会合報告 APT無線通信グループ第20回会合報告 総務省 総合通信基盤局 電波部 電波政策課 国際周波数政策室 課長補佐 あみ の 総務省 総合通信基盤局 電波部 電波政策課 国際周波数政策室 国際政策係員 なお こ こ ぎ そ 網野 尚子 1.APT無線通信グループについて APT無線通信グループ(AWG:APT Wireless Group) は、前身であるAPT無線通信フォーラム(AWF)を発展 あや な 小木曽 彩菜 ワーキンググループ)やTG(タスクグループ)が設置さ れている。 的に再編成し設立されたアジア・太平洋地域における国際 2.AWG第20回会合について 会議であり、同地域の無線通信システムの高度化及び普 2016年9月6日(火)~ 9日(金)の間、AWG第20回会合 及促進を目的として、年2回程度開催されている。 (AWG-20)がタイのバンコクにて開催された。APT域内 AWGは、図のとおり、WG SPEC(周波数にかかるワー の26か国・地域の政府、無線通信関係機関及び民間企業 キンググループ) 、WG TECH(技術にかかるワーキング 等から約220名(うち我が国からは39名)が参加し、99件 グループ)及びWG S&A(サービスとアプリケーションに の入力文書の審議を行い、23件の出力文書が作成された。 かかるワーキンググループ)で構成され、それぞれのワー AWG議長は2014年から2年の任期で(一社)電波産業 キンググループには個別議題の検討を行うSub WG(サブ 会(ARIB)の佐藤孝平氏が務めているほか、WG TECH ■図.AWG-20会合における検討体制 58 ITUジャーナル Vol. 46 No. 12(2016, 12) の下に設置されているSub WG及びTGの議長には、前会 ◦6GHz以下について、1980-2010MHz帯及び2170-2200MHz 合から引き続いて我が国から4名が就任している。 帯の周波数利用に関するAPTレポートの更新を行うこと 本会合において、議長・副議長の改選が行われ、現職の となり、次回会合への寄与文書入力が要請された。3300 佐藤議長、Le Van Tuan氏(ベトナム) 、Keer Zhu氏(中 -3400MHz帯及び4800-4990MHz帯の共用及び共存検討 国)の再選が決定した。なお、後述のとおり任期は今後3年 に関する入力文書は全て次回会合へキャリーフォワード となる。 された。 以下、本会合での主な結果概要について報告する。 3.WG SPEC (周波数にかかるワーキング グループ)での検討状況について WG SPECは無線通信の周波数に関する事項を所掌し、 図に示すとおり3つのSub WGが設置され、周波数の共用 や電波監視に関する検討等を行っている。 各Sub WGにおける主要な結果は以下のとおり。 ◦Authorized Shared Access/Licensed Shared Access (ASA/LSA)にかかる新APTレポート案の作業文書が 更新された。さらにLSAに関する新勧告案へ向けた作 業文書が作成された。 4.WG TECH(技術にかかるワーキング グループ)での検討状況について WG TECHは無線通信技術に関する事項を所掌し、図 に示すとおり1つのSub WG及び5つのTG が設置され、小 3.1 SWG SA&H (スペクトルのアレンジメント及び協調) 電力デバイスやIMT、ITS、無線給電システム等に関する ◦1427-1518MHzの周波数アレンジメントの検討開始が 検討を実施している。 合意され、日本の入力文書を基に作業文書を作成し、 各Sub WG及びTGにおける主要な結果は以下のとおり。 次回会合にキャリーフォワードされた。 ◦3300-3400MHz、4800-4990MHzの周波数アレンジメ ント作業文書に各国からの入力内容を反映し、次回会 合にキャリーフォワードされた。 ◦470-698MHzの周波数アレンジメントの検討を開始し、 作業計画を作成した。作業文書は次回以降作成するこ ととした。 ◦勧告ITU-R M.2015改訂案について、Region3における 4.1 Sub WG IMT(IMT) ◦WRC-19議題1.13IMT周波数利用の調査の回答文書案を 作成した。引き続き各国の入力作業を行い、次回会合 で完成する計画である。 ◦移動通信事業者の周波数、技術方式、ライセンス期間 の情報に関するAPTレポートについて、タイ及びモンゴ ルの情報を更新した。 PPDRハーモナイズ周波数及び関連APTレポートの改訂 ◦Public Safety LTE導入に関して、TG PPDRと合同で 作業開始に関する情報提供を目的とするITU-R WP5A 審議を行った結果、両者を責任グループとすること及び へのリエゾン文書案が作成された。