(仮称)厚木市ロボット産業推進計画の概要

(仮称)厚木市ロボット産業推進計画の概要
1 計画策定の背景【本編 P1~2】
4 ロボット産業の動向【本編 P4~8】
本市は、地域力、地域産業力に優れているとともに、ロボット産業への先行性や専門的知識が集積さ
れており、他自治体と比べて優位な立場にあります。また、ロボット関連に事業に関心のある企業が多く
所在しています。
国は、平成 27 年2月に「ロボット新戦略」をまとめ、ロボットによる新たな産業革命を促進することを決定
し、平成 32 年までを「ロボット革命集中実行期間」と位置付け、ロボットの市場規模を現在の 6,000 億円か
ら平成 32 年には2兆 4,000 億円に成長させることを目標としています。
本市は、バブル経済崩壊後(平成 7 年頃)、近隣市に所在した大手自動車企業の工場閉鎖などにより、
県内自動車産業の比率が低下し、市内の関連製造業などは、景況に停滞感が生じています。
現在、緩やかな景気回復とともに、交通の利便性の高まりなどにより、回復基調にある業種もありま
す。
このようなことから、市内及び周辺市町の産業環境の変化、海外及び国内における産業動向の変化に
応じた新規産業分野などへの進出や、業務の拡大が必要になっています。
ロボット関連部品として活用できる既存技術を有する市内企業が多数所在する中、計画的かつ体系的
にロボット産業の活性化を図る取組が必要と考えられることから、「ロボット産業推進計画」を策定すること
としました。
(1) ロボット産業の動向と国の取組
ア ロボット市場は、産業におけるものづくりにとどまらず、自動運転車、ドローン、また高齢者や要介護者
のいやし、見守り、リハビリをサポートする生活支援ロボットに至るまで、広範囲に恩恵を与える可能性
を持ち、急速に市場が広がっていく分野と考えられています。
イ ドイツなどにおいては、IoT
注1)
により製造業に新たなイノベーションをもたらす「インダストリー4.0(第四
注2
次産業革命 ))」の動向も広がりつつあります。
ウ 国の平成 28 年度予算概算要求時も前年度比約2倍の 294 億円を要求し、経済産業省、厚生労働省、
国土交通省、農林水産省及び文部科学省などがロボットの開発支援や、実用化のための実証実験、導
入及び普及支援などを行っています。
注1)IoT:Internet of Things の略で、様々なモノが通信機能を持ちインターネットに繋がることで管理の容易性、使い勝手等が向上するこ
とを期待するもの。
注2)18 世紀の英国から世界に広がった繊維工場などへの「蒸気機関」の導入の第 1 次産業革命、20 世紀に米国を中心とする「モーターや
ベルト・コンベヤーなど電気技術」による第 2 次、20 世紀後半の日本を中心とする「エレクトロニクス」による第 3 次、ドイツなどが提唱す
る「インターネットや AI」の製造業への導入による第 4 次産業革命。
2 計画の目的【本編 P2】
本計画は、市内企業のロボット産業への参入の促進、地域の連携を生かした魅力あるものづくりの実
現を図り、ロボット産業の集積を進め、ロボットによる市内企業の活性化とともに、本市の更なる発展や地
域経済の活性化に結びつけることを目的とします。
(2) 神奈川県や本市の取組状況
ア 神奈川県は、平成 25 年2月から「さがみロボット産業特区」を開始し、生活支援ロボットの実用化と普
及を進めています。
イ 本市では、ロボット関連企業等の研究開発の促進、知識の向上、企業立地元気アップサポート事業、
3 計画期間と位置付け【本編 P2~3】
国際ロボット展への出展などを行っています。
「第9次厚木市総合計画」「厚木市産業マスタープラン」と整合性を図り、平成 29 年度から平成 32 年度
までの4年間を計画期間とします。
H28
H29
H30
あつぎ元気プラン
産業マスタープラン
ロボット産業
推進計画
さがみロボット産業特区
(神奈川県)
ロボット革命集中実行期間
(国のロボット新戦略)
特区では完成品ロボットを中心とした実用化、商品化を支援
H31
H32
H33
H34
H35
H36
【市内企業等】「LLPアトムプロジェクト」
による、リハビリ支援ロボットの開発・商
H37
品化や、産学公が連携した在宅高齢者
以降の計画期間は
支援サービスの事業化に向けた取組が
総合計画等との整合を図る。
スタートしました。また、産学公連携の
「あつぎものづくりブランドプロジェクト」に
よる二足歩行ロボットの開発などの取組
⇒市場規模4倍を目標
があります。
【相模原市】外部組織へ委託し「さがみはらロボッ
ト導入支援センター」運営などを実施しています。
【藤沢市】、「ふじさわロボットフォーラム」、「藤沢ロ
ボット産業研究会」への支援などしています。
「厚木市ロボット産業推進計画」は、「あつぎ元気
プラン」における「快適政策 にぎわいあふれる、快
適で利便性の高いまちづくり」の推進を基本として
策定します。
また、市が策定した右の関連する計画等と連携
した計画とします。
(3) ロボットについて
ロボット政策研究会報告書(平成 18 年、経済産業省)では、センサー、知能・制御系、駆動系の三つ
の要素技術を有する知能化した機械システムとして定義されています。さらに広義では人工知能(AI)の
ような単体のソフトやシステムも含める考えもありますが、本市では物理的な動作や、感知等を伴う機械
システムをロボットとしています。
1
本市の産業の現状と傾向及び課題と4つの基本方針
5 本市の産業の現状と傾向【本編 P13~31】
6 ロボット分野に係る課題【本編 P32~43】
(1) 製造業の状況

