非鉄金属市況と需給動向 - 金属資源情報

非鉄金属市況と需給動向
平成28年11月(銅、亜鉛、ニッケル、金・白金)
おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行っ
てはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執
筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいま
すようお願い申し上げます。
総括
■ベースメタル
鉛
銅
8.00
金
株価は急反発、需要拡大への期待から銅価も9日以降急伸、11日には2015年6月以来の
パラジウムは米国経済回復への期待から需要増加が見込まれ、堅調に推移した。月末には
2015年1月以来となる767.0US$/ozの高値をつけた。
欧州
米国
9
5
3
7
中国(財新)
米国経済
11月の製造業PMIは54.1(前月53.4)。11/4労働省発表の10月非農業部門雇用者数は前月比+17.8万人(前月:+16.1万人)と市場予想
の+18万人を下回ったものの、失業率は4.6%(前月:4.9%)と約9年ぶりの低水準となった。
中国経済
11月製造業PMIは、国家統計局発表が51.7(前月:51.2)と上昇し、財新/Markit発表の速報値も50.8(前月:51.2)と景気判断の節目と
なる50を上回った。
欧州経済
11月製造業PMIは53.7(前月:53.5)と上昇し、2014年1月以来の高水準を維持した。
非鉄金属市況と需給動向
平成28年11月
Jun-16
Jun-15
Jun-14
Jun-13
Jun-12
Jun-11
Jun-10
Jun-09
中国(国家統計局)
11
圧力となった。プラチナも、ドル高及び軟調な金の値動きにつられ下落基調を辿ったが、
2016/1
半ば以降はOPEC総会での減産合意に起因する株やドルの上昇も、金市場に対しては下方
11
対する期待が広まったことによるドル高進行に圧迫され、下落傾向となった。さらに11月
製造業購買担当者景況指数(PMI)
9
金は、11月8日の大統領選挙にてトランプ氏が次期大統領に選出され、同氏の経済政策に
60
58
56
54
52
50
48
46
44
42
40
2015/1
■貴金属
Jun-08
けた。その後はドル高が下方圧力となりやや値を下げ推移、10,965.0US$/tで越月した。
Jun-07
0.00
Jun-06
要拡大期待から大幅に上昇、11日には1年5か月ぶりの高値となる11,735US$/tの値を付
2.00
7
は2,900US$/t台の高値を付けた。ニッケルはトランプ氏のインフラ投資計画に反応し需
錫
Jun-04
たところ、投機的な買いや米中における需要増加の期待感から24日以降急伸し、28日に
アルミニウム
4.00
Jun-03
5,740.0US$/tで越月した。亜鉛は供給不足懸念から2,400~2,600US$/tで堅調に推移し
ニッケル
3
5,900US$台を回復し、その後は調整局面に入り値を下げながらも高値圏を維持し、
亜鉛
6.00
Jun-05
米国大統領に選出されたトランプ氏が掲げるインフラ投資計画や減税計画への期待感から
10.00
5
当該期間、銅は4,862.5US$/tでスタートし、米中の指標等を好感し緩やかに上昇、次期
(JOGMEC作成)
主要非鉄金属の価格推移
(2003年5月=1)
銅
「トランプノミクス」への期待感先行、一時、1年5ヶ月ぶりの5,900US$台回復
② 米新政権への期待感が相場を刺激:トランプ氏が掲げるインフラ投資計画や減税計画
6,000
18,800
5,500
LME銅価格(左軸)
5,000
への期待感から、ダウ平均株価は7日以降急反発。需要拡大への期待から銅価も9日以
③ 好調な米国経済とLME在庫減少:22~23日にかけて発表された米の経済指標(10月
の中古住宅販売件数及び耐久財受注)が市場予想を上回り景気好調。またLME在庫減
少(月初から約25%減)も手伝い、24日以降は一段高の5,800US$前後で推移。(11
月30日:5,740US$/t)。
11/7
11/2
10/28
10/3
による12月利上げ示唆で、23日までは5,500US$前後で推移。
10/23
17,800
10/18
4,000
10/13
ぎ感」から一旦調整局面に入り(15日:5,448US$/t)、また17日の米FRBイエレン議長
4,500
10/8
降急伸。11日には昨年6月以来の5,900US$台回復。14~15日にかけては「買われ過
18,300
ダウ平均株価(右軸)
銅地金の需給バランスと在庫の動き
LME価格
(US$/t)
11/27
価は緩やかに上昇。7日には本年4月下旬以来となる5,000US$台回復。
19,300
11/22
国Q3労働生産性が約2年ぶりの高水準となり、また為替がドル安で推移したことで銅
