共同論文草稿

2016 年度
立教大学経済学部 中島ゼミナール 共同論文
環境問題の世界史
中島ゼミナール3年:
ヨーロッパ班 岡村裕介、梶原拓馬、玉井佑季、松下隼也、松田佳諒
アメリカ班
伊地知匠、魚永英志、柿澤健太、清水亮
日本班
大石有希、黒河建、島村一好、杉本一真、高橋雄太
アジア班
金子雅史、千葉碩人、中川理緒、山本一輝
はじめに
経済史上重要な、地球上の4つの主要地域について、経済発展と環境問題とのかかわりの
歴史を考察する。本来なら環境問題のあらゆる領域を扱いたいところだが、時間や労力の制
約もあるので、森林、大地と水、大気、エネルギーの4問題に絞ることとし、人口の割に国
土が狭小なヨーロッパと日本については「ゴミと廃棄物」の問題を追加する。今後人類が、
環境負荷の低い経済発展の道を模索していくうえで、過去の事例を振り返ることは大いに
役立つであろう。
Ⅰ.森林
人類の祖先はもともと樹上で生活しており、草原に進出して二足歩行となった後も、森と
は親しい関係を保ってきたはずである。一体いつから、人類は森を荒らすようになったのか。
今後、共存していく道はあるのだろうか。
1.ヨーロッパ
ヨーロッパの森林を論じるにあたり、ここではドイツの森林環境史を取り上げる。理由は、
ドイツで誕生した営林技術がその後、世界の模範となったからである。
ドイツ地域を含む中央ヨーロッパにおいて、森林利用は太古から近代にかけて大まかに
占取、掠奪、林業という段階を踏んできた。森林利用の第一段階である占取とは、人口密度
が低ければほとんど森林を侵害しないが、人口密度が高ければ森林に対する資源要請の社
会的圧力が森林の再生機能を上回り森林が衰退する状態である。このころの森林は狩猟地
としての意義が大きかった。ヨーロッパで人間が占取の拡大によって森林の存在をある程
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度脅かすようになったのは、ゲルマン民族大移動後の人口急増に伴う大規模な開墾の時代
であった。その後一部には森林を私的占取する集落の形態が現れた。
森林利用の第二段階の掠奪とは、産業活動への木材資源供給のために大面積にわたり森
林を完膚なきまでに利用し尽くす状態である。近世スペインの事例がとくに有名であるが、
鉱業、製塩業、製鉄業、ガラス製造業などが国庫の収入源となるため、盛んに掠奪は行われ
た。それに伴い、多くの森林が伐採され木炭などが作られ、木そのものが輸出された。
森林利用の第三段階の林業(営林)は林業以前の森林の占取的利用と掠奪的利用の問題を
乗り越えるために生まれた。占取的利用と掠奪的利用において、森林は間引きをするように
伐採されるか、区画の中のすべての木が伐倒された。明確に理論立てて伐採されていたわけ
だはなかったので、理論付けを行うために林学が発達した。ドイツ林学は区画林伐法、材積
配分法、材積平分法、面積平分法、折衷平分法、齢級法、法正蓄積法、生長量法を発明した。
重商主義維持のための伐採が続き、19 世紀に入り製鉄業向けの木炭需要は急激に減ったが
用材生産の役割を木材は担っていかなければならなくなった。
この流れに続く第四段階は、ごく最近発達した近自然的林業である。近自然的林業とは混
交林の中に枯れ木を適正な割合で維持することである。それにより、ビオトープや自然林を
保全し、安定した生態系の形成を図り、大径材の生産が行われてきた。
現在、世界の先端を走るドイツ林学は、今までの経験と災害教訓を踏まえてどれだけ自然
状態に近い森林を作れるかということに転換しつつある。
(松田佳諒)
2.アメリカ
(伊地知匠)
3.日本
(大石有希)
4.アジア
森林は、水の浸食から守る・洪水の頻度を減少・水の流れと貯水の調整・気候の平準化・
遠くの地域の風速を低下させるといった重要な働きがあり、植物と動物の最も豊かな集合
体といえる。しかし近年、中国をはじめとしたアジアで、急速に森林破壊が進んでいる。有
史以来、アジアの人々は、生活圏の拡大による森林の浸食と、モンスーン気候のため旺盛な
