Fleroxacinのヒト糞便内細菌叢に及ぼす影響

328
NOV.
CHEMOTHERAPY
Fleroxacinの
1990
ヒ ト糞 便 内 細 菌 叢 に 及 ぼ す 影 響
渡 辺 邦 友 ・加 藤 直 樹 ・武 藤 吉 徳 ・板 東 香 お 里
沢
赫代
・上 野 一 恵
岐 阜 大 学 医 学 部 附属 嫌 気 性 菌 実 験 施 設*
Fleroxacinは,新
し く開発 さ れ た ピ リ ドンカ ル ボ ン酸 系 合 成 抗 菌 剤 で,こ れ まで 知 られ て い る 同系
統 の 薬剤 と比 較 し,抗 菌 力 の 点 で は ほ ぼ 同等 で あ るが,体 内動 態 で そ の血 中半 減 期 が 長 い とい う特 徴
を有 す る薬 剤 で あ る。
著 者 ら は,fleroxacinの ヒ ト糞 便 内 細 菌 叢 へ の 影 響,特
に偽 膜 性 腸 炎,抗 生 物 質 関連 下 痢 症 の 原 因
微 生 物 の ひ とつClostndium difficileの
出 現 の 有 無 を検 討 した。
成 人 男 子5名(26歳
∼36歳)に,fleroxacin1日800mgを2回
に 分 けて7日 間投 与 し,投 与 前,投 与
中,投 与 終 了 日お よ び投 与 後 の 糞便 内 細 菌 数 お よ び細 菌 叢 の 質 的 変 化 を検 討 した。 糞 便 中 のC.difficileD-1毒 素 の 検 出 は,市 販 のLatex凝 集 試 薬 を用 い た 。 本 薬 剤投 与 開始 に よ り,糞 便 内総 細 菌 数 は減
少 し,投 与 終 了 時 に最 低 とな った 。 しか し,投 与 中止 後 比 較 的 速 や か に投 与 前 の菌 数 に 回復 した。 腸
内 細 菌 科 の細 菌 は,本 薬 剤 投 与 に よ り最 も強 く影 響 を うけ,投 薬 終 了時 に は検 出 限界 以 下 とな った 。
しか し,投 与 中 止 後1週 目に は再 出 現 して い た。Enterococcus spp.とBacteroides fragilisgroupな ど嫌 気
性 菌 へ の 影 響 は,よ
り軽 度 で あ った 。C.difficileとそ のD-1毒 素 は投 与 中 お よ び投 与 後 の い ず れ の 検
体 か ら も,検 出 され な か った 。 投 与 前 と投 与 後 に分 離 され た 腸 内細 菌科 お よびB.fragilis groupの 菌 株
のfleroxacinお よ びnorfloxacinに対 す る感 受性 を比較 したが,差
Key words:
Fleroxacin,ピ
リ ドン カル ボ ン酸,ヒ
ヒ トの 腸 管 内 細 菌 叢に 最 も強 い イ ンパ ク トを与 え る も
の の ひ とつ は,化 学 療 法 剤 の投 与 で あ る。Fleroxacinは
杏 林 製 薬 株 式 会 社 で 開 発 され た経 口用 ピ リ ドンカ ル ボ ン
酸 系合 成 抗 菌 剤 で あ る。 本薬 剤 は好 気 性 グ ラム 陽性,陰
性 菌 や嫌 気 性 菌 に も広 い抗 菌作 用 を示 す 薬 剤 と して知 ら
れ る 。 こ れ まで の 同 系 統 の 薬剤 に比 し,そ の 長 い血 中半
減 期 が特 徴 的で あ る。 また 胆 汁 中 に も血 清 濃 度 を上 回 る
濃 度 に 達 す る こ と が 知 られ て い る1)。今 回,著
者 らは
fleroxacinの健 康 成 人 糞 便 内細 菌 叢 へ 及 ぼ す 影 響 を検 討
は認 め られ な か った 。
ト糞 便 細 菌 叢,Phase
試 験 開 始 の3カ 月 前 よ り い か な る 抗 菌 物 質 の 投 与 も受 け
て い な い こ と を条件 と した。
こ の 試 験 は 昭 和61年9月16日
I. 対 象 お よび 方 法
Fleroxacin
1回400mgを1日2回,合
Table
1に 従 いfleroxacinの
毒 素,糞
ヒ ト糞 便 内 細 菌 叢 に 及 ぼす
時 に 糞 便 中 のClostridium
difficileD-1
便 中薬 剤 濃 度 の 測 定 お よ び投与 前 後 の分離 菌の
投 与 開 始 後,連
阜 市 司 町40
間
3. 糞 便 中 細 菌 叢 の 検 索
対 象 者 は 健康 成 人 の男 性 志 願 者5名(26∼36歳)で,
* 〒500岐
計800mgを7日
連 続 で 経 口投 与 した 。
fleroxacinお
Time sequence
に 実 施 され
2. 使 用 薬 剤
1. 対 象
Table 1.
