相場展望レポート (2016 年 12 月)

相場展望レポート (2016 年 12 月)
2016.11.30
水上 紀行 氏(元インターバンク・ディーラー)
12 月の予想レンジ
ドル/円
110.00〜125.00
ユーロ/ドル
1.0000〜1.1000
ユーロ/円
115.00〜130.00
豪ドル/円
75.00〜90.00
ドル/円
〜ドルの買い筋は?〜
今回の⼤統領選のトランプ⽒当選という結果は、海外から⾒れば意外性のあるものでしたが、⽶国内の特に
白人低所得者層からは⼤いに歓迎されるものでした。
そして、マーケットでは、トランプ⽒の積極財政政策が好感され、ニューヨークダウも⽶国債利回りともに
⼤幅上昇となり、それらと相関性の強いドル/円も、当選の報が出てから 15 日間で、約 10 円の上昇となっ
ています。
この強⼒な買いの根源は、⽶系ファンドにあると、個人的には⾒ています。
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2016 年 12 月)
2016.11..30
ドル/円
日足
足
なぜ⽶系ファンドとする理由のひとつには、⾃分の存在感を誇⽰するような買い⽅から、典型的な⽶系ファ
ンドの手口だということが上げられます。
この一本調子のドル高から想起されるのは、2012 年 10 月からの翌 2013 年 5 月まで続いたアベノミクス相
場で、この時は、⽶系ファンドはクリスマス休暇返上で買い上
場で、この時は、⽶系ファンドはクリスマス休暇返上で買い上げ、この間に約
、この間に約 26 円のドル高円安となり、
彼らは⼤儲けしました。
また、もうひとつ深刻な問題が理由となっています。
それは、最近、銀⾏は、世界的にコンプライアンス(法令順守)や規制によってがんじがらめになっており、
もうほとんどポジションが持てなくなっている状況です。
今、世界で FX のリスクを取っている(ポジションを持つ)のは、極論をすれば、⽶系ファンドと日本の個
人投資家ぐらいと限られ、しかもその中で、アクティブに⼤口の玉を振るっているのは、⽶系ファンドだけ
と言って過言ではありません。
そこで、瞬発⼒があって、破壊⼒のある⽶系ファンドが、どうしても目⽴つことになります。
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2016.11.30
ということで、マーケットの主導的役割は⽶系ファンドが担っているとして、今回の相場をどう⾒るかです。
〜今回のドル買いの根底にあるものは〜
私は、今の為替相場は、アメリカ・ファーストの相場だと⾒ています。
アメリカ・ファースト(America First)とは、アメリカ第一主義のことです。
つまり、国⼒が相対的に低下し国内にさまざまな問題を抱えるアメリカは、国の社会や経済の建直しを最優
先し、国際的問題への関与を可能な限り控えるべきだとする考え⽅です。
そして、アメリカ・ファーストの期待の星が、トランプ⽒ということになります。
いずれにしても、それをテーマに、⽶系ファンドはドルを買っているのだと思います。
それがドル買いの材料かと捉えるよりも、ドル買いの言い訳がほしいのだと思います。
そして、その象徴的なセレモニーは、来年 1 月 20 日の⼤統領就任式になるものと思われ、それを考えると、
年末でポジションを閉じて、クリスマスを楽しむというよりも、クリスマス返上で、1 月 20 日に向けて、ド
ルを買い上げるのではないかと、感謝祭前日と当日のファンド筋のドル買いの猛攻からも、推察できるよう
に思いました。
〜どこまでドル/円は上がるのか〜
それでは、どこまで、上昇相場は続くのかということになります。
週足で⾒ると、100.00 をボトムとするラウンディング・ボトム(鍋底)のネックラインである 112.00 を上
に抜けてきていることから、⼤雑把に言って、112.00+(112.00-100.00)=124.00 が、単純計算のター
ゲットになってきます。
しかし、こういうシンプルな⾒⽅が、意外と的中することがありますので、気には留めておいてください。
ただし、2012 年から 2015 年に掛けて 50 円弱上昇した時とは、国内の需給は異なっています。
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ドル/円
週足
足
2012 年の時は、前年の 2011 年に東日本⼤震災があり、原発事故により、国内すべての原発が停⽌し、
代替エネルギーとして、液化天然ガスを⼤量輸⼊したため、貿易収⽀が⾚字に転落しました。
これにより、輸⼊の⽀払代⾦のためのドル買いが、輸出の受取り代⾦のためのドル売りを上回ったため、恒
