メキシコ:エネルギー改革の進展状況 ~大水深鉱区を対象とする入札を

更新日:2016/12/21
調査部:舩木弥和子
メキシコ:エネルギー改革の進展状況 ~大水深鉱区を対象とする入札を終えて~
(「メキシコ:大水深及び Pemex ファームアウト入札を実施(短報)」続報)
(Platts Oilgram News、International Oil Daily、Business News Americas 他)
1. 2016 年 12 月 5 日に実施されたラウンド 1 第 4 次入札はメジャーや国営石油会社等が 10 鉱区中 8 鉱
区を落札、Pemex ファームアウト入札は BHP Billiton が Trion 鉱区を落札するという良好な結果に終わ
った。
2. 政府は、2017 年 3 月に浅海の鉱区、7 月に陸上鉱区の入札を計画しており、2018 年 12 月までにさら
に深海、浅海、陸上の 3 回の入札を行なう予定である。Pemex も、2017 年 3 月にカンペチェ湾浅海の
Ayin 鉱区、Batsil 鉱区を対象に第 2 次ファームアウト入札を実施する計画である。
3. これまで 3 回の入札で付与された鉱区では、Pan American Energy、Eni 等が掘削を開始、Renaissance
Oil が生産を行う等、探鉱・開発が始まっている。
4. しかし、石油生産量は 2020 年にかけて一度減少するとの見通しで、すぐに増加することは期待でき
ない。
5. エネルギー改革が始まって 3 年が経つが、埋蔵量、生産量は減少、業績も 16 期連続の赤字と Pemex
の状況は改善されていない。2016 年 2 月に Pemex 総裁に任命された Jose Antonio Gonzalez Anaya
氏が、コストや従業員の削減に努めている。Pemex は、事業計画 PLAN DE NEGOCIOS 2017-2021
で、エネルギー改革を推進し、メキシコの生産量を増加させ、同社の収益を増加させるとしている。
1.ラウンド 1.4 及び Pemex ファームアウト入札
2016 年 12 月 5 日、国家炭化水素委員会(National Hydrocarbons Commission:CNH) が実施したラウ
ンド 1 第 4 次入札(ラウンド 1.4)及び Pemex ファームアウト入札は、入札数は少なかったものの、全 11 鉱
区中 9 鉱区が落札され、成功裏に終了することができたとの評価がなされた。
ラウンド 1.4 の対象とされたメキシコ湾大水深は、生産中の米国側メキシコ湾と同じ地層とされ、試掘
成功率も米国側が 45%、メキシコ側が 42%と大差がない。Pemex に資金力、技術力がないために、探
鉱・開発が進んでいないものの、メキシコ側のメキシコ湾大水深はメジャーを初めとする多くの企業が同
国内で最も有望と目するエリアとされてきた。特に、Perdido褶曲帯は油田が発見されれば、米国側に敷
設済みの Williams のパイプライン(送油能力 15 万 b/d、現在 6.5 万 b/d を利用)を用いて米国に輸送可
能とされている。一方、未開発の Salina del Istmo Basin は、岩塩層があり探鉱・開発が難しいとされるが、
有望なエリアであると見られている。
Perdido 褶曲帯 Block1 は、同時に行なわれた Pemex ファームアウト入札の対象鉱区 Trion の南北に
位置していることから、Pemex が確保したいと考えているとされていた鉱区で、実際に Pemex が札を入
-1Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」
)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
れたものの、CNOOC が落札した。CNOOC は Perdido 褶曲帯 Block4 も落札し、メキシコの石油上流部
門への初参入を飾った。Perdido 褶曲帯 Block3 は日本企業として唯一札を入れた INPEX が Chevron、
Pemex と組んで落札、Perdido 褶曲帯 Block2 は、Total/ExxonMobil が落札した。Total は Statoil/BP と
組み Salina del Istmo Basin の Block1、Block3 も落札、今回の入札で最も多くの鉱区に参入することとな
った。Petronas と Sierra Offshore Exploration は両社のコンソーシアムで Salina del Istmo Basin Block4 を、
この 2 社に Murphy と Ophir が加わったコンソーシアムで Salina del Istmo Basin Block5 を落札した。
