ティラワSEZ通信 - 日本貿易振興機構

日本貿易振興機構(ジェトロ)
ティラワSEZ通信
2016年11月30日
Vol.12
日本・ミャンマーが官民一体となって開発を進める「ミャンマー・ティラワ経済特区(SEZ)」
プロジェクト。ジェトロは、日本企業の皆様のティラワへの進出をサポートするため、ティラワ
開発に関する最新情報をお届けします。
本号のトピックス:
1. ティラワSEZ入居企業インタビュー特集
2. インフラ最新事情「ティラワ地区港」
3. ティラワSEZについて ー基本内容ー
4. ティラワSEZ先行開発区域「ゾーンA」最新契約締結状況
5. ミャンマービジネス関連情報
1.ティラワSEZ入居企業インタビュー特集
ティラワSEZ内の物流会社としては最も早く2016年3月より本格稼働を開始したThilawa
Global Logistics Co., Ltd (以下TGL)。同社社長の林氏に事業内容やティラワSEZへ入居する
プロセスやメリット、今後の展望についてお話をお伺いしました。
(聞き手:ヤンゴン事務所 澤田茉季)
―御社のティラワSEZ内での事業内容を教えて下さい。
主にティラワSEZに進出されたお客様の建設資材や生産用部品・材料、製品
にかかわる物流業務を請け負っています。
①ミャンマー国内輸送
②タイをはじめとする近隣国との海上輸送
③倉庫業務
④輸出入通関業務
⑤各種免税申請手続きの代行業務、
などの物流サービスを提供しています。
今年2月、ティラワS EZ内約4.7haの土地に5,000㎡の倉庫が竣工したところで
す。
林 祥久 社長
(はやし よしひさ)
2015年5月よりTGLの
Managing Directorとし
て就任。過去、ベトナム
ハノイの工業団地内物流
事業会社に計7年半駐在
した経験を持つ。
当社は、住友商事
株式会社と株式会社
上組、ミャンマー地
場企業の3社が出資す
る合弁企業です。親
会社から日本人が3名
出向し、約50名の
ミャンマー人スタッ
フが従事しています。
ティラワSEZ内物流センター全景
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1.ティラワSEZ入居企業インタビュー特集
―御社の特長を教えて下さい。
1.税関が入居していること
当社の施設にはティラワSEZ管理委員会傘下のワン・ストップ・サービス・センター(OSSC)税関が
入っています。現在、約10名の税関職員が常駐しています。通関書類の審査から許可、そして貨物の現物検
査までの一連の通関手続き業務を一元的に行うことが可能です。
2.保税機能付き倉庫を有していること
保税機能付きの倉庫を有しています。先日10
月7日付でティラワSEZ管理委員会が通達を発行
し、海外企業名義での保税保管も実現できる見
通しが立ちました。倉庫保管中の貨物には関税
や商業税の支払いが留保されるため、輸入者に
とっては、金利負担、在庫保有の負担が軽減さ
れます。輸入者は貨物が必要となった時に輸入
通関手続きを行い、貨物を受け渡しすることが
税関オフィス
可能になる見込みです。
3.様々な物流サービスを提供可能なこと
上述と重複しますが、改正SEZ法の下、ティラ
ワSEZ進出に進出されたお客様が各種免税恩典を
受けるために必要となるマスターリスト等の作成、
及び行政当局への登録代行サービスを行ったり、
またお客様の工場内物流業務も一部請け負ってい
ます。
今後もお客様のニーズにあわせサービスメ
ニューを整えていく所存です。
ティラワSEZ内物流センター全景
―ミャンマー国内の現在の物流環境はいかがですか?
改善を期待する部分は多くあります。例えば、輸出入手続きです。煩雑かつ時間を要する事例が散見され
ますが、2016年11月より稼働開始予定の電子通関システム(MACCS:マックス)の導入に伴い、手続きが
迅速化されることを期待しています。
また、現在、SEZ周辺インフラの一つとしてティラワ港の開発が進んでいますが、あわせて港へのアクセ
ス道路の整備、さらにティラワから消費地であるヤンゴンや地方主要都市への産業用道路の整備にも期待し
ています。それらが整備されることにより、輸送費用の低減だけでなく、貨物の安全確保(ダメージ防止)
にもつながります。
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1.ティラワSEZ入居企業インタビュー特集
―ティラワSEZ入居への決め手は何ですか?