また、本レポート完 PS-LTEに関する新APTレポート作成を次回会合で検討 成は次回会合を目標とすることとした。 することで合意した。 ◦5Gミニワークショップを開催し、今回関連寄与文書を入 3.2 SWG SM(電波監視) 力したHuaweiとTelenor パキスタンの担当者から、最 ◦2つの新APTレポートに向けた作業文書( 「TDOA技術 新の動向や技術開発にかかるプレゼン及び質疑応答が を用いたグリッド型監視ネットワーク」及び「国境地帯 における電波監視手法」 )は次回会合にキャリーフォワー ドされた。 ◦Sub WGの活動計画の見直しが行われ、上述の作業を次 回会合まで延長することとした。 行われた。 ◦VoLTEの相互接続に関して、韓国から導入国の展開シナ リオ等をまとめたAPTレポートを作成することが提案さ れた。本件はASTAPにも関係することから、ASTAP の意向を確認するためにリエゾン文書を作成・送付する ことで合意し、次回会合においてASTAPからの回答を 3.3 TG SS(周波数共用) 元に再度議論することとした。 ◦24GHz以上のIMTにおける共用及び共存検討に関する 新APTレポート案へ向けた作業文書が作成された。 ITUジャーナル Vol. 46 No. 12(2016, 12) 59 会合報告 4.2 TG SRD(小電力デバイス) ◦「厳しい気象条件下における固定無線システムの通信性 ◦日本及び中国からの提案に基づき、275-1000GHzの周波 能に関する新APTレポート案に向けた作業文書」に 数範囲で運用する短距離無線通信システムとその応用 ITU-R WP3J及び3Mからのリエゾンバックの内容が反 シナリオに関する新APTレポート案が承認された。 ◦TG SRDの作業計画が本会合をもって終了したため、以 降の計画についてTG SRD議長とTG TECH議長が検討 することとした。 映され、気象条件に関する参考文書等について追記す ることが合意された。本レポート案は次回会合で完成予 定とされ、キャリーフォワードされた。 ◦「固定無線業務向け同一周波数全二重通信システムに 関する新たな研究の提案」のタイトル及び文書内の同一 4.3 TG CRS&SDR (コグニティブ無線・ソフトウェア無線) 周波数の文言に対して暫定的にin-bandを使用すること ◦HuaweiからCRSについての進捗が報告され、 「CRSを可 が確認され、次回会合以降に決定することとなった。ま 能にする技術としての位置情報データベース研究に関 た、同文書にミリ波帯利用に関する日本無線からの寄与 する新APTレポート」の策定に向けた作業文書が次回 文書の内容を記載するほか、各技術の分類を示すこと 会合へキャリーフォワードされた。 で合意され、次回会合にキャリーフォワードされた。 4.4 TG ITS(ITS) ◦TG議長から、ITU-R及びAPGにおけるITSに関する議 論や関連イベントの状況報告が行われた。 ◦WRC-19 議題1.12に関連するAPTレポート改訂作業が進 5.WG S&A(サービスとアプリケーションにかかる ワーキンググループ)での検討状況について WG S&Aは無線通信にかかるサービスとアプリケー ションに関する事項を所掌し、図に示すとおり5つのTGが められ、作業文書はリエゾン文書としてITU-R WP5A 設置され、固定と移動の融合や新たな衛星アプリケーショ に送付することとした。 ン等に関する検討を実施している。 各TGにおける主要な結果は以下のとおり。 4.5 TG WPT(無線給電システム) ◦日本の提案に基づき「電気自動車(EV)用Non-Beam 5.1 TG FMC(固定と移動の融合) WPTの周波数範囲に関するAPTレポート」のフレーム ◦前回会合から持ち越された2点の文書(スモールセルク ワークが合意され、AWG-22会合での完成を目標とする ラウドに関する質問票に対する回答をまとめた作業文書 こととした。 及び新レポートの作業文書)を確認した。 ◦日本・中国・韓国からの入力文書に基づき、 「WPTのサー ◦スモールセルクラウドに関する入力文書がなかったた ビスやアプリケーションに対する新APTレポート」の作 め、前回会合で骨子を作成した新レポートに置き替える 業文書の改訂を行った。本レポート策定作業は次回会 形で、質問票に対する回答をまとめた作業文書をスモー 合での完了を目標とする。 ルセルクラウドに関する新レポートとすることで合意し ◦ITU-R WP1A(CC:WP1B とRG-WPT)に進捗を伝え た。 るためのリエゾン文書を作成した。なお、APGに対して ◦上記の報告完成をもって本TGのTORにて定められた作 は電気自動車(EV)用Non-Beam WPTの周波数範囲 業はすべて終了したため、TG FMCは解散することで について次回会合にてリエゾン文書を発出することとさ 合意された。 れた。 