(US$)
11/17
① 米中の指標等を好感し緩やかな上昇:上旬は、月初に発表された中国製造業PMIや米
当該期間の値動き
LME価格(US$)
6,500
11/12
■LME価格
需給バランス/LME在庫
(千t)
10,000
1,000
800
8,000
600
■需給動向
国際銅研究会(秋季)の予測では2016年はほぼバランス(供給<需要、8千t)。2017
4,000
200
年は供給>需要、163千t。
2,000
✍
雲南銅業が内蒙古で赤峰製錬所の拡張工事着工。(現状12.5万t→計画50万t規模)
非鉄金属市況と需給動向
平成28年11月
LME在庫
COMEX在庫
需給バランス
LME価格(Cash settlement)
7
4
2016/1
7
10
4
2015/1
10
7
4
7
10
4
10
-400
2014/1
が採掘場に侵入しており、違法採掘者と地滑り事故との関係は現在のところ不明。
0
2013/1
11月13日、地滑り事故が発生し、13名が死亡。同鉱山では5~10千人の違法採掘者
-200
7
主要鉱山操業状況:DRコンゴTenke Fungurume鉱山(China Molibudenum)で
0
4
✍
400
2012/1
✍
6,000
SHFE在庫
亜鉛
供給不足懸念及び米中需要拡大への期待感から大幅上伸、9年ぶりの高値
■LME価格
① 供給不足懸念による買いの動き:亜鉛価格は供給不足懸念から2016年は右肩上がりに
2,900
節(2017年1月27日~2月2日)にはさらに供給タイト化するとの見込みから、ト
2,800
レーダーや需要家が買いを増やし、投機資金も流入したものと見られる。
2,700
プ氏が米大統領に選出され米国におけるインフラ投資が拡大するとの期待が広がった
こと、さらに中国国家発展改革委員会が28日、北京市と近隣都市を結ぶ2,470億元
LME在庫
3,000
推移し、11月下旬に価格が急伸、11/28には2,907US$/tに達した。年明けの中国春
② 米中における亜鉛需要拡大期待:米中における経済指標が好調であったこと、トラン
当該期間の値動き
LME価格(US$)
LME在庫(千t)
LME価格
500
480
460
440
2,600
420
2,500
2,400
400
(約4兆円)規模の鉄道計画を承認したこと等から亜鉛需要増が意識された。
③ LME在庫キャンセル増加:10月下旬、亜鉛在庫を最も多く抱える米国ニューオーリン
ズ倉庫で3万tがキャンセルワラントとなった。11月も引き続き追加で2万tのキャンセ
ルワラントが発生し、在庫は減少傾向にある。SHFE在庫も減少傾向。
■需給動向
亜鉛のSHFE在庫推移
(千t)
300
250
200
国際鉛亜鉛研究会(秋季)の予測では2016年は34.9万tの供給不足、2017年は24.8万t
非鉄金属市況と需給動向
平成28年11月
8
7
6
5
4
3
2
12
11
9
10
8
2016/1
1月から順次処理量を増やすと発表。
0
7
格低迷により粗鉱処理量を4分の1へ減産していた豪州の亜鉛鉱山について、2017年
6
年の亜鉛生産量を倍増させる計画を発表(+18万t/y)、2016年11月東邦亜鉛は価
50
5
2016月10月ペルー・Antamina鉱山(BHPB、Glencore、Teck、三菱商事)は2017
100
4
主要鉱山操業状況:Glencoreは2015年10月発表以降、年間50万tの減産体制。
3
✍
150
2
の供給不足。
2015/1
✍
ニッケル
米国インフラ投資への期待感から1年5か月ぶりに11,735US$/tをつける
■LME価格
① 米国インフラ投資への期待:11月上旬は、米大統領に選出されたトランプ氏がインフ
ラ整備に言及したことで非鉄金属需要が意識され、大幅に上昇。11日には、1年5か月
当該期間の値動き
LME在庫(千t)
LME価格(US$)
LME在庫
12,000
LME価格
400
11,500
ぶりの高値となる11,735US$/tの値を付けた。但し、月末には同氏の大統領選勝利が
世界需要に及ぼす影響は緩やかとの見方が広がった。
② ドル高の進行:11月中旬は、トランプ氏の掲げたインフラ投資への期待感が一服した
380
11,000
360
10,500
340
ことに加え、進行を続けるドル高が下方圧力となって11,100US$/t~11,250US$/tの
レンジでほぼ横ばいに推移。
10,000
320
③ 米中製造業への期待:23日に発表された米10月耐久財受注が1年ぶりの大きな伸びを
両国製造業への期待感が高まり緩やかに上昇。月末にはやや値を下げて越月。
■需給動向
✍
✍
国際ニッケル研究会(秋季)の予測では2016年は6.7万tの供給不足、2017年は6.6万t
(千t)
25
20
15
10
の供給不足。
5
主要鉱山操業状況:中国フェロニッケル11社、2016年20%減産提議(2015.