森林の回復力とをバランスさせながら暮らしてきたのだが、最近の人口爆発による森林破
壊の加速は、このバランスを崩してしまった。この森林破壊は、丸木・加工用材・紙の不足、
エネルギー供給不足といった経済への直接的影響のほか、保水力の低下による洪水被害、二
酸化炭素吸収量の減少に伴う地球温暖化といった環境問題の深刻化をもたらしている。
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森林破壊の主な原因としては、燃料にするための密かな不法伐採、国家による商業的伐採、
山火事や耕地への転換といったことが挙げられる。とくに中国では戦後、毛沢東が始めた鉄
鋼生産増強運動・穀物第一主義の2つの政策が森林に深刻な損害を与えた。このような現状
に対して植林が行われたが、それを上回る伐採が現在も続いているため、結果として多大な
森林喪失が発生している。
解決策としてはまず、中国人が現在持っている森林破壊の方向を変えるということであ
る。材木などの加工用に使える森林が、有用な製品にされずにたき木として使われてしまっ
ているので、材木を節約し、乱伐を抑える必要がある。さらに植林を行う必要があるが、手
っ取り早い方法のひとつに、航空機を利用して種をまくというやり方がある。これによって、
人間では不可能な山の斜面に草木を再生させることが可能となる。もうひとつが、大衆の自
発的な参加によるものであり、特定の年齢の男女に植林に参加する義務を課すというもの
である。しかし、社会主義の下では植樹した成果が集団所有になることもあり、郊外の丘陵
地に植えられた若木は誰にも手入れされず、そこに関して問題が指摘されている。さらに、
解決策として生態農業が重要となってくる。生態農業は、穀類と樹木を「四つの際(水際、
道路際、耕地の際、家の際)」で同時に栽培するものであり、土壌や水の保全といった環境
上の利益や燃料としての用途が期待される。
このように、深刻な森林破壊に対して様々な策が取られることで、喪失した森林の再生を
促すことが求められている。
(山本一輝)
Ⅱ.水と大地
人類の生活の土台である大地、そこに存在して、人類の生存に必須の要件である水につい
て、その破壊に気をつけなければならない時代になってしまった。工業生産活動や、生産性
を過度に追求する農業の拡大によって、土壌汚染や土壌流失が進み、洪水被害等に結びつい
ているほか、水質汚濁や水産資源の枯渇といった事態も深刻である。豊かさを求める全人類
を、生存の土台を損なうことなく養っていくには、どうすればよいのだろうか。
1.ヨーロッパ
(梶原拓馬)
2.アメリカ
(柿澤健太)
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3.日本
地球の表面の約七割を覆っている水は生態系を維持するための重要な役割を果たし、動
物、植物の生態を形成しながら絶えず循環している。農業、工業など人類の社会経済活動も
水の存在を前提条件とし、地球の水の循環に人の水利用が介入している形になっている。現
在、人口増加や生活水準の向上、経済活動などにより、水利用に伴う水質汚濁が問題になっ
ている。具体的には、一般生活排水などによる河川の水質汚染・水質汚濁、工業廃水による
河川、海洋の水質汚染が挙げられる。
高度経済成長期には急速な経済発展に伴って、これらの問題が顕在化し、水俣病やイタイ
イタイ病などの公害が発生し、人体に大きな影響を与える深刻な事態となった。水俣病は熊
本県で起こった水銀による水質汚染公害で、水俣工場からの排水に含まれるアルキル水銀
が河川・海水に流れ込み、周辺海域でとれた魚を食べた人や動物に大きな影響を与えた。日
本初の公害と認定されたイタイイタイ病は富山県の金属工場の排水に含まれていた大量の
カドミウムが河川に流れ出し、河川の水を使っていた農作物や魚にカドミウムが蓄積し、こ
れらの作物や魚を食べ続けた周辺住民は体内のカルシウムが失われる慢性のカドミウム中
毒や腎臓障害を引き起こした。また、工業廃水や生活排水が河川に流れ込んでしまうと、特