か ら9月28日
た。
影 響 を 検 討 し,同
す る機 会 を得 た ので 報 告 す る 。
I臨 床 試 験
of fleroxacin administration
よ びnorfloxacinに
対 す る 感 受 性 を 測 定 した。
日便 の 性 状 を 観 察 し,薬
and fecal collection
剤 投 与4日 前,
VOL.38
Fleroxacinの
S-2
投 与 中2回,投
与 後2回
の 計5回
ヒ ト糞 便 内 細 菌 叢 に 及 ぼ す 影 響
に 亘 り糞 便 の 定 量 培 養 を
CCMA寒
329
天 生 培 地(日
実 施 した 。
自然 排 出 し た 糞 便 を ポ リ袋 に 採 取 し,市
販の嫌気性培
ber(Forma)に
持 ち 込 ん だ 。 そ の 約1gを
釈 液 に て10倍
糞 便 希 釈 液 を 作 り,さ
Enterobacteriaceaeの
を用 い て10倍
希 釈 法 に て108倍
糞 便 希 釈 液 の0.05mlま
と り,上
野 の希
代 培 養 後 さ ら にMueller
ら に こ れ を希 釈 液
ま で 希 釈 し た2)。 各 々 の
た は0.1mlを,下
記の培 地のなか
同 定 はMacConkey寒
B.fragilis
5%血
groupの
液,ヘ
ミ ン,メ
代 培 養 し,Rap
定 し た 。 そ の 他 は,選
用 培 地 お よ び 嫌 気 性 菌 用 選 択 培 地 に 塗 抹,好
で,24∼48時
間 好 気 的 に,嫌
気性 菌
気性菌用培
気 性 菌 用培 地 の
う ち 非 選 択 培 地 とC.difficile選
択 培 地 はanaerobic
ber内 で37℃,48∼72時
の 他 は嫌 気 性 ジ ャ ー を用
い て72時
ス(H2
間,そ
間 培 養 し た 。Anaerobic
10%,CO2
10%,N2
chamberは3種
80%)と
に よ り嫌 気 性 環 境 が 保 持 さ れ,嫌
cultoA(メ
ル ク)を
cham-
混 合 ガ
室 温 で 働 く触 媒
気 性 ジ ャ ー はMicno-
用 い て 嫌 気 的 環 境 を作 製 し た 。
好気 性菌 用 培 地
液 寒 天 培 地;好
気性 菌の総菌 数の算
定 用 非 選 択 培 地 と し て 用 い た 。MacConkey寒
菌 数 を 算 定 し た 。5集
天 培 地;
落 につい て菌
水 製 薬);Enterococcus
spp.の
菌 数 を算 定
した。
水 製 薬);Staphylococcus
よ り同
と づ き 属 を 決 定 し た2)。
6. 糞 便 中 薬 剤 濃 度 の 測 定
投 与 中 お よ び 投 与 直 後 の 糞 便 内 薬 剤 濃 度 をbioassay法
に よ り測 定 し た4)。
7. 糞 便 中 のC.4ifficile
糞 便 に 等 量 の0.1M
D-1毒
素の検 出
Tris-HCl緩
衡 液(pH8.0)を
加 え,
間 遠 心 分 離 して 得
Latex試
薬(ダ
イ ア トロ ン)を
8. 薬 剤 投 与 前 後 分 離 菌 のfleroxacinお
よ びnorfloxacin
に対 す る感 受 性 の 検 討
投 薬 前 後 に 分 離 さ れ たEnterobacteriaceaeお
菌 株 のfleroxacinとnorfloxacinに
の 変 化 の 有 無 を 検 討 し た 。MIC測
spp.
