医療・介護の同時改定に向けて

特集特集
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新春対談 医療・介護の同時改定に向けて
新春対談 老健施設に期待される役割
January Vol.27
Vol.25 No.10
新春対談
医療・介護の同時改定に向けて
~老健施設の役割と期待~
蒲原 基道 厚生労働省老健局長
東 憲太郎 全老健会長 東会長 新年明けましておめでとうございます。
まく機能するようにしていきたいです。
今回の新春対談は蒲原基道老健局長をお迎えしま
東会長 私は、会長に就任して 3 年目になりま
した。
す。昨年は、蒲原局長には介護保険部会と介護給
昨年は介護保険制度改正の議論が行われ、地域
付費分科会、それから療養病床の在り方等に関す
包括ケアシステムの構築に向けた基盤整備等につ
る特別部会でも大変お世話になりました。
蒲原局長 昨年末に、介護保険部会が意見書を
いうことです。持続可能性というと抽象的ですが、
いての意見書がまとめられました。また社会保障
今年はいよいよ同時改定の年になりますので、
まとめましたが、今年は法案の提出に向けて準備
私がよく説明するのは、
「この介護保険制度はい
審議会介護給付費分科会では、 4 月からの実施に
老健施設にとって実のあるものにしていかなけれ
を進めていきます。
まの高齢者にとっても大事で機能しなくてはなら
向け、介護職員処遇改善加算の新設が議論されま
ばいけません。今年が一番大事な年だと思ってい
法律の中身は、大きく 2 つあります。
ないが、あわせて将来の高齢者にとっても介護保
した。今年は、平成 30 年の診療報酬・介護報酬
ます。
1 つは、地域包括ケアシステムを深化させてい
険制度が機能を発揮しなくてはならない」という
同時改定の議論がスタートします。
一方で、人材不足の問題は大きく、現場からは、
くことです。とりわけ、今回は介護予防や自立支
ことです。
まず新年を迎えての抱負をお話しいただけます
特に介護ですが、看護も含めて人材がいないとい
援といった、保険者である市町村の機能をいかに
将来にわたって機能を発揮するためには、ある
でしょうか。
う、悲鳴に近い声を聞いています。人材問題につ
強化していくかです。いろいろな自治体で良い取
程度の重点化や適正化といったことをしなくては
蒲原局長 新年明けましておめでとうございま
きましては、少しでも良い方向にいかないかと考
り組みをされているので、法律の枠組みをつくっ
なりません。ただ、それ自体が目的ではなく、き
す。
えています。
たなかで横展開をしていきたいと思っています。
ちんと持続することが大事だということです。保
昨年の夏に老健局長に就任して以来、さまざま
特に、地域ケア会議を充実させ、そのなかで本
険料や税を負担する方に、こういうふうに使われ
な審議会等で全老健を初め、いろいろな団体と意
人に合ったケアプランをつくったり、何より介護
ているのかという納得感をもっていただくことが
状態にならないように、介護予防を積極的に進め
非常に大事です。
るといったことをしていきたいと思っています。
このように、地域包括ケアシステムの深化と持
介護保険制度改正
見交換をしてまいりました。12 月に社会保障審
議会介護保険部会でまとまった介護保険制度の見
蒲原局長(右)と東会長
直しに関する意見を踏まえ、今年は介護保険制度
東会長 介護保険制度改正については、蒲原局
そうしたなかでは、老健施設のリハビリ職の方
続可能性の維持を念頭に、法改正を行っていきま
改正をします。また、診療報酬・介護報酬の同時
長がおっしゃったとおり、制度がスタートして
など皆さんがもっているいろいろなノウハウを、
す。
改定に向けての検討をしていきます。
17 年になり、環境もだいぶ変化しています。介
市町村とうまく連携をしながら発揮することがま
あわせて、高齢者だけでなく、地域では障害の
介護保険制度ができて 17 年になりますが、こ
護保険部会での議論も踏まえ、介護保険制度の現
すます求められてくると思いますので、期待した
ある方や子どももいるので、地域共生の観点も入
れから制度が安定的に運用されることも大事です
状と改正の方向性についてご見解をお聞かせくだ