定のプランクトンが異常繁殖する。大量のプランクトンが発生した水域ではプランクトン
によって酸素が多く使われ、魚など他の生物が生息できない赤潮と呼ばれる状態になって
しまう。特に、湖沼や内海等では水域が閉鎖的であるため、本来の自然の浄化機能、分解機
能には限度があり、このような水質変化が生じやすい。赤潮状態になると水域の漁業に被害
が出たり、淡水域では水道用水、工業用水の利用を困難にさせる。
これらの問題への対応として水域改善や排水処理の技術開発が重要であり、多様化する
汚濁物質を除去あるいは分解する技術が求められる。また水質浄化という観点だけでなく、
水辺環境の再生や景観の創造もますます重要となることから、生態系の機能を強化し、人間
と自然の共存を可能にする水環境の修復技術を模索する必要がある。(島村一好)
「地球の現状と環境問題」http://www.plus-ondanka.net/a15_suisituosen.html
須藤隆一「水環境の将来に向けて」(国立環境研究所ニュース 11)https://www.nies.go.jp/kanko/
news/11/11-4/11-4-02.html
4.アジア
水と大地の汚染は国民の生活を脅かす。世界一の人口を誇るアジアの国、中国において今、
水の問題は深刻である。
中国都市部の家庭排水や工場廃水はほとんど処理されず川や湖、ダムや土壌に捨てられ
る。その汚水が郊外で灌漑に使われている現状であり、そこで生産された食物から汚染物質
が検出される。中国で水質汚染の問題を解決できない理由は大きく分けて2つある。1つは
設備が不足していることである。現状の設備では汚水廃水量の 10 分の1しか処理できてお
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らず、施設の維持管理も杜撰なため下水が道路に漏れ出してしまうこともある。
もう1つの理由は指導者の衛生面に対する意識の低さである。工場廃水によって河川で
多くの魚が死に漁師たちが訴えても、それらは中央から指令された経済指標の達成を競う
地方の高級官僚(共産党幹部)らの手によって握り潰されてしまう。中国では、河川を著し
く汚していても経済指標を達成している企業であれば便宜を図るのである。環境保全のた
め業績を下げることなど彼らにとってあり得ない選択である。環境のあまりの悪化で最近、
多少風向きが変わってきているとはいえ、指導者が基本的にこうした思考法から抜け出せ
ないため、国民も現在のような汚染された街で暮らすことを受け入れてしまうのだ。
水質汚染によって安全な水が減り、それが水不足につながっている。特に乾燥地帯の華北
の水不足は深刻である。そのため華北には多くのダムがあるが実際これらは充分に機能し
ていない。大規模な森林破壊が土壌流出を伴い、ダムの砂泥堆積を引き起こすからである。
森林が無く露出した土壌は、雨や風、川の流れによって浸食される。浸食は土地の貯水力を
低下させ洪水の危険性を高め、浸食された土地は農地に適さなくなってしまう。これらの理
由から植林は中国にとって重要であり、ダム周辺の緑化は沈泥を抑えることができるため
水不足の華北には特に効果がある。
元来中国は灌漑の進んでいる国であり、汚水が適切に処理されればきれいな水を灌漑に
利用でき、農業のさらなる発展が見込める。莫大な費用がかかるうえに、指導者及び国民の
衛生面の意識改善が必要になるが、水質改善に取り組むメリットは充分にあるだろう。(金
子雅史)
Ⅲ.大気
人類は狩猟採集時代から、風雨を避けるため洞窟に籠るなどしていた。大気をどのように
制御して快適に過ごすかは、人類にとって永遠の課題である。都会の風通しの悪さが病気を
招くことは古くから知られていた。しかし、工業化に伴う大気汚染が問題になるのは 19 世
紀後半のイギリスからである。近年、中国などでは、この問題は耐え難いまでに悪化してき
ている。果たして改善に至る道はあるのだろうか。
1.ヨーロッパ
(松下隼也)
2.アメリカ