の 菌 数 を算 定 し た 。
よ びB.fragi対 す る感 受性
定 は,化
天 培 地(栄
研 化 学);Pseudomonas
spp.の
菌数
血 液 加BL寒
数 とBifidobacterium
1)
天 培 地(日
水 製 薬);嫌
気性菌総菌
spp.の 菌 数 を 算 定 し た 。
Bile Esculin寒
teroidesfragilis groupの
学 療 法 学 会標
天 培 地(極
東 製 薬);Bac-
菌 数 を 算 定 し た 。5集
selective agar;Finegoldら
Rifampicin(50μg/ml)お
の 処 方 に従 っ
変 法FM寒
spp .)の
天 培 地(日
よ び5%羊
血 液 加Brucella寒
天
spp.お
培 地;lecithinase反
を算 定 した 。
投 与 中 止 直 後 に は,Enterobacteriaceaeは
spp.の
全 く検 出 さ れ
み が優 勢 の菌 叢 を示 し
経 過 し た 後 の 糞 便 中 に はEnterobacter-
iaceaeが 再 出 現 し て い た 。 出 現 し た 菌 種 は,投
菌 叢 へ の 影 響 に 比 し 軽 度 で,中
与 前の菌
2)
Case
水 製 薬);Fusobacterium
spP.の
2に つ い て
黄=1:1)加CW寒
応 陽 性 を 示 すClostridium
spp.の
天
菌数
目 に は 回 復 した 。 この 場 合 は嫌 気 性 細 菌 叢 へ の 影
Fusobacteriumの
3)
消 失 し た 。En-
菌 数 も著 し く減 少 した 。 しか し中止
響 も か な り 顕 著 で,中
理 食 塩 水:卵
止 直後 に や や菌 数 の低 下
投 与 中 止 直 後 に,Enternacteriaceaeは
10日
気性細
叢 の 顕 著 な 変化 は認 め られ な か っ た。
terococcus faeciumの
菌 数 を算 定 した 。
菌 数 を算 定 し た 。
黄 液(生
1に つ い て
を 認 め た が,菌
気 性 グ ラ ム 陽 性 桿 菌(Clostridium
よ びEubacterium
Case
種 と 同 一 で あ っ た 。 嫌 気 性 細 菌 叢 へ の 影 響 は,好
た 。Lactoわacillus spp .の 菌 数 を 算 定 し た3)。
培 地(BBL);嫌
経 口投 与 に よる糞 便 内細 菌叢 の変 化 を
示 した。
た 。 さ ら に10日
落について
績
糞便内細菌叢への影響
な く な っ た 。Enterococcus
菌 種 の 同 定 を行 っ た 。
Lactobacillus
Fleroxacinの
Fig.1に
嫌気性 菌 用培 地
Bacteroides
II. 成
1. Fleroxacinの
を算 定 し た 。
10%卵
ム コ 扱 い)に
準 法 に 従 っ た5)。
ブ ド ウ 球 菌 用 培 地(日
5%羊
system(ア
択培地上の集落の特徴 とガスクロ
マ トグ ラ フ ィ ー に よ る 代 謝 産 物 の 分 析 と グ ラ ム 染 色 に も
lis groupの
種 の同定 を行 った。
NAC寒
ID ANA
天 培 地 に継
用 いて 検 出 した。
Soy血
EF培 地(日
用 い て行 っ た 。
ナ ジ オ ン 加Columbia寒
た 上 清 を 試 料 と し,D-1
Enterobacteriaceaeの
シ ュ)を
天 培 地 に2回 継 代 培 養 後
よ く 混 合 し た の ち,10000rpm10分
4. 培 地
Trypticase
天 培 地 で2回 継
天 培 地 に 継 代 培 養 し純
同 定 はBBE寒
各 希 釈 液 をanaerobic
ら 取 り 出 し,好
Hinton寒
培 養 菌 を 得 た 後,Enterotube(ロ
で 非 選 択 培 地 とC.difficile選 択 培 地 に 塗 布 し た 。 そ の 後
chamberか
野 ら の処 方 に よ り
菌 数 を 算 定 し た2)。
5. 同 定
cham-
養 袋 を 利 用 し嫌 気 的 に 検 査 室 に 輸 送 し,anaerobic
地 は37℃
水 製 薬);上
作 製 さ れ た 。C.difficileの
Case
投 与 中,投
止 直 後 のB.fragilis
groupお
よび
菌 数 は か な り減 少 し た 。
3に つ い て
与 前 優 勢 で あ っ たEnterobacteriaceaeが
減 少,
330
CHEMOTHERAPY
Case 1.
