不安に駆られてる。
なんとかしないと突然のことが起きたら対処が遅れる。
﹁⋮⋮そういえば、この前こんなスキル取ったな﹂
宗三左文字を装備するためにレベリングした後、余ったスキルポイ
ントで色々習得したのだ。
その内の一つがこれだ。
﹁︽暗視︾﹂
そりゃ暗い洞窟内の時とかこれあると便利
読んで字のごとく、暗い中も見えるようになる。
なんのためかって
だろ、松明持つと刀持ちにくいし。
︽暗視︾を使って見えたものは、無数のコウモリだった。
57
だが動いてない。石像みたいだ。
﹁キリト、オブジェクトとしてコウモリがたくさん飛んでる﹂
﹁なんでわかるーーーーーーその目、ああなるほどな﹂
察しがいい。
このスキルを使うと目が青くなるらしい、X線でも出てるのか
た。
デカイ⋮⋮いや、今までのボスより小さいか
俺はゆっくりと見上げる。
索敵に引っかかったところまで進んだが何もいないーーーーーー
?
コウモリの群れの突破すると、ようやく索敵に何かが引っかかっ
だ。
コウモリは余り関係ない、破壊可能オブジェクトの様なものみたい
颯爽と走り出す俺、走れエイトマン弾より速く∼。
﹁わかったわ﹂
してないのかもしれない﹂
﹁アスナ、ちょっと先陣切ってくる。コウモリで遮られて索敵が機能
?
?
﹁おいおい⋮⋮嘘だろ﹂
﹂
今までのボスより一回り小さいコウモリが、宙吊りで天井にぶら下
がっていた。
﹂
﹁グギャッ、ギャァァッ
﹁うおっ
﹂
距離を移動出来る。
﹁っと、ふぅ﹂
﹁どうだったエイトマン
﹂
﹁あー、なんていうかその。やばい﹂
﹁何がーーーーーーって、コウモリがいきなり攻撃始めたぞ
!?
遠くからさっき聞いた叫び声が聞こえる。
﹁最初にコウモリ倒すべきだったみたいだ﹂
グギァァッッ
﹂
コウモリの群れを一気に突き進む。俺の敏捷も合わさりかなりの
る。
刀ソードスキル、奥義技であり突進技でもあるスキルを発動させ
﹁︽散華︾
今やるべき事はーーーーーーとりあえず、仲間の元へ戻ろう。
刀を構える、だが全方位をコウモリに囲まれた。
﹁⋮⋮先にコウモリ全員倒しておくべきだったな﹂
ようになったのか。
索敵にも引っかかる。つまり、モンスターとなり俺たちを攻撃する
る。
その瞬間、今まで何の攻撃もしてこなかったコウモリ達が動き始め
気持ちの悪い声を上げながらデカコウモリが地面に降り立つ。
!
?
ーーーー
﹁うわああっ
﹂
﹁狼狽えるな、一匹一匹は強くない
﹂
俺たちは皆、コウモリに囲まれていた。
るようになった。
その声を合図に、部屋の灯が強くなり部屋全体が明るくなり、見え
!
ヒースクリフの声が聞こえる。
!
!!
58
!?
!
﹁皆、確実に一匹一匹倒していこう
ディアベルの声が聞こえる。
﹁そこだっ
﹂
全速力でそっちへ駆ける。
﹂
ガサリ、と周りのコウモリよりも一際大きい翼の音が聞こえた。
俺の神経は更に鋭く、深く研ぎ澄まされる。
!
﹂
一応私︽閃光︾なんだけど﹂
?
﹁うん
﹂
﹁ほら、あと少しでレッドゾーンに出来る。次のスタンでやるぞ﹂
スナがダメージを与える作戦だ。
皆がコウモリを倒している間に、ボスの速さについていける俺とア
言っておいてなんだが、めちゃくちゃ恥ずかしいなこれ。
﹁それに倣って言うなら俺は︽影︾だぞ﹂
﹁エイト君、流石に速すぎない
俺の後を追いかけてきたアスナだ。
襲いかかる。
固まっているボスにレイピアによる俺のスキルよりも鋭い突きが
﹁はぁっ
怯んだボスにスタン攻撃を与え、スタンさせる。
次のスキルへと繋げる動きも使いやすく重宝している。
モーションが短く、鋭い突きを相手に与える初期技だ。
刀スキル︽絶剣︾
!
スキル︽地獄耳︾
その名の通り地獄耳になるってだけだ、だが汎用性は高い。
﹂
ーーーーーーまた聞こえた。一際大きい翼の音だ。
﹁アスナ
ーーーーーーと、俺らの目の前からボスが消える。
行動パターンが変わるのか。
そこで丁度ボスのHPがレッドゾーンに入る。
再びボスを発見&スタンさせ、アスナの一撃を加える。
﹁わかってるわ﹂
!
59
!
俺は再びスキルを発動する。
!
﹁グギャ⋮⋮ギャァァッ
﹁エイトマン
﹂
どうなったんだ
﹂
ボスの叫び声を合図に、他のコウモリが一斉にボスへと集まる。
上を見上げると、ボスが宙吊りでこちらを見下ろしていた。
上からボスの声が聞こえる。
!
!?
わる﹂
見上げたままキリトに答える。
﹂
ボスの周りを飛び回るコウモリ、だが少しずつ少なっている⋮⋮
﹁⋮⋮⋮⋮吸収
?
﹁⋮⋮ボスのHPはレッドゾーンになった。たぶん行動パターンが変
!
大きい
ボス。
﹁ギィィャァァッッ
ーーーーーー
!!
﹂
!!
はまだ動かない。
くそ、動け、動け
﹂
﹂
﹂
﹂
動け
死にたくない
﹁ギィィッ
﹁嫌だ
硬直が解除された
!!
HPが一気に半分ほど減る。このままじゃーーーーーー俺の身体
﹁うわあああっ
不気味な奇声を上げ、翼をプレイヤーに打ち付けた。
近くにいたプレイヤーをターゲットに取ったのか、目が赤く光る。
まずい、ボスは既に次の攻撃動作に移っている。
他の皆も身体が動いていないみたいだ。
モーションが大きいが成功させると俺たちの身体が止まる攻撃。
まさか、今の金切り声は攻撃の一つだったのか。
!!
大きい金切り声をあげた。
その巨体をブルりと震わせ、先程までとは比べ物にもならないほど
回り
コウモリが全て消えた後に出てきたものは、今までのボスよりも一
?
"
﹁身体が、動かない⋮⋮
!!!
!
!
!
!
60
"
!
動け、俺の身体。
助けなければ、助けなきゃダメだ。
﹂
死者を出してはーーーーーー
﹁うおおおお
ーーーーーー間に合った。
﹂
!?
をーーーーーー
﹁ーーーーーー
間に合わ、ねぇっ
だ が こ の 程 度 な ら、い つ も の 要 領 で、一 度 下 が り、ス タ ン 攻 撃
を仕掛けるボス。
ターゲットが俺に切り替わったのか、恐ろしいスピードで俺へ攻撃
﹁おい、早く下がーーーーーーッ
﹂
体制を崩し、地面に落ちたボス。
ボスの翼を刀で斬る。
︽瞬間瞬足︾のスキルを発動させ、全力で走る。
!!
!?
なった。
なんでだ、いつもなら避けられたはずなのに。
﹁くそっ、たれ⋮⋮﹂
忘れていた、久しぶりに使ったからか。
︽瞬間瞬足︾のデメリットのせいだ。
俺の人生はこんなゲームの中で終わるのか
わかった時にはもう遅い、ボスの牙が目の前に見える。
ここで終わり
ふざけるな、死んで、死んでたまるか。
﹁エイトマン
﹂
だが、視界の端でキリトとアスナが動いていた。
するが、無意味だ。
こんなところでーーーーーー硬直した身体を無理やり動かそうと
?
ただでさえ防御力が低いんだ俺は、一撃でHPが3分の1ほどに
ボスの攻撃をモロに喰らい、倒れる。
!?
?
早く飲んで
﹂
!
61
!!
!!
キリトの攻撃でボスがよろめいた。
﹁エイト君
!
アスナがポーションを飲ませてくる。
そうか、俺が硬直解除されたってことは他の奴らも解除されたって
ことか。
﹁もうダメだよ⋮⋮一人であんなことしちゃ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮でも、一人助けられた﹂
俺が助けたやつも、今回復中みたいだ。
ホッと、胸を下ろす。俺のしたことは無意味じゃなかった。
それがわかっただけでもいい。
よろめきながらも立ち上がり、俺は言った。
﹁第二ラウンドだ。どっちが速いか、白黒つけようぜ﹂
これは死亡フラグじゃない。ただの、シンプルな勝負宣言だ。
理解しているのか、していないのかわからないが、ボスが再び俺を
ターゲットに捉えたのだけは、確かにわかった。
飛び回るボスに対して、俺は俊敏力で追いついていた。
!
ボスが金切り声を上げるモーションの最後に、ディアベルが何かを
62
どうやら飛んでいるのにも時間制限があるようで、ある程度飛ぶと
降りてくる。
敏捷が高い俺なら、降りた瞬間を叩ける。
だが、ボスも流石に反撃してくる。
﹁遅ぇよ﹂
﹂
そんな攻撃も、デバフなしの俺ならぬるりと避けられる。
﹁はぁっ
この動きは、さっきの金切り声か
﹂
まずい、ここからじゃ届かない。どうすれば⋮⋮⋮⋮。
!
そして、身体をブルりと震わせた。
飛び上がり、俺の届かない位置で停止する。
また叫ぶボス、やめろよ、耳障りなんだよ。
思い切り足を斬る。足の健を狙ったからクリティカルだ。
!
耳を塞げ
﹂
﹁皆
﹁
!
ディアベルの突然の命令。咄嗟に両手で耳を塞ぐ。
!
投げた。
ボスが声を上げた。
ーーーーーーと、同時にボスの目の前で破裂する。
その瞬間、耳を劈くような音が、耳を塞いでいても伝わってきた。
音響弾か⋮⋮
突撃ぃぃっ
﹂
﹂
!
かび上がる。
俺らの頭の上には︽Congratulations︾の文字か浮
ボスはポリゴンの欠片となり、消滅。
残り少ないボスのHPが0になった。
やっぱりお前はこのデスゲームで、重要なやつだ。
状況に応じて、咄嗟の判断、行動。
流石だ、ディアベル。
﹁おおおおっ
﹁皆
縛りにあっていない。
そしてその音によってボスの金切り声も遮られたのか、俺たちも金
あの音にビックリしたのかボスが目を回らせ、落ちてきた。
!
もう何度も見た、ボス討伐成功のお知らせだ。
63
!!!
!
年越し
﹂
﹁新年、あけましておめでとう
﹁おめでとう
﹂
は25の倍数の階層のボスは強いってことだろうか。
"
ギルドも強力なのが一つ、結成された。
血盟騎士団
"
﹂
夢 の マ イ ホ ー ム
キ ャ ッ シ ュ 一 括 働 か な く て も い い
!
﹁私の家よりは小さいわね⋮⋮﹂
﹁そりゃ副団長様と比べればな、てか帰れ﹂
す
そう、俺比企谷八幡はこの度、マイホーム⋮⋮家を買ったのである。
しないとな
﹁いいじゃないかエイトマン。ほら、家買ったならやっぱパーティー
﹁なんでここにいるんだよ⋮⋮﹂
⋮⋮⋮⋮まあ、それはともかく。
で誘われてないらしい。
俺も何回か誘われたが全て華麗にスルー、キリトは黒猫団にいるの
ヒースクリフを団長に、アスナを副団長とする
だ。
だが、それ以外の階層はそれほど強くはないボスだった。ってこと
マトのブレス攻撃など、異彩を放つ強力なボスはいた。
特に25層のコウモリの集団攻撃、吸収、巨大化や50層のティア
はそれで迷惑だが。
まあ炎で囲ったり固めてきたりするボスが頻繁に出てきたらそれ
た。
たが、それ以降はこれらに匹敵するようなボスはなかなか出なかっ
22層の多分織田信長や25層の大きいコウモリなどの強敵はい
攻略は現在52層まで進んだ。
SAOが始まってからだいたい1年が経った。
新年早々うるさいな、ゆっくりさせてくれ。
!
でも結局働かされる、黒いなぁこの世界は。
ごい、はちまんすごい。
!
!
64
!
!
﹂
﹁何よ、私たちがいたら悪いの
﹁悪いって言ったら帰るか
﹁帰らないわ﹂
﹂
?
