2016-A 信号解析基礎 教員: 苗村健 入力: 高橋光輝 December 12, 2016 1 第1回 信号とは 物理量の変動の中に見いだされる情報 学科のキーワードでもある「物理」と「情報」の橋渡しをするもの 信号の種類 確定性 確定信号 * 観測済み * ある時刻の値がわかる 不規則信号 * 予測不可能性 * 集団で見ると規則性がある 周期性 周期信号 * 過去から未来まで永遠に周期性を持つ理想的な信号 非周期信号 連続性 連続信号 離散信号 習得すべき世界観 時間領域 周波数領域 が互いに干渉しあう、どちらも出発点となりうるような世界の感覚。 2 今後の予定 第一部 (確定信号) フーリエ変換、その他 * (周期/非周期)Ö(連続/離散) 標本化 →デジタル信号処理 (3 年 S 信号処理工学) へ 第二部 (不規則信号) 相関関数 電力スペクトル密度 休講予定 11/7 12/26 1/7 期末試験 1/16( 月) 意地悪な問題は出さない予定 (やればできる) 持ち込み不可・追試なし 中間レポート 12/5( 月) 第一部のまとめを作る A4 用紙 1 枚 (表裏) イメージとしては、カンニングペーパー作り 評価の方法 原則、期末試験のみ α (体調不良などの場合の救済措置, 中間レポート/出席) + Chapter 1 第 1 部 信号とスペクトル 目的: 信号波の周波数解析 考え方: 信号を単純な波形の組み合わせで表現する 1.0.1 最初にやること 1. 複素正弦波 2. 線形システム 3. 信号を単純な波形に分解する 複素正弦波と線形システムの融合 →フーリエ変換・フーリエ級数 1.1 1.1.1 第 1 章 正弦波信号と線形システム 正弦波とは? x (t) = A cos (2πf t + θ) A: 振幅 f : 周波数 θ: 位相 3 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 周期 T = 1 (2πf · T = 2π) f 角周波数 ω = 2πf 正弦波は円運動の投影 図 1] [ 1.1.2 複素正弦波 複素…2 次元的な円運動の取り扱いに便利 複素数とは z = x + iy (x, y) の 2 次元空間を表している。 i= √ −1 = j 虚数は j で表記する!!! 複素平面 z = x + jy = r cos φ + jr sin φ = r (cos φ + j sin φ) オイラーの定理 ejφ = cos φ + j sin φ d jφ e = − sin φ + j cos φ dφ = j (cos φ + j sin φ) = jejφ 4 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 5 ej(φ1 +φ2 ) = · · · = ejφ1 · ejφ2 z = x + jy = rejφ と書ける。よって x (t) = A cos (ωt + θ) + jA sin (ωt + θ) = Aej(ωt+θ) = Aejθ · ejωt 振幅と位相を時間変化する成分から分離して複素振幅として扱うことができるので、 便利である。 ejωt に関するいろいろ 1. 時計回りと反時計回り ejωt = cos ωt + j sin ωt e−jωt = cos ωt − j sin ωt 図2 ejωt + e−jωt 2 jωt e − e−jωt j sin ωt = 2 cos ωt = 2. 正規直交系 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 6 定義 内積 ⟨φn (t) , φm (t)⟩ に対して、下記を満たす {φn (t)} を、正規直交系と 呼ぶ。 { 1 (n = m) ⟨φn (t) , φm (t)⟩ = 0 (n = ̸ m) 複素正弦波は下記において正規直交系を成す。 φn (t) = ejnω0 t (ω = nω0 ) 2π T = ω0 ∫ T2 1 ⟨φn (t) , φm (t)⟩ = φn (t) φm (t)dt T − T2 証明 ω0 ⟨φn (t) , φm (t)⟩ = 2π ω0 = 2π ∫ ∫ π ω0 − ωπ 0 π ω0 ejnω0 t · ejmω0 t dt ej(n−m)ω0 t dt − ωπ 0 n ̸= m のとき ⟨φn (t) , φm (t)⟩ = [ ] ωπ ω0 1 0 ej(n−m)ω0 t π 2π j (n − m) ω0 −ω 0 =0 第2回 複素正弦波 x (t) = Aej(ωt+θ) = Aejθ · ejωt Aejθ が複素振幅となり、ejωt は正規直交系をなす。 CHAPTER 1. 1.1.3 第 1 部 信号とスペクトル 線形システム システムの図示 (脱線) 線形システムとは? 