ITU-D SG1及びSG2会合報告 - ITU-AJ

会合報告
ITU-D SG1及びSG2会合報告
なかじま
総務省国際政策課
かわすみ
総務省参与
いし だ
総務省国際政策課
やすひこ
川角 靖彦
いまなか
総務省参与
むつはる
中島 睦晴
なかじま
総務省参与
えい じ
石田 泳志
総務省国際政策課
いさお
中島 功
総務省参与
お さき
あつ こ
まつもと
みつ じ
尾﨑 敦子
松本 充司
ひで お
今中 秀郎
1.はじめに
決議を整理するためのTDAGのコレスポンデンスグループ
ITU-D SG1及びSG2の今期(2014 ~ 17年)第3回会合は、
会合が並行開催された。会合には、アフリカ等の開発途上国
2016年9月19 ~ 23日(SG1)
、
26 ~ 30日(SG2)にスイス(ジュ
を中心に75の国と地域からSG1に約170名、SG2に約150名
ネーブ)で開催された。併せて、緊急通信と災害対応ワー
が参加した。日本からは表1のとおり両SG合計で19名が出
クショップ、WTDC-17に向け次会期の研究課題の構成等
席した。
について意見交換するブレーンストーミング及びWTDC
■表1.我が国からのITU-D SG1&2会合出席者(敬称略)
氏名
所属
ITU-D役職
氏名
所属
中島 睦晴
総務省国際政策課
永沼 美保
NEC
石田 泳志
同上
釼吉 薫
同上
尾﨑 敦子
同上
川角 靖彦
総務省参与
佐藤むつみ
同上
SG1副議長
金澤 岳史
パナソニック
中島 功
同上
SG2Q2ラポータ
山中 寛幸
同上
松本 充司
同上
SG1Q7副ラポータ
森 雄三
ITU協会
今中 秀郎
同上
SG2Q5副ラポータ
冨永 浩司
同上(日本電池再生)
梅澤 由起
KDDI
SG1Q2副ラポータ
千田 昇一
NICT
西本 修一
同上
SG1Q5ラポータ
川森 雅仁
慶應義塾大学
福家 直樹
同上
SG2Q6 副ラポータ
■写真1.スポンサーしたスタンドの前に勢揃いのSG2日本代表団
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ITUジャーナル Vol. 46 No. 12(2016, 12)
ITU-D役職
SG2Q3副ラポータ
2.SG1会合
を作るべきとコメントがあり、ITU-Tにリエゾン文書を送
2.1 プレナリ
り依頼することになった。ほかに各国の実施事例に関する
SG1議長Ms. R. McElvane(米国)の下、SG1プレナリ
寄書がコンゴ共和国、クアルコム、中国等多数あり、一部
が開催された。冒頭にITU-D局長のSanou氏から挨拶があ
はITU-Dのケーススタディ・ライブラリに掲載されること
り、SDG(Sustainable Development Goal:持続可能な開
となった。インテルの寄書はいくつかの課題に対して宛て
発目標)達成にはICTが極めて重要である、SG1は短縮さ
られており、28GHz周波数帯を使用した5Gモバイルサー
れた研究期間の中で良い寄書が増え各課題の最終報告書
ビスに関する寄書であるが、28GHz帯はITU-Rで認められ
等の作成が順調に進んでおり、成果を楽しみにしている等
ていないとのロシアの強い反対があり、修正を検討するこ
が述べられた。SG1議長からはSG1のチームワークにより、
ととなった。
良い成果物をWTDC-17に届け社会を変えていきたい、
WTDC-17での審議の効率化には、これから順次開催され
る各地域準備会合(RPM)で十分審議して欲しいとの挨
2.4 課題3(クラウドコンピューティングへのアクセス:
開発途上国のための課題と機会)
拶があった。また、4人の新しい副ラポータ(Q2及びQ5に
ラポータのMr. N. Kettani(マイクロソフト)が議長を
Ms. T. Livera(スリランカ)
、Q5にMs. Z. Li(中国)
、Q8
務めた。ラポータの最終報告書案が2件、自国の制度を解
にMr. A. Plossky(ロシア)
、Res.9にMs. L. Sung(米国)
)
説したシンガポールと、観光産業でのクラウドコンピュー
の就任が承認された。興味深い寄書としては、WSIS事務
ティング利用事例及び電子政府のクラウドプラットフォー
局からの報告のうち、WSIS(ITU-D/WTDC)とSDGの