5.2 TG MSA(新たな衛星アプリケーション) 4.6 TG FWS(固定無線システム) ◦前会合からキャリーフォワードされた「APT諸国におけ ◦「3 GHz以下のMSSの統合システム及び衛星/地上のハ イブリッドシステムの構成と性能の研究に関する報告」 る固定無線システムに関する暫定新APTレポート案に の改訂作業は、計画を変更して次回会合で完成させる 向けた作業文書」の鉄道無線に関する部分はTG Railway とし、キャリーフォワードされた。 にて扱うこととなり削除され、同文書は本会合にて完成 となった。 60 ITUジャーナル Vol. 46 No. 12(2016, 12) ◦「アジア太平洋地域における17.7-19.7GHz及び27.5- 29.5GHz帯の利用及び将来計画に関する新報告草案」の 作業文書が更新され、日本からの入力も反映された形 にキャリーフォワードされた。 で次回会合にキャリーフォワードされた。次回会合での ◦APTレポート08のAnnexに各国のPPDR周波数を記載す 完成及びAPG19-2での入力を目標として作業を実施する る方針となったことを受け、日本からは公共ブロードバ 予定である。 ンド周波数170-205MHz帯をAnnex2へ反映した。本レ ポートの改訂 作業は次回会 合での完成を目標とし、 5.3 TG A&M(航空及び船舶) ITU-R WP5Aに対して進捗を報告するリエゾン文書を ◦日本が提案した無人航空機の利用に関する新レポート案 送付することとした。 の審議が行われ、 「無人航空機の現在及び将来の利用に 関する暫定新報告書に向けた作業文書」が次回会合に キャリーフォワードされた。 ◦ベトナムが提案した航空無線航行業務の利用に関する 6.アドホックグループにおける検討状況について AWG副議長であるKeer Zhu氏(中国)を議長としたア ドホックグループが設置され、前回会合から持ち越された 質問への回答を編集し「アジア太平洋地域における108 AWGの名称変更 (APT Radiocommunication Group(ARG) -117.975 MHz、328.6-335.4 MHz及び960-1164 MHz帯 への変更)の是非及びWorking methodsの改定に加え、 の航空無線航行業務の利用に関する暫定新報告書案に向 AWG議長・副議長の任期拡大(再選回数含む)について けた作業文書」が次回会合にキャリーフォワードされた。 審議された。 ◦457.5125-457.5875 MHz及び467.5125-467.5875 MHz帯 議論の結果、AWGの名称は、現状のまま変更しないこ の海上移動業務での周波数利用に関して、日本の回答 とで合意された。 が新調査報告草案へ向けた作業文書に適切に反映され、 AWG議長・副議長の任期は、現行の1期2年最大2期から、 次回会合にキャリーフォワードされた。 1期3年最大2期に拡大し、現在の議長・副議長については、 次期から適用する形で合意された。 5.4 TG Railway(鉄道無線システム) ◦WRC-19議題1.11に対応するAPTレポートはRSTT(Railway 7.次回会合について Radio communication System between Train and 次回会合(AWG-21会合)は、2017年3月~ 4月上旬に Trackside)に関する1本とすることで合意した。また、 開催される予定である。 マイクロワークプランを改訂し、同レポートの完成目標を 今後のAWG会合においても積極的に議論を主導すると AWG-22会合とした上で、作業文書の作成が開始された。 ともに、アジア・太平洋地域の連携をより一層強固なもの ◦ITU-R WP5A及びASTAPからのリエゾン文書に対し とし、同地域の無線通信の発展に貢献してまいりたい。 て、新レポート案作成を報告する回答が作成された。 日本から、次回以降のAWGにおいてワークショップを 開催することを提案した結果、AWG-22会合での開催と するべく次回会合において詳細を議論することとなった。 5.5 TG PPDR(PPDR) ◦TG議長作成のドラフトに基づき、ITU-R WP5D/WP5A からのリエゾン文書に対する回答案が作成された。 ◦新APTレポート案「PPDRモバイルブロードバンド機能 の実装」に、Public Safety LTE関連の記載を含めるか どうかについては、次回会合以降もTG-PPDRとSWGIMTのJoint Meetingで検討することとなった。なお、 その他の記載内容は本会合で検討が完了し、次回会合 ■写真.佐藤AWG議長(中央)及び近藤APT事務局次長(右端) ITUジャーナル Vol. 46 No. 12(2016, 12) 61
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