1 2016 年 12 月 8 日に発表された 7~9 月期の実質

2016/12/21
横浜支店
住所:横浜市中区弁天通 4-51
TEL:045-641-0380(情報部)
URL:http://www.tdb.co.jp/
:
2017
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2016 年 12 月 8 日に発表された 7~9 月期の実質 GDP 成長率 2 次速報は前期(4~6 月期)比 0.3%
増、年率換算で 1.3%増と、3 四半期連続のプラス成長となった。また、住宅着工戸数の増加や有
効求人倍率の上昇が続くなど改善傾向を示す指標がある一方、個人消費は依然として足踏み傾向が
みられており、業種や地域で景況感の格差が表れている。
帝国データバンク横浜支店は、2016 年の景気動向および 2017 年の景気見通しに対する神奈川県
内企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB 景気動向調査 2016 年 11 月調査とともに行
った。
※調査期間は 2016 年 11 月 16 日~30 日
※調査対象は神奈川県に所在する企業 1004 社で、有効回答企業数は 439 社(回答率 43.7%)。
1.2016 年の景気動向、
「回復」局面だったと判断する企業は 6.6%となり、前回調査(2015 年 11
月)から 2.2 ポイント減少。他方、
「踊り場」局面とした企業は 53.3%と 2 年連続で 5 割超、
「悪化」局面は 18.9%と前回とほぼ同水準、
「分からない」は 21.2%と調査開始以降で最高
2.2017 年の景気見通し、
「回復」局面を見込む企業は 12.5%で、2016 年見通し(2015 年 11 月調
査)から 3.9 ポイント減少。また、
「悪化」局面を見込む企業も減少した一方、
「分からない」
が約 3 割と調査開始以降で最高。先行き見通しに対する不透明感が一段と高まっている
3.2017 年景気への懸念材料は「米国経済」(47.2%、前年比 36.0 ポイント増)が最多。2 位は
「人手不足」、3 位は「為替(円高)。前回トップだった「中国経済」
(24.6、同 22.4 ポイント
減)
、2 位だった「消費税制」
(15.3%、同 22.3 ポイント減)は大幅に減少
4.景気回復のために必要な政策、
「個人消費拡大策」
「所得の増加」
「個人向け減税」
「法人向け減
税」
「年金問題の解決(将来不安の解消)
」が上位 5 項目でそれぞれ 3 割超となった。「出産・
子育て支援」や「介護問題の解決」を重要施策と捉える企業も 2 割前後
5.トランプ次期米大統領の経済政策が日本経済に与える影響は、
「プラスの影響」が 10.0%、
「マ
イナスの影響」が 41.5%、「影響はない」が 11.2%、「分からない」が 37.4%
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2016 年の景気動向について尋ねたところ、
「回復」局面であったと回答した企業は 6.6%となり、
2015 年の景気動向(2015 年 11 月調査)から 2.2 ポイント減少した。他方、「踊り場」局面とした
企業は 53.3%と 2 年連続で 5 割を超えたほか、「悪化」局面とした企業は 18.9%と前回調査とほ
ぼ同水準となった。また、「分からない」は 21.2%と調査開始以降で最も高かった。
「回復」局面とみている企業からは「個人消費にはまだ弱さがあるが、景気そのものは回復基調
と思う」(建設業)や「年後半になってから少しずつ受注が増えている」(機械製造業)など、緩
やかに景況感の回復を実感しているという意見がみられた。しかし、「踊り場」局面が半数超を占
めるなかで、「景気回復局面に移行するためのポイントが不透明で、いつ悪化に振れてもおかしく
ない踊り場にあると感じる」(医薬品・日用雑貨品小売業)や「周りを見回してもGDPの成長率
に見合うプラス要因は見つからない」(建設業)といった、業種や企業間で現状の景気動向が二極
化している様子もうかがえる。
「悪化」局面とした企業からは、「昨年後半から売上高の前年同月比減少が続いており、改善の
兆しがない」(広告代理業)や「先行きの不透明感から、企業や商店主、ビルオーナーなどが設備
の更新を控えるようになっている」(建設業)などの声がみられた。また、「分からない」では、
「日本の景気は大手製造業だけが好調で、中小企業にまで波及していない」(メンテナンス・警備・