定義: x1 (t) 7→ y1 (t) , x2 (t) 7→ y2 (t) のとき、 ax1 (t) + bx2 (t) 7→ ay2 (t) + by2 (t) 7 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 8 となるシステムを線形システムと呼ぶ。 より一般的には、 x (t) = ∑ ak xk (t) k のとき、出力は y (t) = ϕ [x (t)] = ∑ ak ϕ [xk (t)] k この講義では、線形システムで表される現象のみを扱う。世の中の極めて多くの現象 がこれで扱うことができる。 線形システムの例 例 1) 定数倍 y (t) = c · x (t) [∑ ] y (t) = ϕ ak xk (t) ∑ = ak [cxk (t)] ∑ = ak ϕ [xk (t)] d x (t) ∫dt 積分 y (t) = x (t) dt 加減算 y (t) = ϕ1 [x (t)] + ϕ2 [x (t)] 例 2) 微分 y (t) = 例 3) 例 4) 例 5) 定数倍・微分・積分・加減算の組み合わせ CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 9 定係数連立微積分方程式で表されるすべての回路 線形でないもの 線形システムの扱い方 x (t) = ∑ ak xk (t) → y (t) = ∑ ak ϕ [xk (t)] これを基本波形 xk (t) の線形合成に対する出力 (応答) は、それぞれの基本波形に対す る応答 ϕ [xk (t)] の線形合成になる。 したがって、基本波形の応答さえわかっていれば、その合成に対する応答も分かる。 それではどうするか? 1. 基本波形は何にするか? 2. 基本波形の応答を計算する方法は? ϕ [xk (t)]? 3. 任意の波形を基本波形に分解する方法? ak ? CHAPTER 1. 1.1.4 第 1 部 信号とスペクトル 10 線形システムの応答 1. 基本波形は何にするか?: xk (t) を決める →複素正弦波を採用 メリット: 線形システムの場合、入出力の周波数に変化はなく、複素振幅のみ変化する。 2. 基本波形の応答を計算する方法は? 入力: x (t) = A1 ejθ1 · ejωt 出力: y (t) = A2 ejθ2 · ejωt このとき、 比= 出力 A1 j(θ2 −θ1 ) = e A2 入力 となり、すべての周波数 ω に対して複素振幅の比を定義できる。 この比を、周波数 ω や f における伝達関数と呼び、H (f ) と表記する。(伝達関数でシ ステムの特性 ϕ を全て語れる) 伝達関数 (システムの特性) の例 複素関数を分かりやすく図示するため、 H (f ) = |H (f )| ej∠H(f ) と考える。 |H (f )|: A2 A1 振幅の比 e : θ2 − θ1 位相差 伝達関数をシステムの周波数特性と呼ぶこともよくある。 j∠H(f ) CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 11 まとめ 1.2 第 2 章 フーリエ級数とフーリエ変換 フーリエ解析の基本定理 物理的に実現可能な波形は正弦波の和で表される。 x (t) が周期 T を持つとき、ω0 とおいて x (t) = ∞ ∑ αn ejnω0 t n=−∞ ejnω0 t という飛び飛びの周波数で考えているので級数展開可能。 係数 αn = 1 T ∫ T 2 x (t) e−jnω0 t dt − T2 どこでもよいので 1 周期分を積分して T で割ればよい。 x (t) に周期がないとき 1 x (t) = 2π フーリエ逆変換) ( ∫ ∞ −∞ X (ω) ejωt dω CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 係数 ∫ ∞ X (ω) = 12 x (t) e−jωt dt −∞ フーリエ変換) ( Parseval の等式 時間領域の電力=周波数領域の電力 1 T ∫ T 2 − T2 2 |x (t)| dt = ∞ ∑ |αn | 2 n=−∞ 証明 { ∑ x (t) = αn φn (t) jnω0 t φn (t) = e ←正規直行系 とおくと、 } ∫ ∫ {∑ } {∑ 1 1 2 |x (t)| dt = αn φn (t) αm φm (t) dt T T ( { ∫ ∑∑ 1 1 = αn αm · φn (t) φm (t)dt 正規直交系= T 0 n m ∑ ∑ 2 = αn · αn = |αn | n 第3回 n (n = m) (n ̸= m) ) CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 13 周期がある場合 →フーリエ級数展開 周期がない場合 →フーリエ変換 周期 T の場合 ∞ ∑ x (t) = αn ejnω0 t n=−∞ ω0 = ( 2π T ) となる αn = Parseval の等式 1 T ∫ T 2 − T2 1 T ∫ T 2 x (t) e−jnω0 t dt − T2 ∞ ∑ 2 |x (t)| dt = |αn | 2 n=−∞ 時間領域と周波数領域でエネルギーが保存される。 