東海地方の秋の天候について

参
考
資
料
平成 28 年 12 月 1 日
名古屋地方気象台
東海地方の秋の天候について
(2016 年 9 月~2016 年 11 月)
この秋は、シベリア付近の冷たい高気圧と日本の南東海上の暖かい太平洋高気圧がともに
強く、日本付近はこの2つの高気圧の間に挟まれ、低気圧や前線の活動が活発でした。この
ため、顕著な日照不足となりました。また、秋のはじめは台風が接近した時期があり、降水
量は多くなりました。気温は、暖かい空気が流れ込みやすかったため高くなりました。
1.東海地方平均の秋の平均気温・降水量・日照時間の平年差・比
東海地方平均
9月
10 月
11 月
9-11 月
平均気温平年差(℃)
+1.1
+1.5
+0.3
+1.0
階級
高い
かなり高い
平年並
高い
降水量平年比(%)
141%
82%
106%
115%
階級
多い
平年並
平年並
多い
日照時間平年比(%)
71%
81%
95%
82%
階級
かなり少ない
かなり少ない
少ない
かなり少ない
※東海地方平均とは、東海地方にある気象官署および特別地域気象観測所(14 地点)ごとの平年差(比)を平均したものです。
2.月別の天候の特徴
9月
上旬は高気圧に覆われて晴れた日が多くなりましたが、中旬から下旬には前線や湿った気流
の影響で曇りや雨の日が多く、顕著な日照不足となりました。また、台風第 13 号や第 16 号お
よび前線の活動が活発となった影響で、大雨となった日もありました。
月平均気温は「高い」、月降水量は「多い」、月間日照時間は「かなり少ない」となりまし
た。
10 月
高気圧と低気圧が交互に通過して、天気は数日の周期で変わりましたが、低気圧や前線の影響
を受けやすく曇りや雨の日が多くなり、顕著な日照不足となりました。また、日本の南海上で太
平洋高気圧の勢力が強く、南から暖かい空気が流れ込みやすかったため顕著な高温となりました。
月平均気温は「かなり高い」、月降水量は「平年並」、月間日照時間は「かなり少ない」とな
りました。
11 月
高気圧と低気圧が交互に通過して、天気は数日の周期で変わりました。上旬は高気圧に覆われて晴
れの日が続いた時期がありましたが、中旬から下旬は本州付近を低気圧が通過しやすくなりました。また、
暖かい空気に覆われた時期と寒気の影響を受けやすかった時期があり、寒暖の変動が大きくなりました。
月平均気温は「平年並」、月降水量は「平年並」、月間日照時間は「少ない」となりました。
1
3.気温・降水量・日照時間の経過
第 1 図は、東海地方を地域平均した旬別の平均気温・降水量・日照時間の平年差・比です。暖かい空
気が流れ込みやすく気温は高くなった時期が多くなりましたが、11 月上旬は寒気が南下した影響で低く
なりました。低気圧や前線の影響を受けやすく、日照時間は少ない時期が多くなり、9 月中旬と 10 月上旬
は顕著な寡照となりました。また、9 月中旬には台風第 16 号が東海地方を通過したため各地で大雨となり、
降水量は多くなりました。
東海地⽅旬別気温・降⽔量・⽇照時間
+4.0
200 降
206%
⽔
量
気
・
温
平
年
⽇
0.0
100
差
平
年
(
⽐
︵
℃
照
)
︶
%
-4.0
0
上
中
下
上
9⽉
中
上
10⽉
降⽔量
第1図
下
中
下
11⽉
⽇照時間
平均気温
気温・降水量・日照時間の旬別平年差・比(東海地方の気象官署・特別地域気象観測所の平均)
4.気象官署・特別地域気象観測所の平年差・比と極値
第1表
実況(℃)
平年差(℃)
実況(℃)
10月
平年差(℃)
気温
実況(℃)
11月
平年差(℃)
実況(℃)
9-11月
平年差(℃)
実況(mm)
9月
平年比(%)
実況(mm)
10月
平年比(%)
降水量
実況(mm)
11月
平年比(%)
実況(mm)
9-11月
平年比(%)
実況(h)
9月
平年比(%)
実況(h)
10月
平年比(%)
日照時間
実況(h)
11月
平年比(%)
実況(h)
9-11月
平年比(%)
9月
9 月~11 月の各地の気温、降水量、日照時間とその平年差・比
高山
21.3
+1.6
14.5
+1.6
7.4
+0.8
14.4
+1.3
386.0
164
126.0
94
90.0
91
602.0
129
99.1
80
124.5
99
101.2
102
324.8
93
岐阜
25.3
+1.2
19.5
+1.4
12.6
+0.4
19.1
+1.0
352.0
148
178.0
142
94.5
102
624.5
137
