リサーチ TODAY 2016 年 12 月 26 日 TODAYキーワード2016年:日銀を追い続けた一年 常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創 2016年を総括する観点から、TODAYで示した各月の12のキーワードをレビューしたい。 ■図表:2016年のみずほ総合研究所『リサーチTODAY』を中心とした12のキーワード キーワード 1月 2014 年 3 点セット再来、追加緩和・ 消費税先送り・景気対策 2月 マイナス金利 3月 達磨さんが転んだ 4月 日銀は短期・奇襲戦から持久戦へ 5月 『中国発 世界連鎖不況』 6月 不人気なマイナス金利 7月 日銀はバトンタッチで目標修正 8月 日銀は金融政策の限界を示唆 9月 日銀は量から金利ターゲットに 10 月 日銀はいつもフロントランナー 11 月 物価水準の財政理論 12 月 長期金利の管理フロート化 内 容 1 月 29 日の日銀金融政策決定会合の展望。ここで、消費税先送り、景気 対策に加え、日銀の付利金利引き下げも予想。「2014 年 3 点セット再来、 追加緩和・消費税先送り・景気対策」(『リサーチ TODAY』2016 年 1 月 21 日) 米国の為替政策転換でマイナス金利の円安効果が効かないなか、マイナ ス金利の副作用が顕在化。「昨年まで有効なマイナス金利が現在なぜ危 険なものとなったか?」(『リサーチ TODAY』2016 年 2 月 18 日) 米国は 2 月以降、ドル安政策に転換。2012 年末から続いたアベノミクスの 好循環転換。金融政策も追い風から逆風に転換。「達磨さんが転んだ、米 国は 10 円程度の為替調整実行」(『リサーチ TODAY』2016 年 3 月 30 日) 米国がドル高を許容した猶予期間に日銀が短期決戦をかけていた局面 から、逆風下、持久戦に転換。「日銀の次回追加緩和は短期・奇襲戦から 持久戦への第一歩に」(『リサーチ TODAY』2016 年 4 月 26 日) 中国発のバランスシート調整と中国リスクの行方。「中国発 世界連鎖不 況」(『リサーチ TODAY』2016 年 5 月 19 日) 為替の円安効果が発揮できないなか、マイナス金利は信用活動にマイナ スに機能。日銀の戦略転換の必要も。「マイナス金利がこんなに不人気に なった 2 つの理由」(『リサーチ TODAY』2016 年 6 月 30 日) 7 月 29 日の金融政策決定会合の展望。ETF の買い増しとドル資金供給 拡大を予測。また、今後に向けた作戦変更を展望。「日銀はこれまでよく やった、バトンタッチで目標修正も」(『リサーチ TODAY』2016 年 7 月 21 日) 日銀は適合的期待の下での金融政策の限界を指摘。日銀は持続的な緩 和策にシフトしていくことを展望。「日銀は適合的期待で金融政策の限界 を示唆」(『リサーチ TODAY』2016 年 8 月 26 日) 9 月の日銀の総括的検証で、日銀は量から金利ターゲットへのシフトを展 望、長期金利コントロールの日本版ペギングを予想。「日銀は量から金利 ターゲットに、日本版ペギングも」(『リサーチ TODAY』2016 年 9 月 16 日) 日銀は過去 20 年余り、ゼロ金利、量的緩和、金利ターゲットと常に金融政 策の先駆者の役割りを果たしてきた。「日銀はいつもフロントランナー、今 回も先頭」(『リサーチ TODAY』2016 年 10 月 24 日)。 世界的に金融政策の限界が指摘される中、財政政策を重視したマクロ政 策の潮流の台頭を指摘。「世界的な潮流は財政重視、注目される『物価 水準の財政理論』」(『リサーチ TODAY』2016 年 11 月 14 日) 日銀のイールドカーブコントロールは 10 年金利ペギング(釘付け)でなく、 一定の変動を許容する管理フロートで、今後の変動を許容と展望。「緊急 レポート:日銀は長期金利を管理フロート」(『リサーチ TODAY』2016 年 12 月 21 日) (資料)みずほ総合研究所 1 リサーチTODAY 2016 年 12 月 26 日 下記は、2016年に示したTODAYの12のキーワードである。 