自治体の防災行政に対する住民評価が高い都市は 住民の防災・減災へ

2016 年 12 月 6 日
株式会社野村総合研究所
自治体の防災行政に対する住民評価が高い都市は
住民の防災・減災への取り組み実施率も高い
~ 東京特別区および政令指定都市在住者へのアンケート調査 ~
株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:此本 臣吾、以下「NRI」)
は、東京特別区(23 区)および政令指定都市 20 市において、本人所有の住宅に住む 20 歳
以上の人を対象に、インターネットによる「住宅の防災・減災意識に関する調査」を 2016
年 9 月に実施しました(回答者 2,755 人)。
本調査を通して、
「大規模地震に自らが遭遇する可能性に対する住民意識に都市間格差が
生じていること」、
「大規模地震への遭遇可能性に対する意識が高い都市では自助※行動の実
施率が高いこと」、そして、
「これらの結果と自治体が実施する防災行政に対する住民評価が、
相互に密接に関係していること」が確認されました。
主な調査結果は、以下のとおりです。
■ 大規模な地震への遭遇可能性に対する意識に都市間格差が生じている
「あなたは近い将来、自分が大規模な地震災害に遭遇すると思いますか。」という設問に
対して、「非常にそう思う」と回答した人の割合を見ると、都市間に格差が生じています。
最も割合が高いのは静岡市(35.7%)で、次いで浜松市(28.7%)、熊本市(26.3%)
、名古屋
市(25.7%)の順となっています(図 1)。これらの都市は、今年震災を経験した熊本市を除
いて、いずれも政府により東海地震や東南海地震による甚大な被害が想定されている太平
洋岸地域に位置しています。
一方、最も割合が低いのは札幌市(6.9%)で、次いで京都市(7.4%)、広島市(7.6%)、北
九州市(7.7%)となっています。これらの都市は、いずれも太平洋側から遠距離の内陸地域
や日本海もしくは瀬戸内海沿岸に位置し、確率論的地震動予測地図(政府地震調査研究推進
本部)において、今後 30 年以内に震度 6 強以上の揺れが発生する確率が比較的低いと予測
されている地域です。
■ 大規模地震への遭遇可能性に対する意識が高い都市では自助実施率が高い
自身や家庭における自助として、
「①家具類の固定」
「②飲食料(3 日分)と生活必需品の
備蓄」
「③避難場所と避難ルートの確認」
「④家族間での安否確認の方法についての話し合い」
「⑤防災訓練への参加」の 5 項目の実施有無を調査しました。その上で、5 項目の実施率の
平均値を「自助実施率」と定義して、大規模地震への遭遇可能性に対する意識との関係を分
析しました。その結果、
「あなたは近い将来、自分が大規模な地震災害に遭遇すると思いま
1
すか。」という設問に対して「非常にそう思う」と回答した人の割合が高い都市ほど、自助
実施率が高い傾向にあることがわかりました(図 2)。
■ 自治体の防災行政に対する住民評価が高い都市では自助実施率が高い
自治体が実施する防災行政として「①防災教育」
「②リスクの見える化」
「③防災対策に関
する知識の普及」
「④家庭の防災対策に関する市役所の相談体制」
「⑤防災対策に必要となる
資金援助」の 5 項目を、住民による評価や自身の認知度に基づき、各項目 1~5 点で指数化
しました。その上で、都市別に「項目別の指数の平均値」
「5 項目の平均値」を算定して「評
価点」とし、自助実施率との関係を分析しました。
自治体の防災行政に対する評価点が高い都市は、東日本大震災を経験した仙台市(2.8 点)、
大規模地震のリスクが高いとされている静岡市(2.8 点)など、一方評価点が低いのは、岡
山市(2.3 点)、熊本市(2.3 点)などでした。項目別に見ると、評価点が低いのは、
「③防災
知識の周知広報」(1.7 点)、「②リスクの見える化」(2.2 点)でした(図 3)。さらに、自治
体の防災行政に対する評価点が高い都市ほど、自助実施率が高い傾向にあることがわかり
ました(図 4)。
■ 住民の危機意識を高め、自助を促進するためには、自治体防災行政の役割が重要
以上の調査結果より、住民の危機意識を高め、自助を促進するためには、防災行政の果た
す役割が重要であり、特に「リスクの見える化」とその内容理解を図る工夫が重要であると
考えます。
※自助:
住民自ら実施する防災・減災対策への取り組みで、具体的には「①家具類の固定」「②飲食料(3 日分)と
生活必需品の備蓄」
「③避難場所と避難ルートの確認」
「④家族間での安否確認の方法についての話し合い」
「⑤防災訓練への参加」が挙げられます。
【ニュースリリースに関するお問い合わせ】
株式会社野村総合研究所
ばん
コーポレートコミュニケーション部
海藤、坂
TEL:03-6270-8100(2016 年 12 月 19 日以降:03-5877-7100)E-mail:[email protected]
【本調査の担当】
株式会社野村総合研究所
社会システムコンサルティング部
2
浅野
【ご参考】
●調査概要
調査名称
調査時期
調査形式
調査対象
「住宅の防災・減災意識に関する調査」
2016 年 09 月 16 日(金)~2016 年 09 月 20 日(火)
インターネット調査(NRI 「True Navi」)
東京特別区および政令指定都市 20 市に在住する 20 歳以上の住宅自己所有者
東京特別区
札幌市
仙台市
さいたま市
千葉市
横浜市
川崎市
相模原市
新潟市
静岡市
浜松市
回収サンプル数
※ 各都市のサンプ
ル数が 100 以上