Fig. 1-1.
Changes in bacterial flora in feces of healthy volunteers.
NOV.
1990
VOL.38
Fleroxacinの
S-2
ヒ ト糞 便 内 細 菌 叢 に 及 ぼ す 影 響
Case 2.
Fig.1-
2.
Changes in bacterial flora in feces of healthy volunteers.
331
332
CHEMOTHERAPY
Case 3.
Fig. 1- 3.
Changes in bacterial flora in feces of healthy volunteers.
NOV.
1990
VOL.38
Fleroxacinの
S-2
ヒ ト糞 便 内 細 菌 叢 に 及 ぼ す 影 響
Case 4
Fig.1-
4.
Changes in bacterial flora in feces of healthy volunteers.
333
334
Case
CHEMOTHERAPY
5.
Fig. 1- 5.
Changes in bacterial flora in feces of healthy volunteers.
NOV.
1990
VOL.38
Fleroxacinの
S-2
中 止 直 後 に は 検 出 さ れ な く な っ た 。 中 止 後10日
投 薬 前 に 分 離 さ れ たEscherichia
335
ヒ ト糞 便 内 細 菌 叢 に 及 ぼ す 影 響
Table 2.
目 に は,
Fecal concentration
of fleroxacin
coliが 再 出 現 し た 。 嫌 気
性 細 菌 叢 へ の 影 響 は 非 常 に 軽 度 で,中
数 の 減 少 が 認 め ら れ た だ け で,菌
止 直 後 に僅 か に菌
叢 の質 的 変 化 は観 察 さ
れな か った。
4)
Case
4に つ い て
投 与 中 止 直 後 に は,EnterobacteriaceaeとEnterococcus
spp.は 検 出 さ れ な か っ た 。 投 与 中B.fragilis
数 が 一 時 顕 著 に 低 下 し た が,中
groupの
菌
止 直 後 に は 投 薬 前 の レベ
ル に 回 復 し た 。 投 薬 中 止 後 にFusobacterium
variumが
出
*ƒÊg/ g
現 した 。
5)
Case
5に つ い て
Table 3. List of Enterobacteriaceae organisms isolated
before and after fleroxacin administration
投 与 中 止 直 後 に は,Enterobacteriaceae,Enterococcusは
検 出 さ れ な か っ た 。 中 止 後10日
Clostoridium perfingensは,投
teium
目 に は 再 出 現 し た。
与 に よ り消 失 し,Fusobac-
sp.は 投 与 中 止 後 出 現 し た 。B.fragilis
groupの
変
化 は軽微 で あ っ た。
2. Fleroxacin投
与 に よ る 糞 便 内C.difficile
D-1毒
素 の
検出
検 査 期 間 を 通 じ て,糞
が 産 生 す るD-1毒
便 中 か らC.difficileお
素 は,全
よびそれ
く検 出 さ れ な か っ た 。
3. 糞 便 内 薬 剤 濃 度
投 与 後2日
Table
目 お よ び投 与 終 了 時 の 糞 便 内 薬 剤 濃 度 を
2に 示 し た 。2日
時 で159±64μg/gで
目 で97.3±33.6μg/g,投
与終 了
あ った 。
4. 投 与 前 後 に 分 離 さ れ たEnterobacteriaceaeとB,fragilis groupのfleroxacinお
よ びnorfloxacinに
対 す る感 受性 の
Table 4. List of B. fragilis group organisms isolated before
and after fleroxacin administration
変化
投 与 前 後 に 分 離 さ れ た こ れ ら の 菌 群 の 内 訳 をTable
お よ び4に 示 し た 。 こ れ ら の 菌 株 のfleroxacinお
floxacinに 対 す る 感 受 性 分 布 をTable
3
よ びnor-
5お よ び6に 示 した 。
投 与 前 後 に 分 離 さ れ た 菌 株 の 両 薬 剤 に 対 す る 感 受 性 に は,
顕 著 な変化 は認 め られ なか っ た。
III. 考
察
抗 菌 剤 の 投 与 は ヒ トお よ び 動 物 の 腸 管 内 細 菌 叢 の 変 化
を もた らす 。 こ の 抗 菌 剤 投 与 に よ る 腸 内 細 菌 叢 の 変 動 の
程 度 は,薬
剤 の 抗 菌 ス ペ ク トラ ム と 抗 菌 力,そ
Table 5.