いと思います。
れた法改正を考えています。
し、あわせて地域包括ケアシステムが各地域でう
さい。
もう 1 つは、制度が持続可能性をもって続くと
東会長 私ども老健施設からしますと、もっと
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新春対談 老健施設に期待される役割
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とが、いろいろな委員の方からのご意見にもあり
た。
ました。
改定を受けて経営状況がどうなったかにつきま
そういう意味では、老健施設はもともと状態を
しては、介護事業経営概況調査の結果もみながら、
良くする施設といいますか、お世話だけをするの
介護給付費分科会で検討していきたいと思います。
ではなく、少しでも ADL や認知症を良くして自
もちろん、概況調査だけでなく、介護事業経営実
立を促すことが求められています。介護保険の旗
態調査をした上で検討します。
印である自立支援については、老健施設がリー
同時改定に向けては、具体的な中身はこれから
ダーシップをとって取り組んでいかなくてはいけ
ですが、老健施設はもともと在宅に帰るというプ
ないと思っています。
ロセスを大切にしていると思います。医療と介護
また老健施設では、ケアの質向上に向けて日々
の連携という大きな流れのなかで、在宅に帰る機
努力していますが、これからの介護は、お世話型
能を大事なものと認識して、そこをどう支援する
ではなく自立支援型であるべきです。私たちの提
か。それから、老健施設は通所リハビリをけっこ
供するケアやリハビリによって、その方の自立支
う行っていると思いますが、あえてもう少し期待
援にどれだけ役立ったのか、状態像がどれくらい
するとしますと、訪問リハビリです。ただ期待す
良くなったのかをきちんと“見える化”すること
るだけではなく、報酬上どう評価していくかとい
が重要です。
うことが大事だと思っています。
そういう意味では、全老健が 6 年前から取り組
医療・介護連携でいいますと、いますでに在宅
んでいる R4 システムを使った「ICF ステージン
に帰っていく人をフォローしていると思いますが、
外へ出て行くといいますか、報酬がついていると
グに基づくケアマネジメント」
「状態像の見える
訪問介護や通所介護と、皆さん方の通所リハビリ
のあり方です。うまく動く仕掛けが必要です。
かいないとかといった問題ではなく、地域ケア会
化」
「提供したサービスの質の見える化」が、よ
や訪問リハビリがどう連携をしていくか。これは
東会長 平成 27 年の改定は、介護報酬がマイナ
議や介護予防にも老健施設が出て行くことが、今
りいっそう求められると考えています。
平成 27 年の改定でも少し入っていますが、それ
スありきで始まったので、全体的に大変厳しい報
をどう充実させていくかということです。
酬改定になってしまいました。改定率▲ 2.27%
考えてみますと、ある 1 人の人が生活をしてい
ですが、介護人材の処遇改善加算も含まれた上で
くときに、リハビリと介護のサービスが本人に
の▲ 2.27%なので、本当はもっとマイナスに
とって統合されるということが大切です。さらに
なっています。
後は求められると思っています。
今回の介護保険部会の議論のなかで、蒲原局長
平成 30 年診療報酬・
介護報酬同時改定
のおっしゃった介護保険の持続可能性を担保する
ために、応能負担の原則は避けて通れませんでし
た。ご利用者のなかには、一昨年は 1 割から 2 割
東会長 平成 30 年の診療報酬・介護報酬改定は
言えば、その人は福祉用具も使用しているかもし
老健施設にとっては、在宅強化型と加算型、従
負担になった方が、今回はさらに 3 割負担になる
非常に重要です。今年は、その同時改定に向け、
れません。本人にとってのサービスが統合され、
来型の差がより広がった改定でしたが、結局のと
という方もいるため、大変難しい判断となりまし
介護給付費分科会が加速度的に開催されると思い
かつ評価、モニタリングされることです。当然の
ころ在宅強化型も報酬が引き下げられてしまいま
たが、応能負担という意味では仕方がなかったか
ます。