Murphy は米国側のメキシコ湾等大水深での探鉱・開発の経験が豊富であり、Ophir はマレーシアの深
海鉱区で Petronas や Murphy とパートナーを組んでいる。陸から距離のある Salina del Istmo Basin の
Block2、Block6 には札が入らなかった。
表 1.ラウンド 1 第 4 次入札結果
エリア
Block
面積
(km2)
水深 (m)
Perdido
褶曲帯
1
1,678.0
1,000-3,100
期待される
埋蔵量
(百万 boe)
625.8
2
3
4
1
2
3
4
2,976.6
1686.9
1,876.7
2,381.1
2,411.2
3,287.1
2,358.7
2,300-3,600
500-1,700
600-2,000
2,000-3,100
2,000-3,000
1,000-2,500
1,000-1,500
1,439.7
1,304.0
540.5
1,851.9
1,446.0
1,668.9
392.1
5
2,573.2
1,000-1,500
621.4
6
2,605.5
500-1,000
999.2
Salina
del
Istmo
Basin
入札企業、コンソーシアム
(*落札企業、コンソーシアム)
CNOOC*
Pemex
Total/ExxonMobil*
Chevron/Pemex/INPEX*
CNOOC*
Statoil/BP/Total*
―
Statoil/BP/Total*
Petronas/Sierra*
Statoil/BP/Total
Murphy/Ophirr/Petronas/Sierra*
Atlantic Rim/Shell
Statoil
Eni/Lukoil
―
(SENER 資料等より作成)
Trion 鉱区を対象とする Pemex ファームアウト入札には、BHP Billiton と BP が札を入れ、ボーナスを 6
億 2,400 万ドルとした BHP Billiton が同鉱区を落札した。BHP Billiton は同鉱区の権益の 60%を保有し、
Pemex とともに Trion 油田の開発を進める。Trion 油田は Pemex が 2012 年に水深 2,500mの海域で発
見、埋蔵量(3P)は 4.85 億 boe とされている。開発投資額は 110 億ドルと推定され、ライセンス契約を締
結、2023 年に生産を開始し、2025 年には生産量を 12 万 b/d に引き上げることが計画されている。
Pemex は、今回のファームアウトを技術面と資金面のリスクを共有し、同様のプロジェクトに熟練した企
業の知識を取得、技術の移転を試みるものであるとしている。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」
)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
図 1.ラウンド 1.4 及び Pemex ファームアウト入札鉱区図
(各種資料より作成)
今回の入札で複数の札が入ったのは、Perdido 褶曲帯 Block1 と Salina del Istmo Basin の Block4、
Block5、Trion 鉱区の 4 鉱区のみであったが、競合が少なかったことに関して CNH は、1 件しか札が入
らないのは欧米での入札では一般的なことであるとコメントしている。
入札数こそ少なかったものの、メキシコがエネルギー改革の目玉とされる今回の入札を成功裏に終
了することができた背景には、ラウンド 1.1 が、公開した 14 鉱区中 2 鉱区しか落札されず、低調に終わ
ったことがあると考えられる。その後、メキシコは入札や契約の条件を緩和し、ラウンド 1.2 では 5 鉱区中
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3 鉱区が、ラウンド 1.3 では対象とされた 25 鉱区全てが落札されるという結果を得ている。ラウンド 1.4
についても、ノンオペレーターがオペレーター以上の権益を保有してもよいこととしたり、オペレーター
単独での入札参加を可能としたりする等、入札や契約の条件を緩和してきた。公開されたメキシコ湾大
水深が有望なエリアであることとともに、このようにメキシコが入札や契約の条件を緩和したことが、今回
の入札の成功につながったと考えられる。
表 2.ラウンド 1 の結果
ラウンド
1.1
1.2
1.3
1.4
入札実施日
2015/7/15
2015/9/30
2015/12/15
2016/12/5
エリア他
浅海、探鉱
浅海、生産
陸上、生産
大水深、探鉱
対象鉱区
14 鉱区
5 鉱区