MIC distribution
の体内動
of fleroxacin and norfloxacin against Enterobacteriaceae
organisms
336
Table 6.
態,薬
NOV.
CHEMOTHERAPY
MIC distribution of fleroxacin and norfloxacin against B. fragilis group organisms
剤 の 腸 内 で の 安 定 性 な ど に よ り異 な る6.7)。
Fleroxacinの
陰 性 菌,嫌
が 検 出 さ れ て い る10)。 ま たcefiximeで
抗 菌 スペ ク トラム は 好 気性 グ ラム 陽 性 ,
気 性 菌 と広 く に 及 ん で い る1)。 本 薬 剤 と ヒ ト
腸 内 細 菌 叢 主 要 構 成 菌 と の 関 係 を 見 て み る と,特
roxacinは,Enterobacteriaceae(特
Pneumoniae)に
1.56μg/mlあ
にfle-
にE.coliやKlebsiella
対 し強 力 な 抗 菌 作 用 を 示 し,そ
対 し て は や や 弱 く,そ
止 す る の に3.13μg/ml程
度 が 必 要 で あ る 。 著者 らの検 討
に よ る と,fleroxacinは
嫌 気 性 菌 の 各 菌 種 の 発 育 をか な
り低 い 濃 度 で 抑 制 す る こ と が 明 ら か に な っ た8)。 特 に 糞
便 中 に 優 勢 に 存 在 す るB.fragilis
25μg/ml(106CFU/ml接
種)で
groupの
xacinやtosufloxacin投
発 育 を3.13∼
阻 止 した 。 ま た 比 較 的
中3例
与 の 場 合 に は,今
回 のfleroxacinの
の ボ ラ ン テ ィ ア を 用 い て,ofloxacinの
5日 投 与 のfecal
bacteriaceaeは,投
floraへ の 影 響 を 検 討 し,Entero-
与 開 始 後 速 や か に 消 失 し,そ
1週 間 以 上 を 要 し た こ と,嫌
反 応 陰 性 のClostnidiaを
気 性 菌 は,一
除 い て,大
を 報 告 し た12)。 ま たPacquetら
400mg
の回復 に
部lecithinase
き な変 化 が無 い こと
は,さ
ら にdoseを
薬 開 始 と と も に 速 や か に 消 失 し,4日
回 収 不 能 と な っ た こ と,さ
も,そ
告 し て い る7)。 ま た 渡 辺 ら は,tosufloxacinの1日450mg
が,F.mortiferumやF.variumの
∼25μg/ml(106CFU/ml接
Fleroxacinの
発 育 を 阻 止 す る に は6.25
種)を
必 要 と した
投 与 で,全
認 め ら れ た 。 し か し,Enterococcus
groupのfleroxaciRに
軽 度 で あ っ た 。 ま たF.mortiferumは,投
消失 が
spp.やB.fragilis
よ る 菌 数 減 少 は な く,あ
って もご く
与 中止 後 に 出現
な ど と 同 様,B.fragilis
groupな
た 。 し か し,薬
は,試
験 菌 株 数 は 少 な い が,fleroxacinに
意 し な け れ ば な ら な い 重 要 な 問 題 の ひ と つ で あ る9)。C .