ことですが、現実に動くようにしていきたいので
した。全老健の会員施設も、改定を受けて、在宅
と思います。総報酬割も同様な考え方のもとで決
平成 27 年介護報酬改定の総括と、平成 30 年の
す。
強化型をめざして努力しているということは、聞
定されたのではないでしょうか。
同時改定に向けてのご見解をお聞かせください。
それが、自立支援という本来の介護保険の理念
いています。皆さんからは、
「がんばってめざし
また、介護保険部会でも発言しましたが、給付
蒲原局長 平成 27 年の改定には重要なポイント
に沿った対応かと思います。昨年 11 月の政府の
ているがハードルが高い」
「在宅強化型でがん
の無駄の削減も、今後の課題ではないかと思いま
が 3 つあります。
未来投資会議でも、塩崎厚労大臣が、自立支援を
ばっているが、以前よりも稼働率が下がってしま
す。介護保険はもともと自立支援を旗印にできた
1 つめは、中重度の要介護者の重点的な対応。
指向したサービスが大事だと言っているので、そ
い、逆に経営的に厳しくなっている」という話を
保険制度です。自立支援に役立っていないサービ
2 つめは職員確保のための介護職員処遇改善加算。
ういう方向にあるといえます。
お聞きします。いまのところは、平成 27 年の改
スは削減し、必要なサービスに介護保険を使って
3 つめは、事業の安定的な経営に必要な収支差が
これから相談していかなくてはならないのは、
定を受けて青息吐息で厳しい状況であることは確
いくことが今後求められるのではないかというこ
残るように配慮しつつ、一定の適正化を行いまし
そういうことを進めていくときのインセンティブ
かです。
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く聞きます。事業所の体制としてリハマネⅡをと
働率が落ちた場合でも経営
ることを原則とすれば、リハマネⅡをとることに
的にやっていけるかたちと
よって、医師や他の事業所との連携を密に行って
いいますか、多くの老健施
いる通所リハビリ事業所であると評価されると思
設が在宅支援型になれるよ
います。そこがまだ少し足りないかと思うので、
うにすべきです。それは、
次の改定に向けても、リハマネⅡをとるように、
ひいては国民の皆さんが老
会員の皆さんにお願いしているところです。
健施設を使いやすくなると
今回の改定で、通所リハビリから通所介護、と
いうことにつながります。
いう流れはできたのですが、通所介護から通所リ
在宅強化型や加算型とい
ハビリへという流れがありませんでした。生活行
う方向性はいいのですが、
為向上リハビリの紹介など、通所介護から通所リ
そこに向けて従来型の老健
ハビリへという流れがほしいところです。利用者
施設がもう少し行きやすい
がリハビリを終了したら通所介護、通所介護で状
流れをつくっていただける
態が悪くなったら通所リハビリ、というように、
とありがたいです。
そこで働く人がいません。そういう意味でも、現
双方からの流れがあったらいいかと思います。
蒲原局長 そういうご意見をきちんとうかがっ
状の基金の使われ方には大きな問題があると思い
自立支援ということから考えますと、漫然と通
た上で考えていきたいと思います。
ます。このような介護人材の問題について、私は
所介護を利用してどんどん状態が悪くなっていく
ただ、基本的な方向としては、先にも述べたと
2 つの方法を考えています。
のでは困ります。通所介護を利用していて、認知
おり、介護予防や自立支援、在宅への流れがあり
1 つは介護の専門職である介護福祉士がもっと
通所リハビリでは、大きな改定が行われたと思
症であれ ADL であれ、もし状態が悪くなりそう
ますので、そういう流れのなかで、いまおっ
増えないと困ります。やはり介護福祉士のなり手
います。蒲原局長のおっしゃった、訪問介護や通
であれば、訪問リハビリや通所リハビリといった
しゃったような要望をどうこなしていくかだと思
が少ないし、離職率も高い。介護福祉士の資格を
所介護との連携という意味では、通所リハビリに
リハビリを入れることで、悪化を食い止めるとい
います。
もっていても違う仕事をしている人もたくさんい
リハビリテーションマネジメント加算Ⅱ(以下、