25 鉱区
10 鉱区
落札鉱区
2 鉱区
2 鉱区
25 鉱区
8 鉱区
契約形態
PS 契約
PS 契約
ライセンス契約
ライセンス契約
投資額見通し
27 億ドル
30 億ドル
11 億ドル
410 億ドル
生産量見通し
―
9 万 b/d
7.7 万 b/d
90 万 b/d
(各種資料より作成)
2.今後の入札予定
Pedro Joaquin Coldwell エネルギー相によると、メキシコ政府はラウンド 2 を開始することを計画してい
る。2017 年 3 月には浅海の鉱区、7 月には陸上鉱区の入札を実施する予定であるが、同エネルギー相
は Enrique Pena Nieto 大統領の任期が終了する 2018 年 12 月までにさらに深海、浅海、陸上の 3 回の
入札を行なう計画であるとしている。
Pemex も、2017 年 3 月に Campeche 湾浅海の Ayin 鉱区、Batsil 鉱区を対象に第 2 次ファームアウト
入札を実施する計画である。両油田の水深は 160m で、埋蔵量(3P)は合計 2 億 8,100 万 boe とされて
いる。Pemex は、両鉱区に対し 42 億ドルの投資が行なわれ、入札後 3 年目から生産を開始し、生産量
が 7 万 b/d に達することを見込んでいる。
また、12 月 13 日には、CNH がラウンド 0 で Pemex に割り当てられた陸上の Cárdenas-Mora 鉱区と
Ogarrio鉱区の情報を公開、Pemexと共同で両鉱区の開発を行う企業を募集するとした。Cárdenas-Mora
鉱区は南東部 Tabasco 州、州都 Villahermosa 市から 62km の地点に位置し、面積は Cárdenas 鉱区が
104 km2、Mora 鉱区が 64 km2 となっている。2016 年 1 月時点の埋蔵量(3P)は 9400 万 boe で、API 比
重39 度の原油を生産可能である。Ogarrio鉱区は同じく Tabasco州、Huimanguillo市に位置し、面積は
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153 km2 である。埋蔵量(3P)は 5400 万 boe で、API 比重 37 度の原油を生産可能である。同様の油田
を開発した経験があることを証明できる企業の参入を求めている。
Pemex は Tamaulipas 州沖合 220km、Perdido 褶曲帯の AE-0077 鉱区の水深 3,000~6,000m の海域
で Nobilis-1 号井を 2 月中旬より掘削(掘削長 6,000m 以上)し、5 月末に掘削を終了したところ、2 つの構
造より API 比重 40 度以上の軽質原油の出油に成功した。埋蔵量(3P)は 1.4~1.6 億 boe で、生産能力
は少なくとも 1.5 万 b/d と推定されている。Pemex は 2017 年下半期までに同鉱区のファームアウト入札
を実施したいとしている。
なお、Pemex は 2015 年に提出した計画の中で Ek–Balam 鉱区のファームアウトを計画していたが、2
鉱区を統合することで Pemex 単独で開発が可能であるとし、CNH、エネルギー省と 2016 年 7 月から新
たな条件について協議を行なっていたところ、このたび、CNH が Pemex による両鉱区の開発計画を承
認した。Ek–Balam 鉱区は Cantarell 油田群の一部をなしており、Campeche 湾の水深 55 m の海域に位
置する。Ek 鉱区の生産量は 5 年前の 42,000 b/d、1 年前の 27,000 b/d から 10 月には 24,000 b/d に減
少している。Balam 鉱区の生産量も 2013 年に 10,000 b/d を切り、その後も減退を続けている。Pemex は、
Balam 鉱区に 1.47 億ドル、Ek 鉱区に 5,400 万ドルを投じ、追加で Ek 鉱区から 795 万 bbl、Balam 鉱区
から 757 万 bbl を生産可能とする計画である 1。
表 3.ラウンド 2 の計画
ラウンド
2.1
2.2
2.3
2017/3/22
2017/7/12
2017/7/12
エリア他
浅海、探鉱・生産
陸上、探鉱・生産
陸上、探鉱・生産
対象鉱区
15 鉱区
Tampico-Misantla
Veracruz
Cuencas del Sureste
12 鉱区
Burgos basin 9 鉱区
Tabasco Chiapas 3
鉱区
14 鉱区
Burgos basin 4 鉱区
Sureste basin 6 鉱区
Veracruz basin 3 鉱区
Tampico-Misantla basin 1 鉱区