5,000万人を越す豊富な人口を有するミャンマーにおいて、社会インフラの開発・整備が急速に進むであ
ろうこと、そして雇用創出と技術移転を強く掲げたティラワSEZを中心に工業化が進むであろうことから、
外資製造業の進出がティラワを中心に益々増え、物流需要の拡大が期待できたためです。
安全技術指導①
安全技術指導②
安全技術指導③→
―今後の御社の展望を教えて下さい。
1.安定したオペレーション体制の確立
本年3月に操業を開始し、半年が経ちますが、まず
は着実なオペレーションの立ち上げと、安全管理の
徹底を目指しています。例えば、ミャンマー人ス
タッフの人材育成です。親会社である上組の安全衛
生管理者が毎月指導を行っています。フォークリフ
トの基礎的な運転方法を始め、貨物の固縛方法や安
全作業など、指導内容は多岐に渡っていますが、オ
ペレーターもワーカーも積極的に取り組んでいます。
これから多数のティラワSEZ進出企業の稼働が見込まれます。SEZにおけるオペレーションの知見と経験
を蓄積し、お客様の工場立ち上げに寄与できるよう尽力して参ります。
2.サービスや輸送の多様化
前述のとおりお客様のニーズに合わせて柔軟かつ多様なサービスを提供していきたいと思っています。
今後は、ミャンマー国内の内陸水運網や港等のハード面、輸出入制度をはじめとするソフト面の双方におい
て、整備や改善が進むと期待され、お客様の求める物流も多様化していくと考えています。当社も多様な
サービスを提供し、ティラワを起点とした、ミャンマーにおける物流の発展に寄与していきたいと思ってい
ます。
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2.インフラ最新事情「ティラワ地区港」
ティラワSEZの整備とともにティラワ地区港の整備が現在進められています。
ティラワSEZとも近い同港の整備により、ティラワSEZ向けの物流の効率化が期待されるだけ
でなく、貨物輸送量の増大しているミャンマーにおける重要なインフラとして、ティラワSEZ
内外から注目されています。ティラワ地区港の概要や最新の開発状況をまとめました。
―ティラワ地区港について―
ヤンゴンには現在ヤンゴン本港(ヤンゴン市街地周辺)とティラワ地区港(ティラワSEZ周辺)の2
つがあり、ミャンマーにおける国際物流全体の9割の貨物を同2港が取り扱っている。
そのうちティラワ地区港は全長7,400mあり、現在は下記3つのターミナルが稼動している。
【貨物用ターミナル】
●Myanmar International Terminals Thilawa (MITT)
●Myanmar Integrated Port Limited Terminal(MIPL)
【船舶解体用ターミナル】
ティラワ地区港プロット割
●Myanmar Ship Breaking Yard
ティラワ地区港は、全長7,400mが計
37のプロット(ブロック)に分割され
ている。
ミャンマー港湾公社 [Myanma Port
Authority (MPA)] が民間会社等へプ
ロットごとに土地を貸し出し、各プ
ロットの権利者がターミナルの開発整
備や運営を行う。
権利者は複数のプロットを所有する
場合もあり、各ターミナルにより取扱
貨物や用途(燃料用、穀物・食品用、
一般貨物用等)が異なる。この37プ
ロットにおいては、現在稼働中の3つの
ターミナルに加え、今後17のターミナ
ルが開発される予定である。
※なお、ヤンゴン本港では、現在下記
4つの主要なターミナルが稼働中。
Asia World Port Terminal (AWPT)
Hteedan Port Terminal (HPT)
Myanmar Industrial Port (MIP)
Bo Aung Kyaw Street Wharf (BSW)
(出典:MPA)→
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2.インフラ最新事情「ティラワ地区港」
―ティラワ地区港の特長―
(提供:日本工営)
■航路上に浅瀬がある
ヤンゴン川の河口付近のエレ
ファントポイント周辺(水深6m)
とヤンゴン本港入り口付近のモン
キーポイント周辺(水深4.5m)に
浅瀬がある。
しかし、ヤンゴン本港に入港可
能な最大級の船舶の喫水(水面か
ら船底までの深さ)は9mであり、
浅瀬よりも喫水の深い船舶が往来
することになる。