う考え方が、通所介護でも必要かと思います。
リハマネⅡ)という考え方ができました。要件と
例えばですが、これは全国デイ・ケア協会の齊
して、医師だけでなく、利用している通所介護や
藤正身会長とも話しているのですが、通所介護で
訪問介護の事業者に入ってもらって会議を行うと
は状態像の評価があまり行われていないという調
いうかたちができました。
査結果もあることから、通所介護の利用者であっ
東会長 次は 2025 年に向けての大きな課題でも
もう 1 つは現場で働く介護福祉士がもっと働き
横の連携は、リハマネⅡを算定することでとれ
ても、 3 ~ 6 か月に 1 度、 1 日通所リハビリの
あり、現政権においても重要課題の 1 つである
やすいようにするために、介護業務を補助する介
るので、そういう意味では良い改定になったと思
利用を義務化してはどうか。そこできちんと評価
「介護離職ゼロ」政策実現に資する介護職員の人
いますが、リハマネⅡも、老健施設の通所リハビ
をしてもらい、ADL なり認知機能なりが悪化傾
材確保対策についてお話ししたいと思います。
介護人材の構造転換に向けた「富士山型」の絵
リすべてで算定できているわけではありません。
向にあるということであれば、それをケアマネに
老健施設だけでなく、介護の世界は全体的に危
がありますが、そのすそ野にあたる人たちが中腹
通所リハビリの 6 割は老健施設で実施しているの
フィードバックして、ケアマネがケアプランにつ
機的な人手不足です。例えば、新たに特養などを
以上の人たちをしっかり支えることで、上のほう
で、がんばらなくてはならないのですが。
いて改めて考える。こういった仕組みも考えられ
開設しようとしても人が集まらないので、すべて
の介護福祉士をもっと働きやすくすることができ
常々会員の皆さんに申し上げているのは、利用
ると思います。
のベッドをオープンできないという話をよく聞き
ます。
者によって、リハマネⅠだったりⅡだったりする
先ほども述べましたが、多くの老健施設が在宅
ます。
介護の世界が働きやすいことがわかれば、介護
のではなく、
「事業所の体制としてリハマネⅡを
強化型や加算型をめざしているのは間違いありま
一方で、消費税を財源とした地域医療介護総合
福祉士の資格をもっている人も、もう少し現場に
考えてください」ということです。しかし実際は、
せん。しかしいまの状況では厳しいといえるかも
確保基金では、90%近くが施設整備に使われる
戻ってきてくれるのではないでしょうか。そうな
利用者の一部しかリハマネⅡをとっていないとよ
しれません。もう少しハードルを下げるなり、稼
ようになっています。しかし、施設をつくっても、
ると若い人も介護福祉士をめざすと思います。
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ます。そのため、介護福祉士がきちんと専門性を
介護職員の
人材確保対策
活かして現場で働けるような工夫をすると同時に、
介護福祉士の養成校に若い方を誘導する工夫も必
要です。
護助手の人を増やすことが考えられます。
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現在、介護福祉士の養成校
しかし、介護助手は介護業務を補助するものであ
の入学者数は定員の半分に
るため、処遇改善加算を介護助手の賃金に充てる
しか達していません。その
ことはできません。
ため、どんどん養成校が減
かつてはボランティアの人は大勢いましたが、
少している状態です。
いまはほとんどいません。仮にいたとしても働き
そこにてこ入れするため
手としては計算できません。そのため、きちんと
には、学生の授業料の全額
した雇用の形で高齢者を活用することが考えられ
補助や生活費援助などが考
ます。
えられます。ドイツでは日
蒲原局長 介護施設では介護福祉士も一定割合
本の介護福祉士にあたる高
いますが、無資格で働いている人たちもたくさん
齢者福祉士養成の授業料免
います。介護助手はそうした枠で働いてもらうの
除などの仕組みがあると聞
でしょうか。
きます。
東会長 介護助手は 70 歳前後の高齢者を活用す
介護人材の確保を考えるときに、富士山の上の