意外と大気汚染というテーマで注目されないアメリカ、実はこの国もかなり大気汚染が
深刻化していて、とくにカリフォルニアのロサンゼルスは、オゾンという人体に有害なガス
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の発生レベルがアメリカ国内で最も高い都市であり、他にもカルフォニアの都市ベーカー
ズフィールドではPM2.5などに代表される粒子物質による大気汚染が顕著である。しか
し、アメリカの大気環境はここ十年で大きく回復していて、その様子を詳しく NASA が発
表している。NASA は 10 年間にわたって地球周回軌道に乗っていた人工衛星オーラ
(Aura)
の測定結果をもとにデータを作成し、大気汚染の様子を観察してきた。汚染された大気が完
全に浄化されたわけではないが、回復が見えているということは、都心部やその近くに住む
人たちにとっては朗報である。アメリカの大気汚染の大きな理由は、二酸化窒素の濃度が高
いことであり、それがいまかなり低くなっている。そもそも二酸化窒素は、アメリカ環境保
護庁(EPA)が人体の健康を守るべく規制対象にした6種類の代表的な大気汚染物質の1つ
である。それ単体で呼吸器系にダメージを引き起こすだけでなく、さらに地上オゾンや粒子
状物質を含む他の汚染物質の発生源ともなる。このガスは自動車のエンジンでガソリンが、
発電所で石炭が燃やされる過程で生成され、大気汚染の代表格ともいえる存在である。
大気汚染に関する法が整備され技術も改良されたおかげで、大気中の二酸化窒素濃度は
減りつつある。タクシーが頻繁に行き交うニューヨークの空気がどれほどキレイになった
のか。NASA によると二酸化窒素は 32%も減ったそうである。交通量の多いアトランタで
さえ、42%のマイナス、これはかなりの成果である。しかし、EPA によれば、汚染が健康に
害するレベルに達している地区に住む米国市民は 1.42 億人もいるということで、まだ良好
な状態にあるとはいえない。NASA は引き続き、オゾンの監視を続け、大気質予報と重要な
環境のデータを提供し続けるだろう。
(魚永英志)
藤木剛康編『アメリカ政治経済論』ミネルヴァ書房、2012
ウィキペディア「アメリカの環境と環境対策」
3.日本
現在の大気は窒素 78%酸素 21%アルゴン 0.9%の 3 種類で 99%を占める。地球の大気の
層は厚いものではなく、上空 20~40km 付近にオゾン層があり、太陽からの有害な紫外線
を吸収することで地上の生物が守られる。こうした環境が近年、脅かされている。
日本の大気汚染のうち、高度成長期に問題となった、火力発電所から出る硫黄酸化物を原
因とする酸性雨などは、脱硫装置の普及等によって大きく改善された。しかし、二酸化窒素、
浮遊粒子状物質、光化学オキシダントによる汚染は十分改善されていない。高温の燃焼雰囲
気で空気中の窒素と酸素の反応によって生成される二酸化窒素は、それによって汚染され
た空気が人の呼吸器に影響し呼吸器症状を引き起こす。浮遊粒子物質も鼻孔等に捕捉され
ない粒子が原因となり人体器官に影響を及ぼす。
光化学スモッグと呼ばれる大気汚染の状態は光化学オキシダントと総称される大気汚染
物質濃度が上昇した状態をいうがこの状況の下では人の目を刺激し、農作物にまで被害を
及ぼす。このような現象は日本各地で初夏、夏の昼間の風のない時に起こる。自動車の排ガ
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スにより起こるこの現象においては窒素酸化物、炭化水素が大気中で反応することにより
二次大気汚染物質と言われる新たな大気汚染物質を生成している為、影響は深刻化するば
かりである。高度経済成長末期の 1970 年には都内の高校で 43 人が目の刺激、痙攣などの
症状を訴え、翌年には関東だけではなく愛知、兵庫、大阪でも被害者が出た。その年の被害
届け出は前年の 4 倍強となる 48,025 名が記録された。
光化学オキシダントは東京首都圏、伊勢湾、瀬戸内海海岸などでしばしば環境基準を超え、