にあるとか言うだろ
いや今日はクリスマスじゃないですよ
﹁ほら、年の計は元旦
それに対して俺はため息を一つ。
だ﹂
?
?
一年の計は元旦にあり
"
訂正箇所を伝える。
﹁それを言うなら
﹂
ですよねー、キリトは自分で買ったチキンをがぶがぶ食ってるし、
?
チキンを食べるのをやめて俺に言うキリト。
?
﹁そうそう だから元旦の日にエイトマンと一緒に入れたら来年ま
"
でずっと一緒だな、って思って﹂
⋮⋮⋮⋮なんだよ、キリトが可愛く見えてきたぞ
﹁⋮⋮その前にゲーム終わらせてやる﹂
﹁この捻デレが﹂
ここでも浸透してるんですねその造語。本当に誰が作り出したん
だが⋮⋮。
と、キリトと談笑しているとインターホンが鳴った。
え、まだ誰か呼んでるの
﹁はーい﹂
﹁お邪魔するね﹂
﹁失礼する﹂
ここ俺の家だよね
おい待て、なんでアスナが我が物顔で開けに行くんだ。
?
からな﹂
﹁アスナ君に誘われたのだ、エイトマン君の家には少し興味があった
な、なんで⋮⋮。
リフとディアベルだ。
入ってきたのは血盟騎士団団長さんと軍のリーダー⋮⋮ヒースク
?
﹁キリトが呼んでくれたんだ、新年だし一緒に過ごそう、って﹂
勝手に呼ぶなよ
!
65
!
!
3日前、俺の家にストーカーして付いてきた2人を無理矢理でも撒
くべきだったと今更後悔。
そんな後悔の最中、メッセージが届く。
﹂
お相手はアルゴ、メール内容⋮⋮﹃今すぐ隣の部屋に来イ﹄
ーーーー
キー坊とアスナだけが来るんじゃなかったのカ
﹁何の用だアルゴ⋮⋮飯でも欲しくなったか﹂
﹁違ウ
﹁そもそも2人が来ることも知らなかったわ﹂
スだナ
﹂
﹁まさカ、攻略組トップ5が揃い踏みだなんテ⋮⋮これは一大ニュー
嘆く俺を放置してアルゴが熱くなる。
いや、もういい⋮⋮。
なんで場所わかった、と聞いても﹁情報屋だから﹂としか返答が⋮⋮
た。
アスナとキリトが到着する30分前、こいつはいきなり俺の家に来
!?
頼ム
﹂
なんかアルゴの声が聞こえるんだけど﹂
興奮するな静かにしろバレちゃうだろ。
﹁おーい、エイトマン
ほら見ろ。
バレちゃっただろ。
﹁お、俺っちのことは言わないでくレ
﹁そんな事言われてもなぁ⋮⋮﹂
と、背後からドアの開く音がした。
1人で立ってて﹂
キリトが見に来たのか
﹁どうしたエイトマン
あー⋮⋮いや、何でもない﹂
!
よくもまあ俊敏に動けるな、流石鼠。
一瞬だけ索敵したら真上に反応が⋮⋮屋根裏か
目の前にアルゴはいなかった。
﹁は
?
!
?
?
66
!
!
﹁戻るか﹂
?
?
﹂
﹁皆待ってるぞ⋮⋮ん
﹁音
何か音がしないか
﹂
?
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
バキバキ、ドン
と屋根裏が突き抜けた。
しっかりとフラグを建てる俺、さて、あとは回収するだけだ。
誰か上に登ったよね
安かったしそこら辺まずいんじゃないかなー、あれれー⋮⋮さっき
値大丈夫だったかなー。
なんて冗談はいらない。⋮⋮そういえばここの屋根裏の木材、耐久
⋮⋮耳を澄ますと、ギシギシという音が聞こえる。きゃー卑猥ー
?
?
﹁はは、任せておケ﹂
控えめな胸を大きく張るアルゴ。
無い胸は張れない⋮⋮。
﹂
﹁それよりアルゴは何しに来たんだ
か
エイトマンを襲いにでも来た
﹁ほう、鼠か。君の情報は頼りになる、これからも頼むぞ﹂
左手にはしっかりチキンを持っているあたりふてぶてしい。
しょんぼりしているアルゴは部屋の隅でちょこーんと座っている。
﹁面目なイ⋮⋮﹂
ーーーー
キリトの目はさらに冷めていた。
わー、大きい鼠だなー︵白目︶
﹁⋮⋮ちゅ、チュー﹂
その目を見て、アルゴはまずいと思ったのか、まさかの行動に出た。
キリトが冷めた目で見ている。
!
て全然捕まらないもの﹂
!
﹁本気で泣くぞ﹂
﹁エイトマン 号泣。攻略組トップの裏で何が⋮⋮
けるカ﹂
って見出し付
﹁エイトマン襲うなら全力で私たちがサポートするわ。いつも速すぎ
﹁おい、なんで意図的に俺を襲わせる発言するんだ。全力で逃げるぞ﹂
?
67
!
?
?
﹁やっぱ嘘ですすみません﹂
情報屋怖い、ほんと怖い。
情報って何よりも武器になるんだな。
﹁情報屋さん、せっかくだし何か情報屋らしいことしなよ﹂
ディアベルが意見を出す。
なら早速質問コーナーに出すための情報を⋮⋮ハッ﹂
その言葉にアルゴは目を輝かせた。
﹁いいのカ
思わず熱くなったアルゴは、辛うじて理性で抑えた。いや抑えられ
てなかったな前半。
﹁ははは、まあ良いだろう。普段から頼りにさせてもらっているのだ
し、礼も必要だろう﹂
﹁ヒースクリフ⋮⋮いや、でもなぁ﹂
﹁いいじゃない、たまには答えてあげても﹂
﹁そうだぞエイトマン、諦めろ﹂
なんで俺が攻められてるのさ。
やっぱりこの世は理不尽で不条理だ。抗議するぞ
かなか記事に出来なかったからこれはすごいことになるゾ
﹂
︽閃光︾アスナ⋮⋮あわわわ⋮⋮こんな面子に質問が出来るなんテ、な
﹁︽神聖剣︾ヒースクリフ、
︽軍の頭︾ディアベルに︽黒の剣士︾キリト、
コーナーが始まった。
そんな俺の心の中の抗議︵総勢八万人︶もむなしく、アルゴの質問
!
じゃねーよ。
﹁さ、早速質問ヲ⋮⋮す、好きな食べ物や飲み物はなんダ
割と普通な質問だ。
﹂
短く略されてるのもそれはそれでアリだけどな。⋮⋮って中二病
かったのん
俺だけなんか長いもんな⋮⋮もっとこう、短くてカッコイイのな
﹁知りたくなかった事実⋮⋮﹂
呼んでるゾ﹂
﹁︽紫色の影︾エイトマンってなんかしっくり来ないかラ、
︽影︾って皆
﹁いいから早く質問しろ、⋮⋮って俺の通り名はないのかよ﹂
!
?
68
!?
?
ヒースクリフに質問することってあんまりないからこんなもんな
のか
﹂
﹁ふむ、特に好き嫌いは余りないが強いて言うならば、甘いものだな﹂
﹁その心ハ
﹁ハハ⋮⋮記事にしないとナ﹂
全てが終わったあとアルゴは恍惚とした表情をして呟いた。
バーに喧嘩を売ってると思われたくはない。
しっかりアルゴに口止め、団長直々のお誘いを断るなんて他のメン
ここオフレコで。
まあ俺はソロプレイだからな、皆の前でもしっかり断ったぞ。あ、
ハプニングもあった。
途中、俺がヒースクリフに皆の前で血盟騎士団に勧誘されるなどの
たら誰が勝つか、などなど。
どんな武器を使っているのか、この中で最強なら誰か、PvPをし
その後もアルゴの質問は続いた。
ラ暮らしたい。
ぞ。楽するために考えた方が楽しいに決まってる、俺は楽してダラダ
なんかの科学者並の考え方だな、損得で考えたら人生つまらない
た後はコーヒーを飲む。これで脳がしっかり活性化するのだ﹂
﹁やはり、頭を使うと糖分が欲しくなるからな、そして甘いものを食べ
?
こんな仕事人間にはなりたくないなぁ⋮⋮。
69
?
迷いの森
今日も今日とて迷宮潜りだ。 現在は74層の迷宮を攻略中だ。 目の前にいるトカゲソルジャーのモンスターを斬る。⋮⋮まだ、生
きている。 ﹁っ⋮⋮ふぅ﹂ や は り 5 0 層 を 超 え る と 雑 魚 モ ン ス タ ー と の 戦 闘 も キ ツ く な る。
初期のことを思い出し、
︽観察眼︾スキルを駆使してクリティカルを
狙い、一太刀で沈めるのを繰り返してきた。 この動きが一番効率よく敵を無力化、倒すことが出来る。 そんなある日、暇潰しにステータスを見ていたら妙なスキルを見つ
けた。 70
ーーーーーー︽抜刀術︾ 今日はそれの、試し斬りだ。 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 刀を鞘に収める。攻撃をやめたんじゃない、寧ろ逆、これは攻撃動
﹂ 作だ。 ﹁ふっ
﹂ ?
索敵に何かが引っかかった。多分これはプレイヤーだ。 ⋮⋮ーーーーーー
﹁他にもスキルあるみたいだが⋮⋮まあ今のスキルポイントじゃあな
だが、シンプルなだけに、使いやすい。 けというシンプルなスキル。 まあ、鞘に収めてる刀を抜刀しながら斬りつけ、再び鞘に収めるだ
今のは︽抜刀術︾カテゴリーのスキルの一つ、︽居合︾。 ﹁攻撃力は高いみたいだな﹂ 鞘に収めるまでが︽抜刀術︾のスキルだ。 せる。 一息で刀を抜刀し、残り僅かのHPのクラゲ型モンスターを斬り伏
!
危なかった、抜刀術を使っている最中に出くわしたら面倒なことに
なっただろう。 まあここもネトゲだ、妬みやらなんでもあるだろう。 ぶっちゃけこのスキルの出現方法とか条件とか全くわからん、情報
屋に言ったって意味無い。 なら、最初から言わずに黙っておけば変に絡まれることもなくな
る。 ﹁今日は帰るか﹂ 刀の耐久もそろそろ危ない。耐久などに関してはNPCに任せて
るが、より強い刀となると⋮⋮魔剣クラスか⋮⋮。 索敵に引っかかった人物と帰り際に会い、会釈を交わし迷宮を出
た。
ーーーー
俺は今、35層の森にいる。
攻略は74層まで進んでいるのにだ。
攻略組の俺はここでサボっているわけじゃない。コラ、そこ、今ど
うせダラダラしてるんだろうって思っただろう。
俺だって仕事してる⋮⋮これは、まあ依頼みたいなもんだ、クエス
トじゃないがな。
最前線で色んなやつに頼み回ってる奴がいて、話を聞いて、胸糞悪
かったからだ。
俺はハッピーエンドが好きだ。
俺の人生もハッピーエンドのために主夫エンドにさせてください。
﹁ここにいるはずなんだがなぁ⋮⋮﹂
その時、森の奥から女の叫び声がした。いや⋮⋮女というより女の
子の叫び声だな今のは。
この森は割と強めのモンスターが出る。
まあ74層のモンスターでも倒せる俺からしたら雑魚同然、サーチ
アンドデストロイ⋮⋮はしないが。
71
とりあえず声のした方に全力で走る、俺の敏捷は現在トップクラス
だ。
辿り着いた先には、女の子が蹲っていた。そして、周りにはモンス
ターが、襲われているのか。
これは助けなければ⋮⋮だがここからじゃ間に合わない。
仕方ない、人前ではあまり使いたくないが⋮⋮。
﹁︽居合︾﹂
モンスターがエフェクト音を発した時には俺は既に刀を鞘に収め
ている、またつまらぬものを斬ってしまった⋮⋮。
って、抜刀術スキル早速人に見せちゃった。
おっ
やばいかなー、なんて思いつつ助けたやつを見ると、ほとんど涙目
で俺のスキルなんて見てなかった。ほっ、助かった。
とりあえず手を差し出す。
﹂
﹁すまん、お前はビーストテイマーなのか
﹁は、はい
﹂
?
もう。
﹁ちょっと待ってろ﹂
キリトにメッセージを送る。
72
やだ、何このイケメン。
﹁ピナ⋮⋮ピナが⋮⋮﹂
﹁ピナって⋮⋮なんだよ﹂
﹂
!
⋮⋮つまりはなんだ、ビーストテイマーって奴なの
﹁私のお友達なんです⋮⋮
はぁん⋮⋮
か
?
