麻生 泰氏 広瀬 勝貞氏 森 博幸氏 貫 正義氏

九州経済連合会 会長
(麻生セメント 会長)
麻生 泰氏
14
「九州・沖縄の強みを生かした発展モデルを
構築し、
〝明るい九州〟
の実現を目指す」
九州地方知事会 会長
(大分県知事)
広瀬 勝貞氏
18
「連携を強化して地方創生をさらに
〝加速〟
。
魅力を深めて国内外での存在感を一層高める」
九州商工会議所連合会 会長
(西日本シティ銀行 副頭取)
礒山 誠二氏
「熊本地震を契機に改めて商議所の役割を確認。
中小企業のサポートを通して地域活力創出へ」
九州市長会 会長
(鹿児島市長)
22
森 博幸氏
26
「熊本地震を経て九州118市がさらに団結。
〝九州はひとつ〟
の合言葉で連携強化図る」
九州経済同友会 代表委員
(九州電力 会長)
貫 正義氏
30
「これまで以上に
『実践』
と
『連携』
を重視し
多面的な観点から
『時代の一つ先を行く提言』
」
九州大学 総長
久保 千春氏
34
「18歳人口減少時代に求められる運営努力。
研究開発と人材育成拠点としての役割は拡大へ」
聞き手/本誌編集長 山口 真一郎
13
Zaikai Kyushu / JAN.2017
「九州・沖縄の強みを生かした発展モデルを
構築し、〝明るい九州〟
の実現を目指す」
麻生 泰氏
「Let's move JAPAN forward from 九州 ! 」
というミッションを掲げ、
「九州から日本を動かそう」
と意欲的に活動を開始してから、2017 年 5 月に 2
期満 4 年を迎える「麻生九経連」
。麻生泰会長は「こ
の 3 年半に取り組んできた活動の成果が問われる重
要な年」と位置づけるとともに、九州が持つさまざま
とが
〝明るい九州〟の
な強みを、さらに尖らせることで、
実現につなげていきたいと語る。
いますし、日本経済を長期間覆っていた閉塞
倍晋三首相による政権運営は非常に安定して
伸び悩んでいることも確かです。しかし、安
が、国内総生産(GDP)などの数字が少し
麻生 おっしゃるように経済的な見通しで
は〝明るさ〟が感じられるようになりました
うなお考えですか。
経済の状況と今後のあり方についてどのよ
感が漂っています。その中での九州・沖縄
︱経済的には「明るさ」が感じられるよ
うになりましたが、デフレ脱却には不透明
労働環境を整備し
「生涯現役」
に
健康寿命を重視した生活を推進
九州経済連合会 会長
(麻生セメント 会長)
14
Zaikai Kyushu / JAN.2017
います。
に結びつけていくかが問われているのだと思
てチャンスと責任をどう捉え、これらを実践
工夫が試されているわけですし、経済界にとっ
が潜在しています。地方創生は地方の知恵と
が、目を転じればアジアには多くのチャンス
影響などで「煮詰まる日本」かもしれません
る可能性があります。国内は、少子高齢化の
ば、農業で食べていこうという生産者も増え
は生計を立てていけないからと、サラリーマン
てくることが一番いい形なわけですが、農業で
が全国に比べて高いので、次世代が家業に戻っ
産物の輸出促進を目的とした会社ですが、九
九経連では2016年に「九州農水産物直
販株式会社」を設立しました。これは農水畜
に動くべきです。
次産業の支援も
しをチャンスと捉え、経済人がもっと積極的
の強い呼びかけだと思いますので、この後押
る地方、あるいは地方経済界に向けた国から
ます。特に、
「地方創生」は九州をはじめとす
感を打ち破ろうとする大変な意気込みを感じ
と言えるのですが、やはり今後は経営者側と
なので、次の準備は本人の自覚と責任の問題
言えば、定年がいつ来るかはわかっていること
二通りに分けられます。経営者側の立場から
きしているタイプと、消耗しているタイプの
友人たちを見ると、会社を退職しても生き生
は必定です。私は現在 歳ですが、同世代の
えても勤められる制度設計を求められること
いないでしょう。経営者側としても 歳を超
はさらに働き方が多様化していくことは間違
麻生 ひと昔前のような終身雇用制度が
守られる時代ではなくなっていますし、今後
でとは随分と違ってくることになりますね。
︱人生 歳、100歳という新たな時代
に突入したとなると、雇用の形態もこれま
ですね。
からもぜひ独自モデルの構築に取り組みたい
的なモデルを構築しておくべきですし、九州
なりますので、日本はその先導者として先進
じめとするアジアが、後追いしてくる流れに
います。日本の超高齢社会は将来、中国をは
この流れをバックアップしていきたいと考えて
なることは重要なことです。九経連としても
る中で、女性や高齢者が仕事に就きやすく
展で、労働力の不足が経営課題となりつつあ
性の向上につながりますし、少子高齢化の進
を改善することは、企業にとっても労働生産
す。労働環境を整え、ワークライフバランス
を読み込んだりして頭を使うので、健康寿命
学習が必要ですし、学習するということは本
に対応しなければなりません。そのためには
患者の容態に応じて自分で判断し、臨機応変
異なり、在宅では、複数の事前指示の中から、
アも、すぐ側に同僚がいる病院での環境とは
す。看護師として医師の指示の下行う患者ケ
引き続き看護師として活躍している人がいま
例えば、麻生グループの飯塚病院の看護師
の中には、定年後、病院を移り、在宅分野で
わけです。
いては生涯収入にもつながっていくことになる
けることが大事だと思います。つまり、生涯
は当然ですが、何か学習するテーマを持ち続
では、健康寿命を延ばすには何が必要か、
と考えると、食生活をはじめとする生活管理
寿命となるわけです。
リ」を実践していくために重要なのが、健康
れを防ぎ、理想と言われている「ピンピンコロ
態に陥り、寿命を全うしているわけです。こ
いから6|7年間は不本意なまま寝たきり状
男性だと 歳ぐらいから、女性では 歳ぐら
平均6|7年寝たきりの状態となっています。
せん。ある統計によれば、人は亡くなる前に
退職後も一定期間、現役で活躍し続けるた
めには「健康寿命」を伸ばすことが欠かせま
につながる可能性もあります。
ることが、その企業の魅力となって人材確保
進めています。九州は第 次産業の構成比率
をしている人も多くいます。
〝伸びゆくアジア〟市場を取り込
しかし、
むことで、輸出を軌道に乗せることができれ
81
していくのか、そのための仕組みや雇用の場
が伸びることにもなると思います。
現役と生涯学習は相関関係にありますし、ひ
73
一方、平均寿命はどんどん伸びているわけ
70
を作るのも仕事だと思います。長く勤められ
70
経連では、林業も含め第
︱最近、政府では、経済再生の取り組み
と併せて、働き方を改革する動きがみられ
しても、 歳、 歳の人材をどのように雇用
ます。
「働き方」に関する問題は、社会問
麻生 題というだけではなく、経済問題でもありま
Zaikai Kyushu / JAN.2017
15
70
90
60
1
1
時に来ているのではないでしょうか。そのため
ことを前提にした人生プランを真剣に考える
ています。
ます。東京から見ても福岡は大いに期待され
体のポテンシャルを高めることにつながってい
ノの吸引力は抜きん出ており、これが九州全
らの交付金が減少し続けていることから、守
クな成功例が少ないと思います。大学は国か
んし、九州では全体的に産学連携のシンボリッ
あまりインパクトを持って伝わってきていませ
は現役とはいえ、毎日の出勤ではなくなり収
勘案すると大体同じ水準になります。定年後
す。九電工も西部ガスもまたしかりです。北
産事業や海外事業で攻めの姿勢を強めていま
営のイメージが強かった西日本鉄道も、不動
いるのに「なぜやらないのか」となるわけです。
が自らの「知」で稼ぐことを大いに推奨して
交付金の減収を穴埋めするだけでなく、大学
文部科学省からいえば、大学の知的財産
を活用した大学発ベンチャーを育てることで、
が進むことも想定されます。その意味で九州
す。例えば、東 京大の関 連するベンチャー
麻 生 残 念ながら九 州の産 学 連 携の基
盤はそれほど強いものではないと感じていま
提供だけでなく、事業についての有効なアド
ランを見定める目は持っていますので、資金
成を考えています。経済界としては、事業プ
状況変化についてどのように見ていますか。
ます。一概に東大と比べるわけにはいきません
時点)東大に多大な事業収入をもたらしてい
1兆3000億円を超えており、
(
現在、九州の大学発ベンチャーの支援ファ
ンドとしては、西日本シティ銀行と産学連携
本人の学生だけでなく、留学生も含めます。
16
Zaikai Kyushu / JAN.2017
ですから、今後は寿命が 歳や 歳まである
には学習、現役、収入の三つの要素を意識す
いつまでも変わりません。
入も下がるでしょうが、地方ならば都会に比
九州市ではTOTOや安川電機などの製造業
大学側としても、ベンチャーでの成功例をた
勢に回る傾向がありますが、それでは状況は
る必要があります。加えて地方で生活する優
また、九州の経済界は明るく前向きなリー
ダーが多いのも特徴です。例えば 年には九
位性も出てきます。地方における 歳までの
べて生活コストが2|3割安くなるわけです
も元気です。
州旅客鉄道の上場もありましたし、手堅い経
から、都会生活では得られない良さを生かし
野でもリーダー的な存在がいて活気がありま
くさん作り、資金が潤沢になれば、学生も集
て、健康寿命を延ばして生涯現役で生活する
ます。
でのベンチャー企業の育成機運が今ひとつ盛
急いでテコ入れしなければ九州はアジアの中
す。自治体でも福岡市や北九州市のように国
徴や強みを生かした成長施策に取り組んでお
で取り残されてしまうでしょう。
り上がりに欠けていることを懸念しています。
歳までの人生をネガティブではなく、楽しく
り、外からの評価も高まっています。
家戦略特区に認定されるなどして、都市の特
前向きに捉えて過ごすための人生設計が求め
られているのです。
︱ベンチャー企業にとって最終的な関門
となるのは事業の方向性だけでなく、資金
︱さて、九経連の会長に就任して 年半
が過ぎました。さまざまな観点で九州の実
のうち、上場した企業の時価総額は合計で
ておられますか。
年半の
麻生 九州は全国的に見てさまざまな面