102.0
65
156.3
90
161.3
103
419.6
86
名古屋
25.2
+1.1
19.7
+1.6
12.6
+0.4
19.2
+1.1
298.5
127
132.5
103
78.0
98
509.0
115
101.5
67
143.5
85
168.0
103
413.0
86
上野
23.9
+1.5
17.9
+1.8
10.8
+0.6
17.5
+1.3
305.0
178
52.0
45
84.5
118
441.5
124
103.2
75
119.8
83
141.2
106
364.2
88
津
24.9
+0.9
19.6
+1.3
13.1
+0.4
19.2
+0.9
323.0
118
86.5
57
70.5
84
480.0
95
110.2
71
136.9
83
146.0)
91
393.1
82
伊良湖
25.2
+1.2
20.2
+1.6
13.5
+0.3
19.6
+1.0
338.5
141
117.0
72
117.0
111
572.5
113
112.2
68
136.0
82
160.5
97
408.7
82
浜松
25.4
+1.3
20.8
+2.0
14.2
+0.7
20.1
+1.3
283.0
114
138.0
84
121.0
102
542.0
102
115.6
72
129.1
78
173.6
102
418.3
84
御前崎
25.1
+1.0
20.8
+1.4
14.9
+0.5
20.3
+1.0
324.5
134
216.0
101
158.0
120
698.5
119
124.7
74
126.8
77
165.1
98
416.6
83
静岡
25.4
+1.3
20.4
+1.5
14.0
+0.1
19.9
+0.9
376.0
129
176.0
88
146.0
111
698.0
112
112.2
75
125.3
78
147.5
87
385.0
80
三島
24.9
+1.3
19.4
+1.4
12.6
-0.2
19.0
+0.9
345.0
142
147.0
80
162.5
152
654.5
123
103.4
72
113.9
75
128.8
82
346.1
76
尾鷲
24.3
+0.7
19.8
+1.5
13.9
+0.5
19.3
+0.9
546.5
79
191.0
48
174.5
70
912.0
68
79.0
61
111.8
79
157.9
104
348.7
82
石廊崎
24.4
+0.8
20.3
+1.0
14.7
-0.4
19.8
+0.5
291.5
149
169.0
97
138.5
114
599.0
122
123.8
72
137.7
84
152.5
95
414.0
84
網代
24.0
+0.9
19.3
+1.0
13.0
-0.8
18.8
+0.4
369.5
147
103.0
53
140.0
128
612.5
110
90.5
70
84.7
65
100.2
78
275.4
71
四日市
24.0
+1.0
18.4
+1.5
11.8
+0.2
18.1
+0.9
487.0
198
116.5
79
77.5
86
681.0
140
96.0
66
116.9
75
138.4
88
351.3
76
※“)”がついた統計値(平均値・合計値)は、観測資料に欠測等が含まれるものの正常な値と同等とみなせる値です。
一方“]”がついた統計値は、観測資料に含まれる欠測等が多いため正常な値と同等とはみなせません。
2
5.北半球の大気の流れ(500hPa 高度とその平年差の3か月平均図および月平均図)
図は3か月平均および月平均の 500hPa 等気圧面高度を 60m 間隔の実線で、平年偏差を 30m 間隔の破線で表示しています。陰影部は
平年偏差が負の領域で、地上の気温が平年より低くなる傾向があります。
3 か月平均(9~11 月)
高緯度域と 40°N 以南はおおむね正偏差となりまし
たが、40°N から 60°N 付近はユーラシア大陸から太平
洋にかけて負偏差となりました。
日本付近では北海道以北では負偏差となり、寒気が
流れ込みやすくなりましたが、日本の南海上では太平
洋高気圧の勢力が強く、本州以南では正偏差となりま
した。このことは、東日本以南では気温が高くなった
とともに、南北の高度の差が大きく、本州付近は低気
圧や前線などの活動が活発で、日照時間が少なくなっ
たことに対応しています。
第2図
500hPa 高度の3か月平均図
9月