準備: 偶関数と奇関数 偶関数 奇関数 一般的に関数 f (t) は、 even fe (t) = f (t) + f (−t) ← cos 2 fo (t) = f (t) − f (−t) ← sin 2 odd に分解できて、 f (t) = fe (t) + fo (t) CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 14 x (t) と αn の関係についてイメージをつかむ x (t) が実数の場合、 αn = αn + jbn とおくと、(an , bn : 実数) 1 an = T ∫ T 2 − T2 −1 bn = T ∫ x (t) cos nω0 dt T 2 − T2 x (t) sin nω0 dt と簡略化される。(x (t) の虚数成分が 0 の場合を考えているから) したがって、 a−n = an b−n = −bn 実部が偶関数、虚部が奇関数)、すなわち、 ( α−n = αn ここで αn は αn の複素共役である。 x (t) が実数かつ偶関数のとき、 bn = 0 即ち、αn は「実数のみの偶関数」 x (t) が実数かつ奇関数のとき、 an = 0 すなわち、αn は「純虚数で奇関数」 CHAPTER 1. 1.2.1 [2] 第 1 部 信号とスペクトル 15 非周期波形のフーリエ変換 x (t) 周期なし→周期∞と考える 導出 αn T = X (nω0 ) = X (ω)|ω=nω0 とおく。 X (ω) = lim αn · T ← 級数展開 T →∞ ∫ ∞ x (t) e−jωt dt = −∞ これがフーリエ変換である。 一方、逆変換に関しては、 x (t) = ∞ ∑ αn ejnωn t = n=−∞ ここで、 ω0 = と表記すると、 ∞ ∑ X (nω0 ) jnω0 t e T n=−∞ 2π = ∆ω T ∆ω 1 = T 2π よって、 ∞ 1 ∑ X (n∆ω) ejn∆ωt ∆ω 2π n=−∞ ∫ ∞ 1 −−−−−−−−→ X (ω) ejωt dω T →∞,∆ω→0 2π −∞ x (t) = これがフーリエ逆変換である。 x (t) が非周期なら、 フーリエ変換 ∫ ∞ X (ω) = −∞ x (t) e−jωt dt 第 1 部 信号とスペクトル CHAPTER 1. フーリエ逆変換 x (t) = 他の書き方 1 2π ∫ 16 ∞ X (ω) e−jωt dω −∞ ω = 2πf とおいて、 X (ω) = X (2πf ) → X (f ) と表記。 dω = 2πdf となるので、 ∫ ∞ X (f ) = −∞ ∫ ∞ x (t) = x (t) e−j2πf t dt X (f ) ej2πf t df −∞ f で書くか ω で書くかは自由度があるけれど、正しい組み合わせで利用することが 大事。 1 (第 3 の表記法) 積分の前に 2π がついたりつかなかったりするのは嫌だが、e の肩に 2π が毎回あるのも嫌だという場合の表記法。 ∫ ∞ 1 X (ω) = √ x (t) e−jωt dt 2π −∞ ∫ ∞ 1 x (t) = √ X (ω) ejωt dω 2π −∞ フーリエ変換でも、以下が成立。 Parseval の等式 (エネルギー保存) 実偶→実偶、実奇→虚奇 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 17 第 3 章 信号波のフーリエ解析 1.3 1.3.1 非周期波形のフーリエ変換 例1 単一方形波 ∫ ∞ X (f ) = x (t) e−j2πf t dt −∞ ∫ τ 2 = − τ2 E · e−j2πf t dt E [ −j2πf t ] τ2 e − τ2 −j2πf ( ) sin 2πf · τ2 =E πf sin (πf τ ) = |E{z· τ} πf τ {z } 方形波の面積 | = sin x x の形になる sin x x を描く CHAPTER 1. sinc 第 1 部 信号とスペクトル 18 関数・標本化関数 逆に、 方形関数と標本化関数が 1 対 1 で対応している。このような対応関係をフーリエ変換 対と呼ぶ。 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル X (f ) = Eτ 例 2: インパルス関数のフーリエ変換 19 sin (πτ f ) πτ f CHAPTER 1. 