(1) 新規参入意欲の実現における高い負担
事業所数、従業者数は平成 8 年までは増加傾向でしたが、その後は横ばいで推移し、
平成 26 年現在 9,994 事業所、150,242 人です。市内には大手企業の本社、大規模研究
施設もありますが従業員数 30 人以上の事業所は1割未満で、大半が 30 人未満の中小

産業別事業所数は卸売業・小売業、不動産業・物品賃貸業などが多く、従業者数は卸
の負担感は高いものとなっています。
売業・小売業、学術研究、専門・技術サービス、製造業が多くなっています。
(2) 単独開発(実用化、製品化)における高い負担
製造業は、事業所数が平成 10
一部の大手企業に比べて中小企業においては、資金力、人的体制、開
年以降減少傾向であり、平成 20
発や実用化の機会創出力が十分でないため、企業単体でのロボット関連
年頃に一度再興の兆しがみられ
の開発自体が難しい状況にあります。
ました。
(3) 単体販路開拓の制約
近年は再び減少局面であり、製
さがみロボット産業特区に位置付けられるなど、他地域の企業から注
造品出荷額も、平成 20 年に約
目される立場にありますが、一部の企業を除いては、ロボット分野への対
7,700 億円のピークを迎え、現在
応技術が十分に周知されていません。また、スタートアップの企業におい
は減少の傾向にあります。
ては、国内に幅広く販路を広げることや、海外展開への対応力などが中
(2) ロボット分野への取組状況(過去5年間、市内企業)や関心、期待支援
市内製造業 131 社回答より
ロボット関連事業への参入に関心を持つ本市内の企業は、4割近く(36.6%)となってい
ます。

このため、国や県の先行支援策は完成品に係る支援策が多いこともあ
り、部品関係への関心が高く、潜在的な参入の意向を持つ企業にとって


の、実際の参入や詳細検討に至っているのは、その3分の1程度です。
事業所が占めています。


市内企業においては、同分野に参入意欲を持つ企業が約4割あるもの
小企業単体では、限界になっています。
(4) 産業の集積促進や地域力発揮の余地
ロボット産業には機器の製造、加工のほか、ロボットの制御に必要な組
また、最近 5 年間におけるロボット関連事業の展開状況は、「関連事業を実施中」が 12
込ソフトやスマートフォンアプリなどのソフトウェアも求められる場面が増え
社で 9.2%、「検討中、検討をしたことがある」が 9 社で 6.9%、「実施、検討の実績は無いが
ています。企業支援策による産業の集積を進め、多様な企業がロボット開
現時点で必要性を感じている」が 19 社で 14.5%、合計 40 社です。
発に参画しやすい環境であることが求められます。
ロボット分野への関心は、完成品よりも部品を志向する割合が高くなっています。
また、ロボット技術や開発に知識を持つ大学や隣接市の産業技術セン
ターなどとの連携は一部に限られるなど、地域力の発揮余地が残ります。
(5) 認知や活用普及の拡大
市民、企業ともに製品化の進むロボットへの認知が未だ高くなく、特に
業務現場への具体導入は限られています。
また、ロボットの活用に関心があっても、効果や活用利便性の周知が十
分でない面もあり、導入の手順や導入後の運用方法の確立なども個々の
企業には負担となっています。
(6) その他、地域の連携や人材の育成
ロボット先進地としての認識が、市民、企業に十分に浸透していない状