で恵まれていると思います。特に、けん引役
が、九州大などのベンチャーに関する動きは
情を見られたと思いますが、この
バイスもできるはずです。対象となるのは日
ともいえる福岡市の持つ都市としての人・モ
年
9
15
3
3
16
月
ベンチャー育成を産学連携で支援し
将来を見据えた成長基盤を強化する
麻生 そこで、一例として 年度中には九
州の産学が連携するベンチャーファンドの組
︱各大学とのコミュニケーションも図られ
ていると思いますが、九州における産学連
いずれにしても、自分の生きがいを自分で
見いだしていくことが大切ですし、 歳や
1
問題が大きく立ちはだかります。
95
携の成果と潜在力についてはどのように見
90
人生モデルを九州で作っていくべきだと思い
まってくるでしょうし、大学の特色ある研究
収入と、都会での 歳までの収入を総合的に
16
95
75
90
そういった九州をけん引する主要企業に加
え、農業、水産、林業などの第 次産業の分
65
すが、この支援ファンドはQBキャピタルに続
機構九州が出資したQBキャピタルがありま
完的な関係を築いていくことが重要になっ
今後は沖縄との交流を緊密にして、相互補
うまく活用していくことも重要になります。
のためのモデルを作っていく考えです。
し、九州・沖縄から全国に向けた子育て応援
てくるのではありませんか。
くものとして位置付け、九経連としてもベン
チャーの支援に乗り出す考えです。ゆくゆく
︱ 年は 期目の総仕上げの年となりま
すが、ご自身ではどのように位置付けてお
はファンドの支援対象を九州以外にも広げて、
麻生 例年の沖縄連携フォーラムに加え、
年は九州地域戦略会議を沖縄でも開催し
東京や海外なども対象にしたベンチャー支援
き、今後、沖縄との交流を強化していくべき
ましたが、沖縄の持つ高い潜在力に改めて驚
長に就任して 年半が経過したわけですが、
本を動かそう)というミッションを掲げて会
「Let's move JAPAN
麻 生 forward from 九州!」
(九州から日
られますか。
だと実感した次第です。観光面でいえば、沖
月末で一旦、これまでの取り組みにつ
ほど多くありません。
九州のように韓国からのインバウンドはそれ
施策を加速させていく考えです。好調なイン
州が持つ強みや魅力を向上させていくための
たいと思います。その上で、 年度からは九
いて、どのような実績が出ているかチェックし
年
その点でも沖縄との交流が緊密になれば、
双方でインバウンドを送りあうことで、総体
バウンドや農林水産業などの第 次産業の支
縄は台湾からのインバウンドが多いのですが、
的にインバウンド需要を底上げすることがで
援に加え、ものづくりの伝統に裏打ちされた
17
も多分に同調できるところがありましたので、
がるのではないかと期待しています。この他に
農産物の輸出についても今よりも選択肢が広
物基地を九州全体で活用することができれば、
併せて課題も改善していかなければなりま
せん。インバウンドは好調とはいえ、無料公
きます。
航空機産業など製造業の分野にも注力してい
す。地域戦略会議では安心子育て応援宣言を
化が進む中で、断然トップの出生率の高さで
何より、沖縄で驚いたのは、全国的に少子
ンチャー支援もそうですが、明るい九州を実
ンスキルは喫緊の課題と言えます。先述のベ
化、特に外国語対応力を含むコミュニケーショ
を含めたインバウンドに対するソフト力の強
まだ、十分とは言えませんし、九州の観光地
「沖縄宣言」として採択しました。実は、九
現していくためには、九州方式による発展戦
ることで存在価値を高めていかなければなり
り、トップ に都市化が進む福岡県を除く
県も入っています。その意味で、九州・沖縄
ません。その具現化に向けて本格的に取り組
略のモデルを構築し、それを国内外に発信す
州は全国の出生率トップ に 県が入ってお
くことが肝心です。
衆無線LAN「Wi|Fi」と他言語対応は
1
を目指したいと思います。
2
3
は少子化時代に必要な対策を実践し、その効
8
6
沖縄を含めた高い潜在力を活用し
「九州方式」
による発展戦略を加速
︱ 九 州の発 展 には沖 縄の持つ潜 在 力 を
17
3
きると感じましたし、 時間稼働の空港・貨
17
今後は沖縄と一体になって、ともに成長してい
24
10
んでいく年にしたいと思っています。
20
果を確かめるには良い環境にあると思います
Zaikai Kyushu / JAN.2017
17
16
「連携を強化して地方創生をさらに
〝加速〟
。
魅力を深めて国内外での存在感を一層高める」
広瀬 勝貞氏
国内景気は緩やかな回復基調にあるとされるが、
地方が十分に恩恵を享受しているとは言い難い。問
われるのは、地域の一体的な発展を実現する具体的
な戦略と行動である。九州地方知事会はこれまでも、
広域的な課題の解決に向けて各県が連携して取り組
み、総合力を高める各種施策を実践してきた。2017
年は「地方創生のさらなる取り組みの加速」を最大
のテーマに設定し一層の活力創出を図る方針だ。
たことを強く感じさせられた 年となりまし
想像もできない事態が起こりうる時代になっ
氏が選ばれるなど、これまでの経験則からは
国次期大統領は実業家のドナルド・トランプ
広瀬 国際的な動きを見ますと、英国民
はEU(欧州連合)からの離脱を選択し、米
︱2016年、国内外ではさまざまな動
きがありました。どのようにみていますか。
地震後に見せた九州の
「底力」
学んだ教訓を次へとつなげる
九州地方知事会 会長
(大分県知事)
伴う円高や株安の進行に加えて、中国やア
き不透明感の高まりや、トランプ政権誕生に
た。英国のEU離脱に伴う海外経済の先行
1
18
Zaikai Kyushu / JAN.2017
のかが重要な課題だと言えます。そうした中、
極的な施策により新たな推進力を生み出せる
いるようなところもありますので、政府が積
であるアベノミクスの推進力が弱まってきて
感じています。しかし、安倍政権の看板政策
一方、国内経済は、このところ弱さもみら
れますが、緩やかな回復基調が続いていると
解しているのではないでしょうか。
受け止め、正確に見極めることの重要性を理
じていませんから、多くの方が事態を冷静に
これまで株価や為替の動きに大きな混乱は生
べき景気の下振れリスクはあります。しかし、
ジア新興国の経済の失速など、今後、留意す
3原則とする「復旧・復興プラン」に取り組
「被災者の痛みの最小
一方、熊本県は現在、
化」
「創造的復興」
「熊本のさらなる発展」を
られます。
にない支援策が奏功した事例も数多く見受け
支援する「グループ補助金」など、これまで
た複数の事業者を対象に早期の事業再開を
て取り組んだ「九州ふっこう割」や、被災し
また、国の交付金を活用し、官民一体となっ
や被災市町村に対する支援にあたりました。
方式を基本とし、各県が一体となって熊本県
とに支援担当県を割り振るカウンターパート
一定の成果がありました。その際、自治体ご
携しながら人的・物的な広域応援を実施し、
るが故に抱える課題を精査し、有事の際に九
る必要があると感じています。島しょ県であ
また、九州地方知事会の重要な仲間である
沖縄県についても、防災、減災、強じん化と
いて検討したいと考えています。
な物資輸送拠点の確保や物流体制の構築につ
民間倉庫の活用など、県域を超えた広域的
経験を踏まえて、各県間の拠点の相互利用や
への物資搬送に支障が生じました。そうした
通渋滞が発生して拠点への物資集積や避難所
定していた物資集積拠点が被災したほか、交
今回の地震で熊本県では、初動での利用を想
規模災害への備えを進めたいと考えています。
いう観点から、一体的な対策について検証す
地方に求められるのは「一億総活躍社会」と
州・山口の 県が円滑に対応できるように広
元気な熊本県を取り戻すのだという意気込み
まれています。厳しい状況ではあるけれども、
える地方創生への取り組みを着実に進めるこ
で取り組まれている姿には非常に勇気付けら
いう新たな政府目標のメインエンジンとも言
とだと考えています。
れますし、しっかりと支援を継続しなければ
ならないと感じています。
︱緩やかな回復基調という実績を残した
アベノミクスの流れをさらに、価値あるもの
にするためにもうひと押しの努力が必要だ
域支援体制について研究してまいります。
れません。そうした施策が、より良い方向に
倍政権は今、最も重要な局面にあるのかもし
が大きな魅力の一つですが、同時に自然災害
要があると考えています。九州は豊かな自然
広瀬 熊本地震からの復旧・復興と併せ
て防災・減災対策にもしっかりと対応する必
とも継承する必要があると言えます。
圏と比べて景気回復が実感できていない面は
いる」と判断しています。東京などの大都市
福岡支店は九州の景気を「緩やかに回復して
広瀬 熊本地震からの 日も早い復旧・
復興を目指した各施策の成果により、日銀
︱九州経済の現況を、どのように見てい
らっしゃいますか。
「緩やかな回復」
本物にするため
思い切った施策の推進が不可欠
向かうように協力するのは地方が果たすべき
への備えが不可欠な地域でもあります。従っ
あるものの、 年 月の九州・沖縄地区の有
︱これまでの震災で得た教訓が熊本地震
で生かされたように、熊本地震で学んだこ
使命だと感じています。特に九州の場合、熊
て、ハード・ソフト両面から九州の強じん化
効求人倍率は ・ と、統計が残る1963
地方知事会としては、広域応援の取り組みを
年以降で最高となるなど、明るい兆しもみ
1
られます。また、
「ラグビーワールドカップ
26 10
検証・評価し、南海トラフ地震など今後の大
1 16
広瀬 目の前の変化を恐れず、新たな目標
に向かって政策を推し進めるという点で、安
本地震からの復旧・復興という大きな課題が
を図ることが重要だと言えます。また、九州
ということでしょうか。
8
あります。地震発生直後、九州地方知事会
は「九州・山口 県災害時応援協定」などに
基づいて、関西広域連合や全国知事会とも連
Zaikai Kyushu / JAN.2017
19
9
も、経済活性化の後押しになると期待してい
らざるを得ないケースが多いことも事実で
受け皿がなく、中には帰国という選択を取
のですが、そうした希望を実現する十分な