検査業)や、「政府や日銀が発表する景気関連の数字は見せ掛けの数字と考えている」(人材派遣・
紹介業)といった意見があがった。
ア ベ ノミ ク ス は 開
始から 4 年目を迎え
たが、2016 年の景気
動向を回復局面と捉
える企業は 1 割にも
満たず、じわじわと
減少している。他方、
「踊り場」局面とす
る見方は 2 年連続で
半数を超えているほ
か、
「分からない」と
する企業も調査開始
以降はじめて 2 割を
超え、過去最高の割
合となった。2016 年
の景気に対して半数
超の企業が「踊り場」
局面と認識していた
なかで、判断を留保
する企業も多く、不
透明感の漂う一年だ
ったと言えよう。
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企業の 2017 年の景気について、「回復」局面を迎えると見込む企業(12.5%)は 2016 年見通
し(2015 年 11 月調査、16.4%)から、3.9 ポイント減少した。また、「悪化」を見込む企業も
2016 年見通しより 4.2 ポイント減少した一方、「分からない」とする企業が約 3 割に達し、先行
き見通しが一段と難しくなっている様子がうかがえる。
業界別では、『農・林・水産』『金融』『小売』の「回復」と見通す企業の割合が 0.0%とな
っているほか、『不動産』『製造』『サービス』も全体平均を下回っている。また、『不動産』
『製造』『サービス』では、「回復」が「悪化」より 5 ポイント以上低くなっており、景気の先
行きを厳しく見ていることがわかる。
「回復」を見込む企業からは、「オリンピックに向けての建設需要の盛り上がりで景気は良く
なると思う」(運輸・倉庫)や「今後、IoT 関連の業務依頼が増えることが見込まれる。中国か
らの開発依頼も期待できそう」(専門サービス業)など、オリンピックや海外経済の活発化に期
待する声がみられた
ほか、「悪化」とす
201
る企業からは「大手
の輸出関連企業は円
安方向になって景気
は改善傾向になると
思うが、我々のよう
な国内型の中小企業
にとっては円安のメ
リットは少ない」
(広告関連業)とい
った意見もあった。
しかし、全体を通
してみると、「国内
経済は今後トランプ
氏が打ち出す政策に
より大きく左右され
ると思うので、今後
の景気動向は読めな
い」(機械・器具卸
売業)といった、次
期米国大統領による
経済政策の行方に対
する懸念を持つ企業
が非常に多かった。
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2017 年の景気に悪影響を及ぼす懸
念材料を尋ねたところ、
「米国経済」
が 47.2%で最も高かった(3 つまで
の複数回答、以下同)
。
「米国経済」は
前回調査(2015 年 11 月)から 36.0
ポイント増加しており、トランプ次
期大統領が打ち出す経済政策による
米国経済への影響を懸念する企業が
急増していることが浮き彫りとなっ
た。逆に、前回トップだった「中国経
済」は同 22.4 ポイント減の 24.6%、
前回まで 2 年連続で 2 位だった「消
費 税 制 」は同 22.3 ポイ ン ト 減の
15.3%となっており、景気の懸念材
料はこの 1 年で大きく様変わりし
た。また、
「人手不足」は 26.7%で 2
位、
「為替(円高)
」は 26.2%で 3 位
となっており、景気を左右する重要
項目として上位にあげられた。
業界別にみると、「米国経済」
では『サービス』や『卸売』など
7 業界、
「人手不足」では『建設』
『運輸・倉庫』が 4 割を超える企
業で景気への懸念材料として挙
げている。また、「為替(円高)
」
は『小売』が 4 割超となった。
企業からは、「次期米国大統領
の政策がどうなるかということ
に尽きる」
(情報サービス業)や
「トランプ新大統領の政策と手
腕が未知数で今後の景気を見通
すことはできない」(その他の卸
売業)といった、米国経済の先行
き不透明感をあげる企業が多か
った。
(%)
2016年11月調査 2015年11月調査
1
米国経済
47.2
11.2
2
人手不足
26.7
23.0
3
為替(円高)
26.2
10.5
4
中国経済
24.6
47.0
5
原油・素材価格(上昇)
23.9
24.3
6
為替(円安)
15.9
15.3
7
消費税制
15.3
37.6
8
物価下落(デフレ)
13.4
6.6
9
所得(減少)
10.0
7.9
10
金融市場の混乱
8.9
5.5
注1: 以下、「株価(下落)」(8.7%)、「金利(上昇)」(8.4%)、「地政学リスク」(8%)、「TPP協定
