ー ュ ビ タ ン イ ップ ト A J 「支店行動計画」で 地域を支える 谷口節次 鳥取県JA鳥取いなば 代表理事組合長 らっきょうや良質な米を中心に農業者所得の増大に努 め、 「支店行動計画」で組合員参加の地域活動を展開。 役職員・組合員の一体感醸成に力を入れています。 ◆ GI 認定の「砂丘らっきょう」を軸に 護制度(GI 制度)の認定を受けました。 「ふく ――管内農業の特徴と、地域のビジョンにつ べ」は鳥取市の「福部町」で、生産100年の歴 いてお聞かせください。 史を持つらっきょう産地。生産者には強い思 鳥取県には3 つのJAがあり、JA鳥取西部 いがあります。全国数あるらっきょう産地の中 やJA鳥取中央は、果樹や野菜が中心の産地 で、初となるGI 認定は、大きな励みになると ですが、JA鳥取いなばの管内は、鳥取市周 期待しています。今年の販売額は10億7,000 辺を除いてほとんどが中山間地域で、農業は 万円になり、初めて10億円を超えました。 米を中心に多様な農産物が作られています。 また、米は鳥取県の奨励品種「きぬむす そのひとつ、砂丘で栽培するらっきょうは目 め」が 3 年連続「特 A」の認定を受けました。 玉品目です。 小河川の沖積層の土壌と、中山間地の気象が 今年、 「鳥取砂丘らっきょう」と「ふくべ砂 米の栽培に適し、品質のよい米ができます。 丘らっきょう」の 2 つが、国の地理的表示保 特に兵庫県境の若桜町の棚田で作る米は評判 わか さ も高く、 「ひとめぼれ」は社員食堂を起点とし たビジネスを展開する「タニタ食堂」に使われ ています。また「コシヒカリ」は ANA の機内 食に採用され、まちおこしに一役買いました。 ただ、米に関しては生産者の高齢化が進ん で後継者が確保できず、なかなか将来ビジョ ンが描けないのが実情です。これは転作作物 の白ネギも同じで、手作業で調製がていねい なことから消費者の評判がよく、平成30年に JA鳥取いなば本店 10 月刊 JA 2016/12 80ha を目標にして取り組んでいますが、現在 たにぐち・せつじ 昭 和45年 鳥 取 市 農 協 に 入 組。 店 舗部長、管理部長、参事などを経 て 平 成20年 J A 鳥 取 い な ば 代 表 理事常務に就任し金融共済担当を 務 め る。 平 成23年 代 表 理 事 組 合 長、同年JA鳥取県中央会副会長 に就任。 撮影・JA鳥取いなば企画管理部総務課 北本眞之 46ha です。管内で認定農業者は198人しかお 実践を通じたJAらしい支店づくりを宣言し らず、専業農家が少ないのが悩みです。農家 ました。まずは組合員の活動を活性化し、そ の副業として、また新規就農者などにも働き れを役職員がサポートする体制を確立しなけ かけ、なんとか面積を増やしたいと思ってい ればならないと考えたからです。こうすること るところです。 で、いかに職員の士気を鼓舞していくかが、 しん かん せん き た ろう このほかナシの「新甘泉」 、柿の「輝太郎」 大事だと考えました。 など、県が育成した新品種の産地化も進めて 支店行動計画は支店長が責任者となり、支 います。また「西条柿」の半生の干し柿「あん 店職員はもとより、支店運営委員である総代、 ぽ柿」は、今年から東京の高級果実店「京橋 生産部会、女性会の代表などが集まって、具 せんびき や 千疋屋」で扱ってもらうなど、6 次産業化によ 体的な内容を詰めます。その条件は「農と食 る農業者所得の増大に努めています。 に関する取り組みを含む」で、他の制約はあ りません。JA祭りの実施、特産品 PR、特産 ◆「支店行動計画」でJAらしい支店づくり 品開発など、19支店で、それぞれの地域に ――支店の活動が盛んと聞きましたが……。 合った独創的な活動が生まれています。 平成23年、組合長に就任して1年目に、全 こうした取り組みを展開するにあたり、毎 職員に対して「支店行動計画」の策定とその 年、統一スローガンを決めています。今年は 2016/12 月刊 JA 11 JAトップインタビュー JA鳥取いなば 「鳥取砂丘らっきょう」 「ふくべ砂丘らっきょう」GI 認定証 と、らっきょうの収穫風景 3 年連続「特 A」取得の「きぬむすめ」 (パッケージと水田 風景) 「打開」 、昨年は「先見」を掲げ、組合員、J 職員に対しても同じです。JAで働いてい A役職員の気持ちをひとつにするよう努めて る以上、組合員目線で仕事ができることや、 います。 組合員や地域へのボランティア精神も必要で す。きちんとJAの歴史を話すと、そこに勤め ◆「役職員心得」で意思統一 ているのだという意識が育ちます。