現在のような危機的な人材不足に対しては、養
るもので、そうした方には入浴介護などの身体介
ほうにあたる介護福祉士をもっと養成するととも
成校の授業料の全額補助、さらには学生の生活費
護は難しいと思います。そのため、いわゆる介護
に、下を支える介護助手を増やすという2つの
の援助といった思い切った手を打たないと、介護
職としてカウントするわけにはいきません。しか
考えが必要ではないでしょうか。
人材は集まりません。安倍総理は「若い人が介護
し、高齢者には介護の補助だったらいくらでも活
いままでは、介護職員処遇改善交付金や処遇改
の世界をめざせるような仕組みが必要である」と
躍してもらえると考えています。例えば部屋の掃
善加算の形で、現場で働く介護職員の給与を上げ
おっしゃっていますが、こうした方法も 1 つの仕
除や食事の後片付けなど介護の周辺業務について
方、昼から来る方など交代で働いていただいてい
ることに重点が置かれていました。それはそれで
組みかなと思っています。
は十分高齢者で賄えると思います。
ます。
一定の効果はあったと思います。しかし、これか
蒲原局長 介護人材の確保については、現在介
蒲原局長 介護助手の人を雇わなければ、施設
蒲原局長 東会長の話をお聞きしますと、介護
らはもう一歩踏み込み、介護福祉士の養成と介護
護福祉士をめざす学生に対して学費を貸し付ける
のスタッフが周辺業務を行うのですから、いまの
助手の高齢者は施設で働く他の職員にとっては非
助手による下支えのところに、地域医療介護総合
制度で、 5 年間働いたら返還を免除する仕組みが
コストで高齢者が雇える方法があればいいのです
常にありがたい存在だと思いますし、ご本人に
確保基金等を利用すべきではないでしょうか。
あります。また、中途で離職した人に戻ってもら
が。
とっても社会の役に立っているという実感をもつ
基金は介護分で平成 27 年度 2,285 億円ありま
うために、再就職のための準備金を貸し付けて 2
東会長 現在の処遇改善加算は介護職にしか使
とともに介護予防にもなっているのではないで
すが、施設整備に 2,041 億円、人材確保に 244 億
年間働いたら免除する仕組みもあります。
うことができません。仮にこの加算が介護報酬本
しょうか。
円となっています。内示はされていますが、実際
こうした学費や資金の貸付・免除によって、き
体に入ると、介護職の給与も上げられますし、介
施設側にも高齢者側にも、とても有益な仕組み
はなかなか施設をつくれない、つくってもそこで
ちんと資格をもつ人を中心に介護の世界に呼び込
護助手の支出に充てることもできます。
なので、うまく進められる方法を考えられればい
働く人がいないのが現状です。消費税を活用した
むことを考えています。
蒲原局長 こうした介護助手を雇うような工夫
いと思います。
恒久財源である基金を 28 年度、29 年度もこうし
2 つめは、我々が取り組んでいる介護職員の処
ができるかどうかは今後の課題になると思います。
東会長 私が三重県で取り組んできた介護助手
た使い方で継続していくのか。そうではなくて、
遇改善はきちんと進めていきます。
介護助手の高齢者は、一週間に数日働くなどの
のモデル事業は 1 つの例ですので、これを参考に
いまは施設よりも人材のほうが足りないと思った
3 つめはICTを活用して、できるだけ介護
勤務シフトになるのでしょうか。
何らかの仕組みを国のほうで考えていただけたら
ら、この使い道を見直して、もう少し人材確保の
現場の働く環境を改善していきます。
東会長 元気高齢者の介護助手事業では、ほと
と思います。
ほうにお金をかけることを考えてもいいのではな
また、東会長がおっしゃられた介護の下支えに
んどの方は週に 2 回から 3 回の勤務で、 1 日に
蒲原局長 障害者に対する支援で就労支援があ
いでしょうか。
なる介護助手については、いい提案だと思います。
3 ~ 4 時間程度です。そのため多くの高齢者介
ります。ある社会福祉法人の方から、その就労支
もし人材確保にお金を使えるのであれば、介護
東会長 介護助手については地域医療介護総合
護助手が必要となります。
援に一番合っているのが高齢者だと言われました。
福祉士の養成のほうに回すことも考えられます。