0
12/15)。フィリピンニッケル鉱山生産者8社に操業停止命令(7/7-8/11)。フィ
リピンニッケル鉱山生産者15社を含む20社に操業停止勧告(9/27)。
(5)
(10)
(15)
(20)
非鉄金属市況と需給動向
平成28年11月
一次ニッケルの月別需給バランス
(2015年1月~2016年9月)
2015/1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
2016/1
2
3
4
5
6
7
8
9
見せた他、中国で大規模な鉄道整備計画が承認されたとの報道を受けて、11月下旬は
420
(出典:INSG)
金・プラチナ・パラジウム
米国大統領選の先行き不透明感、小幅な値動き続く
■金
① 米新政権への期待感の高まりによるドル高:8日、米国大統領選が実施され、共和党
のトランプ氏が選出された。同氏の積極的な経済・財政政策への期待感から11月はド
当該期間の値動き
(US$)
金
プラチナ
パラジウム
1,450
1,250
ル高に振れ、安全資産としての金の価格を圧迫した。月初は1,286.4US$/ozでスター
トした金も、月末は1,100US$/oz台と本年2月以来の安値で推移した。
② OPEC減産合意による株高・ドル高:11月半ばは、OPECの減産合意に係る先行き不
1,050
850
透明感から横ばい推移したものの、下旬には合意に至るとの見通しが強まり下落傾向
となった。30日のOPEC総会で8年ぶりに減産が合意され、これにより原油価格は上
昇、株やドルも上昇した一方、金市場に対しては下方圧力となった。
650
450
■プラチナ・パラジウム
① プラチナはドル高により軟調:プラチナは、米大統領選でトランプ氏が勝利し、米国
経済回復への期待感が高まったことによるドル高進行に圧迫され弱含み。プラチナ需
為替の値動き(US$/€)
1.12
1.11
要の半分は自動車用排ガス触媒などの工業用途だが、これは主に欧州のディーゼル車
1.10
向けであり、最近の自動車メーカー各社のEV開発に乗り出そうという機運の高まりが、
1.09
プラチナ価格を圧迫しているとの見方もある。
1.08
② パラジウムは米国需要増加へ期待:ガソリン車排ガス触媒需要の高いパラジウムは、
1.07
トランプ氏の経済政策期待感から米国需要増が意識され、また投機資金も流入したも
1.06
のと見られ、上昇傾向で推移した。月初は629.0US$/ozだったところ、月末は2015
年1月以来の高値となる767.0US$/ozで越月した。
非鉄金属市況と需給動向
平成28年11月
1.05
↓ドル高
(European Central Bank)
非鉄市況
本報告期
銅
亜鉛
ニッケル
金
プラチナ
パラジウム
LME現物
LME現物
LME現物
AM・PM平均
AM・PM平均
AM・PM平均
(US$/t)
(US$/t)
(US$/t)
(US$/oz)
(US$/oz)
(US$/oz)
期初
4,862.5
2,444.0
10,445.0
1,286.4
989.0
629.0
期末
5,740.0
5,935.5
2,709.0
2,907.0
10,965.0
11,735.0
11月28日
11月28日
11月11日
1,182.8
1,302.3
11月4日
919.0
1,009.5
11月9日
767.0
767.0
11月30日
4,862.5
2,423.0
10,335.0
1,182.8
908.5
622.0
11月1日
11月2日
11月2日
11月30日
11月25日
11月4日
平均
5,443.3
2,568.8
11,143.0
1,270.0
978.8
660.7
3か月
5,755.0
2,720.0
11,010.0
-
-
-
12か月
5,760.0
2,713.0
11,185.0
-
-
-
24か月
5,745.0
2,553.0
11,285.0
-
-
-
2016年
期初
4,645.0
1,600.0
8,515.0
1,077.5
885.5
550.0
(当年)
直近
5,740.0
5,935.5
2,709.0
2,907.0
10,965.0
11,735.0
1182.8
1,361.7
919
1,179.5
11月28日
11月28日
11月11日
8月3日
8月10日
767
767.0
11月30日
4,310.5
1,453.5
7,710.0
1,077.5
815.5
467.5
1月15日
1月12日
2月11日
1月4日
1月21日
1月12日
平均
4,790.1
2,029.7
9,468.9
1,259.9
995.5
600.8
2015年
期初
6,309.0
2,183.5
14,880.0
1,193.6
1,108.0
775
(前年)
期末
4,702.0
1,600.0
8,665.0
1,062.3
872.0
547.0
最高値
6,448.0
2,405.0
15,455.0
1,294.1
1,283.0
829.0
5月12日
5月6日
1月7日
1月23日
1月21日
3月5日
4,515.5
1,487.0
8,160.0
1,053
830
528
11月23日
11月19日
11月23日
12月3日
11月30日
12月3日
5,493.6
1,927.9
11,806.4
1,159.2
1,052.1
690.1
最高値
最安値
先物
(11月30日)
最高値
最安値
最安値
平均
非鉄金属市況と需給動向
平成28年11月