常的にドル買いが発生することになり、ドルを押し上げる効果があったのも、⼤幅円安の⼤きな原因でした。
しかし、今年、貿易収⽀は⿊字を回復してきており、
しかし、今年、貿易収⽀は⿊字を回復してきており、2012 年〜2015
年〜
年のような、貿易⾚字からのドル買い
のサポートはありません。
それだけ、フロー(資⾦の流れ)が細るという点を考慮すれば、
それだけ、フロー(資⾦の流れ)が細るという点を考慮すれば、120.00
120.00 近辺が妥当なのではないかと⾒て
います。
また、それだけ買うわけですから、宴の後の反落も⼤きいものと思われますので、特に 1 月 20 日の⼤統領
就任式から 1 月 31 日の一般教書演説あたりは、相場転換の可能性があり、警戒が必要だと思われます。
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ユーロ/
/ドル
ユーロ/ドル
週足
1 年 9 ヶ月に及ぶレンジ相場も、とうとう「アメリカ・ファースト」相場で、下⽅向(ユーロ安ドル高)に
に及ぶレンジ相場も、とうとう「アメリカ・ファースト」相場で、下⽅向(ユーロ安ドル高)に
抜けるのか、注目です。
たぶん、割れるのは、時間の問題だろうと⾒ています。
もし、ブレイクすれば、次は、
もし、ブレイクすれば、次は、1.0000
1.0000(パリティー、等価)を試すことになります。
(パリティー、等価)を試すことになります。
しかし、1.0500
1.0500 ですらこの抵抗ぶりですから、
ですらこの抵抗ぶりですから、1.0000 は、なおさら強い抵抗を受けそうです。
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ユーロ/
/円
ユーロ/円
月
月足
あくまでも、ドル
あくまでも、ドル/円に連れた動きです。
円に連れた動きです。
ひとつの考え⽅として、この
ひとつの考え⽅として、このユーロ
ユーロ/円を例にとって申し上げるなら、
を例にとって申し上げるなら、2012
を例にとって申し上げるなら、2012 年以来、放物線を描くように上
げ、横ばい、そして下げと来て、素直に考えれば、
げ、横ばい、そして下げと来て、素直に考えれば、2012 年のボトムまで戻しそうなものです。
しかし、同じようにチャートを⾒、そしてユーロショートにしたマーケット参加者も少なくないのかもしれ
ません。
そのため、マーケットポジションがショートになり、下げづらくなって、下落途中の横ばいができ、
そして、とうとう今回のドル
そして、とうとう今回のドル/円の買いに、買い戻されたのではないかと思われます。
円の買いに、買い戻されたのではないかと思われます。
しかし、これを持って、下落が終わりを告げたとは思いません。
適正なポジションの偏りに戻れば、再び、95
適正なポジションの偏りに戻れば、再び、 円〜
円〜100 円を目指すものと思われます。
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豪ドル/
/円
豪ドル/円
月
月足
やはり、ドル
やはり、ドル/円の反発を受け、上昇しています。
円の反発を受け、上昇しています。
ただし、2014
2014 年末からの下落トレンドも、はっきりとは終わっておらず、ある程度の反発の後は、再び反
落する可能性はあります。
また、最終的に下げから上げへのトレンド転換をするにしても、急反転はまれで、一般的には時間を
また、最終的に下げから上げへのトレンド転換をするにしても、急反転はまれで、一般的には時間をかけな
けな
がらになるものと⾒ています。
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■ 水上 紀行 氏 氏プロフィール
1978 年三和銀行(現、三菱東京 UFJ 銀行)入行。
1983 年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。
東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。
1995 年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジスト
として広く活躍中。バーニャ マーケット フォーカスト代表。
長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。
公式ホームページ:「Banya Market Forecast」
■ ご留意いただきたい事項
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