ムを紹介した中国の寄書のみであった。まだ、途上国のク
関連についてマトリックス的に整理したものがあった。ま
ラウドコンピューティングのニーズが高まっていないた
た、WTDC-17に向け次期研究課題を提案する際のテンプ
め、寄書数が少ないと思われる。ラポータの寄書2件はい
レートがTD(Temporary Document)にまとめられた。
ずれもオリジナル言語のみで未翻訳であったため、時間の
制限もあり十分な審議が行われなかった。審議を通じて、
2.2 課題1(開発途上国における、
NGN、
モバイルサービス、
クラウドの透明性、災害時のセキュリティ、クラウドとブ
OTTサービス、IPv6実現を含む、既存ネットワークか
ロードバンドネットワークインフラの関係、異国間にまた
らブロードバンドへの移行の政策、規制、技術的側面)
がるBBの調整、料金の低減化及びデータのセキュリティ
共同ラポータの一人Mr. V. Kaptur(ウクライナ)が議
等が問題とされ、次回会合での検討が必要とされた。
長を務めた。ブロードバンドインフラの構築とNGNへの移
行に関しては、ギニア、カメルーン、米国等13件の寄書が
審議され、中でも中国のテレコム事業者が実施(郊外部は
2.5 課題4(経済政策と、NGNを含む国内電気通信/ICT
ネットワークに関係するサービスの費用決定方法)
政府が助成)している、Shenzen市でのGiga Band City計
ラポータのMr. A. V. Capo(トーゴ)が議長を務めた。
画の完成報告が注目された。そのほかに、前回のラポータ
セネガルから新サービス導入時におけるコストに基づく料
会合での要望に応え、梅澤氏より日本のモバイルサービス
金設定モデルの原則の提案、コートジボワールからは、固
が紹介された。共同ラポータがまとめた最終報告書案が審
定網と携帯網の間で基本インフラを共用する場合の問題、
議され、関心ある多くの人が参画できるよう配慮すること
及び、BDTから発出された質問状への回答、スイス及び
となった。
オマーンからは最終報告書のドラフト案が紹介された。な
お、ITU-T SG3で国際間サービスの料金について研究し
2.3 課題2(IMTを含む開発途上国のためのブロードバン
ドアクセス技術)
ており互いに協調すべきとの意見があり、リエゾン文書を
出すこととなった。
ラポータのMr. L. Missidimbazi(コンゴ共和国)が議
事進行し、ラポータとスリランカの寄書を基に策定された
最終報告書案を審議した。第2章のブロードバンド政策に
2.6 課題5(ルーラル及び遠隔地域のための電気通信/
ICT)
関して、課題2のマンデートに合致していないとのコメン
ラポータの西本氏が議長を務め、最終報告書の各章担当
トがあった。イスラエルからブロードバンド(BB)の定義
者がプレゼンし、審議した。ほかにメンバー国、セクター
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会合報告
メンバー等から20件余の入力文書があったが、これらを最
2.9 課題8(アナログからデジタル地上放送への移行戦
終報告書に反映し、一部はケーススタディ・ライブラリに
略及び手法の検討、アナログ跡地の周波数帯におけ
掲載することとなった。9章のビジネスプランに関し、ルー
る新サービスの実施)
ラル地域でビジネスが成り立つかの議論があった。また、
ラポータのMr. R. Hirayama(ブラジル)が議長を務め
途上国のルーラル向け低コスト通信インフラを研究する
た。ケニア、ロシア、中国から現状の報告があった。ラポー
ITU-T SG5(Q14/5)との協調を続けることが支持され、
タは次会期の課題として、周波数の有効利用、ブロードバ
リエゾン文書を出すこととなった。課題5はラポータの努
ンドサービスの経 済 性、新広帯域サービス(4K、6K、
力で最終報告書の作成が順調に進んでいる。
3D、MMTV、IPTV、Mobile-TV、Digital Sound) 等 を
挙げた。
2.7 課題6(消費者情報、保護及び権利:法律、規制、
経済基盤、消費者ネットワーク)
2.10 決議9(特に開発途上国の周波数管理への参加)
共同ラポータのMr. J. Chen(中国)が議長を務め、最
ITU-RとITU-Dの 合 同 課 題 で あ り、ITU-DのMr. F.