ほうほう、そういえばどっかの階層で⋮⋮よし、ここはキリトに頼
!
?
﹁ほら、立て。何してんだ﹂
﹁た、助けていただきありがとうございます⋮⋮﹂
助けたのになんでそんな悲しそうなの 俺に不満でも
?
だが、どうやらそういうわけではないみたいだ。
?
それなら合点行くが⋮⋮よくわからんな。
?
﹃ビーストテイマーのペット的なの、死んだらどうすればいいんだ
すぐに返信が来た。
﹃47層の思い出の丘に、復活アイテムがある﹄
よし、キリトにお守りは任せよう。
用事ってなんだよ﹄
﹃俺、用事があるんだ。迷いの森に来てくれ﹄
﹃なんで俺が
よし、交渉成立っと。
﹃お前⋮⋮覚えてろよ。今行く﹄
いですか﹄
﹄
﹃βテスターに借りがあったな俺って。おや、βテスターさんじゃな
?
﹂
﹁今から攻略組でも超強いお兄さんが来るから待ってろ。そいつと一
緒に47層まで行ってもらえ﹂
﹁47層には何があるんですか
﹂
﹁なんで俺が⋮⋮﹂
そこで、隣の子をチラリと見るキリト。
ギョッとする。
﹁だ、ダメ⋮⋮ですよね⋮⋮ひっく﹂
涙を目に溜めている、こんなの断れるわけないだろ
純粋な小町だなこれ。
﹁この子のペット死んだから47層行って復活させて上げろ﹂
﹁おい待て、いきさつくらい話せ﹂
﹁じゃ、後は頼んだ﹂
﹁来たぞ、エイトマン﹂
っと、もう到着か、早いな。
この子、めちゃくちゃ喜んでるな。
﹁本当ですか
﹁お前のピナ⋮⋮お友達が生き返るアイテムがある﹂
?
﹁おう、さんきゅ﹂
﹁ったく⋮⋮仕方ないな。二度目はないからな﹂
涙目。
ちなみに小町なら泣いたふりをした後、ケロりとする。お兄ちゃん
!
73
?
!?
﹁あ、ありがとうございます
あっ、私、シリカって言います
﹂
!
えーっと⋮⋮﹂
﹁キリトだよ、んであいつがエイトマンな﹂
﹁はい
かシリカ﹂
﹁エイトマンの用事にも興味があるが⋮⋮まあいいや。じゃあ行こう
﹁じゃ、用事あるからすまん、じゃあな﹂
シリカ、シリカねー、覚えた覚えた。
!
そのついでみたいな紹介やめろ。
悲しくなるだろうが。
74
!
タイタンズハンド
待ち合わせ場所に到着。
ーーーーーーが、索敵に誰かが引っかかる。
﹁出てこい、場合によっちゃ刀を抜くぞ﹂
﹁そんな怖いこと言うのはおよし、私だよ、ロザリア﹂
﹁何の真似だ、俺を仲間に入れておいて暗殺でもする気か﹂
﹁いや、単に実力試験だよ。私の隠蔽を見破れるならかなりの実力者
だね﹂
隠蔽スキル低すぎるだろ。
なんの待ち伏せ場所かーーーーーータイタンズハンドの集会場だ。
今回の俺への依頼は、クラン:タイタンズハンドのメンバーを牢獄
エリアにぶち込むことだ。
依頼人は仲間をこいつらに殺された。⋮⋮つまり、タイタンズハン
﹁⋮⋮おう﹂
どこの馬の骨⋮⋮ねぇ⋮⋮。攻略組に疎い連中はキリトとかアス
ナとか知らないみたいだな。
俺の存在自体知らない奴も多そうだが。
ーーーー
何故こうなった。
俺は
75
ドはオレンジギルドだ。
だが、確定証拠がないため捕まえられない、だから証拠を目の前で
叩きつけて牢獄にぶち込む。
だから、まずは潜入だ。
﹁他のやつも出てきな﹂
隠蔽も使わず何してるんだ⋮⋮。
ゾロゾロと他のメンバーも木の影などから出てくる。なに そ
れで隠れてたつもりなの
?
﹁あんたがどこの馬の骨か知らないけど、使えるもんは使っていくよ﹂
?
タイタンズハンドの内部を調べるために潜入したんだ。
答えろッッ
なのに、なんでーーーーーーなんで、47層の思い出の丘にいるん
だッッ
アイテムを取りに来たらしい。
﹁ロザリア、どうやって取るんだ
?
⋮⋮ん
なんか見たことあるなあいつ⋮⋮。
うってわけですね。
丘 の 頂 上 へ と 歩 く 二 人 組 が い る。ほ う ほ う ⋮⋮ あ い つ ら か ら 奪
﹁まあ見てな﹂
﹂
⋮⋮⋮⋮という茶番やめにして、どうやら今回は思い出の丘のレア
!!
だと⋮⋮。
﹂﹂
行くよお前達
﹂
!
そこをどいて下さい
﹂
次はその男を魅力でもして仲間にした
?
﹁よし、アイテム取ったみたいだね
﹁﹁おうっ
遅かったああああ
﹁あら、シリカじゃないの
!!!
﹁あなたには関係ないでしょう
!
﹂
!
そういえばキリト達も47層来てるんだった⋮⋮まずい、このまま
の⋮⋮アカン。
黒ずくめで盾なしの片手剣使い⋮⋮それと小柄などう見てもJC
?
!
わ、渡しませんよ
これは
﹂
!
ねぇ﹂
﹁っ
!
な⋮⋮。
﹁それで
﹂
あんた達はどうするんだ
﹁⋮⋮はぁ、シリカ、ちょっと下がってて﹂
﹁死にたくなかったら、アイテムを渡しな﹂
ロザリアの一声で男達がキリトを囲む。
﹂
やりな
?
﹁決まってるさ、あんた達
!
!
?
まああいつらじゃキリトには勝てないだろうし、キリトも楽勝だもん
あれが復活アイテムか⋮⋮キリトが面倒くさそうな顔をしている。
!
76
!!
﹁そ う は い か な い ね、そ の レ ア ア イ テ ム、ど う し て も 欲 し い ん だ よ
!
?
﹁は、はい⋮⋮大丈夫ですか
﹁大丈夫だ、安心してくれ﹂
﹁やりなっ
﹂
﹂
攻略組トップの、︽黒の剣士︾だ
﹂
出てきな
﹁攻略組トップがこんなところにいるはずがないだろう
⋮⋮。
﹁最終兵器⋮⋮
索敵には誰も⋮⋮﹂
﹂
こいつ
呼 ば な い で ぇ ぇ ⋮⋮。最 終 兵 器 と か そ ん な か っ こ よ く な い か ら
たら、こっちだって最終兵器を出すわよ
こうなっ
﹁黒ずくめの装備に、盾なしの片手直剣⋮⋮ロザリアさん
﹁お前たちじゃ、いつまで経っても俺を倒せないよ﹂
⋮⋮まあ、自然回復がなぁ⋮⋮。
キリトはそれらを全て避けずに受ける。
キリトに切りかかる。
﹁﹁うおおおおおっ
﹂﹂
男達も警戒する。
そう言って、キリトが前に出る。
?
﹁エイトマンさん⋮⋮
なんで⋮⋮﹂
﹁なんで、エイトマンが⋮⋮﹂
俺も覚悟を決めた。キリトと一戦交える覚悟、だ。
隠蔽スキルを解除し、現れる。
﹁俺だよ、キリト﹂
?
﹂
!
配はかけたくない。
なら、俺がやるべき事は⋮⋮
﹁⋮⋮いいんだね、任せても﹂
﹁ロザリアと他のやつら、先に帰ってろ。すぐ追いつく﹂
!
ここでロザリア達を捕まえることも出来るが、キリトやシリカに心
そんなキリトを倒すには⋮⋮いや、倒す必要は無いな。
俺の速度に反応できるのは、恐らくキリトだけ。
﹁待て、エイトマンーーーーーーッ
﹁俺が何やろうと、俺の勝手だろ。⋮⋮行くぞ﹂
!?
77
!
!
!
!
!
!!
!
﹁早く行け⋮⋮ッ
﹂
﹂
キリトが仰け反る、今だっ
﹁くっ⋮⋮エイトマンっ
きゃぁっ
﹂
!
そして、そのまま転移結晶を使う。
シリカが手に持っていたアイテムも奪い取る。
﹁えっ⋮⋮
﹁悪いなキリト、初めからお前を倒すつもりなんて、ない﹂
!
!
衝撃波を飛ばす、遠距離系の攻撃だ。
︽鎌鼬︵カマイタチ︶︾刀カテゴリーの技だ。
納刀している刀に手をかけ、一気に抜き放つ。
﹁さっきも言っただろ。⋮⋮俺の勝手だ﹂
﹁なんでだ、エイトマン。なんで⋮⋮﹂
﹁行ったか⋮⋮。⋮⋮よし﹂
キリトが攻めてくる、剣をいなして交わす。
!
ーーーー
﹁やれたのかい
﹁流石だね
﹂
あんた、もっといい報酬をーーーーーー﹂
シリカから取ったアイテムを見せる。プネウマの花だ。
﹁⋮⋮ああ、アイテムはここに﹂
転移が終わった瞬間、ロザリアが問いかけてくる。
!?
な、何を⋮⋮﹂
はやめておけよ、一応俺は攻略組トッププレイヤーの︽紫色の影︾だ。
﹁それでさっさと牢屋へ飛べ。さもないと、全員殺す。⋮⋮ああ、抵抗
転移結晶を後ろの奴らの足元に投げる。
後ろにいる他のメンバーも急な出来事に動けずに固まっている。
首元の刀を、カチャリと動かす。
﹁黙れ、今から俺は本当の依頼内容をこなすだけだ﹂
﹁⋮⋮
その動作が見えなかったのか、一瞬固まるロザリア。
そこまで言った辺りで、ロザリアの首元に刀を当てる。
!
78
?
エイトマーーーーーー﹂
﹁待て
!
﹂
﹁転移
!
!?
PvPでは最強とも言われている﹂
最後は少し盛ったが、まあこれくらい言っとかないとな。
全員飛んだのを確認して、ロザリアの首元から刀を離す。
﹁お前も、さっさと飛べ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮あんた、一生恨むよ﹂
﹁俺から言うことは一つだ、簡単に人を信じんな﹂
ロザリアが牢獄へと飛んだの見届けたあと、俺はキリトへメッセー
ジを送った。
ーーーー
﹁何のようだ、オレンジギルドのメンバー﹂
﹁⋮⋮シリカは連れてきてないな。ほらよ﹂
キリトにプネウマの花を渡す。
キリトは怪訝そうな顔をしてそれを受け取る。
そして、俺のオレンジカーソルに気づいたようだ。
たんです﹂
﹂
79
﹁お前⋮⋮まさか﹂
﹂
﹁タイタンズハンドのやつらなら全員牢獄だ。⋮⋮それが依頼だった
からな﹂
﹁⋮⋮汚れ役は全部自分が引き受けます、ってことか
﹁違ぇよ、胸糞悪かっただけだ﹂
なんでシリカが⋮⋮。
﹁そんなことないですよ
﹁誰も傷つかない世界の完成だ、簡単だろ﹂
半開きの口から笑いとも取れるような息を吐く。
﹁はっ⋮⋮﹂
﹁他人⋮⋮じゃない。友達だからだ﹂
﹁これが、俺のやり方だ、他人に指図はされたくない﹂
オレンジギルド、レッドギルドなんて、吐き気がする。
?
﹁だって⋮⋮キリトさんが行くところにエイトマンさんが来る気がし
﹁シリカ⋮⋮ついてくるなって⋮⋮﹂
キリトを睨む。ーーーーーーキリトも驚いていた。
!
﹁⋮⋮これはシリカの夢だ、いい子はもう寝ている、だからこれは夢だ
からなシリカ﹂
やめるんです
﹂
﹂
誰も傷つかない世界なんて完成して
だって、私や、キリトさんが傷ついてるんですから
﹁お子様扱いやめてください
ませんよ
⋮⋮そう言われると、言い返しづらい。
﹁会って1日の俺のことで傷つくのか、どんだけ感情豊かなんだ﹂
﹂
﹁エイトマンさんだって、会って1分以内の私を助けてくれました
更にはピナを生き返させてくれる手段を考えてくれましたよ
まずい、論破された気がする。
﹁あはは⋮⋮諦めろよエイトマン﹂
!