幅 τ 、高さ 1 τ 第 1 部 信号とスペクトル 20 の方形波を考える。 E · τ = 1 のままで、τ → 0 ロピタルの定理より、 X (f ) = lim τ →0 逆に sin (πτ f ) =1 πτ f CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 直流のフーリエ変換は周波数 0 のところのインパルス 例3 21 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 第4回 前回 フーリエ変換対 方形関数⇔標本化関数 定数⇔ δ 関数 ガウス関数⇔ガウス関数 フーリエ変換対 (非周期) とフーリエ変換級数展開 (周期) の関係 22 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 23 結論 周期 T と 1 周期分の波形 x∗ (t) のフーリエ変換 X ∗ (f ) が与えられれば、フー リエ級数の係数 αn が求まる。 定理 周期波形 x (t) が孤立波形 x∗ (t) を 1 周期成分とする繰り返し波形のとき、x (t) X ∗ (H) とフーリエ級数の係数 αn は、 T を包絡線とする間隔 T1 の離散スペクトルになる。 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 式で書くと、 αn = 1 ∗ X (f )|f =nf0 T 24 ( f0 = 1 T ) 略証 1 αn = T ∫ T 2 −T ∫ ∞2 x (t) e−j2πnf0 t dt 1 x∗ (t) e−j2πnf0 dt T −∞ 1 ∗ X (f )|f =nf0 = T = パラメータを変えてみよう CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 高さ E 、幅 τ の方形波が周期 T で繰り返す波形 ここで τ :一定、T → ∞ にすると、 25 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル サンプリング: 変化あり、包絡線: 変化なし 一方、E · τ = 1、τ → 0(T は一定) サンプリング: 変化なし、包絡線: 変化 ∑∞ インパルス列 x (t) = t=−∞ δ (t − kT ) 26 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 非周期波形と周期波形の混在 ・準備 δ 関数について 定義 x (t) が t = t0 で連続のとき、 ∫ ∞ δ (t − t0 ) x (t) dt = x (t0 ) −∞ 積分で定義される積分汎関数 F δ 関数のフーリエ変換 δ (t) −→ 1 27 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル ∫ ∞ X (f ) = δ (t) e−j2πf t dt = e−j2πf ·0 = 1 −∞ δ (t − t0 ) → e−j2πf t0 この逆で F ej2πf0 t −→ δ (f − f0 ) 28 第 1 部 信号とスペクトル CHAPTER 1. 29 ということは、 フーリエ級数 x (t) = ∑ αn e−j2πnf0 t n →フーリエ変換 X (f ) = ∑ αn δ (f − f0 ) n 連続スペクトルでありつつ、同期的に大きな値を持つ成分が現れる。 1.3.2 フーリエ級数とフーリエ変換の仕事 1. Parseval の等式 2. x (t) を実数偶成分→ X (f ) の実偶成分など 3. 畳み込み積分 convolution ∫ ∞ y (t) = −∞ h (t) x (t − τ ) dτ CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 定理 30 F F x (t) −→ X (f ) , h (t) −→ H (f ) とずると、 ∫ ∞ y (t) = −∞ F h (τ ) x (t − τ ) dτ −→ Y (f ) = H (f ) X (f ) 畳み込み積分→単なる積 (簡単便利) 1.3.3 線形システムの応答 インパルス応答 h (t) を持つ線形システムの応答 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル たたみこみ積分 convolution ∫ ∞ y (t) = −∞ 31 h (t) x (t − τ ) dτ 周波数領域では、 Y (f ) = H (f ) · X (f ) X (f ): 入力 Y (f ): 出力 H (f ): インパルス応答のフーリエ変換→伝達関数: 線形システムの特性を記述する もの まとめ CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 32 ※ x (t) = δ (t) のとき X (f ) = 1 なので、Y (f ) = H (f ) となり、インパルス入力に対 する応答が、即ち伝達関数に対応している。 