の実行」(7.7%)、「法人税制」(6.6%)、「雇用(悪化)」(5.5%)、「政局」(3.9%)、「物価上
昇(インフレ)」(3.4%)、「税制(消費税制、法人税制を除く)」(2.1%)、「欧州経済」
(1.6%)、「訪日観光客数の減少」(0.9%)、「その他」(2.5%)
注2:矢印は2015年11月調査より5ポイント以上増加、または減少していることを示す
注3:2016年11月調査の母数は有効回答企業439社。2015年11月調査は457社
(構成比%、カッコ内社数)
米国経済
全体
47.2
農・林・水産
0.0
(0)
金融
33.3
(1)
建設
人手不足
(207) 26.7
26.2
(115)
-
(439)
0.0
(0) 100.0
(1)
-
(1)
0.0
(0)
0.0
(0)
-
(3)
45.8
(33) 40.3
(29)
20.8
(15)
-
(72)
不動産
45.0
(9) 30.0
(6)
30.0
(6)
-
(20)
製造
43.3
(58) 24.6
(33)
27.6
(37)
-
(134)
卸売
47.6
(49) 17.5
(18)
28.2
(29)
-
(103)
小売
45.5
0.0
(0)
45.5
(5)
-
(11)
運輸・倉庫
47.6
(10) 42.9
(9)
14.3
(3)
-
(21)
サービス
56.2
(41) 28.8
(21)
26.0
(19)
-
(73)
その他
100.0
(1) 100.0
(1)
0.0
(0)
-
(1)
(5)
(117)
為替(円高)
注1:網掛けは神奈川県全体以上を表す
注2:母数は有効回答企業439社
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今後、景気が回復するために必要な政策を尋ねたところ、
「個人消費拡大策」が 38.3%(複数回答、
以下同)と 3 年連続でトップとなった。次いで「所得の増加」
「個人向け減税」
「法人向け減税」
「年
金問題の解決(将来不安の解消)
」が 3 割を上回った。企業は、今後の景気が回復するために、所
得増加や将来不安の解消を通じた個人消費の拡大が依然として重要な課題と捉えているとともに、
地域経済を下支えする公共事業や企業の競争力向上を図る法人向け減税を求めていることが浮き
彫りとなった。
また、政府の成長戦略の柱となる女性活躍に関しては、
「出産・子育て支援」
(23.2%)や「介護
問題の解決(老人福祉、介護離職など)」
(18.9%)が 2 割前後となった。
企業の声としては、「大企業の法人税減税をやめて、中小、零細企業の税金を安くし、活性させ
る政策をとれば、地方での雇用と消費が増えていくと思う。一時的には政府の税収が減ったとして
も、結果的には税収が増えていくこ
とが見込まれ地域経済が活性化され
(%)
る」
(建設業)といった、中小企業や
2016年11月調査 2015年11月調査
地方企業への雇用促進により消費拡 1
個人消費拡大策
38.3
41.4
大につなげる政策を必要とする意見 2
所得の増加
36.7
36.3
があがった。
3
個人向け減税
34.9
31.9
また、
「社会保障、インフラの抜本
的見直しをしないと、将来の不確実
性により、個人消費、投資の伸びは
期待できない」
(医薬品・日用雑貨品
小売業)や、
「日本では政府がいくら
少子化対策をしても限りがあり、経
済活性化のためには移民の受入れを
考えなくてはいけない」
(飲食料品卸
売業)といった、社会保障の見直し
や人口減少問題の対策についての意
見も聞かれた。
4
法人向け減税
31.7
40.5
5
年金問題の解決(将来不安の解消)
31.4
27.4
6
公共事業費の増額
28.5
25.2
7
規制緩和
26.7
28.0
8
雇用対策
25.1
24.1
9
出産・子育て支援
23.2
22.1
10
介護問題の解決(老人福祉、介護離職など)
18.9
17.1
注1: 以下、「財政再建」(16.6%)、「物価(デフレ)対策」(15.5%)、「TPP協定の実行」
(13.4%)、「地方創生」(10.3%)、「原発事故の収束」(9.8%)、「災害対策」(9.3%)、「研究
開発の促進税制」(8.7%)、「女性登用」(8.2%)、「金融緩和政策」(7.5%)、「環境関連の
優遇策(補助金など)」(5.9%)、「震災復興」(5.5%)、「個人向け手当の創設」(5.2%)、
「地方への税源移譲」(4.8%)、「道州制の導入」(4.6%)、「その他」(5.2%)