文
1)
谷村
弘,
西 日 本 支 部 総 会,
回 の 検 討 で はC.difficileの 増 殖 が 認 め ら れ た 例 は 皆 無 で
(Fleroxacin),
2)
等 の 自 覚 的 症 状 を 伴 わ な い で ,そ
の 約 半 数 にC.difficileが 検 出 さ れ る 。 例 え ばciprofloxacin
の 健 康 成 人 の 腸 内 細 菌 叢 に 及 ぼ す 影 響 検 討 で も7例 中4
ず れ も 投 与 中 止 後4日
∼28日
の 間 にC.difficile
第37回
日本 化 学 療 法 学会
新 薬 シ ン ポ ジ ウ ム 。AM-
和 歌 山,
鈴 木 祥 一 郎,
上 野 一 恵 監 修:
3)
東 京,
833
1989
臨床 嫌 気 性 菌マニ
ュ ア ル 。 ニ ッ ス イ ラ イ ブ ラ リ ーNo .6,
式 会 社,
耐性 を
献
副 島 林 造:
剤 投 与 に よ り選 択 さ れ る 可 能 性 が 推 測 さ れ た 。 しか し 今
を投 与 す る こ と で,何
出
投 与 後 に 分 離 さ れ たB.fragilis
示 す株 は認 め られ なか っ た。
例 に,い
にEnterebacter-
目 に は 再 出 現 した 。 ま た,再
現 し たEnterobacteriaceaeや
groupに
康 成 人 に各 種 化 学 療 法剤
ど嫌 気 性 細 菌叢 へ の影響
剤 投 与 に よ り一 旦 消 失 したEnterobacter-
を 引 き 起 こ す 。 化 学 療 法 剤 と 関 連 して お こ るC.difficile
薬
間 投 与 は,
iaceaeへ の 影 響 は 比 較 的 強 力 で あ る こ と が 明 ら か と な っ
に よ る 下 痢 症 お よ び 偽 膜 性 腸 炎 は 化 学 療 法 を 行 う際 に 注
difficileの 本 薬 剤 に 対 す る 感 受 性 は 低 い 。 従 っ て ,本
の 強 い 影 響 につい
気 性 細 菌 叢,特
iaceaeは 投 与 中 止 後10日
ロー ラ中 の抗 菌 剤 に耐性 の 菌 の 出現
あ っ た 。 著 者 ら の 経 験 で は,健
気 性 細 菌叢 へ の影響 の
こ れ ま で す で に 市 販 さ れ て い るofloxacin,tesufloxacin
は 比 較 的 少 な い が,好
す る傾 向 が 見 られ た。
抗 菌 剤 投 与 は,フ
間 投 与 の 影 響 を 検 討 し,嫌
て 報 告 し た13)。Fleroxacinの1日800mg7日
薬 剤 の1日
例 にEnterobacteriaceaeの
の7日
の 菌 数 は 投 薬 前 の レ ベ ル に 達 し な か っ た こ と を報
少 な い こ と お よ びEnterobacteriaceaeへ
好 気 性 菌 お よ び 嫌 気 性 菌 に 対 す るMICと
今 回 の 細 菌 叢 の 検 索 結 果 を 比 較 す る と,本
800mgの7日
。
目で
ら に 投 与 中 止 後6日 経 過 して
少 数 で は あ る が 常 在 菌 と し て 持 つ こ と が 多 いC.perfring阻止 した
上 げ,
5日 間 投 与 で 同 様 の 検 討 を 実 施 し,Enterebacter-
iaceaeは,投
ensの 発 育 を1.56μg/ml(106CFU/ml接
種)で
にC.
場 合 と 同 様 にC.difficileの 出 現 は 認 め ら れ て い な い 。
200mg
の発 育 を阻
も5例
difficileが 投 与 中 止 直 後 に 分 離 さ れ て い る11)。 しか しoflo-
千 田 ら は,5名
の90%を
る い は それ 以 下 の 濃 度 で 発 育 を阻止 す る。
し か しEnterococcusに
1990
日水 製 薬 株
1979
SUTTER
VL, CITRON
DM, EDELSTEIN
MAC, FINEGOLD
SM
: Wadsworth anaerobic bacteriology manual. 4th
VOL.38
4)
Fleroxacinの
S-2
ed., Star Publishing
Company,
大 森 康 男,
哲,
Bioassayに
村 山
よ るAM-
California,
阿 部 泰 夫,
715の
ヒ ト糞 便 内 細 菌 叢 に 及 ぼ す 影 響
1985
入 倉
9)
勉:
29
(S- 4):
810,
91∼g7,
10)
1981
5)
最 小 発 育 阻 止 濃 度 (MIC)
29:
測
76∼
microbial
agents
and
the
risk
on
HEIMDAHL A.:
the
Impact
gastrointestinal
of infection.