告知 デジタルコンテンツエキスポ 日本科学未来館 木)∼10/30(日) 10/27( 11:00-17:00 第5回 来週 11/7 は休講 第 4 章 信号の標本化 1.4 デジタル信号処理の基本 デジタル化: 2 通りの離散化 時間軸: 標本化 (sampling) 振幅軸: 量子化 (quantization) 1.4.1 標本化とは T0 : 標本周期 f0 = 1 T0 : 標本化周波数 連続波形 x (t) の、とびとびの時点 t = nT0 における値 (標本値)x (nT0 ) を取り出す 操作。 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 33 標本化周期列の実現 PAM(Pulse Amplitude Modulation) ここから出発して τ → 0 を考える。 ∞ ∑ x∗ (t) = x (nT0 ) δ (t − nT0 ) | {z } n=−∞ | {z } 離散 連続 回路的には、 1.4.2 ヒント 標本化信号 x∗ (t) のスペクトル CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 34 数式で書くと、インパルスの数式表現 ∞ ∑ δ ∗ (t) = = δ (t − nT0 ) n=−∞ ∞ ∑ αm ej2πmfs t n=−∞ αm 1 = T0 ∫ T0 2 − T0 2 δ (t) e−j2πmfs t δ (t) は積分汎関数なので、 αm = 1 1 · e−j2πmfs ·0 = T0 T0 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル したがって、 ∞ ∑ δ ∗ (t) = δ (t − nT0 ) = n=−∞ 35 ∞ 1 ∑ j2πmfs t e T0 m=−∞ ポアソンの和公式という。 標本化信号は? x∗ (t) = x (t) · δ ∗ (t) ただの乗算) ( フーリエ変換すると、 X ∗ (f ) = ∫ ∞ x∗ (t) e−j2πf t dt [ ] ∫ ∞ ∞ 1 ∑ j2πmfs t −j2πf t x (t) · = e e dt T0 m=−∞ −∞ ∫ ∞ ∞ 1 ∑ = x (t) · e−j2π(f −nf0 )t dt T0 m=−∞ −∞ −∞ = ∞ 1 ∑ X (f − nf0 ) T0 m=−∞ X (f ) を fs 間隔で無限に並べたものとなる。 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 36 日本語で書くと、標本化信号 x∗ (t) のスペクトルは、原信号 x (t) のスペクトル X (f ) の T10 倍を 1 周期とし、fs = T10 間隔で繰り返す周期スペクトルとなる。(※数式のほ うが正確) 1.4.3 標本化定理 信 5-8 保管によって、元の波形 x (t) が復元できるのか? 同じになるとならどのような条件で 成立するのか? Shaman-染谷の標本化定理 x (t) の帯域が |f | < W に周波数制限されていれば、標 本化周波数 fs > 2W で標本化すれば完全に復元できる。 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル fs < 2W だと、 補間法 37 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 38 |f | < W の成分のみを通す伝達関数を持つシステム (フィルタ) を LPF と呼ぶ。 周波数軸に置けぬ LPF の時間軸上での姿 { 伝達関数 H (f ) = 1 (|f | < W ) 0 →インパルス応答 h (t) = sin 2iW t 2πW t fs = 2W の時の補間を考える→ T0 = 1 f0 = 1 2W CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 標本値列 x∗ (t) = ∞ ∑ x (nT0 ) δ (t − nT0 ) n=−∞ = 復元信号 x (t) = sinc ∞ ( n ) sin 2πW (t − n ) ∑ 2W ( ) x n 2W 2πW t − 2W −∞ {z } | {z }| LPF のインパルス応答 標本値列 関数による補間のイメージ 第6回 信号の標本化 ∑ ( n ) ( n ) x δ t− 2W 2W 39 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 40 標本化定理 標本化したときに、スペクトルの重なりが生じなければ、、x∗ (t) から x (t) が完全に復元可能である。 