参入済みの市外企業は、「地域の大学などとの連携や活用」の実績が5割を超えます
況にあります。また、専門家や技術者の知見や経験を身近に生かせる地
が、参入意欲等のある市内企業では1割程度であり、ロボット分野における大学との連
域でありますが、取組の事例は経営者層によるものが多く、今後、若手、
携に関するノウハウが必ずしも十分でないことが推察されます。
中堅の人材の育成や参画が課題となります。
。
2
7 4 つの基本方針【本編 P44~51】
【方針1】 ロボット産業、ロボット部品への参入支援・
展開支援
部品系なども含めた中小企業が多い市内の事業者に
は、新規参入意欲があっても単独での実現負担が高く、
先行してロボット分野に参入している中小企業において
も、市場定着に課題があります。
市内の意欲ある企業が、本計画によりロボット産業に
おける参入、完成品ロボットや要素部品、技術の開発、
参入・商品化後の市場定着や展開を図れるよう、本計
画では、「ロボット産業、ロボット部品への参入支援・展
開支援」に取り組みます。
【方針2】 産・学・公と地域の連携
既に集中度が高いロボット関係専門家や商品化のた
めのビジネス知見を持つ商工会議所、国、県などの公
的支援の各種メニューに精通する市・商工団体等があり
ますが、活用や連携が一部に限られます。
これらが連携して、地域のロボット産業を支える「産・
学・公と地域の連携」に取り組みます。
【方針3】 ロボット産業の集積促進
本市においてロボット産業に係る企業の集積は緒に
就いたばかりで、「産業の集積の促進」の余地は大きい
といえます。
今後も市内企業のロボット産業への参入だけでなく、
ロボット関連企業の集積を高める「ロボット産業の集積
促進」に取り組みます。
【方針4】 ロボットの社会への普及促進
近年は生活支援ロボットや、中小企業でも導入負担
が小さい各種産業向けロボットが開発、商品化され、ロ
ボットの導入や、活用の場面が広がっています。
このため、市内の中小企業や市民がロボットの導入を
段階的に円滑に進められるよう「ロボットの社会への普
及促進」に取り組みます。
厚木市ロボット産業推進計画体系(案)
市内ロボット産業展開の現状と課題
前提条件と将来像
前提条件
第9次厚木市総合計画「あつぎ元気プラン」第2期
基本計画における快適政策として、「にぎわいあふ
れる、快適で利便性の高いまち」を推進するために、
ロボットの普及と産業の集積による新たな産業拠点
【個別課題要素】
【課題】
【施策と事業案】
(1) 販路開拓の支援
【基本方針】
(1) 自社技術の活用性、適合性の判断
1 新規参入の実現における高い負担
(2) 事業分野における独自提案力
(3) 参入計画における策定力、実現力
集積する既存の機械部品製造業をはじめとする潜在的
な参入意向をもつ企業の参入を具体化するような方策
が現状は十分ではありません。
(1) 部品系企業単体での完成品ロボット開発の難度
の高さ
2 単独開発における高い負担
(2) ロボット分野における部品、ユニットニーズの企業
単独把握の限界
を目指すことで、市内の産業の活性化を図る前提条
件として、産・学・公が一体となってまちの活性化に
4つの基本方針と施策
(3) 技術シーズの製品化、実用化機会創出
取り組む必要があります。
中小企業単体ではロボッ ト関連の開発自体が難し
い状況にあります。
●方針1
ロボット産業、ロボット部品への
参入支援・展開支援
ロボット産業における参入、完成品ロボッ
トや要素部品、技術の開発、参入・商品
化後の市場定着や展開を図れるよう支援
します。
3 単独販路の制約
(2) 商談機会の創出制約
1 地域力、地域産業力
(1)需要地、生産地の両面への良好なアクセス環境
(2)生産年齢人口率の相対的な高さ
(3)内陸工業地域としての高密度産業集積と高売上げ
(4)既存工業団地に隣接する新規立地、移転可能な産業用地の存在
2 ロボット産業への先行性や専門知の集積
(1)自動車製造関連を含めた多様な部品関連企業の集積
(2)大学を筆頭とするロボット関係専門家、若手人材の集積
(3)さがみロボット産業特区の取組における実証実験施設の立地
(4)自動運転車先進企業、その他大手企業の研究施設の複数立地
(5)医療、介護系ロボットの商品化実現企業の存在や、ロボットによる
ものづくりブランドイメージを高める機運
(6)医療、介護ロボットの開発、検証支援実績を持つ医療施設の立地