﹁はぁ⋮⋮⋮⋮まあ、これからはこういうのは控えることにする﹂
﹁控えるんじゃなくて
﹁善処する﹂
﹂
!
!
!
るような⋮⋮。
レッドギルドだろ。それがどうした﹂
﹁エイトマン、ラフィンコフィンって知ってるか
﹁ああ
﹂
?
ぷいっ、とそっぽを向くシリカ。なんかところどころ小町に似てい
﹁むむ⋮⋮まあいいです
!
ろ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮常時隠蔽使うか﹂
﹁もう認識されなくなるぞ、それ。⋮⋮近々ラフィンコフィンと戦う
ことになる、それだけだ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮わかった﹂
ラフィンコフィン、レッドギルドか。
本当、聞いてるだけで胸糞悪いな。
シリカとキリトに別れを告げて、俺は家に帰った。
80
!
!
!
﹁タイタンズハンドの後ろ盾にはラフィンコフィンがいる。気をつけ
?
リズベット武具店
タイタンズハンドを牢獄にぶち込んでからはや数日。
未だに74層の迷宮は突破できていない。
74層の雑魚モンスターが前までより強いのが問題だろう。
気晴らしにでも、ブラブラと街を歩く。
気づいたら、俺の家がある48層に着いていた。
﹁⋮⋮そういや、48層って何があるんだ﹂
ここで買った家は安くて大きかったから特に立地条件とか気にせ
ずに買った。
だから48層に具体的に何があるのかなどはわからなかった。
せっかくだし、街巡りするか。
ボーッとしながら街を歩く。
その時。
PKの類ではないよな。
うちの店の武器壊してくれちゃって
﹂
る。そもそも右に出る友達がいないんだけどな。
﹁フラグ建築乙、じゃあな﹂
﹁待ってくれエイトマンーーーーーー
っと、誰かにぶつかりそうになった。
触らぬ神に祟りなし、回れ右してマイホームに帰る。
!!
﹂
!
81
曲がり角を曲がったあたりで女の人の叫び声が聞こえた。
圏内で叫び声⋮⋮
俺は悟った。
﹁何が手違いよ
﹁ち、違うんだエイトマン、これはちょってした手違いで⋮⋮﹂
俺に気づいたキリトは慌てて言い訳を言う。
﹁⋮⋮何やってんだキリト﹂
⋮⋮いやこいつキリトだろ。
黒ずくめの男がピンクの髪の色の女に罵声を浴びさせられていた。
声がした方に向かう。
だが、もしものことだ、確認してみるか。
?
人を観察する能力に関しては俺の右に出る者はいないと自負でき
!
サッと横に避けて、まあ謝罪の一つでもしようかと相手の顔を見た
どうしたの
﹂
ら美人さん⋮⋮ってよく見知った顔だ。
﹁エイト君
?
﹁なんで止めてあげないの
エイト君の根性無し
﹂
!
∼⋮⋮いつの間に仲良く⋮⋮。
﹂
まじキリトフラグ建てすぎじゃないの
﹁って、リズ
ーーーーーーアスナ
﹂
?
どっかで聞いたような⋮⋮。
じゃあこいつがアスナの友人の⋮⋮﹂
﹁どうしてくれるのよ全く
リズ
?
﹁おいエイトマン
﹂
なんで助けてくれなかったんだよ
﹂
いやお前がフラグ建てたりしたん
いやまあ、俺が確かに悪いんだけどさ﹂
﹁ほー、この刀いいな。⋮⋮ん
だろ
!?
?
まだ収まってないぞ⋮⋮。
﹂
﹁あー⋮⋮えっと、なんかいい刀とかあるか
﹁刀ですか、少々お待ちを
!
﹂
顔に怒マークを付けられながら言われても⋮⋮キリトへの怒りが
﹁いらっしゃいませー﹂
ほらな、絶対あの女と何かしたに決まっている。
﹁フラ⋮⋮
?
!
ふむふむ、と頷きながら見ていたらキリトに話しかけられた。
ら、多分ここの店長の自作だろう。
あちこちに武器が置いてある、市販のものよりステータスが高いか
武具店ってこうなってるんだな⋮⋮。
ーーーー
店の中に入った。なんだよ、ぬるりとって、俺はミミズか。
目の前で3人が状況説明し合ってるのを傍らに、俺はぬるりと武具
とうの本人もここがそうだとは知らなかったみたいだけどな。
﹁じゃあここがキリトが俺に紹介するはずだった武具店か﹂
アスナの友人の武具店⋮⋮ん
﹁へ
!
!?
?
あらら∼、キリトのことと聞いたらアスナさん、すぐ動きましたね
!
﹁いや、キリトが揉めてるらしくてな。さっさと帰ろうかと﹂
?
?
82
?
?
?
元気よく店の裏に走っていく、えーとリズとか言ったかな。
﹁なんだ、普通にいいやつじゃねぇか、何したんだよキリト﹂
﹂
そう呟いたがキリトには聞こえていなかったみたいだ。
まあ、俺が知る必要はない。
知るべきなのはーーーーーー
﹁キリト、ここが前言ってた武具店のことか
﹁こ、こ、これって⋮⋮﹂
﹂
武具店とか初めてだからよく
それを見せたら、急に目の色が変わった。えっ、なんかした俺
宗三左文字を鞘から出す。
﹁これなんだが、耐久値戻したら強化も頼みたい﹂
﹁はーい、どの武器ですか
営業スマイルで振り返った店長。
さっさと伝えることにした。
なんて声をかければよくわからなかったから、とりあえず用件を
﹁⋮⋮⋮⋮鍛治を頼みたいんだが﹂
宗三左文字の耐久値も減ってるしな。
鍛治職人がいる、せっかくだし強化やらしてもらおう。
﹁鍛治か、ありがとよ﹂
たはずだ。リズってのはここの店長のことだ﹂
﹁防具とかはなさそうだな。⋮⋮あ、確かリズが鍛治スキルを持って
わからねぇんだが﹂
﹁ほーん、ここって武器以外ないの
店がアスナの友人の店だったとはな﹂
﹁みたいだ、さっきアスナが紹介してくれた。まさかたまたま入った
?
﹁宗三左文字じゃないの
あの織田信長が使ってたっていう刀
なんでそんなに飛びつくんだ⋮⋮。
俺が困惑してると、アスナが横から入ってきた。
つの間にいたのよ﹂
﹂
﹁あー、すみません。この子刀剣女子で⋮⋮ってエイト君じゃない、い
!
83
?
﹁ああ、25層のLAB︵ラストアタックボーナス︶だ。それが何か﹂
?
?
⋮⋮お、おう。そうだな⋮⋮。
!?
﹁刀剣⋮⋮女子⋮⋮ああ、はいはいあれね﹂
刀剣女子、多分刀の擬人化した某ブラウザゲームにハマっている女
子のことだろう。
俺も艦とか隊のこれくしょんするゲームやってたしな。でも名前
聞いただけで飛びつくなんて怖いのです。
そうなんじゃダメよ、ね
の
﹂
﹁任せなさい
耐久値戻した後はどんなステータスを上げてほしい
鍛治頼んだだけなのに⋮⋮。
もう疲れた⋮⋮。
﹁⋮⋮⋮⋮ともかくなんでもいいから鍛治頼む﹂
﹁大丈夫よリズ。エイト君優しいからタメ口でも﹂
度は悪かったな。
明らかにしょんぼりするリズ。店の立場からすると確かに今の態
﹁はっ、す、すみませんお客様⋮⋮﹂
!
﹁どうぞ
失敗せずに+4まで強化したわよ﹂ 店の奥からリズが俺の刀を持って現れた。 ﹁お待たせしましたー﹂ ーーーー
なんだろうな。
⋮⋮キリト曰く美少女らしいんだけど、まあ美少女と言えば美少女
元気いいなー。
﹁おう⋮⋮﹂
﹁かしこまりー、終わるまで店の品見ていってね﹂
まってるからこの際一気に消化だ。
素 材 を ド サ り と 渡 す。今 ま で 強 化 し て な か っ た か ら 溜 ま り に 溜
︽抜刀術︾でワンパンする気満々だし。
かっこよく言ったが、要は攻撃力を上げてくれってことだ。どうせ
れ、素材はこれで出来るだけ頼む﹂
﹁あー、そうだな。⋮⋮じゃあDPS︵秒数ダメージ効率︶を上げてく
!
﹁おお⋮⋮まだ素材沢山残ってるが⋮⋮﹂ !
84
?
﹁+5以上は博打になるから⋮⋮ね
﹂ キリトか⋮⋮ってなんで考えたことがわかった﹂ に嘘をついているんだな
ははーん⋮⋮わかったぞ、これは俺をもっと強くさせたくないため
ぞ、忠告はしておく﹂ ﹁顔 に 出 て た。+ 4 よ り 上 を 目 指 す の は 本 当 に 気 を つ け た 方 が い い
﹁うおっ
﹁ギャンブルの一種だぞ﹂ なんだよ博打って、ギャンブルじゃないんだから。
?
﹂ 見たところ投擲スキルとかもあげているみたいだし、こん
な短い刀もいいんじゃない
﹁はい
高い武器揃えていてありがたい。 また裏方の方に入っていくリズ。ここの店、なかなかステータスが
﹁刀ね、ちょっとこの前作ったのがあるから⋮⋮﹂
か﹂ ﹁ん、じゃあお代はこれで。⋮⋮そうだな、あとなんか刀でも買ってく
可能数に達して+0だったら元も子もないしな。 ⋮⋮ってわけではなく、多分成功率が極端に下がるんだろう。強化
!
研
よ
﹂ ﹁見た目が織田信長の武器に似ているから、名前はそれに因んで
薬
見せてきたのは、ほぼ短剣と言ってもいいほどの短さの刀だ。 ?
そうだ。 ティカルUP︾などがある。ステータスもなかなかだしこれから使え
でもよく見てみると、特殊スキルで︽投擲ダメージUP︾や︽クリ
"
魔剣クラスには流石に
﹁キチンと素材があれば、本物にほぼ近い薬研藤四郎も作れるんだけ
どね⋮⋮﹂ しょんぼりするリズ。 いやこれも充分ステータス高いですよ
負けるが。 ﹁いや、これで充分だ。お代払っとくぞ﹂ いい買い物だった、リズベット武具店、覚えたぞ。
?
85
!
!
!
⋮⋮薬研藤四郎のことですかね⋮⋮。 "
あんたは素材集めよ﹂ ホクホク顔で店を出ようとしたら、後ろからリズの声が聞こえた。
﹁キ・リ・ト∼
﹁た、助けてくれエイトマン⋮⋮﹂ そんな目で見られたら断るにも断れねぇだろ⋮⋮全く。 ﹁何したんだキリト﹂ ﹁⋮⋮ そ の、こ こ の 武 器 壊 し ち ゃ っ て。そ れ で 素 材 を 集 め る こ と に
⋮⋮﹂ ﹁はーん⋮⋮なるほどな。わかった、これ借りな﹂
そう言って、俺は近くにあった刀︵なるべく安いの︶を手に取った。
﹁ま、待ってええ ﹂と言うリズの静止を無視し、鍛えてもらった宗三
左文字で叩き斬った。 パリーン、とポリゴンの欠片となる刀。 リズは床に突っ伏していた。 ﹁これで俺も同罪、素材集め手伝うわ﹂ ﹂ ﹁ありがとうエイトマン 流石にスノードラゴンのエリアに1人で
行くのは辛かったんだ
⋮⋮えっ、ドラゴンのところ行くの
床でプルプル震えているリズ。 ﹁キリト君
エイト君
⋮⋮⋮⋮本気で怒るわよ﹂ 不意に、後ろから声をかけられた。 ?
!
!
?
この後、キリトと俺は説教を受けたのであった。
86
?
!?
アスナが全部見てました⋮⋮。 ?
スノードラゴン
﹁俺から離れるなよ﹂
﹁う、うん⋮⋮へっくち﹂
﹁ああ、寒かったか。ほら﹂
イチャコラしやがって⋮⋮マフラーを巻いてあげるとかイケメン
かよ⋮⋮。
こんな面倒だとは思って
なんで俺はこんな吹雪の中を歩いているんだ。
いや、俺が自分からやったんだけどね
なかったんだよ。
まあキリトと俺のコンビなら55層のモンスターなんて瞬殺だろ。
ここのスノードラゴンからクリスタルインゴットというアイテム
が取れるらしい、それがあれば魔剣クラスの武器も製造可能だとか
﹂
⋮⋮俺も一つくらい欲しいな。このままじゃ俺織田信長になっちゃ
う。
﹁キリト、あんたは強そうに見えるけどさ⋮⋮あの人は強いの
﹂
﹂
?
