研究開発計画(案) (その他委員会の関連部分抜粋)

資料2
研究開発計画(案)
(その他委員会の関連部分抜粋)
平成○年○月
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会
第1章
未来社会を見据えた先端基盤技術の強化
連携を取った委員会:脳科学委員会、安全・安心科学技術及び社会連携委員会(予定)
Ⅰ.大目標
ICT を最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)とを融合させ
た取組により、人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」を未来社会の姿として
共有し、その実現に向けた一連の取組を更に深化させつつ「Society 5.0」として強
力に推進し、世界に先駆けて超スマート社会を実現していく。このため、国は、超
スマート社会サービスプラットフォームの構築に必要となる基盤技術及び個別シス
テムにおいて新たな価値創出のコアとなり現実世界で機能する基盤技術について強
化を図る。
1.大目標達成のために必要な中目標
超スマート社会サービスプラットフォームの構築に必要となる基盤技術、すなわち
サイバー空間における情報の流通・処理・蓄積に関する技術は、我が国が世界に先駆
けて超スマート社会を形成し、ビッグデータ等から付加価値を生み出していく上で不
可欠なものである。また、技術の社会実装が円滑に進むよう、産学官が協働して研究
開発を進めていく仕組みを構築し、社会実装に向けた開発と基礎研究とが相互に刺激
し合いスパイラル的に進めることが重要である。加えて、AI 技術やセキュリティ技
術の領域などでは、人文社会科学及び自然科学の研究者が積極的に連携・融合した研
究開発を行い、技術進展がもたらす社会への影響や人間及び社会の在り方に対する洞
察を深めることも重要である。さらに、こうした研究開発プロジェクトを柔軟に運営
できる体制の構築も重要である。
これらを踏まえ、超スマート社会への展開を考慮しつつ中長期的視野から、本分野
に関する基盤技術の強化を図る。
(1)中目標達成状況の評価のための指標
(略)
(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
①未来社会における新たな価値創出に向けた研究開発の推進
未来社会における新たな価値創出に向けて、超スマート社会サービスプラット
フォームの構築に必要となる基盤技術の研究開発を推進する。
(略)
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②社会システムと高度に連携した情報システム技術の実現
「世界最高水準の ICT 利活用社会の実現」を向けて、課題解決のための技術
を確立するだけでなく、社会のあるべき姿の実現のために必要な技術の実用化
を見据えた研究開発を推進し、社会実装につなげる。
ア
環境・エネルギー問題に対応した新たな情報科学技術の研究開発
全世界的な人類共通の課題である「環境・エネルギー問題」への対応のため、
再生エネルギーに関する技術革新や省エネルギーがきわめて重要である。社
会活動の一層の高効率な状態に最適化していくためには、リアルタイムに実
世界の情報を集約・解析し、その最適解を実世界にフィードバックする情報
統合基盤技術の研究開発を推進する。
イ
健康医療問題に対応した新たな情報科学技術の研究開発
医療・創薬等に資する高度な解析や、病気の早期発見・治療等へつなげるた
めの新たな情報科学技術、また、ゲノム情報等を含む膨大な患者情報と治療
記録を集約・解析するための技術、組織を超えて共有化するために秘匿すべ
き情報を保護する技術の研究開発を推進する。
ウ
災害等に強い安全安心な社会の実現に向けた IT 関連技術の研究開発
地震・津波等の大規模自然災害に関する防災・減災を巡る様々な問題点に対
応するために、ダメージを回避して、システムとして最低限の機能を維持し、
自己調整・自己修復等のできる IT システムや、災害時及び災害後の広範囲
かつ多岐にわたるリアルタイム情報をデータベース技術を用いて集約整理、
統合化し、状況の変化を最適な避難活動・救援活動・防災活動及び被災者の
最適行動の判断材料にフィードバックできるような IT 統合システムを構築
し、災害等に強い安全安心な社会の実現を目指す。
エ
新たな価値創出のコアとなる強みを有する基盤技術に関する研究開発
我が国が強みを有する技術を生かしたコンポーネントを各システムの要素
に組み込むことで、我が国の優位性を確保し、国内外の経済・社会の多様な
ニーズに対応する新たな価値を生み出すシステムとすることが可能となる。