音楽 20kHz 以下→ CD は 44.1kHz サンプリング) ( 復元法 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル ( ) 1 x (t) = x (nT0 ) δ (t − nT0 ) T0 = 2W s=−∞ ∗ ∞ ∑ ( )) n 1 sin 2πW t − 2W ( ) → x (t) = x n n 2W 2πW t − 2W n=−∞ ∞ ∑ 図的理解 ( 41 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル |f | < W に帯域制限された連続信号 x (t) (連続系の情報理論) ( n ) 1 2W ごとの標本値列 x 2W (サンプル値系の情報理論) の 2 つは等価である。 1.5 第 5 章 信号とスペクトルのまとめ 42 CHAPTER 1. 残るは 第 1 部 信号とスペクトル 43 離散周期信号 既に学んだ 3 つからわかること 連続↔非周期 離散↔周期 つまり、 連続周期↔離散非周期 連続非周期↔連続非周期 離散非周期↔連続周期 離散周期↔離散周期 色分け略) ( 離散フーリエ級数 1 周期分 x (t) = N −1 ∑ n=0 F0 = 1 N T0 x (nT0 ) · δ (t − nT0 ) | {z } 離散 CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 44 フーリエ級数展開すると 1 αk = N T0 1 = N T0 ∫ N T0 0 N −1 ∑ x (t) e−j2πkF) t dt ∫ x (nT0 ) δ (t − nT0 ) e−j2πkF0 t dt n=0 = N −1 1 ∑ x (nT0 ) e−jkF0 (nT0 ) N T0 n=0 = N −1 2π 1 ∑ x (nT0 ) e−j N kn N T0 n=0 離散的) ( 周期性は? 2π 1 ∑ x (nT0 ) e−j N (k+N )n N T0 N 2π 1 ∑ = x (nT0 ) e−j N kn · e−j N 2π·n N T0 = αk αk+N = 離散フーリエ級数の係数 αk は周期 N を持つ。 離散フーリエ変換 離散フーリエ級数に対して、 データ x (nT0 ) → x (n) CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 45 係数 αk · N T0 → X (k) と書き改める。 WN = e−j N とおくと、 2π X (k) = N −1 ∑ x (n) · WNk·n n=0 となる。N 個の離散データを N 個の係数に変換する。 行列表現すると、 X (0) X (1) . . . [ ] = WNk·n X (N − 1) 離散フーリエ変換 (Discrete x (0) x (1) . . . x (N − 1) Fourier Transform, DFT) FFT(Fast Fourier Transform) 余談: という。 の登場で DFT の高速計算が可能に。 DCT (Discrete Cosine Transform) 画像圧縮のスタンダード (JPEG, MPEG...) なぜ DCT が圧縮に適しているのか? → 実数→実数にしたいから。 画像中のブロックを切り出した段階では、周期性はない。 → FFT などの便利なツールを使いたいから周期化して考えよう 周期性の与え方に工夫の余地あり CHAPTER 1. 第 1 部 信号とスペクトル 第7回 後半の予定 11/28 12/5 駒場祭 休講 第2回 12/12 第3回 12/19 第4回 12/26 休講 1/7 11/21 休講 1/16 期末試験 第1回 46 Chapter 2 第 2 部 不規則信号の解析 確率的変動を伴う信号の解析 1 つ 1 つの信号波形そのものではなく、波形の集合と共通の性質を探る。 ここで扱うトピック 統計量 (復習)、定常性とは→集合平均、時間平均→相関関数 (自 己/相互) →スペクトル密度 (電力/相互) 相関関数↔スペクトル密度: フーリエ変換対 2.1 2.1.1 第 6 章 不規則信号の基礎 不規則信号とは? 現象 確定現象 (e.g. 月の動き) 不確定現象 * 完全に規則性のないもの * 統計的な規則性があるもの (e.g. 元旦の気温) それぞれの事象は確率的であるが、数多く観察することで共通の性質が見えてくる。 [図: 標本点と事象の集合 (標本空間)] 不規則変数 random variable ( 不規則信号 random signal 元旦の気温など) 事象が数値で表される確率的統計現象 事象が時間信号である確率的統計現象 47 CHAPTER 2. 