となるように割付
137
130
133
132
134
138
131
130
130
129
129
主な調査項目



調査担当者
社会システムコンサルティング部 浅野
名古屋市
京都市
大阪市
堺市
神戸市
岡山市
広島市
北九州市
福岡市
熊本市
合計
136
135
131
126
132
131
132
130
131
118
2,755
地震災害に対する考え方について
自助の実施状況
居住地の防災行政に対する評価
●自治体が実施する防災行政に対する住民評価と指数化の方法
評価項目
評価指標
質問文
① 防災教育
 あなたが住んでいる自治体では、学校における防災教育や社会人向けの防災教育プログラ
ムが充実していると思いますか。
② リスクの
見える化
 あなたが住んでいる自治体では、地震被害想定やハザードマップを作成していますか。
 あなたは、自治体が作成した地震被害想定やハザードマップの内容を熟知していますか。
③ 防災対策の
知識普及
 あなたが住んでいる自治体では、個人や家庭で実施する防災対策の心得や方法に関するガ
イドブックやパンフレット類を作成していますか。
 あなたは、自治体が作成した防災対策の心得や方法に関するガイドブックや、パンフレット類
の内容を熟知していますか。
④ 相談体制
 あなたが住んでいる自治体では、家庭の防災対策(住宅の耐震化、家具類の固定等)に関す
る市役所の相談窓口が充実していますか。
⑤ 資金援助
 あなたが住んでいる自治体では、家庭の防災対策(住宅の耐震化、家具類の固定等)に必要
となる費用負担を軽減する、資金面での支援制度は充実していますか。
項目ごとに 5 段階評価
非常にそう思う:5点
そう思わない:1点
どちらかというとそう思う:4点 どちらともいえない:3点 どちらかというとそう思わない:2点 まったく
指数化
都市別・項目別の平均点
3
図 1:大規模地震への遭遇可能性に対する住民意識
図 2:大規模地震への遭遇可能性に対する住民意識と自助実施率との関係(都市別)
60
※
仙台市(被災経験都市)
55
静岡市
50
自
助自
助
実実
施施
率率
千葉市
45
川崎市 横浜市
名古屋市 浜松市
東京特別区
※
熊本市(被災経験都市)
相模原市
※
40
神戸市(被災経験都市)
(%) 35
新潟市
京都市
30
札幌市
福岡市
大阪市
広島市
25
さいたま市
堺市
岡山市
北九州市
20
0
5
10
15
20
25
30
35
40
Q.近い将来自分が大規模な地震災害に遭遇すると思いますか。「非常にそう思う」
Q.近い将来自分が大規模な地震災害に遭遇すると思いますか。「非常にそう思う」
(%)
震度6強の発生確率が比較的高いと予測される都市
震度6強の発生確率が比較的低いと予測される西日本都市
※被災経験都市:近年、震度 6 強以上を記録した地震災害を経験した都市
4
その他の都市
図 3:自治体の防災行政に対する住民評価点※(都市別、総合点の高い順)
総合
順位
都市名
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
仙台市
静岡市
神戸市
名古屋市
東京特別区
浜松市
横浜市
札幌市
福岡市
相模原市
新潟市
堺市
京都市
千葉市
さいたま市
広島市
川崎市
大阪市
北九州市
熊本市
岡山市
全体
(①~⑤の平均)
①防災教育
②リスクの
見える化
③防災知識の
④相談体制
周知広報
2.8
3.3
2.5
2.1
3.3
3.0
2.8
3.5
2.6
2.0
3.1
2.9
2.7
3.1
2.6
1.8
3.1
2.9
2.7
3.0
2.6
1.7
3.1
3.0
2.6
3.1
2.2
1.9
3.0
2.9
2.6
3.2
2.2
1.6
3.1
2.8
2.5
2.9
2.2
1.7
3.0
2.8
2.5
2.8
2.3
1.7
3.0
2.7
2.5
2.8
2.4
1.8
2.9
2.7
2.5
3.1
2.0
1.7
3.0
2.8
2.5
3.0
2.1
1.6
2.9
2.7
2.5
2.9
2.2
1.6
2.8
2.8
2.5
3.0
2.0
1.7
2.9
2.8
2.5
3.0
2.3
1.5
2.9
2.7
2.5
3.0
1.9
1.6
3.0
2.8
2.4
2.8
2.2
1.6
2.9
2.7
2.4
2.9
2.0
1.7
2.9
2.7
2.4
2.9
1.8
1.5
2.9
2.8
2.4
2.9
1.9
1.5
2.9
2.7
2.3
2.8
1.8
1.5
3.0
2.6
2.3
2.7
2.0
1.4
2.7
2.5
2.5
3.0
2.2
1.7
3.0
2.8
⑤資金援助
※ 評価点:最低 1 点、最高 5 点の 5 段階で住民アンケート調査結果に基づき算定
図 4:自治体の防災行政に対する住民評価点と自助実施率との関係(都市別)
60
※
仙台市(被災経験都市)
55
静岡市
50
千葉市
45
自
助
実
施
率
川崎市
相模原市
40
※
熊本市(被災経験都市)
35
さいたま市 新潟市
(%)
福岡市
30
京都市
堺市
大阪市
札幌市
広島市
25
岡山市
20
2.20
横浜市 東京特別区
名古屋市
※
神戸市(被災経験都市)
浜松市
2.30
北九州市
2.40
2.50
2.60
2.70
2.80
2.90
防災行政に対する住民の評価点
防災行政の評価点(①~⑤の評点の平均値)
震度6強の発生確率が比較的高いと予測される都市
震度6強の発生確率が比較的低いと予測される西日本都市
※被災経験都市:近年、震度 6 強以上を記録した地震災害を経験した都市
5
その他の都市