経 ViewPoint 営相 平成28年度税制改正【法人編】 談 坂本和則 執行正浩 2016.12.15 相談部 東京相談室 相談部 大阪相談室 平成28年度税制改正では、法人実効税率の20%台への引下げをはじめ、デフレ脱却と 経済再生に向けた成長志向に重点を置いた法人税改革や、地方創生などを推進するな どの税制上の措置が講じられました。 今回は、平成28年度税制改正項目のうち、法人課税について解説をします。 ※本資料において「年度」という場合、特に断りがない限り「平成○○年度」または単に「○○年度」は、 「平成〇〇年4月1日から平成○○年の翌年3月31日までの間に開始する事業年度」をいうものとします。 1. 法人実効税率の引下げ等 平成 28 年度以後の法人税率、および外形標準課税法人(資本金の額または出資金の額1億円超の普 通法人)の法人事業税所得割(および地方法人特別税)、付加価値割、および資本割の税率は、平成 27 年度改正による税率ではなく、より大きな引下げ幅、引上げ幅の税率に改正されました。さらに、 法人税率については 30 年度以後にもう一段引下げられ、外形標準課税法人の場合、これらによる法人 実効税率は、28 年度に 29.97%、30 年度に 29.74%へと引下げられます。 なお、29 年度に地方法人税の税率の引上げと法人住民税法人割の税率の引下げ、28 年度に法人事業 税所得割の税率引下げに対応する地方法人特別税の税率引上げ、29 年度に地方法人特別税を廃止し、 法人事業税所得割への復元を行うこととされていますが、法人所得に対する税負担に影響するもので はありません。以上をまとめると、下表のとおりです(税負担に影響する税率変更は太枠で表示)。 平成 27 年度改正 平成 28 年度改正 27 年度 28 年度 28 年度 29 年度 30 年度 法人税 23.9% 23.9% 23.4% 23.4% 23.2% 地方法人税 4.4% 4.4% 4.4% 10.3% 10.3% 法人住民税法人税割 12.9% 12.9% 12.9% 7.0% 7.0% 地方法人特別税 93.5% 152.6% 414.2% - - 法人事業税所得割 3.1% 1.9% 0.7% 3.6% 3.6% 法人事業税付加価値割 0.72% 0.96% 1.2% 1.2% 1.2% 法人事業税資本割 0.3% 0.4% 0.5% 0.5% 0.5% 32.11% 31.33% 29.97% 29.97% 29.74% 実効税率 注1:法人税の軽減税率は考慮せず、法人事業税と法人住民税(道府県民税と市町村民税との合計)は標準税率、法人事 業税の軽減税率の「適用なし」とした場合の普通法人の各税率と、それらを前提とした実効税率を示しています。 注2:表中の網掛け部分の税率は適用されないこととされます。 1 V P 経 営 iew oint 相 談 2016.12.15 2. 課税ベースの拡大 [1]欠損金の繰越控除制度の見直し (1)中小法人等(注)以外の法人の各事業年度の青色欠損金等の繰越控除制度における控除限度額 について、下表のように引下げ幅が 27 年度税制改正よりも緩やかになる改正がなされました。 27 年度 控除制度 28 年度 29 年度 [改正前]65% [改正前]50% [改正後]60% [改正後]55% 30 年度 50% 65% (2)平成 27 年度税制改正において、上記(1)の欠損金等の繰越期間が 10 年(改正前9年)に延 長され、これに伴い帳簿書類の保存期間、法人税の欠損金額に係る更正の期間制限および更正 の請求期間も 10 年(改正前9年)に延長されました。 今回の改正では、これら繰越期間の延長等の施行日が平成 29 年4月1日から平成 30 年4月 1日に変更され、同日以後に開始する事業年度において生じた欠損金額について、中小法人等 および中小法人等以外の法人ともに適用されます。 注:資本金の額または出資金の額が1億円以下の普通法人(資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人な どによる完全支配関係があるもの等を除く)などをいいます。 [2]減価償却制度の見直し 平成 28 年4月1日以後に取得をする建物附属設備および構築物ならびに鉱業用の建物の償却の方 法について、定率法が廃止され、これらの資産の償却の方法が下表のとおりとされました。なお、今 回の改正後もリース期間定額法、取替法等は存置されます。 資産の区分 償却方法 建物附属設備および構築物(鉱業用のこれらの資産を除く) 定額法 鉱業用減価償却資産(建物、建物附属設備及び構築物に限る) 定額法または生産高比例法 [3]外形標準課税の拡大 外形標準課税法人の法人事業税の付加価値割及び資本割の税率が、上記「1.法人実効税率の引下 げ等」の税率表(1ページ)のとおり引上げられました。 [4]生産性向上設備投資促進税制の廃止 生産性向上設備等を取得した場合に、普通償却限度額との合計でその取得価額までの特別償却がで きる措置(即時償却)および税額控除率の上乗せ措置(生産性向上設備投資促進税制)は、適用期限 である平成 28 年3月 31 日をもって廃止されました。 なお、上乗せ措置以外の特別償却または税額控除ができる制度は、当初の期限である平成 29 年3月 31 日までの事業供用分をもって廃止されます。 2 V P 経 営 iew oint 相 談 2016.12.15 3. その他 [1]企業版ふるさと納税の創設 地域再生法の改正を前提に、青色申告書を提出する法人が、地域再生法の改正法の施行の日から平 成 32 年3月 31 日までの間に、内閣総理大臣の認定を受けた地方公共団体が行う「まち・ひと・しご と創生寄附活用事業」に関連する寄附金を支出した場合は、地方税と国税を合わせて最大でその支出 した寄附金の額の 60%相当額の税負担が軽減される措置が創設されました。 [2]役員報酬制度の見直し (1)法人の支給する役員給与について、役員から受ける将来の役務の提供の対価として交付する一 定の譲渡制限付株式(いわゆるリストリクテッド・ストック)が事前確定届出給与として法人 の損金算入の対象とされました(事前確定の届出は不要) 。 (2)法人税法において損金算入が可能である「利益連動給与」の算定指標の範囲について、純粋な 利益指標(営業利益、経常利益)に加え、ROE(自己資本利益率)、ROA(総資産利益率) その他の利益に関連する一定の指標が含まれることが明確化されました。 [3]中小企業者等に対する固定資産税の減免 中小企業者等が「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律の一部を改正する法律」の認定計 画に基づき一定の機械および装置(注)を平成 31 年3月 31 日までの間に取得した場合、最初の3年 間、その固定資産税の課税標準が2分の1となる制度が創設されました。 注:①販売開始から 10 年以内のもの、②旧モデル比で生産性が年平均1%以上向上、③1台または1基の取得価額が 160 万円以上――のいずれにも該当する新品が対象となります。 [4]政策減税の見直し等 (1)雇用促進税制の見直し ① 適用対象の見直しと延長 雇用促進税制の税額控除の適用の基礎となる増加雇用者数を地域雇用開発促進法の同意雇用 開発促進地域内にある事業所における無期雇用かつフルタイムの雇用者の増加数(新規雇用に限 り、その事業所および法人全体の増加雇用者数を上限とする)としたうえで、その適用期限が平 成 30 年3月 31 日まで2年間延長されました。 ② 所得拡大促進税制との併用 所得拡大促進税制の適用の基礎となる雇用者給与等支給増加額から、雇用促進税制の適用の基 礎となった増加雇用者に対する給与等支給額として一定の方法により計算した金額を控除した うえで、所得拡大促進税制との併用が可能となりました。 (2)環境関連投資促進税制の見直し エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却または税額控除制度(環境関連投 資促進税制)について、次の見直しを行ったうえで、その適用期限が平成 30 年3月 31 日まで2年 間延長されました。 3 V P 経 営 iew oint 相 談 2016.12.15 ① 風力発電設備について、普通償却限度額との合計でその取得価額までの特別償却ができる措置 (即時償却)は延長せず廃止されます。30%特別償却や7%税額控除については期限まで引き続 き適用できます。 ② 対象資産について、固定価格買取制度の認定を受ける太陽光発電設備を除外し、自家消費型など 固定価格買取制度の認定を受けない太陽光発電設備を追加する等の見直しが行われました。 ③ 税額控除の対象資産から車両運搬具を除外し、特別償却のみ適用可能とされました。 (3)期限延長等 ① 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、対象となる法人から常 時使用する従業員の数が 1,000 人を超える法人を除外したうえで、その適用期限が平成 30 年3 月 31 日まで2年間延長されました。 ② 交際費等の損金不算入制度について、その適用期限を平成 30 年3月 31 日まで2年間延長すると ともに、接待飲食費に係る損金算入の特例及び中小法人に係る損金算入の特例も2年間延長され ました。 ③ 中小企業者等以外の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置の適用期限が平成 30 年3月 31 日まで2年間延長されました。 [5]国際課税関係の改正 移転価格税制に係る文書化制度の整備(多国籍企業グループに係る文書化制度の創設、および国外 関連取引を行った法人が作成する文書(ローカルファイル)に係る改正)などが行なわれました。平 成 28 年4月1日以後に開始する最終親会計年度(多国籍企業グループに係る文書化)、および平成 29 年4月1日以後に開始する事業年度(ローカルファイル)について適用されます。 [5]納税環境の整備 納税環境の整備として更正予知する前の修正申告に基づく過少申告加算税および無申告加算税につ いての税率の引上げ措置や、 「無申告又は仮装・隠蔽」を繰り返した場合の加算税の加重措置の導入等 がなされました。また、国税関係書類に係るスキャナ保存制度について、スマートフォンによる読み 取りが可能になるなどの見直しが行われました。 内容は2016年7月26日時点の情報に基づいて作成されたものです。 本情報は、法律、会計、税務などの一般的な説明です。個別具体的な法律上、会計上、税務上等の判断や対策などについては専門家 (弁護士、公認会計士、税理士など)にご相談ください。また、本情報の全部または一部を無断で複写・複製(コピー)することは著作権法 上での例外を除き、禁じられています。 みずほ総合研究所 相談部東京相談室 03-3591-7077 / 大阪相談室 06-6226-1701 http://www.mizuho-ri.co.jp/service/membership/advice/ 4
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