九州で働きたいという希望を持つ人も多い
も必要だと考えています。
認識してもらえるような環境を整備すること
日本の中で最も起業しやすい場所が九州だと
談に応じるなど具体的な対策を講じることで、
都
ます。開催される福岡市や熊本県・熊本市、
す。九州経済にとっての損失を防ぐために
2019日本大会」が開催される国内
大分県はもちろん、九州全域に効果が及ぶ
も、優秀な人材をしっかりと生かせる体制
るようです。
︱経済界からも、規制改革など思い切っ
た政策を講じるべきという指摘が増えてい
ではないでしょうか。
図るなど、既成概念に捉われない発想が大切
もたせたり、サービス産業の生産性の向上を
ては、外国人労働者の雇用形態に弾力性を
対策が必要だと認識しています。対応策とし
日本は人口減少社会にあることからも早急な
約型の業種では人手不足が顕著になっており、
なテーマの一つになっていますが、特に労働集
面を持っています。九州地方知事会でも主要
広瀬 産業や業種によって生じている人
手不足は、景気の沈滞につながりかねない側
ミスマッチといった課題も聞かれます。
いると言えます。一方で、人手不足や雇用の
︱有効求人倍率が過去最高となったのは、
九州経済の底上げが図られたことを示して
事だと考えています。
す。そこで、起業したい留学生が事業概要を
が煩雑など、大きな壁が存在するのが現実で
り、会社設立後のビザ(査証)の変更手続き
たいと思っても、高額な資本金が必要だった
ます。しかし、大学卒業後に日本で起業し
広瀬 留学生の中には、日本人学生より
もビジネスに対する意識が高い学生も多くい
うことですね。
︱九州で学んだ留学生が域外に流出する
ことは、大きな損失だと認識すべきだとい
経緯が背景にあります。
どの取り組みを進めているのも、そうした
人の起業に必要な条件に関する規制緩和な
を設置し、留学生の労働時間の制約や外国
行政で構成する
「外国人材活用検討チーム」
経済連合会が事務局となり、経済界と大学、
を認識すべきだと思います。大分県と九州
ければならないほど事態は逼迫していること
体的な内容や期待される効果を指し示さな
な手段だと言ってきたわけですが、より具
決を図る上で、これまでは規制緩和が有効
︱具体的には、どういった施策を重視さ
れますか。
べきだと考えています。
に生かし、地方創生の取り組みを一層加速す
高い、という恵まれたポテンシャルを最大限
人口の圏域内移動率の割合が東京圏についで
て、①アジアのゲートウェイという地理的優
証しだと考えています。この伸びしろに加え
これは、まだまだ伸びしろが大きい何よりの
人口や面積が匹敵するオランダに及びません。
よく指摘されますが、九州の域内総生産は
うくらいの気概が必要ではないでしょうか。
ならないなら、どこが元気になるのだ」とい
方創生を九州がけん引する」
「九州が元気に
「地方創生の取り組みのさらなる加
広瀬 速」が最大のテーマだと認識しています。
「地
のでしょうか。
︱九州が強みを発揮して存在感を高める
には、どういった観点からの施策が必要な
市のうち九州では 都市が決定していること
ように、インバウンド需要の延伸や受け入れ
づくりを急がなければなりません。その解
広瀬 そうした意見の高まりは九州地方
知事会でも議論されています。例えば、大
説明するなどして会社設立に必要な準備金を
広瀬 九州地方知事会は九州の経済界と
連携して各種プランを策定しており、その
ひっぱく
分県別府市にある立命館アジア太平洋大
(A
募る機会を設ける、特区制度を創設する、イ
具体的な実践を継続することが重要だと考
位性を持ち、②合計特殊出生率が高く、③
PU)からは毎年、多くの留学生が卒業し
ンキュベーションセンターを開設して起業の相
20
Zaikai Kyushu / JAN.2017
12
ます。その中には、慣れ親しんだ大分県や
産学官が連携し成長戦略を推進
時代の変化見据えて柔軟に対応
環境の整備など、計画的に取り組むことが大
3
えています。そのプランとは、産業競争力の
強化に向けて各自治体と経済界が連携して
えば、ICT(情報通信技術)の大きな進
歩は第 次産業革命とも言われるように、
の全国トップ に 県がランクインするなど、
や、「仕事の場づくり」
「教育環境づくり」
「出
のプロジェクト「九州・沖縄地方成長産
の積み重ねが、九州のポテンシャルを発揮し、
ことが必要でしょう。そうした地道な実績
となく対応しながら積極的な対策を講じる
野もありますから、時代の変化に遅れるこ
計画策定時よりも技術の進展が見られる分
携して少子化対策に取り組んできたほか、
を展開してきました。さらに、経済界とも連
ト事業」に取り組むなど、国に先駆けた事業
子育て世帯を応援する「子育て支援パスポー
す。急速に進行する少子化に対応するため、
業戦略(Earth戦略)
」
( 年 月策定)
次アクション
山口地域 安心子育て応援宣言〜沖縄宣言」
を行いました。
人口の圏域内移動率が高いという特徴を
生かすには、いかにして九州に人を呼び込み、
いかに人材確保に取り組むか、また、
「仕事の
客や海外企業の投資を呼び込む施策をしっか
発や市場開拓を促進し、併せて、外国人観光
が密に連携し、アジア市場をにらんだ商品開
が持ち得ない特徴があります。行政と経済界
な経済活動が行えるという国内の他のエリア
は、アジアに近く、アジアと一体的にさまざま
ア市場の開拓が不可欠です。しかし、九州に
ためには、急速な経済成長を遂げているアジ
ば、日本が経済活力を維持・発展させていく
最適な条件がそろっていると思います。例え
広瀬 地方創生を考える場合、先ほど申
し上げた三つの特性を発揮する上で九州は
性をいかに生かすかが問われますね。
︱将来的な発展戦略を具体的に進めるに
は、先ほど発言された九州が持つ三つの特
はなく主体的な問題としてしっかりと向き合
は重い内容ではありますが、傍観者としてで
り、研究会に参加しました。取り扱う議題
は、九州地方知事会の会長という立場もあ
臨むことは極めて重要だと感じています。私
広瀬 沖縄の方々の切なる声に真摯に耳
を傾け、課題の解決に向けて誠実な姿勢で
参加されました。
︱大分県が、全国知事会の「在日米軍基
地の負担軽減について協議する研究会」に
る必要があると感じています。
施を通じて、魅力ある地域づくりを加速させ
力しながら各種プランや戦略などの着実な実
うした取り組みを最大限に生かし、自らも努
あります。引き続き、九州が一体となって、こ
場づくり」にどう取り組むかといった課題が
りと進めることで、引き続きアジアの活力を
い、建設的に意見を交換していきたいと考え
し ん し
取り込むことが重要だと思います。
ています。
九州が持つ
「三つの特性」
生かし
潜在力を高めて存在感を発揮
えています。
産等の希望が叶う社会づくり」
「安心安全な
少子化の歯止めが期待できる地域でもありま
6
年 月には九州地域戦略会議において
「九州・
重点的に取り組む 分野を中心に策定した
10
豊かな九州を形成することにつながると考
暮らしづくり」の四つのテーマを実践する
ンプラン(JEWELS PLAN)
」
( 年
10
月策定)です。 年度から取り組む第 期
15
2
16
3
プロジェクトで構成する「九州創生アクショ
18
14
3 2
プランに入り、 年までの 年間で、観光
九州観光戦略は 年から第
19 17 14
消費額 ・ 兆円、訪日外国人数336万
1
人余りを目標に設定しています。また、例
3
10
また、九州・山口地域は、合計特殊出生率
Zaikai Kyushu / JAN.2017
21
4
4
22
「熊本地震を契機に改めて商議所の役割を確認。
中小企業のサポートを通して地域活力創出へ」
礒山 誠二氏
4 月に発生した熊本地震は、熊本商工会議所の会
員をはじめ多くの中小企業に多大な影響を及ぼした。
苦難に直面した中小企業を廃業の危機から救い、事
業再開・継続にこぎつけたのは商工会議所の助言・
会長(福岡商工会議所会頭)にそのあり方や 2017
年の展望などを聞いた。
指導によるところが大きかった。商工会議所の存在
意義が改めて注目される中、九州商工会議所連合会
・9兆円、阪神・淡路大震災の9・9兆円
県で最大4・6兆円とされ、東日本大震災の
礒山 地震による住宅や工場、道路など
のインフラ関連の被害総額は、熊本・大分両
ださい。
︱まず、商工会議所として熊本地震へど
のように対応したのかについてお聞かせく
全国の商議所から九州に来援
相談対応と補助金申請に尽力
九州商工会議所連合会 会長
(西日本シティ銀行 副頭取)
フラインはすぐに復旧しました。また、九州
生直後から日本中から応援が駆けつけ、ライ
体が大きな打撃を受けたわけですが、地震発
に次ぐ大きな規模になりました。九州経済全
16
22
Zaikai Kyushu / JAN.2017
新幹線はわずか2週間で全線復旧し、寸断
された九州自動車道、大分自動車道も発生
から1カ月以内に通行にこぎつけました。そ
のスピードには目を見張るものがあり、復旧
欲が湧かないのは、規制緩和が進まないこと
が要因の一つだと考えています。テクノロジー
の進化、ビジネスモデルの多様化などにより、
︱アベノミクスが〝踊り場〟にあると言
われる中、昨今の九州・沖縄の経済動向に
を促進し、労働生産性を引き上げるというサ
口減少が続く中、女性や高齢者の労働参加
合した規制改革、緩和が必要です。一方、人
景況感の回復感じられぬ九州経済
人手不足や事業承継など問題山積
従来の規制の枠組みを越えた新たなビジネス
ついてどのようにご覧になっていますか。
プライサイド政策の実行主体は民間です。経
が次々と登場、普及する中、時代の変化に適
礒山 福岡商工会議所が四半期毎に行う
「経営動向調査」では、福岡市の直近2年の
営者自らがデフレマインドを払拭し、積極的
に関わられた皆さまに敬意を表するとともに、
復旧に向かって力強く立ち上がっていらっしゃ
DI値はマイナス3〜マイナス8の水準で推
私自身も地震後に熊本を訪問しました。
被災地の現状を見て言葉も出ませんでしたが、
改めて日本の技術力の高さを感じました。
る熊本の方々の姿が印象に残っています。ま
移していましたが、熊本地震が起きた 〜