ほら︽紫色の影︾って呼ば
俺だけを置いていくとかないよな
﹁弱いからやっぱり帰っていい
﹁おいエイトマン
冗談だわ⋮⋮。
﹁リズ、エイトマンのこと知らないのか
トップなのね﹂
一応ってなんだよ、一応って。てかあいつ呼ばわり
立派な攻略組トップだわ
!?
﹁ア ル ゴ さ ん の 記 事 に 書 い て あ っ た よ う な ⋮⋮ 一 応 あ い つ も 攻 略 組
れてる⋮⋮﹂
?
?
﹂
こ、これって⋮⋮
﹂
した石で覆われたところに出た。
﹁わぁっ
﹂
﹁クリスタルインゴットか
﹁違うわよ
!
87
?
?
?
そんな会話︵主にキリトとリズ︶が続き、気づいたら一面キラキラ
!
?
!
違うのかよ
!
﹁おいキリト、これなんだよ﹂
キリトがウィンドウを見せてくる。⋮⋮クリアインゴット⋮⋮。
﹁スノードラゴンを倒すしかないのか﹂
確かこの下にはーーーーーー
﹂
﹂
﹂
というドラゴンの雄叫びが聞こえ
視界の橋でリズがせっせとクリアインゴットを集めている。俺も
少し集めておこうかしら⋮⋮。
その時、グオオオォォォッ
た。
えっ、何かしたっけ
﹁刺激してないのに⋮⋮全くなんなんだ﹂
まずい、ロックオンされてる
あの馬鹿野郎が⋮⋮
﹁リズが巣に近づきすぎた
はぁ
﹁あわわわ⋮⋮た、助け⋮⋮﹂
スノードラゴンの牙がリズを襲う。
怯むと同時にスタン攻撃を浴びせる。
その直前に、リズの前に立ち、牙を刀で弾く。
ガキィィン
まずいっ⋮⋮
きゃああああ
﹁エイトマンーーーーーー
﹁きゃ
﹂
ステージトラップ、大きな穴。
ばす。
﹁リズ
﹂
!
こっちに
﹂
!
﹂
!
キリトとリズの声が薄くなる。
﹁リズ
﹁え、エイトマン⋮⋮
つまりーーーーーー俺が落ちる。
人を引けば反作用で自分が前に出る。
キリトの方に行け
そこに落ちるリズーーーーーーの手を、掴んでキリトの方に投げ飛
!
ドラゴンが翼を大きく振りかぶり、強風を起こした。
﹁で、でも⋮⋮﹂
﹁ほら、立て。さっさと転移結晶使え﹂
!
﹁くっ⋮⋮くそっ⋮⋮たれ
!!
!
?
!
!
!
!!
!
!
88
?
!?
!
!
どんどん下に落ちていくのがわかる。
これってステージトラップだから、死にはしないよなぁ、上がれる
かなぁ。
そして、視界が暗転した。
ーーーー
﹁⋮⋮⋮⋮ん⋮⋮暗いな⋮⋮﹂
落ちてからどのくらい経った
倒れた状態のまま、上を見るとまだ雲に覆われている空が見えた。
﹁そんな時間は経ってないか﹂
よく耳をすませば、キリトの声も微かに聞こえる、多分本当にほと
んど時間は経っていないんだろう。
﹁︽暗視︾⋮⋮よし、バッチリ見える﹂
こんなところで使える素晴らしいスキル。ありがたや。
周りを見渡すと色々散乱している。
なんか肉とか置いてあるし⋮⋮餌
﹁よし、こんなもんか﹂
入れられるだけ入れる。
必要なものしか入れてないからな。
俺のストレージはほぼ空。
﹁アイテムストレージには⋮⋮お、入る﹂
︽クリスタルインゴット︾か、いや知ってるわ。
ステータス画面が出た。
﹁うおっ﹂
インゴットに近づき、手を触れる。
どれくらい貴重かわからんが、出来ればたくさん持ち帰りたい。
﹁⋮⋮持ち帰ることできねぇかなぁ⋮⋮﹂
理由として、︽クリスタルインゴット︾が置いてあるもの。
多分ここ、ドラゴンの巣だな。うん。
﹁なん⋮⋮だと⋮⋮﹂
その隣には⋮⋮⋮⋮これはまさか。
?
さて、後はどうやって出るかだな⋮⋮。
89
?
そこで俺は、まずいことをしてしまったのではないかと悟った。
質問するぞ。
ここはどこだーーーーーードラゴンの巣だな。
これは何だーーーーーークリスタルインゴットだな。
もう一つ質問するぞ。
これから、何が起きる
⋮⋮君のような勘のいいガキはーーーーーーグオオォォォッッ
キリトはどこ行った
ドラゴン来たぁっ
なんでだよ
見知らぬやつが巣に来て貴重なアイテムを持
ち帰ろうとするとか激おこ間違いなし
くる。
﹂
こうなったら一か八かだ。ドラゴンの背中に飛び乗る
﹁うおおおっ
た。
キリトがある程度削ったのか
ターン変わって面倒になるのかな
重力に逆らう感じすげぇ、エレベーターの高速バー
ジョンみたいだ。
うおおおっ
そんなことを考えていたら、ドラゴンが巣を飛び出た。
?
でもここまで削ったなら倒しておけば⋮⋮ああ、ここから行動パ
1人だと倒すのが面倒とか無理とか言ってたもんな⋮⋮。
?
しかし、よく見てみるとこいつ、HPバーがあと1つしかないな。
灯台もと暗し。お前にピッタリな言葉だスノードラゴン。
﹁ふぅ⋮⋮背中ならドラゴンも見つけられないだろ﹂
隠蔽スキルを使い、バレないようになんとか背中によじ登る。
ドラゴンが俺を見失ったのか暴れる。いや翼にいます。
﹁グオオオォォォッ
﹂
タイミングを合わせて、落下してくるドラゴンの翼にしがみつい
!
あたふたする俺を無視してドラゴンが空から落下、いや飛び降りて
!
これやばいだろ
!!
?
いつの間にかキリトも転移して帰ったのか、おい助けろよ俺。
!
!?
!
!
90
!
!!
!!
はっ、巣から出たってことは⋮⋮。
﹁⋮⋮転移結晶、使えるみたいだな﹂
早速転移して帰ろうとした俺の脳裏にある事が思い付く。
﹁︽抜刀術︾の威力、せっかくだし試すか﹂
かなりの高さまで飛び上がっているドラゴンの背中に立ちながら
考える。
ここからなら、例え落ちても落下中に転移はできるはず。
よし、やるか。
﹁ふぅ⋮⋮ーーーーーー﹂
深く息を吐く、呼吸を整える。
﹁行くぞ﹂
抜刀術スキル︽居合︾
刀を抜き、その勢いのまま切りつけ、再び納刀。
たったこれだけの動作。
防御を捨てた特攻だ。
叫ぶドラゴン、まだ削りきれないか。
初級スキルじゃそんなもんだよな。
でも、︽抜刀術︾のスキルは続けて次の技に繋げることが出来る。
納刀するモーションの最中に、次のスキルの発動を促す。
身体が動く、アシストによって身体が勝手に次の動作を終える。
﹁弐ノ太刀︽稲妻︾﹂
その名の通り、稲妻の如く敵へと迫り、一太刀で斬り捨てるスキル。
ちなみに、弐ノ太刀の部分はオリジナルだ。中二病心が疼いてだな
⋮。
その威力は、ドラゴンの首さえも落とした。
﹁やっぱ、恥ずかしいなこのスキル﹂
ドラゴンを倒したことで素材などがストレージに入ったのを確認
した。しっかりクリスタルインゴットも手に入っている。
俺は落下しながら転移結晶を使った。
ーーーー
﹁ふぅ⋮⋮﹂
91
家に着いた途端、だらけてしまった。
どのくらいだらけたかと言うと、ライオンのオスでもこうはならな
メッセージか⋮⋮﹂
いレベルのだらけさ。まじ俺百獣の王。
﹁ん
視界の端でメッセージアイコンがピコピコ光っている。
そんなにピコピコするなよ、リンゴにペン刺すぞ。
﹄
メッセージを確認する、キリトからだった。
﹃エイトマン、いつの間に脱出したんだ
助けろよな、本当⋮⋮。
続けてメッセージが来る。
﹃スノードラゴン倒したのか
流石だなエイトマン。リズには話つ
⋮⋮⋮⋮クリスタルインゴットは分けてやるか。
再びメッセージが来たが、俺は開かずにそのまま寝た。
ベッドで仰向けになり、目を閉じる。
み﹄
だくわ。明日リズに武器作ってもらうから話つけといてくれ、おやす
﹃勝手に脱出した。スノードラゴン討伐したからこの素材は俺がいた
だらけきった俺は返信をする。
ああ⋮⋮助けるためにもう一度行こうとしたのね。
層のお前の家にいることになってるんだから、ビックリしたぞ﹄
﹃助けに行こうとして、お前の居場所を確認したらいつの間にか48
?
﹁そ、そう
ならいいわよね
﹂
﹁おかげさまでスノードラゴン討伐できたし別にいい﹂
﹁そ、その⋮⋮落ちる前に助けてくれて、あ、ありがと⋮⋮﹂
本当は残りHPが少なかったからなんだけど⋮⋮まあいいや。
﹁スノードラゴン倒せるくらいにはな﹂
﹁エイトマン⋮⋮あんたって強いのね﹂
ーーーー
けておくよ、てかもう寝るのか。おやすみエイトマン﹄
?
手のひら返しが早いやつだ。
?
!
92
?
政治家にでもなったらどうだ。
﹁そうだ、これからは私のことリズって呼んでもいいわよ
なんだよ、もっと大きい声で言えよ﹂
ほら、助けてくれた時だって⋮⋮﹂
﹁あん
素材渡して
﹂
﹁だ、だから、り、リズって呼んでも⋮⋮﹂
ほら
﹁ふーんだ、適当に作って⋮⋮って今﹂
言った。
?
﹁何か希望することってある
﹂
俺のはどうなるんだろうか。
ほうほう、あの水色
青色の武器かそれか。
⋮⋮ほ、
店 の 外 で ブ ン ブ ン 剣 を 振 っ て い る キ リ ト を 指 さ し な が ら リ ズ は
!
﹁適当に作るのか、へぇー⋮⋮﹂
!
ほら、キリトのだってちゃんと作っ
!
﹁聞こえないぞ﹂
﹁も、もういい
!
﹁わかったわかった。ほらよ、リズ﹂
!
ちゃんと作るから
﹁う、嘘よ
!
﹂
てるわよ
!
﹁リズ、ありがたく使わせてもらうぞ﹂
でも、鍛冶をする人のスキルにも依存しただろう、この強さは。
りゃ強くなるに決まっている。
スノードラゴンの鱗とクリスタルインゴットを使った武器だ。そ
器だ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮俺の宗三左文字よりステータスが高い⋮⋮魔剣クラスの武
﹁どう⋮⋮かな﹂
手には、キリトと同じような色の刀を持って。
リズが出てきた。
それから、約十分ほど。
⋮⋮やっぱ武器作るのって大変なのか。
いつになく真剣な表情でリズは店の裏に入って行った。
﹁わかったわ﹂
﹁会心と攻撃力が高いやつ、なるべく軽く﹂
?
93
?
﹁ふ、ふふ⋮⋮どうよ、私の凄さは
この武器の名前は
﹂
﹂
﹁本当にサンキューな。これで攻略もしやすくなった。⋮⋮そういや
の方が絡みやすい。
緊張が途切れたのか、リズの態度がいつものに戻った。まあそっち
!
﹁紫苑の輝き、って意味か。この刀に合うな﹂
紫苑色をした刀が光を反射する。
それがどうにも眩しくて、俺は目を細めてしまう。
?
別に無理してアスターシャインなんて呼ばなくて
﹂
そ、そうだな⋮⋮何を焦ってるんだこいつ。
もいいものね
﹁そそそうよね
﹁別にいいと思うが、多分これからは略して︽紫苑︾って呼ぶだろうし﹂
﹁刀の武器なのに英語って⋮⋮い、違和感、あるかな
﹂
﹁えーと⋮⋮Aster Shine⋮⋮アスターシャイン⋮⋮﹂
?
⋮⋮えぇ
任せなさい
﹂
!
と胸を張るリズ、男らしい
﹁まあ、色々サンキューな。また機会があったら鍛治頼むわ﹂
﹁
ドン
!