その日数は 100 日を超える年もある。今では環境基準が厳しくなり自動車1台から排出さ
れる窒素酸化物が減少したので、事態は改善に向かいつつあるともいえるが、自動車そのも
のの台数が増えているので、抜本的解決とはなっておらず、光化学スモッグ警報は地域によ
っては相変わらず頻繁に出される。電気自動車や燃料電池車の開発によって二酸化窒素の
みならず二酸化炭素の排出量ゼロを実現し、大気汚染の根本を改善する試みが行われてい
るので、最終的にはこのような転換が必要であるといえる。工業の発展と大気との関係は密
接したものであり、バランスをとっていくことがこれから生活していくうえで重要である。
(高橋雄太)
4.アジア
中国では大気汚染問題が深刻化している。低品質の石炭の不完全燃焼が主要な汚染源の
一つとなっている。他にも、非効率的な製鉄や鉄鋼業、有色金属の冶金工場や精錬所、急速
に広がる化学工場やセメント工場も原因の一つとなっている。また、北部の広大な地域では、
過放牧で荒廃の進むモンゴル黄土高原の細かい黄砂や泥や微塵などを西風や北西風が運ん
でくることによる大気汚染も深刻な問題となっている。
北京では、見通しのきかない埃っぽい日が、1961 年から 1970 年の 10 年間に比べ、1971
年から 1980 年においては 50 パーセントも増えた。中国北部の都市では、まわりがかすん
で見え、著しく視界が制限され、人々を陰鬱な気分にさせている。黄砂などの影響により太
陽が月のように薄暗くしか見えないことも多い。またひどい大気汚染がくる病の発生率を
高めている。栄養摂取の改善と生活向上、ビタミン D1 の摂取の増大によって、くる病の発
生率は少なくはなってきている。一方で汚染地帯に住んでいる子供たちの骨の発達は明ら
かに遅れているということが分かっている。
中国が今後、工場規制や公害防止技術の普及など、効率的な政策によって、大気汚染の除
去に成功したとしても、数十年で新たな問題が浮上するだろう。それは、酸性雨と光化学ス
モッグである。暖房などを石炭資源に依存する限り避けられない酸性雨はこれまで被害を
与えていなかった地域で深刻な汚染が発生する可能性があり、自動車の普及で発生する光
化学スモッグは、とくに自動車交通量の多い北京や上海では深刻な問題となろう。これら二
つの汚染源は管理が難しいとも言われており、今後この二つの汚染源が中国の大気を左右
するといえるだろう。
(中川理緒)
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Ⅳ.ゴミとリサイクル
人類は、定住生活に入って以来、ゴミの問題と向き合ってきた。日本各地にみられる縄文
人の貝塚はその証左である。内容が生活ゴミから産業廃棄物まで多様なだけでなく、そのそ
れぞれが、これまでこの論文で扱ってきた環境汚染だけでなく、資源枯渇や生活環境悪化と
も絡んだ、複雑な問題を内容している。ここでは、先進的な取り組みで知られるヨーロッパ
(ドイツ)と日本の生活ゴミの例だけをとりあげる。
1.ヨーロッパ
人が生活していると必ずゴミが生まれる。永遠の課題としてゴミ処理やリサイクルがあ
る。ドイツはいろいろな点で日本の手本とされている。しかし、ドイツが完璧であるわけで
はない。試行錯誤しながらシステムを作り変えている段階である。では、ドイツはどのよう
にゴミと向き合っているのか。
家庭のゴミは地方自治体の義務で各所によってシステムは異なる。カールスルーエ市は
再生可能なのもが資源ゴミ、最終処分場へと運ばれる一般ゴミ、メタンガスの生産に利用さ
れる生ゴミの3種類のみ定期収集する。生ゴミコンテナの設置は市街地では義務で、郊外は
任意である。3種である。ゴミ料金はコンテナの使用料金が大きいほど高く、また、資源ゴ
ミコンテナより一般ゴミコンテナの方が割高に設定されている。ゴミを減らし、小さな一般
ゴミコンテナに借り替える、またエコバックを用いてビニール袋を持ち帰らない。こうした
努力でゴミ減量に努めている。
ドイツのリサイクルシステムでは、グリーンマークが大きな役割を果たしている。グリー