月期はマイナス ・8までマイナス幅が広が
相談コーナーで被災事業者の経営相談に対応
熊本商工会議所の相談窓口や商店街での特設
援派遣は九州内だけでなく、全国各地の商工
「経営指導員の応援派遣」を行いました。応
再開・継続を支援すべく、熊本商工会議所へ
議所への義援金募金活動、被災事業者の事業
具体的な取り組みとしては、日本商工会
議所・九商連の呼びかけによる全国の商工会
な原動力になったと実感しました。
廃業を最小限に止め、事業再開・継続の大き
伺いました。商工会議所の活動が震災による
細かい相談対応に勇気と希望をもらった」と
ん。アベノミクスの狙いは0%台前半にとど
り、景気の回復を実感するには至っていませ
中小企業は依然として厳しい経営環境にあ
は出ていますが、多くが大企業への恩恵です。
日本経済全体を見ると、アベノミクスに
より雇用や所得環境が改善するなどの成果
複合的に影響しています。
する個人消費、人手不足、人件費上昇などが
騰や価格転嫁の遅れによる採算の圧迫、低迷
ていない」という結果でした。原材料費の高
の大部分で地震後の景況感の回復は感じられ
とされましたが、当所の調査では「中小企業
「九州・沖縄の経済は緩やかに回復している」
語る数字だと思います。 月の日銀短観では
ばいのままでした。地震の影響の大きさを物
ら、国も外国人労働者の受け入れ規制の緩和
しょう。労働力人口も減少していくのですか
人のベビーシッターといったこともありえるで
子育て・労働ができる環境が必要です。外国
ます。女性活力の活用のためには、安心して
の外国人の人材活用が進むことを期待してい
らに留学生の就職活動のために在留期間の延
件緩和(スタートアッップビザ)を行い、さ
し、外国人の創業支援のための在留資格の要
なければなりません。福岡市では特区を活用
留学生など、多様な人材の活用も視野に入れ
不足の課題に対し、女性や高齢者、外国人
学等との情報交換会を開催しています。人手
して「会社合同説明会」や採用担当者と大
います。当所では中小企業の人材採用支援と
28
商工会議所の 人に上りました。期間中は、
67
長なども打ち出しています。今後、地元企業
し、時間の経過とともに変化する相談内容や
まる潜在成長力の引き上げのため、サプライ
を段階的に考えねばならない時期に来ている
会議所から5〜7月の3カ月間、 都道府県
支援ニーズに対応することに努め、5000
サイドの政策を実行し、デフレから脱却する
全国的に雇用環境が改善する中、大企業
はもとより中小企業でも採用意欲は高まって
な経営姿勢に転換しなければなりません。
た、再訪した時に商店街の方々と懇談したの
ですが、その中で「国の施策にあわせ、商工
りました。 〜 月期もマイナス ・2と横
6
会議所の応援派遣の指導員による親身できめ
4
件を超える相談対応と、約1400件の「持
14
と感じています。
9 14
ことです。マイナス金利下でも新たな投資意
7
続化補助金」申請の実績を上げました。
Zaikai Kyushu / JAN.2017
23
52
10
ポート体制の構築が必要です。国には承継の
画的な準備の喚起と地域全体での強力なサ
営者が対応を先送りしています。早期かつ計
点からも非常に重要な問題ですが、大半の経
中小企業の事業承継への対応も喫緊の課題
です。雇用確保や地域経済の活力維持の観
て最大限の努力をしていただきたいと思いま
くなりましたが、政府においては発効に向け
と明言され、事実上TPPの早期発効が難し
礒山 アメリカのトランプ次期大統領が、
就任初日にTPP協定からの離脱通告をする
─TPPについては1月のアメリカ大統
領の交代が影響しそうです。
入れに大きな実績を残しました。今後も
3万8000人が集まり、インバウンド受け
また、6月に福岡市で開催された「ライ
オンズクラブ・国際大会」には国内外から
ンセルも出ずに安堵しています。
ズ船の寄港は前年を上回る329回となる見
は生前贈与に取り組む経営者への支援強化や
懸念しています。
脱など反グローバリズム・保護主義の台頭を
大分)
、「女子ハンドボール世界選手権大会」(熊
年の「ラグビーワールドカップ」
(福岡、熊本、
現れています。地域の中小金融機関は収益構
り低下や金融機関の収益圧迫など副作用も
金利は低下した一方、保険や年金運用の利回
る日銀の強い姿勢を示したものですが、貸出
礒山 2月に導入されたマイナス金利政策
は金融政策面からもデフレ脱却をサポートす
めていますか。
︱金融機関に対して影響が大きい「マイ
ナス金利政策」について、どのように受け止
う、情報提供や海外販路開拓の支援等を引
バル化の進展に中小企業が遅れをとらないよ
は不可欠です。商工会議所としては、グロー
推進は、日本経済を成長軌道に乗せるために
います。そのための経済自由貿易連携協定の
グローバル市場へビジネスを広げようとして
けでなく、中堅・中小企業や農林水産業も、
た。国内市場が縮小する中で、今や大企業だ
観光振興には広域連携も欠かせません。従
来の観光地だけが振興を図ろうとするのは時
の努力が必要です。
ません。国内外からのさらなる誘客には不断
質やおもてなし力の向上に努めなければなり
州の観光の振興につなげられるよう、観光の
被害を 日も早く払拭し、今後の好機を九
界の注目が集まります。熊本地震による風評
大規模スポーツ大会の開催が控えており、世
九州を周遊できるルート形成を
広域連携推進が観光振興のカギ
き続き行ってまいります。
競争激化、さらには利ざや確保のための貸出
先の選別などが想定され、円滑な金融仲介機
能に支障をきたすことも考えられます。
特に中小・小規模企業は、間接金融中心
の調達であり、地域金融機関による安定した
─201 年の九州の展望と九商連の優
先施策についてお聞かせください。
代遅れです。地域に眠る観光資源を見出し、
地域活性化に生かしていく活動が求められて
います。一つの地域だけでなく歴史や食、産
業などのテーマで広域ルートを形成するなど
の工夫が大切です。例えば 年に「明治日本
の産業革命遺産」が世界遺産に登録されまし
ます。さらに 年
資金供給が生命線になっています。日銀には
礒 山 九 商 連 としては地 域への波 及 効
果の高い観光の振興に力を入れていきます。
で構成する「山・鉾・屋台行事」がユネスコ
月に 府県
18
件の祭り
たが、九州には5県に登録遺産が分散してい
る影響を十分検討の上、金融政策を決定、実
2016年に日本を訪れた外国人は年初から
12
33
マイナス金利政策が地域中小金融機関に与え
15
行していただきたい。そろそろ出口戦略につ
16
24
Zaikai Kyushu / JAN.2017
去最高を記録しています。博多港へのクルー
足かせとなっている「取引相場のない株式の
す。英国のEU離脱や米国のTPPからの離
込みです。熊本地震後に懸念されていたキャ
評価方法」に関する見直し、さらに税制面で
雇用要件の緩和など「事業承継税制の拡充」
ク」
、 年の「世界水泳大会」
(福岡)などの
本)
、 年の「東京オリンピック・パラリンピッ
を求めています。
日本経済はこれまで自由でオープンなグ
ローバル経済の進展とともに成長してきまし
19
造の変化による悪影響や貸出量の拡大による
21 20
1
無形文化遺産に新たに登録され、
九州では「博
7
月末までの累計で2000万人を超え、過
いても示して欲しいと思っています。
10
多祇園山笠」のほか、「戸畑祇園大山笠」や「唐
たいと考えています。
州どこでも周遊して楽しめる観光振興を図り
ルートの整備が進んでいます。新幹線は観光
の開業を目指して九州新幹線西九州(長崎)
面での広域連携にも大きく寄与してくれます。
確実な開業を望んでいます。
九商連では「観光委員会」を立ち上げ、各地
整備などを積極的に要望していきます。また、
課題についてどのようにお考えですか。
復興のためにも欠かせぬものです。現状と
─交通インフラは地域の発展のためだけ
でなく、災害時における避難、救援、復旧・
岡・九州の発展のためにも民間委託が着実に
との交流を支える極めて重要な空港です。福
空港は、福岡・九州の拠点空港として国内外
民間委託における「基
福岡空港については、
本スキーム案」が出されました。地元の意見
会議所の観光事業者に委員に就任していただ
を切望しています。
未整備区間解消と多重化実現で
災害に強い交通インフラ整備を
津くんち」
、
「八代妙見祭」
「日田祇園」の行
事が登録されました。
今後、九商連として広域連携の推進にあた
り、有形・無形の伝統文化・観光資源の一体
となった魅力発信や地方への誘客促進、分散
き、
観光振興について具体的な提言などを行っ
「災害に強い社会づくり」のために
礒山 は、空港や港湾、道路、鉄道などの整備が欠
間)の解消を目指し、災害時におけるリダン
速道路や鉄道のミッシングリンク(未整備区
移動に大きな役割を果たしました。今後、高
として機能を発揮し、支援物資の運搬や人の
る中で、開通したばかりの東九州道がう回路
網が寸断され、九州道と大分道が通行止にな
り開通しました。震源地に近いエリアの交通
東九州自動車道の北九州─宮崎間が予定通
まだまだ、多くの課題がある九州ですが、
九商連としては「地域における政策課題につ
に要望していきます。
外国人観光客を誘致する取り組みなどを国
の空港とその間を結ぶ鉄道等が広域で連携し、
の機能分担や強化が必要です。九州内の複数
あります。そのためにも拠点空港と地方空港
との役割分担と相互補完を検討する必要が
わせて北九州空港や佐賀空港など、近隣空港
また、混雑や遅延の常態化を解決するため
にも、空港のハード整備が急がれますが、あ
進み、滑走路増設が一刻も早く完成すること
の多くが反映された点は評価できます。福岡
ていきます。各地の観光事業者が民間の立場
かせないことが、熊本地震を通して改めて認
する観光資源の整備や回遊のためのインフラ
から観光資源を活用し、広域連携を進め、九
識するに至りました。地震直後の4月 日、
ダンシー(多重化)の確保を目指した真に必
いて意見・提言し、国や行政の施策・予算に
後も要望書を各大臣に手交するなど、地方の
要なインフラの早急な整備促進と、老朽化の
上に意見・要望をしていきます。
いきます。中小企業を取り巻く環境はいまだ
