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【事例 4】多言語音声翻訳システムの機能向上
<概要>
〇 多言語翻訳システムの機能向上は、東京 2020 オリンピック・パラリンピッ
ク競技大会の大会開催時及び開催後において、外国人旅行者の円滑な移動や
快適な滞在に資する都市環境の向上を目指して行われている「多言語対応」
の一つとして位置付けられており、官民を挙げた取組が進められている。
〇 総務省では、世界の「言語の壁」を無くし、グローバルで自由な交流を実
現する「グローバルコミュニケーション計画」を推進するため、国立研究開
発法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。
)が開発した多言語音声翻訳
技術の精度を高めるとともに、各種の社会実証等を実施する、としており、
これにより、ICT を活用したイノベーションを加速し、2020 年に開催される
東京 2020 大会の際には、本多言語音声翻訳システムを活用して「言葉の壁」
が無い社会をショーケースとして世界に発信する、としている。
〇 平成 27(2015)年 12 月現在、日英中韓のほか、タイ語、インドネシア語、
ミャンマー語を含め計 10 か国語について、旅行会話の翻訳能力の向上が進め
られている(対応言語は、アジア、ヨーロッパの 29 言語(方言を含めて 31
言語))。
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都では、多言語音声翻訳技術の精度向上のため、平成 27(2015)年 2 月及
び平成 28(2016)年 2 月に開催した「東京マラソン」や平成 27(2015)年 5
月に開催した「東京国際ユースサッカー大会」、平成 28(2016)年 2 月に開催
した「東京都・千代田区合同帰宅困難者対策訓練」等において、NICT が開発
した「多言語音声翻訳アプリ」を活用した実証実験23を行った。
1.課題の整理と解決策(実現すべき姿)
○ 都が国と連携して設置し、官民 62 の機関・団体が参画する「2020 年オリ
ンピック・パラリンピック大会に向けた多言語対応協議会」では、技術革新
が著しい ICT を、言葉の壁はもちろん、視覚・聴覚などの障害も乗り越えた
コミュニケーションや災害時における円滑な避難・誘導など、東京 2020 大会
を成功に導くための有用なツールとして利活用していくこととしている。
2.他団体が実施する実証実験の内容の検討
○ 現在、総務省では、訪日外国人の滞在環境の向上、観光産業の活性化など
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都の実証実験では、平成 27(2015)年 5 月までは「VoiceTra4U」を活用。平成 28(2016)
年 2 月以降は、これまでの研究開発成果を反映させた新バージョンの「VoiceTra」を活用
している。
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を目指し、多言語音声翻訳の対応領域、対応言語の拡大、翻訳精度の向上に
向けた実証実験を、病院、商業施設、観光地などにおいて実施している。
○ 自動翻訳技術は、実証実験が重ねられることによって、大量の翻訳データ
の集積が進み、更なる翻訳精度の向上が期待される。
○ この技術が社会実装されることにより、都が推し進める「言葉の壁を乗り
越えたコミュニケーションの実現」を可能にすることが見込まれる。
3.実証実験の実施(例)
① 東京マラソン 2015
○ 事前の説明会において、「VoiceTra4U」の使用方法をボランティアに説
明した。
○ また、各自のスマートフォンに「VoiceTra4U」をダウンロードし、外国
人参加者等との会話の必要な場面で実験的に使用した。
○ 大会後、ボランティアに対しアンケートを行い、「VoiceTra4U」を利用
した意見・感想を国へ提供した。
② 東京国際ユースサッカー大会
○ リエゾン(大会実施者と選手等のつなぎ役)に対する事前の説明会にお
いて、「VoiceTra4U」の使用方法を英語で解説したマニュアルを配布し、
操作説明を行った。
○ インドネシアのジャカルタチームが都内中学校を訪問し、日本人中学生
と交流する場面で実験的に使用した。
○ 各チームが宿泊するホテル内の交流会場において、選手同士の会話に実
験的に使用した。
○ 日本人生徒及び各チーム選手の感想を取りまとめ、国へ提供した。
4.施策への反映
○ 東京 2020 大会開催都市として期待する技術開発の方向性などについて、国
へ要望してきており、今後も、適宜、国に対して要望を行っていく。
○ 東京マラソン 2015 及び東京国際ユースサッカー大会における利用者の意見
を国へ提供した結果、医療の専門用語やサッカー用語などの辞書が増強され、
翻訳精度が向上した。
○ 引き続き、国及び区市町村等と連携し、実証機会の拡大を図り、多言語対
応の取組を進めていく。
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