﹁エイトマン。どんな武器になったんだ
﹂
﹁魔剣クラス。試し斬りと並行して迷宮攻略するぞ﹂
﹁お お ⋮⋮ エ イ ト マ ン が や る 気 に ⋮⋮ っ て 魔 剣 ク ラ ス
そうか。ドラゴンの素材も使ったのか⋮⋮﹂
後ろを見ると、リズが手を振っていた。
俺も軽く手を振る。
恥ずかしいな、こういうのって。
⋮⋮ あ っ、
それを隠すようにして、俺はキリトと共に迷宮へと向かった。
!?
?
94
!
!
!
﹁キリト、いつまでも振ってないでどっかでモンスター斬りに行くぞ﹂
!
!
ラグーラビット
マルキュウマルマル。
今日はいい朝だ。
リズに作ってもらった刀、紫苑が朝日を反射してキラキラ輝いてい
る。
あんな気持ちだ。
いい刀を見ると心が洗われる⋮⋮ほら、ゲームでも強力な武器手に
入れると嬉しいだろ
ていうか反動でリアルに戻ったらニートになりそう⋮⋮。
もーーーーーーうぉっ
!?
こ の 森 に は 様 々 な モ ン ス タ ー が い る、中 に は S 級 の 食 材
迷宮までの道のりで森を通過する。
ーーーー
ない
俺が自分から進んでこんなに働くなんて、明日は槍でも降るんじゃ
流石にもう遅いかと思ったが、まあやることもないし行くか。
7時に送ってきていた、早起きだな。
内容は、迷宮探索に行こう的な話か。
メッセージを確認すると、キリトから一件来ていた。
?
薬研
を手に取り戦闘態勢に入る。
目の前にナイフが飛んできた。それを慌てて避ける。
すぐに
"
!?
せて便利なんだよな。
まさか人がいるとは⋮⋮ってエイトマン
!
それよりあそこにーーーーーーいた
!
ちゃうだろ﹂
﹁ごめんな
い。
てか、キリトは何を探してるんだ
視線の先を追うと、うさぎのモンスターが⋮⋮。
?
2時間で探索やめるとかもっと働けよ。俺の分まで働いてくださ
いつの間にかキリトは帰りの道を歩いていた。
﹂
﹁ゴメンで済んだら警察は⋮⋮ってキリトか、驚くな、俺もびっくりし
﹁すみません
﹂
この武器、リーチ短いけどスピードが極端に早いからサッと取り出
"
!
95
?
﹂
あれS級食材のラグーラビットだわ。
﹁次こそ⋮⋮⋮⋮ふっ
﹂
ーーーー
﹁なんでアスナが⋮⋮﹂
﹁何よ、私がいると悪いの
﹂
なんだかすみません⋮⋮。
それを仕舞うと苦笑いで答えた。
キリトは二本目の投擲準備をしていたところだった。
﹁はは⋮⋮相変わらず速いなぁ﹂
手に入れたラグーラビットの肉をキリトに見せる。
﹁やったぞキリト、今夜は兎鍋だ﹂
刀スキル︽絶剣︾でラグーラビットを真っ二つにした。
も、それに近い行動は取れる。
︽抜刀術︾は使ってないが、まあこの距離ならシステムアシストなしで
俺の身体は勝手に動いた。
る。
それに驚くラグーラビット、飛び上がって今にも逃げ出そうとす
﹁キュゥ
刺さってしまう。
だが狙いが逸れたのか、ラグーラビットに刺さらず、近くの地面に
キリトが投擲スキルでラグーラビットを狙う。
!
﹂
﹁私コンプリートしたし、料理スキル﹂
だけ俺が頑張ったか⋮⋮
﹁おまっ⋮⋮なりたけのラーメンとMAXコーヒーを作るためにどん
ね、私が作るわ﹂
﹁エイト君の料理スキルじゃ何が作られるかわかったもんじゃないわ
たって言ったからだな。口が軽すぎる。
てたら、帰り道にアスナに捕まって、キリトがS級食材をゲットし
俺の料理スキルでラグーラビットを調理しようとしてウキウキし
俺の家には、現在キリトとアスナがいる。何故だ⋮⋮。
﹁いやそんなことないです﹂
?
!
96
!
﹁アスナシェフ、料理はお任せしました﹂
﹁ふふん、エイト君の家、結構調理器具揃ってるわね、助かるわ﹂
鼻歌交じりに料理を始めるアスナ。
俺はキリトの方をチラリと見る。
キリトはソファに座ったまま、自分のステータスを見ていたよう
だった。今更何見てるんだ⋮⋮。
ていうかコート脱げよ。
そ、そうだな、コート脱がないとな、
﹁いつまでそんな格好してるんだよキリト。てか今更ステータス見て
てどうした﹂
﹁いっ、いや、なんでもない⋮⋮
はは﹂
何を慌ててるんだ⋮⋮。
アスナの手料理で興奮してるのか
﹁出来たわよー﹂
そう言って、アスナが料理を持ってくる。
この匂いは⋮⋮シチューか。
﹁キリト君、いつまでも座ってないでこっち来てよ﹂
﹁あ、ああ⋮⋮﹂
ってことだな
オドオドした状態のキリト⋮⋮ははーん、女の子の手料理を食べる
のなんて初めてです
!
くってるぜ
︵ただしぼっち︶
やっぱり煮込んだわ﹂
﹁シチューか。美味しそうだな﹂
﹁ほら、エイト君早く座って。どうぞ、召し上がれ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮いただきます﹂
スプーンに手をつけ、シチューを一口分掬って食べる。
﹁⋮⋮美味いな﹂
そんなに下が肥えてるわけじゃないが、味の善し悪し程度はわか
る。
97
?
!
残念だな俺は既に小町の手料理を食べまくってるから耐性付きま
!
﹁どう調理しようか悩んだんだけどね、ラグーなんて言うくらいだし
!
これはかなり美味い、料理スキルコンプリートの称号を持つだけは
ある。
﹁シチュー以外も作ったからどんどん食べてね﹂
﹁アスナは強いのに料理まで上手いんだな﹂
おっと、キリト君が早速ラノベ主人公を始めましたね。
2人が仲良く話す中俺は影になる、僕は影だ⋮⋮。
だけど、友達がいる食事も、案外悪くは無い。
ーーー
﹁ご馳走様でした﹂
﹁お粗末様でした﹂
﹁いやー、美味しかった﹂
キリトが紅茶片手に満足気に言う。
アスナも嬉しそうだった。
のか。
アスナはわからないのかキョトンとしている。
エイトマンがいれ
キリトは笑ってしまったのを取り繕うがごとく俺に話しかける。
﹁そうだ、エイトマンも月夜の黒猫団に入るか
ば心強いな﹂
﹁キ リ ト、お 前 ク ラ ン 入 っ て て も ソ ロ プ レ イ に 近 い 動 き し て る じ ゃ
ねぇか⋮⋮﹂
98
﹁本当、美味しかったな。さて、食べるもん食べたしもう用はないよ
な﹂
﹁何ですぐに帰宅させる発言するのよ、まだ用はあるわよ﹂
フォークを弄びながらアスナは言う。
﹂
パーティー﹂
﹁エイト君はいつまでソロプレイするつもりなの
﹁⋮⋮⋮⋮ぼっちに何言わせるんだ﹂
﹁本当にそれが理由なら私が組んであげようか
﹁それはいい提案だな⋮⋮だが断る﹂
﹁ぶっ﹂
?
キリトが吹き出す、突然のジョ○ョネタについ吹き出してしまった
?
?
﹁そりゃまだ攻略組に入れるレベルには達せてないだろうからな﹂
﹁お前の大丈夫の基準が高すぎるんだよ、十分強いだろ﹂
﹁はい、話を逸らさないのエイト君﹂
迷宮で会ったとき
ピシャリと言われる。このままなんやかんやで終わらせようとし
たが、アスナはそんな気毛頭ないようだ。
﹁はぁ⋮⋮1人の方が気が楽なんだよ﹂
﹁ふーん⋮⋮⋮⋮最近エイト君何か隠してない
も微妙に違う動きでスキル使うし⋮⋮﹂
何でそんな微妙なことがわかるんだよ、どんだけ俺のこと好きなの
⋮⋮上手く言えないが﹂
﹁それは俺も思ったな、なんかいつもより速い、というかなんというか
?
︽抜刀術︾の使い過ぎが原因だろうな。最近、雑魚相手には︽居合︾で
速攻倒してるから身体がそれを覚えちまったんだろ。
いつもの要領でやろうとするとつい︽抜刀術︾使いそうになるから、
動きが微妙に止まるとか、多分そんな感じ。
﹂
キリト達の前じゃ隠さなきゃダメだからなぁ⋮⋮バレたら面倒だ
ろうし。
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮気のせいだろ﹂
長い長考の末、そんな言葉を発する。
﹂
﹁その長い空白の間に何を考えてたんだ
﹁空は何故青いか﹂
﹁ここでそんなこと考えるのか
?
﹁あー、アスナ﹂
アスナ達が家を出る直前、そうだ、これは言っておかないとな。
﹁おう、帰れ﹂
﹁そうね、あんまり長居しちゃあれだものね﹂
﹁それじゃ、俺達はこの辺で帰ることにするよ﹂
俺を疑う視線は消えなかった。
だがアスナはそうはいかない、今回は食い下がってくれたが、尚も
キリトは割とお馬鹿な子だった。
!?
99
?
﹁⋮⋮何
エイト君﹂
﹁えーっと⋮⋮その、シチュー美味かった、ありがとな﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮え、えぇ、どういたしまして﹂
あちゃー、アスナめっちゃビックリしてたよ。
キモがられたかな⋮⋮そうだとしたら悲C。
﹁じゃあな﹂
﹁じゃあね﹂
﹁またな﹂
ガチャり、とドアを閉めた。
ーーーアスナsideーーー
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
何かがおかしい、エイト君は。
絶対に何かを隠してる、パーティーになってなんとかそれを暴こう
としたけどやっぱり対人防御固いわね⋮⋮。
⋮⋮そうね。スキル詮索はご法度だものね﹂
﹁あんまり詮索はするなよ、アスナ﹂
﹁⋮⋮
キリト君も、か。
考えてもわからないことをいくら考えても意味が無い。
今考えるべきことは、74層の突破のこと。
﹂
﹂マークを浮かべるキリト君に私は言っ
そのために何をするのが最善かーーーーーーチラリとキリト君を
見る。
キリト君と目が合う、﹁
た。
﹁私とパーティー、組まない
?
?
100
?
﹁ああ⋮⋮﹂
!
The Gleam eyes
おはよう諸君。
見てくださいこのアイテム
今俺はエギルの店へにやって来ている。
﹁エイトマンさん
シリカと一緒に、だ。 なんだよほんと、年齢制限どうなってんの
﹂
嬉しそうな顔で俺にアイテムを見せてくるこのロリっ子。
れて色々連れ回されたのだ。
街中のベンチでボーッとしながら座ってたらシリカに話しかけら
!
⋮⋮﹂
﹁それより、何の用で来たんだ
﹂
年下とか小町でお腹いっぱい、俺の満腹中枢は十分刺激された。
ら無理です。
そもそも相手が同年代でも無理ですし、年上も陽乃さん思い出すか
﹁しねぇよ、てかどんな印象持たれてんの俺
﹂
﹁おいエイトマン、流石にその子に手を出すってのはいくらお前でも
?
?
﹁それなら私と行きますか
﹂
べ、別に悲しくなんかねぇよ
慰められる俺。
﹁それは⋮⋮まあ、元気出せよ﹂
マップで位置確認したら2人で一緒に挑んでた﹂
﹁⋮⋮⋮⋮キリトからも、アスナからも迷宮攻略のお誘いがなかった。
?
!
﹂
?
﹁俺は仕事は極力したくない、働いたら負けだからな﹂
﹁1人で迷宮行ったりはしないのか
気のせいか、ツインテールも垂れ下がった気がする。
しゅん、となるシリカ。
﹁そうですか⋮⋮﹂
﹁シリカのレベルじゃ最前線は危ないからな、ダメだ﹂
嬉しい提案だ、だがそうはいかない。
シリカが俺を慰めるかのごとく、そう言ってくる。
?
101
!