第 2 部 不規則信号の解析 統計量の定義 記号の定義 48 個々の信号 xi (t): i 番目の標本 xi (t) の集合: 確率集合 ensemble 不規則信号の記述法 1. 標本信号を多数書き出す 2. 式で与える x (t) = A cos (ωt + θ) 3. 確率分布、統計量 4. 信号の生成方法を示す (音声なら声質のモデルなど 2.1.2 確率分布 確率密度関数と統計量 1 変数 x 確率分布 P (x) = Prob {X ≤ x} (X : 観測値) 確率密度 p (x) = d dx P (x) 図: p (x) と P (x)] [ 統計量: p (x) の特徴を示すパラメータ X の平均値・期待値 ∫ ∞ N 1 ∑ E [X] = xi = x · p (x) dx N i=1 −∞ = n (mean) X の n 次モーメント ∫ E [X n ] = ∞ −∞ xn · p (x) dx = nn (moment) ) CHAPTER 2. 第 2 部 不規則信号の解析 49 X の n 次中心モーメント ∫ ∞ n E [(X − m) ] = −∞ n (x − m) p (x) dx = µn ∫ µ0 = ∞ 1p (x) dx = 1 −∞ ∞ ∫ ∫ xp (x) dx − m −∞ [ ] 2 µ2 = E (x − m) = δ 2 µ1 = δ 2 : (分散: variance) ∞ −∞ p (x) dx = m − m = 0 分布の広がり δ : 標準偏差 µ3 δ 3 : 分布の非対称性 (歪度) µ4 δ4 − 3: 分布の非対称性 (尖度) 不規則信号 時点 t1 , t2 , · · · , tn における信号値を x1 , x2 · · · xn とする。 → n 個の変数の確率分布で考える。 密度 pn (x1 , t1 ; x2 , t2 ; · · · ; xn , tn ) = lim ∆1 ,∆2 ,··· ,∆n →0 Prob {x1 ≤ x (t1 ) ≤ x1 + ∆1 , x2 ≤ x (t2 ) ≤ x2 不規則信号の n 次確率密度関数 不規則信号論の公理 不規則信号は任意の自然数 n と任意の n 個の時点 t1 , t2 , · · · , tn における確率密度関数が与えられれば、完全に記述される。 不規則信号の統計量 集合平均 t = t1 で定義される統計量 N 1 ∑ E [xn (t1 )] = xi (ti ) N i=1 CHAPTER 2. 第 2 部 不規則信号の解析 50 t = t1 において、x (t1 ) = x1 となる確率密度関数を p (x1 , t1 ) と表記すると、 ∫ ∞ ( ) E [x (t1 )] = x1 p (x1 , t1 ) dx1 集合平均 −∞ ∫ ∞ [ 2 ] ( ) E x (t1 ) = x21 p (x1 , t1 ) dx1 集合二乗平均 −∞ t = t1 , t = t2 で定義される統計量 集合相関 ∫ E [x (t1 ) x (t2 )] = ∞ ∫ −∞ ∞ ∞ x1 x2 . (x1 t1 ; x2 t2 ) dx1 dx2 定常信号 2.1.3 統計的な性質がどの時点観測しても同じ信号 例: Ö 地震波 ⃝音声 定常信号の定義 して、 {x (t) , −∞ < t < ∞} において、任意の n, τ (−∞ < τ < ∞) に対 pn (x1 , t1 ; x2 , t2 ; · · · ; xn , tn ) = pn (x1 , t1 + τ ; x2 , t2 + τ ; · · · ; xn , tn + τ ) その意味 確率集合が時間推移変換に対して不変 →確率密度関数は、時間差 (t2 − t1 ) , (t3 − t1 ) , · · · , (tn − t1 ) のみによって記述される。 2 種類に分けて考えよう。 強定常信号 みの関数 弱定常信号 弱定常信号 すべての確率密度関数 p (t) が時間差の strictly Stationary Signal: weakly Stationary Signal: 1 次と 2 次の統計量が時間差のみの関数 期待値 E [x (t1 )] = m が t1 によらず一定 共分散 E [(x (t1 ) − m) (x (t2 ) − m)] が t1 −t2 時間差 のみの関数になる。 上記も満たす {x (t)} を弱定常という。 弱定常ならば集合平均が時刻に依存しない。 では時間平均はどうなるの? ∑N 集合平均 E [x (t1 )] = N1 i=1 xi (t1 ) ← t1 に依存しない ∑N 1 時間平均 ⟨x (t)⟩ = N i=1 x (ti ) CHAPTER 2. エルゴード定理 第 2 部 不規則信号の解析 51 エルゴード信号では、時間平均と集合平均が一致する。 →時間平均を便利に扱える。 エルゴード信号 1. 強定常であり、 2. 強定常な真部分確率集合を持たない エルゴード仮説 複雑な定常的物理現象は、エルゴード信号とみなしてよい 第8回 前回 不規則信号→ 扱う。 1 つ 1 つの信号波形ではなく、集合に共通する確率的な性質を 集合を扱う→集合平均 定常性: 統計的な性質がどの時点ド観測しても同じ→時間平均をとっても変化しない。 エルゴード性: 強定常かつ強定常 (1 次・2 次だけでない) な真部分集合を含まない。→ 集合平均は時間平均に一致する。 エルゴード仮説 複雑な定常物理現象は、エルゴード信号とみなしてよい。 この仮設を信じて前進する! CHAPTER 2. 2.2 第 2 部 不規則信号の解析 第 7 章 相関関数とスペクトル 不規則信号 (エルゴード仮説) の 2 次統計量による解析 相関とは? 2 変数の場合 相関 σXY = { N 1 ∑ (xi − x̄) (yi − ȳ) N i=1 x̄ = ȳ = 1 N 1 N ∑N i=1 xi ∑N i=1 yi 52 CHAPTER 2. 第 2 部 不規則信号の解析 53 2 つの信号の相関 σXY = 1 ∑ (xi − x̄) (yi − ȳ) N N · ∆t = T, ∆t → 0 σXY = 自己相関関数 1 T ∫ T 2 − T2 (x (t) − x̄) (y (t) − ȳ) dt x (t) と x (t + τ ) の相関 1 φX (τ ) = lim T →∞ T ∫ T 2 x (t) x (t + τ ) dt − T2 τ : 時間差 ※ただし、x̄ = 0 と仮定して略記する。 φX (τ ) = ⟨x (t) x (t + τ )⟩ 時間平均 エルゴード信号の場合、 = E [x (t) x (t + τ )] 集合平均 CHAPTER 2. 第 2 部 不規則信号の解析 自己相関関数の性質 1. ⟨x (t) x (t + τ )⟩ ⟨x (t) x (t − τ )⟩ = ⟨x (t − τ ) x (t)⟩ 2. φX (τ ) = φX (−τ ): 偶関数 ⟨ ⟩ 2 φX (0) = x (t) 信号の平均電力 3. φX (0) ≥ |φX (τ )| 例1 x (t) = A cos (ωt + θ) ※ x̄ = 0 φX (τ ) = ⟨x (t) x (t + τ )⟩ = A2 ⟨cos (ωt + θ) cos (ω (t + τ ) + θ)⟩ A2 ⟨cos (2ωt + 2θ + ωτ ) + cos ωτ ⟩ 2 A2 = cos ωτ 2 = ←自己相関 54 CHAPTER 2. 例2 第 2 部 不規則信号の解析 55 白色雑音 (完全にランダム) φX (τ ) = δ (τ ) 一般的には… 相互相関関数 x (t) と y (t + τ ) の相関 1 φX (τ ) = lim T →∞ T τ : 時間差 ∫ T 2 x (t) y (t + τ ) dt − T2 CHAPTER 2. 第 2 部 不規則信号の解析 ※ただし、x̄ = 0, ȳ = 0 と仮定して略記する。 自己相関関数は、 y (t) = x と置いた時の相互相関関数であるとみなされる。 相互相関関数の性質 1. 必ずしも偶関数とは限らない。 φXY (τ ) = ⟨x (t) y (t + τ )⟩ φXY (−τ ) = ⟨x (t) y (t − τ )⟩ = ⟨y (t − τ ) x (t)⟩ = φY X (τ ) 2. φXY (−τ ) = φY X (τ ) が成立する。 √ |φXY (τ )| ≤ φX (0) φY (0) 使い方の例 雑音 n (t) どんなに大きくても構わないが、入力 x (t) と無相関である。 56 CHAPTER 2. 第 2 部 不規則信号の解析 57 ( ) φXY (τ ) = ⟨x (t) y (t + τ )⟩ 展開 = ⟨x (t) {x (t − t0 + τ ) + n (t + τ )}⟩ = ⟨x (t) x (t − t0 + τ )⟩ + ⟨x (t) n (t + τ )⟩ = ⟨x (t) x (t + (τ − t0 ))⟩ = φX (τ − t0 ) φXY (τ ) を t0 だけ平均移動したもの → t0 に最大値を持つので、φXY (τ ) が最大になる τ が遅延 t0 を表す。 このような使い方をする時の注意点 とが望ましい。 φX (τ ) が、インパルス関数のような形であるこ →白色雑音が最も効果的 ちゃんと正規化したいときは、 ρX (τ ) = φX (τ ) φX (0) φXY (τ ) ρXY (τ ) = √ φX (0) φY (0)
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