反映させる」ことが重要な役割の一つです。今
また、 年に全線開業5周年を迎えた九
州新幹線は、九州の経済発展の大動脈として
厳しいですが、商工会議所の役割・使命の原
復興のシンボルともなりました。現在、 年
線運休となりましたが、早急な復旧・再開は
域経済の発展」に尽くしていきます。
点に立ち返り、会員企業と一緒になって「地
声を直接届けるように要望活動に力を入れて
欠かせないものになりました。地震で一時全
進むインフラの安全確保に対し、これまで以
24
22
Zaikai Kyushu / JAN.2017
25
16
「熊本地震を経て九州118市がさらに団結。
〝九州はひとつ〟
の合言葉で連携強化図る」
森 博幸氏
本格的な人口減少社会が到来し、地方では労働力
人口の減少や消費市場の縮小など、地域経済社会へ
の影響が危惧されている。昨年4月に発生した熊本
地震は、災害時の自治体連携について平時から備え
や地域発展に向けて取り組む九州市長会(118 市)
の果たすべき役割や課題などについて聞いた。
ておく重要性を再認識させた。そのような中、
「九州
はひとつ」の合言葉のもと、一体的なブランド戦略
森 昨年 月発表の2015年国勢調査
人口によると、外国人を含むわが国の総人口
てお聞かせください。
︱ 九州市長会の会長という立場から見た、
昨今のわが国の社会状況と経済動向につい
本格的な人口減少社会を迎えて
若年人口の維持・定着が重要に
九州市長会 会長
(鹿児島市長)
した。また、 歳未満人口の割合は世界で
転じ、人口減少社会が現実のものとなりま
は大正9年の調査開始以来、初めて減少に
10
最も低い水準となり、 歳以上人口の割合
15
齢化が進むことを考えると、われわれは新
は最も高くなっています。今後さらに少子高
65
26
Zaikai Kyushu / JAN.2017
高まりが見られる中、経済の好循環を確立
U離脱問題など、海外経済に関するリスクの
るアジア新興国等の景気の下振れ、英国のE
可能性があります。また、中国をはじめとす
境は、外交政策を含めて大きく変わっていく
保護主義を唱えており、従来の金融経済環
を転じると、トランプ次期アメリカ大統領は、
に回復しているようです。しかし、海外に目
昨年 月の内閣府の発表によると、GDP
は3期連続上向いており、経済状況は緩やか
ります。
ことが必要です。
もを産み育てられる環境づくりに取り組む
望に応え、若い世代が安心して働き、子ど
れを行政としてしっかりとらえ、住民の希
た、結婚から出産、子育てといった一連の流
な魅力ある企業の存在が欠かせません。ま
れには、若者が安定した生活を送れるよう
ないとなかなか定着してもらえません。そ
ります。その点、若者が働く環境が地方に
させるような仕組み、対策が大変重要にな
味では、若い人たちを地域にしっかり定着
地方の人口減少で、一番大きい要因は若
者が都会に出ていくことです。そういった意
要で、今回は過去の大きな災害の教訓がか
た。災害は起きた後どう対処するのかが重
︱ 2016年を振り返ると、4月の熊本
地震が九州に大きなインパクトを与えまし
うな手立てが必要になっています。
呼び込み、それぞれの地域に分散していくよ
連携しながら九州一体となって、九州に人を
だと思います。それらを生かして、お互いに
過疎化や人口減少がさらに進んで経済が縮
森 今回の国勢調査の結果により、東京
圏への一極集中が浮き彫りとなり、地方では
た地域の発展戦略に関わってきます。
中で、若年人口の維持・定着は将来に向け
積極的に行っていく。それが定住人口の促進
内の各自治体も地域特性にあわせた戦略を
づくりをしっかり進め、これを基本にして県
が必要です。まずは県都がコンパクトなまち
トで暮らしやすい都市圏を形成していくこと
森 若者がそれぞれの地域に定着するた
めには、やはり県都が中心となってコンパク
が求められています。
高齢者にも利便性の高い新たなまちづくり
向けた国の支援について、短期的支援、中長
ても全国市長会とも連携し、復旧・復興に
ました。そのことを踏まえ、九州市長会とし
ともに、直接、市長さん等から話をお聞きし
自身も現地に行き、被災状況を確認すると
に対応し、支援ができたと思っています。私
訓を踏まえながら、それぞれの自治体が迅速
かったことですが、発生後の対応は過去の教
大きな地震が発生するとは誰も予想していな
森 災害はどこで起きるか分からないとい
うことを再認識しました。熊本であのような
熊本地震の災害を今後に生かす
防災部会で自治体間の連携密に
地域がたくさんあります。それは九州の強み
するためには、消費や投資などの国内需要の
なり生かされたといわれます。
たな社会モデルを早急に構築する必要があ
回復と、労働市場や企業活動など供給面の
︱ 県都に関しては、都心を再整備してコ
ンパクト化することで、若年層だけでなく
小し、自治体の運営や存続自体が危ぶまれ
を図り、交流人口の拡大にもつながってくる
期的支援を2度にわたり、直接、要請しま
強化に同時に取り組む必要があります。
る事態の発生が懸念されます。地方創生に
と思います。
では実感が得られていないようです。その
︱ 国内の経済指標を見ると、以前と比べ
てある程度上がってきているのですが、地方
向けて、国においては、女性活躍や働き方
し混乱があったということがあり、この対応
した。地震発生後の1週間は災害対応に少
改革に関する会議などが開催され、地方で
︱ 定住人口が減少する中、交流人口の拡
大、つまり観光戦略が重要になってきますね。
は「人口ビジョン」
・
「総合戦略」を策定し、
森 各自治体は、交流人口を増やそうと
いう取り組みを拡大、充実させてきていま
年秋の九州市長会の総会で、新たに防災部
九州全体の防災力向上を検討するため、昨
を九州全体でどうしていくかということなど、
ための各種施策に懸命に取り組んでいると
す。九州全体を見ると、本当に魅力的な素材、
将来にわたって地域の活力を維持していく
ころです。
Zaikai Kyushu / JAN.2017
27
11
海トラフ地震がいつ発生するかわかりません。
をすることにしています。桜島の大爆発や南
でいろいろ検討し、 月の総会で中間報告
に迅速かつ的確に対応できるか、今後、部会
務であると考えています。災害発生後、いか
しようというのが、防災部会に求められた責
す。できるだけそのようなことがないように
方にも不安を与えたのではないかなと思いま
いけばいいのかなど混乱を生じ、被災された
勢が出来ていないとか、物流はどこを介して
したいことはいっぱいあるけれども、受入態
森 大きな課題は、地震発生後1週間、
自治体の対応に混乱が生じたことです。支援
もので、臨機応変に対処する必要があります。
初動はなかなかマニュアル通りにはいかない
支援を目指すとしています。災害に対する
︱ 防災部会は、災害発生1週間以内に、
物資や職員を送り込む独自のプッシュ型の
会を立ち上げました。
います。
ていこうという意気込みや思いが強くなって
市の結束が固まり、またみんなで一緒に頑張っ
れが大きな引き金になって九州市長会118
いろな点でマイナスになりましたが、逆にそ
たですね。地震で経済的にも観光面でもいろ
復してきています。
それは本当にありがたかっ
降の観光に関しては九州全域としてかなり回
う認識が少しずつ定着した結果、夏休み以
どの支援策もあり、
「九州は大丈夫だ」とい
復旧に向けた作業がかつてないスピー
ただ、
ドで進み、国における「九州ふっこう割」な
ました。
り、九州全体の観光などに大きな影響が出
九州が南北に分断された形になったこともあ
今回は九州新幹線も高速道路も不通になり、
応していかねばならないと切実に感じました。
な情報を共有・発信しながら、各面から対
点からすると、お互いが連携し、常に正確
て、九州のブランド化を構築する必要性が
す。それぞれの地域のブランド化と並行し
州のブランディング戦略が必要だと思いま
州全体で共有でき、外にアピールできる九
︱ 各地域でのブランド化はそれぞれ独自
のスタンスで官民で取り組んでいますが、九
発展に求められています。
に分散させていくことが、これからの九州の
し、アジアから来ていただく方々を九州全域
なが一緒になってさまざまな取り組みを展開
観光などの交流人口の拡大についても、みん
出します。これは農業などの産業だけでなく、
して売り出していくことが大きな効果を生み
ます。九州が一つになって「九州のもの」と
が、それだけでは効果は限定的なものとなり
各自治体がそれぞれの良さをPRしています
力的ですばらしいものがたくさんあるので、
ションしていく必要があります。九州には魅
際、特に経済界と行政が一体となってプロモー
あるのではないでしょうか。
森 その通りです。九州の経済界の方々
と話をすると、そのことを指摘されます。
キャンセルになりました。九州のどこかで
われています。
的優位性〟をどう生かすかを近年ずっと言
︱ 次に、今後の九州の発展戦略について
ですが、九州はアジアに近いという〝地理
連携しながら、九州のブランド化を進めて
可欠です。九州の知事会、市長会やそれに
一層高めるためには九州全体の底上げが不
ないといけないのですが、ブランド力をより
「九州ブランディング戦略」
で
国内外に向けて情報発信を
行政としては自分たちのところを売り出し
災害が起きると、九州全域で特に観光面に
森 アジアに一番近い地理的優位性を生か
して、観光にしても農産物にしても九州全体
いく必要があると思います。海外でプロモー
たいということがあり、それはそれで努力し
おいて影響を受けることを再認識させられ
としてさまざまなものを売り出していくチャ
ション活動を行うと、現地の方に「鹿児島」
経済界や観光推進機構といったところとも
「九州はひとつ」と言いますが、九州
森 のどこかで災害が起きると、風評被害はすぐ
ンスがこれからも多くなると思います。その
ました。
に九州全体に広がっていきます。そういった
︱ 地震直後は、熊本、大分だけでなく、
鹿児 島や長崎などの修 学 旅 行 がほとんど
ていく必要があります。
で、防災対策には、他のどこよりも力を入れ
九州は常に災害の危険と隣あわせの地域なの
5
28
Zaikai Kyushu / JAN.2017