確保基金を用いたモデル事業で取り組みました。
私の施設では 15 名ほどいますが、朝から来る
いろいろな経験を積んだ高齢者がいままで培った
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ノウハウを活かすことで、障害者の就労が進む
えるといいと思います。
ケースがあるという話を聞きました。そうした高
医療の側では病床の機能分化を図り、入院から
齢者は週に 2 日でも良いということなので、東会
地域への流れが進んでいくため、そうした医療と
長の話と重なりました。高齢者ができる範囲で、
介護の連携のなかでの受け皿としての役割を果た
自分のもっているノウハウを出せるように、何か
していただきたい。
後押しできればと思います。
老健施設はいろいろなノウハウをもっています
東会長 先ほど 15 名が働いていると言いました
が、ここ数年、介護予防サロン事業も自主的にさ
が、そのうち 2 名は障害者の方です。障害者でも
れているということなので、これもすばらしいこ
エプロンたたみや後片付けなどの周辺業務はでき
とだと思っています。
ますので、元気高齢者も障害者もやれることはほ
給付による事業はもちろんしていただくことが
ぼ一緒です。元気高齢者と障害者にその部分を
大事ですが、老健施設を初めとして、地域のいろ
担ってもらえると、介護職はより介護の専門業務
いろな施設が、ノウハウや人、場所を地域に提供
に専念できると思います。
したりといったことを、自主的な活動として地域
を巻き込んで取り組んでいただく。そういう地域
老健施設の
役割と期待
づくりみたいなことを老健施設などでしていただ
くことが、高齢者や認知症、障害のある人にとっ
てやさしい地域になると思います。
東会長 最後に、地域包括ケアシステム構築や
全老健には、介護予防サロン事業も、ぜひ引き
医療・介護連携の推進に向けた老健施設の役割と
続き行っていただきたいと思います。
今後の期待をお聞かせください。
東会長 蒲原局長からは老健施設に対する大き
できれば老健施設という状態が安定して入所して
次の同時改定では、もっと医療が提供できるよ
蒲原局長 老健施設は、在宅生活への復帰をめ
な期待を述べていただきました。局長が言われた
いる施設のなかで、ある程度の医療は提供すべき
うなかたちになることを強く望んでいます。
ざすことが目的であるため、地域包括ケアシステ
ように、老健施設は在宅復帰だけではなく、より
です。病院に移って病状は改善しても、ADL や
本日はありがとうございました。今年もどうぞ
ムの構築を推進する観点から非常に大事だと思っ
在宅支援に力を入れて、在宅におられる要介護高
認知症が急激に悪化することはよくあります。
よろしくお願いします。
ています。
齢者やその方を介護している家族をどれだけサ
実態としては老健施設のなかにもいろいろな施
ポートできるかが重要になります。
設があるとは思いますが、ぜひこの趣旨をきちん
通所リハビリでサポートしたり、蒲原局長が指
と理解した上で、従来以上に在宅への流れをつく
摘した訪問リハビリでサポートする。さらに
る役割を果たしていただけることを期待していま
ショートステイでサポートする。あるいは、一定
す。ただ、東会長からお話があったように、それ
期間の施設入所でサポートすることもあります。
に向けてどのような支援をしたらいいのかという
そうしたサポートにきちんと取り組むことが、老
意味では、これからもっといろいろな工夫が必要
健施設の存在意義を示すことにもなりますし、現
になると思います。
在の在宅強化型や加算型をめざすことが、それに
また、在宅復帰までのさまざまな支援を行うと
近いものだと思います。
ともに、在宅に復帰した後のサポートとしては通
もう 1 つは、平成 30 年には医療と介護の同時
所リハビリもあれば訪問リハビリもありますし、
改定がありますが、私はもう少し老健施設で医療
そうした取り組みにも力を入れていただきたい。
を提供できるようにすべきだと考えています。や
特に訪問リハビリのサービスの割合を上げてもら
はり何かあったからすぐに病院に送るのではなく、
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