2つの浅瀬ポイントを通過するた
めには、1日に2回のみ発生する満
潮のタイミングに合わせて通過す
る必要がある。入港時と出港時に
それぞれ2回ずつ潮待ちをする必要
があるため、ヤンゴン本港への出
入りだけで2日を要すこともある。
一方で、ヤンゴン川の河口と
ティラワ地区港の間の浅瀬はエレ
ファントポイント1か所のみ。入港
時と出港時の潮待ちは1回ずつで済
むため、船舶の往来の時間を短縮
できるメリットがある。
モンキーポイント
エレファントポイント
■広大な敷地面積
ティラワ地区港は、大型船舶が
入港できることに加え、奥行も広
い。他国の港と比較しても、奥行
750mある港は珍しく、貨物のス
ムーズなオペレーションや、ニー
ズにあわせて冷蔵倉庫や加工工場
などの施設の併設も可能である。
ヤンゴン本港
ティラワ地区港
(1プロット分)
入港可能な最大船長
長さ:167m
喫水:9m
載可トン数(DWT):15,000トン
長さ:200m
喫水:9m
載可トン数(DWT):20,000トン
港の奥行
100-200mの港がほとんどである
約750m
■電子通関システム(MACCS:マックス)の導入
日本政府の支援により11月より稼働するMACCSは、ティラワ地区港にも導入される。MACCSの導入
により、税関審査や検査に要する時間の短縮化や手続の簡易化が期待されている。
【ご参考】MACCSシステムについての通商弘報
https://www.jetro.go.jp/biznews/2016/06/eedaa71fc50b38fe.html)
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2.インフラ最新事情「ティラワ地区港」
―ODA港の特長―
日本政府の円借款による港(以下ODA港)の開発整備がプロット25-26において進められ、2018年
末の供用開始が予定されている。
ODA港完成イメージ図①
ODA港完成イメージ図②
(提供:東洋建設)
■日本の高技術を用いた工法
ティラワ地区港は非常に地盤が緩いエリアに位置しており、港を整備するために地盤の強化が必須と
なる。ODA港では、十分な時間と技術を用いて、土地深部の水を抜いて、重しとなる土を盛り、地盤を
締め固め、舗装を行っている。
また、ジャケット工法技術を用いて、桟橋が建設される。ジャケット工法は羽田空港D滑走路の建設
時にも用いられた工法で、桟橋上部を陸上で建造し、海底地盤に打設した杭の上に、大型クレーンで構
造物を乗せる。海上での建設工程が少なく、工期の短縮や、陸地で精度の高い構造物の建造が実現可能
となる。
■国際基準の災害対応設計
ODA港には、免震構造の桟橋とクレーンが設置される。2008年のサイクロン・ナルギスが発生した
際、一部の港では桟橋のクレーンが倒れ、復旧までに時間を要する事例があったが、ODA港ではこうし
た自然災害も想定した上で施設
を設計しているため、災害時の
現在の開発風景
救援物資の受入港としての機能
も持つ。
また、本桟橋は大重量貨物の
取扱も可能である。大重量貨物
に対応していない港では、貨物
を小分けする必要があり、コス
トや手間、時間がかかる。
■桟橋の長さ
ODA港は2プロット分の桟橋
(400m)を有するため、2つの
船舶を同時に停められる。円滑
な船舶の出入りや、貨物の陸揚
げが可能となる。
(撮影:JETRO)→
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3.ティラワSEZについて ー基本内容ー
開発状況や入居企業の方の様子をお届けしている、このティラワSEZ通信。よくご存知の方
も多いとは思いますが、そもそも「ティラワSEZって?」という方々のために、もう一度基本
内容をおさらいいたします。
次号以降は、ティラワSEZ認可企業へのインセンティブや認可要件、認可プロセスについて
特集していきます。
ティラワSEZとはどんな計画?
ミャンマー最大の都市ヤンゴンから南東に約25kmの位置にあるティラワ地区で開発が進
められているミャンマー「初」の本格的な経済特別区(SEZ)開発です。
総開発面積は2,400ha。東京ドーム約500個分に相当します。
2014年1月に日本とミャンマーの政府・民間企業から構成されるMJTD社が設立され、
ティラワゾーンAの土地を販売、すでに計20社の工場が稼働しています(2016年11月末現
在)。
ティラワSEZの意義は?