と言っても分かってもらえないことが多々あ
リンピック・パラリンピックが開かれる
資源の掘り起こしを進めるなどして、東京オ
年
ります。海外からの視点で、九州を一つのエ
務レベルではコミュニケーションを図る頻度
を飛び越えて連携し、お互いに協力してい
かなか難しいかなと思います。自治体の枠
リアだととらえていかないと、情報発信はな
ての役割を担ってきました。九州内の空港に
に、アジアをはじめ諸外国との交流拠点とし
九州は、古くは遣隋使などの寄港地、ま
た江戸時代の長崎の出島に代表されるよう
に4千万人に倍増することを目指しています。
ら連携を図っています。また、鹿児島と熊本
制や税務の研修会を開催しており、日頃か
切なことです。九州市長会は防災のほか、法
いに認識して解決に向けて協議することは大
を高めていくことが必要だと考えます。
く必要があります。
はアジアの主要都市を中心に約 の国際路
ており、今後、空港や港などのインフラ整備
「観光先進国」の実現を成長戦略の一つとし
森 年、日本を訪れた外国人旅行者は、
2千万人の大台を初めて突破しました。国は
本の産業革命遺産、世界ジオパークの島原
ています。世界自然遺産の屋久島や明治日
に130航路の外貨コンテナ定期船が就航し
線が張りめぐらされ、港湾にはアジアを中心
それぞれの自治体の課題を議論し、解決に
地域でさまざまな連携・協力関係を構築し、
とで連携しておりますが、九州のそれぞれの
と福岡、北九州は九州新幹線沿線というこ
らに自治体間だけでなく、経済界の皆様と
向けて取り組む環境づくりが必要です。さ
します。
︱ 今後、日本の人口減少社会は特に地方
部からどんどん加速していきます。そうし
も常に交流をしていく必要があると思います。
込むことにより、地域経済の活性化や雇用
かじ取りも難しくなります。
た厳しい状況の中で基礎自治体がしっかり
います。
森 国政選挙においても九州の定数は今
後減らされ、地方の声がなかなか届きにくく
機会の増大などを図る絶好の機会に恵まれ
折しも 年は、わが国の近代化の契機と
なった明治維新150周年を迎えます。
「九州
なることが危惧されます。その点、住民に一
と地域に根を張ったものでないと、国全体の
から日本を動かす」という気概を持って、九
番近い自治体である私ども九州118市が一
ぞれ知恵を出し合い、工夫を凝らし、国に対
しても的確に意見を述べていくことはますま
す重要になっています。九州市長会が「九州
活動ができるよう、会長として、全身全霊を
はひとつ」の合言葉のもと、さらに充実した
︱ 九州市長会の総会は春と秋の年2回開
催されています。118市の市長さんが集
傾けてまいります。
各自治体の課題解決に向けて
各地でさまざまな形の連携を
致団結し、情報の共有を図ったうえで、それ
州の存在感を高めていきたいと考えています。
た地域が、私どもの九州ではないかと考えて
交流人口の拡大により国内需要を喚起し、
アジアをはじめとする世界の観光需要を取り
半島など世界に誇れる観光資源が多数存在
森 事務レベルで常に情報を共有し、連
絡を取り合いながら、それぞれの課題をお互
︱ 九州の存在感を高めるため、今後取り
組むべき課題についてどうお考えですか。
20
や、文化財や国立公園をはじめ地方での観光
40
まる機会は年2回でも大変でしょうが、事
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18
16
「これまで以上に
『実践』
と
『連携』
を重視し
多面的な観点から
『時代の一つ先を行く提言』
」
九州経済同友会 代表委員
(九州電力 会長)
過去の価値観や経験則では将来の見通しが困難な
時代をいかに捉え、効果的な解決策を講じるか─。
九州経済同友会が、政策提言だけにとどまらず、実
際に行動することを自らの役割として重視しているの
な観点から「時代の一つ先を行く提言」に努めるこ
とで新たな境地を切り開こうとしている。
は、そうした時代の要請が背景にあるからだ。他の
経済団体との「実践」と「連携」を重視し、多面的
います。この点は、東日本大震災を含む過去
に講じた結果、現在は落ち着きを取り戻して
や「グループ補助金」といった復興策を迅速
に生じました。しかし、
国が
「九州ふっこう割」
震が発生し、さまざまな負の影響が九州各地
貫 アベノミクスにより持ち直した感のあ
った国内経済に陰りが見え始めた中で熊本地
ていらっしゃいますか。
の社会状況と経済動向を、どのように捉え
︱さまざまな経済指標からは、国内経済
が踊り場にあることがうかがえます。昨今
価値観に捉われない施策が重要
人口減少社会への対応が急務
貫 正義氏
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Zaikai Kyushu / JAN.2017
どう見ておられますか。
︱国内経済の根本的な改善には至ってい
ないことも踏まえて、アベノミクスの現状を
と考えています。
る手は全て打たなければならない状況にある
抜くことなく、九州全体の発展のために打て
で推移していますから、経済界としても気を
い切れません。経済状況は楽観視できない中
礎的事項)が十分に改善しているとまでは言
雇用や生産、
物価といったファンダメンタル
(基
消による観光客の増加などが期待されますが、
今後は、地震からの復興需要や風評被害の解
の震災の教訓が生かされたと言えるでしょう。
社会を維持するために、地元に魅力ある雇用
に求められていると言えます。さらに、地域
州経済の成長に貢献することが同友会の活動
上を徹底して追求し、人口減少下における九
活躍できる場を整えると同時に、生産性の向
者、障がい者などを含めた、あらゆる人々が
状況が生まれています。従って、女性や高齢
代が到来したことを覚悟しなければならない
上回っているため、慢性的な労働力不足の時
した。総人口の減少が生産年齢人口の減少を
大会テーマとして人口減少を取り上げてきま
貫 九州でも本格的な人口減少社会が到
来していることから、ここ数年間、九同友は
いう側面があったのでしょうか。
たのも、混迷する資本主義経済への対応と
早く取り入れ、生産性の向上を実現するとと
す。重要なのは、こうした新しい潮流をいち
アリングエコノミーという概念も生まれていま
て他者と交換・共有することを意味するシェ
る物やノウハウなどをインターネットを通し
また、個人や企業、NPO法人などが所有す
に、中部電力や九州電力が取り組んでいます。
とで事故の予防保全につなげるシステム開発
やAIを活用して火力発電設備を管理するこ
ではないでしょうか。例えば、ビッグデータ
s)やビッグデータ、人工知能(AI)など
は、IoT(Internet of Thing
力化や無人化などの設備投資を積極的に行
企業がマネジメントに創意工夫を凝らし、省
単に一国の政権の問題だけではなく、世界規
したのかだと考えていました。しかし、最近は、
で、安倍政権がそれに対してどのように対処
えて九同友は、人口減少対策の包括的な提言
すべきことも必要です。こうした現状を踏ま
密着した商品やサービスの充実に向けて努力
の場を提供するとともに、地域住民の生活に
︱新たなビジネスシーンの創出には何が
必要だとお考えですか。
ることではないでしょうか。
もに、新たなビジネスの創造にチャレンジす
うことが必要でしょう。その際のキーワード
貫 アベノミクスを論じる際の視点は、い
わゆる「失われた 年」の原因を解明した上
模で資本主義が変容しているという新たな観
を2018年に行いたいと考えています。
貫 事業の立ち上げや起業、つまりスター
トアップです。とりわけ大学を活用したスタ
ートアップの仕組みづくりが重要だと感じて
います。大学は多くのシーズを持っています
が、なかなか起業にまで結び付いていません。
︱アピール文では「地方の創生なくして
企業の発展なし」という認識のもと、地域
アップで決定的に不足しているのは資金です。
要があると感じています。大学発のスタート
地域と協力し地方創生を実現
スタートアップの仕組みも重要
点から考える必要性が高まっていると感じて
います。実体経済をはるかに上回る金融資産
が世界中にはありながら、世界の経済成長率
が低下しているという実態の中で、果たして
現状を打開する効果的な手立てはあるのだろ
値観や経験則に捉われることなく、より多面
と協力しながら地方創生に貢献することが
また、損失を恐れていては何も生まれないわ
なぜそうなのかを、もう少し真剣に考える必
的な観点から思い切った施策を講じなければ、
うたわれています。具体的な実現に向けて、
うかとさえ感じます。従って、これまでの価
真の意味での地域経済の再生や地方創生はな
けですから、経済界が本当に大学発ベンチャ
出すのであれば、多少の損失があってもやり
ーの支援や大学が持つシーズの事業化に乗り
重視されることはなんですか。
貫 労働力人口の急速な減少に伴う生産
性の減退に対応するためには、従来以上に
し得ないと思います。
11
Zaikai Kyushu / JAN.2017
31
20
︱ 年 月の九同友大会で、人口減少社
会への対応に関するアピール文を発表され
16
から取り組むことも、具体的な成果を上げる
済界や大学で地方創生を実現するという観点
地域にはないまとまりの良さを活用して、経
度担保されると思います。九州が持つ、他の
あれば、スタートアップの実効性は、ある程
としても、それが当たり前だという仕組みが
貫 リスクをとる仕組みづくりが重要では
ないでしょうか。リスクをとって損害が出た
だということでしょうか。
︱九州の特性を生かしながら、どのよう
に地方創生を実現するのかについて、ある
と感じています。
通すという覚悟とシステムが必要ではないか
の間にある感覚の大きな隔たりを縮める努力
きない時代に入ってきています。東京と地方
く力を持たなければ地域社会の発展に寄与で
が高まっているため、経済界も知恵だけでな
になります。地方を起点とする政策の重要性
してもらうには、地方が力を持つことが必要
せん。一方で、政府に地方目線で政策を策定
踏まえた政策が必要なのは言うまでもありま
貫 真の地方創生が達成されるためには、
地域経済の現況や地域が置かれている実情を