そのような ――そのためには、協同活動と併せて教育が 職員であってほしいし、そのように育てたいと 必要だと思いますが、どのような取り組みを 思っています。 なさいましたか。 JAではあるべき職員像を「役職員心得」 前々回の第47回JA鳥取県大会で、 「次代 として示し、会議の冒頭に唱和しています。 につなぐ協同組合」がスローガンに掲げられ 「農を思い、食を考え、協同組合運動を理解 ました。そのためにも協同組合運動に教育は する職員」 「組合員・利用者の気持ちを察して 欠かせない活動です。特に今日のようにJA 行動できる職員」 「組合員・利用者の要望・質 批判が強まる中で、JAグループの自己改革 問に迅速・丁寧・正確に対応できる職員」な への取り組みが、なかなか組合員に分かって ど 7 項目を掲げていますが、要は組合員から もらえない悩みがあります。 支持され、あの職員なら間違いないと信頼さ JA女性会とは毎年 2回、JA役員との意見 れ、空気が読めて、言われたことだけでなく提 交換会を開き、また女性大学も開講していま 案もできる職員を育てることです。そのため す。学長として講師に招かれ、JAが相互扶助 には知識を得ることに貪欲であってほしいと の精神によって成り立っていることなどを話 思っています。 すと「知らなかった」と、共感を持ってくれる 12 若い会員が多くいます。こうしたところからJ ――職員には、常にどのようなことを伝えて Aに対する理解を深めていく必要があると感 いますか。 じています。いま、県中央会の呼びかけで、組 「為せば成る」ですね。江戸時代の米沢藩主・ 合員を対象にした組合員大学の計画が進んで 上杉鷹山の言葉ですが、とにかく何にでも挑 います。JAに理解のある組合員をなるべくた 戦する気持ちを持ってもらいたい。JAの組織 くさんつくろうというものです。 は他の企業と違い、広範で奥が深い。最初か 月刊 JA 2016/12 な JA女性会鳥取支部によるジャンボ巻き寿司チャレンジ (いなば農産物フェスタ) ら適性がある人はおらず、ひとつひとつ勉強 の議論もありますが、そうしたら営農主体のJ しないと身に付きません。仕事の内容が多様 Aは成り立たず、総合事業は展開できなくなり で、JAの異動は転職と同じです。従って新入 ます。そんなことで農村をつぶすわけにはい 職員には「石の上にも3 年。辛抱は金なり」と きません。 話しています。 今は、JAグループとして自己改革へのいい 新入職員は、入組後約1か月、各部署に配 チャンスかもしれません。全農もそうです 属せず、研修期間としています。農業に全く が、生産資材価格の引き下げなど単位JAで 縁のない職員もいます。育苗施設であったり、 も懸命に改革に取り組んでいます。そのこと 子どもと田植えをするなど、少しでも農業に を知ってもらう情報発信が必要です。 親しみを持てる体制としています。また、配 ただJAグループは、組合員・単位JAあっ 属後 6 、7 月には人事課によるフォローアップ ての組織です。全国組織は、このことをしっ 面談を行い、仕事への適性を判断しています。 かり踏まえて改革に取り組んでほしい。地域 JAトップインタビュー JA鳥取いなば 支店行動計画のひとつとして、鳥取マラソン2016で「きぬ むすめ」のおにぎり配布 を守り、正・准を問わず組合員の生活を守る ◆地域の活性化に果たすJAの役割 のが、JAの使命だと考えています。 ――JAをめぐる環境は大きく変化していま (写真は全てJA鳥取いなば提供) すが、どのようにお考えですか。 准組合員の利用制限などは、もしそうなっ たら総合事業が成り立たず、地方のJAは立 ち行かなくなるところもあるでしょう。JA がなくなったら農村・地域が疲弊するのは明 ◎JA鳥取いなばの概況 平成7年、鳥取県東部の14JAが合併しJA鳥取いなば 発足。鳥取市、岩美町、八頭町、若桜町、智頭町の1市4 町がエリア。 鳥取県 らかで、地方創生はあり得ません。JAは農村 のみならず、地域の活性化に大きな役割を果 JA鳥取いなば たしているのです。 JA鳥取いなばでは移動購買車を運営して いますが、もうからないことを商系の事業者 がやるわけがありません。信用事業の利益を 営農経済事業に使うのはいかがなものか、と ▽組合員数 3万3,045人 (うち正組合員1万6,548人) ▽貯金残高 1,682億2,300万円 ▽長期共済保有高 7,730億6,500万円 ▽購買品供給高 92億200万円 ▽販売品取扱高 74億1,500万円 ▽職員数 664人(うち正職員469人) (平成28年1月末) 2016/12 月刊 JA 13
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