(MJTD社提供)
まず、今までミャンマーになかっ
たビジネスがティラワSEZで始まっ
ています。コイルセンター(薄板)
の参入は裾野産業の第一歩。建設資
材や肥料関連企業の参入で、今後、
輸入代替効果が期待されます。労働
集約産業も、従来の縫製偏重から工
業製品の部品へと領域が拡大してい
ます。
もちろん、インフラが整備され、
各種手続きが効率的に行われる国際
水準の工業団地を実際にオペレート
することで、工業団地ビジネスの目
指すべきベンチマークを示すことも、
ティラワSEZの重要な意義です。
ティラワ
SEZ
ティラワSEZ内ゾーンA
【立地】
ヤンゴン中心市街地から23kh(車で約1時間)
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3.ティラワSEZについて ー基本内容ー
【開発主体】
Myanmar Japan Thilawa Development Ltd.
(2014年1月10日設立)
【出資】
・日本民間39%(丸紅、住友商事、三菱商事、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行)
・日本政府10%(JICA)
・ミャンマー民間41%
・ミャンマー政府10% (SEZ管理委員会)
ゾーンA
【開発面積】
総面積2,400ha
完工済面積
第Ⅰ期
第Ⅱ期
工業用地 211ha
住宅・商業 35ha
158ha
合計
404ha
ゾーンA区域拡大図
(MJTD社提供)
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4.ティラワSEZ先行開発区域「ゾーンA」最新契約締結状況
2014年5月の販売開始から2年半経過し、先行開発区域「クラスA」への進出決定企業は
78社に達しました(2016年11月20日時点)。
土地予約契約締結企業 : 78社
※土地サブリース契約締結企業64社を含む
日本:39社(自動車関連、電子部品、手袋、環境、縫製、食品、カメラ三脚、建材、梱包資材、ぬいぐ
るみ、職業訓練、物流、製靴、車椅子、ゴム製品、化学、農業機械、飲料等)
タイ: 10社 / 韓国: 5社 / 台湾: 5社 / シンガポール: 4社 / ミャンマー: 3社 / マレーシ
ア: 3社 / 香港: 1社 / アメリカ: 1社 / スウェーデン: 1社 / 中国: 1社 / オーストラリ
ア: 1社 / ベトナム: 1社 / インド: 1社 / スイス: 1社 / ドイツ: 1社
*土地サブリース契約:MJTDとの土地予約契締結を経て、投資認可ライセンスを取得した企業がMJTDと締結する土地使用
権に関する契約。以降、必要手続きを踏んだ上で、各投資企業はティラワSEZ内での工事着工が可能となります。
着工済み企業 : 52社
※操業開始済み企業20社を含む
*各企業名・業種については、公開できかねますのでご了承ください。
5.ミャンマービジネス情報
ジェトロがお届けする現地の最新ニュースや調査レポートの中から、ミャンマーに関連する
記事をご紹介いたします。
*通商弘報の有料記事全文閲覧のためには、こちら(https://www.jetro.go.jp/biznews/subscription.html)
から有料会員のご登録が必要になります。なお、サマリー部分はどなたでもご覧いただけます。
*通商弘報では、ヤンゴン事務所以外にも、70カ所を超えるジェトロ海外事務所の駐在員から送
られる国際ビジネス関連情報を、いち早くお手元にお届けいたします。
 「新投資法では認可取得方法が2通りに-ミャンマー・ビジネス・フォーラム開催-」2016年11月11日
(有料記事)https://www.jetro.go.jp/biznews/2016/11/13a67f7c14088704.html
 「旧投資法に基づく投資申請の受付は2016年末で終了」2016年11月24日 (有料記事)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2016/11/056db504a1252da1.html
 調査レポート「欧米とのビジネス広がる」2016年09月16日
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2016/01/f6abc94352c056f2.html
ジェトロは、今後も日
本企業の皆様のティラワ
SEZ進出検討にあたり、
お役に立つサービス・情
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是非一度ジェトロにご相
談ください。
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• ビジネスサポートセンターヤンゴン(BSCY)
• ジェトロ・ヤンゴン投資アドバイザー、DICA(企業投資管理局)アドバイザーによるブ
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