︱地方創生を実現する上で、発想の起点
はどこに置くべきなのでしょうか。
の存在意義は失われると思います。
らえるような活動をしていかなければ、我々
りと提言し、実際に政策の中に取り入れても
据えて考え、それで終わるのではなくしっか
済界がリスクをとってリードしていくことが
力を引っ張り出せるような仕組みづくりを経
治体がそれぞれ単独では無理でも、そうした
くことが大切だと考えます。企業や大学、自
して、はっきりと目に見える結果を出してい
の経済力や技術力、頭脳、資金力などを活用
ることは誰もが認めていますから、九州全体
ん。九州が一つになれば高い潜在力が生まれ
う考えでは、地方が力を持つことはできませ
た基本的な役割を果たすことだけにあるとい
込んで政策を実現してきたという自負もあり
のため、他の経済団体の一歩先を行く提言を
提言などを行ってきました。九州経済の発展
について、会員の自由闊達な議論を行い政策
団体です。九州や我が国のあるべき姿や政策
ます。しかし、同友会の存在意義が、こうし
発表し、他の経済団体や自治体などを巻き
かったつ
一つの方法だと考えます。
を継続しながら、この難しい課題に取り組ん
必要だと思います。
程度、リスクを踏まえながら取り組むべき
︱過去の経験則から新しいものを創出す
ることは難しいという時代に入ったことを認
でいく必要があると考えています。
︱九同友の多くのメンバーが、九州の現
状および将来に危機感を感じていらっしゃ
るように感じます。問題は、その危機感を
共有しながらも解決する手段を、どのよう
しょうか。従って、周囲から多少、非難され
しなくなっていることを認識すべきではないで
でのような場当たり的な対応は、もはや通用
貫 政府や自治体も財政逼迫にあえいで
おり、単に提言をしただけでは我々の思いが
うですね。
︱〝実行性の高い提案〟をすることが九
同友には必要という点を重視されているよ
に所属されていますから、例えば、九州地域
九同友の委員は、ほぼ皆さんが他の経済団体
他の団体を巻き込んだ実践を重視
九州が一体となり潜在力を生かす
識すべきだということですね。
貫 高度成長期が終わり、日本経済が成
熟化する過程で、我々は突飛なことができな
いというか、少しでも過ちを犯すと社会から
撤退させられるという固定観念がついつい染
てもやるべきことはやり遂げる、発言すべき
実現しづらい状況にあります。また、自治体
戦略会議のように企業だけでなく自治体も交
に生み出すかということでしょうか。
ことは発言する、という姿勢が重要になると
も政策を立案・実行するにあたり、経済界と
えた議論の場を借りることで、実績を伴った
み付いてしまったような気がします。これま
思います。特に、政府の施策に従えば地域経
の連携を重視する傾向にあります。一方、同
取り組みが可能になると思います。先ほど申
を抱いている方は多いのではないでしょうか。
貫 現状を変える突破口を見つけ出さなけ
れば九州に明るい未来は訪れないと、危機感
済の浮揚が保証されているわけではないです
友会は経済人が個人の資格で参加する経済
ひっぱく
から、地方は地方で、九同友は九同友で腰を
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によって実現すると言われる第 次産業革命
し上げたIoTやビッグデータ、AIの活用
ピックという明確なターゲットに向かって、九
ワールドカップ、東京オリンピック、パラリン
大切な時期になると考えています。ラグビー
要都市とも特急列車なら 時間程度で結ば
く、サンクトペテルブルクといったロシアの主
ヘルシンキは、欧州各国からのアクセスが良
近づくことになるでしょうし、その役割を九
で、着実に実績を上げることが目標の達成に
度、実現可能性が高いものに対象を絞り込ん
いだろうかと考えています。その際、ある程
長期的な視点から取り組む仕掛けができな
的な成果にはつながっていないのが実情です。
のように打ち上がってはいるのですが、具体
まざまなところで複数のプロジェクトが花火
ると思います。この重要な課題に対して、さ
効果的な施策をどれだけ打てるかが重要にな
州が一体となって地域経済の浮揚につながる
ンド効果を波及させることは極めて重要なこ
ょう。福岡を拠点として九州全体にインバウ
を運航できるのは福岡空港以外にはないでし
九州の空港の中で、欧州各国の空港と定期便
る仕掛けができないだろうかと考えています。
福岡空港を日本国内のハブ空港として活用す
れています。同空港を欧州のハブ空港として、
や大学の力を借りたスタートアップなど、中
同友が担うべきだと感じています。
例えば、オリンピック憲章にオリンピック開
とだと思います。
の実施に向けて、努力していますが、東京周
辺や京都など、一部の地域では実施されてい
︱九州の一体的な発展を果たすため、九
同友が果たす役割は一層拡大するでしょう。
催国の義務と明記されている文化プログラム
5
︱九州が一体となって発展するという機運
は、どのように醸成すれば良いのでしょうか。
貫 九州にとっては、ここ 、 年が最も
州には世界に誇れる歴史や文化、伝統などが
っていきたいと考えています。例えば、九州地
貫 時代の一つ先を行く提言を行うため、
従来以上に実践と連携を意識した活動を行な
ますが全国的な動きにはなっていません。九
万回の文
を津々浦々から発信できるように、各県の同
与えられているわけですから、九州の多様性
掲げています。チャンスは全国各地に等しく
化プログラムを実施するという明確な目標を
見書を発表するだけでなく、福岡市と連携
会が首都機能や本社機能の誘致に関連し、意
政策立案を行なってきました。福岡経済同友
チームに参画し、行政と経済界が一緒になって
域戦略会議において、地方創生プロジェクト
あります。文化庁は 年間で約
友会で改めてご検討いただき、九同友として
ジウムを開催したのは、その具体例の一つです。
ベンチャー企業の育成についても、 対 の
1
ト」を 年前から実施し、これまでに支援し
メンタリングを行う「九州メンタープロジェク
1
︱そのほか九同友として、積極的に働き
掛けたいと考えられていることとは…。
経済団体と連携し、経済界が一体となって活
こうした取り組みを拡充するとともに、九州
たベンチャー企業は 社近くに達しています。
貫 現在、夏ダイヤのみ運航されているフ
ィンランド・ヘルシンキ空港と福岡空港とを結
8
動することにも注力したいと考えています。
福岡空港の活用策をさらに追求
時代の一つ先を行く提言に努める
して東京の企業や政府関係者を対象にシンポ
20
盛り上げていきたいと考えています。
4
ぶ直行便の通年化です。フィンランドの首都
70
経済連合会や九州商工会議所連合会など他の
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3
4
4
「 歳人口減少時代に求められる運営努力。
研究開発と人材育成拠点としての役割は拡大へ」
18
18 歳人口が減少する中、大学をはじめとする日本
の高等教育機関は改革を迫られている。国立大学は
2004 年度の法人化以降、国からの運営費交付金が
削減されており、自ら資金を調達することが必要に
ている。今後、九州の高等教育機関には何が求めら
れてくるのだろうか。
なっている。大学は学部の新設など、特徴ある教育
を実践することで国内外からの学生獲得に乗り出し
待ち受ける
「2018年問題」
各大学に求められる
「持ち味」
久保 千春氏
よる 歳人口の減少です。現在、約120万
久保 教育界、特に大学など高等教育機
関にとって、もっとも大きな課題は少子化に
方が問われているのでしょうか。
︱昨今の社会状況や経済動向を受けて、
教育界にはどのような課題と将来へのあり
九州大学 総長
人ですが、2031年には 万人になる見込
18
みです。2018年から急速に 歳人口は減
99
高校と大学の接続のあり方や、入試改革が議
と言われています。こうした状況を受けて、
少するので、教育界では「2018年問題」
18
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学校などに求める教育を変えようという動き
ん。ただ、入試改革を実施することで、高等
が、実際に行われるかはまだ決まっていませ
2020年度からの実施が検討されています
することも構想されています。新入試制度は
方式一辺倒から、記述式を付加する形に変更
から、大学入試センター試験をマークシート
力、表現力などを加えていく方針です。それ
ことが中心でしたが、そこに思考力や判断
入試はこれまでよりも質を重視すること
にシフトしています。知識、技能を見極める
論されている最中です。
感覚が求められていると言えます。
ることが可能になりました。非常に経営的な
寄付といったさまざまな手法で資金を獲得す
知的財産の収入、土地など資産の有効活用や
金への応募であったり、企業との共同研究や
人法改正が行われるなど、研究に関する補助
自由度は高まっています。昨年、国立大学法
久保 確かに交付金が減った分、法人自ら
資金を獲得しなければならないため、運営の
ではないですか。
︱運営費交付金が削減される一方、国立
大学法人の運営の自由度は高まっているの
ています。
学になるべきと考えていますか。
︱九州大学はどのような持ち味を持った大
います。
ぞれの高等教育機関が、どのような持ち味を
ない時代となっています。私学も含め、それ
めて、国立大学のあり方を考えなければなら
総合大学として残ることは難しい。再編も含
技術革新のスピードが増す時代
重要性高まる
「人文社会学」
系学部
持った大学になるのかが求められていると思
が出ていることは確かです。
本学は 年にアクションプランとして六つ
の項目を掲げました。①世界最高水準の研
な課題となっています。運営費交付金で削減
うに補っていくかが、国立大学にとって大き
人件費などが減少しています。それをどのよ
充てられるため、教育研究を支える教職員の
費交付金は大学運営において基盤的な経費に
国において国立大学の運営費交付金は 年比
毎年4・6億円ずつ削減されており、日本全
ずつ削減されてきました。九州大学だけでも、
され、それ以降、運営費交付金が毎年約1%