このように、個別システムにおいて新たな価値創出のコアとなり現実世界で
機能する技術の研究開発を推進する。
2.大目標達成のために必要な中目標(ナノテクノロジー・材料科学技術分野)
ナノテクノロジー・材料科学技術分野は我が国が高い競争力を有する分野である
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とともに、広範で多様な研究領域・応用分野を支える基盤であり、その横串的な性
格から、異分野融合・技術融合により不連続なイノベーションをもたらす鍵として
広範な社会的課題の解決に資すると共に、未来の社会における新たな価値創出のコ
アとなる基盤技術である。また、革新的な技術の実現や新たな科学の創出に向けて
は、社会実装に向けた開発と基礎研究が相互に刺激し合いスパイラル的に研究開発
を進めることが重要である。
これらを踏まえ、中長期的視点での基礎的な研究の推進や社会ニーズを踏まえた
技術シーズの展開等に取り組むことにより、本分野の強化を図る。
(1)中目標達成状況の評価のための指標
(略)
(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
①未来社会における新たな価値創出に向けた研究開発の推進
我が国の強みであるナノテクノロジー・材料科学技術を活かしながら未来社
会を実現していくことが求められている。また、不確実な状況にも対応可能な
基盤技術に関する研究開発や複数領域に横断的に活用可能な科学に関する研究
開発を行うことも重要である。これらの実現の為に必要となる機能性材料や構
造材料等の研究やデータ駆動型の材料設計等の新たな研究手法の開発等を推進
する。
ア. 機能性材料・構造材料研究
「Society5.0」(超スマート社会)の実現に向けて鍵となるサイバー空間関
連技術やフィジカル空間(現実空間)関連技術を横断的に支える基盤技術であ
る素材・ナノテクノロジーとして、エネルギー、インフラ、健康医療等を支え
る機能性材料や革新的構造材料の開発を推進し、それらを適用したコンポーネ
ントの高度化を進めることが重要である。
そこで、個別システムの高度化※(エネルギーバリューチェーンの最適化等)
に資する高効率な電力制御につながるパワー半導体技術や工業プロセスの革
新に資する反応・合成技術、省エネルギーのための高輝度発光材料、クリーン
で経済的なエネルギーシステムの実現に貢献する磁性材料、燃料電池、電力貯
蔵用二次電池等の開発や太陽光発電技術の高度化、情報通信技術分野の省エネ
に繋がる大容量メモリ、ストレージ技術に不可欠なスピントロニクス素子、省
エネルギー・低環境負荷の実現のため、輸送機器材料の軽量化・高強度化、自
動運転や安全確保のためのセンサデバイス、省資源のための物質分離技術・高
性能吸着材や希少元素を抜本的に削減した代替材料の開発、再生医療のための
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生体接着剤や骨折治癒材料等、幅広い分野に貢献する機能性材料における研究
開発を引き続き強化し、その機能のさらなる顕在化を図る。
また、構造材料については、精緻な特性評価技術や組織解析技術等を活用し
て材料の劣化機構の解明を進めるとともに、その知見に基づいた材料の高信頼
性化を進めるなど、総合的なアプローチを行う。具体的には、エネルギーイン
フラ材料の耐熱性向上や輸送機器からインフラ構造体まであらゆる分野での
マルチマテリアル化の急速な進展に対応するため、金属と樹脂等の異種材料を
構造体化するための高信頼性接合・接着技術等の開発を進める。
イ. 新たな研究開発手法の開発
(ⅰ)社会システムを俯瞰した材料開発(仮)
持続可能な未来社会を実現するためには、既存の研究開発の延長ではなく、
「ズームアウト」の視点による社会システム全体を俯瞰した目標設定と、「ズ
ームイン」の視点による要素技術課題へのブレークダウンの双方が必要である。
研究開発に当たっては、未来社会のニーズと材料シーズの適切なマッチングを
図るため、社会システム全体を俯瞰した技術統合と理論・計測・材料創製を融
合した材料研究との協働による研究開発が重要であり、これを踏まえ、太陽光
エネルギーから出発するエネルギーフローに関わる一連の材料を一つの研究
対象とし、技術シーズの源泉となる基礎基盤研究を強化し、出口課題の実用化
に向けた研究開発を推進する。
(ⅱ)データ駆動型の材料設計
新たなデータ駆動型の材料設計技術「マテリアルズ・インフォマティクス」
は、物質・材料分野における膨大なデータ群に、最先端のデータ科学・情報科
学の手法を組み合わせることにより物質・材料の研究開発を飛躍的に加速させ、
材料の開発手法にパラダイムシフトをもたらす可能性を持つ。本研究領域の開