ンマークとはリターナブル容器(再利用できるガラス瓶やペットボトルなど)を除くほとん
どすべての包装容器をカバーするリサイクルマークだ。DSD(Duales System Deutschland)
社がドイツ全土でシステム運営している。このマークが包装材の分別に役立っている。日本
のシステムとの違いとして資源ゴミの取り扱い。もう少し細かく分けたほうがいいのでは。
ドイツの住宅では庭があればコンポストがある。植物系のゴミ処理することができる機
械である。コンポスト処理場での木材燃料を確保し選別することで一石二鳥のシステムが
可能になる。そうなると個人のコンポストが不要になる。
すべての自治体でゴミ減量化が緊急課題になっているが、その背景にあるのが処分場問
題。現在の環境基準は非常に厳しいため、条件を満たすのは大変厳しく新規建設できない。
この状況下で自治体が取り組んでいるのは「ゴミの減量・分別・リサイクルの改善」である。
「ゴミを出さない、ゴミを減らす、ゴミを再利用する」そして、
「なるべくゴミ埋め立て処
理場を造らない」というのがドイツの目指す方向である。
(玉井佑季)
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2.日本
(黒河建)
Ⅴ.エネルギー
人口増や所得向上によるエネルギー消費の増大をいかに賄うかが、人類にとって大きな
問題であり続けてきた。現在深刻化している、温暖化をはじめとする地球環境問題も、エネ
ルギー使用の増大と密接にかかわっている。果たして代替エネルギー源の普及で問題は解
決するのか、それとも、徹底した省エネにしか未来はないのだろうか。
1.ヨーロッパ
エネルギーの問題が現在の環境議論の中心であるのは偶然ではない。70 年代の「成長の
限界」に関する議論は石油危機という重大問題を背景に持っていた。その重大性は原燃料の
獲得と消費の歴史的過程を観察すると明瞭である。原料・燃料ともに、イギリス産業革命以
前は、自然の回復力をできるだけ壊さない形で獲得・消費されてきた。ヨーロッパの農業社
会は化石エネルギーシステムに変えなくても、産業革命までは木材は風力など再生可能な
エネルギー源で維持されてきた。しかしイギリスで 18 世紀に、木材資源が枯渇し、資源問
題が危機的なまでに悪化する状況に陥った結果、蒸気機関の本格的な利用が始まったので
ある。伝統的なエネルギーシステムを破壊した後に、可能になった技術と生産の拡大によっ
てもたらされたダイナミックな経済システムこそが現代の産業社会の源泉である。従って
その終焉は資本主義の崩壊を意味する。
第一に、石炭は産業革命の基盤となっている。石炭を利用したことは、最初に伝統的燃料
供給の溢路を克服した。産業革命以後の経済は膨大な量の物質を動かし多種の鉱脈を採掘
して、地球の表面をひっくり返し、ありとあらゆる物質を積み上げ、新種の科学的物質を合
成し、無数の生態空間を変化させ、そして破壊した。19 世紀末以降、石炭がいつまでも十
分にないという事実は創業期の産業革命の陶酔に影を落とした。20 世紀を通して、石油を
はじめとする代替エネルギーの探索が続いた。1950 年代以来、
核エネルギーの民間利用は、
化石エネルギーが入ってしまった袋小路からの出口を見つける保証をしたかに見えた。フ
ランスなどは今でもこの政策にしがみついている。しかしその核処理も、放射線による潜在
的危険、廃棄物の最終処理の未解決という問題があり、大きな欠点を持っている。これに代
わって合理化によるエネルギーの節約が議論されている。太陽光をはじめとする自然エネ
ルギーも、確かに環境負荷が低く安全ではあるが量があまりに少なく、化石エネルギーの資
源が尽き資本主義が崩壊する時を多少先延ばしするにすぎない。自然エネルギーも核エネ
ルギーも同様に将来の不明な点が多い。未来のエネルギーをどうするか、省エネしか道はな
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いのか、まだまだ検討すべき課題は多く残されているのである。