となどを背景に、 年に国立大学法人化がな
状況が厳しさを増して国債の残高が増えたこ
経済について言えば、大学の運営はその動
向の影響を大きく受けています。日本の財政
でしょうか。
学自体が自ら改革することが必要ではない
と、やむを得ない部分もあります。国立大
︱交付金削減は大学運営にとって厳しい
ことは確かですが、国の財政状況を考える
うに訴えかけているところです。
国に対してこれ以上、交付金を削減しないよ
行政や九州経済連合会の麻生会長と共同で、
退職者の補充が難しくなっています。本学は
いるわけですから、それが削減されることで、
特に人件費に充てられる予算が削減されて
しかし、交付金の削減が国立大学にとっ
て厳しい方向であることに違いはありません。
もともと国立大学というのは縦割り構造で、
それぞれの研究分野で専門性を追求していま
ち上げました。
ギー研究教育機構」という組織を独自に立
どさまざまな分野の専門家を集めた「エネル
については工学、総合理工学、人文社会学な
と、アジアに近い立地です。エネルギー関連
素をはじめとしたエネルギー関連の厚い研究
会と共に発展する大学です。本学の強みは水
実したキャンパスづくり、⑤組織改革、⑥社
会への貢献、④学生・教職員が誇りに思う充
材の育成、③先端医療による地域と国際社
究とイノベーションの創出、②グローバル人
で、約1400億円も削減されました。運営
されている場合もありますが、国立大学法人
がどうあるべきかを描くことが重要です。中
に大学はどうあるべきか、また高等教育機関
エネルギーという一つのテーマを掲げて、そこ
す。その一つが
「エネルギー研究教育機構」
です。
で、新たな発想を創出していく動きが必要で
された金額は国の補助金など競争的資金に回
に割り当てられる予算は基本的に減少傾向で
長期的な視野で見れば、すべての国立大学が
した。しかし、現在は組織に横串をさすこと
久保 おっしゃる通り、大学自体の変革が
求められています。まずは 歳人口減少時代
15
あり、どの国立大学も厳しい局面に立たされ
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04
04
にさまざまな関わりのある専門家を絡ませて
︱情報技術の進化で利便性は増す一方で、
人間自体が退化しているという意見もあり
を深めるようにしています。また、私も毎週
入れ、留学も義務づけます。さまざまな視点
学者を推薦・AO・国際型・一般入試で受け
新学部「共創学部」がそれに当たります。入
間は電話番号を覚えなくなっていますし、辞
ます。身近な例で言えば、スマホの登場で人
利便性が増すほど、人間への副作用は出ま
す。端的に言えば、自分の頭を使わなくなり
ように考えていますか。
情報技術の進化による人間への影響をどの
もできるのではと考えているからです。
れが基盤となり、政治的な対立を避けること
関係を保つことは非常に有効と言えます。そ
育界の立場から言えば、学術面で外国と友好
影響を受けるケースが多くなっています。教
アジアの近隣諸国も、政治的対立から経済が
しかし、グローバリズムは政治状況に影響
を受ける面が否めません。友好関係にあった
のように海外の人と会っています。
から課題を見つけられるグローバル人材の育
書もひかなくなっています。新しくて便利な
世界ではすさまじいスピードでさまざまな
技術革新が起きています。AIやIoT、ビッ
しも私は参加して、釜山大学総長と交流を深
デルは大きく変化しています。そうした変化
うな情報技術の進歩によって、既存の事業モ
のが、人文社会学系の人ではないでしょうか。
ンスを保つかが重要です。そのバランスを担う
わなければ衰えていきます。どうやってバラ
られていました。仮に政治的対立が起きたと
ギー問題を日本の技術に学びたいとおっしゃ
が本学に来られて、大気汚染の問題、エネル
人文社会学系の学問です。本学が文理融合
留学生は全学生の %に及び、日本国内のす
じめとした海外との交流に力を入れています。
要性も増しています。
ています。最新技術の研究拠点としての重
︱ 最 近では 九 州 大 学 はNTTドコモや
ディー・エヌ・エー、福岡市などと連携し、
「ス
型の共創学部を設けるのも、技術に偏らない
べての大学の中でも、5番目の多さです。こ
10
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いるのです。
成が目的で、
「人間・生命」
「人と社会」
「国
ものに目が向くばかりで、面倒なことを遠ざ
たとえば、福岡市では毎年 月に「福岡―
釜山フォーラム」が開催されています。こと
ます。久保総長は心身医学がご専門ですが、
家と地域」
「地球・環境」という四つのエリア
けるようになっています。
めました。また、 月には中国科学院の学長
に対応できるグローバル人材を大学としても
しても、こうした学術面から交流を継続する
性や感覚を磨くことで、その役割を担える人
︱昨今はグローバル化が加速しています。
それについて教育界が果たすべき役割をお
政も技術革新に対応できる人材を求めており、
一時期、国が国立大学の文系学部をなくすと
聞かせください。
材に成長します。ある意味、技術の進化以上
いう報道がありましたが、それは逆行してい
マートモビリティ推進コンソーシアム」を組
その要望に大学は応える必要があります。
ます。環境が変化すれば、人間がどのように
久保 経済だけでなく、大学においても
国際的な交流が進んでいます。本学には留学
織し、自動運転バスなどの実証実験を行っ
立場で世界の課題を解決できる人材を育成す
れらの留学生と日本人の学生が積極的に交流
久保 九州大学の特徴の一つは、伊都キャ
ンパスが非常に自然環境に恵まれているとい
ることを目的としているからです。
3
構造を変えるベンチャー育成を
環境に適応していくかが必ず問われます。そ
生が約2 00人在籍しており、アジアをは
大学発ベンチャーに大きな可能性
の問いに対する解を見つける役割を担うのが、
に重要かもしれません。
10
一方で、私はそんな時代だからこそ、人文
社会学系分野の重要性が増すと考えています。
ことが、
対立を克服する基盤になると思います。
特に高等教育機関に入学する 代後半に感
グデータなど第4次産業革命と呼ばれるよ
10
輩出していかなければなりません。企業や行
11
を学びます。
その潮流はこれからも加速していくでしょ
う。利便性の追求は必要でしょうが、頭は使
また、本学は文理融合教育を学部教育レベ
ルで行おうとしています。 年に設置予定の
18
伊都キャンパスも毎年のように変化してお
り、 年秋にはキャンパス整備が完成し、年
存在感を高めることは可能です。
をうまく活用すれば、実証キャンパスとして
う点です。広大なキャンパスと自然の豊かさ
ベーションセンターやロバート・ファン/アン
ていた産学連携組織を再編しグローバルイノ
ことが期待されています。今まで本学が持っ
ベンチャー企業には世の中の形を変えていく
援にも先進的に取り組んでいます。これから
由な風土があるからこそ、アップルやグーグ
ンバレーがある米国西海岸は規制がなく、自
成長する機会が少なくなっています。シリコ
いこと、国の規制などで、ベンチャー企業の
してもベンチャーを起こす仕組みや風上が弱
寄与していくことにつながります。
それがひいては地域の発展や、九州の発展に
くかを議論していくことは重要なテーマです。
このキャンパスの立地をどのように生かしてい
度内に移転は完了します。そうした時期に、
地を訪れて、そこで学ぶことで、創業の実績が
と大変な刺激を受けます。多くの教職員が現
を訪れたことがありますが、現地に行きます
久保 九州大学にはカリフォルニアオフィス
があり、そこを拠点として私もシリコンバレー
るのかもしれません。
︱大学発ベンチャーが日本の経済をけん
引し、構造を変えていく時代が近づいてい
業に変貌する可能性を秘めていると思います。
本でも、大学発ベンチャーがそうした巨大企
チャー企業が席巻しています。これからは日
ば、グーグルやフェイスブックなど大学発ベン
生み出していきたいと思います。世界を見れ
業を育成することで、収入を得るサイクルを
企業も出ています。本学としてもそうした企
で、出口戦略が整い、実績を残すベンチャー
ファンドを組成するなど前向きになったこと
たと思います。しかし、最近では金融機関が
これまでベンチャー企業はアイデアはあって
も、なかなか実にならないという見方が強かっ
備しています。
などベンチャー企業が創業しやすい環境を整
トレプレナーシップセンター、GAPファンド
援し、効果を上げました。大学同士も、そう
ます。熊本地震では九州が一つにまとまって支
う風に少しずつ変わってきているように思い
州の発展にどのような役割を担うのか」とい
う生き残るか」が主題でしたが、最近は「九
ついて議論を深めています。ただ、以前は「ど
学は今後、どうあるべきか」といった内容に
出ます。中でも国立大学の学長とは「国立大
とです。各大学が自らの特徴を積極的に打ち
久保 私が各大学の学長とお会いして感じ
るのは、皆さん危機感を持っているというこ
いるのではないでしょうか。
︱九州の発展戦略を描く上で、九州大学
のみならず、各大学の役割が大きくなって
高めていくことも考えています
で、さらに実証キャンパスとしての存在感を
います。各自治体や企業と連携を深めること
バル創業雇用創出特区にそれぞれ指定されて
ンアジア国際戦略総合特区、福岡市がグロー
して、さまざまなチャレンジができるように
した。本学もこのキャンパスを自由な気風に
ルといった巨大ベンチャー企業を生み出しま
在します。そうしたベンチャー企業の創業支
91
いでしょうか。
した意識をさらに高める必要があるのではな
出さないといけないという話は会合でもよく
したいと思います。また、
福岡県などがグリー
また、本学はイノベーション創出も重要視
していて、すでに の大学発ベンチャーが存
さらに積み上がっていくことを期待しています。
おそらく技術的には日本のベンチャー企業
も高いレベルにあるのでしょう。しかし、どう
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