注2:矢印は2015年11月調査より5ポイント以上増加、または減少していることを示す
注3:2016年11月調査の母数は有効回答企業439社。2015年11月調査は457社
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11 月 9 日(日本時間)、米大統領選挙で共和党候
補のトランプ氏が勝利した。選挙期間中の発言等が
報道されるなか、大統領就任後の経済政策(トランプ
ノミクス)や対日政策への注目が高まっている。
プラスの影響
10.0%
分からない
そこで、トランプ次期米大統領による経済政策
(トランプノミクス)が、日本経済にどのような影
響を与えると思うか尋ねたところ、
「プラスの影
響」と回答した企業は 10.0%と 1 割にとどまっ
た。他方、
「マイナスの影響」は 41.5%で 4 割超に
のぼった。また、
「影響はない」は 1 割程度だった
ほか、
「分からない」が 37.4%と、約 4 割の企業が
トランプノミクスによる影響を測りかねていること
が明らかとなった。
37.4%
マイナスの影響
41.5%
影響はない
11.2%
注:母数は有効回答企業439社
「マイナスの影響」があると回答した企業を業界別にみると、
『サービス』
(47.9%)、
『運輸・
倉庫』
(42.9%)、
『製造』
(42.5%)
、
『建設』
(40.3%)が 4 割を超えている。他方、
『金融』
(33.3%)
、
『不動産』
(35.0%)、
『小売』
(36.4%)は最も高い『サービス』より 10 ポイント以上低く、業界
によりトランプノミクスが日本経済に与える影響について温度差が表れる結果となった。企業は
トランプ氏の経済政策に対して不明な部分が多いと考えつつも、日本経済への影響を慎重かつ厳
しくみている様子がうかがえる。
60
50
40
30
20
10
0
(%)
47.9
42.9
42.5
40.3
38.8
36.4
35.0
33.3
0.0
運
輸
倉
庫
製
造
建
設
卸
売
小
売
不
動
産
金
融
農
林
水
産
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2016 年の景気は、
「踊り場」局面と考える企業が 2 年連続で半数を超えた一方、
「分からない」
とする企業も 2 割を超えて調査開始以降で最高の割合となるなど、不透明感の漂う一年だった。
業種や企業間で景気動向が二極化している様子もうかがえた。さらに、2017 年の景気を「回復」
「悪化」局面と見込む企業は前回調査より減少し、
「分からない」と回答した企業が大きく増加し
ており、先行きへの見通しが一段と難しくなったとみている傾向も表れた。
とりわけ、懸念材料として「米国経済」を挙げる企業が急増した。トランプ次期米大統領の経済
政策(トランプノミクス)や対日政策に対する方向性が不透明なこともあり、日本経済にどのよう
な影響を及ぼすか測りかねているようだ。トランプノミクスが日本経済に「マイナスの影響」を与
えると考えている企業は 4 割超となる一方、どのような影響があるか「分からない」とする企業も
約 4 割となっている。トランプノミクスに対しては不明な部分が多いものの、企業は日本経済へ
の影響を慎重かつ厳しくみている様子がうかがえる。
さらに、
「人手不足」が依然として懸念材料として上位にあげられたほか、石油輸出国機構(OPEC)
加盟国に加えて非加盟国においても原油の減産で合意するなど、
「原油・素材価格(上昇)」も懸念
されている。他方、
「中国経済」や「消費税制」は前回調査から大幅に減少しており、景気の先行き
に対する懸念材料はこの 1 年で大きく様変わりした。今後の景気回復に向けて、企業は個人消費
拡大策や所得増加、年金問題など将来不安の解消を通じて、個人消費が活発化することが重要と考
えている。
2016 年の企業の景況感は、年初から年央にかけて悪化傾向をたどったものの、9 月以降は 3 カ
月連続で改善して推移している[「TDB 景気動向調査 2016 年 11 月」
(帝国データバンク)]
。海外
動向に先行き不透明感が漂うなか、今後、日本経済が自律的な好循環を達成するため、政府は消費
活性化と企業業績の改善に向けた政策を一段と推し進める必要性が高まっている。
(株)帝国データバンク横浜支店情報部
担当:遠峰 英利
TEL 045-641-0380 e-mail [email protected]
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