(岡村裕介)
2.アメリカ
(清水亮)
2.日本
先進国の経済や生活は化石エネルギーに依存しており化石燃料は何億年もかかってつく
られた限りのある資源であり、あと数十年で枯渇するといわれている。しかし近年消費が増
加、さらには途上国も経済拡大をめざし、枯渇がさらに早まることは確実になっている。枯
渇以前に、廃熱の増加で地球温暖化が危機的状況になるとも言われている。
日本は大量のエネルギーを使う消費国でありながら、原子力を除くとエネルギー自給率
がわずか5%と低く、エネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼っている。東日本大
震災以降、その割合は急激に高くなっており、第一次石油ショック時より厳しい状況である。
とくに日本が必要とするエネルギー資源の中では石油が約半分を占めているが、そのうち
の約9割を、政治情勢が不安定な中東地域からの輸入に依存している。
こうした状況から当面、原子力エネルギーへのある程度の依存は避けられないのかもし
れないが、エネルギー供給において安全の確保は大前提である。原発事故はあらためて安全
の確保の重要性を認識させるものであった。「絶対安全」はありえない以上、エネルギー供
給上のリスクを適切に把握し、管理することが必要である。そして、国民の安心を確保する
ためには、徹底した情報公開とリスクコミュニケーションを図っていくことが求められる。
そしてこれからのエネルギー政策を推進していく上では、
「国民の参加」は不可欠である。
国民主権の基本的立場にたって国民にわかるように徹底した情報公開がおこなわれ、国民
がエネルギー問題の取り組みに主体的に参加できるようにしていく必要がある。
以上のことをふまえたうえで、長期的視野に立って、原子力発電に頼らないエネルギー政
策への転換、天然ガス火力発電へのシフト、省エネによる使用電力量の大幅削減、再生可能
なエネルギーの利用拡大、電力・原子力に関わる制度改革などを実現していくべきである。
(杉本一真)
2.アジア
(千葉碩人)
おわりに
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エネルギー選択の問題も含め、環境破壊は地球全体で深刻化しつつある。アジアとくに中
国の状況は危機的だが、先進地域のはずの欧日はむろん、国土の広いアメリカでさえ、それ
ぞれに問題を抱えていること、各国とも必死に対策を練りつつあることがわかった。環境問
題の焦点が産業公害から生活公害に移って久しいが、我々の日常生活はまだ、環境負荷を十
分に意識しながら日々の暮らしを営む段階にまで至っていない。今後どうすべきか、各国が
立てている方針は、置かれている状況によりさまざまだが、状況の如何にかかわらず、より
地球にやさしい産業発展・成長の道を探っていかねばならないことは確かであろう。
参考文献:
松田雅央『環境先進国ドイツの今』学芸出版社、2004
ブリュックゲマイアー/ロンメルスパッハー、平井旭訳『ドイツ環境史』リーベル出版、2007
西川静一『森林環境と社会』ナカニシヤ出版、2011
小塩和人『アメリカ環境史』上智大学出版、2014
藤木剛康編『アメリカ政治経済論』ミネルヴァ書房、2012
ウィキペディア「アメリカの環境と環境対策」
井上堅太郎『環境と社会』新版、大学教育出版、1998
西川静一『森林環境と社会』ナカニシヤ出版、2011
柳下正治編著『徹底討議日本のエネルギー・環境戦略』上智大学出版、2014
「地球の現状と環境問題」http://www.plus-ondanka.net/a15_suisituosen.html
須藤隆一「水環境の将来に向けて」(国立環境研究所ニュース 11)https://www.nies.go.jp/kanko/
news/11/11-4/11-4-02.html スミル、深尾葉子・神前進一訳『蝕まれた大地』
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