拓は、国際的な潮流の観点からも、我が国の物質・材料研究の発展にとって重
要であることから、基盤の整備も含め、これを活用した材料開発に積極的に取
り組む。
具体的には、様々な研究を通じて蓄積された膨大・高品質なデータを産学官
で共有・利活用を行うためのデータプラットフォームを構築し、最先端のデー
タ科学、情報科学等の多様な手法やツールを駆使した情報統合型の材料開発シ
ステムの整備を行い、物質探索・設計の成功事例の創出等に取り組む。本研究
の知的基盤となるデータベースの整備を進め、材料研究のニーズに合った形で
提供するためのデータ収集・管理・提供技術の開発を継続的に行い、材料デー
タプラットフォームの効率化も推進する。データプラットフォームの構築にあ
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たっては、様々な研究機関からデータを集めるための制度設計や体制整備等に
取り組む。
(ⅲ)材料開発に資するプロセス技術の開発
材料を開発し、社会実装へと繋げるため、スマート生産システムへの対応や
経済合理性等を考慮した製造(プロセス)技術の開発等に注力する。これらの
開発を一体で推進することにより、機能発現の本質と製造プロセスに用いられ
る要素反応・要素過程の理解を同時に進め、その知見に基づき高機能材料を開
発する。計算科学・データ科学との融合によるプロセス・インフォマティクス
にも取り組む。
(ⅳ)先端材料解析技術
革新的な機能を持つ材料の開発には、その機能発現メカニズムの根源的かつ
効率的な解明が重要であり、最先端の材料計測解析技術を包括的かつ相補的に
開発することが求められる。
そのため、ナノからマクロまでの様々なスケールでの計測技術、実使用環境
下(オペランド)での計測技術・解析システムを開発するとともに、計算科学
との融合による計測インフォマティクス等に取り組む。また、新規計測手法の
シーズとなる独創的な計測解析手法の開拓を推進し、得られたシーズを基盤技
術化することで、革新的な計測技術の実現を目指す。
ウ.未来社会創出に向けた挑戦的な研究開発
(ⅰ)ナノ構造の自在制御による新規材料技術の創出(仮)
物質をナノメートルレンジのサイズ、形状に制御することにより先鋭化され
た形で現れる機能性や反応性を高度に制御・変調する新しいナノ材料創製技術、
「ナノアーキテクトニクス(ナノの建築学)
」を確立し、経済・社会的課題の解
決や超スマート社会実現の鍵となる、エレクトロニクス、環境・エネルギー技
術、バイオ技術等の革新に繋がる新材料、デバイスの創製を行う。具体的には、
有機-無機-金属にわたる広範な材料系において、組成、構造、サイズ、形状
が精密制御されたナノ物質を高度に配列、集積化、複合化するとともに、それ
により設計・構築された人工ナノ材料、ナノシステムにより、斬新な機能の創
発を図る。ナノ材料科学者を中心に、物理、化学、生体材料、デバイス、理論
計算等、多彩な専門家集団を本領域に結集し、異分野間の連携・融合を通じて、
様々な技術分野に新展開をもたらす新規材料技術の創出を行う。
(ⅱ)新たな技術領域を切り拓く基礎・基盤研究の強化
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研究者の自由な発想による研究を格段に発展させる学術研究から、社会経済
や科学技術の発展、国民生活の向上に寄与する研究成果の実用化を見据えた研
究までを総合的に支援するとともに、国内外の研究動向を踏まえ、組織や分野
の枠を超えた研究体制の下、将来社会に大きな影響をもたらす新技術シーズの
創出や将来のプロジェクトの芽を創出するような探索型研究に取り組む。その際、
異分野融合を重視しつつ、先導的で挑戦的な課題を積極的に取り上げることで、革
新的な技術シーズの創出を促進する。
具体的には、高度な熱マネジメントで重要となるナノ領域の熱制御技術、材
料研究等における計測・診断・イメージングの高度化、有用物質創成等に資す
るバイオテクノロジー、多様な天然炭素資源を活用する革新的触媒の創製、二
次元機能性原子や分子薄膜による部素材・デバイスの創製、物質中の微細な空
間空隙構造制御や界面制御技術、分子の自在設計・制御を実現する分子技術、
素材・デバイス・システム融合による革新的ナノエレクトロニクスの創成等の
基礎研究を中長期視点に立って推進する。
この他、不確実性への対応も見据え、文理融合や技術融合等の異分野融合によ
る新領域の開拓や、世界最高水準の研究成果の創出に向けた特定領域の先鋭化に
も取り組む。
②広範な社会的課題の解決に資する研究開発の推進
第5期科学技術基本計画も踏まえ、エネルギーの一層の効率的利用や医療分野
への応用、社会インフラの老朽化対策等、近年顕在化している社会的課題への解