3 その他
(1)ロボットに理解のある厚木商工会議所の存在
(2)周辺市と比べた昼間学生人口(通学人口)の多さ
(3)県西、県央他市に比べ良好な従業員採用環境
(4)多様な農林畜産事業地への近接性
(5)自治体における高い産業振興機運
(3) 海外市場展開の高い負担
国内に幅広く販路を広げることや、 海外展開への対応
力などが中小企業単体では、制約になっていま す。
4 産業の集積促進や地域力
発揮の余地
ロボッ トに係る機器・部品等に加え、制御系ソフトウェア
等の技術との連携により開発・ 商品化が進むことが期
待されますが、市内の関連企業はわずかです。
市内や隣接市等の身近な知見の活用や連携はあるも
のの、必ずしも十分ではありません。
(1) 産・学・公の更なる連携
(2) 集積する自動車産業系企業の潜在力の活用
(3) 組み込み制御、インターフェースなど連携
(4) 国内産業の低成長時代における地域間企業誘致
の激化
5 認知や活用の拡大
●方針2
産・学・公と地域の連携
ロボット開発者、大学、国、県などの公的
支援に精通する市・商工会議所等が連携
し、地域のロボット産業を支援します。
来像として、「ロボット」をキーワードとした市内中小
企業の活性化と地域連携の相乗効果によって、市
内産業の再成長を目指します。
6 その他、地域の連携や人材の育成
(2) 若年層への関心の喚起
既存資源の活用を図りながら、市内企業のロボッ
(2) 商工会議所との連携
ロボット関連産業情報収集・発信【再掲】
既存の市内企業のロボット産業への参
入の促進に加えて 、ロボット関連企業
等の誘致を推進することで 、ロボット産
業の集積を図ります。
(3) 中小企業への支援
あつぎ起業スクール
創業者支援利子補給金
相談サポート
中小企業融資制度
利子補給制度
信用保証料補助制度
中小企業設備投資促進事業補助金
(4) 経営支援・相談
企業巡回訪問相談
相談サポート【再掲】
中小企業設備投資促進事業補助金【再掲】
●方針4
ロボットの社会への普及促進
(3) 制御、組み込みソフト分野人材の育成
(4) SIerの育成
厚木市ロボット産業推進協議会
産学共同研究事業補助金
ロボット関連等シーズ活用事業
産学公実施事業の相談体制・人的支援
(2) 起業・創業支援
(4) 産業用ロボットに必要な資金負担
(1) 地域イメージの定着、拡大
(1) 市内企業・大学等との連携
●方針3
ロボット産業の集積促進
将来像
「ロボットでつながる、ものづくり都市あつぎ」を将
(3) ロボット開発の支援
企業立地元気アップサポート事業
(3) 各分野での活用意識の喚起や実活用の増加
ロボッ トに対する認知不足、導入効果の理解不十分な
どから導入が未だ限定的で、 市場が十分に形成されて
いません。
ロボット関連産業情報収集・発信
マッチング支援【再掲】
(1) ロボット産業の企業誘致活動
(1) 高齢化進展に伴い見込まれる人的対応負担の増加
(2) 活用効果の認知や導入効果の判断機会の増加
(2) マッチングの促進
ロボット産業等創出事業補助金
オープンイノベーション促進補助金
実証実験支援・ロボット産業特区への参画
(4) 開発や実証機会の創出
(1) 市内企業の技術、対応力の把握と発信
本市の優位点
マッチング支援・専門家による企業相談
見本市等出展事業補助金
特許等出願支援補助金
国際ロボット展等出展事業
市内企業等データベース構築事業
中小企業や市民がロボットの導入を段階
的に円滑に進められるよう普及を促進し
ます。
(1) 生活支援ロボットの普及促進
ロボットの導入補助等に関する情報提供
生活支援ロボットの体験、展示会事業
ロボット民間活用セミナーの情報提供
中小企業設備投資促進事業補助金【再掲】
(2)ロボットを活用する人材の育成
ロボット導入支援・操作トレーニングの情報提供
ト産業への参入の促進と産業集積に向けた支援や
仕組みづくりを進め、地域経済の活性化を図りま
す。
国 (経済産業省、厚生労働省他)
複数の省庁が、国の研究機関、大企業等に対して、開発、実証、量産化などを支援。
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県 (さがみロボット産業特区)
県内外の企業に対して生活支援、災害対応における完成品ロボットを主とし、実証の機会提
供、普及促進などにより支援。