1月 2014 年 3 点セット再来 7月 日銀はバトンタッチで目標修正 2月 マイナス金利 8月 日銀は金融政策の限界を示唆 3月 達磨さんが転んだ 9月 日銀は量から金利ターゲットに 4月 日銀は短期・奇襲戦から持久戦へ 10 月 日銀はいつもフロントランナー 5月 「中国発 世界連鎖不況」 11 月 物価水準の財政理論 6月 不人気なマイナス金利 12 月 長期金利の管理フロート化 2016年は、1月のマイナス金利導入から9月の総括的検証におけるイールドカーブコントロールまで、 TODAYでは1年を通じて日本銀行の金融政策をフォローし続けた。結果として、TODAYで日銀の金融政 策の動きをかなりの確度で捉えることができた。1月に、マイナス金利までは予想できなかったものの、追加 緩和を予想し、その中のメニューに付利引き下げを掲げた。その後、米国の為替政策がドル安政策に転換 するなか、4月以降ストーリーラインとして、日銀の戦略はそれまでの短期決戦から長期の持久戦に作戦を 転換させるとした。7月の金融政策を展望するに当たっては、その緩和メニューとして、ETF買い増しとドル 資金供給をあげ、さらに目標を転換する戦略変更もあるとした。9月に総括的検証を行うという7月のアナウ ンスは、TODAYで展望した線に沿ったものだった。9月の総括的検証については、TODAYでは日銀が量 のターゲットから長期金利ターゲットへ作戦を転換させることを予想し、日本版ペギングに向かうと予想した が、実際に発表されたイールドカーブコントロールは、この見方に沿ったものだった。また、11月のトランプ 政権での金利上昇を受け、11月の緊急リポートでは、長期金利の「管理フロート」という概念を示し、長期金 利の変動許容範囲が市場の想定する以上に大きいと展望した。12月後半にかけ10年国債金利が0.1%程 度まで上昇したのはこの見通しに沿ったものだ。 2016年を振り返ると、日銀の金融政策を追い続けた年であったと言える。結局、金融政策が極限に到達 しながら、同時にその限界も示した大きな転換の年として2016年は位置づけられるのではないか。今年1月 のマイナス金利導入は金融政策の極限に迫ったものであるが、同時に日銀は国債購入の限界を認識する 中、常に作戦変更を志向しており、そのクライマックスが7月にアナウンスされた総括的検証であった。そこ では適合的期待の下での金融政策の限界を示しつつ、長期戦へ舵を切って大きな成果を示した。あのタ イミングでは、政策変更の効果は限られたが、11月のトランプラリー以降、イールドカーブコントロールの効 果は円安に対し絶大な効果を生むことになった。まさに、日銀はこの時を「持っていた」のである。トランプラ リーの後にイールドカーブコントロールを導入したら、為替の円安誘導として批判されたであろうことを考え れば、イールドカーブコントロールの導入時期は絶妙のタイミングだった。9月の段階で10年国債金利のゼ ロ近傍とのコミットメントを行いながら、ゼロ状況が続く「永遠のゼロ」を覚悟していた黒田日銀にとって、トラ ンプラリーで出口を視野に入れられることになったのは大きな収穫だろう。 今年1年間、まさに予想外のBrexitやトランプ現象が生じたのも、世界的な閉塞感を伴う「超低温経済」の なかで「世直し」を求める潮流が背後にあったためと言えよう。結果的に金融政策をTODAYでもフォーカス することが多かったのは、金融の限界と新たな経済政策の潮流をもたらす「世直し」の力があったからでは ないか。 本年もご愛読ありがとうございました。次回は 1 月 10 日(月)の発行を予定しております。 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき 作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 2
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