本邦における小児開発状況と課題

【テーマ2】
小児開発時期を考える
本邦における小児開発状況と課題
PMDA 小児医薬品ワーキンググループ
2016/11/28 PMDAワークショップ
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Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA)
調査の背景

成人で効能を取得後、一定期間が過ぎると臨床現場での
必要に迫られ、小児での有効性及び安全性が臨床試験
で確認されないまま(小児の用量が追加されないまま)、
使用されていくことが想定される。
成人の承認と時期を置かずに開発すべきか?

一方で、成人での開発初期段階では有効性及び安全性
に関する情報が少ない。
成人においてある程度エビデンスが蓄積され
るまで待つべきか?
実際に小児の適応を取得した品目では、
どのようなタイミングで小児の開発を開始し、
承認を得たか調査を実施
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Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA)
調査対象
• 平成18年度から27年度の間で承認された約1200件
のうち、以下のとおり小児に関する適応を取得した
298件を調査対象とした
 小児の用量を取得した品目(「通常、小児には…」との用法
・用量を取得した品目)
 用法・用量に「通常、成人には…」との記載がなく、審査報
告書上から小児に対しても使用可能と判断できる品目(小
児の試験を実施している、あるいは審査の概略において小
児に対しても適応可能であるとの議論がなされている等)
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Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA)
調査項目①
• 初めて日本人小児を組み入れた試験を開始した際の
成人の開発状況
 開発された小児の効能に対応する成人での開発状況
 以下の8項目から選択
①成人第Ⅰ相終了後
⑤同時スタート
②成人第Ⅱ相終了後
⑥日本人小児試験なし
③成人第Ⅲ相終了後~再審査期間終了
⑦公知
④再審査期間終了後
⑧小児特有の疾患
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Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA)
日本人小児を組み入れた試験を開始した際の成人の状況
成人第Ⅰ相終了後 4%
成人第Ⅱ相終了後 6%
小児特有の疾患
18%
成人第Ⅲ相終了後~再
審査期間終了まで
10%
再審査期間終了後
3%
日本人小児試験なし
26%
留意点
全承認品目数は約1200件
であり、小児適応があるも
のは1/4程度(概算)
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同時スタート
15%
公知
17%
n=298
5
成人が先行している
場合、成人第Ⅲ相終
了後から開始されて
いる例が多いが、同
時に開発されている
ものもある
Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA)
成人と小児で開発が同時にスタートした品目の内訳
~新規承認か一変か~
日本人では初めて
の試験となる場合で
も成人・小児で同時
に開発がスタートし
ているケースがある
一変
12件
新規承認
32件
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Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA)
成人と小児で開発が同時にスタートした品目の内訳
~先天性疾患か否か~
新規承認で、同時承認
かつ試験も同時に実施
されている品目の多くは
先天性疾患
一変(先天性疾患以外)
10件
一変(先天性疾患)
2件
新規承認(先天性疾患)
22件
新規承認(先天性疾患以外)
10件
喘息、アレルギー、ワクチ
ン等であり、疾患に明確な
傾向は認められなかった
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Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA)
調査項目②
• 成人の効能取得時と小児効能取得時の間隔
開発された小児の効能に対応する成人の効能
取得時から算出(初回の承認時からの差になる
とは限りません)
調査対象298件のうち、小児特有の疾患53件に
ついては計算から除外
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Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA)
成人と小児の承認時期のラグ
200
180
160
140
175
同時承認されて
いる品目が多い
留意点
全承認品目数は約1200件であり、
小児適応があるものは全体の1/4程度
(概算)
120
100
80
ラグが長くなるにつれ
て品目数は減る傾向
60
40
20
23
13
15
4
5
5
3
0
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Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA)
成人と小児の承認時期のラグ
~日本人小児試験の有無別~
200
半数以上は日本人
小児での試験が実
施されていない品目
180
160
140
63
120
100
37
80
60
40
20
0
75
2
20
1
3
10
4
2
2
9
小児試験有り
公知
1
1
4
1
1
4
3
小児試験なし
小児試験:日本人小児が組み入れられた試験
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Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA)
公知品目と日本人小児試験を実施した品目のラグ
日本人小児で試験を実施した品目
公知品目
80
80
70
70
60
60
50
50
40
37
40
30
30
20
20
10
10
0
75
1
0
2
2
4
4
3
20
10
9
2
0
• 公知品目は同時に承認されるか、成人の再審査期間が終了して
相当の時間が経ってから承認されている。
• 日本人小児を対象とした試験を実施した品目の多くは、成人と同
時承認あるいは成人の承認から時期を空けずに承認されている。
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Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA)
日本人小児試験を実施した品目のラグ
~先天性疾患、小児慢性特定疾病か否か~
先天性疾患か否か
80
70
70
先天性疾患
60
50
それ以外
60
47
40
30
30
20
20
0
28
小児慢性特定疾病
それ以外
32
50
40
10
小児慢性特定疾病か否か
80
20
10
8
1
2
10
0
43
13
7
7
3
5
4