終報告書の完成度を高めるために今後2回のワークショッ
Digham(エジプト)とITU-R SG1議長のMr. S. Pastukh(ロ
プを計画していることが報告された(2016年11月中国、
シア)が共同ラポータとして議長を務め、報告書案の確認
2017年1月ベナン)
。13件の寄書があり、英国からはWTDC-14
が行われ、多数の支持コメントがあった。インマルサット
決議78に基づき実施した電話番号の誤用や悪用に関する
からKa帯を利用した移動する地球局(ESIM)の周波数管
世界的調査の結果が提示され、この内容を最終報告書に
理に関する提案があったが、ITU-Rでは本件は先送りされ
含めることとなった。また、ギニア及びコートジボワール
ていること、干渉問題の懸念が示されたこと等から、最終
から電話番号の誤用問題など、直面している問題が報告
報告書への挿入提案は先送りとなった。また、WTDC-17に
された。議長より、今後の課題としてプライバシーと信頼
向けてITU-DとITU-Rが合同で作業することが必要である
性、デジタル金融サービスへのアクセス、QoS / QoEに
旨要望があった。
関してITU-T SG12との連携の必要性が提案された。
2.8 課題7(障がい者、特別なニーズのある人々の電気
通信/ ICTサービスへのアクセス)
3.SG2
3.1 プレナリ
SG2議長Mr. A.R Sharafat(イラン)の下、SG2プレナ
共 同 ラ ポ ー タ のMr. A. Dembele( マ リ ) とMs. A.
リが2回開催された。冒頭にITU-D局長のSanou氏から挨
Odobasic(ボスニア・ヘルツェゴビナ)が交代で議長を
拶 が あ り、2017年 がITU-D設 立25周 年 に あ た る こ と、
務めた。副ラポータMr. Mutsotso(ケニア)からは、政府、
WTDC-17がアルゼンチンで開催されること、ITU-Dの役
民間、ステークホルダーによるプロジェクトで、ユニバー
割の拡大とセクタ間の連携の重要性、日本政府に対して災
サルサービス基金を運用し学校等の運用保守を支援した
害対応ワークショップの開催への協力についての謝辞等が
ことが紹介され、その他各国・各機関からの入力寄書が紹
述べられた。アジェンダの確認に引き続き、BDTからSG2
介された。副ラポータの松本氏は、ネット利用時の全言語
関連の統計情報が紹介され、今会合の寄書数は前回とほ
の音声・手話・点字→テキスト→音声・手話・点字への変
ぼ同数の125件で、アジア地域から38%、アメリカ地域か
換システム、及び、緊急時における障がい者の目的地への
ら27%の提出があった。SG2議長からの寄書で最終報告書
簡単なアクセス方法を紹介した。そのほか、G3ictから、
の目次案が示され、翻訳の制限により各課題50ページ以下
現行のインターネット動画の複数言語による配信のため、
とされたことを考慮し、各課題で議論することとなった。
WIPO(世界知的所有権機関)との共同研究が有効である
ほかに、事務総局からWSIS関連の活動状況報告、ITU-T
こと、及びITU内の全セクタ間連携のため、Webによる調
やITU-R等からのリエゾン文書が紹介された。2回目のプ
整活動が提案された。さらに、次会期での継続研究が重
レナリでは、Q8/2ラポータの交代とリエゾン文書を含む
要である旨確認され、作業項目として、障がい者用グロー
各課題のレポートが全て承認された。送出リエゾン文書の
バルプラットフォームの構築、ICTアクセシビリティガイ
議論の中で、宛先がWTSAになっているものを関連SGに
ドラインの作成等が挙げられた。
修正することを合意した。また、ブレーンストーミングで
