第1章 災害時の医療救護活動の基本 【PDF】

第1章 災害時の医療救護活動の基本
第1節 CSCATTT(スキャット)
災害時の医療救護活動は、被災現場と医療機関における活動に大別されるが、いずれの場
合においても体系的な医療救護活動を行うための基本は「CSCATTT(スキャット)
」の
7項目に集約される。この原則は大規模地震等の大型災害発生時のマネジメントの基本であ
り、災害現場における各組織間の境界線を超える普遍的なものであることが確認されている。
◎CSCATTT
Command and Control
指揮、統制
医療活動が一つの組織として機能するためには、指揮命令系統の確立が不可欠である。医療現
場責任者(メディカルコマンダー)の指揮命令下において医療救護活動を組織的に実行すること
が大切であり、これは活動全体の秩序だった縦の連携を構築することを意味する。また、統制は
関係機関の横の連携を意味する。
Safety
安全
災害対応における安全は、①自分自身(Self)、②現場(Scene)、③生存者(Survior)で、医療従
事者は、自分と現場の安全を確認してはじめて生存者の安全を考慮できる。
Communication
情報伝達
県、市町村、医療機関などそれぞれの組織間の横の情報伝達が大切である。
Assessment
評価
災害現場の評価として、負傷者の数と傷病の種類、緊急度・重症度を把握する。評価を継続的に
実施し、その情報に基づいて災害現場での医療活動が決定される。
Triage
トリアージ
傷病者の重症度を正しく判断し(Right patient)、適切な場所へ(Right place)、適切な時間内
に(Right time)、篩い分け(Sieve)、選別(Sort)する。
Treatment
治療
災害時の医療活動の目的は、平時の救急治療とは異なり、
「できる限り多くの傷病者に最善を尽
くす」ことである。災害現場での治療の目的は、傷病者を医療機関まで搬送しても良い状態を維
持できるようにすることである。
Transport
搬送
搬送の目的は、傷病者を適切な時間内に、適切な場所に運ぶことである。
第2節 指揮と統制
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概要
災害医療においては、7つの基本原則のうち、Command and Control(指揮、統制:コ
マンド、コントロール)システムが重要である。
CSCATTTが全体として円滑に機能するために最優先されるべきことは、医療指揮
官への権限の確立である。
Command には、各関係機関内の縦の連携である「指揮」と横の連携である「統制」とい
う意味がある。特に災害発生の急性期に迅速な医療救護活動を行うためには、組織化され
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た指揮命令系統を確立することが必要で、その後の医療救護活動の円滑化につながる。
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指揮の階層
指揮は、次の3段階の階層に区分し、各責任者がこれを行うものとする。
(1) 実践的部門(銅:ブロンズ)
医療救護活動の現場を指揮するため、医療救護所の運営責任者が担う。
(2) 戦術的部門(銀:シルバー)
被災地の医療救護活動を総合的に調整するため、上伊那地域災害医療本部の災害医療
コーディネーターが担う。
(3) 戦略部門(金:ゴールド)
被災地を支援するための人的・物的資源等を総合的に調整し決定するため、長野県災害
医療本部の災害医療コーディネーターが担う。
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役割等
指揮の各部門は、災害医療に関する意思決定と責任を持つことになる。
(1) 上伊那地域災害医療本部は、上伊那医師会長が災害医療コーディネーターを担い、三
師会、医療機関及び関係行政機関により構成され、医療救護活動の総合調整を行う。
(2) 医療救護所の運営責任者は、派遣された救護班の代表医師が担う。各要員は傷病者に
対する応急処置、施設運営を行う。
(3) 災害発生から48時間の対応が重要であり、各要員は、弾力的に交替し業務を行うな
ど、余裕を持って、上伊那地域災害医療本部や医療救護所の運営を行うことが必要であ
る。
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