決の鍵となるナノテクノロジー・材料科学技術分野の研究開発を、実用化も見据
えつつ推進する。
具体的には、第 5 期科学技術基本計画に掲げられている13の重要政策課題の
うち、特にナノテクノロジー・材料分野として大きな貢献が見込まれる以下の課
題を中心に、その解決を実現すべく、必要な取組を推進する。また、これまでに
解決できていない課題や新たな課題等、応用先の開拓にも取り組む。
ア. エネルギーの安定的な確保とエネルギー利用の効率化
再生可能エネルギーの活用と、エネルギー貯蔵、輸送システムの革新による
エネルギー利用の効率化は、資源の少ない我が国にとってエネルギー安全保障
上重要であるとともに、地球温暖化抑止に向けた低炭素社会の実現と持続可能
な社会の構築にも大きく貢献する。そのため、多様なエネルギー利用を実現す
るための研究開発として、システム化・デバイス化を念頭に、太陽電池や燃料
電池、エネルギー変換・貯蔵等のための材料開発を行うものとする。また、最
終システムを意識しつつ、エネルギーの高効率変換等に関わる大きなブレーク
スルーに繋がる次世代の技術シーズを探索する。
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さらに、低環境負荷社会に資する高効率・高性能な輸送機器材料やエネルギ
ーインフラ材料の開発を推進する。
イ. 資源の安定的な確保と循環的な利用
レアアース等の材料の高性能化に必須な希少元素の世界的な需要急増や資源
国の輸出管理政策により、深刻な供給不足を経験した我が国では、資源リスク
を克服・超越する「元素戦略」が必要不可欠である。特に、ナノレベル(原子・
分子レベル)での理論・解析・制御によって元素の秘めた機能を自在に活用す
ることが、新たな高機能材料の創製や希少元素代替・減量の実現、ひいては産
業競争力の鍵となる。そこで、希少元素を用いない、全く新しい代替材料の創
製等に取り組む。
ウ. 効率的・効果的なインフラの長寿命化への対策/国及び国民の安全・安心の確
保と豊かで室の高い生活の実現
国民生活や経済・社会活動を支えている公共インフラはその多くが高度経済
成長期に建設されているため、高齢化が進んでおり、重大事故の可能性が上昇
するとともに、維持補修に必要な経費も増大していくことが大きな社会的課題
となっている。また、我が国は、地震・津波、水害・土砂災害、火山噴火など
の大規模な自然災害により数多くの被害を受けており、このような自然災害に
対して、国民の安全・安心を確保してレジリエントな社会を構築することが課
題となっている。
そのため、公共インフラの効率的な維持管理・更新や、国土強靭化に資する社
会インフラ材料の高性能化・高信頼性化のための基礎・基盤技術の開発等を推
進する。具体的には、維持管理・更新技術として、構造物の劣化・損傷等を正
確に判断するためのセンサ・ロボット・非破壊検査技術や計測データを収集・
伝送する通信技術等の点検技術、点検結果に基づき補修・更新の必要性を判断
する評価技術、構造物に必要な強度や耐熱性を効率的に付与する補修補強技術
等の研究開発を進める。また、エネルギーインフラ材料の耐熱性向上や輸送機
器からインフラ構造体まであらゆる分野でのマルチマテリアル化の急速な進展
への対応として、金属と樹脂等の異種材料を構造体化するための高信頼性接
合・接着技術の開発を進める。
エ.ものづくり・コトづくりの競争力向上
安価な生産コストを武器とした中国等の新興国の追い上げや、インダストリ
ー4.0 等の国家イニシアティブを掲げる欧米諸国における製造業の徹底的なI
CT化といった世界の動向に対し、我が国の製造業が更なる競争力・収益力の
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強化や新市場の創出等を実現するためには、これまでの我が国の強みであるフ
ィジカル関連技術のさらなる進化に加え、それらとIoTやビッグデータ、A
I等のICTとを融合させることにより、新たなものづくりシステムの開発す
ることが課題である。
上記の課題解決のため、ナノテクノロジー・材料分野においては、材料デー
タベースの整備、データ解析ツールの開発、物質探索の成功事例の創出に向け
た体制を整備する。さらに、理論・実験・解析・シミュレーション・データベ
ースなどを融合して、材料のパフォーマンスを含めて性能予測が可能なマテリ
アルズインテグレーションとも連携し、国際的な競争の中でいち早く材料から
部材までの一貫した開発を行う。
オ.ナノテクノロジー・材料分野が貢献できる更なる社会課題とその対応
(後の議論を踏まえて適宜追加)
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