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ITUジャーナル Vol. 46 No. 12(2016, 12)
議論したSG2の将来計画についての議論結果が紹介され、
めることが承認された。次回、ラポータ会合時にワーク
次回のラポータ会合でも議論することとなった。
ショップを併せて開催する予定である。
3.2 課題1(スマート社会の構築:ICTアプリケーション
3.5 課題4(適合性及び相互接続性プログラム実施のた
を通じた社会経済開発)
めの開発途上国への支援)
ラポータのDr. J.N.Njeru(ケニア)が議長を務め、Smart
ラポータのMr. C.T. Oudaa(モーリタニア)が議長を務
Cityに関する議論があった。15件の寄書があり、その内8件
めた。ギニア(前回のラポータ会合の寄書)
、
中央アフリカ、
が中国からの事例紹介で、ロシア、ケニアなどからも取組
イラン、ブラジル、COMTELCA(中米の通信事業者の組
状況が紹介された。また、Smart Cityという用語について、
織)からC&I試験の取組状況を紹介する寄書が議論され、
定義や研究の範囲が明確になっていないため、ITU-Tでの
最終報告書案が更新された。これらの内容とTSBから紹
定義を参照する必要があるとの意見があった。最終報告
介されたITU-T SG11(信号方式)での検討状況を含め、
書は、韓国、ハイチの副ラポータが協力して来年1月のラ
最 終 報 告 書 への盛り込 みを合 意した。またUAEから、
ポータ会議までに取りまとめることとなり、今後、広範な
C&Iに関するワークショップの開催提案があり、ラポータ
テーマを整理してどのようにまとめるかが期待されている。
がこの提案を支持した。
3.3 課題2(e-Healthのための情報及び電気通信/ ICT)
3.6 課題5(防災、減災、災害対応のための電気通信/
ラポータの中島氏が議長を務め、現在すでに大半が出
来上がっているが、140ページの最終報告書を、50ページ
ICT利活用)
ラポータのMs. K. O’
Keefe(米国)と副ラポータの今中
の制限に合わせて本文を圧縮し、ほかはAnnexに添付す
氏の議事進行により、災害対応事例集と緊急通信チェック
ることとなった。ハイチ、ルワンダ、カメルーンなどから
リストの議論があった。最終報告書に含める災害対応事例
e-Healthの政策や取組状況を紹介する寄書があり、最終報
集に関し、日本から提案した障がい者向けの緊急通信の要
告 書 案 に 盛 り 込 む こ と と な っ た。 ま た、 中 島 氏 が、
求条件と、MDRUに関するICTサービス機能の記述追加
WTDC-02(イスタンブール)で承認発行された決議41に
提案はそれぞれ合意され、またパナソニックからのローカ
対する再評価と、これをフォローアップする新たな決議を
ルセルラサービスに関する2件の記述追加とNECからの
WTDC-17に提出するよう提案し、承認された。そのほか、
データセンタ構築指標に関する提案が合意され、中国の災
副ラポータのL. Androuchko教授(スイス)より、ITU-D
害対策事例とイリジウムのPTT(Push to Talk)機能の
がこれまで途上国の遠隔医療を20年間支援してきた旨とそ
提案と共に事例集を更新した。米国提案の緊急通信ガイ
の技術や政策をまとめ、20年史を出版したいとの要望が表
ドラインも事例集に盛り込まれた。また、災害対応チェッ
明された。
クリストに関して、米国の提案により情報を追加すること
が合意され、本リストも最終報告書に含める予定である。
3.4 課題3(情報通信ネットワークの安全確保:サイバー
課題5に関連し、緊急通信と災害対応のワークショップ