投資額見通し
―
50 億ドル
10 億ドル
生産見通し
―
―
2018 年生産開始
2023 年原油生産量 65,000b/d、
2025 年ガス生産量 112Mf3/d
入札実施日
(各種資料より作成)
1
LatAmOil 2016/12/6
-5-
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3.ラウンド1で付与された鉱区の探鉱・開発状況
これまで 3 回の入札で付与された鉱区では探鉱・開発が始まっている。
ラウンド 1.2 で Block2(Hokchi 油田)を落札した Pan American Energy の子会社 Hokchi Energy は、
2016 年 9 月に最初の坑井掘削について CNH から承認を得、10 月に探鉱井の掘削を開始した。Pemex
以外のオペレーターとしてエネルギー改革後にメキシコ湾で掘削される初の坑井となった。2017年2 月
にこれを完了させる予定である。
同じくラウンド 1.2 で Block1(Amoca、Mizton、Tecoalli 油田)を落札した Eni は、2016 年 10 月に CNH
より Amoca-2 号井を掘削することについて承認を得た。Amoca-2 号井は、Pemex が 2003 年に発見した
Amoca 油田の評価井で、Eniは水深27mの海域で12月1日より掘削を開始する計画であるとしている。
Sierra Oil & Gas /Premier Oil は、ラウンド 1.1 で取得した 2 鉱区のうち Block7 で 2017 年半ばに掘削
を開始する計画である。
カナダの Renaissance Oil は、2016 年 6 月に、ラウンド 1.3 で獲得した 3 鉱区(Mundo Nuevo、Topén、
Malva)で原油 1,700b/d の生産を行っていると発表した。これは、エネルギー改革後、メキシコ初の外国
企業による石油生産となった。
4.生産見通し
豊富な埋蔵量を保有するにもかかわらず、Pemex の資金不足、技術力不足により、成熟油田の生産
減退を遅らせることができず、また、新規油田の開発が進まなかったことから、メキシコの原油生産量は
2004 年の 340 万b/d をピークに減少し、現在210 万b/d 程度まで落ち込んでいる。上述したとおり 2015
年以降入札が実施され、上流部門に民間投資が行なわれるようになり、探鉱・開発も始まってはいるが、
これがすぐに生産増という結果につながるわけではない。特に、大水深の探鉱・開発には時間がかかり、
ラウンド 1.4 で付与された鉱区で生産が始まるのは 2030 年頃となるとの見方がなされている。
2016 年 11 月3 日に Pemex が発表した 2017~2021 年の事業計画PLAN DE NEGOCIOS 2017-2021
によると、2017 年のメキシコの原油生産量は 194.4 万 b/d と、2016 年の生産目標 213 万 b/d から 18.6
万 b/d、すなわち 9%減少する見通しであるという。Pemex は、民間企業との提携やファームアウトを進
めることで 30 万 b/d の生産増が可能であるとしており、2018 年には生産は増加に転じ、緩やかな回復
をみせ、2021 年には生産量が 219.6 万 b/d に達する計画であるとしている。
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280
260
240
220
200
180
160
140
120
100
2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021
図 2.メキシコの原油生産量推移と計画
(単位:万 b/d)
(PLAN DE NEGOCIOS 2017-2021 より作成)
また、IEA は World Energy Outlook 2016 で、メキシコの原油生産量は今後数年間にわたり減少し、
200 万 b/d を下回るとしている。2013 年から始まったエネルギー改革により、Pemex による石油産業独
占がなくなり、投資や技術が導入されることで、2020 年頃には生産は回復基調に向うとしており、生産
回復の時期に関しては Pemex よりも厳しい見方をしている。そして、2040 年には原油生産量が 240 万
b/d、NGL やタイトオイルを加えると生産量は 340 万 b/d に達する見通しとしている。
図 3.メキシコの石油生産量見通し
(出所:IEA World Energy Outlook 2016)
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5.Pemex の状況