10 月
第3図
11 月
月別の 500hPa 高度の月平均図
9月
偏西風は大陸東岸で南に蛇行し気圧の谷となり、日本の東では北に蛇行したため亜熱帯高気圧
の張り出しが強まりました。偏西風は南から北に向かう流れとなりやすく、日本付近では暖かく
湿った空気の影響を受けやすくなりました。
本州付近に停滞する前線に向って湿った空気が流れ込みやすく、また、台風が高気圧の縁辺に
沿って日本に接近または上陸しやすくなり、曇りや雨の日が多くなりました。
10 月
東・西日本から沖縄・奄美付近は正偏差、北日本付近は負偏差で、日本付近を流れる偏西風は
西日本付近で北へ、日本の東海上で南へ蛇行しました。このため、東・西日本から沖縄・奄美に
かけては暖かい空気に覆われましたが、北日本では北からの寒気が流れ込みやすくなりました。
また、日本の南海上で亜熱帯高気圧の勢力が強く、日本付近には上旬を中心に南ほど暖かく湿っ
た空気が流れ込みやすくなりました。
11 月
北極付近はおおむね平年より高くなりましたが、シベリアからベーリング海・アラスカの南にかけては平
年より低くなっており、負の北極振動が卓越して北極付近の寒気が中緯度に南下したことを表しています。
3
一方アジアから北太平洋にかけての 40°N 以南はおおむね平年より高くなっていて、日本付近では偏西
風が平年よりやや北に偏り、また流れが速くなりました。
このため、東日本から西日本にかけては高気圧と低気圧が交互に通過して天気が数日の周期で変わ
り、また低気圧が本州付近を通過しやすくなりました。
6.季節現象
a)紅葉・黄葉
第 2 表は、東海地方の主な地点におけるカエデの紅葉・イチョウの黄葉です。
第2表
東海地方の主な地点の紅葉・黄葉
地点
カエデ紅葉
イチョウ黄葉
11 月 25 日
岐阜
名古屋
津
月
日
平年:11 月 26 日
平年:11 月 29 日
昨年:11 月 26 日
昨年:12 月 7 日
11 月 30 日
11 月 2 日
平年:11 月 26 日
平年:11 月 20 日
昨年:12 月 1 日
昨年:11 月 13 日
11 月 21 日
11 月 18 日
平年:11 月 26 日
平年:11 月 17 日
昨年:11 月 30 日
昨年:11 月 28 日
月
静岡
日
11 月 25 日
平年:12 月 5 日
平年:11 月 21 日
昨年:12 月 7 日
昨年:11 月 16 日
b)台風
第 3 表は台風の発生数・上陸数と東海地方に接近した台風の数です。
9月は台風発生数、上陸数ともに平年を上回りました。9月には台風第13号が東海地方に接近し、
第16号が東海地方を通過しました。また、10月には台風第18号が接近しました。
第3表
台風の発生数・上陸数と東海地方に接近した台風の数
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10 月
11 月
12 月
年間
発生数
0
0
0
0
0
0
4
7
7
4
3
25
上陸数
0
0
0
0
0
0
0
4
2
0
0
6
東海地方接近数
0
0
0
0
0
0
0
2
2
1
0
5
発生数
0.3
0.1
0.3
0.6
1.1
1.7
3.6
5.9
4.8
3.6
2.3
1.2
25.6
上陸数
-
-
-
-
0.0
0.2
0.5
0.9
0.8
0.2
0.0
-
2.7
東海地方接近数
-
-
-
-
0.0
0.2
0.5
1.0
1.0
0.5
0.0
-
3.3
今
年
平
年
◎
極値更新(月・3か月の合計値・平均値に関するもの)
月
地点名
要素名
値
統計開始
従来の極値
9-11 月
上野
3か月間の平均気温(高い方から)
17.5℃
1937 年
17.5℃(2011 年)
9-11 月
浜松
3か月間の平均気温(高い方から)
20.1℃
1883 年
20.1℃(1999 年)
9-11 月
四日市
3か月間の日照時間(少ない方から) 351.3h
1966 年
355.1h(1970 年)
4
参考資料 平年並の範囲(東海地方)
平均気温平年差
降水量平年比
日照時間平年比
9月
-0.3~0.5℃
71~128%
94~106%
10月
-0.6~0.6℃
72~113%
97~104%
11月
-0.2~0.5℃
66~113%
96~107%
3か月
-0.4~0.5℃
83~107%
97~104%
※ この資料は速報値から作成しています。
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