セキュリティ文化を発展させるためのベストプラク
が米国及び日本の共同企画で開催された。セッションに先
ティス)
立ち、Zavazava氏とラポータのO’
Keefe氏から挨拶があり、
ラポータのMr. E. Lear(シスコ)と副ラポータの永沼氏
災害時の通信の重要性やITUの取組みが示された。セッ
の議事進行により、サイバーセキュリティに関する議論が
ション1は今中氏がモデレータとなり、東日本大震災と熊
あった。日本政府からACTIVE(マルウェア感染対策)を
本地震での災害対応状況とMDRUやL-alertを紹介した千
紹介し、コートジボワール、ウクライナ、オランダ、オマー
田氏をはじめ、World Food Program、インド政府等から
ン、韓国、ロシアなどから取組状況が紹介された。spam、
災害対応の最新事例が紹介された。セッション2はMr. J.
Global Cybersecurity Index、オンライン上の児童保護な
Burton(米国)がモデレータとなり、
ITU、
中国、
IARU(米
どきわめて広範囲な分野が報告書に盛り込まれる予定であ
国)等による災害時を想定した対応方法に関するパネル討
る。WTSA-16へのリエゾン文書送付の意義と手順が確認
論が実施された。結論として、災害時の情報の重要性、
され、最終報告書をラポータ、副ラポータにより取りまと
通信確保を事前準備することの必要性、ITU等の場での
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会合報告
経験とノウハウの共有の有効性が示された。従来から防災
どを盛り込んで報告書を更新することを合意した。
分野に力を注いでいるITU-D事務局も、同ワークショップ
に合わせ会場外にITUブースを設けて、災害時に各国の被
災地に貸与する衛星携帯電話(イリジウムタイプとインマ
3.9 課題8(電気通信/ ICT廃棄物の適切な処分と再利
用のための戦略及び政策)
ルサットタイプ)や携帯基地局などの緊急通信システムの
SG2プレナリで、Mr. J.P.C.Ospina(コロンビア)からラ
展示を行っていた。
ポータ交代を承認された、Mr. A.R. Khanal(ネパール:
我が国としては、引き続きITU-Dとの連携を図り、平時
SG2副議長)が議長を務めた。日本ITU協会(日本電池再
にはデジタルディバイトの解消、災害時には緊急通信とし
生の冨永氏が発表)からの鉛蓄電池の寿命を延ばす素材
て活用できる我が国のICT機器の国際展開などを通じて、
と再生センタ構築の寄書は、途上国の未電化地域での有効
世界各国での防災・減災対策の充実に貢献したいと考え
性を考慮し、技術及び放置鉛蓄電池の再生の重要性が認
ている。
識され、最終報告書への盛り込みを合意した。そのほか、
ブラジル(プリント基板の貴金属再利用)
、スリランカ(e廃
3.7 課題6(ICTと気候変動)
棄物の教育)
、ロシア(e廃棄物の政策)の寄書と、質問票
ラポータのMr. P.Kelly(フランス)が議長を務めた。な
の回答などを盛り込んで報告書を更新することを合意した。
お、本課題の副ラポータは福家氏である。ラポータの用意
した最終報告書案をレビューし、フランス、Orangeの寄
書により報告書案が更新された。また、クワルコムからイ
ンドにおけるスマートフォンを用いた料理用コンロのCO
(一酸化炭素)放出量測定の事例が紹介された。
3.10 課題9(開発途上国に特に関心の高い、ITU-T及び
ITU-R研究委員会の研究テーマの特定)
ラポータのMr. N.A. Marzouqi(UAE:SG2副議長)が
議長を務め、ITU-T及びITU-Rとの連携に関する議論が
