米国マーケットの最前線

米国マーケットの最前線
-経済動向から日本への影響までフィナンシャル・インテリジェンス部
2016/12/15
益嶋 裕
FOMC 結果報告~予想通りの利上げ実施~
フェデラル・ファンド金利ターゲットレンジ
0.25%~0.50% → 0.50%~0.75%
■事前の予想通り利上げを実施
12月13日から14日にかけて開催された連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラル・ファンド金利(FF
金利)の0.25%の引き上げ(利上げ)が決定された。昨年12月以来1年ぶりの利上げである。ただ、
イエレンFRB議長をはじめとしたFRB高官たちはくり返し12月の利上げ実施を示唆していたため、利上
げ実施自体に驚きはなかった。前回のレポートで記したように、焦点は利上げ実施の有無ではなく来
年以降の経済予測(プロジェクション)の内容だった。プロジェクションの中でも特に注目されてい
たのが2017年のFF金利の予想値である。
結果的に同予想値は9月時点の1.125%から1.375%に0.25%引き上げられた。これは、9月時点でFOMC
メンバーは2017年に2回の利上げが実施されると考えていたが、それが1回増え3回になったことを示
唆している。市場では金利予想は据え置かれるのではないかとの見方も出ていたため、発表を受け米
長期金利は大きく上昇、115円どころだったドル円は117円台まで円安に振れた(グラフ参照)。また、
ダウ平均は輸出関連などに幅広い売りが出て118ドル安と、11月1日以来となる3桁の下げで取引を終
えた。米金利上昇でドルが買われ、株が売られるというのは教科書的な反応と言えるだろう。
FOMC前後の米ドル円と米長期金利
(%)
(米ドル/円)
117.5
2.6
米ドル円(左軸)
米10年債利回り(右軸)
117
2.55
116.5
116
2.5
115.5
2.45
115
FOMC
結果発表
114.5
20:00
2.4
22:00
0:00
2:00
4:00
6:00
(出所)Bloombergデータよりマネックス証券作成
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米国マーケットの最前線
筆者は前回のレポートで、12月のFOMCではFF金利見通しが9月時点より上方修正され、日米の金利差
拡大が意識されて一段のドル高が進行する可能性がある一方で、米国株の利益確定売りの契機になる
シナリオについて指摘していたが、概ね想定通りの展開となった。
上述したように最も注目されていた2017年末の金利予想が引き上げられたためマーケットはその部
分に大きく反応したとみられるが、表に示したようにそれ以外のGDP成長率などの予想については実
は前回のFOMCから大きな変化がない。特にインフレ率については9月時点の予想から全く変わってい
ない。これらからすると現時点でFOMCメンバーの米経済への見通しには大きな変化は出ていない。
中央値
GDP成長率
2017年
2018年
2019年
長期
今回の見通し
2.1%
2.0%
1.9%
1.8%
9月時点の見通し
2.0%
2.0%
1.8%
1.8%
6月時点の見通し
2.0%
2.0%
2.0%
なし
3月時点の見通し
2.1%
2.0%
2.0%
中央値
失業率
今回の見通し
4.5%
4.5%
4.5%
4.8%
9月時点の見通し
4.6%
4.5%
4.6%
4.8%
6月時点の見通し
4.6%
4.6%
4.8%
なし
3月時点の見通し
4.6%
4.5%
4.8%
中央値
コアPCEインフレ率
今回の見通し
1.8%
2.0%
2.0%
9月時点の見通し
1.8%
2.0%
2.0%
6月時点の見通し
1.9%
2.0%
なし
3月時点の見通し
1.8%
2.0%
中央値
FF金利
今回の見通し
1.375%
2.125%
2.875%
3.000%
9月時点の見通し
1.125%
1.875%
2.625%
2.875%
6月時点の見通し
1.625%
2.375%
3.000%
なし
3月時点の見通し
1.875%
3.000%
3.250%
(出所)FRB発表よりマネックス証券作成 赤字は前回発表から上方修正
おそらく次の利上げは3月のFOMCで本格的に議論されることになるだろう。ただ、これまで同様イエ
レンFRBは経済指標を見極めながら慎重に利上げ判断を行うという姿勢を崩さないのではないか。そ
う考えると、次のプロジェクションが示される3月のFOMC時点ではトランプ氏が大統領に就任してか
ら日が浅く氏の掲げる経済政策の影響を見極めるための材料が不足するかもしれない。その仮定にた
てば、現時点で本命となる次の利上げ時期は6月のFOMCではないかと考えている。
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