﹁大 人 の 俺 か ら す る と、そ の 考 え は や め て お い た 方 が い い と 思 う が
⋮⋮﹂
でも、少し前までは1人で迷宮挑んでたんだよなぁ。
うーむ、と少し考える。
﹂
﹁⋮⋮たまには、1人で行くのもいいか﹂
﹁考え直したか
﹁さんきゅ、エギル。初心は忘れるべからず、だからな﹂
﹁そうだな、初心は⋮⋮って最初はソロプレイだったのな﹂
エギルの言葉を右から左へと垂れ流して、シリカの方に向き直す。
﹁シリカ、俺は今から迷宮攻略をしてくる。お前はあのおじさんとお
喋りして飯を奢ってもらってから帰るといい﹂
﹁そうですか⋮⋮迷宮攻略、大事ですもんね、仕方、ないですよね⋮⋮﹂
シリカは悲しそう言う、やめろ、守りたくなっちゃうだろ。
その顔を見るとすごく申し訳なくなる。
﹁あー⋮⋮なんだ、今度この埋め合わせはするからな﹂
﹂
﹁いいんですよ、元々は私が誘ったんですから。⋮⋮⋮⋮でも、また今
度も一緒にいてくれる提案はとても嬉しいです
﹂
ところどころ、モンスターを倒した跡があるな。
ーーーー
その場から離れ、転移装置から74層迷宮区まで飛んだ
﹁私子供じゃありません
﹁じゃ、俺は行くわ。エギル、子守頼んだぞ﹂
うが。
まあさっきレベル的にキツイって言ったからってこともあるだろ
した。
迷宮に付いていく、なんて言葉が出なかっただけでもシリカは成長
!
いる。
これを辿ればキリトに会えるんじゃないのか
?
必要ないアイテムは取らないからか、ドロップアイテムが散乱して
?
!
102
?
そんなことを考えていたら、ピコん、とメッセージが来た音がした。
誰からだ
?
キリトからだった。
﹁ーーーーーーまじかよ⋮⋮﹂
慌てて走り出す俺、丁度迷宮にいてよかった。
キリトから送られたメールには74層のボス部屋までのマッピン
グデータ、それとーーーーーー。
﹃軍がボスに挑んでいる﹄
この一文、恐らく時間なく最低限の文字にしたんだろう。
多分、伝えたかったことはーーーーーー﹃ディアベル反対勢の軍が、
ボスに単独で挑んでいる﹄、だ。
まだ、ディアベル反対派存在してるのかよ⋮⋮。
﹁⋮⋮クソが﹂
﹂
歯ぎしりしながら俺は全速力で駆けた。
ーーーー
﹁邪魔、だっ
躊躇する素振りすら見せずに刀が一閃を走る。
トカゲ型のソルジャーが真一文字に切り裂かれる。
という叫び声が耳に届く。
10秒時間稼ぎ頼む
﹂
キリトに渡されたマッピングデータによるとそろそろボス部屋だ。
うわあああっ
ボス部屋が近い
クライン
﹂
﹁ーーーーーーいた
﹁アスナ
!
﹂
羊の頭をしている、悪魔型モンスターか
﹁きゃあっ
アスナがボスに吹っ飛ばされる。
﹂
見た目通りパワーも高いみたいだ。
﹁おらぁっ
そしてボスの目にはキリトが映る。
クラインが斬りかかるが、あえなく吹き飛ばされる。
!?
ボスの名前は﹃The Gleam eyes﹄
は中にいるみたいだ。
キリトが後ろに下がりステータス画面を操作している。軍の奴ら
!
!!
103
!
!
!
!
!
!
﹂
﹁キリト君
まずい、まずいまずい
︽抜刀術︾を使うべきか
﹂
ーーーーーーっなんて考えてる場合じゃねぇ
﹁もう、どうにでもなれっ
﹁グオオオッ
﹂
﹂
10秒はもう経つぞ
⋮⋮くっ
﹂
!
﹁エイトマン
﹁早くしろ
﹂
!!
だ。
﹁エイトマン
﹂
!
それを右手の剣で間一髪で防ぐキリト。
防いでしまっては攻撃が⋮⋮いや、違う
もう一つ、剣がある。
﹂
﹁惚けてる暇があったら、早く援護しろ、それか軍の奴らを外に運べ
﹁な、なんだありゃあ⋮⋮﹂
キリトは左手で剣を握っているボスを切りつける。
!
麻痺効果が切れたボスがキリトに切りかかる。
トがボスの前に立つ。
キリトの命令通りすぐに下がる。俺と入れ替わるようにしてキリ
下がれ
両腕に麻痺効果を付与できた、これで十分時間稼ぎはできるはず
﹁ギャアアアアア
︽居合︾に続けて、︽稲妻︾を使用する。
!
今にもキリトに襲いかかろうとするボスの腕をぶった斬る。
即座に︽抜刀術︾スキル、︽居合︾を使う。
!
!!
でも、キリト達の前で使ってしまったら、絶対バレる。
!? !
キリトはステータス操作をしていて動けない。
﹂
﹁くっ⋮⋮
!
!
!? !!
!
キリトのスキル⋮⋮多分二刀流だろう。
それが終わるタイミングで俺の︽居合︾を浴びさせる。
連続攻撃によってボスが動けないでいる。
104
!
!
﹁エイトマン⋮⋮まさか⋮⋮
﹁余 計 な こ と は 考 え ん な
﹂
﹂
目 の 前 の こ い つ を 倒 す こ と に 集 中
﹂
2.4.6ーーーーーー16連撃の大技か
大技なら、硬直も長い。
だが、俺ならカバーが出来る。
る。
﹂
﹁グオオォォッッ
﹁らああぁっ
﹂
︽大袈裟︾ーーーーーーボスの身体をなんの抵抗もなく刀が通り抜け
あの2つは使いやすいだけだ。
何も︽抜刀術︾のスキルは2つしかないわけじゃない。
!
二刀流の脅威のスピードで剣が振り抜かれる。
﹁スターバースト⋮⋮ストリーム⋮⋮
ボスがスタンする。
︽居合︾︽稲妻︾を順番に浴びせる。
だーーーーーーっ
!
!
分までを切り裂く。
﹂
鞘に納めた状態からでは使えない、唯一の技だ。
﹁オオオオッッ
﹂
︽Congratulations︾
リームにより、ボスは倒された。
硬直が解除されたキリトの、2回目の大技⋮⋮スターバーストスト
﹁はああああ
残念だったな、相手が俺だけだったら良かったものの。
お前が見るべきなのは、俺じゃない。
﹁俺を見てんじゃねぇよ﹂
その目を睨み返す。
ボスの目が俺を捉えた。
大技のため、俺の硬直も長い。
ボスのHPバーが、ぐんと減る。
!!
105
!!
!
!!
抜刀術スキルから繋げるこの技は、相手の肩から刀が入り、胴体部
!!
!!
﹂
その文字が浮かび上がった。
ーーーー
﹁倒した⋮⋮のか⋮⋮
く。
そのキリトを支えるアスナ。
﹁本当に、馬鹿なんだから⋮⋮
﹂
!
ぜーっ
﹂
﹁流石エイトマンとキリトだ
てめぇらなら勝てると俺は思ってた
ジロりと目だけで訴えかける。
た、なんだよ。
大きな溜息をつきながら伸びをしていたらクラインに腹を叩かれ
﹁はぁーーーーーーっぶふぉっ﹂
疲れているようだ。
HPが満たんになるのを確認してから、ドカりと床に座る、流石に
アスナにそう言い、俺はポーションをグビッと飲む。
﹁今更、終わったことを悔やむなよ、今は勝てたことを素直に喜べ﹂
ロに入れば死んでいたかもしれない。
現にキリトと俺はHPが黄色ゲージになっている、ボスの攻撃がモ
アスナに怒られる俺とキリト。
⋮⋮
死んじゃうかと思ったんだからね
安堵した表情になるキリト。それと同時に力が抜けたのかよろめ
それに対して俺は無言で頷くだけだ。
キリトがふらつきながら言う。
?
部って誰
﹁それはそうと二人共、なんだあのスキルは
﹂
なんだこいつ、普通にいいやつだな。ノリは戸部に似てる。てか戸
!
ルじゃないでしょ
﹂
見たことないわよ
﹁⋮⋮⋮⋮言わなきゃダメか
?
!?
﹂
﹁そうよ、急に剣を2本出したりして、エイト君のスキルなんか刀スキ
前言撤回、全然いいやつじゃねぇ、戸部に似てるなら空気も読めよ。
!?
?
!
106
!
﹁お、おう⋮⋮﹂
!
﹁さて、俺はここら辺で帰るとするか﹂
﹁逃がさないわよエイト君﹂
肩をがっしり掴まれる、あの、食いこんでます痛いです。
﹂
﹁なんだそれ、エクスト
﹁はぁ⋮⋮二刀流スキル。出現方法はわからない﹂
﹂取り巻きうるせぇ。
周りの軍のヤツらがざわめく。﹁二刀流
ラスキルか
﹁そんなことないだろー
刀使ってる俺様でも見たことないぞ
﹂
﹁抜刀術だ、エクストラかユニークかは知らん﹂
﹁抜刀術⋮⋮
!?
重い身体を無理に動かし、立ち上がる。
﹁ボスは倒した、誰か情報屋に伝えといてくれ。俺は疲れた﹂
キリトも頷く。
かっちゃいないんだ﹂
﹁も う い い だ ろ、こ れ 以 上 話 せ る こ と は な い。出 現 方 法 も 条 件 も わ
またざわめく周りのヤツら。
﹂
﹁キリトすげぇな、あっ、俺は刀スキルなんで関係ないですよね﹂
﹁そうなんだ⋮⋮⋮⋮道理であんな動きを⋮⋮﹂
!?
流石にもう隠し通せないな⋮⋮⋮⋮仕方ない。
ちっ、刀使いがここにいたか。
?
んっ、と伸びを一回してから、俺は転移結晶で家に帰った。
107
!?
!?
潜入
﹁なんだよこれ﹂
74層ボスを倒した次の日。
号外をデカデカと配っている人がいたから俺もつい受け取ってし
まった。
﹄⋮⋮はぁ
﹂
どうせ74層のことだろう、と思いつつそこに書いてあるものを見
る。
﹄
﹃一撃必殺、幻の抜刀術
いやいやいや⋮⋮。
?
俺はギョッと目を見開いた。
﹁﹃脅威の50連撃スキル
一撃必殺
!
﹂
?
れよ﹂
﹁何の用だカレンダー﹂
﹁話を戻すぞ、何の用だ。カーレン﹂
﹁そんなに身構えなくてもいいよ、僕じゃ君には勝てない﹂
必ずしも安全というわけじゃないんだ。
が、一応いつでも逃げられる準備はしておく、圏内だからと言って
悪いやつ⋮⋮ではなさそうだが、どこか白々しい。いや、嘘くさい。
ブツブツ言い始めるカレンダー野郎。
﹁カレーン、だ。あれっ
これじゃカレンダーに⋮⋮﹂
﹁はは、これは失敬。僕はカレーン、まあ気軽にカレンとでも呼んでく
﹁知らん、少なくとも攻略組ではないな﹂
﹁おやぁ、僕のことを知らないのか
こんなに馴れ馴れしく喋ってくるやつ、怪しすぎる。
﹁⋮⋮⋮⋮誰だ﹂
﹁気に入ってくれたかい、影君﹂
知らない声だ。
そんな俺の背中に、声がかかる。
どうやら相当のデマが広がっているようだ。
とか⋮⋮いやないない。
流石に尾ひれがつきすぎだろ、ボスの腕をワンパンで斬り落とした
50連撃
? !?
?
108
?
﹁強いていうなら⋮⋮その記事の作成者、かな
ぞ﹂、と。
﹂
﹂
人もいるんだ、その強さをプレイヤー諸君に見せてはみたくないかい
﹁言ったろ
僕は希望を与えたいだけさ。ユニークスキル使いが3
俺は以前、逃げる大勢を変えずに目で問う。﹁何の用だ、次はない
両手をバンザイして無抵抗の意を表すカーレン。
いんだ﹂
﹁そんなに殺気を撒き散らさないでくれ、本当に君と今は争う気はな
こいつ⋮⋮どうにも飄々としていて話したくなくなるやつだな。
悪びれもせず、あっけなくそう返される。
﹁僕はプレイヤーに希望を与えただけさ﹂
﹁このデマはなんだ、勘違いも甚だしいぞ。今すぐ取り消せ﹂
か。
この記事を作った、ってことは⋮⋮このデマも全てこいつの仕業
俺が手に持っている号外を指差して、微かに笑う。
?