あった。ITU事務総局からWSISやITU世界テレコムなど
3.8 課題7(電磁界の人体ばく露に関する戦略及び政策)
のWTDC-14以降 の 活 動 状 況 が、ITU-RからWRC19のト
ラポータのMs. D. Liu(中国)が議長を務めた。なお、
ピックを含む活動状況が、ITU-Tから各SGの研究状況が
本課題の副ラポータは全員不参加であった。ラポータと
それぞれ紹介された。なお、ITU-Tから設立60周年記念ビ
ATDI(イスラエル)の用意した最終報告書案をレビュー
デオ(NTTとKTがスポンサー)が上映された。最終報告
し、中国寄書による電磁波のオンラインモニタリングシス
書には、各セクタとの協調状況や事務総局の報告が記載
テムの事例、以前に送付した質問票の24か国からの回答な
されることとなった。また、現在のSG構成と各課題の評
■写真2.緊急通信と災害対応ワークショップ。左から2番目が議長を務めたQ5/2副ラポータの今中氏
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ITUジャーナル Vol. 46 No. 12(2016, 12)
価に関する質問状は、次会期の課題構成の提案依頼を含
めてメンバー国に送付されることとなった。
5.おわりに
本会合は、開発途上国のためのICTのあり方や具体的な
普及・利活用方策を議論する場であり、開発途上国からの
3.11 WP1/2(SG2 Q5、6、7、8の課題間の協調)
参加者にとっては自国の政策に反映するための重要な情報
Mr. Petko Kantchev(ブルガリア)が議長を務めた。
収集の場であるため、意欲的かつ熱心に参加している印
課題6、7、8の各課題に対するアンケート調査を取りまと
象を受ける。今会合においては、ITU-R及びITU-TのSG
めているが、回答が24件にとどまっており、分析が難しい
会合が並行開催されていたせいか、従来と比較して、他
ため、回答期限を再延長して、アンケート調査の分析を実
セクターメンバーの参加者が多く、また来年にWTDC開
施することとなった。同様に、これらの課題に対する
催を控え、米国及び中国の参加者の増加が見受けられた。
ITU-TやITU-Rへのリエゾン文書もWP1/2が取りまとめる
次回の最終会合に向けて、各課題の報告書の取りまとめ
ことを合意した。WTDC-17に提出されるWP1/2の報告書
が主な議題であったが、いずれの課題においても、日本の
は、WP1/2議長が作成することが承認された。
寄書を含め、これまで各国から提出された寄書が盛り込ま
れた上でブラッシュアップされてきているとの印象を受け
4.今後の予定
た。今後、ITU地域会合(RPM)及びTDAGコレスポン
2017年1月9 ~ 27日までSGラポータ会合が、3月27日~
デンスグループの2本立てで次会期の研究課題を検討する
4月7日までSG会合が開催され、各課題の報告書の取りま
ことになるが、我が国としても、開発途上国でのICT開発
とめが行われる。
における日本のプレゼンスの更なる向上に向けて、引き続
き積極的に参加する必要がある。特に、次会期の構成及び
役職者選出の両面において、引き続き貢献していきたい。
■写真3.スイス側ツェルマットから見た名峰マッターホルン
(4478m)
の朝焼け。ツェルマットは自動車乗り入れ禁止。村内のバ
ス、タクシー等の公共交通手段は電気自動車。
■写真4.Leukbad(Valais州の温泉保養地)にあるスイスの地球局
アンテナ群。ローヌ河上流、ツエルマットに行く途中にあ
るワイン、干し肉、チーズの名産地でもある。
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