2
• 先天性疾患または小児から慢性的に罹患する疾患の多くが、
同時又は成人からラグを置かずに承認まで至っている傾向。
• その他の疾患でも成人と同時に承認されている例が一定程度
認められる。
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Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA)
日本人小児試験を実施した品目のラグ
~主な疾患領域別~
10
9
9
同じ疾患領域でも
同時に承認された品目
とそうでない品目がある
8
7
7
同時承認された品目
がない領域もある
6
5
5
4
3
3
2
3
2
3
3
2 2
3
2
3
2
1
1
0
0
0年
アレルギー
0 0
0 0
0年超5年以下
5年超10年以下
感染症
てんかん
1
1
0 0
0
10年超15年以下
気管支喘息
尋常性ざ瘡
0
0 0 0 0
15年超
循環器系
先天性疾患については集計から除いています。
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Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA)
日本人小児試験を実施した品目のラグ
~オーファン等の優先品目か否か~
80
70
60
50
48
40
30
3
20
10
24
17
2
1
0
0年
8
1
1
8
1
0年超5年以下 5年超10年以下 10年超15年以下
オーファン
優先・迅速・特例
それ以外
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14
2
15年超
Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA)
同時承認品目におけるピボタル第Ⅲ相試験の対象患者
小児のみ
5件
別試験同時開発
6件
成人+小児
60件
•
•
成人のみ
4件
同時承認された品目では、
成人と小児を共に組み入
れた第Ⅲ相試験が実施さ
れているケースが多い
12歳以上という設定が多く、
この設定が用いられている
疾患領域はアレルギー・喘息、
血液凝固因子欠乏症等
小児のみ: 小児中心の疾患で、小児試験から成人まで読み込んだケース
成人のみ:ピボタル第Ⅲ相試験は成人対象であるが、別途日本人小児を対象とした試験が
実施されている
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Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA)
日本人小児試験を実施した品目のラグ
~国際共同試験か否か~
12/14件が先天性疾患
他はてんかん・喘息
80
70
14
60
国際共同なし
50
インスリン製剤
40
30
国際共同
61
1
20
10
19
10
0
0年
9
0年超5年以下 5年超10年以下 10年超15年以下
2
15年超
• 国際共同試験の件数が少ないため、国際共同試験を行った方が承認が
早いと言った明確な傾向があると結論づけることは現段階では困難。
• 一方、先天性疾患については12/28件が国際共同試験であり、実施可能
性が影響している可能性がある。
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Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA)
海外における成人と小児の承認時期のラグ(参考)
100
90
80
70
60
90
ラグのみに着目すると、同
時承認されている品目が
多い点も含め、国内外で
傾向の差異はないと思わ
れる。
50
40
30
20
19
13
10
4
4
1
0
調査対象:今回の調査対象とした医薬品(国内において小児に関する適応を取得した品目)
海外での承認がない品目・承認時期が不明であった品目・小児に特異的な疾患は除く。
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Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA)
調査の結論
• 成人での開発が先行している場合には、成人第Ⅲ相試験終了後等、
ある程度成人でのエビデンスが収集されてから、小児での開発が
開始されている場合が多いが、一方で成人での承認から期間が空
くと開発される品目数は減少する。
• 成人と小児で同時に開発・承認されている品目も一定程度認められ、
先天性疾患・オーファン等、同時に開発・承認されることが想定しや
すいケースを除いても、成人と小児で同時承認されているものも認
められる。
成人の開発中から小児でも開発を行うことにより、
小児において適切に評価された医薬品を
臨床現場に提供できるのではないか
• 調査期間中に承認された全品目数約1200件のうち、小児の承認を
有している品目は約300件と限られていることには留意が必要。
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今後の課題
• 国際共同試験へ参加することにより、早期に開発されることが推測
されるが、欧州及び米国においては小児開発が法制化されており、
本邦より早く小児での開発計画が立案されるものと推測される。
• 欧米でのタイムラインにあわせることは可能であるのか、あるいは
どのようにあわせていくのかは今後の課題と考えられる。
• 今回は試験及び承認の年齢区分については詳細は調査していな
いものの、12歳以上といったある程度の年齢では開発が早期に進
んでいる品目も認められた。
• 一方で、細やかな用量調節が必要な場合があると想定される、よ
り低年齢(新生児・乳幼児を含む)では、適切な用量が検討・設定
されていないケースも一定程度存在すると思われる。
• 低年齢層での開発についても今後着目する必要がある。
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早期の開発を推進するために
• 成人及び小児で同時、あるいは並行した開発ができる可能
性がある場合には、早期に開発着手を検討するよう推奨し
ていきたい。
• 「小児」といっても幅広い年齢層であり、例えば「12歳以上」
といったある程度の年齢からであれば同一試験への組み
入れ、あるいは並行した開発が可能といったケースも想定
できる。成人での開発段階において積極的に年齢層を広げ
ることを検討することが望ましいのではないか。
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Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA)
早期の開発を推進するために
• 安全性及び有効性が一定程度担保された小児を臨床
試験に組み入れ、かつ早期に必要十分なエビデンスを
以て承認を得るために、計画的に薬剤全体の開発を
立案することが必要と考えられる。
• 小児と成人で同時期に開発が可能か否かは、成人と
小児での病態概念の類似性や曝露量・臨床推奨用量
の類似性等といったデータに基づき、個々に同時開発
の可否を判断する必要があると考えられる。
同時・並行開発が可能となる条件が
一般化できるかは今後の検討課題
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