﹁どういう意味だ﹂
﹁勘は鈍いようだね、つまりは⋮⋮僕が主催者として開く、トーナメン
ト形式のPvP大会に出てくれないか、ってことさ﹂
わかるわけねぇだろそんなの、と心の中で呟きながら話を整理す
る。
こいつの目的はプレイヤーに希望とやらを与えること、この場合の
希望とはゲームはクリア可能ということだろう。
25層、50層は他より強力なボスが出ている、恐らく75層も他
より更に強力なボスが出るのだろう。それを前にして絶望している
者もいないわけではないはずだ。
そこで俺やキリト、ヒースクリフが持っているユニークスキル。こ
れをプレイヤーの前で使ってもらい、クリアは可能だということを示
してほしい⋮⋮⋮⋮ってことだろうな。
確かに理に適っている。強い人がいるとわかればボス攻略に参加
109
?
肩を竦めながらカーレンは言った。
?
する人も増えるだろう。
だが気がかりなのが⋮⋮こいつが、それ
は見えないところだ。
だけ
を考えている様に
是非とも参加してほしいなぁ、︽紫色の影︾⋮⋮いや、
"
攻略組働けよ
⋮⋮ってわけじゃない。
の1も終わっていないのは遅すぎるだろう。
流石にゆっくり気をつけながらだとしても、マッピングがまだ3分
⋮⋮⋮⋮しかし遅すぎる。
気をつけながらゆっくりと迷宮を攻略していく。
75層はターニングポイントのため、今まで以上に安全マージンに
カーレンに大会に誘われた日から3日が経った。
ーーーー
ボソりと呟いた俺の声は、奴に届いただろうか。
﹁⋮⋮⋮⋮理解は出来るが、お前が気に食わない﹂
離れていくカーレンの背中に向かって、言う。
恐らく、他のやつにも同じ様のことを言いに行くんだろう。
そう言い残し、カーレンは去って行った。
﹁⋮⋮⋮⋮そうか⋮⋮残念だなぁ﹂
﹁悪いな、そういうのには興味が無い、他を当たってくれ﹂
だが、今は俺の勘を信じる。
ろう。
ニコニコしていて、表面上だけを見るとすればこいつはいいやつだ
︽抜刀術︾のエイトマン﹂
﹁どうだい
"
⋮⋮カーレンが開く、PvPの大会だ。
?
は必ず誘っている。
しかしあの2人だけで攻略が止まるほど人気が出るものなのか
?
カーレンの話を聞く限り、恐らく俺以外にもキリトやヒースクリフ
イベントの開催日までの日数だ。
﹁あと4日か﹂
なんのイベントか
るためなかなか攻略が進まない。
現在、町はあるイベントの準備で大忙しだ。攻略組も顔を出してい
!
110
?
っつーか時間がかかりすぎだ。
この事から導き出される答えはーーーーーー攻略組も混ざってる、
それか手伝ってるな。このPvPの大会に。
そ う い え ば ト ー ナ メ ン ト と 言 っ て た な。⋮⋮⋮⋮ デ ィ ア ベ ル や ア
スナ、他にも聖竜連合や風林火山のメンバーなどにも声をかけている
んだろうな。
忙しそうに動き回る人をボーッと眺めながら、そんなことを考えて
いたらメッセージが届いた。
キリトからだ。
﹃今からお前の家に行く﹄
急だな⋮⋮最低限の返事で返す。
﹃理由は﹄
﹃話したいことがある﹄
111
⋮⋮⋮⋮丁度いい、俺も話したいことがあったからな。
キリトに﹃了解﹄と送り、来るのを待った。
ーーーー
﹁悪い、待ったか﹂
﹁いや、俺も今来たところだ﹂
﹁ここお前の家だろ⋮⋮上がるぞ﹂
付き合いたてのカップルのようなセリフを言ったがキリトあえな
くスルー。
やっぱり鈍感系なのねキリト君は、私の気持ちに⋮⋮気づいてよ
いやこれじゃあ俺がキリトを好きみたいだな、うへぇ。
紅茶でも入れてやろうかと立ち上がる。
しかしキリトは首を横に振る、いらないってことだろう。
!
ならいい、勝手に押しかけたのはキリトだし俺が遠慮する必要は無
いな。
﹂
﹁そんな長話をする気は無い﹂
﹁そうか、で、話は
﹁単刀直入に言う。PvP大会、カーレンの大会に参加してくれ﹂
?
思っていたことよりも斜め上のことを言われた。
﹂
一応理由は聞いとくか。
﹁何でだ
﹁⋮⋮⋮⋮俺の勘違い、考えすぎかもしれないからこれから先に言う
ことは余り、真に受けないでくれよ﹂
﹁わかった﹂
キリトは呼吸を落ち着かせるためか、一度大きく息を吐く。
﹁俺もカーレンに誘われた。別に断る理由もないしな、だが何か引っ
掛かったんだ。だからあいつの跡をつけた﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
﹁誰かと会っていたようだが、夜だったから暗くてよく見えなかった。
⋮⋮俺は暗視スキルなんて習得してないしな﹂
ジトリ、と俺を見てくるキリト。
暗視スキルの便利差に今更気づいたか。
﹁だが会話は途切れ途切れに聞こえた﹂
そこで一度言葉を切るキリト。
覚悟を決めたのか、再び口を開く。
﹁ラフィンコフィン、そのワードが聞こえた﹂
﹁⋮⋮ラフィン、コフィンか⋮⋮﹂
PKをする奴らが集まる、ギルドだ。
﹂
﹁もしかすると全然関係ないかもしれない、だけど放置するのアレだ、
だから⋮⋮﹂
﹁事情はわかった。だが何で俺なんだ
やべぇ、俺忍者に転職するべきかもしれない。
とかできそうだが。
だけど潜入って⋮⋮まあスキルをしっかり使えば痕跡も残さず何
割と高い評価を頂いているみたいだ。
イトマン、お前ならって思ってな﹂
﹁アスナやディアベル、ヒースクリフは潜入には向かない。だけどエ
?
助かる﹂
112
?
﹁仕方ないな、攻略組のキリト様に頼まれたんじゃ断れん﹂
﹁⋮⋮
!
ありがとなエイトマン
﹂
﹁⋮⋮とりあえず俺はカーレンを大会中に追えばいいんだな﹂
﹁ああ
﹁終わってからそれ言え﹂
ポカーンとするキリト。えっ、俺なんか言った
﹁その言葉、どっかで聞いたな﹂
﹁気のせいだろ﹂
気づかれてしまったか⋮⋮俺の記憶力の凄さに⋮⋮。
?
やめろよ恥ずかしい。わかったからお礼はいいから帰れ。
!
ニヒルと笑うキリトは無邪気で、こいつはまだ子供なんだなってこ
とがよくわかった。
⋮⋮いや俺も子供ですけどね。
113
!
大会
あの後、俺は準備をしている奴に声をかけてカーレンの居場所を知
り、再び会いに行った。
友人に参加しろと誘われたから参加する、という意思表示を伝えた
ところ、カーレンはとても喜んでいた。
どのくらい喜んでいたかと言うと、尻尾があれば扇風機くらいには
回してただろう。
抱きつかれそうだった。
﹁テンションが高い、言い回しがイラつくだけで別に悪いやつには見
えねぇな⋮⋮﹂
先入観で悪いやつと見なしていても、カーレンにはそういうところ
が一切見受けられない。
逆に言えば完璧すぎる、葉山レベルじゃなかったら無理だろ。
﹁考えるのはやめだ、疲れた﹂
ドサっ、とベッドに身体を投げ出す。
そのまま重い瞼をゆっくりと閉じた。
ーーーー
﹁会場は圏内⋮⋮まあ妥当だな﹂
大会前日、スケジュールやら開催場所などが書かれたチラシにはそ
う書かれていた。
PvPの最中にモンスターに襲われちゃ困るわな。
今回出場するプレイヤーは全部で8人、ヒースクリフ、ディアベル、
キリト、アスナ、クライン、俺。
残りの2人は知らん。
﹁はぁ⋮⋮⋮﹂
観客は48層に設置されている液晶画面から中継されてるのを見
れる。
あまり上の層にし過ぎると調子に乗って戦いに行くやつとかいる
かもしれないからな、よく考えてる。
だけど俺の家のある層じゃねぇか⋮⋮そこも考えて⋮⋮いや知ら
114
ないか。
今回の出場者、知り合いが多いからな。
これを機に白黒つけたいもんだ。
まあ、やるからには勝つ気で⋮⋮。
﹁って、目的を忘れるな﹂
バチン、と両の手で頬を叩く。
ヒリヒリした痛みが伝わり、頭が冴えてきたような気がする。
そうだ、俺の目的はあくまでカーレンの裏を知ることだ。勝つこと
じゃない。
⋮⋮⋮⋮まあわざと負けるつもりもないがな。
ーーーー
ー大会当日ー
﹁なんて盛り上がりだ⋮⋮﹂
家を出たばかりでもわかる盛り上がり。
街の中央にある液晶画面に人が集まっている。そんなに気になる
のかよ。
人数が多すぎるので、急遽47層にも設置されたらしいが⋮⋮まあ
人は変わらず多い。
﹁ト ッ プ プ レ イ ヤ ー の 戦 い ぶ り を 見 た い っ て や つ も い る か ら、仕 方
ねぇか﹂
俺も一応トッププレイヤーだが⋮⋮まあ俺の戦い方を参考にする
やつは今頃最前線に出てる。
見様見真似で出来るものじゃないしな。
さっさと大会場所へと移動しようとするが、やはり人が多い、なか
なか前へ進めない。48層ってこんなに人多かったのかよ⋮⋮。
なんとか転移をして大会場所へと到着。
他のメンバーはもう揃っていたが集合時間1分前だが間に合って
いるから平気だろう。
﹁エイトマン、ギリギリだぞ﹂
﹁間に合ったんだからいいだろ。少しでも仕事の時間を減らしたいん
だ﹂
115
﹁エイトマンらしいな⋮⋮﹂
苦笑するキリト。
こいつ、俺と会う度に苦笑してないか
苦笑いを顔に貼り付けてるんじゃないの
?
?
⋮⋮。
﹁そういえばエイトマン、例の件、どうなんだ
何のことでしょうか
小声で聞いてくるキリト。
例の件
﹂
ま あ 確 か に ク ラ イ ン も 強 い が こ の 面 子 を 見 る と や っ ぱ り 霞 む な
ビシッと決めるクライン。
﹁エイトマンも誘われたのか、俺様もカーレン直々に誘われたぜ﹂
?
﹁大丈夫だ。死にはしないだろ﹂
﹁物騒なこと言うなよ﹂
カ ー レ ン が 近 く に い て こ ん な 話 を し て い い の か
カーレンはもっと遠くにいた。誰かと話している。
話が終わったのか、振り向くカーレン。
丁度俺と目が会う。
ニッコリ笑ったかと思うと、こちらに近づく。
パンパン、と手を叩いた。
?
すんだろう。
そう言い、マイクを握る。あれで液晶画面を見ている人に向けて話
﹁時間だね、参加者8名全員揃っているようだ﹂
と 思 っ た が
あーはいはい、潜入ね、最初からそう言ってくれよ。
痺れを切らしたキリトが言う。
﹁潜入のことだよ﹂
なり著しいことになるんだが。
全然知らないんだが、もし忘れてるのならば俺の記憶力の低下はか
?
﹂
﹁レディース&ジェントルメン 本日は大会を見にいらっしゃって
誠にありがとうございます
!
注意事項やらマナー、それに大会ルールを参加者と観戦者に伝えて
まあ無難な語りから始まる。
!
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?
いる。
色々言ってたが、ルールは簡単だ。
リングに上がり︽初撃決着モード︾でPvPを開始する。
リングの形状は、⋮⋮天下一武○会とかセ○ゲームに似ている。
とどこかで聞いたこと
﹁長話もこのあたりで辞めとしまして、早速大会の方へ移らせていた
だきます。最初の対戦はーーーーーー﹂
デケデケデケデケーーーーーーデデン
ある音楽が流れる。
﹂
こちらからも見える液晶画面にキリトとアスナが映る。
﹁︽二刀流︾キリトVS︽閃光︾アスナーーーだあっ
﹁いきなりアスナとか⋮⋮お手柔らかに頼むよ﹂
?
いた。
キリトは苦い顔を浮かべながら再度﹁お手柔らかに⋮⋮﹂と呟いて
ニッコリ笑うアスナは何とも言えない威圧感を放っていた。
﹁キリト君と戦うのね、この際どっちが上かハッキリしましょうよ﹂
!
愛でも誓ったの
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!
キリトがこちらに目配せをしてくる。なんだ
か
ここからは俺の仕事だ。
なんて冗談はいい。
?