Am
NORD
76:
99•`106,
12)
CE:
Flora.
mans
Effect
of
P.55•`80,
(Eddited
Academic
8)
青 木
in
by
Press,
Antimicrobials
on
Anaerobic
S.M.
Inc.
FINEGOLD
Infections
and
W.L.
Hu-
沢
赫 代,
武 藤 吉 徳,
渡 辺 邦 友,上
野 一 恵:
田 中 保 知,
Fleroxacinの
47∼54,
赫 代,
赫 代,
健康 成 人の腸 内細菌叢
小 林 と よ 子,
Cefixime
33 (S- 7):
神 野 英 毅,
(CFIX)
169∼179,
1985
千 田 俊 雄,
柴 岡 は る み,
88∼99,
渡 辺 邦 友,
の健 康 成 人 の 腸 内 細
石塚
33 (S- 6):
巖,
中谷 林太郎
8280の
嫌
加 藤 直 樹,
上 野 一 恵:
武 藤 吉 徳,
T- 3262の
叢 に お よ ぼ す 影 響 。Chemotherapy
126∼136,
ヒ
32
109∼117,1988
渡 辺 邦 友,
村 治 樹,
気 性 菌 に 対 す る 抗 菌 力 に つ い て 。Chemotherapy
38 (S- 2):
沢
(S- 1):
13)
板 東 香 お 里,
Bayo9867の
沢
ト腸 内 細 菌 叢 に お よ ぼ す 影 響 。Chemotherapy
GEORGE),
1989
加 藤 直 樹,
小 林 と よ 子,
: 新 ピ リ ド ン カ ル ボ ン 酸 系 抗 菌 剤DL-
Human
in
誠,
菌 叢 に 対 す る 影 響 。Chemotherapy
1984
7)
渡 辺 邦 友,
上 野 一 恵:
of antimicroflora
J Med
798∼
1985
11)
KAGER L and
偽膜性 腸炎
1979
に 及 ぼ す 影 響 。Chemotherapy
79, 1981
NORD CE,
小 林 と よ 子:
difficile, モ ダ ン メ ヂ ア25:
上 野 一 恵:
日 本 化 学 療 法 学 会:
定 法 再 改 訂 に つ い て 。Chemotherapy
6)
渡 辺 邦 友,
とClostridium
体 液濃度測定法 に関す
る 研 究 。Chemotherapy
上 野 一 恵,
337
沢
赫 代,
沢
ヒ ト糞 便 内 細 菌
36 (S- 9):
1988
1990
IMPACT
OF
ORAL
OF
FLEROXACIN
HEALTHY
ON THE
FECAL
FLORA
VOLUNTEERS
KUNITOMO
WATANABE,
NAOKIKATOH,YOSHINORI
MUTO,KAORIBANDOH,
KAKUYO
SAWAand KAZUEUENO
Institute of Anaerobic Bacteriology, Gifu University School of Medicine
40 Tsukasa- machi, Gifu 500, Japan
Fleroxacin is a newly developed quinolone derivative , with a broad spectrum of activity against Gram-negative and
-positive bacteria , including aerobes and anaerobes. It has the longest serum half-life of all the new quinolones.
Fecal flora were studied in five healthy adult male volunteers after the administration of 400 mg fleroxacin b.i.d. for seven
days. Stool samples were taken prior to and several times after the initiation of therapy , and qualitative and quantitative
analyses of microorganisms were performed.
Enterobacteriaceaewere eliminated in all volunteers by the end of therapy. No resistant Enterobacteriaceae were observed .
The number of CFU of the Bacteroidesfragilis group remained unchanged or changed only slightly during the trial . There was
no selective growth of Clostridium difficile and resistant B. fragilis group organisms .