エネルギー改革が始まって 3 年が経つが、Pemex の状況は改善されていない。
2015 年末の Pemex の確認埋蔵量は、原油価格、ガス価格の下落や開発の遅れ等を原因とし、液分
が 79.77 億 bbl で前年の 102.92 億 bbl から 22%減、天然ガスが 8.61Tcf で前年の 10.859Tcf から 21%
減となっている。原油生産量も 2013年の 252万b/dから 210万b/d 程度に減少しており、上述した通り、
さらに減少することが見込まれている。
財務建て直しのため 2016 年 2 月に、財務公債省出身の Jose Antonio Gonzalez Anaya 氏が Pemex
総裁に任命された。同総裁の下、コスト削減、民間企業とのジョイントベンチャーの活用、採算の悪いプ
ロジェクトの中止等により Pemex の予算が 1000 億ペソ(約 55 億ドル)削減されることとなった。同社の
2016 年第 3 四半期決算は 61 億ドルの赤字と、16 期連続の赤字となった。ただし、コスト削減の効果か
赤字幅は縮小した。コントラクターやサプライヤーへの支払いも遅延している。
エネルギー改革が行なわれてから、約 1 万人の従業員が削減されたが、まだ人員過多の状況である
という。しかし、これ以上の削減は労働組合の反対で難しいとされる。
当初 2015 年に行なう予定であった鉱区権益のファームアウト入札も、Trion 鉱区のみ入札が終了した
状況だ。
Jose Antonio Gonzalez Anaya 総裁は、PLAN DE NEGOCIOS 2017-2021 で、エネルギー改革を推進
し、メキシコの生産量を増加させ、Pemex の収益を増加させるとしている。主な内容は以下の通りであ
る。
●メキシコの原油生産量は、2016 年の生産目標 213 万 b/d から、2017 年は 194.4 万 b/d と 9%減少
するが、民間企業との提携やファームアウトを進めることで、2021 年には 219.6 万 b/d に回復する計画
である。Trion 鉱区に続き、2017 年には浅海の Ayin 鉱区、Batsil 鉱区、2018 年にはさらに 3 鉱区の入札
を実施する。
●Pemex は 2020 年までに探鉱・開発投資を 50%増加させ 600 億ペソ(約29 億ドル)とする計画である。
●2017~2021 年に埋蔵量(3P)を 11 億 boe 増加させる計画である。(ベースケースシナリオ)
●16 四半期連続で損失を計上しているが、2016 年、2017 年の予算削減で同社の財務状況は強化され
る見通しである。González Anaya 総裁は、Pemex の財務状況について「改善すべき点はあるものの、安
定している」と評価し、2019~2020 年にかけて「徐々に持続可能な状態で回復」していくとの見方を示し
た。
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終わりに
現在と同じように原油価格が低かった 1990 年代末、ブラジルは Petrobras の石油産業独占を終了さ
せ、外資や民間企業にこれを公開した。初期のライセンスラウンドで付与された鉱区で大規模な油田が
発見されなかったことから、外資がブラジルでの探鉱・開発への興味を失い、一時は、ライセンスラウン
ドで Petrobras がほとんどの鉱区を落札するという時期もあった。しかし、Petrobras には、大水深で探
鉱・開発を行なう技術力やブラジル沖合に関する知見があったことから、ブラジルの石油生産量は次第
に増加し、1998 年の 100 万 b/d から、2009 年には 200 万 b/d を、2015 年には 250 万 b/d を超える水
準となった。このようにブラジルでは、外資に上流部門を公開しつつも、Petrobras が中心となり、増産を
図ってきた。ブラジルの石油生産量は、1990 年代末時点、増加傾向にあったが、それでも生産量を 100
万 b/d 増加させるのに 10 年以上かかっている。
図 4.ブラジルの石油生産量推移
(単位:万 b/d)
(BP 統計をもとに作成)
Pemex には、Petrobras のように大水深で油田を開発する技術力がなく、メキシコはその点を理解して
いる。そのため、入札や契約の条件を緩和し、外資参入を進めてきており、今後も探鉱・開発促進のた
め積極的に入札を実施、外資や民間企業の導入を進めていくことになるだろう。しかし、メキシコの石油
生産量は減少基調にあり、生産増にはブラジル以上に時間がかかる可能性があると考えられる。
以 上
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